K'sファイルNO.91:2020東京五輪招致の暗黒の霧はいつ晴れる

K'sファイルNO.912020東京五輪招致の暗黒の霧はいつ晴れる

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読者からのコメント~

「河田さんが書いておられるように、招致委員会の二つの組織の大部分の方は会議で「異議なし」と発するだけの何も知らない人か、オイシさにあずかっていてだんまりしている人なのでしょう。そもそもこの評議会と理事会との関係は、普通の在り方で考えるとおかしいです。通常、理事会は実務の執行機関で、その決定は評議会の承認を受けて正式決定になりますから、評議会は理事会が正しく活動しているかチェックする上位機関のはずです。しかし、招致委員会の評議会の議長は何と、理事会の長その人ではありませんか! 

実際に物事を動かしている人たちは裏にいて、これら表の組織はおっしゃっているように形骸化した、形式的なものになっていることを示しているようです。議事に参加するメンバーたちにも問題意識はなく、メンバーになってハクが付いたくらいのことでしょう。内部から正しいことを言うとか改革するなどとてもとてもという感じだったのですね。我が国では、他の組織でもそうですが、内からの改革は難しいですね。」

 

第四弾:20東京五輪招致委員会の究極の選択

1.16リオ五輪招致活動と20東京五輪招致の疑惑が酷似と何故揶揄されるのか

リオ五輪招致勝利の事情

リオ五輪招致委員会の勝利には、幾つかの要因があると思われます。大きな要因の一つは、ブラジル・オリンピック委員会(略:BOC)のカルロス・ヌズマン会長と国内企業の強い関係が挙げられます。もう一つは、BOCIOC国際オリンピック委員会)との関係に於ける日本企業電通との関係にあると推測されます。前者の要因は、至極当然の関係であります。

読者の皆様には、解りづらいかも知れませんので少し説明させて頂きます。

IOCは、全世界のオリンピック活動に関する全ての権利を有する唯一の大会を経営、運営、管理をする組織・団体です。よって、IOCは、世界各国のオリンピック競技大会に参加する国々に対して、NOCNational Olympic Committee国内オリンピック委員会)の設置を義務付け、IOCは各NOCにオリンピック活動に関する個々の国内の運営、管理を委託し、その構造とシステムが確立されているのです。

例えばJOCBOCは、それぞれIOCから委託を受けた国内のオリンピックに関する運営、管理をする組織・団体でIOC翼下の直轄団体なのです。よって、国内のオリンピックに直接関係をしない諸問題、行事には、関わるべき団体ではありません。

企業電通が巨大スポーツ電通に変身したその礎

それでは、企業電通が何故IOCNOCに関係しているかという疑問が読者の皆様は持たれるのではないでしょうか。

企業電通は、1984年ロスサンゼルス・オリンピック大会組織委員会(略:LAOOC)の公式広告代理店として、世界で初めて組織委員会が必要な予算額をギャランテイー(金銭的保証)してスポンサー広告に関する全権利を組織委員会から買い取ったのです。これは、当時画期的な出来事でした。

当時LAOOCの会長のピーター・ユベロス氏は、IOC総会での招致に関するプレゼンテイションで「84ロス五輪は、国、州、市の公金を一切使用しないオリンピック大会にする」と公言したのは、今日も語り継がれている名言です

LAOOCは、開催予算額を企業電通が保証し、民間資本(当時90%以上のスポンサーは、日本企業)の投入により大成功を収めたのです。その上にLAOOCは、約440億円のオリンピック歴史始まって以来の黒字決算となりました。ユベロス氏は、公約通りに440億円をカリフォルニア州、市の社会施設に全てを還元し、成功裏にLAOOCの任務を果したのでした。このユベロ氏こそが、真のスポーツ・アドミニストレイターの姿として当時も今日もリスペクトされている所以なのです。このような人物は、20東京五輪組織委員会には見当たりません。

企業電通は、このビジネス・サクセスストーリーがスポーツ電通を世界に今日に於いても轟かせている礎となっているのです。LA五輪実績を基盤にスポーツ電通として巨大化していく様子が描写できるかと思われます本スポーツ電通の実践現場の様相は、本シリーズ後に「リマインド」として再紹介させて頂きます。是非ご一読下されば幸いです。

企業電通IOCをクライアントとして

もちろん、LAOOCでの民間資本導入での成功を横目で眺めていた当時のIOCのアントニオ・サマランチ会長は、そのような甘い蜜を見逃すような人物でありませんでした.

1984年以降のオリンピック大会をもっと金の儲かる巨大なビジネスにしようとサマランチ会長は、IOCの独占広告代理店(Excusive Advertising Agency)として株式会社電通(略:電通)を指名し、長期契約を成立させ今日に至っている次第です

よって、企業電通は、IOCのビジネスパートナーでありIOCが委託しているNOCは莫大な恩恵をIOC経由で受けている関係である事を此処にご紹介し、読者の皆様の心の片隅に置いて頂ければこれからのK’sファイルの展開がより解りやすいかと思います。

このようなIOCNOC、広告代理店電通の関係から、企業電通にとっては、オリンピック大会が何処に招致されようと電通本体のビジネスに何の支障も起きないシステムが構築されているのです。即ち、オリンピック関連のスポンサービジネスに関しては、全て何処で大会が開催されようとも電通を通さない限りオリンピックスポンサーになり得ない構図が完成されているのです。 

2.企業電通国際陸上競技連盟との親密な関係

①企業電通のさらなる野望

此処でIOCだけが美味しいパイにあやかっているのではありません。企業電通は、IOCは世界最大のオリンピック・イベントを保有している一つのクライアントでしかすぎないのです。

LAOOCでのビジネス実績、IOCのビジネスパートナーとしての信頼を担保に次に大きなマーケットを保有しているIGBInternational Governing Body国際競技連盟)加盟団体のFIFAFederation International of Football Association国際サッカー連盟)のワールドカップ・サッカー(略:W杯サッカー)の権利を手に入れるためにLAOOCの利権を得ていた当時、同時に作業が進行し、結果1982年のW杯サッカー・スペイン大会の会場で「スペインの嵐=電通は他企業が保有していた権利を強奪」と呼ばれるドラマを演じたのです。これにより企業電通は、FIFAの独占広告代理店としてこれまた長期契約を結んで今日に至っているのです。

次に企業電通がターゲットとしたのが、皆さんも記憶にある「91世界陸上東京大会」でおなじみのIAAFInternational Association of Athletics Federations国際陸上競技連盟)で、独占代理店契約を締結し、今日に至っているのです。電通が契約した当時は、IAAF4代会長のプリオ・ネビオロ氏(イタリア)で、本五輪疑惑に関わったのは第5代会長のラミン・デイアク氏(セネガル)でした。よって、電通は、デイアク氏とはビジネスパートナーの間柄であり、この親密な関係に於いて、内部情報を手に取るようにオンタイムで把握できる立ち位置にいたのです。

読者の皆様は、パズルのピースが段々と正しい位置にセットされ、隠されていた疑惑の絵模様が浮き彫りになってきたのではないでしょうか。

リオ五輪招致勝利の方程式

リオ五輪招致委員会は、最終的な票集めのキーとなる勝負の分かれ目はIOC委員の数十票と結論付けていたと推測されます。リオ五輪招致委員会の実力者は、ブラジル五輪委員会(BOC)会長のヌズマン氏と言われていました。

最終的にIOC総会の数日前に、ヌズマン会長は、ブラジル企業から得た資金を国際陸連IAAF)のデイアク会長とその息子(パパマッサタ・デイアク氏)に買収資金として渡し、IOC委員の確かな票の買収を実行に移すため仲介役になったと言われています。その模様は、既に海外メデイアが当時から報道して来た通りで、ヌズマン氏はブラジル当局により逮捕されました

フランス検察当局は、兼ねてよりロシア選手の薬物疑惑隠ぺいに関わっていたデイアク氏と息子のフランス国内での資金洗浄に端を発した捜査から、リオ五輪招致に関わる確証を得、一気にリオ五輪招致の不正を解明。その過程に於いて20東京五輪招致不正の事実を押さえたので、本格的な捜査に踏み切ったと思われます

16リオ五輪招致に関する報道

1)201733日(仏ルモンド(Le Monde)紙):

リオ五輪招致の不正疑惑で検察が捜査

2016年に行われたリオデジャネイロ五輪の開催地決定に絡み、賄賂が支払われた疑いがあるとして、フランス検察が捜査を行っていることが明らかになった。

国際オリンピック委員会IOC)は、仏検察当局とコンタクトを取る意向を示すとともに、2009年に開催地がブラジル・リオデジャネイロRio de Janeiroに決定する以前に、IOCメンバーのフランク・フレデリクス(Frank Fredericks氏に金銭が支払われていたとして、倫理委員会が調査を行っていると述べた

ルモンド紙は、仏検察の捜査官が「2016年大会の開催地がリオデジャネイロ決定したプロセスを疑う証拠を固めている。リオは不正を行っていた疑いがある」と報道。 

2)2017113日:[パリ 3日 ロイター]

陸上の元短距離選手で国際オリンピック委員会(IOC)のフランク・フレデリクス委員(ナミビア)に対し、2016年リオデジャネイロ五輪招致を巡る不正疑惑でフランス検察当局が本格的な捜査に着手したことが分かった。捜査関係者が3日、明らかにした。フレデリクス委員は現役時代、1992年バルセロナ大会と1996年アトランタ大会で合計4つの銀メダルを獲得した実績を持つ。リオ五輪招致を巡って賄賂を受け取り、パリで資金洗浄をした疑いが持たれている。

同委員に対しては、リオデジャネイロの招致が投票で決まった2009年のIOC総会当日に、当時IOC委員だったラミン・ディアク前国際陸連会長(セネガル)の子息から送金を受けていた疑いにより、既に調査が行われている。

3)同年114日(共同):フレデリクス委員は、当時IOC委員だったラミン・ディアク前国際陸連会長セネガル)の息子から送金があったと報じられたが、不正を否定している。ディアク親子は20年東京五輪招致を巡っても多額の資金を受け取ったとの疑惑が持たれ、フランス当局が捜査している。

4)2017/10/6日本経済新聞配信【サンパウロ=外山尚之】):

ブラジル連邦警察局5日、2016リオデジャネイロ五輪の招致に関する贈賄容疑で、ブラジル・オリンピック委員会のヌズマン会長を逮捕した。国際オリンピック委員会IOC)委員ら関係者を買収するための賄賂は少なくとも200万ドル(約22500万円)にのぼるというヌズマン会長はIOC委員らに対し、開催国を決める投票の見返りに、ブラジルの実業家などから集めた資金を渡すスキームに関与していたという。リオ五輪を巡っては競技場の建設費が水増しされており、その一部が政治家への賄賂の原資になるなど、政官財が一体となって裏金を捻出していたことが明らかになっている。賄賂を受け取ったとされるIOC委員のひとりは20年の東京五輪を巡る招致活動でも金銭の授受があったとされ、名前が取り沙汰されている

4)NHKのニュース報道より

ブラジルの捜査当局は、先月、リオデジャネイロへの招致が決まった2009年のIOC国際オリンピック委員会)の総会の直前に、IOCの当時の委員で開催都市を決める投票権を持つセネガル出身のラミン・ディアク氏の息子の会社と息子名義の2つの口座に、ブラジル人の有力な実業家の関連会社から合わせて200万ドルが振り込まれていたと発表していた。捜査当局は、ヌズマン会長が、「贈賄側のブラジル人実業家と収賄側のディアク氏との仲介役を担っていた」として、自宅を捜索するなど捜査を進めてきた結果、2009年のIOC総会の直後、ディアク氏の息子からヌズマン会長に対して、銀行口座に金を振り込むよう催促する電子メールが送られていたことなどから、票の買収に関与した疑いが強まったとして、5日、逮捕したとのことだ。

20東京五輪リオ五輪に関する報道

1)2017.9.13(英紙ガーディアン(電子版)):

五輪招致の不正疑惑…東京、リオで買収と結論 

2016年リオデジャネイロ五輪と20年東京五輪招致の不正疑惑を巡り、ブラジル司法当局が両五輪の招致委員会から、当時国際オリンピック委員会(IOC)委員で国際陸連会長だったラミン・ディアク氏(セネガル)を父に持つパパマッサタ・ディアク氏に対し、多額の金銭が渡った可能性があると結論づけたことが分かった。

2)(共同)フランス当局の捜査を基に書類をまとめたブラジルの当局は、IOC内で特別な影響力があったラミン・ディアク氏を買収する意図が あったとしている。両五輪の開催都市が決まった前後に、疑惑の渦中にあるパパマッサタ・ディアク氏がフランスで高額の時計や宝石を購入した際の支払いや口座の記録も確認されたとしている。ガーディアンは昨年、同氏と関連のある業者の口座に東京招致委から多額の送金があった事実を報じた。東京側は不正を否定している。

以上本件に関わる内外の報道を一部ご紹介させて頂きました。 

3.筆者の素朴な疑問と私見

フランク・フレデリクス氏の出現と現金の流れ

読者の皆様は、上記K'sファイル及びマスメデイア報道内容から16リオ招致の決定的シナリオのキーが何処にあったかを想像できるのではないでしょうか。

筆者が一番驚いたソースは、フランク・フレデリクス(Frank Fredericks氏の名前です何故驚いたか、私は、フレデリクス氏が米国の大学に留学している頃から学生選手として大変よく存じていたからです。彼が、このような事件に巻き込まれているなど驚くよりショックであった事の方が正直な気持ちです。

確か、20173月でしたか、フランスのルモンド紙、英国のガーデイアン紙がフレデリクス氏の名前をリークした英字報道を米国の友人から送られて来た時でした。時を同じく、米国の陸上関係者、及び大学関係者より連絡を受けその時最初に彼の本件への関わりを詳しく知った次第です。彼を知る多くの米国関係者達は、私同様に信じませんでした。それ以降私は、海外の報道並びにフレデリクス氏と親しく、本件をよく熟知している米国、英国の陸上競技関係者達から情報を頂いていました。

フレデリクス氏は、学生選手時代からアカデミックに於いても学業優秀で何度もオールアメリカンに選ばれた優秀な留学生選手でした。アスレテイックスポーツに於いては1991年のNCAA(全米大学競技スポーツ協会)主催の全米大学陸上選手権に於いて、室内200メートル、屋外100200メートルのNCAAチャンピオンに輝き、オリンピック大会、世界陸上大会に於いても多くのメダルを獲得した、名実ともに世界のトップスプリンターの1人であったのです。

人物的には、誰もが認める大変温厚な人柄で、冷静沈着、世界中の選手達からもリスペクトされていました。その証として、フレデリクス氏は、嘗て室伏広治選手が立候補し違反行為をして立候補を取り消されたIOCのアスリート委員にも満場一致で選ばれた人物であったとも聞いています。彼ほど実直で軽はずみな行いを慎み、曲った事を好まなかった彼が何故このような事を起こしたか?

F.フレデリクス氏の苦渋の決断

フランク・フレデリクス氏は、米国の大学を卒業後母校の指導者として仕事のオファーを受けたにも関わらず、彼は母国ナミビア(アフリカ)に帰国したのです。此処からは、筆者の私見及び推測に成ります事を先ず理解して頂ければ幸いです。

彼は、母国に帰りましても英雄だったと聞いています。それは、彼が将来のナミビアの大統領との噂も米国には流布して来ていた事から想像できるかと思われます。また、彼は、親日家でもありました。

そして、アフリカ諸国のIAAF加盟国、IOC加盟国の重鎮達からも尊敬し慕われる人物で在った事は事実です。既に当時IAAF国際陸連)の会長であったデイアク氏(セネガル)は、フレデリクス氏の人徳を十二分に知っていた事は言うまでもなかったと思われます。一方、デイアク氏親子は、アフリカ諸国に於いてあまりリスペクトされる人物でなかったようです。デイアク会長にとって、フレデリクス氏は政治的に利用できる貴重な存在であったに違いないと推測する次第です。

その証として、デイアク会長は、年若くしてフレデリクス氏をIAAFの重要ポジションに迎え入れ、同時にIOCの委員に推薦し、重要なポジションを与えていたのです。また、フレデリクス氏も、デイアク会長を後ろ盾にIAAFIOCの表舞台に立つようになりました。そこでまた、彼を将来のIAAF会長に、IOCの会長にとの噂が欧米にまで広まっていたのも事実です。このような事から、同氏とデイアク氏の関係は、抜け差しならない状態になっていたのだろうと推測せざるを得ないのです。

そこで、16リオ五輪招致に関するアフリカ諸国のIAAFIOC関係委員達の買収に手を染めてしまったのではなかったか。外電では、彼はデイアク会長の息子から約3000万円が手渡されていたと報道されています。フランス当局も認めています。

フランス検察当局は、フランク・フレデリクス氏を起訴し本格的な聴取、捜査を決断しました。確か2018春にフランス検察当局との間で司法取引(plea bargaining)に応じ、既に証言(testify)を行い、確か昨年秋ごろには母国ナミビアに帰国したのだと思われます

彼の性格からしましても、この司法取引は、大変苦渋の決断であったと推測致します。現在彼は、母国ナミビアで家族(二人のお子さんと妻)と平穏に生活しているとの事を風の便りで聞きます。今後さらなる証言に戻らなければならないようなので、許可なく渡航が出来ない状態が続くのかも知れません。時系列から致しますと、竹田恒和氏(JOC会長)がフランス検察当局から呼び出されたのは、20181210日であったので、丁度フレデリクス氏が母国に帰国した後だったのかも知れません。

彼が、2020東京五輪招致にリオと同じルートと手順で関わったかどうかの証言を司法取引で行ったかどうか、筆者は知る由も在りません。

彼と彼の家族が平和で健康的な生活に一日も早く戻れる事を遠い日本から祈ってやみません。犯した罪は、自ら償わなければなりません。勿論、米国の大学関係者、指導者、友人、知人達は、如何なる手を差し伸べる事もいとわない思いで彼の反省と再起を心より願っているに違いありません。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

お知らせ:フランク・フレデリクス氏の件は、積み重ねて来た若者の努力と栄光が、自身の心の隙間から忍び寄る悪魔の手により一瞬にして失ってしまった例ではないでしょうか。これは、他人事でなく誰にも起こりうる近年のスポーツ界である事を教えてくれました。今日、現在日本に於いても東京五輪関係者のみならず、本件は他人事でありません。次回NO.92では、2020東京招致委員会から2020東京五輪組織委員会への移行に起きる様々な報道されない陰湿な出来事を素朴な疑問としてお伝えできれば幸いです。