K'sファイルNO.92:2020東京五輪招致の暗黒の霧はいつ晴れる

K'sファイルNO.922020東京五輪招致の暗黒の霧はいつ晴れる

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第五弾:20東京五輪招致委員会の役目終了

1.政治家論理は真のスポーツを歪めてしまった

本シリーズの経過と紹介

KsファイルNO.88の第一弾では、竹田恒和氏(20東京五輪招致委員会理事長、JOC会長)の疑惑とは何か、をお伝えし、NO.89の第二弾では、竹田理事長が知っていた事知らなかった事。NO.90の第三弾では、2016東京五輪招致敗戦と大勢の政治家達。NO.91では、16リオ五輪20東京五輪の招致の勝因と暗躍する闇のネットワークの存在について述べました。

今回の本NO.92では、20東京五輪招致成功の裏には、リオ五輪招致成功の模倣による勝利との疑惑が深まっていく中、日本国内に於いては、招致決定後に不可解な出来事が起きていた事を、知ってか、知らずか、それは殆ど語られず触れられずに葬り去られるのではないかと、筆者はふと素朴な疑問に行き当った次第です。これらは、日本に於ける今日の政治家とスポーツの特殊な関係なのかも知れません。 

この不可解な出来事は、16東京五輪招致活動のスタート時点から20東京五輪招致を経て、現在の20東京五輪組織委員会発足後に至るまで、国民、社会に取って大切な情報公開がなされていないという、欠陥のあるスポーツ・アドミニストレイションが成されてきたことであり、今回、その根幹を解りやすくお伝えできればと思います。

①オリンピック開催地、東京に決定!

[NEWS 20130907 1722JST]

筆者は、この一報を現地ブエノスアイレス(アルゼンチン)からのTV報道で知り、心より関係者の皆さんのご努力にお疲れ様と述べたい衝動にかられました。

しかし、次の瞬間TVカメラが日本のデリゲーション関係者席に振られると、感激で飛び上がり、抱き合っている歓喜の瞬間の幾重もの渦の中に、何か違和感を感じる映像が飛び込んで来たのでした。1枚は真ん中に安倍晋三氏、左に東京都の猪瀬直樹知事、右に森喜朗氏の構図の写真。そしてもう1枚は、安倍氏を中心にやはり左に猪瀬氏、右には水野正人氏がおり、水野氏と安倍氏は肩を抱き合って喜びの絶頂にありました

この世界最大の招致活動に勝利し、歓喜がほとばしる表舞台とその裏側では、「抱き合い、キスして歓喜している人達」、「抱き合い、クライ(涙)していた人達」、「裏での約束を果たし、プロの仕事を完了してホテルのバーの片隅で、TV映像を観ながら静かにほくそ笑んでいる人達」・・・と、それは悲喜こもごもの情景が筆者の脳裏と瞼に浮かびました。

ただ、筆者の脳裏を何か引っかかる物がかすめたのでした。その時脳裏にインパルスが走ったのは、多分長年に渡り競技スポーツ業界の実践を経験してきたスポーツ・アドミニストレイターとしての直感だったのだろうと思います。今後、明日の朝から始まるであろう生臭い戦いの後処理が思い浮かんだのです。

この時、竹田恒和氏(招致委員会理事長、JOC会長、IOC委員)や招致委員会に対する招致疑惑が世界中を駆け巡る事になろうとは一体誰が予想したでしょうか。

歓喜は、一瞬にして起き、一瞬にして現実の世界に引き戻されるのです。あの歓喜の最前列に居て、TVの映像に入っていた人達、入りたかったであろう他の政治家達、JOC関係者達は、どんな思いでその情景を眺めていたのでしょうか。直接的には、関係のない政治家達がどのような理由と公費であの場に大挙して押しかけていたのか知る由もありません。この様にして、約数百億円と言われるプレゼンテイションショーは、一夜にしてシャンペンの泡と化したのでした。

その後、国内に於けるポリテイカル・パワーゲームは、いよいよ最終戦の火ぶたが切られるのですが、この2枚の映像写真の中で歓喜に酔いしれている方々がこれから主人公を演じ、そしてその勝ち組と、負け組が、今日の社会を明確に色分けしているのです。もちろん、勝ち組の頭領は、現在神輿の玉座に鎮座し、権勢を思いのままに振るっており、一方、負け組は、先ず初めに猪瀬直樹東京都知事が選挙に於ける不正金銭問題を指されて場外退場となりました。

②本招致活動に心血を注いだ人物

此処で読者の皆さんには、注目して頂きたい人物がいます。下記の20東京五輪招致委員会の役員名簿をご覧いただきますとお気付きになられるかと思われます。理事会メンバーの殆どの顔触れは、何らかの形でJOC日本オリンピック委員会、各競技団体)に関係されている方々です。この方もJOCの副会長の肩書を持たれているのですが、唯一民間企業の経営者で在られる事がその特徴です。その方は、「水野正人氏」です

筆者は、一般企業経営者の水野氏がどのような経緯でJOCの理事、副会長に、また、20東京五輪招致委員会の事務総長、専務理事となられたのかの経緯を知る由もありません。しかし、この人事は、他の役員メンバーと比較しまして少し特異な存在に感じた次第です。これが後に同氏に大きな災いをもたらすことになるとご本人、及び同氏の企業の重鎮達、関係者は、予想していなかったのかも知れません。

水野正人氏は、日本スポーツ界に多大な貢献をされて来られた人物であり、ミズノスポーツとして企業経営者で在る事は既に読者の皆さんもご承知のはずです。

水野正人氏 略歴:

2001年(平成13年)日本オリンピック委員会理事。

2004年(平成16年)藍綬褒章を受章。

2006年(平成18年)ミズノ代表取締役会長就任。

2007年(平成19年)日本オリンピック委員会副会長就任。

2011年(平成23年)東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会事務総長就 

         任。職に専念するためミズノ代表取締役会長を退任。後に、副理事

         長兼専務理事に役職変更。

2013年(平成25年)第125IOC総会での最終プレゼンで大きな身振り手振りを交えた

         スピーチを行い、東京オリンピック招致の立役者の一人となった。

以上Wikipediaより~

上記略歴の通り、水野氏は、株式会社ミズノの最高経営者(CEO)であったのです。

 

20東京五輪招致理事会 役員名簿リスト

理事会http://token.or.jp/magazine/e201205.html

理事長 日本オリンピック委員会JOC)会長 竹田恆和

副理事長/専務理事  JOC副会長       水野正人

副理事長       同副会長        福田富昭

副理事長       同専務理事       市原則之

副理事長 日本障害者スポーツ協会副会     伍藤忠春

副理事長 東京都副知事            佐藤 広

理事 日本体育協会              岡崎助一

理事 日本オリンピック委員会理事       橋本聖子

理事 同国際専門部会員            鈴木大地

理事 パラリンピアン             成田 真由美

理事 日本オリンピック委員会理事、アスリート専門部長 荒木田 裕子

理事 同理事、国際専門部長          野上義二

理事 同理事(元東京2016招致委員会事務総長)河野一郎

理事 同総合企画・国際部長(元東京2016招致委員会事務次長)中森康弘

理事 東京都スポーツ振興局長         細井 優

監事 日本オリンピック委員会監事       深津泰彦

監事 東京都財務局長             安藤立美

東京20東京五輪招致委員会 評議会名簿

招致委員会評議員(余りにも膨大な人数の政治家諸氏の為スペースに限り有、URLをご利用下さい)

http://www.nga.gr.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/3/2h231220goriniinnmeibo.pdf

以上2020東京五輪招致委員会サイトより~

 

水野正人氏の存在が何故特異であったか

筆者のスポーツ・アドミニストレイターとしての視点から誤解を恐れず申し上げます。私は、水野正人氏が2001年にJOCの理事に就任された時に既に違和感を持ったのは確かでした。しかし、JOC評議員会は、執行機関の理事会の人事について異議も無く承認している事、そして、やがて同氏は、2006年に株式会社ミズノの代表取締役兼会長に、即ち最高経営者(略:CEO)に就任、翌年にJOC副会長に就任された次第です。

筆者は、この状況に違和感を持ちながら静観していましたが、残念ながら同氏企業内からもJOC評議員会、理事会からも何の異議を唱える方が居ない事に驚きました。僭越ながら私の推測では、水野氏の企業役員会もこれまたイエスマンの集団だったのでないかと疑念を抱いた次第です。今日のグローバルな会社・企業に於いては、特にこのような特殊な外部での重責、活動には慎重な意見とブレーキがかかる筈なのです。

何故ならばJOCは、公益財団法人であり特に日本国内のオリンピックスポーツ競技に関する経営、運営、管理の頂点にある組織・団体なのです。この組織・団体の理事、副会長氏が総合スポーツ用品・販売・メーカーの最高経営者である事は、常識的に考えて「忖度及び利益誘導」の疑いを招く恐れがあると思われて仕方ない状況とポジションなのです此の事は、公益財団法人の長に「国会議員、政治家」がなるのと同じ利害、利権問題並びに倫理的問題が生じるのです197080年代に於いて、世界に於いてあの権勢を振るっていた故ホルスト・ダスラー氏(アデイダス社の最高経営者)ですら、IOCIGB国際競技連盟)に名を連ねる事は、しなかったのですいわば本業界の最高経営責任者が公的表舞台に立つ事は、同業他社を敵に回すことであり、元来業界に於いてはタブー視された行為だったのです。よって、筆者は、「やられるぞ」との直感が作動した次第です。

本業界には、国内に於いても同業他社の存在があることからもJOC評議員会、また20東京五輪招致員会、評議会が何故ブレーキを掛けなかったか。

まさか招致委員会の評議会は、同氏に対して招致成功か否かの責任を背負わせ、敗戦の時のスケープゴートの準備をしていたのでないか、或は、成功した時には他意を持って失脚させる、との穿った見方をしたくなるような対応、姿勢であったような気がしてならないのは筆者だけでしょうか。やはり評議員会、理事会は、意見を持たない形式的な集団なのかも知れません。この件に付いては、何の異議も裁定もなされなかった事が、後に陰湿な事件を招く最大の要因になって行くのです。

JOC20東京招致委員会の理事会、評議員会が何も異議を唱えない、つまり構造的に機能していないと判断される場合、指導的役割を担う内閣府文科省スポーツ庁は強制的な介入を行い「Justice & Fairness」の基に指導、改善する責任と使命があったはずです。しかし、この政府機関の機能不全も、今日のスポーツ界の不祥事、事件を鑑みれば、推して知るべしです。此処に於いても、我が国のスポーツに関する公共の組織・団体に特別査察機関(Infraction Committee)を設置しない理由は、誰かに取って不都合、不利益が起きるからなのかも知れません

結果として、水野正人氏は、JOCの副会長として20011年に東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会 事務総長に就任。職に専念するためミズノ代表取締役会長を退任。後に、副理事長兼専務理事に役職変更。となるのでした。此処で「職に専念する」為を理由に、即ち水野氏自身がお気付きになられたのかどうかはさて置き、1私人として公益財団法人の副会長として、また20東京五輪招致委員会の実務権を持つ副理事長兼専務理事に就任されたのですしかし、株式会社ミズノの代表取締役・会長職を退任するも、会社の大株主である事も放棄したとの情報公開はされていません。(中途半端な対応)

筆者は、此処での仕切りの甘さに水野氏の会社重鎮の方々の脇の甘さを感じずにはいられませんでした。勿論、JOC、招致委員会の理事会、評議会のいい加減さを既にこの時点で露呈していたのです。このような構造的な問題は、即ちこの度のあらゆる疑惑の温床となっている事を読者の皆さんにご指摘させて頂きます。

 2020東京五輪招致活動を終えて帰国

国内に於いては、連日連夜と招致関係者は元より、TVマスメデイアを通してブエノスアイレス(アルゼンチン)での映像が視聴者にサブミラルを起こしかねない強烈な勢いで、テレビ画面から溢れている頃、既に招致を勝ち取るまで情勢を見極めながら様子を窺っていた政治家、その関係者達は、一気呵成に2020東京五輪組織委員会の陣取り合戦のマニュアル作りに夜を徹して会合しエネルギーを消費していた事が想像できます。

招致に邁進し成功した理事達、関係者は、組織委員会の重鎮に当然迎え入れられると期待していたのも至極自然な成り行きではなかったでしょうか。方法は、如何であれ。

しかし、20東京五輪組織委員会設置に対する予備会議が重ねられていくに従い、段々と雲行きがおかしくなり出し、事が勃発したのです。

 

2.筆者の素朴な疑問と私見

20東京五輪招致委員会副理事長兼専務理事への退場勧告

筆者の理解するところに寄りますと、五輪招致決定後、次の五輪組織委員会に関わる予備会議が重ねられていく中で、地位名誉を既に確保した権力者が、水野正人氏(JOC副会長、20東京五輪招致委員会副理事長兼専務理事)に非常識極まりない暴言を吐いたとの情報が、マスメデイアを通じて耳に届いたのです。これは、いよいよ直接攻撃開始かと思わずにはいられませんでした。

もしもこの人物による言動、態度が事実であるならば、この人物には、既に他意が在りこの機会をうかがっていたとしか考えられない事です。この人物は、常々品格の無い暴言、失言を吐き人の尊厳を傷つけても何も感じない特殊な脳の構造の持ち主であるようです。このような人物が我が国の根幹をなす教育に携わったり、クリーンであるべきスポーツ界をくもらせて来ている事は、我々国民、社会にも重大な責任と問題があったのでないでしょうか。

水野氏のこれまでのスポーツ界への献身的な貢献、そしてこの度の20東京五輪招致に関しては、個人的な利害を度外視して心血を注いで来られ招致という勝利を副理事長、専務理事、事務総長として担当責務を全うして成果、結果を残された事実をどのように評価されたのでしょうか。

このような言動、行動ができる御仁は、いったい何方だったのか。読者の皆さんならご想像できるのでないでしょうか。このような方が、国民、社会に対して「スポーツマンシップは何たるか」を述べられても如何なものでしょうか。これはまさに2020東京オリンピックパラリンピックは、何たるかを象徴する日本版:スポーツ・アドミニストレイターの現実とレベルなのかも知れません

残念な事は、2020東京五輪招致に貢献され、成果を上げたJOC副会長でもある方を20東京五輪組織委員会発足手前に何故退場させたのか。それであるなら、20招致委員会の評議員である時に何故異議を申し立て理事会に評議会の決議を申し立てなかったのか、民主主義社会に於いて余りにも私情を挟んだ陰湿な対応でなかったかと疑わざるを得ない。もしこの方が、本当にそのような暴言を水野氏に吐いたのなら、真のスポーツ・アドミニストレイターには、相応しくない人物であると指摘させて頂きます。

もしこのような暴言、態度をしたのであれば、その会合に居合わせた周りの人達が、誰も諭されなかった事は、まさに組織委員会は親分・子分のイエスマンの集団である証で決して国民、社会の為に招致した五輪組織委員会と言い難いのでないでしょうか。勿論、マスメデイア、関係者は、ご承知のようです。

このような言動と判断には、ビジネスをともなう利害、利権が裏で絡んでいた個人的判断と決断だったのかも知れません。今後本件の様子を静観して参ると自然にこの真意が浮上しするのでないかと思われます。

 水野正人氏への悲劇は、さらにこれから始まって行くのです。差し支えない範囲で、次回この結末をお伝えできればと思います。

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

お知らせ:

K'sファイルNO.92では、暗く悲しい話題となりました。しかし、このような現実に目や耳をふさぎ、触らぬ神に祟りなしとして、国民、社会に情報を提供しない、できない社会構造は、まさに談合社会と文化そのものが64東京オリンピック以降も何も変革できていない村社会と呼ばれる所以なのかも知れません。

次回は、目も耳もさらにふさぎたくなるような話題も出て参りますが、読者の皆さんは、決して顔を背けず正面から受け止めて頂く勇気も必要です。