K’sファイルNO.37:この度のFA問題は両球団の談合かPARTⅡ. ~コミッショナー・NPBは職責を果たしなさい~

K’sファイルNO.37:この度のFA問題は両球団の談合かPARTⅡ.

                  ~コミッショナーNPBは職責を果たしなさい~      無断転載禁止

*本NO.37は、前回のNO.36を掲載しました1月24日に書かれたもので、長文となりましたのでPARTⅠ.とPARTⅡ.として掲載させて頂きました。

2.コミッショナーNPBは職責を果たしなさい~

野球協約の遵守は関係者の使命:

ここで大きな問題は、指名された超ベテランの岩瀬投手が野球協約を理解できていなかったとは考えにくい事です。通常選手は、プロ野球球団と最初に契約する時に必ず署名、捺印しなればならないのが「統一契約書」です。統一契約書は、日本プロ野球機構(NPB)が発行した球団、選手、NPB間の約束事、会社法人の定款に当たるものです。日本のプロ野球では、この統一契約書は、選手にとって読むのも煩わしい代物(虫メガネが必要な文字)ですので殆どの選手は、読まないのでないかと思います。また、実質は、形骸化された状態でただ署名、捺印の選手が殆どです。選手にとって大事なのは、別の用紙に書かれている数字と保証の担保なのです(主に球団と選手間のサイドレターとも呼ぶ)。

 メジャーリーグ(略:MLB)は、各選手が専属の代理人Agent)を擁しているので選手は、難しい協約、規則、等に付いては代理人に任せておけばよいのです。しかし、NPBに所属する選手は、代理人を使うと球団側(経営者)に嫌われるので使用しない、できないのが現実です(外国人は使用)。このようなFA問題に於いても、代理人が居ない弊害が選手側にとっては、マイナスになるのです。岩瀬投手は、自分は球団に於いては一商品である事の理解と認識ができていなかったのか、所属する球団の統括責任者が野球協約を球団内に於いて遵守・遂行するに至らなかった事実です。(岩瀬投手が同球団に如何に貢献したか云々は、プロ選手の売買に於いては問題外、球団が必要選手として認めているなら、日ハム球団に提出するプロテクト選手リストの中に何故入れて置かなかったかが、本件のキーワード)

 これにより日ハム球団は、中日球団に貸しを作り、中日球団は、日ハム球団に大きな借りが出来たわけです。この貸し借りは、既に両球団間において金銭にて相殺をされたのか、或は、いまだに貸し借り状態にあり、将来どのような方法と手段でこの相殺を行うのかが大きな問題なのです。

本件に関しては、経緯と結論を両球団及びNPBは、明快に情報公開をしなければ更なる疑惑と疑念をファンと社会に残したままシーズンに入る事となります。この貸し借りは、明らかにして於かなければ、痛くない腹まで探られる事になるのです。それは、シーズンに入ると交流戦が組まれている事です。本件は、軽くファンの目を欺く一件ではない事を肝に銘ずるべきです。このような事が次なる不祥事に発展するのです。このような場合は、NPBが両球団に指導的な立場でリーダーシップを取り、社会やファンの疑念を払拭する事がNPB担当部署、コミッショナーの責務です。

 これが事実となれば、中日球団のみならず、日ハム球団自らも協約破りとして同罪です。MLBに於いては、同様な事が発覚すれば、厳罰がコミッショナーにより下されます。

岩瀬投手が事実、「拒否」したのであるならば、これは完全なる協約違反として処罰対象選手となり得ます。本来は、NPB協約の下で運営、管理している両プロ野球球団として、対象選手が「移籍拒否」の回答をした時点で、協約発行元のNPBに両球団から報告があってしかるべき事項でした。

 嘗て、類似した問題で、社会的な問題を引き起こした事例は皆さんのご記憶に新しいと思います。それは、江川卓投手(当時法政大学)、菅野智之投手(当時東海大学)がドラフトにより自身が希望する東京読売巨人軍にではなく、他球団が指名権を獲得した為に、両投手は、入団拒否を行使したのでした。これにより、ドラフト制度の根幹を揺るがし、その意義が問われました。しかし、ドラフト制度を運営、管理する立場にある日本プロ野球コミッショナーNPBは、協約の趣旨と目的を貫かなかった為に今日も尚グレーな状態をキャリーしているのは、ご存知の通りです。野球協約の趣旨、目的が貫かれないのでは、ルールブックと呼ばずダークブックと呼ばれても仕方ありません。

 この度の中日球団、及び岩瀬投手は、FA制度をリスペクトしない行為であり、此の行為をコミッショナーNPBが見て見ぬふりをするのであれば、嘗てのドラフト制度を蔑ろにした江川投手、菅野投手と東京読売巨人軍の行った行為を容認するに等しい行為と言わざるを得なと思います。これは、今後次なる協約破りが発生し、協約自身が骨抜きとなるのです。読者の皆さんは、どうお考えになりますか。

彼らは、自ら野球協約を遵守する立場にありながら、それを利害、利権を共有する両球団の間で違反し、その事実を隠蔽したと言われても仕方のない行為をしたのです。

 コミッショナー及びNPBの業務は何か:

 東京スポーツ新聞社の報道によりますと、NPBは、「当該球団から問題として提起されないので調査に動き出すのはおかしい」とのコメントを出しているようですが、これは、協約を発行し運営、管理を行う立場のコミッショナーNPBがコメントする内容としては誠にお粗末極まりないと思われます。コミッショナー及びNPBの職員は、どのような専門知識とスキルを持った人材が雇用されているのか、その能力の有無及び倫理規定を是非情報公開して頂きたいです。

NPBは、何故東京スポーツに掲載され報道されている内容が真実かどうか、同社及び、該当球団に能動的に回答を求めようとしないのか。何も行動を起こさない受動的な態度のNPBの姿勢は、法人としての業務放棄か職務怠慢以外の何ものでもないと考えられます。もし、東京スポーツの報道が事実でないなら、調査の結果としてそれなりの法的な措置、及びペナルテイーを科すべき事案であります。現時点では、当事者の当該球団がこの重大な問題に対する公式な見解を国民、社会、ファンに告知していない事も重大な職務怠慢であると考えられます。 

このままでは、NPB、並びにコミッショナーオフィスがおかしいだけでなく、NPBは、野球協約に対するプロトコールの役目も運営、管理責任も果たしていないのと同じです。協約の運営、管理は、何処の誰に責務があるのか。何故、コミッショナー権限で調査に入り、社会、ファンに対して情報を公開しないのか。何故特定のスポーツ紙のみで、他社は、話題にしない、或はできないのか。これは、まさに談合文化と呼ばれる日本の競技スポーツ組織・団体、機関の体質そのものであり、悪しき伝統に思えるのは私だけでしょうか。

本件は、何か問題を隠蔽しているように感じてなりません。初歩的な問題で、日本ハム球団は、最初に何故人的補償で岩瀬投手を指名した事を告知しなかったのか。秘密裏に中日と交渉する理由は、全く無かったはずです。或は、他に目的があったので蓋をしてテーブルの下の会話に持ち込んだのか。また中日球団は、日本ハム球団から人的補償で岩瀬投手が指名された事を告知する義務があったのです。

両球団により、この情報公開がなされなかった時点でコンプライアンス義務を果たしていない事を証明していると思います。NPBコミッショナーは、プロ野球機構が発行する協約の発行者として、国民、社会、ファンに事の次第を明快にする義務があると思います。

このような問題が生じた場合は、野球協約を運営、管理しているNPBが、事実の有無を問わず強制的に当該球団に対して事実の報告を要求し、選手側は、自身が所属する選手会を通じて自身の意思及び問題を速やかに提訴する、できるシステムを構築して置くべきです。これは、重要なベースボール・アドミニストレーションの基本の一つです。

NPB(日本プロ野球機構)は、大学箱根駅伝を主催する関東学生陸上競技連盟のような任意団体とは異なる事を再認識して頂き、プロフェッショナルな意識を持って業務に取り組んで頂けることを願う次第です。

 NPBの構造的問題とシステムの欠如:

このような状況下に於ける、コミッショナーNPBは、組織内にインフラクション・コミテイー(Infraction Committee)を設置していない事が問われていると思われます。インフラクション・コミテイー(特捜部門)は、本件のようなNPBに於ける協約・規則に該当する諸般の重要な案件、問題が発生した場合、或は、発生しそうな場合に置いてコミッショナー権限の下、本コミテイーに調査権限を委託し、短期間に的確な事実関係の資料、エビデンス(証拠)を収集し結論を導き出す、専門家集団なのです。NPBが本機関を設置しない根拠は、プロ野球界の談合文化を維持する事が関係球団の暗黙の総意なのかも知れません。

わが国のプロ野球機構(NPB)には、本機関をコミッショナーの直轄機関として設置していないので、ドラフト制度、FA制度、裏金問題、賭博問題、等々の重要な案件、問題が生じてもいつも結論が出ない、出さずにグレーのまま収束を迎えているのです。これらの談合手法を改めない限り日本のプロ野球界には、真のJUSTICE(正義)とFAIRNESS(公平・公正)を基軸としたプロフェッショナルな組織・団体は期待できないかも知れません。

現在のプロ野球選手会は、選手を代表する組織団体としての体を成していない、このような問題に対しても球団経営者側、NPB側とのパワーバランスが取れていない事も大きな問題であります。しかし、ファンの皆様は、自身の心に強い正義と公平・公正の意識を持たれ、強い発言権を得る事により、皆さんのプロ野球野球協約、そして真に必要なベースボール・アドミニストレーターコミッショナー)を変革できる事を忘れず、諦めないで下さい。此のままでの発展は、困難です。

共存共栄の原理原則は、プロ野球を支えるファンとその社会に還元される事が大事なのです。

 文責:河田弘道

ベースボール・アドミニストレーター

スポーツ・アドミニストレーター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

K'sファイルが関係者、関係機関、組織・団体、及び読者の皆さんに微力ながら問題提起となっていますなら幸いです。いつもながらの心強いご感想、書評を頂きまして感謝致しております。