K'sファイルNO.57:大学競技スポーツ・日米の歩みと動向 無断転載禁止

K'sファイルNO.57:大学競技スポーツ・日米の歩みと動向

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注:NO.57は、この度のアメフト問題を通して大学競技スポーツの問題点を幾つか指摘 して参りましたが、此処では日米の大学競技スポーツの動向を少し覗いてみましょう。嘗ての河田ゼミ生(鈴木善之氏)がNCAAの競技を現地で視察、直接肌で感じたことは何であったのかを是非読者の皆さんには彼のレポートを読んで知って頂きたく思います。お手数ですが、元ゼミ生のレポートをお開き下さい。文中にURLを掲載。

PARTⅠ日米大学競技スポーツの現実的な相違

1.日本の大学競技スポーツの動向

①課外活動とは経営者にとって隠れ蓑?

日本の大学競技スポーツは、課外活動であり、学生の自治活動であるとの理解と認識で今日まで(基本的に現在も大多数の大学に於いて)考えられてきていると思われます。

学生の自治活動とはいえ、各部活の長は、大学側が専任教員と認めた教授職の教員が部長として大学、法人により任命されているのです。(部長は、任命された部活の専門家でも何でもありません、唯の本学の専任教員です。)これで、大学側、法人側は、教育の一環である事をカムフラージュしているのか、ポリスマンの役に置いているのかも知れません。

大学法人は、経営者の思惑により大学競技スポーツ部を複数の強化重点種目と位置付けして、学生に告知もせず、年間約1億~4億円の特別強化資金を投入しているケースが数多く見受けられます。この資金に私学助成金の一部を当てている大学もあるようです。呆れました。

この強化重点種目に付いては、学内に於いても情報公開されず非常にアンフェアーな運営、管理が長年行われているのが実状です。そのため、それ以外の大多数の部は、課外活動としての部活を認められていながら、学内に於いて特別強化部とは大きな差別を強いられているのです。

基本的に部の運営費用は、授業料の一部が学友会費、施設管理費、等として納められていることから、学友会費が各大学の伝統的な手法によりアンフェアーに各部に振り分けられている次第です。勿論、そのようなごく限られた学友会費の一部で賄えるわけもなく、学生達は部費を払い、先輩卒業生達からの寄付で賄われているのが我が国の大学競技スポーツを支えている部活の底辺です。

特定の強化指定種目の目的は、その競技スポーツ種目、学生選手を大学の広告塔としてマスメデイアを通して露出し、受験生を集める事が大きな目的の一つです。その最たる例が既に「KsファイルNO.2933箱根駅伝は誰の物」で詳しく取り上げました大学箱根駅伝、等の人気イベントでの大学名の宣伝活動の一環なのです。この活動は、一人受験生が増える事により受験料の35000円が現金収入となる計算です。

②体育とスポーツ、競技スポーツを混同

このように嘗ての大学の部活は、体育(Physical Education)の一環としての課外活動であり、学生の自治により運営、管理していた時代は、約30数年前に既に略消滅していたのです。現実は、大学経営者、管理者による特別強化スポーツと称する部活が学生の自治活動を隠れ蓑にした授業教育の一環でなく、事業(ビジネス)の一つとして、広報・宣伝活動を主たる目的としていると申し上げても言い過ぎでないと思われます。

各競技種目の学生連盟は、学生主体の自治活動から大人の利害、利権の寄合の学生連盟の組織、団体と化し、本来の趣旨、目的がいわば建前となっているのも大学経営者に酷似です。

勿論、スポーツ、競技スポーツにあまり力を傾注していない大学教育機関は、今尚存在します。そのような大学は、競技スポーツでの成果、結果がマスメデイアの話題に出て来る事が殆ど皆無に等しく、学内に於いても伝統的な課外体育の一環とし、純粋に自治活動と位置付け細々と維持されている大学もある事を忘れてはなりません。

現在の大学競技スポーツの特徴は、スポーツ、競技スポーツを体育と捉えている指導者、管理者、経営者が大半であります。このことから、社会に於いても矛盾した現状と現実が問題の起因となっています。本来は、体育と競技スポーツは本質的に対極に位置します。体育の分野とスポーツの分野(健康・科学スポーツ、リクレーション&レジャースポーツ、競技スポーツ、観戦スポーツ)は、本質的に体育とは異なる事を専門教育の場で生徒、学生に知識の付与をして頂ければ、これから我が国を担う若者達には、専門分野、部門が明快になり、非常に発展的な方向に歩むと確信します。

本年4月には、漸く日本体育協会が「日本スポーツ協会」に改名されたばかりです。筆者は、1976年から文部省、体育局長、日本体育学会長、日本体育協会に招かれる度に体育はスポーツ、競技スポーツと本質が異なるので早く看板を掛け代えて下さいと申し上げて参りました。

日本の大学には、今尚体育会系、体育会、体育局、保健体育局、等々とスポーツ、競技スポーツとは本質の異なる呼び名が戦前、戦中、戦後、そして今日に至っても思考停止状態で継承されているのです。国民体育大会もそろそろ「国民スポーツ・フェステイバル」に改名して頂きたいものです。本分野の教育界には、まだ戦後が終わっていない。そして、NCAAの日本語訳名を全米大学体育協会と呼んでいるのも、これもまた戦後が終わっていない証しです。

2.日本版NCAA構想に100年必要か

NCAA名を利用して国民、社会をミスリード

昨年より、文科省スポーツ庁は、“日本版NCAA”をスタートさせるとの告知をし、準備をされているようですが、何を大義とし、趣旨、目的になされるのか推進者達が理解していないのかも知れません。

全米大学競技スポーツ協会(略:NCAA)のロゴタイプをキャッチコピーし、ちゃっかり使用する我が国の文科省スポーツ庁には、呆れ果てます。

スポーツ大国のNCAAの名前を使う事で、日本国民、社会、学生、学生選手達に何をイメージさせようとしているのでしょうか。

NCAAは、1905年に創設され当時既に全米で800校が加盟し、共通したルールブックの下で競技の運営管理がなされていました。この時代、我が国日本は、どのような時代で在ったでしょうか。その後、NCAAは、1972年に男女平等な教育を受ける権利法(TitleⅨ)が施行され、初めて女子学生選手と女子競技種目がNCAAへの加盟が認められ、男子同様の奨学金制度、各種目の全米大学チャンピンが誕生するに至ったのです。

NCAAは、1970年代後半に確かワールドワイドな商標登録をしたはずです。よって、このNCAA名の使用は、他国の大学の持ち物で在りそれをちゃっかり日本国の文科省スポーツ庁が使用するわけで、お隣の中国が日本製品の偽り品の海賊版を製作、販売しているのを批判する資格は何処にあるのでしょうか。日本国の省庁は、スポーツ界で海賊版キャッチコピーを奨励していると言われても仕方がないですが、宜しいのでしょうか。勘弁して欲しいと思うのは、筆者だけでしょうか。

我が国の現実に即した、身の丈に合ったプラニング、プロジェクトを立案し、先ずは大学競技スポーツの現在の本質的な問題を文科省スポーツ庁)の責任において改善された方が宜しいかと提案します。

この日本版NCAAとは、大学競技スポーツの本質的な問題を置き去りにしてどんな意味があるのでしょうか。本プロジェクトの関係者から聞こえてくるのは、「大学スポーツで金儲けする」と声高に連呼しているようですが、現実的に何を商品にして金儲けをするつもりなのでしょうか。このような方々こそ、学生達と共にスポーツビジネス、マネージメントをよく学び、理解する必要があると思えてなりません。

某大学の経営者は、数年前に複数の広告代理店を呼び、我が大学のスポーツの商品価値を査定して欲しいと真剣に持ち出し、大学丸ごとスポンサー収入を得ることを夢見たようです。広告代理店各社からは、「お宅の大学の競技スポーツでは、商品価値とマーケットセアーが小さすぎるので査定数字も出ません」と回答された。という笑えないレベルの実話も届いています。此れが大学経営者、管理者の知識とレベルなのです。

文科省スポーツ庁の情報公開の必要性

既に文科省のスポーツ窓口機関であるスポーツ庁は、趣旨、目的も明確にしない公金を情報公開もなく、特定の大学に日本版NCAAのプロジェクト名目で流していると聞き及んでいます。本来、このような公金流用が省庁の目的なのでしょうか。特定の大学とのダークな関係が始まっている様な情報が大学内部から流出しております。このような情報が流れる事自体、スポーツ・アドミニストレーションが理解できていない人達により、NCAAのキャッチコピーを利用した公金の不正利用が暗黙の内に始められているのでしょうか。

NCAAという他国の大学競技スポーツの組織名を利用した利権の争奪が既に始まっているとの誤解を招きかねませんので、読者の皆さんの監視が不可欠です。しかし、このプロジェクトには、一部マスメデイアが協力をしているようなので、困った事です。

此の事からも、日本の大学競技スポーツの問題を精査、検証もせず、NCAAをキャッチコピーする理由はどこにあるのでしょうか。NCAAに対して大変失礼です。大学競技スポーツの問題に関する本質の解決には目を向けず、利権の構築の為にミスリードをしているように思えてなりません。

模倣をする相手は、巨大で我が国の現状、現実にマッチしないと思いますが如何でしょうか。お上がこのような思考では、学生、学生選手に多くの犠牲者を出し、健全であるべき指導者、大学教育機関に不適切な夢を与え、多大な迷惑を今後掛けるような気がしてならないのは筆者の取り越し苦労でしょうか。

3.米国の大学競技スポーツの動向

NCAA一部校とNCAAフットボール強豪校の現状 

全米大学競技スポーツ協会(NCAA)主催の全米大学フットボールは、加盟校1275校の1部校(340校)がシーズン最後のNCAAチャンピオンを争う決勝戦が毎年行われ、NCAAチャンピオンが決定します。会場は、中立の地域の大学以外のスタジアムで開催します。

毎年優勝、準優勝の大学に対して、近年は、両校それぞれに主催者から日本円にして約10億円が寄付されているようです。また、バスケットボール決勝戦出場の2校に対しても高額な寄付金が支給されます。大学は、この寄付金以外にも多額のシーズン中のバスケットボールのホームゲーム(約23ゲーム)の興業、スポンサー、放映権収入、フットボールのホームゲーム(6ゲーム)の興業、スポンサー、放映権収入を得ています。

勿論、強豪校と弱小校との間では、あらゆる面での大きな格差が起きているのも事実で問題です。その主な格差要因は、大学競技スポーツで得られる収入の違いです。大きな大学の強豪校では、1シーズン8月下旬から1月上旬迄フットボール、12月から4月上旬迄バスケットボール)で約10億円~90億円の収入格差が今日では生じている様です。筆者が当時米国大学で担当していた時とは比べ物にならない経済効果を与えています。

全米大学競技スポーツのメジャースポーツは、フットボールとバスケットボールです。これら競技スポーツから得られた興行収入は、全て大学関連、周辺地域社会への還元に活用されるシステムが、100年の歴史を経て構築されています。

勿論、フットボール、バスケットボール以外のマイナー競技スポーツは、このメジャースポーツの収益に寄りサポートされています。NCAAでは、男子、女子の公式競技種目の数が決められており、オリンピック種目だからと言っても公式競技種目として認められているわけでありません。(例:例えば女子のレスリング、女子柔道は大学競技種目として認められていません)。

 ②筆者がお世話になった公立大、私立大の現状

筆者がお世話になったオレゴン大学(UO)では、フットボール専用スタジアム約50000席、バスケットボール専用アリーナ現在約12000席、ブリガムヤング大(BYU)では、フットボール専用スタジアム約60000席、バスケット専用アリーナ約27000席をそれぞれキャンパス内に持ち、ホームゲームは、全席満席です。しかし、テイームが敗けだすと観客は減少します。このようにして大学のスポーツビジネス、プロモーション活動の実践、運営、管理が行われています。勿論、大学競技スポーツもプロ同様に、消費者が大学スポーツの観戦に大きな魅力と興味があるので、スポーツビジネスが成り立っているのは言うまでもありません。

注:K'sファイル:特別寄稿集:河田弘道教授の講義から~2018-03-28掲載 題:卒業前の米国大学競技スポーツ観戦旅行を終えて」レポーター:鈴木善之氏、元河田ゼミURL http://hktokyo2017041.hatenablog.com/ 

読者の皆様には、NCAAの現実と現状をほんの一部ご紹介致しました。文科省スポーツ庁が目す日本版NCAAのパンフレット、チラシを目にされましたら是非このKsファイルを思い出して下さい。何処か誰かの講演でのコピーのようです。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sport

 お知らせ:NO.57は、如何でしたでしょうか。次回NO.58は、この度の日大アメフト問題に関してのシリーズの最終回をお届けいたします。前半は、お堅い内容で後半は、あの世界陸上が初めて米国大陸に、それも何と2021世界陸上が世界初米国の大学キャンパスでホストされる事を日本初の情報公開を本K’sファイルご紹介致します。驚かないで下さい。

 

K’sファイルNO.56:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事  無断転載禁止

K’sファイルNO.56:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事

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 PARTⅣ  緊急特別寄稿:日大vs関学大定期戦の運営、管理責任

1.アメフト事件の危機管理能力の欠落

①アメフト問題のフィールド対応の疑問

本件は、誰もが問題視しない事が非常に疑問に思います。

この度のアメフトの競技中の事故、事件に対する危機管理は、ゲーム中の審判クルー、学連、協会、にその能力が無かったという事です。それは、以下のような状況が証明していると考えられます。

本件の初動処理を怠った主審

56日の定期戦に於いて、ゲーム中に日大選手が関学大QBに対して重大な反則行為を犯した時、ゲーム統括管理責任者である審判クルーと主審は、当該選手の危険反則行為に対して躊躇なく一発退場処分に出来なかった時点で主催者にゲーム管理能力が無かった事を証明していると思われます。

この審判の判断は、第二、第三の同選手による反則行為を助長させた事は重大な問題であります。これらの行為をマスメデイアは、第一反則現象のみに目を向け、主審の見解をコメントしていないと思います。見過ごしているのかも知れません。反則行為時の動画を確認すると同審判クルーは、映像を正面から見て、反則行為を行った右側に位置し本行為を確認、イエローフラッグを投げ反則を告知、反則がインプレイ中での出来事でない事も確認済です。

アメフト審判には、競技の特性からゲームが安全且つフェアーに進行する為の特別な処置権限を与えられているのです。その審判が日大監督、コーチの顔色を伺い乍ら、判断をするようでは、まさにこのように本件の問題の傷口を大きくした根源が、此処に在ったと指摘して良いかも知れません。

本審判、主審のTPOの無さと決断力の無さは、そのまま主催者である関東学連、日本アメフト協会の主体性の欠如を意味するものです。

先ず、この度のゲーム主催者とその上部団体は、ゲームの運営、管理責任の所在を明確にし、本件の見通しが付き次第、人心一新を図る事は、教育機関のテイームを預かる組織、団体の責任の取り方であり、運営、管理者としてのけじめであると思われます。また、審判クルーへは、責務と使命の再確認の徹底を行う事と同時に資格認定交付の再審査が、今後の再発防止には不可欠であります。

ゲーム運営、管理に必要な鉄則

主催者は、問題発生後の処理、解決の為に必要な、「タイムテーブル」を自ら作成し公表する義務があります。此れが出来て居れば、全て主催者のタイムテーブルに沿ったマニュアル通り客観的、事務的な処理により結論が導けたのです。そして、主催者は、調査の結論及び日大側への罰則が決定、発表される事で本件は、一件落着したのです。

その後に日大側、当該選手個人から主催者への罰則に関する異議申し立てが、期限内に在った場合は、双方組織、団体、個人を問わず、当事者或は代理人が窓口になり、異議に対する確認の作業、回答が行われる事がスポーツ・アドミニストレーションのこのような問題に対する処理の鉄則なのです。

また被害者である関学大、該当選手からのアピールが、主催者に有った場合は、窓口が適切な対応をすればよいのです。結論として、主催者側は、被害者、加害者側からの異議申し立てに対して双方納得いく解決に至らなかった場合、納得行かなかった側は、司法の手を借りる事となると思います。

主催者側にこのような毅然とした危機管理マニュアルが無かったので、この度のようにマスメデイアの報道に追随する事態に引きずり込まれるのです。また、関東学連加盟校の監督達に日大とのゲームを拒否されたり、今後の問題に口を挟ませたりする事自体、本組織、団体には、権威も主体性も無い組織、団体とみなされると思います。

学生連盟は、「学生達の自治活動」が大前提となっている組織、団体です。

そこに社会人、大学関係者、等の大人が学生達の自治権を強奪した結果が今日の学連の実態です。その証として、この度の学連記者会見の場には、一人の学生も同席していませんでした。しかし、誰もこの不自然で矛盾した組織、団体に質問、意見が無かったことが大学競技スポーツの我が国の現状、実態なのです。学連の看板は、何れにしましても外された方が賢明でしょう。

2.本件に対するそれぞれの立ち位置

①突然興味を持ったTV.マスメデイアの不思議

危機管理の不備は、56日のゲーム中の事件発生後、上記関係者、組織、団体の誰一人として本件に対する問題処理のイニシアチブ(主導権)を取るリーダーが現れていない事、いなかった事です。

関学大が記者会見した後、TV、マスメデイアが本件のイニシアティブを取ってしまったことにより一層問題の視点、論点がぶれ、マスメデイアが望むニュースソースに従った方向に事の次第が展開して行っているのが誠に残念でなりません。我が国には、スポーツ・アドミニストレーションの概念すら持ち合わせていない事を本件において理解されたのではないでしょうか。

TV.マスメデイアは、本アメフト問題を材料にして日大の経営、運営、管理体制の中枢の理事長にまで矛先を向け、理事長降ろしに邁進しているかの様相に見受けられるのは筆者だけでしょうか。主催者に主導権が欠落している事を良いことに、マスメデイアは、本来の報道任務を超えた特定大学の人事に及ぶ内政にまで干渉し、影響力を及ぼそうとすることは、果たして如何なものなのでしょうか。此れも本アメフト問題に於ける初動に於いて、主催者である関東学連とその上部団体の危機管理の不備がこのように問題を一層複雑化してしまったと思います。

②私立大学と文科省の関係

現在マスメデイアで報道されている問題は、日大の内政、人事問題へとステージが移されている様です。しかし、この問題とアメフト問題は、混同すべき問題では在りません。何故ならば、日大の内政、人事問題は、大学の許認可権を持った文科省日本大学の問題であると筆者は理解します。

既にK’sファイルでは、言及しましたが、文科省は、私立大学の設置、学部の設置に対する許認可権、私学助成金補助金と公金の振り分け権を持ついわば利権を握り、役人を各大学に退職後天下らせる、我が国の巨大な利権屋さんの集団である事を忘れてなりません。大学教育機関と文科省は、持ちつ持たれつの関係を伝統的に維持して来ているのです。そのような関係から、この度の大学競技スポーツの問題に於いても能動的な行動が執れない構造なのです。

 文科省は、私学大学の経営、運営、管理の問題を大学法人に投げつけ、野放しにして来た付けが山積しています。このような環境から、文教族(政治家、役人の利権集団)と揶揄される俗語が古い昔から言い伝えられているのだと思われます。読者の皆様には、今社会で問題視されているような件は日大だけの問題ではないことを是非知って頂きたい次第です。本件を対岸の火事と横目で見ている他大学の経営者は、ホッと胸をなで下ろしている事でしょうか。

3.競技スポーツの試合に於ける暴力の取り扱い

①過失と故意の区別

スポーツは、楽しみを求めたり、勝敗を競ったり、またそれを仕事として行われる身体活動Physical Activity)の総称です。競技スポーツの基点は、フェアネス(Fairness)にあり同じ環境とルールの下で行われることにより発展してきたのです。

競技スポーツは、身体運動(フィジカルコンタクトを含む)が伴うために何がしかの身体に及ぼす危険と同居しているためにリスクを伴う事で、他のリクレーションスポーツ、レジャースポーツ及び、健康スポーツ、観戦スポーツ、文化的な活動とは異なるのです。

このような事からスポーツ事故の法的な責任は、スポーツの世界では「過失」を前提としているのです。しかし、競技スポーツの試合に於ける「故意」も事実存在する事も確かです。この度のアメフト事件は、正真正銘の「故意」であったのです。

過失とは、注意義務を怠る事を意味します。あるいは結果の回避が可能だったにもかかわらず、回避するための行為を怠ったことを指します。

故意とは、一般的にはある行為が意図的なものであることを指します。刑法においては、「罪を犯す意思」(刑法381項)を指します。故意犯は、原則的に処罰されるのに対して、過失犯は、特に過失犯の規定がないかぎり処罰されないことから、故意と過失の区別は刑法上の重要な問題の一つでもあります。

②ゲーム中の乱闘、暴力行為に警察・司法が介入しない理由

スポーツ・アドミニストレーションに於けるスポーツ法では、スポーツは社会的に正当な行為であり、「許された危険」「危険の引受」「被害者の承諾」「社会的相当行為」なので違法性が阻却(そきゃく)される、と解釈されるのです。

スポーツ事故は、外形的には過失傷害罪で違法にみえるのですが、スポーツゲーム中にスポーツに内在する危険が顕在化し偶然生じた事故だから違法ではない、というのが違法性阻却事由とされています。

ようするに、アメフト、サッカーや野球、バスケなどのスポーツには歴史的なスポーツのルールがあり、その中に国家の司法機関たる裁判所がいちいち介入して裁判にするまでもなく、スポーツ界の中で自治的に解決すればよい出来事という解釈なのです。此の事は、国内外での競技スポーツ界に於いての「不文律=暗黙の了解」とされている業界の常識でもあるのです。例えば、プロ野球界、サッカー界、アメフト界、バスケットボール界、等での乱闘がその1例です。

しかし、一旦競技ゲーム以外で暴力、事件、事故、等々などの競技スポーツのルールを超えた問題は、当然に民事・刑事の法的な問題として裁かれます。

時事の動向

①6月1日:日大第三者委員会発足―7名の日大側選考弁護士による、日大側の本件に関しての調査委員会。調査結果は、7月末をメドに発表予定。

②6月10日:被害者側QB父親会見-日大第三者委員会弁護士2名にヒアリングを受けた事、内容に付いて発表。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sport

お知らせ:次回は、本シリーズの最終回として「日本の大学競技スポーツの動向」「NCAAフットボール1部の強豪校の現状と現実」に付いて、筆者の体験を交えてお伝えする予定です。別世界の話では、ありませんが、今日のNCAAの確立に約100年の年月を要していますことを記憶に留めて於いて下さい。

 

K'sファイルNO.55:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事 無断転載禁止

K'sファイルNO.55:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事

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 PARTⅢ緊急特別寄稿:大学競技スポーツの本質的な問題

1.大学競技スポーツは教育の一環なのか否か

①大学競技スポーツの趣旨、目的は何か?

教育機関に於ける大学競技スポーツの本質的な問題の根源は、大学競技スポーツが教育の一環、延長線上なのか否かかが明確に宣言され明文化なされていないことです。

これにより各大学教育機関の教学管理者、法人経営者は、自分たちに都合よく解釈され教育本来の趣旨、目的とは異なる方向に大学競技スポーツが利用、活用されていることです。もし、大学競技スポーツが、教育の一環であると明記してあるなら、この度のアメフト問題は、これほどの社会問題にまで発展していない可能性が高かったと確信しております。

何故ならば、大学教育機関としての法人は、教育の一環に相応しい指導者、運営、管理者を採用、雇用しなければ義務に反するからです。しかし、これは日大だけの問題ではなく、大多数の大学は、同様な採用、雇用状態が現実です。この事実から、それでは、本件の問題の本質を改善、解決しない限り、アメフト問題のみならず、各大学競技スポーツに多発している事件、事故を防ぐことは難しいと思います。

筆者が驚いた事は、我が国の教育機関の基軸をなしているはずの「教育基本法スポーツ基本法20116月に施行)」に、A) 学生及び学生選手とは、何を持って認めるかの定義が明記されていないのです。また、B) 大学競技スポーツは、教育の一環である事が明記されていないのです

これは、我が国独特な社会慣習で、「そんなこと書き物にしなくても判っているだろう」と、これが重大な問題の起因となっているのです。要するに、判っていないから教育的な指導を逸脱するのです。約束事は、違反した場合の罰則をも明文化して関係者が遵守して初めて共存共栄のフェアーな大学教育社会が成立するのです。これが人と人の約束事を書き物に残す契約書の役割の重要性なのです。

この度の問題は、各大学の競技スポーツが何の為に存在し、活動を行っているのかの趣旨、目的が個々それぞれの大学において異なって理解、解釈され運営、管理がなされている点を浮き彫りにしました。そして我が国に必要なのは、日本の全大学競技スポーツを統括、運営、管理する為の共通となるルールブックが無いことを日本社会に本事件を持って問題提議したのだと思います。

個々の大学に於いて、「我が大学は、文武両道の精神に則り云々」を掲げている大学もあります。しかし、残念ながらこのようなお題目を唱えている大学の殆どが「建前と本音」の二刀流の運営、管理をしているのです。建前と本音を教育機関のキャンパスに持ち込む事は、「真実と嘘」を混同して教育するに等しいと思えてなりません。読者の皆さんは、大学教育に建前と本音が必要と思われますか。

②筆者がリスペクトする大学競技スポーツ、学生選手の重要項目

筆者が考えるところの、本来大学及び大学競技スポーツに必要な重要項目を列記させて頂きます。 

大学の意義とその目的:

1.最高の学問と教養を身に付ける場である。

2.高度な専門知識と技術(スキル)を身に付ける場である。

3.人間形成の場である。

4.その他。

大学競技スポーツの意義とその目的:

1.大学競技スポーツは、全学生、教職員、同窓生、地域社会の代表である。

2.大学競技スポーツは、大学関係者とその社会の心を1つにまとめるパワフルな唯一のツール(道具)である。

3.大学競技スポーツは、これら全関係者に対して還元されるものであらねばならない。

4.大学競技スポーツは、大学の士気高揚に大きく貢献しなければならない。

5.大学競技スポーツは、大学の広報宣伝活動の最先端を担い母校の名誉と伝統とそのパワーを内外に知らしめる重要な役割を担っている。

6.大学競技スポーツは、アカデミックと競技(文武両道)の原則を維持する。

大学競技スポーツの本質:

1.大学競技スポーツは、大学教育の一環である。

2.大学競技スポーツは、「フェアネス」をその基本精神とする。

3.大学競技スポーツは、関係者によって作成されたルールを遵守する。

4.大学競技スポーツは、運営・管理を大学キャンパス内で行う。

5.大学競技スポーツは、ホーム&アウエイ方式で行う。

6.大学競技スポーツは、学業と競技スポーツの両立を本文とする。

大学生選手の使命:

1.学生選手は、所属大学を代表する母校の伝統と名誉にかけて最高の能力を発揮することを使命とする。

2.学生選手は、全学生の模範となり競技スポーツの代表として大学対抗戦に出場するものとする。

大学生選手の目的・目標:

1.自らの能力と向上とその限界を試す。

2.人間関係の協調性と社会性を学び養う。

3.愛好心(スクールスピリット)と連帯感(和)を学び養う。

4.心技学体のバランスを学び養う。

以上、如何でしたでしょうか。これらは、筆者の日米大学での経験から日本の大学競技スポーツに必要且つ、骨格となるべき項目と確信致しております。大学競技スポーツは、運営、管理に於いて全ての大学が共通のルールブックの下で競技を行うだけでなく、競技以外の規則、ルール、罰則も共通のルールブックの下に関係者がリスペクトし、遵守することが大前提なのです。

大学競技スポーツは、現在の学生連盟、組織が、本来の学生達の運営、管理でなく大人達の利権組織、団体化しているので本来なら、文科省の指導により、解体して適切な個々の競技スポーツの組織、団体に改編する事が急務であると思います。

そして各競技種目別の組織、団体は、日本の大学競技スポーツを統括、運営、管理する組織、団体の下でスポーツ・アドミニストレーションが行われる事が望まれます。

しかし、各種目の学生連盟、組織は、伝統に培われ、各大学卒業生、社会人達の利害、利権となっていると同時に少し商品価値が見られる競技スポーツの学連には、企業、新聞、テレビ、広告代理店、等の複雑な利権構造となっているので、よほどドラステイックな改変、移行が行われない限り、100年経っても抗争が絶えないのでないかと思われます。改革遂行には、問題を乗り切る以上の覚悟と実行力が必要です。

2.問題に正面から取り組まない文科省スポーツ庁)の罪

日大アメフト問題は氷山の一角

大学競技スポーツは、筆者が存じている範囲でも大半の大学が同じ現実と環境の中で経営、指導、管理がなされています。また、指導者が、体罰と称する暴力を用いる事が絶えない現実も読者のみなさんはご承知の通りです。

Ksファイルに既にご紹介しましたが、某大学に於いては、年間700件もの暴力、体罰、ハラスメント、等が学内で行われている大学(当時の朝日新聞朝刊の取材調査記事より)もあります。このような大学に対して、マスメデイアは、何故事実を国民、社会に公表しないで、美化しようとするのでしょうか。何故?不思議です。

また、近年は、マスメデイア企業がこのような大学と組んで授業ではなく事業を始め、障害者の獲得に乗り出している。と学内外に公言してはばからない経営者も居るようです。

同大学の経営陣には、文科省副大臣、前文科大臣(文科大臣就任前までは文科副大臣で理事として、直後に辞任、現在不明)、元警視総監、元総理夫人、等々と著名人、政治家達が経営陣として名を連ねているにもかかわらず、何故このような膨大な数の暴力、体罰、ハラスメントが学内で毎年起きているのでしょうか。此処にも何か暗い影が潜んでいると思われますが、文科省は、我関せずの様です。学生達、教職員達、父母達は、何故勇気ある発言をしないのでしょうか。

何故マスメデイアは、この度のアメフト問題に特化し日大をリンチに掛けようとするのでしょうか。大半の日大学生達は、どんな罪を犯したのでしょうか。このようなリンチ的な行為により、学生達は、二次、三次的な被害に合っている現実をどう救って挙げられるでしょうか。このような大事なことをマスメデイアは、どう考え、配慮していると言えるのでしょうか。何か弱いものいじめをこのさいとばかりに日大バッシングを楽しんでいるようで、如何なものでしょうか。

②主催者関東学生アメフト連盟の記者会見でのコメント

既に本K'sファイルでは、この度の関東アメフト連盟の本件に関しての報告会見の対応問題を述べさせていただきました。同学連は、最終的に本件に関しての公式記者会見を5月29日午後8時に開き、事件発生後23日目に初めて会見の場を持ち、規律委会からの処分内容及び調査結果の報告がありました。

その中で、[規律委員は理事会で「無期限の出場資格停止にしてしまうと、選手らは希望が持てなくなる」と説明。森本啓司委員長(連盟専務理事)も会見で「再起のチャンスを与えないのは教育をモットーとする連盟としてあり得ない」と語った。]   以上朝日新聞5月31日朝刊記事から、

上記取材記事より、連盟専務理事は、学生アメフト選手は大学教育の一環であると認識している事が伺えます。関東学生アメフト連盟は、教育の一環として指導、運営、管理をされていない大学をどのような審査基準規定によって、加盟登録を認可しているのか、非常に疑問に思いました。大きな矛盾が此処に潜んでいるのでないのでしょうか。

このような暴力指導、運営、管理をしている大学は、日大だけでない事を学連は把握している筈です。上記毎年700件もの暴力、ハラスメント、等を起こしている大学も学連に加盟して、監督も監督会議に出席されている様です。他の大学も大なり小なり同様です。

学連専務が教育をモットーにしていると強調されるのであれば、日大以外の加盟登録大学は、暴力指導、運営、管理がなされていない事を明言すべきでした。如何でしょうか。学連は、教育をモットーとしていると断言されていますが、これは、建前であり実質が伴っていないと断言された方が正直でないでしょうか。これは、筆者の素朴な疑問です。専務の発言には、裏付けが必要です。

関学大のような大学教育の理念を持って、一貫したアメフト部を運営、管理、指導している大学は、我が国に於いては非常に少数です。

スポーツ庁は、文科省の風除けか

筆者が嘗て文科省の担当者に確認致したことがあります。それは、「文科省は、大学設置、学部承認の許認可を出していますが、大学競技スポーツに於いての各大学の不正、不公平な入学、卒業認定、不正単位授与、金銭に寄る内外学生選手のリクルート活動、等々を監査、調査、指導しないのか。また、文科省は、各大学に対して毎年莫大な私学助成金(公金)、補助金(公金)を流し込んでいるが、どのような基準と責任に於いてなされているか」を尋ねました。

文科省は、大学設置の許認可は出しているが、各大学の運営、管理の問題は各大学法人の経営者に任せているので関知しません、そこまで手が回らないのが実態です。助成金補助金に関しては、告知しています。」とこれがお上の天の声でした。助成金補助金に関しては、全く具体性もなく目に付かない場所にただ告知しているとの形式的な内容のみで国民、社会が納得できる内容でありません。

此れでは、各大学の経営者、管理者の教育、経営、管理能力により大学、指導者、指導内容が歪められても誰もが監査、調査、指導、是正できない、しない構造が確立されているということです。このような事は、本読者の皆さん以外はご存知でないという事です。この国の現在のような文科省というお役所は、必要な省庁なのでしょうか。米国には、文科省などありませんがスムーズに経営、運営、管理がなされています。

先日524日には、鈴木大地スポーツ庁長官が「もう国のリーダーシップにより本件は、」と発言されました。同氏及びスポーツ庁にどんな権限があるのでしょうか。筆者の理解は、スポーツ庁は、文科省に在ったスポーツに関する取扱いの部署を文科省と切り離して新しく特化した形でスポーツ庁を設置、いわば文科省には、スポーツの問題は持って来るな、スポーツ庁に持って行きなさい。と言わんばかりの対応とお見受けします。

スポーツ庁、長官は、公益法人のスポーツ組織、団体、で起きた不祥事、事件、等の報告を受ける受付窓口で、それ以上の問題を処理、解決するに必要な権限も権力も与えられていないと理解しています。上記のような発言をし、拳を振り上げて降ろす場所があるのでしょうか。是非スポーツ庁と長官は、少なくとも社会問題となっている本件に対し、先ず大岡裁きを下されることを切に願います。本件が裁けないで、日本版NCAAの設立等、あまり風呂敷を広げない方が宜しいのでないでしょうか。長官には、真のスポーツ・アドミニストレイターのプロフェッショナルに自らなって頂きたいので苦言を申し上げている次第です。悪しからず。

 

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sport

お知らせ:NO.55は、大学競技スポーツの本質問題及び、その取り巻きの環境、現実問題、等を述べさせて頂きましたが、筆者の主張は、読者の皆様にご理解して頂けましたでしょうか。次回、56は、この度のアメフト問題の今後の展望を予定していますが、時事の問題が生じた場合は変更させて頂くかもしれません。

K'sファイルNO.54:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事  無断転載禁止

K'sファイルNO.54:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事

              無断転載禁止

 PARTⅡ 緊急特別寄稿:限りなく腐敗して行く大学競技

                                          スポーツの要因

 注:PARTⅡでは、我が国の大学競技スポーツに於ける問題の本質は、何処にあるのかに付き まして筆者が経験、体験しました米国の大学、日本の大学を実例としてご紹介します。これら実例から読者の皆様は、問題の本質が何処にあるかを是非ご一緒に考えて頂ければ幸いです。

1.大学テイームと大学の指導体質

①筆者と「日本の大学アメフトとのご縁」

小生は、嘗て長年米国の大学に於いて競技スポーツを統括運営、管理する部門・部署(Athletic Departmentアスレテイック・デパートメント)にてフットボールテイームを含めたスポーツ・アドミニストレーションをアドミニストレイターとして、教鞭以外に運営、管理して参りました。2008日本体育大学に於いて講演済)

1977、大学フットボールテイームがNCAA(全米大学競技スポーツ協会)の公式戦に於いて当時Western Athletic Conference(略:WAC=所属カンファレンス名)において、頂点を極める成績を収めました。そこで大学は、選手、スタッフへの労いを込め日本遠征を許可、日本アメフト協会、関東学生アメフト連盟、関西学生アメフト連盟と各大学の強い要請を受け、日刊スポーツ新聞社の企画で招かれました。

日本遠征に対する大学の趣旨、目的は、NCAAの了解の下、学生選手達が日本の文化に触れ、社会性を養う目的と日本の大学のアメリカンフットボールの育成、強化のお役に立てばとの思いで交流プログラムを遂行致した次第です。

その時のエキジビションゲームは、東京国立競技場での日本大学主体テイーム、西宮球場での関西学院大主体テイームとの交流ゲームでした。日本の学生選手、指導者、ファンは、NCAAの強豪トップ校を肌で感じたことと思います。

私は、このご縁から日本大学関係者、関西学院大学関係者、関東学生アメフト連盟関係者、関西学生アメフト連盟関係者とは、長年個々に交流があります。この度の問題で、嘗て関係を持った両校がフィールド内外で敵対関係の状況を鑑み、当時を回顧胸が痛む思いを致しております。77年日本遠征時の日大主体テイームとのエキジビションゲームには、内田監督は学生選手としてプレイしていたような記憶があります。当時の監督は、篠竹幹夫氏でした。

1978、本交流戦の翌年には、日本に最初の「NCAAの全米大学フットボールシーズン公式戦、BYUUNLVの一つを日本側スポンサーの招きにより、東京国立競技場で開催致しました。(BYU:ブリガムヤング大学、UNLVネバダ大学ラスベガス校)

②日大、関学大のアメフトの相違

当時より、日本大学関西学院大学のアメフトテイームは、関東と関西を代表する伝統校であります。筆者が理解しています両校の特徴は、日本の伝統的な精神論(根性論)を指導の基本にした日大、アメリカの大学フットボールを教育指導理念に取り入れ、また大学の教育理念にした関学大との違いが大変強く印象に残っています。両校は、互いにリスペクトし、信ずるものが根本的に異なるようです。

前者の日大は、精神論(根性論)を主体とした指導方法である事から暴力的指導が常態化し、今日までその伝統を継承しているのだと理解します。しかし、この指導法は、日大に限った事ではなく、筆者が存じている大学の大半が、大なり小なり現在も同じ手法を共有しています。よって、指導を受ける学生選手にたいしては、常に暴力、パワハラ、イジメ、等の恐怖指導、運営、管理が慢性化しているのだと思います。

このような指導方法は、段々とエスカレートして行かなければ選手の緊張感を維持できなくなるのと、指導者の威厳を堅持できなくなる悪循環を醸成するシステムであります。これを称して、コーチング論では、悪魔(デビル)の指導法則と筆者は呼んでいます。スポーツ根性論を指導の根幹とする為に人間の尊厳を否定し、人間を唯の家畜としてしか扱わない大変ワイルドな指導法です。これは、我が国の競技スポーツの伝統的な指導法であり、現在も脈々と現場では大なり小なり根底に流れています。

この度の日大の陰湿な手法は、自軍の選手に時間を掛けてテイーム戦略としての傭兵(鉄砲玉)を仕立て(心理的に)、相手テイームの標的を戦力外に暴力を持って追い出す戦術(物理的な)を計画的に遂行したのです。これは、大学競技スポーツの指導者として卑劣極まりない卑怯な戦法以外の何ものでもありません。

暴力には、個々の身体に対する物理的な暴力と、心理的、精神的な暴力がある事を忘れてなりません。暴力は、指導のスキルではなく唯の服従させるための道具なのです。このような道具を必要とする指導者達象とは、コーチングのスキルを持っていない証であり、暴力による強圧的な脅しの指導形態に依存しているのです。確かに精神論も競技スポーツには、必要で重要なファクターの一つです。しかし、その指導方法を誤ると競技スポーツの本質を踏み外すことになります。

暴力も選手への愛の鞭、とはばからない指導者、教育者には、コーチング、テイーチングに関しての指導スキルを持っていない証しです。暴力が愛であるなど馬鹿げた野蛮な屁理屈は成り立ちません。

また、大学の指導者雇用に於いては、指導者の適性、指導能力を判断する採用マニュアルも無く、親分子分の関係を形成し、従う人材を雇用対象にする独特の採用方式が伝統的に敷かれているようです。このような指導者雇用は、伝統的に大学管理者、法人経営者も容認しているということです。「我が国の教育機関の最大の問題の一つは、このような暴力を容認する指導者、管理者を採用、雇用する、大学の経営者、管理者の教育理念に指導、指導者問題が起因していると確信します」。読者の皆様は、如何感じられていますでしょうか。

筆者は、例えば嘗て暴力指導により公立高校を確か懲戒解雇された教員、指導者を数年後に大学駅伝の監督として雇用した大学、経営者を存じ上げております。このような教員、指導者は、暴力指導の癖を持っていて同じ指導を大学に於いても繰り返しているようです。このような事件が学内で起きても、大学経営者、教学管理者は、スケープゴートを仕立て今も隠ぺいしたままです。この度のアメフト事件と類似していますが、本件にはマスメデイアが話題に何故かしませんでした。その為に、他の事件、事故も隠蔽されたまま大学の改善、改革には、程遠い現状です。弱い立場の学生、学生選手は、経営者にとっては唯の集金マシーンと化している悲しい現実です。

学生、学生選手を決して被害者、加害者にしてはなりません。しかし何処の誰がこのような実態を救って挙げられるのでしょうか。

このような事態から大学の経営者、管理者は、よほど強い教育理念を持って、ドラステックな方法でスポーツ・アドミニストレーションを持って改善と改革に着手しない限り、外科手術的治療方法では、我が国の大学競技スポーツの改善、改革は難しい、と考えます。

後者の関学大は、進歩的、革新的な指導法と大学教育機関としての教育理念を当時も今も一貫して貫いていると理解致しております。当時の監督、学長、理事長、諸氏が退任されても、大学の理念は、アメフトを通じて脈々と継承されている事をこの度の事件で再確認致しました。両校は、競技スポーツに対する指導理念に於ける根本的な違いが対極に位置し、論点が水と油の関係で噛みあわないのがその証であり、現実であると思われます。

K’sファイルをお読みになった読者の中に日大の篠竹体制でプレイした、指導した関係者(内田監督を含め)をご存知でしたら、また関学大の当時の武田監督兼理事長、をご存知でしたら本K'sファイルの存在を是非お知らせ下さい。此れも何かの復縁だと思います。関係者は、超党派で今こそ大学アメフトを原点に回帰させ、ファエネスと共存共栄の精神を復活致させなければなりません。

2.学生・選手の大学選択の重要性

①学生・選手に大学転校の自由を与えよ

学生選手側が自らをプロテクトできる現実的な手段の一つは、このような日本の大学、競技スポーツを鑑みて、学生・選手が大学進学時に何処の大学、そして指導者を選ぶかが大変大事なキーポントになると思います。

何故ならば、一度その大学に入学した後、学生、学生選手がその大学、或は学部、専攻、指導者が合わなかった場合、問題が起きた場合に他大学への転校、編入が可能な構造、システムが日本の大学に於いては構築されていないことです。

これは、文科省の大学設置基準並びに教育基本法の不備、欠陥にあり、いまだ改善、改革が全くなされていない旧態依然からの構造と問題なのです。これに関係者は、誰も気付かないのも寂しい限りです。

これは、日本の大学の構造的な問題から、学生達の自由を束縛、拘束した人権に関わる問題でもあります。この度のアメフト学生選手の夢を破壊したのは、この転校システムの路が塞がれていたために、若者の未来を葬ってしまったのと同様と考えられます。

即ち、現場指導者、管理者、教員、事務職員、法人経営者は、一度学生が入学すると退学する迄他大学には移籍できない。との安心感がこのような指導、運営、管理の改善、改革を蔑ろにされている様に思えてなりません。

例えば、この度の加害者学生選手が、関学大を選んでいたならば、多分大好きなアメリカンフットボールを楽しくプレイしていたと思います。そして、このような社会問題は、起こしていなかったでしょう。或は、同学生選手が記者会見で述べていましたように、「大学に入ってからアメフトが楽しくなくなった」との思いは、もし、他大学への転校のシステムが各大学で整っていたなら、彼は転校への路を選択し新しい学生生活を歩んでいたはずです。

また、当該大学のこの度の指導者達は、学生選手に暴力指導を行うと学生選手が他大学に出て行かれることを認識して居たらなら、此処までの行為には及ばなかったと確信します。転校のシステムは、学生、学生選手の個人の自由意思を守る最後の砦であるのみならず、指導者、管理者、経営者の暴走の歯止めにもなるのです。

学生にとって、今の大学の構造的な問題は、アンフェアーであり、独占禁止法に抵触するのでないかと思われます。(本件に付きましては、KsファイルNO.1112を是非ご参照ください。きっとお役に立つと思います)

この度の出来事は、問題が常態化している日大の指導法がゲームに於いて学生選手が自らを犠牲にして、指導者の指導に沿ったパフォーマンスを遂行した事により、公になった次第です。そして、関学大の公式のアピールにより、マスメデイアが公表しやすくなったので、このような社会問題の起因となっているのだと思います。

文科省そしてスポーツ庁は何の為にあるの?

TV・マスメデイアへの期待と功罪

日本のスポーツ・マスメデイアは、常態化したこのような現実を勿論以前から存じています。しかし、誰もが残念ながら報道しない、公に問う姿勢を持ち合わせていないのが残念でなりません。これは、罪の部分です。

近年の大学教育機関の経営者、指導者、管理者の対応を観察、洞察させて頂きましたが、殆どの大学教育機関には、自浄能力が無いのでないかとお見受け致しております。

マスメデイアの体質と姿勢が学生選手を育てようとする情熱があるならば、我が国の大学教育機関、大学競技スポーツは、どれ程ポジテイブな改善、改革がスムーズに今迄に進行していたかはかり知れないと思います。この度のアメフト事件は、その代表的な功罪の功に当たるかも知れません。

何故ならば、我が国の大学教育機関では、国の文科省が大学法人に重要な権限を委ねてしまっている為、健全な学生選手達及び健全な、教員、指導者達がマイノリテイー(少数派)化し、自由な意思を発言できない環境の為、事故、事件の温床となっています。

先だっては、本件に付きましてスポーツ庁長官の鈴木大地氏が「もう国がリーダーシップを取らなければだめだ。取ります?」と感情を高ぶらせて公言されました。

その後、全く音無しで振り上げた拳を何処にどの様にして降ろすのか、降ろしたのでしょうか。元々、スポーツ庁は、何をする庁なのか、どのような権限を持った部署なのか、理解できていないのは筆者だけでしょうか。

その庁の長官が軽々しく国がリーダーシップを取ると公言したのですから、その真意とその方法を同時に国民、社会に発言を裏付ける説明をして初めて、国が何をするか、出来るかが見えて来るのです。

スポーツ庁及び長官は、大相撲の不祥事、プロ野球の不祥事、カヌー選手の不祥事、レスリングの不祥事、そしてアメフトの不祥事、等を各公益法人の長から報告とお詫びを受けて、「遺憾に思います」と対応することが本庁、長官の現在の仕事、実務のようにしか理解出来ないのは、筆者だけでしょうか。スポーツ庁長官は、自身の職責、責務、使命を持たれているのでしょうか。何故この方が長官に選考されたのかこれも不透明。

マスメデイアが正義と公平(Justice & Fairness)を持っているかどうかは、日本の教育界のみならず、大学競技スポーツの今後の命運を左右すると思います。何故ならば、本来あるべき姿の文科省スポーツ庁)が機能していると思えないからです。そして多くの大学教育機関の経営者、管理者には、自浄能力が無いと判断せざるを得ない状況だからです。それに伴い、大学競技スポーツは、問題が多発、解決策及び解決能力のある人材が見当たらない貧困な状況であるのも確かです。

我が国の大学競技スポーツ界には、学生達、学生選手達を育て、保護する強い信念を持ち、正論と正攻法を基軸にした強力なリーダーが今必要とされています。

 時事の動向

525日:日大学長の記者会見-内容に変化なし。

      日大アメフト学生選手の父母会、会見。

526日:日大からの2度目の返事を受け、関学大3度目の記者会見―

      受け入れられる内容でなかった。

526日:被害者側父親の記者会見―加害者学生選手を救う嘆願書作成。

529日:関東学生アメフト連盟の記者会見。内田監督は除名、井上コーチ除名、森

      コーチ資格はく奪、宮川学生選手はシーズン出場停止。

:不明確な会見:本連盟の理事は20名。内4名の理事は、本件に関する賛否に反対した。公益法人日本アメフト協会理事長は、棄権した。此の事態は、主催者内が一枚岩でない事を証明し、本件の複雑な人間模様が伺える。会見では、この部分の情報公開をされるべき。今後に禍根を残したと思われる。

529日:日大アメフト部学生選手の声明文発表。

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sport

 お知らせ:次回は、日本の大学競技スポーツを狂わせてしまっている最大の根源は何か。を予定致しております。読者の皆様方の怒りが筆者の瞼に浮かびます。困難な局面を迎えた我が国のスポーツ界を誰がどのように改善、改革を成すべきなのでしょうか。次回をお楽しみに。

K’sファイルNO.53:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事 無断転載禁止

K’sファイルNO.53:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事  

                                                      無断転載禁止

 注: K’sファイルNO.52のお知らせでは、次回「NO.53:ハリルホッジ監督の突然の解 任に思う」を予定しておりました。しかし、読者の皆様から、アメリカンフットボールの反則問題が社会問題となっているので、専門的な知見をK'sファイルに掲載して欲しい。とのご要望が寄せられております。そこで、今回NO.53から複数回の予定で連載させて頂くことにしました。どうかご理解とご了解頂けましたら幸いです。

 

PARTⅠ 緊急特別寄稿:日大アメフト指導者の指導理念の破綻と犠牲者

先ず初めに、

本緊急特別寄稿は、スポーツ・アドミニストレイターの視点で問題の起因とそれに至る本質を述べさせて頂きます。

掲載内容は、現在TV、マスメデイア、スポーツジャーナリスト、等の方々及び本件関係者の報道内容と異なる視点かと思われますが、ご承知おき下さい。尚、本件の被害者側は、521日に被害届を提出され、受理されていますので捜査に影響を及ぼす内容は控えさせて頂きます。

1.本件の概要

この度、201856日に行われた日本大学(略:日大)対 関西学院大学(略:関学大)の大学アメリカンフットボール定期戦(シーズン前の練習試合)は、一般社団法人・関東学生アメリカンフットボール連盟(略:関東学連)主催の下開催されました。

定期戦に於ける反則行為は、日大の守備専門選手(DL:デイフェンシブ・ライン守備位置の名称)が関学大の攻撃専門のクオーターバック(略:QB:攻撃司令塔の名称)選手の無防備状態及び、QBの視覚外の後方からの不意打ち攻撃を仕掛けた超危険度の高い違反行為を行った事に起因しました。

この反則行為を巡る問題は、関学大側のマスメデイアを通してのアピールにより明らかとなり、現在(5月23日時点)社会問題の一つになっている次第です。

近年は、映像機器、情報機器の発達により手軽に撮影記録が可能となり、その映像をソーシャル・ネットワーク・サービス(略:SNS)に投稿して自由に拡散できる時代です。今日のSNSは、良い意味での正義の証拠(エビデンス)が映像音声で残ります。この度の悪質な違反行為は、このような状況から隠し切れなくなったのも事実です。今後は、他大学に於いても常態化している同類の問題も勇気ある内部関係者、一般学生、ご家族のSNSへの投稿がきっかけとなり公開される可能性があります。読者の皆さんは、TVマスメデイアの映像を何度も見ておられると思いますので状況は、既にご承知の通りです。

本件に関しマスメデイアの報道が過熱している現状から、読者の皆さんは、個々の視点と価値観で評価、判断されている事と思います。

今日迄の報道の殆どは、反則行為の現象を中心とした学生選手、日大監督及び指導者達への批判と関西学院大学側の動向に関する周辺話題で、本質的な部分に触れていないのが残念です。これにより、二次、三次的な被害者を醸成する方向に向かっているのが心配です。視聴者、読者の皆さんは、現在のマスメデイアからの表面的な情報では真相を理解し難いのでないでしょうか。

このような事件、事故に対しては、マスメデイアとは異なる冷静沈着な客観的な視点で大局及びその本質を見失わない事を願う次第です。

筆者は、当該大学と酷似、或はそれ以上な信じられない指導者、管理者、経営者の大学及びその法人を存じています。日本の大学競技スポーツの本質的な問題をこれから筆者の体験も加味しながらお伝えできたらと思います。

2.真相究明なく欠席裁判はアンフェア

主催者の義務と責任、

この意味は、注意しなければ取り返しがつかない事が起こり得るという事です。それは、直接的違反行為を行った日大の学生選手は、実行者であります。だからと言って、同学生選手(現在弱い立場)を公正な裁きも提供しないで、全マスコミメデイアは、視聴者、社会、国民に対して偏った映像・情報を繰り返し配信するのは如何なものでしょうか。

本映像を毎日繰り返しレピートすることは、被害者、加害者のみならずアメフトを本当に好きでプレイし、指導している多くの健全な関係者に心理的トラウマを移植する事になりかねませんことを申し添えさせて頂きます。マスメデイアの良識ある対応を期待。

同学生選手には、自らの発言の機会が大学からも主催者からも与えられていません。本競技を主催した関東学連は、加害者学生選手及び、同選手の指導責任者である、デフェンシブコーデイネーター(守備統括管理コーチ)、ヘッドコーチ(監督)、ゲーム担当の審判クルー等への公平中立な事情聴取、審議、結論、等の会見、スケジュールの公式発表にこれ程の日時を要する事への疑問を抱きます。

関東学連は、事故発生後独自のサイトを通じて、複数回「現状について」を発信しているようですが、このような主催者対応の遅れがより一層本件に関しての混乱と社会問題を引き起こし、関係者に苦痛を与えている大きな要因の一つです

現在弱者の立場に居る加害者学生選手をマスメデイアによって、欠席裁判的な報道は、謹んで欲しいと切に願う次第です。

本学生選手には、違反行為を実行した理由と動機がある筈です。

何故、主催者は、本違反行為に対する対応、処置を速やかに取り行ない速やかな情報公開を行わないのでしょうか。此処に本件の大きな問題の隠れたキーの一つがあるように思えてなりません。関東学連は、どのような学閥の大人が運営、管理しているのか誰もが疑問に思わないのも不思議です。

読者の皆さんは、どう推理されていますか。

主催者は、速やかに記者会見を行い、当事者、社会に対する情報公開を行う事が最重要な責務です。本件がこれほど社会問題に発展していることは、主催者にフットボール・アドミニストレイターとしての能力、強いリーダーシップと組織、団体としての危機管理システムが欠落していることから機能不全を起こしていると考えられます。

加害者学生選手にフェアーな発言機会を、

この度の加害者選手には、本来なら所属大学、大学広報、アメフト部長が学生選手をサポートする側で記者会見を設定して事の次第を説明、被害に遭った学生選手、テイーム、大学への謝罪をする機会とセッテイングをするのが健全な大学の姿勢だと思われます。或は、主催者である関東学連の代表者、審判クルーの責任者が同席して、日大の当該学生選手に発言の機会を設けるのが筋だと思われます。しかし、いずれも今日の時点では、行われていません。

 注意News522日午後、日大、加害者学生選手は、日本記者クラブに於いて自身とご家族の自主的な意思“真実を話すことが謝罪の第一歩と考えて”との陳述書を読み上げ、同学生選手側の弁護士同席に寄り質疑応答を行いました。」

また、この度の日大テイームのアメフトコーチングスタッフ、監督には、主催者である関東学連同席に於いて公式な本件に関する記者会見を行う義務と使命がある筈です。日本アメフト協会及び関東学連は、当該指導者達に対するヒアリングを行い、本競技スポーツに対する指導者、管理者としての適性の有無も含めた審査、精査を行い情報公開する事は重要な責務でもあります。

今日この時点に於いても、当該競技団体は、リーダーシップも事の次第の会見、情報公開も行わないのは異常であり、フットボール・アドミニストレイションのレベルの低さを物語る何ものでもありません。

余談:米国の大学競技スポーツ(NCAA=全米大学競技スポーツ協会に加盟登録している競技スポーツの意味)の各種目の指導・管理責任者は、伝統的に大学の競技・スポーツに関係する修士号以上の学位を有する人材が雇用対象となっています。日本の大学競技スポーツでは、如何でしょうか。

3.学連は大人の学閥と片手間利権の寄合か

学連の位置付けと建前論、

大学競技スポーツの学連組織の大義は、「学生達の自治活動として位置付け、学生達が運営、管理をしている」という建前がある事です。

実際は、利害、利権に関わる大人達が大義を隠れ蓑として葛藤を繰り返している団体なのです。本関東学連に於いてのサイトコメントに、「連盟の理事は多くが日中の仕事(本業)を持っている一般の社会人である」と告知しています。この意味は、本業を持っていて連盟の運営、管理を片手間でやっているので作業をする時間がない。と言い訳をしているのです。このような主催者では、本件の対応能力及び処理、解決能力が有ると言い難いす。

即ち大学競技スポーツを運営、管理している、各種競技団体の学連は、大義と矛盾した大人の社会人達が運営、管理しているのです。このような大人達の集団であれ、学生達の自治活動であれ、関東学連は、組織、団体としての問題処理能力を遥かに超えたイベントを運営、管理している事が明らかになったのです。

(この事詳細は、既にKsファイルNO.2933(大学箱根駅伝は誰の物)で具体的に解説させて頂いておりますので是非ご参照ください)。

読者の皆さんの中には、「アメリカンフットボール(略:アメフト)なる競技スポーツを今回の騒ぎで、映像を通して初めて知った」、との方々も多くいらっしゃるのでないかと思います。これを機会に本競技スポーツのバックグラウンド、基礎知識を少し付与させて頂いてから本論に入った方が理解しやすいかと思います。

4.アメフトの特徴と基礎知識

フットボールゲームの発祥とゲームコンセプト

本競技スポーツは、米国を発祥の地としております事を先ずご紹介します。米国に於いては、本競技スポーツを「フットボールFootball」と呼びます。また、サッカーは、Soccer Footballと呼び、ラグビーは、Rugby Footballとそれぞれ呼びます。日本に於いては、「アメリカンフットボールAmerican Football」と呼びます。

米国生まれのフットボールは、どのようなコンセプトでデザインされた競技なのでしょうか。フットボール競技の原型は、陸軍の「戦場の闘い」をコンパクトにして専用スタジアムのフィールド(サイドライン長さ:109.73エンドライン長さ:48.76mの長方形のリング)に持ち込み、守備部隊と攻撃部隊を一つのテイームとして編成し、攻守の部隊が互いに入れ替わり、相手陣地を歩兵部隊が各ヤード単位で前進しながら攻め入る競技なのです。

攻撃陣の歩兵部隊は、相手の守備部隊が強固で崩せない、突破できないと判断した時に初めて、攻撃担当指揮官が、空軍の出動を要請して攻撃司令塔のクオーターバックQB)に、ミサイルロケットに見立てたボールを相手の守備部陣地に投げ込む指令を発し、空中戦に持ち込むのです。

QB選手によりミサイルが相手陣地に投げ込まれる事により、守備部隊が混乱する事態に乗じて、攻撃陣のQBのボールをキャッチすることを任務としたワイドレシーバー(略:WR-走りながら投げられたボールを敵陣地内で受けて走る役目)選手がボールをレシーブしてそのまま相手敵陣地を突撃し、ゴール(タッチダウン)をして勝利を競うといった、いわば“戦争ゲーム”と言えるでしょう。

指導者、管理者の重責と審判クルーの特殊性、

このような特徴の競技スポーツの性格から、ボールゲームの中で最も身体接触の激しい競技であります。

戦場をモデルにデザインされた本競技スポーツは、特に担当コーチ、監督による戦術の選択、決断、指示、決行は、自軍にとって絶対的ライフラインであるので、事は正確且つ遂行あるのみなのです。その為に、決断、指示を出す担当者(指揮官)は、細心の注意を持って自軍の選手に安全でベストな方法を選択するのです。それは、勿論対戦相手の選手へのリスペクトも同様にある事が前提なのです。

これは、他のボールゲームに於いても同様ですが、特にアメフトは、激しい身体接触を特徴としますので、厳しいルールの下にゲームがデザインされています。その為に、競技の迫力も他の競技スポーツを追従させない魅力を有するのです。よって、本競技スポーツは、絶対的な「正義JusticeとフェアネスFairness」をその根幹としています。その為には、競技規則とそれに対する罰則は、詳細且つ明文化し欠かすことのできない唯一無二の存在です。

このルールを公平中立な立場で、競技を進行させる役目は、当日の審判団(クルー)が全権を掌握しています。本審判クルーは、何ものにも影響を受けない強い信念を持って、起きるであろう、あらゆる反則行為に対して、判断し決断そしてジャステイス(正義)のホイッスル(笛)を吹かなければなりません。両対戦校は、この審判クルーの判定に対してリスペクトの心を持って従う公約をしているのです。

5.組織としての対応が不備

学連組織への素朴な疑問、

このような競技スポーツを統括、運営、管理する、主催者(関東学連)は、フットボール・アドミニストレーションを熟知した、強いリーダーにより組織、団体のコンプライアンス、ガバナンスが遂行されているのかどうかです。筆者は、此の程の事態に対し素朴な疑問を持たざるを得なくなった次第です。

本来ならば、当該大学の関西学院大学日本大学は、加盟、所属する関西、関東学生アメフト連盟に先ず提訴する事です。そして関西学連は、速やかに主催者の関東学連と協議し、主催者は関西学連同席で本件の経緯と今後の結論を導く作業スケジュールの情報公開を行う事が先決で不可欠でした。これは既に述べました通り、日本の大学競技スポーツを運営管理する学連組織、団体の大義とその矛盾が、このような事態に於いて機能していないことを証明していると思われます。

この度の関西学院大学、アメフトテイームのアピールの仕方を拝見して、両学連の組織、団体が機能しない団体なので、独自に速やかな対応と行動を決断されたのでないかと推測致します。

両校への御願い、

両校の学生選手達は、希望と夢に輝いた素晴らしい学生選手が沢山居ると思います。その学生達の未来とアメフトを奪う事のないよう両校の大学法人経営、管理責任者、大学教学責任者には、勇気を持って手を差し伸べて頂けることを切にお願いする次第です。この度のフィールドでの事件、事故は、大学内のスポーツ・アドミニストレイションの未熟から来る指導者、管理者の問題であります。学生選手は、本競技スポーツの特性から指導者の指揮命令に従わざるを得ない関係である事をご理解下さい。これにより、選手側の心理状態は、指導者、管理者が十分に理解し、配慮した上で指導、指示を出さなければなりませんことを重ねて申し上げる次第です。

6.時事の動向

519日:日大監督(兼法人常務理事)の動向、

日大内田正人監督兼日大法人常務理事は、関学大へのお詫び行脚の際に「私は辞任します。全ては私の責任です。」と述べたと報道されています。これは、本人が何に対する責任で辞任に結び付けているのか非常に理解が難しいと思われます。このような手法は、現在何一つ真相解明に至っていない中、辞任をチラつかせて全ての問題の本質に触れないとの予防線とも考えられます。

加害者の学生選手、被害者の学生選手に対する真相究明と処分、処置を完了する責任、義務を背負う当該監督としての責任を果される事が職責であり、責務です。辞任は、その後で行うのが常識でないでしょうか。

521日:被害者は、被害届を提出、受理される。

5月22日:日大、加害者選手の自主会見が日本記者クラブで行われました。会見では、陳述書を本人が読み上げ、その後質疑応答があり終了しました。本人、ご家族の勇気ある決意と行動に対して、心より敬意を表します。

筆者は、このような学生選手、ご両親が1人でも多く出て来られる事で、何よりも日本の大学競技スポーツの改善と改革、発展を推進して頂けると確信を持ちました。どうか同じような現状の他大学の学生選手、ご父母には、行動する勇気を本学生選手により頂いたのでないでしょうか。本件の加害者学生選手も真の被害者なのかも知れません。

会見からは、素晴らしい学生選手であると感じました。内容の詳細に付きましてのコメントは、既に被害者から被害届が提出、受理されていますので差し控えさせていただきます。同学生選手は、強い気持ちを持って自主的に真実を述べた正直な自分を褒めて挙げて下さい。天の神様は、きっといつかあなたを許して下さると思います。貴方は、忠実で正直な学生選手(Student Athlete)です。

523日:日大記者会見(内田監督兼人事担当常務理事、井上コーチ出席)

昨日の当該学生選手の陳述書に対する否定会見に終始しました。終了時に井上コーチの辞任を確認した。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sport

お知らせ:本NO.53では、本論に入る前の予備知識を述べました。次回KsファイルNO.54では、問題の本質を正直に述べさせていただきますので、関係者は、何かお役に立つ専門知識でないかと思います。お気を悪くなされないで下さい。

 = お知らせ = 2018年5月20日付

    = お知らせ =    2018520日付

 

K’sファイル読者の皆様へ:

前回NO.52のお知らせでは、次回「NO.53:ハリルホッジ監督の突然の解任に思う」を予定しておりました。しかし、読者の皆様から、アメリカンフットボールの反則問題が社会問題となっているので、専門的な知見をK'sファイルに掲載して欲しい。とのご要望が寄せられております。そこで、次回NO.53から複数回の予定で連載させて頂くことにしました。

どうかご理解とご了解頂けましたら幸甚です。

河田弘道

K'sファイルNO.52:82W杯サッカースペイン大会はビジネスの戦場 無断転載禁止

K'sファイルNO.5282W杯サッカースペイン大会はビジネスの戦場

             無断転載禁止

注:Ksファイルのサッカーシリーズは、20186月開催予定の18W杯サッカーロシア大会を記念して掲載させて頂いております。

PARTⅣ FIFAW杯サッカー利権獲得への決断と実弾

①特命隊長の秘策と実行力

服部庸一氏は、社内の全ての情報を集約させて状況の分析、判断を誤らない為にも、細心の神経を集中され精査したことでしょう。そして、同氏は、ロス五輪で構築したルートからFIFA・W杯の権利保有会社のSMPI社に接近する為の戦略及び戦術を模索し始めたのです。

服部氏は、IOCサマランチ会長しかり、LAOOC84ロス五輪組織委員会)委員長のユベロス氏の動静、既に情報を把握していたP・ユベロス氏とホルスト・ダスラー氏の関係を察知していたので、服部氏は腹心のジミー・福崎氏を同行させてP・ユベロス氏を会食に誘い、電通FIFA 及びW杯サッカーのビジネス権利獲得に苦慮している事をざっくばらんにジミー・福崎さんを通して話した。と筆者は容易に推測します。(K'sファイルNO.51をご参照ください)

そこでP・ユベロス氏の口から出た言葉は、今日のスポーツ電通FIFAサッカー界を手中に収めたキーワードであったと思われます。それらは、P・ユベロス氏は、ホルスト・ダスラー氏とは、信頼関係にある事、そして、P・ユベロス氏は、嘗てAサマランチ氏からの紹介を受けて以来、H・ダスラー氏にスポーツ・マーケテイングビジネスを学び、84ロス五輪大会を成功させるためのアドバイスを得ていた事。とこれは筆者の想像と私見であります。

これにより、P・ユベロス氏は、ホルスト・ダスラー氏の82W杯サッカーでのマーケテイングビジネスのアイデイアとコンセプトを取り入れ、84ロス五輪大会では、民間企業を有効活用する為の経営、及びギャランテイー方式のビジネスコンセプトを独自でクリエイトし、基盤にしたと考えられます。

服部氏は、P・ユベロス氏からの貴重なアドバイス、情報を受け、ホルスト・ダスラー氏を直接紹介してもらう事になったのだと思います。此れに伴い、P・ユベロス氏、ホルスト・ダスラー氏、服部庸一氏(ジミー・福崎氏)のトライアングル(三角州)のビジネスゾーンが形成されるに至ったわけです。

このトライアングルが完成するには、ホルスト・ダスラー氏の電通への確固たる思惑(GIVETAKE)、電通H・ダスラー氏への協力と同氏を電通側に抱き込む(GIVE&TAKE)、P・ユベロス氏のH・ダスラー氏への嘗てのアイデイアへの返礼(TAKE&GIVE)の関係が成り立ち3者が、ハッピー・ビジネスを展開できるシナリオが必要です。これは、服部氏がロサンゼルスに居て初めて確証を得られる作業でもあるのです。

後は、服部氏及びジミー・福崎氏がH・ダスラー氏の本拠地ドイツに飛び、直接的にビジネスマターを確認、確約、その後、W杯スペイン大会の会場に乗り込みH・ダスラー氏の紹介でアベランジェFIFA会長にお目通りし、主だった幹部との会食を経てセレモニーを完了するというシナリオです。

上記シナリオが無事予定通りに進んだ証は、後日公の知る所になった出来事がその全てを裏付ける個々の物語となる次第です。

②スペイン革命の真相

H・ダスラー氏は、1982W杯スペイン大会に於いてかねてから自らが思い描いていたFIFAに於けるマーケテイングビジネスに関し、成果と結果を手に入れた事から更なる野望が沸々と心の内に宿り始めていたのでしょう。

スペイン大会のビジネス成果と結果で、自信を得たH・ダスラー氏は、スポーツマーケティング会社を自ら作ることを決心します。これは、丁度時を同じくして、盟友ユベロス氏から電通の服部庸一氏を紹介された時期であったのです。勿論電通の莫大な投資(実弾)の約束があった証です。

H・ダスラー氏は、パトリック・ナリー氏及びウエスト・ナリー社との連携にこれ以上な発展は今後期待できないと感じていたのです。そこに電通から思わぬコンタクトとオファーを受け、電通との思惑が合致したので、双方は82年W杯スペイン大会開催中に握手をする事になったのです。電通に取っては、逆転満塁ホーマーを演じたのでした。

此れは、服部氏が狙ったストラタジー(戦略)に狂いが無かった事を意味し、本利権獲得戦争を終結した事になったのです。

此れには、P・ユベロス氏とH・ダスラー氏のホットライン会話が重要なコーデイネーター役を演じたと想像します。

これがその後今日まで語り継がれているサッカー界の「スペイン革命」と言われる所以だったのです。即ち、H・ダスラー氏は、パトリック・ナリー氏達から電通に乗り換えたのでした。同氏にとっては、乗りたかった名馬に騎乗する夢が叶ったのです。

これにより、SMPI社は、解体され、ウエスト・ナリー社は、切り捨てられた事によりJ・坂崎氏も無念な思いをされ、博報堂は一瞬にしてビジネスゲームに敗れたのでした。

この時のJ・坂崎氏の心中は、如何なるものであったか、経験した者でなければ計り知れないことだったとお察し申し上げます。筆者も数限りない修羅場を体験しましたので、J・坂崎氏、J・福崎氏両名の心中は、それぞれの立ち位置で大変よく理解致します。二人の日系米国人が、日本のスポーツビジネス界での多大な貢献をされた事を尊敬の念を持って、ご紹介せずにはいられませんでした。お二人の信念とご努力は、日本のスポーツビジネス界の礎となっています。

1983年、電通は、H・ダスラー氏と組んでISL社「International Sports & Leisure社」を設立し、FIFAの関わる重要なイベント全ての広告、マーケテイング権を手中にしたのです。これにより、暫くの間は、ISL社が権力の頂点を極めたのでした。

服部庸一氏を交渉人として起用した電通本社の英断は、P・ユベロス氏を動かし、H・ダスラー氏の心を変革させた電通の度量、即ち莫大なISLへの投資が効果的に偉力を発揮したと思われます。

しかし、1987年にH・ダスラー氏は、突然病死し51歳の若さでこの世を去ったのでした。丁度ヨーロッパサッカー連盟UEFA)のアルテミオ・フランキ会長の交通事故の死から4年後の事で、「フランキの呪い」と呼ぶ人もいます。

H・ダスラー氏亡き後、ISL社は、財政難に陥ったこともあり、電通は、早期にISLに見切りをつけ独自に「FIFAとの間で新組織を設立」、全権利を担保して今日に至っているのです。電通の敏速な決断は、電通ISLに関してのリスクを最小限に抑える事であったと思われます。

これで電通は、世界最大のスポーツイベント・ビジネスのオリンピック(IOC)と世界最大のサッカービジネスのFIFAIAAF国際陸上競技連盟)の世界陸上と全てのメジャー競技スポーツの利権を獲得して、現在世界のスポーツビジネスを席巻しているのです。

④戦い終えて

博報堂

博報堂は、W杯サッカーから静かな撤退を余儀なくされました。

19933月、Jリーグ開幕に向けた広告代理店は、博報堂と言われ華々しく開幕しましたが、開幕後、博報堂の関与は徐々に影が薄れ、Jリーグの勢いも当時の予想と異なる方向に向かい今日に至っている次第です。

しかし、電通は、公益財団法人・日本サッカー協会(略:JFAJapan Football Association)と2007年にJFAのオフィシャル広告代店として8年契約を結び、近年2015年に契約を更新しています。これにより、JFAの財政は、飛躍的な改善を遂げ4年間に二度もの高額な外国人監督を招聘、解任、解雇するようなサッカー・アドミニストレーションが出来るようになっているのが現状です。

電通は、FIFAのオフィシャル広告代理店であり、JFAのオフィシャル広告代理店でもある事を忘れてはなりません。

K’sファイルNO.2933.では、「大学箱根駅伝は誰の物」でサッポロビールの広告代理店として、博報堂をご紹介しました。博報堂のスポーツ界への復活は、今後の日本のスポーツ界の活性化と発展に無くてはならない貴重な存在と起爆剤なので期待しています。 

当時の博報堂電通の違いは、「サラリーマン気質の企業体質(此処では上司の指示通り動く意味)と個性派プロ集団企業体質(社内外での敵と戦う、戦闘集団の意味)との違いでないか、と筆者は感じていました。

博報堂に必要なのは、求心力と洞察力を持った実戦経験豊かな経営者とカリスマを持ったアグレッシブな人材(プロデユーサー)であると思います。また、近年構築された博報堂、大広、読売広告連合「博報堂DY」へのパワーアップと新しいイメージの新社名で、ワールド・ワイドに打って出るプラニングとリスクマネージメントが生き残りをかけたこれからの源となるのではと思います。

筆者の経験則から、斜陽する会社・企業、組織・団体の共通した問題は、「次世代の人材の確保を怠ったか」、「頂点の最高経営者(CEOの取り巻き役員達)の企業、組織のビジネスアドミニストレーションのコンセプトが内向きか」、現状に甘んじて「次世代へのアグレッシブな改善、改革を怠ったか」、或は、「その両方」が最大の原因であると思います。

また、「経営者、管理者が独裁的である企業、組織・団体」は、組織内の有能な人材が牙を抜かれポチ化し、既に組織全体の活力が失せて手が付けられない事態となっています。独裁者が居なくなった後は、崩壊するシナリオが既に出来ている事が世の常であることをお忘れなく。此れでは、優秀な人材の芽が潰されるだけです。読者の皆さんの所属されている企業、組織・団体は、大丈夫ですか。

アデイダス社

強烈なスポーツ界のボス、ホルスト・ダスラー氏を失ったアデイダス社は、求心力を失い後継者を巡っての迷走が暫く続いたことにより、一時期経営権がフランス人の投資家に移行するなど混乱期を迎えたために、新興勢力のナイキ社に世界のマーケットセアーでは、大きく水をあけられてしまいました。

ISL

ホルスト・ダスラー氏亡き後のISL社は、電通の撤退後2001年に破綻しました。この後、電通は、サッカープロジェクトの最終段階の仕上げに入るのです。それは、予てよりホルス・ダスラー氏がFIFA内に子飼いのブラッター氏を潜入させ、要職に就けてあった種子が発芽し、ブラッター氏はアベランジェ前会長を引き継ぎFIFA会長の席を獲得したのでした。ブラッター氏の粘り腰には、はなはだ驚嘆するのみです。

電通は、FIFAのオフィシャル代理店として直接契約を結び、誰も介入させないビジネスコンセプトを完成したのです。

これは、「電通方式」と言われ、電通IOCとの間で取り行った形態で、「第三者の介入を許さない」強烈なビジネスコンセプトを最後に完成させたのでした。この方式は、電通の企業理念でもあったのです。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sport

 お知らせ:K’sファイルNO.49、50、51、52と世界のサッカービジネスの舞台裏をご紹介致しましたが、如何でしたでしょうか。次回は、引き続きサッカーの話題として、「ハリルホジッチ監督の突然の解雇に思う」をテーマに、筆者の独断と偏見をお許し頂きスポーツ・アドミニストレイターの視点で述べさせて頂くことを予定しております。