NO.32 河田弘道の素朴な疑問:大学箱根駅伝は誰の物?PART Ⅳ.

NO.32 河田弘道の素朴な疑問:大学箱根駅伝は誰の物?PART Ⅳ.

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 注:多くの読者の皆様のご要望にお応えできますれば幸甚です。今回I、次回1231日にⅡをNO.33として掲載を予定させて頂きます。

 Ⅰ.もう一つの大学箱根駅伝の素朴な疑問~

 1.大学と箱根駅伝

大学内に於ける部活の歴史と現実、

BLOGでは、「大学の経営、教育の理念に付いて」の是非を論議する場でない事を最初に申し上げます。

    日本の大学に於ける部活は、1900年前半から学生達の余暇活動、課外活動を経て学生達の自治組織が認められたのです。そして、今日まで昔ながらの学生による自治活動と位置付けられて活動しているのです。この自治組織、自治活動は、時代と共に大学及び周辺の関係者の利害と利権の温床と化し、伝統的な大学程、大学、法人側と各部卒業生との間での権力闘争があるのも事実です。しかし、実質的には、各大学共に専任教授を各部の長として配置し、部活の運営、管理が行われています。部活の運営費は、部費の徴収、大学側からの学友会費(全学生の学友会費から)分担金、各部のOBOG会からの寄付金により賄われているのが実態です。

   近年各大学は、教育とは異なる目的で大学競技スポーツをリードする傾向が目立っています。大学の売名行為に一役を担い、受験生の増加による増収にも貢献している実態も見逃せません。このような実態は、もう既にマスメデアに於いても紹介された記憶が蘇ります。

  それは、近年ある大学の新入生が突然山の神となり優勝、翌年も、その翌年も4年目もと神がかり的な連続優勝を果たしたのです。この大学は、外国人の手を借りず全員日本人選手の努力の賜物として称賛されました。この新人選手の活躍でその年の受験者数が通年より平均10000人、それも4年間その数を維持したようです。これ即ち、経営者側に致しますと、今日の受験生一人の受験料は、35,000円ですから毎年受験料が、35千万円収入が増加、それも4年間と他大学が箱根駅伝に力を入れるのも理解できます。しかし、逆に長年連続出場していた伝統校は、シード、予選共に逃したため、受験生が10,000人激減したと嘆いている大学もあるようです。

   各大学は、強化競技スポーツ部を幾つかに絞り、学生達には公表しない特別強化費と称して、大学法人から直接的に特定の強化部に対して投入している事も事実です。

    大学競技スポーツに力を入れている大学では、特別強化費と称して「年間1億円から5億円」レンジでの投資をしています。この金額は、大学の規模に関わらず、平均的には22.5億円が投入されています。このような投資は、何の目的の為に行っているかは、もう読者の皆さんは御承知の筈です。最終的にどのようにして回収する目安を付けているのか大変興味深い日本の大学経営のマネ―メント手法でもあります。これは、決して教育が目的でない事だけは、確かなようです。

   しかし、このような毎年の部活への投資の殆どは、成果と結果を出すためのマネージメント手法が計画的、実践的でない為、無駄な投資となっているのが現実です。まさか文科省からの私学助成金補助金が当てられていない事を願う次第です。

   近年に於いての大学経営は、会社、企業の論理と酷似して来ています。その要因としましては、大学法人の経理担当者(大学の主要取引銀行から)、事務局長、大学教学の事務局長、人事部長、職員に企業からの転職部隊が横行していることです。教育現場に於きましては、人件費の圧縮が目的で、講義授業については学部共通科目を増やし、卒業単位に加味する手法、ゼミ演習、卒業論文演習は選択科目とし、専任教員、非常勤教員のコマ数を減らす手法です。まさに経営の生死を掛けた企業論理の導入であり、全てのしわ寄せが学生に及んでいるのが現状です。このような大学に文科省は、何故助成金補助金国税を流し込む必要性があるのでしょう。

   今日では、大学に陸上競技部も設置しないでいきなり駅伝部を施設し、キャンパス内に宿泊施設ビルを建て、ビルの一階にはコンビニエンスストア―まで入居させるありさまです。学生選手をかき集める手段の一つとしている大学が増えているのも現実です。 多くのこのような大学は、教育とは名ばかりであるのはご推察の通りです。此処に於いても、箱根駅伝主催者と同様な何でもありの無責任なスポーツ・アドミニストレーションが大学キャンパスにまで及んでいる事をご想像下さい。

このような経営者、大学教学統括責任は、いったい何を競技スポーツに期待しているのでしょうか。私は、某大学の学長氏にお伺いした時に、目的の中の最後の項目を聴き、まさしくそれが経営者、管理者の目する事を実践されている事を確認した次第です。勿論、この項目は、門外不出です。読者の皆様は、多分今回のこのBLOGが終了する以前に察しがつくかと思われます。

 2.大学と箱根駅伝主催者との関係:

 不明瞭な現金の受け渡し、

 近年の大学競技スポーツは、学生達の自治運営活動でなく、大学と法人の大人の都合による学生集めの広告塔と化し、受験料、授業料を運ぶ集金マシーンのツールと化しているように思えてなりません。特に各大学法人が特定する強化競技スポーツに顕著にみられる特徴です。

  大学は、関東学生陸上競技連盟が主催する陸上競技大会に出場する為に関東学連に所属しなければなりません。箱根駅伝競技大会は、その競技大会の一つです。関東学連は、全加盟大学から加盟登録料を徴収している任意団体です。

  此処で素朴な疑問として、箱根駅伝主催者の関東学連は、近年出場権を得た20校に対して各大学個々に毎年2,000,000円(以前は1,500,000円)支給しているのです。勿論、本件に付きましても、主催者には、情報公開の義務がないので大学と主催者の間での閉ざされた取引で、大学側も一切公開していません。

 本金額は、合計しますと毎年40,000,000円となりますが、支給側、受給側、双方でどのような名目処理がなされているのでしょうか。主催者側は、何らかの名目で箱根駅伝出場20校に対してだけでも利益を還元しているとの証を残したいのかも知れません。しかし、これでは、学生選手及び学連生、バランテイーア学生達への還元になっていません。何故主催者、大学双方は、本件を公にしても差し支えないと思いますが、しないのでしょうか。

  また、これは、信じがたい話ですが、出場校に対して主催者、スポンサーからサッポロビール黒ラベル缶が段ボールで学生選手の合宿所に届けられるとの事を聴き、唖然とした次第です。多分これは、何の他意もなくスポンサーがアルコールの会社、企業なので軽い気持ちで宣伝を兼ねて、祝勝会、残念会、ご苦労さん会で飲んで下さいという意味だと理解したいです。しかし、合宿所には、大学生、未成年学生達が居る事、またその未成年者がアルコールを手にする事を何故、主催者、スポンサー企業、大学関係者は、配慮し止めないのか。

 もうただただ、関係者達の大人の良識、見識を疑わざるを得ないのです。

  当然の事ながら、未成年学生選手のユニフォームの胸には、BIBナンバー(ゼッケン)にアルコールスポンサーのロゴを付けさせて14時間もテレビの生中継で露出、また主催者名で告知される全ての出版物の選手のユニフォーム写真には、スポンサー名と共に商品名も掲載されています。主催者規約には、学生選手の肖像権は関東学連に帰属されています。しかし、未成年学生がアルコールの広告塔になる了解は、何処にも明記されていません。

 学生選手達をアルコールの広告塔として利用する事の非常識さもさることながら、この状態を長い年月において教育機関の教育者、指導者、経営者の誰もが指摘、止めない、この現実と見識は、如何なものでしょうか。このような関係者と一般社会の常識は、異なるのかも知れません。

  ご存知の通り、わが国の法律では、未成年者の飲酒喫煙は禁止されています。勿論大学キャンパスに於ける飲酒喫煙は、殆どの大学で厳しく取り締まっている筈なのですが・・・。先進国に於いて、特に学生選手が出場する競技スポーツ大会では、アルコール、たばこの企業スポンサーは御法度であります。これは、青少年の心身の健康管理が何よりも優先するからです。此のことからも、大学競技スポーツのアドミニストレーションが遅れている大学、国と称されても仕方のないレベルなのかも知れません。日本国に於ける大学競技スポーツを取り巻く関係者は、もう少し高い志を持ってサポートする品格も必要ではと思われます。

 特記事項:

筆者は、大学で教授職を賜りスポーツ・アドミニストレーション論の講義授業、付帯専門ゼミを指導致して参りました。大学競技スポーツのスポンサーシップに関する講義、ゼミに於いて、本箱根駅伝のスポンサーが何故アルコールの会社なのか受講生に説明できませんでした。そこで、私は担当教授として、本件に付きましてサッポロビール株式会社の広告宣伝担当統括専務氏宛に質問の書簡を大学名、学部名、担当教授名、講義授業、ゼミ演習科目名を明記して発送致しました。内容は、「御社は、大学箱根駅伝の冠スポンサーとしてサポートされています。付きましては、大学競技スポーツへのスポンサーとしての趣旨、目的をお聞かせください。また、アルコール商品の広告宣伝を何故学生選手に強いるのかも合わせてご説明頂ければ幸甚です。小職は、講義授業、ゼミで説明がつかないので苦慮している次第です」とお願い致した次第です。しかし、残念ながら同統括専務氏からの返信は、8年経過した現在もございません。此処に皆様にご紹介させて頂きます。

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレーター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

 注:多くの読者の皆様のご要望にお応えできますれば幸甚です。次回1231日にⅡをNO.33として掲載を予定致しております。ご愛読有難うございます。箱根駅伝を応援しながら、本BLOGを思い出して頂ければ幸いです。

 *次回NO.33は、大学と学生選手の関係、大学のリクルート活動、学生選手からの条件、等に付いて予定しております。腰を抜かさないで下さいね!