NO.18 河田弘道のプロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍 無断転載禁止

NO18 河田弘道プロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍

                                           無断転載禁止

Ⅵ.壊し屋さんへのリスクヘッジ

 1.リスク軽減する為の専門家の導入~

 松井秀喜選手の場合:

    それでは、この壊し屋さんたちの日常の業務を如何にして、その被害から球団の財産を最小限度にくい止めることができるか、例をご紹介しましょう。私が、嘗てジャイアンツのフロント、現場に関係していました時に体験した実例です。

    それは、「松井秀喜選手のケース」です。このケースは、今日までマスメデイアに於いても紹介された事が無かったようです。彼は、ジャイアンツに入団してその年のオフの怪我から、彼が球団を離脱するまでの9年間、彼の身体のメインテナンスとバッテイング、スローイング、等に関する技術指導とコンデイショニングを行って頂いたのは、まぎれもなく市川繁之氏(PTPNFの世界の大家)でありました。「市川氏に付きましては、市川繁之で検索かPNFで検索されると詳しく告知」よって、監督以下コーチングスタッフは、市川氏に松井選手については委ねられていたのです。

   これは、言うまでもなく成果と結果が出るからでした(市川氏は、1994年~97年まで球団との契約、以降、松井選手は、1クライアントとしての関係)。マスメデイアで取り上げられている、同選手の指導者に関する話題とは、全く異なる事を読者は本BLOGで初めて知り驚かれた事でしょう。

     その献身的な情熱と卓越したスポーツ医科学を駆使した理論と実践は、MLB時代の野茂英雄氏、当時のジャイアンツの投手、他現在では、MLBの一線で活躍中の投手、日本プロ野球界で活躍の投手、選手と数えあげれば限がありません。また、過去、現在のオリンピック競技スポーツで活躍し、メダリストの多くは、市川氏のお世話になっているケースが多いのです。

    しかし、日本の競技スポーツ選手達は、自らお世話になっている大切なはずの指導者を公に紹介するという習慣が無いようです。これは、スポーツ選手に必要な礼節の一つが欠けていると私は思います。指導者も生身の人間ですので、公にされる方がモチベーションも高まり、よりインターラクテイブな関係を構築されるのでこの点を改善する必要があると思います。

     日本のスポーツ整形外科医の間では、市川氏を知らない医師はスポーツ整形医ではないとまで言われています。また、市川氏は、一切クライアント(顧客)を売名行為に使用されない方なので、業界以外の方々には、知られていないと思われます。市川氏のクレデイットをさも自分が指導したかの如くマスメデイアに肯定する方々を見聞きするに付けて、スポーツマスメデイアの取材力に一抹の不安と寂しさを感じずにはいられません。

 過酷なトレーニング実態:

    その評価と信頼は、その指導を受けたそれぞれの選手達が一番感謝し、リスペクトしている事でしょう。松井選手に於きましては、遠征から戻った即日に市川氏のクリニックを訪れて、PNFを通しての身体のメンテを受け、その後延々と続くバッテイング練習、一度に必要とする時間は、何と3時間から4時間に及ぶこともしばしばありました。これを松井選手は、根気よく週最低23度、9年間続けた、彼の強い意思、意識と市川氏のプロフェッショナリテイーには、ただただ頭が下がる思いでした。よって、同選手の怪我は、入団一年目のオフの怪我以外、退団するまで松井選手が怪我をして休むなど聞いた記憶が無いのではないでしょうか。

     この9年間の毎回のトレーニング報告書は、松井選手の初年度の怪我から同選手がFAジャイアンツを退団するまで市川氏によって作成されました。市川氏は、本当にこの業界に於いて珍しく律儀で正直な方、私が最初に松井選手をお預け(1994年早春)致して以来、紹介者に対して仕事の成果と結果の報告書を絶やした事は9年間一度もありませんでした。

 松井選手の強い決意と重大決断:

 松井選手は、当時退団を決断し発表した年月日の丁度1年前に、既に巨人軍を退任していました私を訪ねて参りました。 彼は「河田さんのご意見を聞かせて頂きたい、教えて欲しい事があるのでお会いしたい」との事で、市川氏と共に都内の某ホテルでお会いして、会食しながらお話を伺いました。

 そこでは、「松井選手の巨人軍時代に起きた整理、退団の理由、MLBへの夢と現実、退団に対する大義、今後の準備と手順、等々」を確認し合ったのが、今ではつい昨日のような気が致します。

 MLB引退後も当時彼と確認し合った方向性には、ブレも無く全うされている事を大変感心致しております。国民栄誉賞の誘惑にも揺らぐことなく、彼が物事に筋を通す事は、何にも勝る強い信念と強い意思であると信じております。

  当時の打撃コーチの記録では、市川氏のトレーニングを受けた翌日、翌々日の松井選手の打率は、7割を超えていた事が証明されており、PNFによる運動効果と正確さを計る貴重なデータでありました事を、このBLOGでご紹介致します。(Gファイル:長嶋茂雄と黒衣の参謀には、詳述済み、文芸春秋社武田頼政著)

 

2.真の指導者とは、球団の真の救助主~

 本当のプロの指導者とは:

 プロの選手は、ゲームで結果を出せば誰もが認め、誰も非難をしないのです。ユニフォームを着て背番号を付けて居なくても、超一流の指導者が居ることを松井秀喜選手、野茂英雄投手、他の例が成果と結果から証明しています。此のことから、現在ユニフォームを着ているコーチ達が、市川氏のようなスポーツ医科学の専門知識とコンデイショニングの実践スキルを少しでも身に着けて居れば、多くの若手選手達がどれ程救われ、育って行くかを誰もが理解できていないのが問題なのでしょう。

 本球団のコーチングスタッフには、誰もが憧れ、大変興味を持つのも事実です。彼らは、気付かないのでなく気付く為に必要な情報、知識と専門家に学ぼうとする真摯な心と意識が備わっていないのかも知れません。

 市川繁之氏の存在と有効性:

 これは、別の視点で申し上げますと、市川氏のような方が球団に居れば、選手、コーチングスタッフは医科学の必要性とその論理を学べ、医療担当者は野球に必要な医療技術の習得ができるわけです。またスカウテイングとスカウトマン達もスカウテイングのスキルアップや、眼力が養われ、球団にとっては、大きな変革を与えて頂けるでしょう。また、スカウテイングリストの中から、どうしても必要で、欲しい選手のスカウテイングレポートを市川氏のような方に見て頂き、億単位の価値があるかどうか何故見て頂き判断を仰がないのでしょうか。

 私なら選手獲得のリスクヘッジからも、当然見て頂き今後の指導、育成方法に於いても適切な指導を受ける方が、スマートで同時に莫大な経費の削減にも効果を発揮すると考えます。読者の皆さんならどう思考されますか。

  悪例として、1995年秋に球団は、既に8年契約という異常な契約期間と莫大な金額で韓国のスター投手を獲得されていました。趙成珉(ソンミン)投手は、秋の宮崎キャンプで市川PTの身体検査を受けてもらう事にしたのです。その結果、問題を明快に指摘されたレポートを受けた次第です。

 市川氏曰く「球団、監督、投手コーチは、マスメデイアに対して、即戦力の巨人のエースを獲得した、と告知されています。しかし、この投手は、期待されているような活躍は難しいです。テイームは、来季泣きを見る事になり、河田さんの再建ビジョンに支障をきたすと思います。他の信頼できる外国人投手を獲得されておかれた方が賢明です。」とレポートに断言されていたのでした(勿論その原因と根拠を明示)。本レポートの正確性は、その春のオープン戦で先発した趙成珉投手が2回までに大量失点し、3アウトが取れず降板した事がその証の第一弾、その後何度と同投手にはチャンスを与えました。

  このレポートのおかげで、あのバルビーノ・ガルベス投手が入団の機会を得たのです。そして、メイクドラマの主役になったのも事実、市川氏のおかげでした。(Gファイル:長嶋茂雄と黒衣の参謀、で既に紹介済) 

 当時より本球団の補強は、このよう有名で人気がある事を最優先するスカウテイングで、日本選手のFA補強も同様なコンセプトです。よって本年度も旧態依然と変わらぬFA補強でしたので、ファンとテイームに多大な迷惑を掛け、球団経営者には、多大な損失を与えている次第です。これは、プロの有能なスカウトマンが居ないか、最終決断をする責任者にベースボール・アドミニストレーターとしての能力が無かったか、或は、その両方が原因の証であると思えます。

  一日も早く、若い世代の有能なベースボール・アドミニストレーターを育成、醸成され、現代スポーツ医科学を最大限に活用される近代的な球団の環境である事を切に願います。巨人軍の指導方法は、日本の他の競技スポーツ界に多大な影響を及ぼしますので、古い体質の指導方法から脱却し、健全な未来志向への変革(Change)が急務です。その為には、底辺の模範となる機能的システムの構築が急がれると思います。

                      文責:河田弘道

                      Sportsアドミニストレーター

お知らせ:BLOG「どうした東京読売巨人軍NO.18迄予定致しておりましたが、多くの一般読者以外の業界関係者、大学指導者、学生、父母からの要望により、NO.20まで予定致して居ますので、お役に立っていますならこの上ない喜びです。

次回予定:

*次回19回では、「プロの選手としての自立心と自己管理の欠落」、「12軍の指導体制の一貫性と古い指導体制からの脱皮の必要性」。

お知らせ:河田弘道の「ライブトーク106日予定」。

 

NO.17 河田弘道のプロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍

NO17 河田弘道プロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍

                           無断転載禁止

Ⅴ.プロ野球の指導者に何を求め期待するか

 1.監督がお飾り的な場合:

有能な競技者は、有能な指導者にあらず~

    以前本BLOGでご紹介いたしましたように、オリンピックのメダリスト、代表選手は、その競技種目で競い合った最高の勝利者、勇者として認められ、称賛されるべきです。しかし、日本の社会では、残念ながらこのような競技選手を、即優秀な指導者、人格者でもあると、また教育界では、スポーツの専門家(オーソリテイー)と称せられ、優れた教育者である。と誤った考えで評価をしてしまう慣習がある事を忘れてはなりません。読者の皆さんは、如何でしょうか。

     このような評価は、まさに迷信に近い思い込みであります。このような万能の評価をされるアスリートは、居ないとは申しませんが奇跡的な存在である事もまた確かです。このような優れた競技選手が、指導分野、部門で活動、活躍を望まれる場合は、先ず希望する専門分野、部門で十分な知識と実践を習得した上で、できればその専門分野での資格を得ることを薦めます。優秀なスポーツ競技者は、優秀な万能者でないのです。何故ならば、殆どの競技者達は、自ら特化した競技種目という世界での競技を通しての経験、体験と限られたものです。いわば、社会で申しますスペシャリストです。

  このような競技選手が監督、指導者になり指導を遂行する事は、自らの経験的な指導を強いるのであります。ジャイアンツの一軍、二軍の監督、指導者は、自身の選手時代の経験を活かして指導していますが、自らの経験が全ての選手に当てはまるものではありません。

 選手達は、顔かたちが個々それぞれ異なるように、異なる身体の構造、能力、異なる精神力、精神構造を持って居ます。その潜在的な能力をポジテイブな指導により、引き出し、導き出す事がコーチング術(スキル)です。例えば、自分は、この方法で成功したが、その方法を他の選手に押し付ける事は、その選手にその指導方が合っていない場合が多く、壊すことは出来ても、コーチングをした事にはならず、かえって球団の財産である優秀な未来ある選手を潰してしまっていることに、気付いていない事が問題なのです。

 ましてや、個々の選手のコンデイショニングの知識も無く、唯強制的にやらせる指導法を持ち込み全体練習を最優先するような質より量的指導は、コーチングという指導論理とは対極の指導法であり、これでは、個々の若駒は育てられないと思います。

 勿論、ごく少数ですが、指導者の中にも、選手時代から独学で専門知識を学び、自らの実践に取り入れ成功されて、現場で日々活躍されている指導者も居ることも事実です。

  このような現実から、プロの監督、指導者には、選手を引退され指導者になる以前にテイーチング及びコーチングの専門知識を先ず修得して頂きたく思う次第です。本来なら、日本プロ野球機構(NPB)、選手会組織は、セカンドキャリアの養成の一環として、専門的な指導者指導、養成を行える機関を確保し、運営、管理する事が必要かと思います。即ち、これは、日本プロ野球界の選手の障害予防、健康管理、指導者スキルの向上に繋がる事に何故気付かないのか残念でなりません。 

 球団の財産である選手を指導するに当たって、球団は、コーチとしての能力、適性、資質があるかどうかの独自の適性基準と評価基準が必要です。特にGMには、適性の見極めをする物差しが無ければ、選手を育てる担保が確保できないと思います。

 

契約雇用制度の有効活用~

 有名人監督を任命する場合は、実質的マネージメント面に於いて高いリスクが伴います。これを遂行する場合は、必ず両脇を固める意味に於いて、有能な強い信念を兼ね備えた補佐役を配置する事がリスク軽減に繋がります。

 このような人物を監督、指導者に据えた場合は、就任後も指導者の職責、責務を逸脱した言動、行動を起こしすい事も事実です。その為に、軽率な選手への指導が選手を壊し、それが原因で今日も放出した選手が後をたちません。全ての選手に自らの経験のみを押し付ける指導方法は、間違いの根源となっているようです。また、コーチングスタッフ達の多くは、長年の慣習でバーチカル・ソサエティー(ピラミッド型の上下関係の社会)が確立されているので、上ばかりを見ての保身術を磨いても、コーチングスキルを磨かない悲しい現実を先ず改めて欲しいです。

  その為には、契約雇用の意義と目的を明確にする事が大事です。契約は、双方の信頼と尊敬の証としての担保です。この担保が在って初めて、指導者は、指導成果の評価と査定がなされ生活の糧が得られるのですから、真剣に日々指導力の向上に努め、成果をだすよう業務に取り組むべきです。

 日本のプロ野球球団には、本職責、責務をグレーにした状態で現場を運営している球団が多く見かけられます。それでは、何故各球団の指導者個々に担当業務の肩書が与えられるが、その肩書の成果と結果の責務が問われないのでしょうか。不思議なベースボール・アドミニストレーションです。

 これは、我が国の伝統的な社会に於ける雇用制度に欧米型の契約雇用制度がプロ・スポーツ界に導入されました。この契約雇用制度は、責任の所在を明確にすることも重要な特徴であります。しかし、この特徴を有効に活用できていないのが現実の様です。

 

リーダーたる気配りの必要性~

 監督、指導者は、壊し屋さんです。と呼ばれない為にも素晴らしい内外の指導力のある人材に目を向け、指導を受け、学ぶという謙虚な姿勢が、必要であると思われます。  例えば、「誰それ監督、コーチは、誰それ選手を一流に育てた」なんてマスメデイアがよく一面に掲載していますが、それらには確かな根拠も無く、その指導者の商品価値を高めようとするマスメデイアのトリックに過ぎないのです。 

 その監督、指導者は、「実はそれは私でなく、誰それ氏のお蔭なのです」との素直な気配りさえもありません。これは、実に悲しい事です。この気配り一つで、球団内での指導者間の競争力が芽生え、指導部門に於ける競争の原理を導き出せるのです。此れも指導者へのコーチングの一つなのです。

  実力の無い指導者は、このようなシステムを望みません。多分多くの指導者達は、嘗て選手時代の名声で選手達を威圧する事をコーチングだと勘違いしているのかも知れません。私の経験から申し上げますと、本球団と監督の間には、GMと球団のそれと同様にこのようなビジネスライクな取り決めがあるとは思われませんし、球団とコーチとの間の肩書の責務がグレーである事が中途半端な指導体制になってしまっているように思えます。此れこそがプロの選手を育てられない大きな要因の根っこの一つだと思います。 

                      文責:河田弘道

                      Sportsアドミニストレーター

 NO.18 では、「巨人軍での9年間、松井秀喜選手の努力と真の指導者」をご紹介します。驚かないで下さい。本BLOGに初公開!

NO.16 河田弘道のプロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍 無断転載禁止 

 

NO16 河田弘道プロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍 

                                                                                                                   無断転載禁止

Ⅳ.ジャイアンツに於ける監督の位置付け:

 1.巨人軍監督の虚像と実像:

 人気商品としての監督業~

    東京読売巨人軍の親会社・企業は、読売新聞社でマスメデイアである事を既に紹介致しました。商品価値の高い商品は、人気と実力を兼ね備えた選手と栄光の巨人軍です。しかし、巨人軍は、もう一つ選手と同等以上に評価価値を認めているのが監督です。よって、経営者は、どうしても嘗て選手時代にジャイアンツでスター選手であった人物を歴代の監督に任命するのです。

    既に[ I ]で述べました、巨人軍創設以来モットーとして掲げて参っております「巨人軍は、紳士たれ」は、願いであり、「巨人軍は、純血たれ」の精神は、既に外国籍選手の導入により崩れ去りました。しかし、現在今なおこの「巨人軍は、純血たれ」を守り続けているのがこの監督業の位置です。これにより、古き良き時代のファン層をも固定客として維持、確保して来たのだと思われます。

     巨人軍の監督だけが勝つ事を求められているわけではありません。全ての競技スポーツは、勝利する事が最終のゴールと位置付けられているからです。

   一軍、二軍の監督がよく口にするのは、「若手を育てるには、勝ちながら育てる」とよく言っていますが、問題は、言うほど事は簡単でない事を理解できていないのです。これは、少しニューアンスも異なるのですが、「若手を育てるには、勝たせながら育てる」が正しい言い方でないかと思います。しかし、巨人軍には、この言葉に当てはまる監督が果して居ましたでしょうか。

 2.監督選考の実態:

 選考プロセスの矛盾~

    此処で大きな矛盾の一つは、親会社がマスメデイアである為にどうしても利用価値の高い人物、即ち選手時代から商品価値の高い元選手を監督にするのです。しかし、本球団経営者は、任命した監督が優れたマネージメント能力があるか否かの以前に、OBで有名人である事を最優先されます。

   東京読売ジャイアンツの監督は、客が呼べ、新聞の拡販に役立ち、グループの顔として、視聴率が稼げ、勝利する事は、当然の使命と考えられているのです。これらの期待と使命を背負わされた元スター選手の巨人軍監督は、監督としての必要で欠くべからざる能力が備わっているかどうかについては難しいところでしょう。

 選考の事情~

    現監督は、多分松井秀喜氏を期待していた結果の産物であったのでしょう(松井選手に付いては、次回の予定)。現監督は、現役選手であったのを突如巨人軍監督に据えられ、言わば(DH=指名打者)的な存在なのかも知れません。全くコーチ経験も無く、いきなりの起用は、本球団の監督選考に対する思考と特徴を計る一例でもあります。現役選手を望んでいた(マスコミコメントより)同選手を監督として同意させた理由は、別にあったのかもしれません。よって、本球団の監督選考の時点で、最高経営者は、テイーム、選手の現体制の育成、強化、向上から外れた視点で監督を任命しているわけです。

     通常メジャーリーグMLB)に於いては、球団GMが決定した後、GMが、現在のテイーム状況を精査、分析し、現段階のテイームをマネージメントできる人物を複数の候補者リストに挙げ、公平なインタビューを経て、最高経営者(オーナー)に推薦するのが業界の習慣です。最高経営者は、経営方針に沿った監督かどうかを確認し、任命、契約の運びとなります。監督契約は、GMの大きな責務の一つでもあります。よって、GMと監督は、一心同体であるべきなのです。

 3.例外的な人物の紹介:

 現有戦力で勝てる監督~

    例外も時としてあることを忘れてはなりません。例えば、中日ドラゴンズで監督をされて成功した落合博満氏です。私の私見から、同氏は、現在の日本プロ野球界でベースボールでなく、野球を一番よく熟知している1人でしょう。彼は、与えられた戦力でフィールドに於ける最高の成果と結果が出せる有能な人物です。

  私は、落合氏と巨人軍時代にベースボール・アドミニストレーターと選手の関係で3シーズンを共にしましたので彼の得意、不得意は承知しているつもりです。彼は、中日の監督としての職責を全うできた人物です。その根拠は、勝つ為に必要な選手の見極め、テイームに対するゲーム・マネージメント力、決断力は、ずば抜けた才能を発揮しました。

    巨人軍時代に彼との会話の中で強い印象が記憶に残っています。それは、丁度、桑田投手の問題で、1995年前半に同投手が怪我をして、それ以降試合に出られなかった、また、当時球団は、韓国から趙ソンミン投手を当時の編成部長氏と球団代表氏が確か8年契約で獲得していたのですが、身体的な問題が来日後に発覚し期待不可の決断を余儀なくされた結果、シーズンオフにガルベス投手を準備し、彼を春のキャンプでトライアウトを行って獲得した時でした。

  当時、落合選手とドームのダッグアウト裏のサロン控室でバッタリ会った時に、彼が私に「ガルベスを、何処で見つけてきたんですか。奴は、絶対に日本で一財産作って帰りますよ」と初めて、彼が私に口を開いて断言した事を今も鮮明に覚えています。彼のこの言葉には、何の他意も無かったと思います。

   私は、落合氏に対して「あなたは、眼力があるね。彼は、仕事が出来ると思ったので、年俸2500万円で獲得しました。あなたの年俸の何十分の一です」と笑顔で応えたのが昨日のようです。同年ガルベス投手は、確か初年度に16勝しメイクドラマに貢献してくれた主力投手でした。

     落合氏の一番不得手な分野は、コミュニケーションだと思います。彼は、中日球団でこの不得手な分野を持ちながら、見事な成果と結果を残したのです。

   彼の監督としての手腕は、与えられた戦力を最大限に引き出し、ゲーム・マネージメントを通して勝利に導く理想的な監督でした。

   彼が監督をした後を引き継ぐ監督は、正直お気の毒と申し上げます。その理由は、選手達は既にすり切れてしまっているので戦力として使える選手は、ごくわずかとなっていたのです。結果として、その後の高木氏は、テイームの戦力の十分な分析をせず監督を受託し、あのような無残な結果を持って、再度落合氏の手に戻ったわけです。

    この事からも落合氏が監督を行った後の球団は、戦力の再構築に伴う補強活動、メインテナンス、等、選手のみならずスタッフの入れ替えも重要なポイントでもあると思われます。よって、このタイプの監督は、選手を育てながら勝利を期待するタイプの指揮官、指導者ではないのです。勝ってもらう為の監督と申し上げた方が判りやすいかと思います。即ち、勝利をしてもらう為の最後の仕上げ(アンカー)の監督と説明した方が理解しやすいかと思います。

    この手法は、嘗て西武ライオンズの名将と呼ばれた森祇晶氏に酷似と私は評しています。当時森氏が通った跡(監督をした後)には、ぺんぺん草も生えない。との逸話が業界に残っているくらいです。落合氏の中日監督時代のコーチングスタッフは、この森氏の西武時代のスタッフ達であった事も落合監督の手法をよく理解できていたはずです。このBLOGの読者の皆さんなら既にお気付きのこととお察しします。

    監督退任後、彼が次にGMとして球団を引き受けられた時、「失敗して中日球団に禍根を残す」であろうと実は予想していました。何故なら、GMという職責には、多大なコミュニケーション力が求められるからです。彼は、何故一番不得手な職責、業務をあえて最高経営者に申し出たのでしょうか。

    これは、私の推論ですが、彼は、監督として復帰するには戦力が皆無であると考え、戦力が整うまで名代監督を立てる、或は、GMとして自身の能力を過信していたのかも知れません。同氏をGMに任命された最高経営者の決断に不可欠なキーワードになる情報が不足していたのでないかと私は、推測致しております。

    もしも、巨人軍の最高経営者が、現在のジャイアンツの戦力で成果と結果を求めるのであれば、OBでもある落合氏は、最適な監督であると思います。彼であれば、一部現場、フロントスタッフの入れ替えを行なえばこの戦力で十分勝つと思います。しかし、落合氏がマスメデイア受けしない事を最高経営者がどう思われるか。それは、名古屋で既に実証済みだからです。

    私は、96年の落合選手、清原選手の人事問題に関わった一人として、その事情から落合氏のジャイアンツ復帰の機会もあった(彼も巨人軍OBであり、有名な実力者)のでないかと思う一人です。

                       文責:河田弘道

                      Sportsアドミニストレーター

 

*次回Ⅴでは、「巨人軍の現場指導者は、何故自軍の選手を怒鳴り、非難するか。 もっとプロとして利口な指導スキルを身に付けなさい」、「プロ野球の指導者に何を求め期待するか」

 

NO.15 河田弘道のプロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍

 

NO15 河田弘道プロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍        無断転載禁止

         Ⅲ.ベースボール・アドミニストレーションの基軸

 1.GMは、編成の統括責任者~

     GMの職責、責務を明文化せよ:

    球団の経営、運営、管理には、大きく二つの基軸が両輪となっている事を先ずご理解下さい。一つ目は、原材料(選手)を購入して商品化を行う編成部門。二つ目は、商品化なった商品(選手、テイーム)をビジネス化するビジネス部門です。

    この度、本BLOGでのテーマは、この基軸の一つ目の「原材料を購入して商品化を行う部門」です。即ち本部門は、専門的に編成、運営、管理を司る「オペレーション・マネージメント」業務部門に付いてです。

    この部門の統括責任者は、皆さんが近年よく耳にしますゼネラル・マネージャー(GM)と呼ばれる方なのです。本名称は、球団社長、球団代表、編成本部長、等々の名称で皆さんには現在もお馴染みの肩書ですが、近年、メジャーリーグMLB)の影響を受けて名称だけでも真似した肩書なのです。二つ目のビジネス部門には、ビジネス・マネージャー(BM)なる統括責任者が職責として居るのです。

    ジャイアンツ球団に於きましては、つい先日代表兼GMがシーズン2か月余り経て突如解任されたのは記憶に新しい出来事です。この球団には、何故このような事が起こりえるのかが、今回のテーマに大きく関連している要因の一つなのです。

   本球団に於いては、代表兼GMと球団との間に於ける契約書なる物の存在は、存在していないと思います。それは、あくまでも親会社と事業所(球団)の関係に於ける人事異動と位置付けているからだと思われます。よって、GMは、職責にも責務があって無いに等しいのです。此れでは、プロとしてのGMの職責でなく、単なる肩書を与えられた1サラリーマンにすぎないのです。このような球団は、プロフェッショナル球団と言い難い経営、運営、管理がなされている様子が伺えるかと思われます。

     この度、突然新しく任を受けたGMには、球団と本人の間にGMの職責に対する責務が明文化され、その職責を全うする為にどんな権限が付与されているのか、告知出来る契約書であるかどうかも今後の業務遂行に大きな影響を及ぼすのです。

   このGMの職責に対する責務と権限が明確に明記されることにより、GMは、フィールドの監督、コーチ、スタッフ達の業務委託契約書にも職責に対する責務を明確に明記し、約束事を双方で遵守して初めてフロント、現場の責任体制が明快に確立することになるのです。丁度、現場のコーチ達は、肩書が在っても実際に於いて肩書に伴った権限と責務が与えられていないので、誰も最終的な責任は問われないのと同じなのです。

本球団のベースボール・アドミニストレーションには、プロのビジネスとしての責任の所在を明確にした球団組織である事が急務だと思います。

   責任の所在が明快であり、それを担保する契約書がある事は、本球団の構造改革の第一歩であり、本来のプロ球団組織としての体を成すのです。このような構造的な問題を抱えている組織では、フィールド現場に於いて若手選手を育成、商品化するシステムを語る以前の問題を抱えていると思われます。

  このような契約書の中身が無い場合は、責任の所在も問えないし、評価基準が無いに等しいのです。本来は、職責、責務は重く、球団は、GMの能力に託されていると申し上げても過言でありません。

 2.プロフェッショナルGMのあるべき姿~

 GMの職責と業務とは:

    例えば、本テーマのような問題は、本年度シーズンを迎えるに当たり、昨年、一昨年のシーズン終了後に、全担当コーチ(一軍、二軍)、監督からシーズン終了の業務報告書の提出を義務付けているのか、いなかったのかは、プロとして重要な業務の一つなのです。

   その報告書から球団の編成を司るGMは、分析後そのシーズンの結果からどのような選手を、即戦力としての補強が必要か、中・長期ビジョンの補強が必要か否かを精査、検討しなければなりません。この時期には、最終的にこの球団テイームのコンセプトとビジョンに沿った修正仮説を立て、即次年度用と中・長期用の企画書を自らの手で書き上げる能力も本来GMの重要な業務と責務として求められるのです。

   そして此処でGMは、必要な戦力としての選手が何処まで成長しているか、鈍化しているかの状態を数値化する事で選手本人、指導者個々に説明し、理解と説得が与えられるのです。此処で、各担当コーチの契約書に明記されている責務が果たされていたのかどうかの評価、査定もなされるべきなのです。また、シーズンの結果から自軍の弱点箇所を精査検証し、次なる補強に付いては、球団スカウト部長と入念にすり合わせをする事になります。その上で補強に関する結論は、GMが決断し、業務課題を専門部署に説明、指示を与えます。スカウト部長は、GMが出した最終決断を担当スカウトマン達に伝達、スカウテイングの戦場にスカウトマン達を解き放つのです。

    2017年度シーズンは、16年度シーズンオフに先ず年度のシーズン状況を総合的に分析して、シーズン企画書に基づいたベースボール・アドミニストレーションが出来たか否かの検証をする事が大事です。その検証を基に次年度の企画、プランニングを立てるのがより現実的なのです。

   その為には、GM、及びテイーム監督は、本企画書、プランニング書を共有し、明確に遂行する強い意思と意識が必要であります。今シーズンを迎えるに当たって、GMは、シーズン前のオフの過ごし方、選手のメインテナンス、キャンプの企画、計画書の作成、オープン戦(プレシーズンゲームの意味)の現場の状況判断、フロント判断を総合して4月の開幕から10月のシーズン最終戦までの実践マニュアル(航海図面)を完成する必要があります。

   また、今シーズンをロングタームとショートタームのゴール設定、補強、準備、を行ってきているのであれば、今シーズンの様な前半に13連敗致そうが、全くガタガタとGMを途中で交代させる必要はないのです。何故なら、GMは、シーズン前の企画時に、現テイームの戦力と監督の実践経験、個々のコーチングスタッフ力から、常に最悪のシナリオを想定していなければ真のGMと言い難いからです。そして、大切な事は、シーズン開幕後、対戦相手が一巡した段階で、シーズン一回目の企画、計画に対する検証とそれに対する修正が必要なのです。

 此処で、GMの洞察力、眼力が問われるのです。此処でのチェックを怠ると今シーズン仕出かした不名誉な記録を醸成する事になるのです。また、GMは、本企画、計画をシーズン前に球団経営者会議で説明、了解を得ておくこともGMのマネージメントの一つです。

  このような準備が、今シーズンの巨人軍には、出来ていたのでしょうか。GMは、準備を整えていても、各担当部署の責任者の能力の問題で遂行出来ていないのであるならば、その担当者の責任は逃れられません。最高経営者は、新GMにどのような権限とパワーを与えているか否か、新GMの技量と度量もこれから試されるので興味深い所。

 GMは、職責、責務を理解しているか:

 私は、本球団での経験、体験者の1人ですので、去ったGMの心中察すると心が痛みます。特に、去ったGMは、親会社から来られた今迄の方々と比較しても誠実で対人関係も素晴らしいとの評価を内外から入って来ていました。

 しかし、球団の屋台骨であるべきGMが、親会社の社員の身分でプロのベースボール・アドミニストレーターは、務まりません。何故ならば、GMは、プロに移籍する時点で、親会社を退職され、GMとして球団と契約し、本職責に就任するべきであったと思います(退路を断ってプロとしての重責に臨む覚悟の証)。 

 この基本的なスポーツ・アドミニストレーションのコンセプトが既に間違えているのだと思います。二足わらじは、身と生活の安全を担保しますが、片やプロの厳しい業務を遂行する為には、脇が甘くなるかと思います。此れも、プロのスポーツ・アドミニストレーションの辛い厳しい環境と重責なのです。

 これ程有名選手の人気集団であります球団、テイームは、新聞社、テレビ局に取りましてこれ以上ない商品価値であったわけです。これらは、マスメデイア企業のビジネスとして欠く事の出来ない彼らのコンテンツなのであります。

 巨人戦がマスメデイアのキラーコンテンツであった時代は、1994年のメイクミラクル、96年のメイクドラマで完結終了してしまったと申し上げても過言でありいません。その証は、TV視聴率の年間平均が23.5%を推移していたことであります。現在のTV視聴率は、如何でしょうか。

 その後、巨人軍は、TVキラーコンテンツに成りえていない事が残念でなりません。しかし、まだ、組織の構造的な改革をドラステイックに出来れば、次世代に相応しい新しいキラーコンテンツが誕生する可能性を秘めています。現在は、全てに於いて中途半端なベースボール・アドミニストレーションと言えます。会社・企業、組織では、最高経営者及び経営陣の創造力次第で発展も衰退も可能であります。その何れかを選び決断するのは、最高経営者なのです。

  此の度のGM人事に於ける新GMは、職責を理解し、どのようなビジョンを持って、どれ程の期間で成果と結果を出せるのか楽しみです。少なくとも3シーズンは、チャンスを与えて挙げて欲しいと願う次第です。 

                      文責:河田弘道

                      Sportsアドミニストレーター

 

*次回テーマには、例として「落合博満氏の監督としての成功とGMとしての失敗」、も含まれています。お楽しみに!

NO.14 河田弘道のプロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍

NO14 河田弘道プロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍          無断転載禁止

      II.フェアネスを敵に回した手法の対価

 

1.東京読売巨人軍の特徴:

   本球団の特徴は、経営母体がマスメデイア企業である事から、常に人気選手、人気球団を維持、持続させなければ視聴者、購読者を引きつけるコンテンツと成りえない事です。これらの事は、何よりも重要であると歴代の最高経営者が継承して来たビジネス・コンセプトの一つのようです。よって、先ずは、戦力補強の為のスカウテイング、リクルーテイングの手法が他球団と大きく異なる所以が此処にあるのです。

  しかし、これらを強引に維持、継続するがために失った貴重品は、親会社、球団にとって取り返しがつかない「アンフェアーと不信のダークなイメージ」でした。これからの経営者は、次世代に向かって如何に信頼回復に努めようとしているのか、或は、誰もが今もって気付いていないのであるなら、巨人軍には、永遠に真のリスペクトされる栄光は訪れ無いかも知れません。

  この戦力補強の伝統とは、高校生、大学生、社会人の選手達の中で、先ず他のマスメデイアが騒ぎ、人気が集中している選手達をリストアップするのです。即ち、騒がれ、人気がある選手は、実力も兼ね備えていると経営者達は、本気でそう思い込んでいるのです。これは、当たっている選手もいますが、そうでないケースの方が多いのです。これにより入団した後、消えて行った選手は、数限りない事を皆さんはご承知の筈です。これらは、指導者云々以前の問題です。

 また、別の戦力補強は、他球団に行くと活躍される、されそうな戦力を2軍に寝かせておく戦略です。この選手達は、1軍にも上げられず、他球団であれば即1軍のチャンスがある選手達です。此れは、巨人軍が勝つための戦略であり伝統的な手法の一つなのです。これも若手の育成の妨げとなっています。

  球団経営者のスカウテイング・コンセプトとは、マスメデイア感覚でスカウテイングを思考している所に初歩的なミスが発生しているのです。よって、球団のスカウテイング・スタッフ達は、本来の基本的なスカウテイング業務の趣旨、目的を明快に回答出きるスタッフが何人いるでしょうか。本球団は、選手獲得時に付帯の約束事をして獲得するケースが多いので、選手生活を辞めた後もその選手の能力云々とは別に、球団が面倒を見なければならない負の遺産を毎年抱えて行っているので、職員、スタッフの頭数は、他球団とは比較にならないのです。フロントスタッフは本来、マンパワーではなく資質の高い人材が必要なのですが、、、。

  このような状況と環境から、スカウトマン達は、大事なスカウテイング力の強化、向上を怠り、マスメデイア各社の野球欄に目を通すのが伝統的な日課、仕事として位置付けていたのには、驚きました。また、此のことからも巨人軍には、中期、長期の球団のビジョンのみならず、テイームに対する毎シーズンのコンセプト、ビジョンも、それを遂行する実践戦略(Strategy)も見えてこない。

 即ち、これは、人気のあるスター選手を獲得する事を彼らの実績として来た球団、及び経営者に問題があると思われます。またこのスカウトマン達は、球団経営者達の忖度を伝統的に身に付けているのです。統括責任者は、一体何を指導し、業務を遂行させているのか、このような報告からも本球団の伝統的なスカウテイング・スタイルの一コマが伺えました。まさか今現在もこのような事を行っているとは、考えたくもないですが、現実は、成果と実績が見えてこず、気がかりです。

  歴史的にも本球団は、狙った選手達をリクルート(獲得)する為の秘策、施策を持って、失敗は許されないのです。その為には、ハイリスクを承知で獲得に乗り出すのです。また、球団幹部は、親会社から執行してきた球団役員でありますので、最高経営者の忖度をよく心得ています。批判を恐れず申し上げると、球団幹部達は、親会社の最高経営者の忖度を実現する為に球団に執行してきているのであって、球団の重要問題に正面から向き合おうとしない、会社の専業サラリーマンの様に強く感じられました。このあたりも早く改善、変革しなければならない重要な課題部分です。

 

 2野球協約・規約は、ルールブックかダークブックか:

   本球団の選手リクルートに於ける大きな歴史的な例といたしましては、江川卓投手から近年の菅野智之投手迄、歴代の代表的な選手がいます。これら選手の獲得手段は、ジャイアンツ特有なスカウテイング、リクルーテイングの強引な成果と結果であったわけです。松井秀喜選手は、ドラフトで競合の為に抽選で得た選手の1人でした。また、その時代ごとに逆指名枠、自由獲得枠、ドラフト外の育成選手枠と新しい呼び名の野球協約、規約が登場して来たタイミングもその理由と背景があるのです。

  ドラフト制度により、他球団に1位指名されても拒否する選手、ドラフトで競合を避ける為にドラフト数週間前から選手側がメジャー行きをチラつかせたり、大学進学、社会人テイーム行きをアピールして、行きたくない球団に対してマスメデイアを利用して間接的な拒否メッセージを送る選手が絶えないのも本球団選手の特徴でもあります。これらの行為は、ドラフト制度と協約・ルールを根本からリスペクトしていない、競技選手としてのモラルが欠落した人達です。

  MLBでは、このような選手には重い罰則が適用されます。しかし、日本プロ野球機構では、ペナルテイーが課されないドラフトの抜け道の一つとなっているのです。

 これらの選手を獲得する意思の強い球団は、あらゆる方法と手段を用いて今日も選手を獲得しています。しかし、これらの手口は、他球団に於いても行われていました。それは、嘗て小生が他社に所属していた頃の同僚が他球団に所属して球団編成本部長、専務取締役を行っていた時に類似した手法を目の当たりにして裏舞台でバッテイングしている事を確認致しました。

 私は、もっと他のクリーンなリクルート方法を活用して、獲得後の指導、育成部門で切磋琢磨し、勝負して欲しいと願う一人です。その方法と手段は、沢山あるのです。しかし、一部球団は、自己中心的な短絡的な方法を選択するが為に共存共栄のプロ球団としての経営、運営の原理原則を逸脱してしまうのです。ベースボール・アドミニストレーションの貧困が此処にも顔を出しています。

  偏った不公平な抜け駆けが出来る理由は、日本プロ野球機構発行の「野球協約書」にあるのです。折角、読売新聞社の最高経営者の推薦の下、法律の専門家の第一人者と言われる方々を毎回、日本プロ野球機構の最高責任者(コミッショナー)として推薦、任命され有給で雇用しているのですから、国民、社会、野球界、ファンには、もっとシンプルで明快な、抜け駆けの無い規約、ペナルテイーも明文化した、完成度の高い野球協約に改善、変革できないものかと淡い期待を常に寄せている次第です。

  本球団は、テイーム再建、構築の為の基盤をなすビジョン、コンセプトが明確ではありません。そのために、毎度ドラフトに於いて、競合した選手を獲得できなかった場合、次の一手、二手を持っていないので、抽選に外れると他球団に行かれては困るような選手を次から次へと無計画に挙げて行き、ファームで寝かせているのです。此れでは、スカウテイングを有効に活用していると言えるでしょうか。

 

 3.スカウテイングとリクルーテイングの違い:

   現在の様な手法を続ける限り、球団には、観察力、洞察力、医科学力を備えた、指導者、スカウテイングの人材は育たないでしょう。しかし、スカウトマンは、育たなくても、リクルートマンは、親会社からの協力を受けた人材を常に確保してもらっており心強いかと思いました。

 ここでは、スカウトマンとリクルートマンの違いを述べておきましょう。スカウトマンは、選手の身体能力、技術力、怪我の有無、特徴、将来性、育った環境、等をスポーツ医科学の視点を含めた専門の視点で調査し、GMにレポートを提出する人の事です。

 リクルートマンは、本来スカウトマンの調査対象の中から球団が必要とする選手を如何にして勧誘、獲得、契約締結に持ち込むかを業務とする人の事です。

日本社会では、スカウテイングをリクルーテイングと混同している人達が多いので(スポーツを体育と混同しているのと同じ認識)、このBLOGの読者は、是非その違いを専門知識として覚えていただきたいと思います。日本プロ野球界は、伝統的にスカウテイングとリクルーテイングを兼務させているケースが多い様です。

     BLOG Ⅰ、Ⅱ、のテーマで述べました専門的な基礎知識が、本球団の選手育成、指導に関する問題の本質を理解する基礎に役立てば、幸いです。

                            文責:河田弘道

                                                                                             Sports アドミニストレーター  

 

 *次回Ⅲは、このような環境と現実から若手選手が台頭しない要因の現実を述べさせていただきます、どうか驚かないで下さい。

 

NO.13 河田弘道のプロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍

 NO.13 河田弘道プロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍         無断転載禁止

 Ⅰ.東京読売巨人軍読売新聞社の関係

  何故「若手が育たない」と揶揄されるのか:

    此処近年、選手の能力で勝利して来た時代は、終焉してしまったのでしょうか。この所、ジャイアンツが不甲斐ない試合が多くなり、結果が出ないので経営者側が我慢できず動いたのが、先日の代表兼GM(不明確な肩書と職責)の解任でした。小生も1994年~1997年間、似たような責務を背負っていたので、また読売劇場が開演したかと当時を回顧致した次第です。(既にGファイル:長嶋茂雄と黒衣の参謀、文芸春秋社に掲載、紹介、200610月)

     東京読売巨人軍には、伝統的に選手指導、育成に関するコンセプトは存在しないと思います。巨人軍の存在の趣旨、目的は、創設当初から読売新聞社の拡販事業の広告宣伝の主翼と、エンジン部門を担っています。この不動のコンセプトは、嘗て発行部数を1000万部と公言させた主たる原動力であったと思われます。

    読売新聞社は、この原動力を維持、拡大する為に常に秘策と施策を凝らして血のにじむ努力で今日まで経営、運営、管理を維持されて来ているのです。しかし、時代はもうすでにグローバルな時代に突入しているにも関わらず、巨人軍の経営、編成、運営、管理だけは、時計が止まったままのようです。読売新聞社の対巨人軍に対するこのコンセプトは、現代、未来にマッチした方向に舵を切らなければ巨人軍だけが他球団から取り残されて行っているのが実状です。

    日本プロ野球界のリーダーであったジャイアンツは、何処に行ったのかと思うにつけて寂しく感じるのは私だけでしょうか。

 経営者の創造力は、伝統的な組織企業にとって強化と発展の為の原石なのです。本会社、企業には、この創造力と能動的な活力のある若い世代への世代交代が急務でないかと老婆心ながら思わざるを得ない近年のベースボール・アドミニストレーションの実態と状態であります。

  親会社は、日本最大のマスメデイアである事は言うまでもありません。このマスメデイア会社、企業である事は、球団の経営、編成、運営、管理において他球団と比べて大きな違いがあるのです。その違いとは、常に人気のある選手を確保、獲得する事が至上命題なのです。球団は、親会社、自社グループのビジネスに繋がるビジネス・ツール、ソフトとしての特殊な事情を常に背負わされているからです。

 プロ野球球団組織をマスメデイアである親会社が保有する事は、資本主義、グローバル社会に於いても大変珍しい組織・団体と構造なのです。特に、本球団と読売新聞社、グループの構造と関係は、MLBに於いても類を見ないと思われます。此処では、マスメデイアの会社、企業がプロの競技スポーツ球団を持つ事に対しての是か非を議論するものではありません。

 

親会社のメリット:

 我が国のマスメデイアの会社・企業が、プロ野球球団を翼下に持つという事は、球団にマスメデイアに必要な情報、ソフト、ソースを常に提供し続けなければならないソフト生産メーカーとしての使命をも担わせているのです。よって、此処には、公共性の論理が影を潜めて常に親会社・企業の論理が最優先され、それが球団現場へと反映する構造になっています。これらの基礎知識を持つだけで、本球団に対する多くの疑問が一層明快に解かれるのではないでしょうか。

 この度のテーマは、負けが込みだすと他のマスメデイアから「若手が育たないジャイアンツ、等々」と揶揄され、標的にされる事に対する、その根拠を考えるに当たり、親会社がマスメデイアである事が、大きな要因の一つである事を先ず知って頂く事が第一歩だと考えます。読者の皆さんには、何故、マスメデイアが球団の親会社であると、現場選手の育成、指導にまで影響を及ぼすか。という事の推測が、おぼろげながら浮かんでいるところでしょうか。或は、まだ見えて来ませんか。

  このテーマの表現は、「若手が育たない」のでなく、「若手を育てない、育てられない」の表現が正しいかと思われます。本球団を保有する目的、目標は、新聞の拡販に伴う購読料収入とそれに伴う広告料、それに子会社のスポーツ報知新聞社日本テレビ読売テレビ、等のTV視聴率の獲得に伴う、購読、広告料収入、放映権料、等々がビジネス・コンセプトとして長年最優先されてきたわけです。当時より、巨人軍は、グループ企業の中でも最右翼の稼ぎ頭であったのです。

 勿論、ジャイアンツ・ファンは、毎回のホームゲームを観る為に高額なテイケットを買い求めて応援して頂いている事が球団経営の屋台骨を支えて頂いているのです。ファンの一人ひとりは、巨人軍を真に支えるステークホールダー(スポーツ消費者であり投資者)なのです。即ち、会社の株主に当たる一番大切で重要な方々なのです。

 

虚像を維持する為の矛盾との闘い:

 本球団組織は、創設以来今日まで日本の長いプロ球団歴史の中に於いて常にモットーとして掲げている「巨人軍は紳士たれ」、「巨人軍は純血たれ」「我が巨人軍は、永久に不滅です(長嶋茂雄選手の引退の言葉)」等々、どの時代を問わず今日までマスメデイアを通じて語られ、使用されて来ています、ロゴタイプのようなものなのです。

 しかし、これらのモットーは、ご存知の通り現実的に存在するものでありませんでした。これらは、あくまで理想であり現実起きている事実から対極的な関係に位置していると申し上げた方が正直かと思います。

 現実的には、これらモットーは丁度アンダーアーマーの如く、ユニフォームの下に甲冑をまとわされてゲームをさせられているように重く感じてなりませんでした。今日は、まさにスポンサーから提供されたこの甲冑をユニフォームの下に身にまとわされて日々闘っている事が現実となったのも何かの因果なのかもしれません。

                                    文責:河田弘道

                                                                                             Sports アドミニストレーター

                                                                                                              

 *次回は、Ⅱ.を予定致しております。眼力のあるスカウトマンを指導、育成して来なかった、その要因と結果?

 

 

NO.12 河田弘道の限られた体験より:日本の大学の経営者と管理者

NO.12 河田弘道の限られた体験より:日本の大学の経営者と管理者      無断転載禁止

                                      Ⅱ:私立大学の経営基盤と情報公開の必要性

 

1.収入源と許認可問題:

     日本の私立大学は、何を収入源として大学経営を行っているのでしょうか。読者の皆さんは、こんな疑問を持ったことがありますか。

    私立大学の経営基盤は、学生達からの①受験料(現在一校一人当たり35,000円)、②入学金、③授業料、④文部科学省(略:文科省)からの私学助成金(国民の税金から)、⑤各種寄付金が主たる収入源となっています。このような事から、私学に於いては、受験生、受講生を増やす事により増収するのです。その為か、ある時期から大学が全国にやたらと増設され、今や大学の数が飽和状態になって需要と供給のバランスが取れない事態に至っています。にもかかわらず、今日では、中小規模の大学は、学部、学科を強引な手法により増やす大学が見受けられますが、許認可を出す文科省は、どのような基準で許認可を出されるのでしょうか。

    このような許認可問題は、今日社会問題として白日の下に曝されています。これらは、起きるべくして起き、そこに起因する関係者の利害と利権が潜んでいるように思えてなりません。此処では、森友、加計学園を話題にするつもりはありません。

     認可を与えた文科省は、各大学法人に「後は全て任せます」ではなく、「各大学が認可に基づいた約束事を遵守しているか否か」をチェックする独立機関を設置し、厳しく指導、管理するべきです。これは、監督官省庁としての許認可責任が問われてしかるべきだと思います。これを行わない限り、日本の大学は、資質の低下に歯止めがかからないと思います。

    これらの構造的な問題は、文科省スポーツ庁が起点となり改善、改革しない限り、いつまで経ってもアンフェアーでグレーな利権と利害が教育界、スポーツ界に蔓延し、良くならないのが我が国のアドミニストレーションのレベルを物語っていると思われます。

 

2文科省の大学助成金

     このような今日の現状に於いても今なお、大学は、どんどん学部、学科増設の申請を毎年されて、認可を受けている特定の大学が大変多い事をご存知ですか。何故このような事が罷り通るのでしょうか。これらの経営者は、大学という公的な看板の下で実は学生達を集金マシーン化しているのでないかと思われる大学が目立ち始める昨今のように思えてなりません。

      文科省の不明瞭な私学助成金制度は、もっとわかりやすく国民、社会に情報公開がなされるべきです。特に本助成金は、各大学にどのようなプロセスと規約により配分されているのか、また学生の為にどのように各大学で有効に活用されているのかの開示が必要であります。何故、本件に付いて誰もが話題にされて来なかったのでしょうか。

     文科省は、本制度以外にも事業として文科省独自の課題、テーマを大学側に提供、告知されています。最終的に事業実施の許認可を受けた大学は、本事業課題を遂行する指定校に任ぜられます。問題は、この審査過程の情報を公開しないので最後までアンフェアーなグレーゾーンの中での審査と受け止められかねないのです。指定を受けた大学は、文科省と数年間の契約で事業課題、テーマを学内外で遂行する為の新たな補助金(数億円単位以上)を受けるのです。しかし、この金の流れが本当に指定大学で有効活用されているかと申し上げますと非常に疑問に思える体験を私も致しました。

 

3.情報公開の必要性:

     今日起きております少子化問題により、今後ますます私学の経営は、死活問題となって来ていると申して過言でありません。このような状況から、大学経営者は、補助金(国民の税金)を得るための秘策、施策を巡らすことから、どのような助成金であれ、公金を拠出する側も受ける側も情報を公開する義務があります。これは、その金の流れと使途が明らかになることで不正抑止になる事は間違いありません。本公金は、学生達の教育の為の助成が本来の目的なのです。本当に学生、教員がその恩恵にあずかっているか、その証を公開して欲しいと願います。しかしながら、このような教育利権にまで、政治家の名前が学園内に漏れ聞こえてくるのが不思議な現実です。

 

4.教育の独自性による資質の低下:

     学生数が6000人前後の私学では、あらゆる経費削減の狙いから、大学の資質に影響を及ぼす事態が既に起きています。資質の問題では、教員数を減らす事に手を付けるが為に、各学部共通の履修科目を増やし、一クラスに履修学生を詰め込む方式へと転換しています。また、ゼミに於いては、選択制を採用し、ゼミのコマ数を減らし、少人数のゼミは、レベルの異なるゼミまで統合して1担当教員が同クラス、同時間に複数学年の面倒を見るという大学も出始めております。

    また、16年度より日本の伝統的な大学生、教員のステイタスでもあった卒業論文(別名:卒論、内容は別として)は、今や必修から選択科目となり、これにより殆どの学生達は、論文を選択しないという方向に急速に今後進むと思われます。

    何故文科省は、長年大学生に対しての卒業論文を義務付けて来たのでしょうか。今日もなお大部分の大学では、卒業論文を必修としていると思われます。文科省は、独自性を尊重する事からこれらの判断を各大学法人に任せているのかも知りません。これもまた、文科省、大学の告知、説明無きアドミニストレーションなのです。論文選択科目は、やがて全国の大学に拡散するのは時間の問題だと思われます。

    これにより、専任教員のコマ数が減少、教員の負担の軽減にはなると思われますが、経営者側は、専任教員のコマ数を減少する事で、人員の削減、強いては経費削減に大きく前進する事になります。これにより、大学では、教員本来の個々の学生達に提供すべき指導内容、及び個人指導が行き届かくなる事も重要な問題です。

 

     此処で米国の例をご参考までにお伝え致しますと、米国の大学は、伝統的に「卒業論文」なる物を求めていません。現在の米国大学約1275校の内、5校が卒業論文らしきもの(Graduation Thesis or Report)を提出させているという報告はあります。本件に関する米国大学の平均的な意見は、「大学生は、必要でない。意味を成さない」が伝統的な見解のようです。当時私は、米国の大学に勤務しておりました時に、「学部生(Undergraduate Student)の卒業学年には卒論を書かせないのですか」と学部長に訊ねた事が昨日のように思い出されます。学部長に「日本では、全大学で必修です」と申し上げると、学部長は、「何を書くのですか」と逆に聴かれた事が大変強い印象として記憶にあります。また、米国の大学学部に於けるゼミは、見かけません。逆に米国の大学に河田ゼミを紹介致したところ、これは、我々の大学にも必要で魅力的だと褒められました。

 

5.大学選びのキーコンセプト:

     これから大学進学を希望される皆さん及び父母諸氏は、お子さんの将来を左右する大学選びは事前調査が大事であり、不可欠です。本BLOGでは、皆さんが大学を選ぶに当たっての大学の経営者側と大学管理者側の現状と問題、そして文科省からの助成金補助金に関する現状をも加味させて頂きました。しかし、皆さんの授業料は、大学経営、運営の屋台骨を支えます重要な資金源である事に違いありません。

    その経営と管理の現実と現場には、大変大きな格差が各大学により起きている事を理解した上で、ご判断をされた方が賢明です。もちろん、出口であります就職先は、最大の興味とゴールの一つであります。日本社会は、まだまだ個人の能力、資質のみで採用を判断する企業ばかりとは限らない事を心の何処かにお受け留めおき下さい。その為にも、大学に進学する前に将来の出口迄のプランニング(準備)を怠らない事が大学選びに於いても大切だと思います。皆さんは、今から事前に目指している大学の資質と指導者を精査し、高額な授業料に見合う大学を選択する事をお勧め致します。

BLOGが、皆さんに取りまして大学選びの、お役に立てば幸いです。

                          文責:河田弘道

                                                                                              Sportsアドミニストレーター