K'sファイルNO.79:日本の冬の風物詩大学箱根駅伝は誰の物 無断転載禁止

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 第四弾 大学にとっての箱根駅伝とは

1.大学と箱根駅伝

①大学内に於ける伝統的な部活の昨今

Ksファイルでは、「大学の経営、教育の理念に付いて」の是非を論議する場でない事を最初に申し上げます。

我が国の大学に於ける部活は、1900年前半から当時学生達の余暇活動、課外活動を経て学生達の自治組織が認められ今日に至ったとされています。そして、今日まで昔ながらの学生による自治活動との位置付に特に変更はないようです

この自治組織、活動は、時代と共に大学及び周辺の関係者の利害と利権の温床と化し、伝統的な大学程、大学、法人側と各部卒業生との間での権力闘争があるのも事実です。その理由は、学生達の自治活動としての大義を掲げる大学は大学側の金銭的な支援並びに活動に対する自己責任を長年回避してきたと思われるからです。その為に、部活の運営、管理を維持する為には、部の卒業生達の寄付行為並びに就活支援の物心両面での協力が今日も尚継続している事だと思われます。しかし、実質的に大学側は、専任教授を各部の長として配置し、部活の運営、管理に一定の権限「ポリースマンの役割も」を担っているのが実態です。

よって、部活は完全な学生達の自治活動ではなく、あくまでも大学教育の一環と捉えているかのような人事配置からも窺い知れます。しかし、この部長は、各部活の専門的な知識を兼ね備えているでもなく、特に競技スポーツに無縁な大学当局にとって都合のよい専任教員を大学、法人により任命されている事から、長年形骸化してしまっている様子は否めません。

部活の運営費は、部費の徴収、大学側から学友会費(全学生は、授業料納付時に学友会費が含まれていることすら知らない)分担金、各部のOBOG会からの寄付金により賄われているのが実態です。また、一部大学の部に於いては、民間の遊技組織・団体から支援を受けている大学まで現れている実態です。

日本の大学競技スポーツには、共通した約束事、罰則、即ちルール、罰則が明文化しない為に競技スポーツの本質であるべきフェアネス(公平)を逸脱した運営、管理がなされているのです

②近年の大学・大学法人の傾向

 近年各大学は、教育とは異なる目的で大学競技スポーツをリードする傾向が目立っています。大学の売名行為に一役を担い、受験生の増加による増収にも貢献している実態も見逃せません。このような実態は、もう既にマスメデアに於いても紹介された記憶が蘇ります。

それは、近年ある大学の新入生が突然箱根駅伝で山の神となり優勝、翌年も、その翌年も4年目もと神がかり的な連続優勝を果たしたのです。この大学は、外国人の手を借りず全員日本人選手の努力の賜物として称賛されました。この新人選手の活躍でその年の受験者数が通年より平均10000人、それも4年間その数を維持したようです。これ即ち、経営者側に致しますと、今日の受験生一人の受験料は、35,000円ですから毎年受験料が、35千万円臨時収入が増加、それも4年間と···。関東の多くの大学が箱根駅伝に力を入れるのも理解できます。しかし、逆に長年連続出場していた伝統校の中には、シードを逃したり、予選会で落選したりで、受験生が激減したと嘆いている大学もあるようです。此の事からも、大学箱根駅伝は、大学の広告塔であり収入源でもある証です。

各大学は、競技スポーツ部を幾つかに絞り、学生達には公表せずに特定した部に対してだけ、特別強化費と称して大学法人から資金が重点投下されているのも事実です。大学競技スポーツに力を入れている大学では、特別強化費と称して「年間1億円から5億円」レンジでの投資をしています。この金額は、大学の規模に関わらず、平均的には23億円が投入されていますこのような投資は、何の目的の為に行っているのかは、もう読者の皆さんは推測できる筈です。最終的にどのようにしてこの投資資金を回収するめどを付けているのか、またこの費用対効果から考えた場合の毎年の成果と結果は如何なのか。大変興味深い日本の大学経営のマネ―ジメント手法でもあります。これは、決して教育が目的でない事だけは、確かなようです。

しかし、このような毎年の部活への投資の殆どは、成果と結果を出すためのビジネス・マネージメント手法が計画的、実践的でない為、無駄な投資となっているケースが多々あることも事実です。まさか文科省からの私学助成金補助金が当てられていない事を願う次第です。

③大学教育機関の企業化問題

近年に於いての大学経営は、会社、企業の論理と酷似して来ています。

その大きな要因としましては、大学法人の経理部門の責任者に大学の主要取引銀行からの天下りか、銀行から意を受けた人物が理事、常務理事兼務で送り込まれているケースが多く見受けられます。また、法人事務局長(二号理事として)、大学教学の事務局長、人事部長、職員に企業からの転職部隊が横行しているのも近年の大学経営の特徴です。

教育現場に於きましては、人件費の圧縮が目的で、講義授業については各学部共通科目を増やし、卒業単位(124単位)に加味する手法、ゼミ演習、卒業論文演習は選択科目とし、専任教員、非常勤教員のコマ数を減らす手法です。

これは、即ち所属学部以外での授業単位を卒業単位数に加味し、その学部以外での授業単位を60単位まで認めているのです。

まさに大学経営の生死を賭けた企業論理の導入であり、この論理は、全てのしわ寄せが学生に及んでいるのです。そしてまた、大学職員に於いては、従来の各部門、部署のベテラン職員の雇用を薄くし、人材派遣会社からの人材の雇用に重きを置いた合理化が遂行されている大学が目立ち始めている事です。このことによる弊害は、教学に於いては教員の資質及び人員削減に伴い、本来は学生ファーストであるべき教育機関の本質の喪失と、職員に於いては専門職でない臨時職員として腰掛のような職責の増殖から、学生及び教員に対するサポート体制、情熱を持った支援が成される筈の環境が崩壊して行っている様子が伺えます。

大学教育機関には、企業の論理、体質を持ち込むこと事態に大学経営者、管理者としての適性と資質を問うてしかるべきです。しかし、現在の大学設置に関する許認可基準では、経営者の適性、資質を判別する術がなく、大きな抜け穴と化し、全て学生達に不利益が与えられている次第です。

このような大学に文科省は、何故助成金補助金国税を流し込む必要性があるのでしょう。また、このような大学に於いては、大学競技スポーツに参加する事しか興味がなかったり、全く大学に於いて高等教育を受けうる意志やレベルにない学生選手達をかき集める手段として学内に見せかけの競技スポーツ施設を充実させたりして、このような学生達を集める手法を取っている大学経営者が増えている事も確かです。 言わば、学生達は、大学という看板を掲げ大学教育機関に特定の競技スポーツ施設を使用させる対価として部費、受験料、授業料を払って楽しく毎日元気にキャンパスで過ごしているのです。

④キャンパスに於ける学生選手の認識と実態

このような多くのスポーツ学生達は、毎日遊ばせてもらう事を主たる目的にしている学生、学生選手達の保育所的な現状の大学が近年増殖している事です。汗水たらして働いて授業料、生活費を仕送りしている父母関係者は、この現状、実態を理解、認識されていた上でサポートされているのでしょうか。そうであれば、全く大学経営者と父母との利害、認識が一致している事で筆者がどうこう意見する立場にありません。

しかし、このような若者達を食い物にしている大学経営者は、何と心得て教育者の顔をしているのでしょうか。此の所政府に於いては、労働者不足が叫ばれて外国人労働者の法案迄議論されている中、このような国内の元気な若者達がただ遊びに大学に来ている現状を何故改善、改革しようとしないのか非常に矛盾を感じる次第です。

この健康で体力のある全国の若者達の多くは、生産業に適しています。筆者は、このような大学、経営者の大学を間近で体経験して感じた次第です。何か今日の日本は、教育に対する基本的な概念が崩壊して行って居るように感じるのは筆者だけなのでしょうか。

今日では、大学に陸上競技部も設置しないでいきなり駅伝部を創設し、キャンパス内に宿泊施設ビルを建て、ビルの一階にはコンビニエンスストア―まで入居させるありさまです。学生選手をかき集める事が主たる目的なのです。多くのこのような大学は、教育とは名ばかりであるのはご推察の通りです。

文科省は、何故認可した各大学に対する精査、検証、監査、監督も行わず長年各大学の法人任せにしているのでしょうか。このような最高学府としての教育の看板を掲げる大学に対しては、許認可取り消しの強い姿勢で臨まない限り教育の環境とそれに伴うレベルの低下が否めない事を実体験致した次第です。

此処に於いても、箱根駅伝主催者と同様な何でもありの無責任なスポーツ・アドミニストレーションが大学キャンパスにまで及んでいる事を一般社会の皆さん、そして学生の父母はご存知でないようです。

筆者は、学生、学生選手を1つの集金マシーンと化した大学経営手法に対する大学教育及び経営に今こそ国の強い指針と施策が必要であるとご提案致す次第です。このような経営者、大学教学統括責任者は、いったい何を競技スポーツに期待し、何の為に教育機関を経営、運営、管理しているのかと我が目、耳を疑った次第です。

2.大学と箱根駅伝主催者との関係

①不明瞭な金品の受け渡し

近年の大学競技スポーツは、学生達の自治運営活動でなく、大学と法人の大人の都合による学生集めの広告塔と化し、受験料、授業料を運ぶ集金マシーンのツールと化しているように思えてなりません。特に各大学法人が特定する強化競技スポーツに顕著にみられる特徴です。

大学は、関東学生陸上競技連盟が主催する陸上競技大会に出場する為に関東学連に所属しなければなりません。箱根駅伝競走大会は、その競技大会の一つです。関東学連は、全加盟大学から加盟登録料を徴収している任意団体です。

 此処で素朴な疑問として、箱根駅伝主催者の関東学連は、近年出場権を得た20校に対して各大学個々に毎年2,000,000円(以前は1,500,000円)支給しているのです。勿論、本件に付きましても、主催者には、情報公開の義務がないので大学と主催者の間での閉ざされた取引であり、大学側も一切公開していません。

本金額は、合計しますと毎年40,000,000円となりますが、支給側、受給側、双方でどのような名目処理がなされているのでしょうか。主催者側は、何らかの名目で箱根駅伝出場20校に対してだけでも利益を還元しているとの証を残したいのかも知れません。しかし、これでは、学生選手及び学連生、バランテイア学生達への還元になっていません。何故主催者、大学双方は、本件並びに余剰金の使途を公にしても差し支えないと思いますが、しないのでしょうか

また、これは、信じがたい話ですが、出場校に対して主催者、スポンサーからサッポロビール黒ラベル缶が段ボールで学生選手の合宿所に届けられるとの事を聴き、唖然とした次第です。多分これは、何の他意もなくスポンサーがアルコールの会社、企業なので軽い気持ちで宣伝を兼ねて、祝勝会、残念会、ご苦労さん会で飲んで下さいという意味だと理解したいです。しかし、合宿所には、大学生、未成年学生達が居る事、またその未成年者がアルコールを手にする事を何故、主催者、スポンサー企業、大学関係者は、配慮し止めないのか。もうただただ、関係者達の大人の良識、見識を疑わざるを得ないのです。

②学生・学生選手に対するモラル教育の低下

当然の事ながら、未成年学生選手のユニフォームの胸には、BIBナンバー(ゼッケン)にアルコールスポンサーのロゴを付けさせて14時間もテレビの生中継で露出、また主催者名で告知される全ての出版物の選手のユニフォーム写真には、スポンサー名と共に商品名も掲載されています。主催者規約には、学生選手の肖像権は関東学連に帰属されています。しかし、未成年学生がアルコールの広告塔になる了解は、何処にも明記されていません。

学生選手達をアルコールの広告塔として利用する事の非常識さもさることながら、この状態を長い年月において教育機関の教育者、指導者、経営者の誰もが指摘、止めない、この現実と見識は、如何なものでしょうか。このような関係者と一般社会の常識は、異なるのかも知れません。

ご存知の通り、わが国の法律では、未成年者の飲酒喫煙は禁止されています。勿論大学キャンパスに於ける飲酒喫煙は、殆どの大学で厳しく取り締まっている筈なのですが・・・。先進国に於いて、特に学生選手が出場する競技スポーツ大会では、アルコール、たばこの企業スポンサーは御法度でありますこれは、青少年の心身の健康管理が何よりも優先するからです。此のことからも、大学競技スポーツのアドミニストレーションが遅れている大学、国と称されても仕方のないレベルなのかも知れません。日本国に於ける大学競技スポーツを取り巻く関係者は、もう少し高い志を持ってサポートする品格も必要ではないかと思われます。

 特記事項:

 

筆者は、大学で教授職を賜りスポーツ・アドミニストレーション論の講義授業、付帯専門ゼミを指導致して参りました。大学競技スポーツのスポンサーシップに関する講義、ゼミに於いて、本箱根駅伝のスポンサーが何故アルコールの会社なのか受講生に説明できませんでした。そこで、私は担当教授として、本件に付きましてサッポロビール株式会社の広告宣伝担当統括専務氏宛に質問の書簡を大学名、学部名、担当教授名、講義授業、ゼミ演習科目名を明記して発送致しました。内容は、「御社は、大学箱根駅伝の冠スポンサーとしてサポートされています。付きましては、大学競技スポーツへのスポンサーとしての趣旨、目的をお聞かせください。また、アルコール商品の広告宣伝を何故学生選手に強いるのかも合わせてご説明頂ければ幸甚です。小職は、講義授業、ゼミで説明がつかないので苦慮している次第です」とお願い致した次第です。しかし、残念ながら同統括専務氏からの返信は、8年経過した現在もございません。

サッポロビールとは、そのような見識の会社、企業理念をお持ちの企業なのかも知れません。此処に皆様にご紹介させて頂きます。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレーター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

お知らせ:

次回は、K’sファイルNO.80箱根駅伝シリーズの最終回として掲載予定しております。最終回は、大学が箱根駅伝にどうしたら出場できるか、そのためには学生選手のリクルート活動はルールも罰則も無いので、その方法論は問われない。TVに多くの時間露出されれば大学経営のメリットになる。それじゃ日本人選手のみならず、外国人選手も買ってくるか方式をご紹介いたします。お楽しみに!