河田弘道の素朴な疑問(第二話):桑田真澄投手(元東京読売巨人軍)

河田弘道の素朴な疑問(第二話):桑田真澄投手(元東京読売巨人軍

第二話:プロ指導者の現状と問題

  注:第一話:素朴な疑問、第二話:プロ指導者の現状と問題、

               第三話:貴重な戦力 としての桑田氏

 

    プロ野球界には、指導者たる人材の養成、育成に寄与する機関やシステムが無く、これらがまた選手達のセカンドキャリアにも大きく影響している一因であると思われます(選手会の虚弱体質)。此処での指導は、我が国の伝統的な指導方法が今なお継承され、非科学的な指導方法から抜け出せない状況でもあります。

 私が東京読売巨人軍に在籍していました初年度(1994年)、桑田真澄投手から現場スタッフ、フロントスタッフを通じて、報告が上がって来たのを鮮明に記憶しております。それは、東京ドームのロッカールームで喫煙をする選手達が多く居て、非喫煙選手がマイノリテイー〔少数派〕となっている事に対するクレームでした。それは、喫煙者と非喫煙者のロッカーを分離して欲しいとの訴えでした。グローバルなスポーツ社会に於いては、ロッカールームは禁煙が常識であったので管理状態に驚き、即対応をフロント担当者に指示したのが昨日のようです。桑田選手は、このように当時より健康管理に他の誰よも真剣に取り組んでいました。このようなことからも、彼は、如何に自己の健康管理に気配りを怠らなかったかが理解できるのでないでしょうか。

 

  日本の伝統的な競技スポーツの指導法の特徴は、「消去法」と言われるものです。これは、主にスポーツ医科学的な根拠を伴わない、例えば、元々身体能力が強靭で、精神力も群を抜き、いかなる精神的、肉体的な「しごき(トレーニングではない)」にも耐えられる選手だけが勝ち残れる、いわゆる精神主義的、経験主義的な指導方法を意味しています。特に本指導法は、指導者側、選手側双方に練習をやったという満足感を満たす為の質より量の練習が主体となっているのも特徴の一つです(悪例:1000本ノック、200300球の投げ込みを美化、等)。これらは、まさに「弱きものは、去れ!」を指導の根幹とし、サバイバル指導法とも揶揄(やゆ)されているのです。アメリカ型のコーチング理論の「個人の得意な潜在能力を導き出す」とは相反するのです。

  国内最大のスポーツエンターテイメントは、やはりプロ野球でしょう。そして、そこには、プロ野球選手を夢見て日々トレーニングに励む若者達がいます。

 現在NPB(日本プロ野球機構)は、元プロ野球選手に対して数日の研修を受講させる事により、教育機関での指導を安易に容認していますが、これは教育界の競技スポーツを教育の一環、延長線上である事を理解できていない誤った許認可制度の構築に他ならないと思いますが如何でしょうか。或は、文科省は、教育機関の競技スポーツ指導者は教育者としての資格は必要としていないのか。これでは、益々学校教育から競技スポーツが異なる趣旨・目的の方向に独り歩きをして行ってもよいと考えているのでしょうか。

 プロ野球の底辺を支える教育界での指導者達には、多くの夢見る若者達に模範となる、また使命感を持ったポジテイブな指導、運営、管理者で在って欲しいと願います。その為には、教育者としての専門的な知識とそれに伴う実践力をしっかりと身に着けたうえで、指導して頂きたいと願う次第です。

  プロ野球選手の多くは、現場の監督、コーチ達に「怒鳴られ、時として精神的、肉体的な暴力を受けなければ」耳を傾け、言う事を聞かない選手達が多く居るのも現実です。幼い頃選手達は、最初は野球(競技スポーツ)に興味を抱き、好きで始めたのです。しかし、この純粋な子供達は、大人の指導者達それぞれの思惑により、楽しかったはずの練習がやらされているという苦痛な練習に変形し、それが身に沁みついてしまったのです。

 プロの指導者達は、自分達も幼い頃から指導者に怒鳴られ、やらされてきた経験から指導者は、怒鳴り、叱るのも仕事のように思い込み、美化されているのです。このことからも、プロ球界の指導者達は、「怒鳴らない、怒らない指導者」は良い指導者と認めないという馬鹿げた風習と慣習が罷り通るプロ野球の現場である事も悲しい現実です。このような環境と現実から、陰湿な精神的、肉体的暴力指導が絶えない事もまた寂しい事実であります。指導者の上下間に於いてもこれまた同じような事が起きているのです。これらは、果して日本最大のプロ競技スポーツの集団とその組織・団体に於ける指導体制と言えるのでしょうか。桑田氏は、この指導法を否定している一人のようです。

  これらの根源は、我が国の教育の在り方、スポーツへの考えと取り組み方、指導に於けるテイーチングとコーチングの抜本的な違いと在り方、等の悪しき伝統を改善、改革される事無く今なお継承しているからだと思います。

 このような問題は、文部科学省スポーツ庁が率先して競技スポーツの指導体系とその指針を明文化し、各レベルに応じたマニフェストを先ず告知するべきです。そして各省庁にそれぞれの専門家が居るのであれば、その専門家は、現実に即した体質改善と制度の改善、改革を早急に取り組み、スポーツ振興、推進をただ形骸化するのでなく、実践、実行する事が先決であると私は思います。これらは、部活云々を議論する以前の問題であると思いますが如何でしょうか。

                               文責:河田弘道

注:次週は、第三話:貴重な戦力としての桑田氏、を掲載予定