K'sファイルNO.113:女子レスリング”巌流島の決闘“それとも?

K'sファイルNO.113:女子レスリング”巌流島の決闘“それとも?

無断転載禁止            K'sファイルは毎週木曜日掲載予定

大学生からの便り

【河田先生、自分は大学で部活を行いながらスポーツマネージメントの勉強をしています。先生のK’sファイルは、先日他大学の高校時代の親友から存在を口コミで知りました。悔しくてたまりませんでした。先生のようなプロフェッショナルなスポーツ・アドミニストレイターが日本においでて、それも日本に専門家は一人しか居ない事を知りました。大学で教授もされていた事を知りもう唖然とし、何も手に付かない日々が続きました。大学のスポーツの分野の複数の教員に勇気を出して先生の存在をお聞きしました。その中の1人は、先生を直接ご存知ではないようですが、先生のプロ野球界でのご活躍、NEC Sportsでのご活躍、中央大学での講義、ゼミもご存知でした。どうして学生達に教えて頂けなかったのかと詰め寄りましたが無言でした。先生のようなお方から学生達、選手達は、直接学びたいのですがその方法を教えて下さい。どの様な方法にでも従います。先生のEメールアドレスは、必死の思いで見つけました。一学生が生意気な事ばかり書かせて頂きお許しください。しかし、僕の将来がかっていますので、このメールが届いています事を連日連夜、神頼みをしています。】筆者からの返信:確かに拝受しています。私の学生時代を思い出します。貴方様のような多くの読者の方からも同じメールを頂いております。何が知りたいのですか。スポーツ塾の設立が必要かも知れませんね。私で役立つ事が在ればメールして来てください。よく見つけられましたね。感謝

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女子レス二大巨頭の出現が悲劇の始まりか

目次

Ⅰ.女子レス界の女王達の葛藤

  ①パワハラ問題告発を発起させた要因とは

  ②引退に関わる心の葛藤

  ③吉田沙保里氏は次代のスポーツ長官か

Ⅱ.筆者の私見

  ①パワハラゲームに参戦しなかったのは賢明の知恵

  ②引き受けて欲しかった吉田沙保里親分

 

 Ⅰ.女子レス界の女王達の葛藤

パワハラ問題告発を発起させた要因とは

女子レスリングのパワハラ問題は2018年1月、伊調馨選手と指導していたコーチの田南部力氏らが、日本レスリング協会の強化本部長だった栄和人氏からパワハラを受けたとして、関係者が代理人を通して内閣府に告発状を提出したことに端を発しました。伊調馨選手は五輪で四連覇した金メダリストであり、国民栄誉賞受賞者、全日本チャンピオンです。この選手を指導して来た栄和人コーチは(前至学館大学監督)であり、伊調選手は同大学の一学生選手でもありました。

読者の皆様は、此処で1つ大きなポイントを見逃しているかも知れません。それは、至学館大学には既に五輪三連覇を果たし、国民栄誉賞にも輝いた「吉田沙保里選手」がおり、筆者は吉田選手も本パワハラ問題の本質に起因しているのでないかと思う次第です

吉田選手は、今日の日本のスポーツ界に女子レスリングの存在を轟かせ、そしてその名も吉田沙保里此処に在りを打ち立てた最大の功労者です。そこにリオデジャネイロ五輪で4連覇を成し遂げた同門の伊調選手の出現。吉田選手はリオ五輪では別階級(53キロ級)で決勝で敗れ、銀メダルでした。これにより国内に置いて、女子レスラーの二大巨頭が台頭した次第です

当時、両選手は、至学館大学を卒業後、警備保障会社のALSOKに入社、同時に同社はレスリング部を設置、企業スポーツ部として連盟、日レス協会に登録され社会人選手として活動をしていたのです。両選手のALSOKでの業務は、皆様もご承知の通り、同社の広告塔としてマスメデイアを通して広告宣伝を主体としたCMに登場し始めたのです。特に吉田選手は、CMの中心選手でもあったのは言うまでもありません。この頃の女子レス界は、吉田沙保里選手が頂点に君臨しALSOKCMからも吉田主、伊調従の序列で在った事が容易に表現されていました。

そして、リオ五輪直後の2016年9月、日本政府は女子個人種目で五輪史上初の4連覇を達成した伊調馨選手に国民栄誉賞の授与を決定した次第ですただ、国民からスーパースター的に英雄視されている吉田選手と同じ国民栄誉賞を授与されたその事情は今一つ不明確のように思われました。本来、国民栄誉賞は、どのような価値評価があるかは個々それぞれのご意見もあろうかと思われます。そして何故か、国民栄誉賞に常に関与するのが国会議員という名の政治家達の利害、利権との関係が常に付いて回っている事がクリーンではないイメージを助長しています。国民栄誉賞が国民の総意として、授与される賞であるならば内閣府は、受賞キャンデイデイトをリストアップして国民投票を行う事が唯一の価値評価を与え維持できる手段と方法のように思われます。此のままでは、政治家、国会議員達の人気取りに利用されている様子は否めません。

ご存知の通り、国民的大ヒーローのMLBで活躍された野茂英雄氏、鈴木一郎氏は、各当時の現在の内閣から三度にも及ぶオファーを受けながら丁重にそれぞれの理由でお断りされている経緯もあるようです。此処で、国民栄誉賞の価値、概念を論ずる事は控えさせて頂きます

同門の両選手には、大人達の思惑か親心で伊調選手が五輪四連覇を成し遂げたので吉田選手と同格の印をとレスリング協会に関係したこれまた国会議員達が働きかけたのかも知れません。公益財団法人の協会に政治家、国会議員が関与することは、スポーツ・アドミニストレイションの本質を歪める初歩の問題です。スポーツと政治は、切り離すべきであると声高に連呼している御仁こそ東京五輪組織委員会JOC、各競技団体の役員、等から身を引きクリーンな環境にする義務と使命があるのではないでしょうか。

②引退に関わる心の葛藤

吉田選手は、2015年12月24日、本年を持って所属先ALSOK(特別契約社員)を退社することを発表したのです。そして本人は、「自分への新しいチャレンジ。新たな気持ちで五輪4連覇に臨みたい」と述べ、また「芸能活動を中心に幅広く経験し、競技に生かしたい」と付け加えていたようです。今後の所属は未定で練習拠点は至学館大学とする事を明言していました

丁度この前後頃から吉田選手の動向に異変が伴うようになったのかも知れません。その大きな現象の一つとして挙げられるのが、ALSOKを退社し、母校至学館大学の何と副学長に就任へのオファーが在ったのかも知れません。

母校至学館大学の経営者、大学管理者は、五輪三連覇し、国民栄誉賞受賞者の吉田選手を大学の顔として迎える事の選択をする決断をこの時期にした様子が時系列からも伺える次第です。しかし、筆者は、同選手に日本の最高学府の大学教育機関で最高教学指導、管理者の重要ポジションの肩書を全く教職、教員、指導、管理の経験の無い一人のアスリートに軽々しく与える大学経営者、教学管理者のご見識は如何なものかと直感したのが第一印象でした。

この肩書は、何方がどの角度から評しても同大学の学生集めの手段としての広告塔に過ぎないと指摘されるのは無理からぬ事ではないでしょうか。その要職のオファーに対して、同選手は、NOと言わなかったのはその重さと職責、責務、等の社会常識、通念を理解されて居なかったのか、経営者、管理者に説得されたのかもしれません。大学競技スポーツ、学生選手を大学の受験生集め、広告塔、等と偏った価値観を持つ、大学経営者、管理者達が昨今特に目立つのは、如何かと思わざるを得ないのですが、読者の皆さんはどのように思われますか。個人差があるのも理解出来ますが、これでは余りにもアスリートが軽視されているような存在に思えてなりません。

至学館大学の女子レスリング部で育成された二大スターの出現は、経営者、管理者は何方を大学の看板として残すか、残した方が大学に取って有利か、得策か、しばし混乱された様子がこのような人事からも窺えます至学館大学では、二大スター選手を何故活かそうとされなかったのかどの時点で何を根拠に吉田選手を大学側に留めて、伊調選手を切り離そうと決断したのか。この決断に対する判断と理由その動きを吉田、伊調両選手は、微妙に感じ取ったと同時に、それを外部の他意ある関係者に両者を切り離す為の隙がパワハラ事件の最初の機会と動機であったのではなかろうか、とスポーツ・アドミニストレイターとしての立場で感じる次第です

その後、伊調選手は、2016年リオデジャネイロ五輪58キロ級で金メダルを獲得女子個人種目で五輪史上初の4連覇を達成したのです。2016年09月13日、政府は伊調馨選手に国民栄誉賞を授与することを決めたのです。同選手は、記者会見で受賞の喜びと感謝を述べる中で「2020年東京五輪に挑戦したい気持ちになることもある。年齢は関係ない。色んな選択わざの中で決めていけたらいい。時間をかけて考えたい」とも述べていました。吉田選手退社後のCMに暫く出演していましたが、同選手も突如CMから姿を消された頃に「パワハラ告発」が突然マスメデイアを騒がす事になったのです。

吉田沙保里氏は次代のスポーツ長官か

筆者は、K'sファイルNO.47で確か述べさせて頂きましたが、「吉田、伊調両選手は、リオ五輪帰国後、何故延々と引退か、現役続行かの結論を引きのばしたのか」非常に不可解な態度であったと思います。

今日のグローバルなスポーツの世界では、「競技選手が引退云々を告知する必要はない」と述べられる方も居て当然です。読者の皆様は、現代のアスリートにアマチュアもプロも存在しない事は御承知の通りですこの引退か、現役続行かの態度、告知は、少なくとも「今まで支援、応援して来てくださった方々への一つの社会人としての社会的なけじめ、自身のけじめ」と理解するべきマナーであるとは思いませんか

伊調選手、田南部氏のパワハラ問題が進行中、公益財団法人日本レスリング協会は、記者会見を行いました。その会見の途中で日レス協会副会長、自民党国会議員、元文科大臣の馳浩氏は、伊調馨選手の現状について、「今練習に励んでいます」との不自然なタイミングと場所で告知をされたことが記憶に残っています。確か、その前後にも伊調選手は、現役続行云々に付いての発言はパワハラ問題同様にひかえていたように記憶しています。

片や吉田選手は、リオ五輪後「引退、続行」の意思表示を2019年確か春まで伸ばしに伸ばして、最終的に「引退」を告知したのでしたその時には、既に至学館大学の副学長の職責を降り、至学館大学、女子レスリング部コーチに肩書を変更していた次第でした吉田選手は、パワハラ問題がマスメデイアを通して大々的に騒ぎが拡散している最中でも、一切口を閉じ興味も反応も示さなかった理由が此処に在ったと思われるのですそれは、自身で感じ取れたのか、或は第三者からサゼッションを受けていたかは存じません。しかし、自身が指導を受け関係の深い栄和人氏に対して、同門、戦友である伊調選手に対しても、一切のコメント、擁護の言動、態度を控えた吉田選手の当時の確固たる姿勢に対して、筆者は、彼女の一世を風靡した女子レス王女の確立された対応力を強く感じた次第です

もし吉田沙保里氏が今後政治に興味を持つならば、今日までスポーツ界から出馬され国会議員のバッジを胸に付けた、付けているどの方よりも遥かにスポーツ界のみならず、社会、国民に信頼され、寄与できる器の女性が現れたと大変期待する次第です。

それは、また今後彼女がどのような方法と形で社会に於いて必要不可欠な専門知識と実践キャリアを会得するかで、彼女のカリスマと求心力が磨かれるのでないかと勝手に期待致す次第です。

Ⅱ.吉田氏に関する筆者視点

パワハラゲームに参戦しなかったのは賢明の知恵

吉田沙保里選手は、リオ五輪の結果以降「引退」に付いてどう思案していたのかスポーツ・アドミニストレイターとして興味がありました。確かに、吉田選手は、リオ五輪前後から自身の体力、気力の限界も見えて来た頃であったのも正直な心境であったことでしょう。しかし、三度も五輪の頂点に立ったスター選手が、そうやすやす煩悩を切り捨てることなど非常に難しいのも十二分に理解できます。自分の引くタイミングは何時なのか。されど此のままでは終われない。

彼女の深層の心理では、「今後は名声を基盤とした道を歩むか。まだ頂点を狙った修羅の道を選ぶか」―、日々葛藤が絶えなかったのも事実でしょうしかし、一度頂点を極めたアスリートは、いつか必ずこの心境の時期が来る。それは、度重なる怪我に見舞われ出した時か、頂点を極めていた自分の居場所に不安がよぎったその時なのです。筆者は、今日までトップを極めるアスリート達をプロのスポーツ・アドミニストレイターとしてその現場に立ち会って参ったので選手達の心境も、指導者達、そしてその取り巻き達の状況、現実的な問題も手に取るように理解できる次第です。

彼女の心に大きな動揺と決断を与えたのが恩師栄和人氏のパワハラ問題の動向であったと推測できます。吉田選手は、本パワハラ問題、不祥事に付きましての事実関係は誰よりもよく理解していたと推測するのが自然でしょう。吉田選手は、栄氏、伊調選手、田南部氏、両サイドに付いて、知り尽くしているのでパワハラ問題は一切を語らず今日に至っているのが正直な心であり、それは彼女、関係者にとっても賢明の判断であったと思います。

勿論、このようなポリテイカルゲームの中に置いて、自分が現役を続行するとしたらどのようなシチュエイションの中で競技者として競技をしなければならないかのシュミレイションも当然した事と思われますもし、続行を選んだ場合は、勿論57キロ級参戦となり、吉田、伊調、川井の三つ巴の状況も想定した事でしょうし、逃げられない状況となる事も想定した筈です。また、三つ巴となって、伊調、川井両選手に敗れた時の自身の立ち位置も勿論想定したに違いないと思われます

吉田選手が最終的に選択した結論は至学館大学の副学長を降り、部のコーチの肩書を維持しながら、嘗ての実績、名声を有効活用できる「芸能タレント活動」を現在に於いては選んだのだと推測します。この活動は、今日までの彼女のアスリートとしての活躍へのご褒美の1つではないでしょうか。これは既に2015年12月24日の退社会見でも述べている内容と一致する次第です。この選択と結論には、誰も議論する余地はありません。彼女には、中途半端な活動ではなく、将来を見据えた志の高い活動である事を切に願う次第です。

③引き受けて欲しかった吉田沙保里親分

筆者は、この度の川井梨沙子選手と伊調選手との決闘、死闘はひょっとして「伊調対吉田」であったかも知れなかったと思う1人です

よって、吉田さんには、至学館大学の肩書がコーチである事実からも、この度の天下分け目の決闘、死闘では、川井選手のコーチ・セコンドとして立ち会って挙げる事が、自身の名代でもある川井選手、後輩戦友への援護射撃になったのでないかと思うのは吉田さんには酷だったのかも知れません。川井選手は、どれ程心強かったかと思うにつけ何故と思わずにいられませんでした。

吉田沙保里さんは、最後まで女子レスのパワハラ問題に関する全てから距離を置くことを決断したのです。その真意は、本人のみぞ知る。

筆者が誤解を恐れず推測致すと、彼女は、自身が築きあげたこれまでの実績、功績を死守する事は基より、彼女が今日の女子レスラー達とは此処まで同じ釜の飯を食って来た仲間であり、戦友達を傷つけたくないとの思いが大きかったように思えてならないからです。吉田沙保里さんは、誰よりもクリーンで強い求心力のある誠実な政治家、管理者になる素質がある様に思えます。その為にも、今日まで疎かにして来られた部分を是非補強されて国民栄誉賞に相応しい、国民、社会に貢献して頂ける人物に成長して頂きたいと願う次第です。必要な勉強をされた後には、スポーツ庁長官の席が無いとは言えません。片や、伊調馨選手には、その強い精神力と信念を貫く為にも、他人の思惑に惑わされる事無く、今後もぶれない伊調道を求められることを切に願います。

両者へのご健闘を祈ります。

筆者個人としては、吉田沙保里さんが川井梨沙子選手に梨沙子、セコンドは私がやる。任せなと言って介添え役として帯同してあげて欲しかったのでした。それは、あなただからできたのです。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

お知らせ:

K'sファイルNO.111112は、女子レスの世紀の決闘及びそれに至るバックグラウンドを紹介させて頂きました。読者の皆様は、どのような思考を展開されていたでしょうか。決闘の重量感が何処から来ているのかを少しでもご理解して頂けましたら幸いです。

NO.113に於きましては、女子レス界の女王吉田沙保里氏の存在は、この度のプレーオフに於いても、これからの女子レス界のみならず、日本の女子競技スポーツ界の改善、発展には欠かす事の出来ない求心力のある人材が出現した事をお伝えして本シリーズを閉じさせて頂きます。