K'sファイルNO.57:大学競技スポーツ・日米の歩みと動向 無断転載禁止

K'sファイルNO.57:大学競技スポーツ・日米の歩みと動向

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注:NO.57は、この度のアメフト問題を通して大学競技スポーツの問題点を幾つか指摘 して参りましたが、此処では日米の大学競技スポーツの動向を少し覗いてみましょう。嘗ての河田ゼミ生(鈴木善之氏)がNCAAの競技を現地で視察、直接肌で感じたことは何であったのかを是非読者の皆さんには彼のレポートを読んで知って頂きたく思います。お手数ですが、元ゼミ生のレポートをお開き下さい。文中にURLを掲載。

PARTⅠ日米大学競技スポーツの現実的な相違

1.日本の大学競技スポーツの動向

①課外活動とは経営者にとって隠れ蓑?

日本の大学競技スポーツは、課外活動であり、学生の自治活動であるとの理解と認識で今日まで(基本的に現在も大多数の大学に於いて)考えられてきていると思われます。

学生の自治活動とはいえ、各部活の長は、大学側が専任教員と認めた教授職の教員が部長として大学、法人により任命されているのです。(部長は、任命された部活の専門家でも何でもありません、唯の本学の専任教員です。)これで、大学側、法人側は、教育の一環である事をカムフラージュしているのか、ポリスマンの役に置いているのかも知れません。

大学法人は、経営者の思惑により大学競技スポーツ部を複数の強化重点種目と位置付けして、学生に告知もせず、年間約1億~4億円の特別強化資金を投入しているケースが数多く見受けられます。この資金に私学助成金の一部を当てている大学もあるようです。呆れました。

この強化重点種目に付いては、学内に於いても情報公開されず非常にアンフェアーな運営、管理が長年行われているのが実状です。そのため、それ以外の大多数の部は、課外活動としての部活を認められていながら、学内に於いて特別強化部とは大きな差別を強いられているのです。

基本的に部の運営費用は、授業料の一部が学友会費、施設管理費、等として納められていることから、学友会費が各大学の伝統的な手法によりアンフェアーに各部に振り分けられている次第です。勿論、そのようなごく限られた学友会費の一部で賄えるわけもなく、学生達は部費を払い、先輩卒業生達からの寄付で賄われているのが我が国の大学競技スポーツを支えている部活の底辺です。

特定の強化指定種目の目的は、その競技スポーツ種目、学生選手を大学の広告塔としてマスメデイアを通して露出し、受験生を集める事が大きな目的の一つです。その最たる例が既に「KsファイルNO.2933箱根駅伝は誰の物」で詳しく取り上げました大学箱根駅伝、等の人気イベントでの大学名の宣伝活動の一環なのです。この活動は、一人受験生が増える事により受験料の35000円が現金収入となる計算です。

②体育とスポーツ、競技スポーツを混同

このように嘗ての大学の部活は、体育(Physical Education)の一環としての課外活動であり、学生の自治により運営、管理していた時代は、約30数年前に既に略消滅していたのです。現実は、大学経営者、管理者による特別強化スポーツと称する部活が学生の自治活動を隠れ蓑にした授業教育の一環でなく、事業(ビジネス)の一つとして、広報・宣伝活動を主たる目的としていると申し上げても言い過ぎでないと思われます。

各競技種目の学生連盟は、学生主体の自治活動から大人の利害、利権の寄合の学生連盟の組織、団体と化し、本来の趣旨、目的がいわば建前となっているのも大学経営者に酷似です。

勿論、スポーツ、競技スポーツにあまり力を傾注していない大学教育機関は、今尚存在します。そのような大学は、競技スポーツでの成果、結果がマスメデイアの話題に出て来る事が殆ど皆無に等しく、学内に於いても伝統的な課外体育の一環とし、純粋に自治活動と位置付け細々と維持されている大学もある事を忘れてはなりません。

現在の大学競技スポーツの特徴は、スポーツ、競技スポーツを体育と捉えている指導者、管理者、経営者が大半であります。このことから、社会に於いても矛盾した現状と現実が問題の起因となっています。本来は、体育と競技スポーツは本質的に対極に位置します。体育の分野とスポーツの分野(健康・科学スポーツ、リクレーション&レジャースポーツ、競技スポーツ、観戦スポーツ)は、本質的に体育とは異なる事を専門教育の場で生徒、学生に知識の付与をして頂ければ、これから我が国を担う若者達には、専門分野、部門が明快になり、非常に発展的な方向に歩むと確信します。

本年4月には、漸く日本体育協会が「日本スポーツ協会」に改名されたばかりです。筆者は、1976年から文部省、体育局長、日本体育学会長、日本体育協会に招かれる度に体育はスポーツ、競技スポーツと本質が異なるので早く看板を掛け代えて下さいと申し上げて参りました。

日本の大学には、今尚体育会系、体育会、体育局、保健体育局、等々とスポーツ、競技スポーツとは本質の異なる呼び名が戦前、戦中、戦後、そして今日に至っても思考停止状態で継承されているのです。国民体育大会もそろそろ「国民スポーツ・フェステイバル」に改名して頂きたいものです。本分野の教育界には、まだ戦後が終わっていない。そして、NCAAの日本語訳名を全米大学体育協会と呼んでいるのも、これもまた戦後が終わっていない証しです。

2.日本版NCAA構想に100年必要か

NCAA名を利用して国民、社会をミスリード

昨年より、文科省スポーツ庁は、“日本版NCAA”をスタートさせるとの告知をし、準備をされているようですが、何を大義とし、趣旨、目的になされるのか推進者達が理解していないのかも知れません。

全米大学競技スポーツ協会(略:NCAA)のロゴタイプをキャッチコピーし、ちゃっかり使用する我が国の文科省スポーツ庁には、呆れ果てます。

スポーツ大国のNCAAの名前を使う事で、日本国民、社会、学生、学生選手達に何をイメージさせようとしているのでしょうか。

NCAAは、1905年に創設され当時既に全米で800校が加盟し、共通したルールブックの下で競技の運営管理がなされていました。この時代、我が国日本は、どのような時代で在ったでしょうか。その後、NCAAは、1972年に男女平等な教育を受ける権利法(TitleⅨ)が施行され、初めて女子学生選手と女子競技種目がNCAAへの加盟が認められ、男子同様の奨学金制度、各種目の全米大学チャンピンが誕生するに至ったのです。

NCAAは、1970年代後半に確かワールドワイドな商標登録をしたはずです。よって、このNCAA名の使用は、他国の大学の持ち物で在りそれをちゃっかり日本国の文科省スポーツ庁が使用するわけで、お隣の中国が日本製品の偽り品の海賊版を製作、販売しているのを批判する資格は何処にあるのでしょうか。日本国の省庁は、スポーツ界で海賊版キャッチコピーを奨励していると言われても仕方がないですが、宜しいのでしょうか。勘弁して欲しいと思うのは、筆者だけでしょうか。

我が国の現実に即した、身の丈に合ったプラニング、プロジェクトを立案し、先ずは大学競技スポーツの現在の本質的な問題を文科省スポーツ庁)の責任において改善された方が宜しいかと提案します。

この日本版NCAAとは、大学競技スポーツの本質的な問題を置き去りにしてどんな意味があるのでしょうか。本プロジェクトの関係者から聞こえてくるのは、「大学スポーツで金儲けする」と声高に連呼しているようですが、現実的に何を商品にして金儲けをするつもりなのでしょうか。このような方々こそ、学生達と共にスポーツビジネス、マネージメントをよく学び、理解する必要があると思えてなりません。

某大学の経営者は、数年前に複数の広告代理店を呼び、我が大学のスポーツの商品価値を査定して欲しいと真剣に持ち出し、大学丸ごとスポンサー収入を得ることを夢見たようです。広告代理店各社からは、「お宅の大学の競技スポーツでは、商品価値とマーケットセアーが小さすぎるので査定数字も出ません」と回答された。という笑えないレベルの実話も届いています。此れが大学経営者、管理者の知識とレベルなのです。

文科省スポーツ庁の情報公開の必要性

既に文科省のスポーツ窓口機関であるスポーツ庁は、趣旨、目的も明確にしない公金を情報公開もなく、特定の大学に日本版NCAAのプロジェクト名目で流していると聞き及んでいます。本来、このような公金流用が省庁の目的なのでしょうか。特定の大学とのダークな関係が始まっている様な情報が大学内部から流出しております。このような情報が流れる事自体、スポーツ・アドミニストレーションが理解できていない人達により、NCAAのキャッチコピーを利用した公金の不正利用が暗黙の内に始められているのでしょうか。

NCAAという他国の大学競技スポーツの組織名を利用した利権の争奪が既に始まっているとの誤解を招きかねませんので、読者の皆さんの監視が不可欠です。しかし、このプロジェクトには、一部マスメデイアが協力をしているようなので、困った事です。

此の事からも、日本の大学競技スポーツの問題を精査、検証もせず、NCAAをキャッチコピーする理由はどこにあるのでしょうか。NCAAに対して大変失礼です。大学競技スポーツの問題に関する本質の解決には目を向けず、利権の構築の為にミスリードをしているように思えてなりません。

模倣をする相手は、巨大で我が国の現状、現実にマッチしないと思いますが如何でしょうか。お上がこのような思考では、学生、学生選手に多くの犠牲者を出し、健全であるべき指導者、大学教育機関に不適切な夢を与え、多大な迷惑を今後掛けるような気がしてならないのは筆者の取り越し苦労でしょうか。

3.米国の大学競技スポーツの動向

NCAA一部校とNCAAフットボール強豪校の現状 

全米大学競技スポーツ協会(NCAA)主催の全米大学フットボールは、加盟校1275校の1部校(340校)がシーズン最後のNCAAチャンピオンを争う決勝戦が毎年行われ、NCAAチャンピオンが決定します。会場は、中立の地域の大学以外のスタジアムで開催します。

毎年優勝、準優勝の大学に対して、近年は、両校それぞれに主催者から日本円にして約10億円が寄付されているようです。また、バスケットボール決勝戦出場の2校に対しても高額な寄付金が支給されます。大学は、この寄付金以外にも多額のシーズン中のバスケットボールのホームゲーム(約23ゲーム)の興業、スポンサー、放映権収入、フットボールのホームゲーム(6ゲーム)の興業、スポンサー、放映権収入を得ています。

勿論、強豪校と弱小校との間では、あらゆる面での大きな格差が起きているのも事実で問題です。その主な格差要因は、大学競技スポーツで得られる収入の違いです。大きな大学の強豪校では、1シーズン8月下旬から1月上旬迄フットボール、12月から4月上旬迄バスケットボール)で約10億円~90億円の収入格差が今日では生じている様です。筆者が当時米国大学で担当していた時とは比べ物にならない経済効果を与えています。

全米大学競技スポーツのメジャースポーツは、フットボールとバスケットボールです。これら競技スポーツから得られた興行収入は、全て大学関連、周辺地域社会への還元に活用されるシステムが、100年の歴史を経て構築されています。

勿論、フットボール、バスケットボール以外のマイナー競技スポーツは、このメジャースポーツの収益に寄りサポートされています。NCAAでは、男子、女子の公式競技種目の数が決められており、オリンピック種目だからと言っても公式競技種目として認められているわけでありません。(例:例えば女子のレスリング、女子柔道は大学競技種目として認められていません)。

 ②筆者がお世話になった公立大、私立大の現状

筆者がお世話になったオレゴン大学(UO)では、フットボール専用スタジアム約50000席、バスケットボール専用アリーナ現在約12000席、ブリガムヤング大(BYU)では、フットボール専用スタジアム約60000席、バスケット専用アリーナ約27000席をそれぞれキャンパス内に持ち、ホームゲームは、全席満席です。しかし、テイームが敗けだすと観客は減少します。このようにして大学のスポーツビジネス、プロモーション活動の実践、運営、管理が行われています。勿論、大学競技スポーツもプロ同様に、消費者が大学スポーツの観戦に大きな魅力と興味があるので、スポーツビジネスが成り立っているのは言うまでもありません。

注:K'sファイル:特別寄稿集:河田弘道教授の講義から~2018-03-28掲載 題:卒業前の米国大学競技スポーツ観戦旅行を終えて」レポーター:鈴木善之氏、元河田ゼミURL http://hktokyo2017041.hatenablog.com/ 

読者の皆様には、NCAAの現実と現状をほんの一部ご紹介致しました。文科省スポーツ庁が目す日本版NCAAのパンフレット、チラシを目にされましたら是非このKsファイルを思い出して下さい。何処か誰かの講演でのコピーのようです。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sport

 お知らせ:NO.57は、如何でしたでしょうか。次回NO.58は、この度の日大アメフト問題に関してのシリーズの最終回をお届けいたします。前半は、お堅い内容で後半は、あの世界陸上が初めて米国大陸に、それも何と2021世界陸上が世界初米国の大学キャンパスでホストされる事を日本初の情報公開を本K’sファイルご紹介致します。驚かないで下さい。