K’sファイルNO.61:MOVE東京読売ジャイアンツ 無断転載禁止

K’sファイルNO.61MOVE東京読売ジャイアンツ

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PARTⅢ 球団の選手発掘と源泉の採掘

1.TYGのスカウトマンの現状と資質

K'sファイルNO.60では、主にプロ野球選手の不祥事、事件を起こした選手、球団担当部署の職責、責務、等に付きまして指摘させて頂きました。

この度は、このような球団内外で起きる諸般の不祥事、事件に対する球団側の処し方、防ぎ方を中心に述べて参ります。此の事により、読者の皆様が本件の重要性と問題の深層を理解され、また専門的な知識も増やされ、そしてジャイアンツを叱咤激励して下されば幸いです。

①スカウテイングとリクルーテイングの違い

球団で最初に新しい選手に接する部署は、スカウト部であり同部は球団編成本部に属する部署であります。球団におけるスカウトとは、一般的に選手や芸能タレントを獲得する事の意味に於いて用いられているような気がします。

本来プロ野球球団のスカウト部とは、「欲しい人材の資質、可能性、将来性、問題点、等を調査、情報収集と分析」を主に行う作業、業務部署を意味します。しかし、一般社会では、上記作業、業務以外に人材を獲得、勧誘する作業、業務も含めて理解されているようですが、本来は前者がスカウテイング業務であり、後者はリクルーテイング業務と区別されるのが正解です。プロ野球球団に於いては、前者と後者を混同(兼務)している状態です。

②球団スカウトマンは独自で育成すべき

球団に於けるスカウテイング業務は、ことのほか重要且つ難しいセクションであります。しかしながら、プロ野球球団に於けるスカウトマン達は、大多数が元プロ野球選手で、現役時代の経験のみがその拠り所となっているのです。

選手としての能力とスカウトマンとしての責務、才能は、もちろん異なります。それでは何故、選手時代の経験のみでプロの球団スカウトマンになれるのか不思議だと思われませんか。

その訳は、日本のプロ野球界は伝統的に、球団側は選手契約時にその選手を欲しいがため、本来の契約以外にサイド・オファーを出すケースがあるのです。

選手が故障、怪我、或は、現役を辞めた後も、球団に残す事をついつい約束してしまう事があるのです。MLB球団は、このような行為は選手への違反契約行為として厳罰が待っていますが、日本プロ野球界に於いては、契約の概念を理解できていないのと契約違反に対する罰則規定も非常に甘味な事から、あまり罪悪感も無いようです。

つまり、何らかの理由で選手生活を終えた人が、同球団の指導者、用具係、マネージャー、スカウトマン、フロント職員として雇用されているケースが多いのもこのような理由が背後にあるからなのです。よって、スカウトマンは選手上がりが基本的な経歴で、特別なスカウテイングに必要な専門知識、実践を身に着けて採用された人達ではない事をまずご理解下さい。

また、日本プロ野球機構(略:NPB)の野球協約、規則には、スカウトマンに対するライセンス制度の有無は明記されていません。これにより、各球団のスカウトの資質は、当然異なり眼力に於いても高低差が激しいのです。

読者の皆さんは、驚かれたのでないでしょうか。その証として、プロ野球球団がスカウトマン採用の告知をしたことも、採用試験云々の話題が耳にされる事がないのもこのことからです。それ故、この専門職は、伝統的に改善、発展しないように思われます。

 ③選手獲得に必要なスキルと眼力 

スカウテイングに必要な専門的な知識として、特に重要なのは、現在球団がテイーム編成に沿った選手を先ずターゲットとしてラインナップする事です。そこで重要なのは、目的が大きく二つに分かれる事です。一つは、未完成の選手(球団の将来を見据えた戦力補強)と完成に近い選手(球団の目標に合った即戦力補強)です。

後者は、成果と結果が数値とパフォーマンスで既に証明されているので見分けやすいのですが、前者は、高度な専門知識とスカウテイングキャリアを要します。専門知識としては、対象が選手即ち人である事から医科学的な専門知識が不可欠です。そして、できればその医科学的な専門知識を実践経験からも会得しているスカウトマンは、非常に評価価値が高いので年俸も選手同様のペイメント査定がなされてしかるべきなのです。しかし、現実は、球団にはスカウトマンへの査定基準、査定システムが見当たらず、適正な評価や運営、管理が出来ていません。

よって獲得した選手への管理体制や、スカウトマン、スカウテイングに対する責任の所在も非常に甘味で、不祥事、事件、等を誘引する大きな要因の一つとなっていると考えられます。

④スポーツ医科学の導入は不可欠

医科学的な要素は、生理、解剖、バイオメカニック(スポーツ力学)、モーターラーニング(スポーツ筋力学)的な分野とスポーツ心理学的な分野の専門知識が不可欠になってきます。

そして、このような専門知識及び実践力を会得している人材には、さらに次に実践に於ける観察力、また判断、決断する為の洞察力が必要とされるのです。

球団内部に於いては、他の部署からスカウト部、スカウトマンとして転職させる場合、殆どのケースが適応性を判断するマニュアルも無く、編成部門の統括者の判断で人事がなされています。これでは、会社、企業のサラリーマンの人事の方が日常の成績、成果評価を判断基準にしているので、プロ野球界より遥かに適応性の判断がシビアーかと思われます。

筆者の球団でのベースボール・アドミニストレイターとしての視点で申し上げますと、プロ野球界の殆どのスカウトマン達は、選手経験を基にしたスカウテイングを基本としているために、偏った経験値を物差しにしている傾向が大であります。よって、大事なスポーツ医科学の客観性を伴わない伝統的な経験、勘に頼る事から、選手達に内在するスポーツ医科学的な故障、メンタル、及び癖、等が洞察できず、獲得後に球団、社会、ファンに多大な損害と迷惑を与えている事は本K'sファイルで既に述べさせて頂いた通りです。

このような事からも球団は、スカウトマンの採用、雇用の抜本的な改善と改革が急務で、球団独自のスカウトマンの育成、指導に腰を据えて、独自のスカウトマンを確保する事で新人選手の発掘、移籍選手への観察力、洞察力を強化、向上させ、一貫したシステム体制を構築できると確信しています。それにより、球団の貴重な財産の確保と財源の無駄遣い、リスクを最小限に軽減できるスマートな方法が此処に眠っているのです。

⑤身近な球団トレイナー、PTに能力あり

筆者の経験則では、現在球団に雇用、所属している医療部門のトレイナー、理学療法士(略:PT)達は、現在球団が雇用しているスカウトマンより遥かに専門的な医科学の知識と日々の実践キャリアを持ち、日々選手と個別に接している事から既にメンタル的な分野の実践キャリアも擁している人材が居る事を確認しております。

よって、このような既に確保している人材、或は、今後雇用する時には、もう一つ先を見越した人材を確保する事が大事です。現在所属して、実践キャリが豊富なこのトレイナー、PTの優秀な人材は、プロのスカウトマンとして将来兼務、或は独立したスカウトマンとして採用する事は大きな財産の確保と合理的な人材のリテラシーであると確信致します。

東京読売ジャイアンツ(略:TYG)には、選手以外のスタッフ達にも優秀で可能性を秘めた人材がいます。その人材を如何に合理的且つ適材適所で活用するかは、球団フロントの統括責任者GMのベースボール・アドミニストレイターとしての資質に全てがかかっていることを、経営者には早く気付いて欲しいと願う次第です。気付いて居ても、統括責任者がどうしたらよいかわからないのかも知れません。このような場合は、統括責任者を推薦して任命した経営者に眼力が無かった事になります。この眼力の有無は、その球団のそれからの浮沈を左右する極めて重大な人事に関する決断ですので、ボタンのかけ違いは初歩的な運命の分かれ路となります。

プロのスカウトマンは、マスメデイアに於いて騒いでいる情報を鵜呑みにしてリストアップし、その選手のみを追っかける様な事をしていると獲得経費ばかりが高騰して、入団後に事件、不祥事、等を起こされるのがこれまでの悪例であります。プロの視点とマスメデイアの視点は、異なる物差しで在って欲しいと願うのです。

伝統的且つ非合理的な人材の雇用、人事異動は、今日の球団に重苦しい空気が充満してしまっている元凶なのかも知れません。

ジャイアンツは、爽やかで在れ!が未来志向の長嶋ジャイアンツではなかったでしょうか。

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports

 お知らせ:この度は、プロ球団のスカウト部門の重要性とスカウトマンの専門職に触れました。次回NO.62は、本シリーズの延長線上にあります球団と選手との間に今後必要不可欠な選手代理人に付いて述べさせていただきます。