K’sファイルNO.60:プロ野球-MOVE東京読売ジャイアンツ 無断転載禁止

KsファイルNO.60プロ野球MOVE東京読売ジャイアンツ

             無断転載禁止

PARTⅡ 球団の不祥事、事件へのリスクとヘッジ

2.ベースボール・アドミニストレーションの不備

①この度の不祥事、事件の全容

201878日、神奈川県警多摩署は、東京読売ジャイアンツ球場のロッカールームから選手のユニフォーム及び用具、等約110点を盗み出して売却、約100万円の収入を得て窃盗容疑で、プロ野球東京読売ジャイアンツの柿沢貴裕容疑者(23歳)を逮捕しました。球団は、統一契約書の第17条(模範行為)に違反し、野球協約60条の不品行に該当するとして、7日に既に契約を解除していたのです。~以上マスメデイア報道より~

 このような事件が毎シーズン止めども無く起きるのは、長年の伝統が負の遺産として堆積し、そこから有毒ガスが発生し、燻り続けているようなものです。この事は、毎回事件、不祥事後の球団オーナー、社長、GMが「今後二度とこのような事が起きないよう運営、管理を徹底します」との遺憾表明をしても結果として何もやっていなかったに等しいのです。何故?

要するに球団は、求心力の在るベースボール・アドミニストレイターが存在しないという事です。これは、オーナー、球団社長、GMが短命である事にも起因しています。即ち、本球団は、問題の本質を理解できていない事、また球団ビジョンが明確でないので、このような不祥事、事件に対応する危機管理システムも存在しないのだと思われます。

筆者は、マスメデイアの本件に関する担当記者のコメントの「球団の教育を問う声もあるだろうが、選手個人の本質に関わる問題も多い」とする箇所に注目しました。

このような表現では、片付けられない真相と現実が根深く日本球界に蔓延しており、その状況が理解されていないのでないかと思います。或は、同記者は、球団への配慮か、何か忖度が含まれているのかも知れません。

小職が在籍当時より、ロッカールーム、球団寮、遠征先での金品の盗難は、1、2軍問わず存在し、報告を受けていました。しかし、これらの問題は、東京読売ジャイアンツ(略:TYG)に限った事ではなく、他球団に於いても日常茶飯事な出来事であり、ジャイアンツの選手であるがゆえにマスメデイアで大きく取り扱われることも致し方ないことでした。球団には、元警察関係者を雇用したりしている場合もありますが、成果も効果も無いようです。これらは、大学教育機関に警察関係者の天下りを受け入れても暴力、体罰、事件、ハラスメントが無くならないのと同じ論理だと思われます。即ち、実質の伴わない、上辺だけの体裁を装っているだけなのです。

この問題は、プロ野球選手だから、TYGの選手だから起きるのではありません。本質的な問題は、各球団がプロの球団、組織、団体として選手の倫理的な在り方を明快にし、運営、管理を徹底しない限りは改善、改革どころか不幸な選手のみならず、指導者、職員、スタッフ、等にまで蝕まれて行っているようです。

②情報収集のスキル向上とリテラシーの重要性

本選手は、プロ球団入団後の楽天時代から派手な生活を好み、金銭的な問題を起こしていた事も事実のようです。問題は、同選手をTYGにトレードする際、担当スカウトマン、及びフロント編成部は、どれ程の情報を把握していたのか。それは、プロのフロントとして重要な責務なのです。此処でのキーワードは、球団が知っていて獲得したのか否かです

もし知らずに獲得したのであれば、フロントの担当部署と担当者は責任が問われます。逆に知っていて、獲得したのであれば、なおのこと、担当部署及び担当者の責務であり、前者、後者いずれにしても最終的には、統括責任者であるGMの責務となります。

このレベルの問題、責務を球団オーナーに求めるのは、如何なものでしょうか。オーナーの威厳と職責名が余りにも軽くなり、これでは、さながら社内の人事異動の様相です。このようなやり方では、オーナーが何人いても足りなくなるのは必至でしょう。

また、同時に同選手を保有していた楽天球団は、在籍中に起こした素行問題を譲渡相手球団に情報提供したかどうかも重要な倫理規範に絡む問題です。このあたりの問題は、NPB野球協約に明記されていない事が問題なのです。さらに、このような問題以外にも、トレード時に保有球団及び同選手が怪我の有無及び問題点を隠していた場合、倫理規範に大きく抵触することになります。

読者の皆様は、筆者が何を申し上げようとしているかをご理解頂けますでしょうか。即ち、TYGは、危険な悪性腫瘍を内在した選手を未熟なスカウトマンによってたくさん抱え込んでしまう可能性があるということです。(スカウト職の重要性と問題点に付いては、次回詳しく述べる事にします)

柿沢選手は、132月からプロ球団との契約を交わしたプロフェッショナル野球選手(略:プロ野球選手)であります。しかし、プロではありますが、契約した当時から複数年は、法律上は、未成年者であり保護者の管理管轄下にある事も知って於かなければならない点です。即ち、大人扱いされている子供と表現した方が理解し易いと思います。

このような高校球児が、ある日突然プロ野球選手としてドラフト指名され、マスメデイアから脚光を浴び、多額な契約金、年俸を握らされ、教育と言えるような教育も受けず、人間関係、社会の経験もなくプロ野球界にいきなり飛び込んで来たら、どのような事になるのでしょうか。

上記TYGに於きましては、2015年度以降の高校球児の不祥事、事例を列記致します。マスメデイア報道より~

2015年:野球賭博関与、笠原将生投手、福田聡志投手、松本竜也投手。

2016年:野球賭博関与、髙木京介投手。

2017年:傷害事件関与、山口 俊投手。

2018年:裸体画像SNS投稿、篠原慎平選手、河野元貴選手。

2018年:窃盗犯逮捕、柿沢貴裕選手。

現在の日本プロ野球選手の大半は、このような高卒、高校球児達です。問題を抱える選手には何処の球団も頭を痛めているのが現実です。勿論、スポーツマスメデイアの野球担当記者諸氏は、十二分に理解、認識して取材活動をされている筈ですが。

③筆者の日本球界への提案

筆者が、常に声を大にしている事は、日本プロ野球界のファーム(二軍)は、常に一軍半の選手の為の調整の場、即ち置屋的な伝統的環境で運営、管理がされています。よって、本来のプロ野球球団のファームとしてシステムが機能する構造にもともとなっていないのです。

このような現実から、全ての高校球児は、本人が希望するのであれば大学に進学させて大学4年間「心技学体」を少しでも多く身に着ける事を主たる趣旨、目的とするべきであると考える次第です(その前に現在の大学野球部の非教育的な経営者、管理者の実態の情報公開も高校球児、父母には欠かせない大切な情報ソースであります)

大学進学後2年間は、プロのドラフトを禁止する協定が必要であると考えます。これにより、プロ球団側、高校球児側ともにリスク軽減ができ、大きなメリットがあると考えられます。

また、大学側に取っても、近年大学競技スポーツは、特に疲弊を強いられており、このようなシステムの導入により高校野球界のスター選手が各大学に進学、所属する事でマスメデイアはもとより、野球ファン、等に於いて、大きな注目が大学野球界に注がれる事になるのです。

一方、プロ球団側にとっては、大学進学後に高校球児がどの程度、心技体の改善、強化がなされたかを見極める時間が与えられ、現在のプロ野球球団に欠落したファームの貧困な環境を補い、大学側にファームとしての肩代わりの役割を負ってもらうという相乗効果を享受することができるのです。

このような改善、改革こそが我が国の大学競技スポーツのマーケテイングを拡大、開放、構築させる大きな基本的な手段、機会となります。

もし、日本プロ野球機構(略:NPB)、プロ球団側が異議を唱えるならば、MLBのようなファームのシステムを整備して、本来の育成システムを持って、高校球児(未成年者)への配慮と教育的指導の期間を与える事が、雇用者側の責務であると提案致します。読者の皆様のお考えは、如何でしょうか。

TYGは、是非ポジテイブで創造力を兼ね備えた独自のプロフェッショナルなフロントの人材育成と養成に取り掛かる事が何より急務だと思われます此の事に付きましては、次回問題の本質と解決策を提言させて頂きます。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports

 お知らせ:NO.61では、プロ球団は如何にして選手の不祥事、事件を未然に防止するか、できるか、その策と方法を中心に述べさせていただきます。これらは、筆者が球団の現場を通して実感した現実を基に述べます。