K’sファイルNO.116:賛否両論の日本野球の伝統と美学

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K’s
ファイルNO.116:賛否両論の日本野球の伝統と美学

無断転載禁止            K'sファイルは毎週木曜日掲載予定

K’sファイルからのお知らせ:

残暑お見舞い申し上げます。

読者の皆様には、いつもご笑読下さりありがとうございます。またいつも貴重な読後感、書評、ご意見、励ましを頂きまして感謝申し上げます。次回K’sファイルNO.117は、夏休みを頂きます関係で9月第二週木曜日を予定しております

 

第三弾 高野連は教育者の立位置で

目次

Ⅰ.激動の日本野球界を経て

  ①肥大化した甲子園興業

  ②社会人野球プリンスホテルテイーム設立が激動に点火

  ③経営破綻に伴う球団の引き取り

  ④高校野球に及ぼした影響

Ⅱ.高野連は明快なルールブックを何故作れない!

  ①必要不可欠なルールブック

  ②明文化した規則・罰則が必要不可欠

  ③高野連は国民、社会に分かりやすく情報公開する義務有

  ④アンフェアーな事態を如何に裁くか

 

Ⅰ.激動の日本野球界を経て

①肥大化した甲子園興業

伝統ある公益財団法人日本高等学校野球連盟(略:高野連)は、国際オリンピック委員会(略:IOC)と酷似の状態のようです。利害、利権が絡み合った政治化した組織・団体であり、肥満化してしまった様相が今日の地方大会や甲子園大会の対策、対応から感じるのは筆者だけでしょうか。長い年月をかけて今日の春夏の甲子園大会は、日本の風物詩となりました。しかし、イベントが巨大化するに従い、高校生、指導者への多重な負担、教育という大義名分が建前化し、本大会に出場できない大多数の高校や選手達に対する対応がないがしろにされている現実をどう今後救済し、この大きな課題に対する改善、改革に何時誰が手掛けるのか考えさせられます。

果してこの肥大化した春夏の高校野球興業は、本当に現代社会、教育機関に於いて学業と競技スポーツのバランスの取れた教育指導体系になっているのでしょうか。天変地変の近年の酷暑、猛暑、災害を避けて、春夏の大会を一本化する時期に来ているとご提案申し上げます。この一本化により多角的な見地に立ってもっと多くの競技スポーツに触れ合う機会を与え、個々の能力に適合するスポーツを選択する事も教育者としての指導ではないかと考える次第です。大人とマスメデイアのエンターテイメントと化している今日の高校野球熱を、肌で感じるにつけ、総合的なスポーツ・アドミニストレイションに立って関係者のみならず、国民、社会やマスメデイアも一考する時が訪れたのではないでしょうか。

②社会人野球プリンスホテルテイーム設立が激動に点火

高校野球は、未成年者である生徒達の部活の一つとして、また競技スポーツを教育の一環として運営・管理する事が趣旨、目的であった筈です。それが1974年のIOCのオリンピック憲章の「アマチュア」削除以来、世界の競技スポーツは、一気に商業化、プロ化の道を辿って参りました。国内に於きましては、プロ野球界で西武・国土計画の球界参入があり、それと同時期の1979年に社会人野球プリンスホテル野球部の創設に伴い、ドラフト1位指名の高校、大学の選手達が、ドラフトを拒否し社会人野球のプリンスホテルに就職し、ドラフトボイコット事件にまで発展した事もありました。

プリンスホテル野球部設立当時の堤義明氏は、野球を次のオリンピック種目に格上げする事を画策、日本代表テイームとして、プリンスホテルテイームを丸ごと出場させる遠大なプラニングを持っていたのです。その後、ご存知の通り堤氏と当時IOC会長だったAサマランチ氏とのビジネス交渉で1998年に長野に冬季五輪を、そして野球を五輪種目に無理やり押し込んだのは御承知の通りです。

③経営破綻に伴う球団の引き取り

丁度その時期に、突然西武・国土計画は、経済的な問題を抱え経営破綻をきたしていたパシフィックリーグ所属のクラウンライターライオンズ球団の経営を引き受けざるを得ない出来事が起きたのです。読者の皆様の中には、いまだ鮮明に当時の日本球界の激動の記憶が蘇る方々もいらっしゃるのではないでしょうか。当時は、貸球場として建設中の西武所沢球場(現:メットライフ球場)に西武ライオンズ球団をフランチャイズとして福岡から所沢に1979年シーズンより移した次第でした。経営が成り立たなくなった福岡クラウンライターライオンズを引き取らざるを得なくなったのです。

当時、既に西武・国土計画は、大洋ホエールズ(その後横浜大洋ホエールズ)株を41%保有し、横浜スタジアムの経営、運営に参加し第三セクターの一角を担っていましたので、当時西武・国土計画は、横浜大洋を改修して将来セントラルリーグに参戦するのでないかとの噂が強く在った事も事実です。

この様に弱体した物件のクラウンライターライオンズですが、唯一付加価値のある商品が加味されていたのも事実でした。それは、前年のドラフトで1位指名した江川卓投手の指名権が付帯されていたことが唯一の明るいメリットであったのです。その事はその後、西武・国土計画対読売新聞社東京読売巨人軍との歴史に残る抗争に発展し行くのですが、筆者は、西武・国土計画側の江川投手の担当者であったのも因果と言わざるを得ない出来事でした

高校野球に及ぼした影響

この激動のプロ野球界、社会人野球界の状況は、大学野球界、高校野球界を直撃する事になるのです。

1974年のIOC五輪憲章から「アマチュア」削除宣言による世界の競技スポーツ界の商業化、プロ化は、急速な勢いで留まるところを知らない状況に成って来たのです。しかし、日本に於いては、伝統的なアマチュアリズムを後生大事に利権として抱え込む、JOC、各競技団体、勿論高野連もしかりでした。

確か当時高野連は、利権を犯されまいと声高く掲げたのが「高校野球は教育である」で筆者の記憶に強く残っている次第です

残念ながら時代の急激な変化の中にあっても、「高校野球は教育である」とのこの大義名分に胡坐をかいて、今やそのCOREである未成年の生徒、選手の人権も守れない政争、ビジネスゲームに奔走し、自ら掲げた御旗を見失った状況ではないかと筆者は思う次第です。

今日に至るまで長年高野連は、事あるごとに小手先による対応を行っても、真剣に高校球児の心身の健康を守ると言う観念が欠落していた事を物語るのが、この度の論争もその1つだと思います。無論、高野連には、スポーツ医科学の専門部署が設置されている筈ですが、名ばかりなのか発言力、行動力は成果と結果を伴わないのです

この野球界の様相を横目で見ながら、高野連関係者が指をくわえて眺めていたわけではないのです。

西武・国土計画の野球事業が現実的に振興するにつけ、マスメデイアは、連日連夜報道を拡散するのでした。それに伴い、当時の総理大臣を含めた政治家、日本体育協会(現:日本スポーツ協会)の重鎮達、JOCの重鎮達、各競技、組織・団体の重鎮達、勿論高野連のお偉方は、マスメデイアのトップの道先案内により、西武・国土計画の堤義明氏詣でが始まったのです。この後、堤義明氏は、JOC会長となり現在JOCの最高顧問として位置付けられています

 

Ⅱ.高野連は明快なルールブックを何故作れない!

①必要不可欠なルールブック

このような野球界の激動、激変に伴い、教育機関の野球指導者達は、この激動に乗り遅れまいと、特に野球に特化した大学、高校の指導者達はその変身ぶりに目を覆いたくなるような露骨な動きをし始めた時期でもあったのです。勿論、江川卓投手の泥沼のドラフト権利を巡る一連の社会問題が、大学、高校球界に衝撃のみならず、悪影響を与えた事も事実でありましょう。江川問題の次に起きた清原和博氏、桑田真澄氏のドラフト問題は彼らの人生をも狂わせた証でした。

この状況下に置いて野球を看板とした大学、高校の指導者の多くは、プロ野球界、社会人野球界を個人ビジネスの相手先としての活動を活発化させたのです。

即ち、指導者達の中には、所属する高校を野球選手の生産工房として、高校野球選手をブランド商品にする為に、同県の中学校所属の生徒の中から優秀な選手をリクルートする事が常とされていたのです。しかし、この球界の激動時期を境に真の郷里代表高校とは名ばかりとなって、今日では、特に私学の野球に特化した高校では県外から中学生をあらゆる手段を講じて越境入学させる手法が常態化しているのが現実なのです。近年では、甲子園優勝校の全選手がその県の中学に所属していた痕跡も無い事が判明しているのです。よってこのような中学生狩りをする事を仕事としている請負人が出現し始めたのもこの激動の時期からなのです。

これは、毎年開催される国民体育大会が、開催県が天皇皇后杯を授与される伝統的な慣習が在る事を読者の皆様は御承知でしたでしょうか。実はこれには、国体おばさん、おじさんによって支えられているのが長年の裏舞台なのです。このおじさん、おばさん方は、競技団体の役員関係者が主体であり、高校、大学の教員指導者も関わっているのです。優秀な選手、指導者を開催県にお世話する、優勝請負人として請負料が支払われているのです。此のような国体に何の意義、目的があるのでしょうか。このような無駄使いにもその源泉は、公金が日本スポーツ協会(旧:日本体育協会)から国体費用として計上された資金から流されているのでしょうか。此処に於いても、長年の文化から来る習慣なのか、ルールと言う規則・罰則を明文化しない不思議な実態の我が国のスポーツ界なのです。

高校野球界にも、国体同様な暗い闇商売が全国にめぐらされている事を読者の皆さんはご存でしょうか。勿論、ご承知の通り公益財団法人日本高校野球連盟を管理、監督するお上は、内閣府であり、文科省、実質は現在スポーツ庁となっている次第です。彼らは、長い年月の間にこの様な高野連の実体に対して何をどのように教育的な指導、改善、改革を実施してこられたのでしょうか。此れも、スポーツ・アドミニストレイションが我が国は貧困であると言われる所以なのです

②明文化した規則・罰則が必要不可欠

読者の皆様は、既にKsファイルNO.115でご紹介致しましたが、8月8日に共同通信社の配信によりますと、スポーツ庁鈴木大地長官は、『高校で燃え尽きてもいい』は時代遅れ。故障なく精いっぱい戦うことが重要」と述べ、過密な試合日程の見直しを含めた対策の必要性を指摘した、と発言したそうです。

投手の健康管理を重視する風潮が社会に広まりつつある中、「世の中の流れを敏感に察知し、高校野球は変わらなければいけない」と一層の改革も求めた。との記事が配信されています。これでは、事なかれ主義の優柔不断な思い付き発言にしか聞こえないのではないでしょうか。発言するには、責任の所在を先ず明確にし、責任者には罰則規定、規約の明文化が必要不可欠なのです

生徒選手達を商品としてビジネスとしている方々は、義務教育下にある中学生を商品としている所に日本のスポーツ界の未来が危ぶまれます。仲介人達は、需要先相手とネゴシエイション(交渉)をする術を身に着けだしたのも、この激動の時期からなのです。この術は、現在は当時より遥かに巧妙で陰湿な手口を用いているのも事実の様です。

残念ながらこの様な現実に高野連は、未成年の生徒選手及び義務教育下にある生徒選手が仲介者により売り買いされている実態を存じているのか否か、見て見ぬふりをして全く手立てを講じない現実が高野連の実体ではなかろうかと疑念を抱く次第です。これらは、高野連に明文化された詳細を記した「ルールブック、規則・罰則」が存在しないに等しいのです。高校野球に関係する全ての人達は、共通でリスペクトするルールブック無くして、何をジャステイス(正義)とフェアネス(公正・公平)の基準、基軸となすのでしょうか。

悪例を1つご紹介しますと、野球に特化した私立高校の指導者が、教え子の球児がドラフトされた際、その球児の契約金の何%かをトップオフしていた事を漏れ伝えて聞きました。そして、中には、指導者に何%かを渡さなかった球児に対して、指導者自らが上京してその取り立てを行うという闇金業者顔負けの教育者、指導者も居る事に、誰が球児を守ってあげられるのでしょうか。これは、一例に過ぎないのです。

 高野連は国民、社会に分かりやすく情報公開する義務有

高野連は、大手マスメデイアの朝日新聞社毎日新聞社によりサポートされている公益財団法人であります。そのため、これらマスメデイアを有効活用する事により、国民、社会、高校野球関係者達に開かれた情報を公開するこが出来る筈です。

高野連は、球児の健康管理は元よりこの様な教育者、指導者、関係者から如何にして球児、教育機関を守るのかの根本的な改革をやって来ていない事が今日の高校野球のアンフェアーな状態、現実を黙認しているのではないでしょうか

彼らは、公益財団法人の運営、管理者であることをどれほど理解、認識しているのでしょうか。公益財団法人ならば、何故もっと法人の理念、趣旨、目的に沿った活動を実現する為にも情報公開は不可欠です。

高野連の執行部、重鎮達は、今尚日本の伝統的な手法により選任されていますが、もっと分かりやすい教育的な手法で開示して欲しいと思うのは筆者だけでしょうか。グローバルなスポーツ界を目指す為にも目に見え、透明性のあるスポーツ・アドミニストレイションがなされない限り、高校野球界を照らす次世代への光は消滅してしまいます。

高野連は、お役人、お役所感覚では問題の改善、改革はできません。多くの若者達の夢、目的、目標を教育機関の指導を通して還元しなければならない使命を担っている事を個々の役員、職員、指導者は、肝に銘じていないのでしょうか。

例えば、春夏大会の興行収入、地方大会の興業収入支出は幾らで、それは何処に如何ほど流れて行って居るのかを社会、国民にもっと分かりやすい方法で公表する義務がある筈なのです。高野連を支えている大手マスメデイアは、勿論全ての状況、内容を把握している筈です。そして、その興業収入は、どのように運営管理されているのか、また、個々の高校、選手達にはどのように何が還元されているのか、もっと詳しい情報提供がなされるべきです。公益財団法人は、何か美味しい隠れ蓑でもおありなのか。

丁度高野連の状態は、大学箱根駅伝の収支決算を任意団体の関東学連が、情報公開を拒み続けている事に酷似の状態なのです。読者の皆さんは、如何理解されていますか。

この様な教育機関に直接関わる高野連は、任意団体でなく国が承認した公益財団法人として義務と使命を委託された団体なのです。このような状態では、日本の教育機関の競技スポーツの指導、活動が腐蝕して参るのも当然ではないでしょうか。このような教育機関の公益財団法人に於ける理事、評議員、職員が、推薦、任命されるシステムに構造的な欠陥があるのでないかとスポーツ・アドミニストレイションの視点から申し添えさせて頂きます。

④アンフェアーな事態を如何に裁くか

今日の目に余る現象としては、公立高校と私立高校に於ける野球テイームに対する趣旨、目的が大きく異なる点を指摘する事ができます。つまり、公立、私立の間には、アンフェアーな格差が限りなく助長されているのです

近年は、生徒数の激減から公立高校に於いて、選手数の問題でテイームが組めない状況が全国で発生しています。テイームが組めないので県大会に出場できない高校では、同様な高校が寄り合いテイームを編成するに至っています。

片や、私立高校は、公立と異なる経営理念から野球を同校の看板、即ち広告塔として全国から、一部海外からも未成年者を集め、プロ野球選手養成所と言われても仕方のないような突出したテイーム編成がされているのも現実なのです

このような突出した指導者達とその選手達は、マスメデイアの格好な話題として商品化されているのは御承知の通りです。しかし、このような高校野球の中で、確りと高校野球を通じて教育指導本文に沿った、大多数の公立、私立の指導者達が日々黙々と私的時間も顧みず、春夏大会出場へ夢見る生徒選手達の指導に当たられているのも事実です。しかし、このようなアンフェアーな競技の運営、管理状況下では、生徒選手達のみならず、大半の指導者達は浮かばれません

この様な状況下を野放しにしている高野連は、スポーツ・アドミニストレイションの視点から申し上げますと、非常に思考が偏った組織で機能不全となっている集団のようにさえ思えるのです。

歴代の頂点にある高野連会長は、スポーツ・アドミニストレイターとしての資質をお持ちの方々でなく、周りの役員が伝統的な経営、運営、管理を維持しやすい人物を歴代推薦、任命し、会長席に鎮座させる日本独特な談合制度を後生大事に守り続けていると申し上げて過言でありません。よって、現場の矛盾、非教育的な教員、指導者の生徒、選手への対応、現実などあまり理解できていないと思われます

筆者は、数年前に某大学の総長が高野連の会長に就任されました時に「公益財団法人日本高校野球連盟には、改善、改革が急務で在る事の具体的な内容を書面で送付させて頂きました。会長の所信表明(朝日新聞取材記事から)には具体性がなく、抽象的な表現では使命は果たせないので、高野連の最高責任者として何をどうするかを明文化し、責務の所在を明らかにする事が最大の使命です」と直接お届けいたしましたが、ご返事はありませんでした

この方も雛壇に祭られた操り人形であったのでしょうか、其の後静かに交代されました。これらが我が国の競技スポーツに関わる方々には、省庁、競技団体のスポーツ・アドミニストレイターとしての資質及び組織の体質、改善、改革が何にもまして急がれる事をご提案致します。この様な組織、団体は、構造的な問題を先ず改善、解決しない限り機能しないのは明白です。

以上この度の課題「賛否両論の日本野球の伝統と美学」の第三弾としてまとめさせて頂きました。高校野球に関する話題、テーマに付きましては、読者の皆さんのご要望も取り入れながら、スポーツ医科学の導入とその必要性を機会がございましたらあらためて述べさせて頂きます。本課題の連載にご興味を持って下さり沢山のアクセスを下さった読者の皆様に感謝申し上げます。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

ベースボール・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

お知らせ:第三弾は、取り留めない内容となってしまいましたが、読者の皆様には、高校野球の組織、団体に於ける本質的な問題を垣間見て頂けましたでしょうか。これらは、日本のスポーツ界のみならず、日本社会の縮図なのかも知れません。特に未成年者に対する指導、育成、イベントの経営、運営、管理は、如何に透明性を維持、確立するかが重要且つ教育的であるかではないのでしょうか。

次回は、9月第二週木曜日にK’sファイル掲載を予定しております。残暑厳しい日々、どうか皆様の体調管理とご健康を祈念しております。