K'sファイルNO.63:MOVE東京読売ジャイアンツ 無断転載禁止

K'sファイルNO.63MOVE東京読売ジャイアンツ

           無断転載禁止

PARTⅤ プロ球団と選手はビジネルライクに

1.プロ球団と選手代理人との関係

プロ野球選手代理人制度の歩み

日本プロ野球界に於ける選手代理人(略:エイゼント、Agent)の歴史は、非常に浅くこの問題を1つ取ってもプロの業界が成熟していない事を物語っています。

本家メジャーリーグ(略:MLB)では、選手代理人交渉制度が確立したのが、1970年度と約50年の歴史です。

対する日本プロ野球界では、1992年に当時ヤクルトスワローズ古田敦也選手が選手会長時、球団に契約更改交渉に初めて代理人による交渉を申し出たのが、最初でした。しかしながら、球団側は、「球団と選手の信頼関係が揺らぎかねない」との理由で拒否したのです。

しかし、この一件から日本プロ野球機構(略:NPB)が発行する野球協約がクローズアップされるに至りました。それは、選手が契約する場合「球団職員と選手が対面して契約しなければならない」と選手の出席を義務付け、参加報酬調停では調停委員会が選手本人から聴取する事を義務付けていたからです。

選手の契約更改に於いては、選手出席の契約義務に関する明文化した規定はなく、また選手契約及び参加報酬調停委員会(双方の年俸提示額に開きが生じ、同意できない片方、或は双方が調停を申し出る委員会の意味)において選手以外の代理人を同席させる事を禁止する明文化された規定もありませんでした。これにより、プロ野球協約そのものが、旧態依然のものであり事象に対応しきれていなかった事がクローズアップされたわけです。

②実質を伴わない代理人制度の発足と現実

1999年に日本のプロ野球界で代理人交渉制度が運用されるようになりました。但し、代理人の同席を認めるが弁護士有資格者に限るという条件付きでした。2001年に日本弁護士連合会は、「参加報酬調停で代理人の出席を認めないのは選手に対する権利侵害と弁護士業務に対する重要な侵害である」旨の見解を発表しました。其の後、最終的には参加報酬調停における代理人の出席が認められるようになったのです。

しかし、東京読売ジャイアンツ(略:TYG)の渡邉恒雄オーナー(当時)は、12球団の中で最後まで認めていませんでした。

当時、渡辺氏は、「巨人の選手が代理人を連れてきたら契約しない、等」の明らかなパワハラ発言をしていたのが昨日の様です。今日、このような発言をすれば即マスメデイアは、今日流行語にもなっていますパワハラだと揶揄し、ワイドショー関連の餌食となるでしょう。NPBコミッショナーは、渡邉氏の言動だからと黙認する事もできなかったと思われます。

ところが、渡邉恒雄氏が2004年の選手獲得への裏金問題の責任を取ってオーナー職を辞任すると、TYG代理人交渉制度を容認するようになりました。

*現在のプロ野球における代理人交渉の条件

1.代理人は、日本弁護士連合会所属の日本人弁護士に限る

2.一人の代理人が複数の選手と契約する事の禁止

3.選手契約交渉で初回の交渉には選手が同席を必要とするが、二回目以降の交渉については球団と選手が双方合意すれば、代理人交渉も可能

上記条件からも球団経営者は、選手の代理人制度に対する姿勢が今もってネガテイブであり、代理人使用自体も略無くなっているのが実状です。また、日本プロ野球選手会と球団経営者のパワーバランスが、余りにも球団経営者側にある事は、選手側にとってはプロ野球選手になるに当たり、大きな不利益と障害となっていると思われます。

しかし、選手は、代理人がいると自分を守ってくれ、利益となるという知識と概念が不足しているのも事実です。このため、このような選手達により運営、管理されている選手会は、球団経営者にとっては好都合とも言えるのです。

2.高野連NPBの真の協力体制が重要

①NPB及び各球団の範疇と責務

日本プロ野球機構(略:NPB)、及び球団は、プロ野球選手として承認するに当たりハッキリとした線引きを行い明文化する必要があります。NPBに所属するプロ野球選手は、今日迄統一契約書に署名、捺印する事によりプロ野球選手として認められます。

ここで問題なのは、元来大多数のプロ野球選手は、高卒、高校球児出身者であり、社会の常識や人としてのモラル、法律、規則、ルール、等に対する教育、指導を十分身に着けてプロ球界に入ってくるわけではないということです。

その証として、統一選手契約書を熟読し、理解しているプロ野球選手は、果して何名いるかを見つけ出すのは至難の業であると申し上げても過言でありません。何故なら、未成年者の高校生に対して誰も「契約及び契約書」の意義、目的も指導しないで署名、捺印させるアンフェアーな状態を、高野連、高等学校、指導者達は、黙認しているだけなのです。

②ポジテイブなリスクマネージメントは未来の源泉

ポジテイブな思考力は、物事を改善、発展させるに必要不可欠な源泉です。

高校野球関係者、マスメデイア関係者は、もっとポジテイブで夢のある競技スポーツにするために改善、改革を図ろうと、何故目を向け、一歩前に足を踏み出そうとしないのでしょうか。

ポジテイブなリスクマネージメントこそが、伝統的な負の遺産、連鎖を断ち切る機会であり、未来志向の源泉となり得ると思います。

高野連及び関係者は、フィールドに於ける重大な問題を何と考えているのでしょうか。それは、近年の異常気象によるこの酷暑の夏季に、何故地方予選大会、甲子園本大会と成長期の生徒達の健康を害してまで伝統を守ろうとするのか。また、この環境の中で一試合に200球近いボールを投げさせ、また連投させる事の重大な過ちを看過し続けている現実を何と心得ているのか。この問題は、近い将来グローバルなスポーツの世界からベースボール・アドミニストレーションのレベルを問われる大きな要因の一つになると思います。高野連は、夏季地方予選大会、甲子園本大会で万が一つに選手が生命を失うような事故が起きてからでは遅いのです。本大会に於いても多数の選手達の体調に異変を発している事をどう捉えているのか。若き命は、一つしかなく、高校野球は教育の一環でないのかを責任者達は肝に銘ずるべきです。

ポーツマスメデイアに於いては、無責任にもこの酷使される未成年の若者達を賛美、美化したか表現ではやし立てる、この振る舞いは如何なものでしょうか。

成長期の生徒達をこのような酷暑の環境で酷使する事は、高野連が掲げる教育の一環としての理念に反した行為に矛盾を感じてなりません。建前論では、若者達が大人の利害、利権の餌食となっているのです。此れでは、戦前、戦中の軍隊、兵士への教練同様な指導を関係者達が強いているのと同じに思えてならないのは、筆者だけでしょうか。

マスメデイアは、高校、大学、競技スポーツのスキャンダルな事件、事故を商品化して連日、連夜報道するだけでなく、このような発展的な改善、改革にも目を向けて頂けたら、どれ程の子供達、生徒選手、学生選手、指導者達の励みとポジテイブなモテイベーションを醸成できるか、計り知れないのでないでしょうか。内向な組織、団体では、決して未来への発展は期待できないと思われます。

NPBは、各年度の新人選手選択会議(略:ドラフト)終了後に選択された全選手に対して、統一選手契約書をどの程度理解し、社会常識を兼ね備えているかの調査を行い、その結果を選手選択球団に参考資料として提供し、その資料を基にNPB及び各球団は、選手採用に関する判断材料にして欲しいのです。

そして、NPBは、教習期間を設け選手には教習を受ける義務を与える事が重要であると思います。これにより各球団は、新人選手に対する野球に関する能力以外のプロ野球選手として不可欠な社会人として対応する能力の最低限の知識と知恵を入団以前に付与できるのです。

現在は、これらの徹底した運営、管理システムが皆無に等しいのが現実です。

③エイゼント(代理人)と制度の活用

プロ野球界に於いては、選手代理人制度が承認され現存する制度があるのです。しかし、この制度は、球団経営者達の内向な思考回路により発展を拒む条件が付いているのです。

それは、弁護士有資格者でなければプロ野球選手の代理人(エイゼント)になれない事、そして代理人1名の選手しか代理ができない事、等々と、この条件は、経営者側の拒否反応のシグナルなのです。何故、弁護士1人に対して1名のプロ選手しかクライアントに出来ないのでしょうか。NPBは、その根拠を明確にしていませんし、選手会側も異議を唱えていません。

MLBに於けるエイゼント(選手代理人資格)は、弁護士に限らず一般人がMLB選手会のエイゼント規約に基づき、面接、筆記、等の緒手続きを踏めばライセンスは、交付されます。此れも日本のNPB選手会の力関係と異なり、MLB選手会の地位と関係がフェアーな関係であることを示している象徴でもあるのです。日本のプロ野球選手会には、大きな欠陥がある事を選手関係者が誰も気付いていないのです。

此処で、何故プロ野球入団選手には、代理人を付けた方が賢明であるかを述べます。ドラフト後入団選手がプロ野球選手となる為には、NPB発行の統一契約書に署名、捺印しなければなりません。これは、雇用される生徒選手、学生選手がプロ球界に就職する際の就業規則が専門用語で細かく表現されたものです。

筆者の経験から、本契約書を読み、理解できている選手は何名居るか、殆どの選手は、内容が理解できないケースが大半なのです。また、統一契約書とは別に、球団と選手間で結ぶ契約書、覚書、同意書もサイドレターとして存在するのです。このような作業を高校生にさせること事態がフェアーではないのです。

球団、経営者側は、このような選手を相手に事を進める方が如何に有利か、簡単かという事です。しかし、代理人が同席する事は、知識の無い高校球児、学生選手を相手にするのとは全く異なるのです。選手が代理人を活用する事により、球団経営者は、契約金額、年俸、インセンテイブボーナス、そして、査定方法に至るまで専門家とネゴシエイションを行うのですから経費の高騰が一番の問題点と捉えているのです。

ネゴシエーション(交渉)には、メリット、デメリットがあるのは当然の事です。しかし、現在のプロ野球球団と選手間に於いては、球団にメリットが多くて選手側にデメリットが大きいのもこれまた事実です。

プロ野球選手に成る時に、選手は、先ず代理人に依頼して自身の重要な契約に関する初歩的な知識の指導を受け、次に契約書の内容を理解する事です。そして、契約後に起きる処々の問題に対する代理を務めて頂くことで、本文の野球という業務にエネルギーを集中でき、成績を向上させる事により次年度の契約更改に於いて、自身に有利な交渉をして頂き、より有利な対価(金額、条件)を担保できるのです。

球団側は、今迄のような選手が起こす不祥事、事件、事故、日常生活に関する問題、等に付いて、一切を選手代理人とビジネルライクに事を処理、解決する事が合理的且つプロの業務なのです。また、これにより球団は、選手を寮に閉じ込めて社会から隔離するのでなく、契約後の選手は、一般社会人として自己管理の責務を選手に与える事です。伝統的な球団の寮制度は、不祥事、事件、事故の温床となっている事に目を覚ます事です。

このような代理人制度を活用する事で、プロ球団は、責任を背負い込む必要もなく、オーナー、球団社長、GM、担当者が責任を取って職務を降格、解雇、辞任するようなことも激減するのです。

読者の皆様は、本シリーズNO.59~63を読まれて如何でしたでしょうか。殆どの内容は、筆者自ら体験し関係した実践から述べさせて頂いた次第です。ご参考になりましたら幸いです。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports

お知らせ:MOVE東京読売ジャイアンツは、NO.63を持ちまして終了させて頂きます。TYGファンにとりましては、酷暑の夏と共に懸命の応援、支援をされている事と思います。TYGは、高橋監督・鹿取GMを擁して3シーズン目を戦われています。日々の選手、スタッフ、球団の努力が成果と結果でファンに対する対価として欲しいと期待しております。

注:次週のK'sファイルは、夏休みとさせて頂きます。読者の皆様にとりましては、暑さをエネルギーに交換して乗り切ってください。