K'sファイルNO.86:新春東京読売ジャイアンツの開幕 無断転載禁止

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読者からの便り:K’sファイル8485、を自分の事として、読ませて頂いております。本当に河田先生がおっしゃっています生きた実践指導を受けている気持ちで背筋を正して勉強させて頂いております。これから春のキャンプに向かいます。キャンプの宿舎で仲間たちと夜の勉強会を始める予定です。此れで今年のキャンプでは、自分の為になるありがたい講義が受けられます。いつも貴重な専門知識を頂き頂きありがとうございます。お礼まで。

第三弾:TYG独り勝ちの時代の終演と新時代の幕開け

ドラフト・FA制度を歪める人のエゴ

ジャイアンツ(東京読売巨人軍TYG)独り勝ちの時代は終わりを告げ、新しいプロ野球界の足音が響く昨今となりました。この最大の要因の一つは、嘗てのような社会的にスーパースターと誰もが憧れ、認める選手がいなくなった事です。また近年のスーパースターと呼ばれる選手達が皆アメリカの地に憧れ、MLBを目指して海を渡っているからだと思います。

TYGに関して言えば、この現実に至った主たる原因は、球団、テイームの根幹をなす選手を育てる事を疎かにし、さらに選手を育てる指導者の育成も疎かにしてきたツケであることは明白です。完成した選手を買い集めると言う安易な経営者の手段、方針が、この現実を醸成して来たと言ってもいいと思います。

しかし、これも経営者がこれを最善であると決断したのですからそれは誰にも批判できるものでありません。その間に両リーグの多くの球団が、試行錯誤しながらジャイアンツに追いつけ、追い越せと地道な努力により、今日見違える様な球団に変身して行っているのは読者の皆様が実感する通りだと思います。何か古き良き時代の伝統的な球団だけが取り残されて行っている感がしてなりません

嘗て、1993年にTYGが主導的な役割を果し「逆指名」なる制度を打ち出し、本来のドラフト制度の趣旨、目的を歪める事態を形成して来たのはまだ記憶に新しい事です

この制度は、各球団2名迄欲しい選手を、選手側に逆指名させて獲得できる方式で、1位、2位指名確定後にドラフトを行う変則的な新人選手選択会議で在りました。その後、逆指名できることによる金銭的な競争が表面化し、名称を「自由獲得枠」と変えて各球団2名まで新人選手を確保できる方式に変更されました。しかし、これは名称が変更されただけで実質は変わらず、逆指名同様の問題が依然として解消されず、指名選手への契約金、年俸の上限の約束事が形骸化される事になったのでした。

莫大な裏金は、高校、大学、社会人選手に飛び交い、裏金の実態が発覚して社会問題にまで発展しました。複数の球団の経営者、管理者、選手達がその責任を取る形で終息した次第でした

丁度このような時期と前後して、プロ野球の複数の球団は、ドラフト対象になる高校球児を球団と関係の深い大学、社会人テイームに送り込み、意に沿わないドラフトを避けるための避難所としていた事もまぎれもない事実でした。その悪しき伝統と関係は、現在も尚継続しているようです。この特殊な指名制度及び名称は、裏金発覚事件の後消滅したのです。

結論から申し上げると、このような特殊な指名獲得方法は、特定の球団に対する偏ったメリットで始まり、ドラフトの趣旨、目的である「共存共栄」の原理原則を蔑にした新人選手獲得でしかなかったのですプロ野球界には、正義も公平も無かった事を社会に証明した事件の一つでした

しかし、1970年代後半の江川事件の手法と所業は、逆指名、自由獲得枠制度が消滅した後21世紀の今日も依然として改まる事無く、ドラフト拒否選手並びにその関係者が後を絶たないのは、何故なのでしょうか。

筆者は、最終的には直接関係する人達の心にどれ程の「正義Justiceと公正・公平Fairness」の理念、共存共栄の精神を尊重する経営者がいるか否かであると思います。読者の皆様は、日頃どの様に感じていますでしょうか。

ドラフト・FA制度の真の目的

フリーエイゼント制度(略:FA)は、前回も述べましたが現行のドラフト制度に対する選手への対価として認められている制度です

ドラフト指名制度は、各球団の戦力が拮抗する事により対戦カードが白熱し、ファンは一層熱量が増し、ひいてはプロ球団個々の事業(ビジネス)の拡大を図るツールとしても最善で最高の制度として導入されたのです。

もしこの制度を止め、TYGだけが毎年スター選手を獲得し、戦力拡大を図った場合、他球団との格差は一層広がっていつもTYGが勝ち、ゲームはつまらなくなって集客が期待できなくなります。そこで生まれた制度がこのドラフト制度なのです。

ドラフトにより選手が各球団に決められた期間拘束される事は、その対価として選手に拘束期間(MLBの場合は5年間、NPBでは8年高校卒、7年大学卒、社会人)明けに自由に行きたい球団と束縛なく交渉できる権利を与えたのです。

過去にTYGの経営者は、ドラフト制度の撤廃を声高に叫ばれていました。その理由は、選手個々は、人として職業選択の自由がある、との指摘であったと理解しています。選手が希望する職業の野球業に就職する自由は、誰にも奪われていません

ここで大切なのは、プロ野球という特殊な枠の中で行われる競技は、他にテイーム(球団)が無ければビジネス、興業が成り立たないという事です。テイーム競技スポーツには、どうしても対戦相手が不可欠で、そのテイームが集合体を結成して初めてリーグ戦が成立する仕組みと構造なのです。

それでは、TYGが主張した「ドラフト制度が選手の職業選択の自由を奪う」と理解するならば、欲しい選手ばかりを集めるTYGと、何処の誰が野球というビジネス、興業をするというのでしょうか。そこには、競技のルールと罰則以外にも、ビジネスを行う上での協約、規約が必要となり、各テイーム、所属選手、関係者、球団、組織が共存共栄できる環境を整えなければ事業として興業が成り立たない事を理解しようとされていないわけです。

ドラフト制度は、プロ野球という集団、組織の戦力が拮抗する為に人の自由を拘束する制度であり、その対価として選手にはFA制度の権利が与えられました。即ち皆が共存共栄する為に作られた大事なルールなのです

TYGの経営者には、共存共栄の原理原則をご理解して頂き、協調性の精神を是非養って頂きたい次第であります。

経営者の極端なエゴを最優先させる事は、最終的には社会、業界、ファンに取り残されて行くのが自然の論理なのかも知れません。そのような経営者には、一日も早く気付いて頂きプロ野球、球団は日本社会に於いて大事な公共の財産として社会に還元して頂きたいと筆者は、スポーツ・アドミニストレイターとして切に願う次第です。

球団経営者と選手間の力関係が不均衡

読者の皆様は、毎年シーズン中、シーズン後にFA資格取得選手がNPBよりマスメデイアを通して公表されて知る事となります。日本的なFAルールには、MLBと違って、完全な自由をFA取得選手に与えるのでなく、細かな縛り付けがなされているのはいかにも日本人的な発想からか、利害、利権の観点からか、最後の最後までFA選手から利権を剥ぎ取ろうとする魂胆が見え隠れしているのです。

FA資格を取得した選手達は、シーズン中どのような思いでプレーをしているのでしょうか。FA選手は、毎年取得条件を満たした選手が資格を得て告知されるのです。しかし、FA資格を取得したからと言って全ての資格者がその利益を獲得できるわけではありません。殆どの資格者は、所属球団と再契約して残留するケースが一般的なのは御承知の通りです。読者の皆様が注目するような選手達は、入団からFAを取得するまでの間、名実共にプロ野球界で活躍し実績を残して来ている選手達なのです。その中において、ある選手は、ピークを迎え、またある選手は既にピークを過ぎ、と様々な現実を抱えているのです。

ところで、FA権を取得した選手は自身の権利を行使するかどうか、なかなか態度を表明しない理由と原因は何処にあるのでしょうか

読者の皆さんは、大多数の選手が態度を保留する状況を不思議に思われているのでないでしょうか。そこには、理由があるのです。此れもMLBのFA権取得選手と日本のFA選手とでは違いがあるのです。

此処で先ずMLBと日本的FA制度の違いを説明したいと思います。前回のK’sファイルで触れさせて頂きましたが、覚えて頂いていますでしょうか。その一つは、MLBのFA選手は、完全に自由契約選手として何処の球団とも交渉可能、勿論旧所属球団との交渉も自由なのです。しかし、日本のFA選手は、先ずFA権を行使するか否かの選択を迫られます。FAを行使する場合は、宣言をNPBにしなければならず、また、FA権を行使せず保留にして、その後も行使する権利を有しているという複雑な状況にあるのが特徴なのです

他に大きな違いは、MLBの選手は、個々に交渉代理人(エイゼント)を持っている事です。日本の選手は、選手会・労組が代理人制度を勝ち取ってはいるのですが、大多数の選手が代理人を使用しないのが現実です

此れには、幾つかの理由を球団、選手側共に抱えています。よって、制度の権利を活用できるが、球団経営者側は快く思っていないため、選手側にネガテイブな条件を付けている事も、選手側が代理人制度をポジテイブに活用しない理由の一つなのです。

個々の選手は、交渉に於いての専門的な知識、法的な知識を持ち合わせていませんそこで球団側は、選手本人と直接交渉する事で球団側のペースでスムーズに契約を完了させる事が最大のメリットとなります。しかし、選手が代理人を連れて交渉に入ると球団側の担当者よりも遥かに交渉人の方が法的知識も豊富で交渉は球団ペースでは進みません。そこで、経営者側は、代理人規約に代理人は弁護士資格取得者に限定し、一人の弁護士は一人の選手しか代理業務を認めないと制限を設けているのです。この制限により、代理人に興味のある弁護士は、複数の選手を抱えられないのでビジネスにならないのが現実です。また、選手側には、弁護士と聞くと、高額なお金を巻き上げられるのではないかとか、球団側が快く思っていない為、条件提示で嫌がらせをされるのでないかとの不信感があるのです。このような事を球団経営者達は、百も承知で制限を付けている次第です。

残念ながら、日本人選手の殆どは、代理人活用によるメリットを十分に理解できていませんその大部分の要素は、専門的な知識不足に起因しています。これは、高額な年俸を得ている選手程、代理人が弁護士しか認められていないので弁護士料を払う金が勿体ない、そんな金を出すのなら自分で直接交渉して済ませた方が得だくらいにしか考えが及ばないようです。自身は、個人事業主で在るので代理人を立てて専門的な交渉事(ネゴシエーション)を任せることにより、契約条件が改善され収入も向上し、弁護士料ぐらい交渉次第でいくらでも穴埋めができ、弁護士料は個人事業主の経費なはず、という発想、ビジネス知識もない選手が大多数です。このような選手達の思考力は、球団経営者には笑いが止まらないのが現実です。選手には、自分を守ってくれるのは誰なのか、仕事に対する評価価値を球団と交渉して、如何にして数値引き上げてくれるのかをもう少し教育機関にいる間に学んでおく必要があります。

少なくとも自分の将来に必要な実践教育は、貪欲に受けて身につけておくべきなのです。そうでなければ勿体ないとしか言い様がありません。

筆者の体験で得た素朴な疑問

FA取得者は、毎年シーズン中に権利を取得するケースが多く見受けられます。この取得者の中には、ファン、マスメデイアが特に注目する選手達も勿論入っています。

筆者がベースボール・アドミニストレイターとして在職時には、毎年複数の他球団のFA権の有資格者からあらゆるルートを駆使してのコンタクトがありました。これらFA資格者は、在籍球団の主力選手で毎ゲーム出場している選手なので業界では誰一人知らない人はいないと思われます。しかし、このような選手の深層心理は、FA資格を保有しているのに自分の希望する球団からは何のコンタクトも来ない(これは現行ルールでは、違反行為に当たる)、シーズン中にも関わらず精神的な不安に駆られる例です。

そこで、このような選手達は、シーズン中にも関わらずリスクを冒してでも意中の球団の意思を確認したいのです。

選手達は、自身代理人を持っていないので自身と信頼関係のある友人、知人を代理人に仕立てて意中の球団の知人、友人、親友を頼ってコンタクトを試みるのです。

その選手達の伝言メモの内容は、「自身がFA宣言したら貴球団で取ってくれますか」が第一段階です。当該選手は、所属球団の中心選手であり、ライバルテイームの選手として戦っているわけで、毎度呆れて言葉も出ないのが現実でした。

因果にも当時の小生の職責から、毎年このような伝言メモが人を替え、品を替えて関係部署経由で上がってくるのです。私は、このような選手が所属している球団に対して尊敬の念とモラルから、伝言メモのルートを通じて相手に傷を付けない様丁重に「シーズン中であり時期が来るまでは、本件に付いての回答ができませんのでご理解下さい」との返事を口頭でお伝えし、最終的にはお断りした事を鮮明に記憶しております。この様な選手の内数名は、FA権利を行使して他球団に移籍して行かれました。他球団にも同じような手口を用いられているようです。

このような現実と事実から自信のあるFA有資格者が資格公示後、FA宣言ができない、しない理由を読者の皆様は理解されたのではないでしょうか。宣言する前に確約が欲しいという意味なのです。

この様な事例からも、FA選手達は選手会、労組の代表幹部、経験者でもある立場の選手でもある事が多いことから、ルールを遵守する事を労組・選手会に於いて徹底するようお勧めする次第です。この様な高額所得者の選手達が選手労組、選手会の幹部、執行部に居ては、弱い立場の大半の選手達を球団経営者から守もることなど不可能であり、先ず選手のモラリテイーの教育、改善が必要不可欠である事を警鐘させて頂きます

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

お知らせ:

この度は、普段読者の皆様がプロ野球界、ドラフト、FAに付いて多分素朴な疑問と理解しがたい諸般の疑問をお持ちであろうかとの思いで、説明できる範囲で述べさせていただきました。如何でしたでしょうか。