K'sファイルNO.55:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事 無断転載禁止

K'sファイルNO.55:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事

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 PARTⅢ緊急特別寄稿:大学競技スポーツの本質的な問題

1.大学競技スポーツは教育の一環なのか否か

①大学競技スポーツの趣旨、目的は何か?

教育機関に於ける大学競技スポーツの本質的な問題の根源は、大学競技スポーツが教育の一環、延長線上なのか否かかが明確に宣言され明文化なされていないことです。

これにより各大学教育機関の教学管理者、法人経営者は、自分たちに都合よく解釈され教育本来の趣旨、目的とは異なる方向に大学競技スポーツが利用、活用されていることです。もし、大学競技スポーツが、教育の一環であると明記してあるなら、この度のアメフト問題は、これほどの社会問題にまで発展していない可能性が高かったと確信しております。

何故ならば、大学教育機関としての法人は、教育の一環に相応しい指導者、運営、管理者を採用、雇用しなければ義務に反するからです。しかし、これは日大だけの問題ではなく、大多数の大学は、同様な採用、雇用状態が現実です。この事実から、それでは、本件の問題の本質を改善、解決しない限り、アメフト問題のみならず、各大学競技スポーツに多発している事件、事故を防ぐことは難しいと思います。

筆者が驚いた事は、我が国の教育機関の基軸をなしているはずの「教育基本法スポーツ基本法20116月に施行)」に、A) 学生及び学生選手とは、何を持って認めるかの定義が明記されていないのです。また、B) 大学競技スポーツは、教育の一環である事が明記されていないのです

これは、我が国独特な社会慣習で、「そんなこと書き物にしなくても判っているだろう」と、これが重大な問題の起因となっているのです。要するに、判っていないから教育的な指導を逸脱するのです。約束事は、違反した場合の罰則をも明文化して関係者が遵守して初めて共存共栄のフェアーな大学教育社会が成立するのです。これが人と人の約束事を書き物に残す契約書の役割の重要性なのです。

この度の問題は、各大学の競技スポーツが何の為に存在し、活動を行っているのかの趣旨、目的が個々それぞれの大学において異なって理解、解釈され運営、管理がなされている点を浮き彫りにしました。そして我が国に必要なのは、日本の全大学競技スポーツを統括、運営、管理する為の共通となるルールブックが無いことを日本社会に本事件を持って問題提議したのだと思います。

個々の大学に於いて、「我が大学は、文武両道の精神に則り云々」を掲げている大学もあります。しかし、残念ながらこのようなお題目を唱えている大学の殆どが「建前と本音」の二刀流の運営、管理をしているのです。建前と本音を教育機関のキャンパスに持ち込む事は、「真実と嘘」を混同して教育するに等しいと思えてなりません。読者の皆さんは、大学教育に建前と本音が必要と思われますか。

②筆者がリスペクトする大学競技スポーツ、学生選手の重要項目

筆者が考えるところの、本来大学及び大学競技スポーツに必要な重要項目を列記させて頂きます。 

大学の意義とその目的:

1.最高の学問と教養を身に付ける場である。

2.高度な専門知識と技術(スキル)を身に付ける場である。

3.人間形成の場である。

4.その他。

大学競技スポーツの意義とその目的:

1.大学競技スポーツは、全学生、教職員、同窓生、地域社会の代表である。

2.大学競技スポーツは、大学関係者とその社会の心を1つにまとめるパワフルな唯一のツール(道具)である。

3.大学競技スポーツは、これら全関係者に対して還元されるものであらねばならない。

4.大学競技スポーツは、大学の士気高揚に大きく貢献しなければならない。

5.大学競技スポーツは、大学の広報宣伝活動の最先端を担い母校の名誉と伝統とそのパワーを内外に知らしめる重要な役割を担っている。

6.大学競技スポーツは、アカデミックと競技(文武両道)の原則を維持する。

大学競技スポーツの本質:

1.大学競技スポーツは、大学教育の一環である。

2.大学競技スポーツは、「フェアネス」をその基本精神とする。

3.大学競技スポーツは、関係者によって作成されたルールを遵守する。

4.大学競技スポーツは、運営・管理を大学キャンパス内で行う。

5.大学競技スポーツは、ホーム&アウエイ方式で行う。

6.大学競技スポーツは、学業と競技スポーツの両立を本文とする。

大学生選手の使命:

1.学生選手は、所属大学を代表する母校の伝統と名誉にかけて最高の能力を発揮することを使命とする。

2.学生選手は、全学生の模範となり競技スポーツの代表として大学対抗戦に出場するものとする。

大学生選手の目的・目標:

1.自らの能力と向上とその限界を試す。

2.人間関係の協調性と社会性を学び養う。

3.愛好心(スクールスピリット)と連帯感(和)を学び養う。

4.心技学体のバランスを学び養う。

以上、如何でしたでしょうか。これらは、筆者の日米大学での経験から日本の大学競技スポーツに必要且つ、骨格となるべき項目と確信致しております。大学競技スポーツは、運営、管理に於いて全ての大学が共通のルールブックの下で競技を行うだけでなく、競技以外の規則、ルール、罰則も共通のルールブックの下に関係者がリスペクトし、遵守することが大前提なのです。

大学競技スポーツは、現在の学生連盟、組織が、本来の学生達の運営、管理でなく大人達の利権組織、団体化しているので本来なら、文科省の指導により、解体して適切な個々の競技スポーツの組織、団体に改編する事が急務であると思います。

そして各競技種目別の組織、団体は、日本の大学競技スポーツを統括、運営、管理する組織、団体の下でスポーツ・アドミニストレーションが行われる事が望まれます。

しかし、各種目の学生連盟、組織は、伝統に培われ、各大学卒業生、社会人達の利害、利権となっていると同時に少し商品価値が見られる競技スポーツの学連には、企業、新聞、テレビ、広告代理店、等の複雑な利権構造となっているので、よほどドラステイックな改変、移行が行われない限り、100年経っても抗争が絶えないのでないかと思われます。改革遂行には、問題を乗り切る以上の覚悟と実行力が必要です。

2.問題に正面から取り組まない文科省スポーツ庁)の罪

日大アメフト問題は氷山の一角

大学競技スポーツは、筆者が存じている範囲でも大半の大学が同じ現実と環境の中で経営、指導、管理がなされています。また、指導者が、体罰と称する暴力を用いる事が絶えない現実も読者のみなさんはご承知の通りです。

Ksファイルに既にご紹介しましたが、某大学に於いては、年間700件もの暴力、体罰、ハラスメント、等が学内で行われている大学(当時の朝日新聞朝刊の取材調査記事より)もあります。このような大学に対して、マスメデイアは、何故事実を国民、社会に公表しないで、美化しようとするのでしょうか。何故?不思議です。

また、近年は、マスメデイア企業がこのような大学と組んで授業ではなく事業を始め、障害者の獲得に乗り出している。と学内外に公言してはばからない経営者も居るようです。

同大学の経営陣には、文科省副大臣、前文科大臣(文科大臣就任前までは文科副大臣で理事として、直後に辞任、現在不明)、元警視総監、元総理夫人、等々と著名人、政治家達が経営陣として名を連ねているにもかかわらず、何故このような膨大な数の暴力、体罰、ハラスメントが学内で毎年起きているのでしょうか。此処にも何か暗い影が潜んでいると思われますが、文科省は、我関せずの様です。学生達、教職員達、父母達は、何故勇気ある発言をしないのでしょうか。

何故マスメデイアは、この度のアメフト問題に特化し日大をリンチに掛けようとするのでしょうか。大半の日大学生達は、どんな罪を犯したのでしょうか。このようなリンチ的な行為により、学生達は、二次、三次的な被害に合っている現実をどう救って挙げられるでしょうか。このような大事なことをマスメデイアは、どう考え、配慮していると言えるのでしょうか。何か弱いものいじめをこのさいとばかりに日大バッシングを楽しんでいるようで、如何なものでしょうか。

②主催者関東学生アメフト連盟の記者会見でのコメント

既に本K'sファイルでは、この度の関東アメフト連盟の本件に関しての報告会見の対応問題を述べさせていただきました。同学連は、最終的に本件に関しての公式記者会見を5月29日午後8時に開き、事件発生後23日目に初めて会見の場を持ち、規律委会からの処分内容及び調査結果の報告がありました。

その中で、[規律委員は理事会で「無期限の出場資格停止にしてしまうと、選手らは希望が持てなくなる」と説明。森本啓司委員長(連盟専務理事)も会見で「再起のチャンスを与えないのは教育をモットーとする連盟としてあり得ない」と語った。]   以上朝日新聞5月31日朝刊記事から、

上記取材記事より、連盟専務理事は、学生アメフト選手は大学教育の一環であると認識している事が伺えます。関東学生アメフト連盟は、教育の一環として指導、運営、管理をされていない大学をどのような審査基準規定によって、加盟登録を認可しているのか、非常に疑問に思いました。大きな矛盾が此処に潜んでいるのでないのでしょうか。

このような暴力指導、運営、管理をしている大学は、日大だけでない事を学連は把握している筈です。上記毎年700件もの暴力、ハラスメント、等を起こしている大学も学連に加盟して、監督も監督会議に出席されている様です。他の大学も大なり小なり同様です。

学連専務が教育をモットーにしていると強調されるのであれば、日大以外の加盟登録大学は、暴力指導、運営、管理がなされていない事を明言すべきでした。如何でしょうか。学連は、教育をモットーとしていると断言されていますが、これは、建前であり実質が伴っていないと断言された方が正直でないでしょうか。これは、筆者の素朴な疑問です。専務の発言には、裏付けが必要です。

関学大のような大学教育の理念を持って、一貫したアメフト部を運営、管理、指導している大学は、我が国に於いては非常に少数です。

スポーツ庁は、文科省の風除けか

筆者が嘗て文科省の担当者に確認致したことがあります。それは、「文科省は、大学設置、学部承認の許認可を出していますが、大学競技スポーツに於いての各大学の不正、不公平な入学、卒業認定、不正単位授与、金銭に寄る内外学生選手のリクルート活動、等々を監査、調査、指導しないのか。また、文科省は、各大学に対して毎年莫大な私学助成金(公金)、補助金(公金)を流し込んでいるが、どのような基準と責任に於いてなされているか」を尋ねました。

文科省は、大学設置の許認可は出しているが、各大学の運営、管理の問題は各大学法人の経営者に任せているので関知しません、そこまで手が回らないのが実態です。助成金補助金に関しては、告知しています。」とこれがお上の天の声でした。助成金補助金に関しては、全く具体性もなく目に付かない場所にただ告知しているとの形式的な内容のみで国民、社会が納得できる内容でありません。

此れでは、各大学の経営者、管理者の教育、経営、管理能力により大学、指導者、指導内容が歪められても誰もが監査、調査、指導、是正できない、しない構造が確立されているということです。このような事は、本読者の皆さん以外はご存知でないという事です。この国の現在のような文科省というお役所は、必要な省庁なのでしょうか。米国には、文科省などありませんがスムーズに経営、運営、管理がなされています。

先日524日には、鈴木大地スポーツ庁長官が「もう国のリーダーシップにより本件は、」と発言されました。同氏及びスポーツ庁にどんな権限があるのでしょうか。筆者の理解は、スポーツ庁は、文科省に在ったスポーツに関する取扱いの部署を文科省と切り離して新しく特化した形でスポーツ庁を設置、いわば文科省には、スポーツの問題は持って来るな、スポーツ庁に持って行きなさい。と言わんばかりの対応とお見受けします。

スポーツ庁、長官は、公益法人のスポーツ組織、団体、で起きた不祥事、事件、等の報告を受ける受付窓口で、それ以上の問題を処理、解決するに必要な権限も権力も与えられていないと理解しています。上記のような発言をし、拳を振り上げて降ろす場所があるのでしょうか。是非スポーツ庁と長官は、少なくとも社会問題となっている本件に対し、先ず大岡裁きを下されることを切に願います。本件が裁けないで、日本版NCAAの設立等、あまり風呂敷を広げない方が宜しいのでないでしょうか。長官には、真のスポーツ・アドミニストレイターのプロフェッショナルに自らなって頂きたいので苦言を申し上げている次第です。悪しからず。

 

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sport

お知らせ:NO.55は、大学競技スポーツの本質問題及び、その取り巻きの環境、現実問題、等を述べさせて頂きましたが、筆者の主張は、読者の皆様にご理解して頂けましたでしょうか。次回、56は、この度のアメフト問題の今後の展望を予定していますが、時事の問題が生じた場合は変更させて頂くかもしれません。