K'sファイルNO.124:③何故IOCは伝家の宝刀を抜いた


f:id:hktokyo2017041:20190718003102j:plainK'sファイルNO.124③何故IOCは伝家の宝刀を抜いた

無断転載禁止            毎月第二、第四木曜日公開予定

筆者からのお知らせ:K’sファイルは、読者の皆様の温かいご支援とサポートによりまして2019年度最後のK'sファイルをお届け出来ます事に心より感謝申し上げます。本ファイルを通しまして、スポーツ・アドミニストレイションの本質が何たるかを少しでもご理解して頂けていましたら幸いです。読者の皆様方にとりましては、どうか平和でポジテイブなホリデイシーズンで有りますことを心より祈念致しております。それでは、次回お会いできます日を楽しみに致しております。 深謝

 

読者からの便り~(海外のK’sファイル読者達は、翻訳機を利用されているようです)Hi Mr.H.Kawada

The more commercial gains that exist in the games, the more athletes, realizing that they are why the games prosper financially, have the proper impression that they should be paid for what they contribute to the show. But the IOC realizes that the athletes gain so much by the participation in terms of personal financial gains, that they do not want to rock the Olympic boat, and say "We will not participate unless we are compensated according to our contributions." Many of them realize that there will always be someone from their country to take their place, who won't ask for money. And in the end, it is about country participation and competition as far as the Olympic fans and sponsors are concerned. In other words, if" so and so" does not win the gold medal, someone else will and he will be famous.

The IOC has a stranglehold and it is hard to see how that will ever be broken, because there is no competition for them. The Olympic Games are the ultimate sporting even (not peace event anymore) and thus the ultimate "commercial" sporting event. "follow the money"; seems to really apply here.

The problem is that their is no oversight of the IOC. Who is going to punish them for their arrogance and corruption? Just the cities of the world who refuse to bid for the games. But they have a long line of suckers lined up. Too prestigious for a Mayor and City to pass up. Only after they get in with both feet, do they realize that they can't say no to the IOC. Unless they want to call the bluff of the IOC. Somebody should. Tell them that they will not do the Olympics unless the marathon course is the one they put forward when they bid and was accepted by the IOC.

Just my opinion. From a readers of the K’s File U.S.A.~

読者からの便り

河田弘道様 

123号を拝読し、益々の熱量に感服いたしました。論考を読みながら「スポーツと政治家」についての思いが駆け巡りました。その典型的な人物として森喜郎氏が浮かんできました。小淵首相の急死で首相に就任したと思ったら、唐突に「神の国」発言が飛び出し首相の資質に欠ける論議が噴出しました。さらに一年後、今度は「えひめ丸事件」が起こった時間帯に何とゴルフプレーに興じていたことが分かり、国家の危機管理上の批判で内閣不支持率が80%に達し、首相辞任に追い込まれた記憶は昨日の事の様に甦ってきます。その様な森氏が日本ラグビー協会、日本スポーツ協会等のトップに君臨し続けスポーツ界に政治力支配を既成事実化し、その総仕上げが2020東京五輪組織委員会トップに繋がってきたのかとその感を強く持ちました。まさに政治家森氏らに牛耳られた東京五輪の利権構造の疑念が過ります。

その一方、Wラグビー開催では日本代表チームの事前予測の勝敗は実に寂しいものでした。森名誉会長はそのリスク回避を察知したのか、突然名誉会長職を辞任しました。しかし皮肉なことに、代表ワンチームの目覚ましい快挙の感動が日本中を席巻し、日本スポーツ界にラグビー🏈の新機軸を誕生させ、ラグビーの魅力、ラグビーファンを見事に獲得しました。森氏は名誉会長職の辞任判断を悔いているのではないかと無責任な推察をしてしまいます。それはともあれ、日本のスポーツが健全に育まれていくための一つのエビデンスとして、改めて「政治家とスポーツ」の関係性を解き明かしていく研究が急がれているように思います。                     K’sファイル読者より

目次

第三弾 IOCの横暴にSTOPを掛けられるのはアスリートだけか

           Ⅰ.傲慢なIOCにアスリート達は立ち向かう

              1.人は権力を持つと何故原点を蔑ろにするか

                  ①IOC権力者達の素顔とは

             ★外電はIOC会長発言に対する選手の反論を紹介

        Ⅱ.IOCの強権発動の因果は此処か

           1.世界陸上界の力と現実

               ①プリオ・ネビオロ会長(イタリア19811999)の出現

               ②ラミーヌ・デイアク会長(セネガル 19992015)の出現

               ③セバスチャン・コー会長(英国、2015年~)の出現

          2.IOCへの警告は世界のマラソン界からやって来た

               ①世界のマラソン界を席巻するアフリカンパワー

        ★2019年度男子ワールドマラソンランキングベスト100

        ★2019年度女子ワールドマラソンランキングベスト100

               ②マラソン競技はシーズンスポーツ

               ③日本の伝統的なマラソンシーズン

         筆者の素朴な疑問と私見

 

第三弾 IOCの横暴にSTOPを掛けられるのはアスリートだけか

Ⅰ.傲慢なIOCにアスリート達は立ち向かう

1.人は権力を持つと何故原点を蔑ろにするか

IOC権力者達の素顔とは

K'sファイルでは、NO.122のⅡに置いて「IOCの偏った理念で翻弄される選手達」で既に「選手を唯の駒としてしか捉えていないIOC」の中で詳しく述べさせて頂きました。

オリンピック大会のCOREである選手達が大会に出場してメダルを獲得することは、大変名誉なことではあります。しかし、それは、国際オリンピック委員会IOC)にとって都合のよい無形の選手達に対する対価であるに過ぎないのです。アスリートは、プロでありビジネスをIOCにより承認されています。IOCは、直接的な報酬及び身心への負担の対価を供与する義務があると筆者は考える次第です

即ち、IOC組織委員会には、莫大な収益が有形無形に入るが、アスリート達は、パフォーマンスを提供すれども対価として何の保証もされず唯名誉のために、命がけで参加、競技をしている事になるのです。これでは、古代ギリシャのキルクス競技(コロシアムでの殺し合い)に駆り出された選手の現代版と言われても仕方ありません。

IOC関係者達は「選手達に対してはアマチュア規定を削除し、プロとしてのビジネスチャンスの場を与えているのだから文句はないはずだ。我々はオリンピックを事業(ビジネス)として展開し、それから正当な利益を得ているに過ぎない」的な認識、態度を今日まで継承して来ているように思えてならないのです。少し酷い言い方をすれば「鳴くまで待とう主義」が当たりまえと成っている姿がこの度の酷暑多湿での東京五輪でマラソンを行う事に対して、誰もがそれを止めようともしないでいたことがその証と思われます

外電はIOC会長発言に対する選手の反論を紹介

AP通信及びその他外電は、以下のようなやり取りを紹介しています。

IOCトーマス・バッハ会長が強行決定した東京五輪ラソン競歩の札幌移転について「大半の選手が賛成である」と報じたのでした。しかし、これに対してドーハ世界選手権男子50キロ競歩のメダリストのエヴァン・ダンフィー選手(カナダ)は、ツイッターで「これらの大半の選手はどこにいる。それならなぜ声をださないのか」と反論した。

ダンフィー選手の反論に対して、バッハ会長は、「1つ2つ反対はあったようだが、札幌に移すことに不満を抱いているアスリートは、彼らがより上手く高温に対応できるからだ」「すべてのアスリートの健康を守る責任がIOCにはある」と述べている

筆者は、このバッハ会長の「全てのアスリートの健康を守る責任がIOCにはある」が事実そうであるならば、異常気象とも思える酷暑の東京で五輪を開催し、IOCは本当に健康を守れると思っているのか、いたのかと疑念を抱かざるにはいられません。それでは、何故IOCは東京招致を承認したのか。

ダンフィー選手は、IOCの発表直後から「IOCの偽善」と堂々と批判を述べ、「移転に対する何の証明する科学的資料、根拠を提供せずに、勝手に決められる事に納得できない」、「IOCは、アスリートの事など気にしていない。そうでないなら私の間違いを指摘できるか」と述べている。また、トム・ボスワーズ選手(英国)はリオ五輪の男子20キロ競歩6位の成績でした。今回ツイッターで「バッハ会長はサッポロが何処にあるか知っているのか。東京と同じぐらい暑いかも知れない」、「選手は正当な理由も無く、五輪から800キロ離れた場所に移動する事に怒りをおぼえる。IOCの傲慢だ」と批判している。

日本のマスメデイアでは、デイリースポーツがバッハ会長の札幌案「大半の選手賛成」発言波紋、海外選手激怒「どこにいる?」と題して掲載。デイリー以外の国内のマスメデイアが本件を取り扱った記事、報道は、記憶にありません。

筆者は、バッハ会長のこの発言は非常に過敏に反応していると思います。しかし、相手が競歩選手なので軽くあしらっていると取られても仕方ない対応であったと思います。

もし、これがオリンピック大会の伝統的な花形競技で世界のトップ選手達であったなら如何でしたでしょうか。此れがこの度の第三弾のハイライトであると思われます。読者の皆さんには、本件のキーワードが何処に隠されているか、あらかじめ申し上げておきますので是非独自の結論に導かれる事を期待しております。アスリート達は、今日まで五輪出場への拒否権はアスリート自身にある事を忘れていたのかも知れない。

 

Ⅱ.IOCの強権発動の因果は此処か

1.世界陸上界の力と現実

①プリオ・ネビオロ会長(イタリア1981–1999)の出現

陸上競技は、水泳競技とともに「水陸」と称せられるようにオリンピックでも伝統的なメジャー競技で在ります。特に今日の陸上競技は、1974年にIOC五輪憲章からアマチュアの文言を削除して以降、陸上界に台頭したプリオ・ネビオロ氏(国際陸上競技連盟会長、IAAF、イタリア出身)により、大きな変革を遂げました。ネビオロ氏もまたIOCサマランチ会長と同様に世界の広告代理店電通と手を握り、世界陸上選手権大会を陸上界のメインイベントと化した手腕は評価に値すると考えられます。1991年に旧国立競技場で開催された世界陸上東京大会は世界のスーパースターが一堂に集結した最初で最後の大会であったと確信致しております。

 ②ラミーヌ・デイアク会長(セネガル 19992015)の出現

ネビオロ氏の後を受けて国際陸連会長に就任したのがラミーヌ・デイアク氏(セネガル出身)でした。読者の皆様は、デイアク氏と聞くとつい最近までオリンピックの招致、薬物スキャンダルで長男と共に世間を騒がせたのが記憶に新しいところではないでしょうか。

デイアク氏は、アフリカ陸上界をバックにヨーロッパ、ロシア圏に巨大な人的ネットワークを張り巡らせていた人物です。ロシア陸上界のドーピング問題に深く関わり、フランス国内で莫大な金額のマネーロンダリング資金洗浄)を行なったとしてフランス当局に抑えられ、さらにリオ五輪の招致疑惑の主犯者としても捜査を受けており、ブラジル五輪委員会長の逮捕と共にIOCの名誉委員、IAAFの会長職を追われたのでした。しかし、現在なお2020東京五輪招致の嫌疑は晴れておらず、デイアク氏親子は、追及の手からは逃れられない状態にあるようです。

また彼らが利用するためIAAFIOCの最重要ポストの一つに迎え入れたフランク・フレデリック氏(ナミビア)は、リオ五輪の金銭授受に関して、既にフランス当局の司法取引に応じ、現在母国ナミビアに帰国しています。この経緯に付きましては、K’sファイルNO888990で当時の模様を詳細に既に述べさせて頂いております。

セバスチャン・コー会長(英国、2015年~)の出現

セバスチャン・コー氏(Sebastian Newbold Coe, Baron Coe, CH KBE FRIBA, 1956929 - )は、1980年代の陸上男子中距離選手で当時スター選手で、80年モスクワ、84ロスアンゼルス両五輪の1500mの金メダリスト。引退後の1992年〜1997年は保守党の庶民院議員となり、その後2000年には一代貴族爵位「カウンティ・オブ・サリーにおけるランモアのコー男爵」(Baron Coe, of Ranmore in the County of Surrey)に叙され、貴族院議員に列した。 2012ロンドンオリンピックでは招致委員会の委員長として開催誘致に成功し、大会組織委員会会長をも務めました。(同氏のバイオグラフィーより)

2007年よりIAAF副会長2015年のIAAF総会での会長選挙でセルゲイ・ブブカ氏(ウクライナ棒高跳の超人ブブカ、現在も世界記録保持者)と決戦投票を行い、会長に選出されたのでした。

筆者は、両氏が選手時代からリスペクトする共通の友人が、筆者が大変お世話になったリスペクトする親友であったことから、また彼らの友人でもある事から選手時代には大変近しい関係で「ご縁」を頂いています。将来は、両名が力を合わせて世界の陸上界、自浄能力を失った現在のIOCをアスリート達が信頼できる組織・団体に是非再構築して頂きたくエールを送る次第です。コー氏は、IOCの次期会長の最右翼であるとの声も届いています。健闘を祈っています

2.IOCへの警告は世界のラソン界からやって来た

①世界のマラソン界を席巻するアフリカンパワー

2020東京五輪は、アスリートがオリンピックのCOREである事に目覚める記念すべき元年になるのかも知れません。

2019年男女ワールドマラソンランキング・ベスト100に於いて、驚くことなかれ男子は、エチオピア45名、ケニア42名、ウガンダ2名と89名がアフリカ大陸の選手達なのです。女子は、エチオピア53名、ケニア27名、ナミビア1名と81名がアフリカ大陸出身者なのです。日本人女子選手は、ランキング701名、802名、901名、合計4名がランク入りを果たしております。残念ながら男子は、1名も顔を出していないのが現実です。

2019年男子ワールドマラソンランキングベスト100

国別人数

ETHエチオピア 45名

KENケニア   42名

UGAウガンダ   2名

TURトルコ    2名

GBRイギリス   1名

MARロッコ   1名

BRNブルネイ   3名

BELベルギー   2名

NORノルウェー  1名

NEDオランダ   1名

ERIエリトリア   1名

2019年度女子ワールドマラソンランキングベスト100

国別人数

ETHエチオピア  53

KENケニア    27

BRNブルネイ    5

JPN日本      4

ISRイスラエル   2

USA米国      2

NAMナミビア    1

FRAフランス    1

ITAイタリア    1

AUSオーストラリア 1

PORポーランド   1

World Athletics提供~)

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②マラソン競技はシーズンスポーツ

本来マラソン競技は、秋から春にかけて行われる競技スポーツで、従来は南北半球に於いてのシーズンスポーツとして行われていました。しかし、IOCのビジネス最優先主義に於いては、企業スポンサー及びTV放映権が最大の収益を生む事から、TV放映権の最大のクライアントである米国のテレビ局の契約内容に従う事を選択したのです。IOCのビジネスコンセプトは、米国TV局の放映権が基軸としているからです。

米国のTV局は、

1)オリンピックが地球上何処で開催されようとも米国がオリンピック競技種目の中で商品価値が高いと判断した競技種目、及びその決勝を米国のプライムタイム(1日の視聴率が一番高い時間帯)にセット。

2)もう一つが米国のメジャースポーツ競技のNFLNBANCAAフットボール、バスケットボール)のシーズン以外に設定されている事が契約条件なのです。

よって、オリンピックの開催時期は7月、8月、9月であることからアウトドア―の競技スポーツにとっては最悪の季節にIOCは大会をセッテイングしているのです。

此のことからもIOC,組織委員会の「アスリート・ファースト」という言葉は、偽善に過ぎないと言われる所以なのです

IOCの此の方針により、国際陸上競技連盟IAAF)も世界陸上をオリンピック同様に真夏に開催を余儀なくされている次第です。

③日本の伝統的なマラソンシーズン

日本に於いては、元来IOCIAAFの開催時期に逆らう事が出来ない現実とマラソン競技大会は初冬から初春に行って来た伝統から真夏のマラソン大会を保有して居なかったのでした。

そのため、真夏のマラソン大会の必要性を唱えたのが当時の日本陸上競技連盟JAF)の強化委員長であった小掛照二氏で、北海道札幌市に設置することになり、大会は今日まで強化目的で開催されてきました。その意味で、東京五輪の男女マラソンコースの札幌移転は青天の霹靂以外の何ものでもありませんでした。

北海道マラソン(ほっかいどうマラソンThe Hokkaido Marathon)は、1987年より夏季(8月下旬)に北海道札幌市で、北海道新聞社が中心になって運営が行われてるマラソン大会です。

19873月に「実業団選手は道内限定」「海外招待選手は道内市町村の姉妹都市から」という条件付きで開催を承認、国内では前例のない夏場のフルマラソンが実現することとなりました。当時この様な意味不明な限定条件が何故付けられたのか。

本大会を設置するに当たり、当時既存のマラソン大会(新聞社、TV局、一部協会関係者)から利害利権の問題で大変な抗争が起きていたようですが、関係者のご努力により今日必要不可欠な大会の一つとして、北海道札幌市の夏の風物として現地では大切にされ現存している次第です。

筆者の素朴な疑問と私見

オリンピックは、選手達に何を還元しているかIOCは、強化目的で各国NOCIOC傘下の各国オリンピック委員会)に助成金を配布しています。しかし、その助成金が幾らで、実質幾ら各選手の強化に当てられているか全く情報公開がなされていないので、大多数のアスリートは知らないと推測されます。

IOCは、アスリートに名誉を与えアスリートを商品として莫大な収益を吸い上げている事は事実です。IOCは、アスリートに対してプロとしてビジネスを得る事に同意している限りアスリートにとってオリンピックだけが奉仕イベントではないという論理は正論です。大部分の海外のアスリートは、1社会人として家族を持ち、自身の仕事として競技スポーツによって生活の糧を得ています。そこでアスリート達は、心血を注ぐ中から経験、体験から知恵を会得しているのです。

一部特定競技種目の彼ら、彼女らは、IOCCOREは自分達選手自身である事に気付き始め、目覚めたのがこの度の高温多湿での世界陸上ドーハ大会での悲劇がその原点と成り得た可能性は大です

世界陸上ドーハ大会は、IAAFのラミーヌ・デイアク会長時代に既に開催招致が確定、契約済みであったのでした。本開催地の招致活動に関しても金銭的な疑惑が取りざたされていた事は、記憶に新しいのです

本件は、既にIAAFS・コー氏会長が副会長当時から真夏のマラソン競技、競歩の医科学的な視点に於いても危険性を事あるごとに指摘発言して来ていた事はよく耳にしていた事です。そこで世界のトップアスリート達は、自分達無くしてIOCが成り立たない事に今気付き始めているのです。

怯えたIOC首脳達と蚊帳の外のスポンサー達

オリンピック大会に参加、招集されるアスリート達は、今日までIOCの権力により翼下の各国オリンピック委員会(NOC)に同様な権力を委託して選手達に無料奉仕をさせてきました。もしもIOCCOREである選手達にプロとしての報酬を与えているのであれば、既に情報公開されていてしかるべきであり何の問題もないと思われます

1974年のオリンピック憲章の変革に伴い、選手は、プロとしてオリンピックスポーツをビジネスとして活動することを認められているのです。これまで誰もが指摘しなかったのは、社会も選手も関係者達もオリンピック憲章からアマチュアの文言を削除され、変革がなされたことに最大の注目と喜びに目を取られて、実質オリンピック大会では参加報酬、保証など考えもしなかったのも事実です。

アスリートは自身の価値に目覚めるか

この度東京五輪のマラソン競歩の選手達の一部が、自分の身は自分達で守らなければ誰もが保証してくれない、「アスリート・ファースト」はIOCTOCOG、開催都市の絵空事と気付いたとしても何ら不自然ではないと思われます。これはまた1974年の「アマチュア削除」の変革後の矛盾に対するこれまた一大変革をIOCにもたらそうとしているような気がしてならないのですIOCは、莫大な利益をアスリートのパフォーマンスを元手に長年得ているにも関わらず、選手達には名誉と称するメダルと代表権のみを与え、選手達に利益の還元を怠ってきたのも事実です。IOCとアスリートがフェアーな関係で初めて真のIOCの理念に一歩近づける事に成るのではないでしょうか。

これは、今一部個人種目の選手達、関係者が目を覚まそうとしているにすぎず、これが段々と時間の経過とともに陸上界からテニス界、サッカー界、等、オリンピック競技種目のメジャー種目に波及して行く事は時間の問題であるように思えてならないのです次なるIOCの強権発動が気になるところです選手への報酬、傷害、後遺症に対するインシュアランスは、最低限のアスリートへの保証義務があり、IOCの当然の使命であると筆者はスポーツ・アドミニストレイターとして理解する次第です

 エリートマラソン選手達の動向と現実

読者の皆さんは、既に男女マラソンの本年度(2019)のランキング100の国別をご紹介しました。多分強烈な印象を持たれたのは、世界のエリートの80%以上の男女マラソン、長距離のトップランナー達は、アフリカ大陸のエチオピアケニアに集中している事です。

残念ながら日本人男子は、1名も入っていません。女子は、4名がランキングの下位に甘んじている次第です。此れが世界の現実である事を理解して頂ければこの度のIOCの強権発動の意味も透けて見えて来るのではないでしょうか。また、皆さんは、アフリカの選手達は暑さに強い筈だとの先入観をお持ちの方が多いのでないでしょうか。しかし、それは逆で彼女、彼らは、高温多湿の環境で育ったのではなく、乾燥した大陸気候で先祖代々生活をしている事から体内の生理的循環機能が対応しにくいのです

此のことからもこの度の世界陸上ドーハ大会で、陸上競技のマラソン界の強力な選手達、代理人、関係者達がIAAF(国際陸連)に対して、選手達の生命の危険を顧みず、高温多湿のドーハでの世界陸上競技大会を実施した事への不信と怒りを能動的に表したとしても自然な成り行きだったでしょう。此の程の世界陸上ドーハ大会は、IAAFの前会長のデイアク氏が就任時に決断契約した為に当時から適切な会場でないとの批判が髙かった事も事実でした。しかし、デイアク氏の後を受けて就任したS・コー会長は、危険であることを継承しながら開催しなければならない約束事であったので、心を痛めた事でしょう。

エリートアスリート達は、IAAFがドーハでの事故、状況の反省も改善も無く、翌年2020年の高温多湿の東京五輪大会に選手招聘をされる事に対して、選手自ら「自己防衛本能」が出たとしたら、東京五輪のマラソン種目は、成立しなくなることをIOC関係者は誰も気付かなかった、気付こうとしなかったのでしょうか。これは、まさにIOCの選手に対するリスペクトの欠落を意味し、「アスリート・ファースト」と都合のよい言葉を並べて利益を得ている人達の偽りの仮面が暴かれた証ではなかったのでしょうか競歩の選手達も怒り、反論をバッハ会長に浴びせた根拠が此処に有りそうです。

プロ選手達は、走る事により自身の生活の糧が掛かっており、即ち自身の家族の生活の安全と保障が常に必要不可欠なのです。この高温多湿の酷暑の夏の東京五輪でその安全のリスクが脅かされ、生命の危険のリスクが伴う事にも関わらず何の保証もされていない事に恐怖が芽生えてくるのです

日本の代表選手のように名誉だと言って出場する選手達は、自身と家族の生活の安全と保障を担保してくれている会社、企業があるからです。また、このような選手達には、国、組織・団体、会社から報奨金が約束されているのです。

現実的には、大多数のプロの国際アスリート達は、高温多湿のハイリスクのレースに挑むとすれば、その選手達は東京五輪後の高額の出場料、アピアランス(成功報酬)が掛かったレースに個人差はあるが半年~1年、後遺症の為出場出来なくなる高いリスクが伴うのですそれらの高額賞金レースは、秋のニューヨークマラソンに始まり、ロンドン、ベルリン、ロッテルダム、シカゴ、ボストン、等々です。そこでの活躍の機会がIOCにより奪い取られる可能性がある事を忘れてはなりません。

近年のオリンピック大会でのレースでは、選手の心身と生活を守る手段は、酷暑の真夏のマラソンレースで酷使して生活権を奪われない様に心身の安全弁が自動的に作動するのかも知れません。それがレース中の途中棄権という事態を招いている事にIOCの幹部たちは、知る由もないと言う事なのですこれがIOCのようなアスリート達を偽善の目的で酷使する事で、選手達の身心の自動防御装置がこの度は、コース外で能動的に作動したのかも知れません。

ドーハ大会でのような高温多湿で大半の選手が途中棄権する意味は、自己防衛本能のみならず秋から春にかけて始まるマラソンシーズンの高額賞金の大会に出場する為には自身に与える身心へのダメージを最小限度に留めて置くアスリート達の知恵かも知れないのです。東京五輪でもこの現象は、起きないという保証も抑止力も無いと言う事です

この度の東京五輪ラソン競歩競技の突然の移転の背景には、IOCがこれから決める2030年冬季五輪の札幌市への招聘に「忖度」を期待する下心も見え隠れしているのもこれまた事実です。

  国際陸連IAAF)は11月に「ワールドアスレテイックス(世界陸連、WA)」に名称変更を発表しましたが、今回はそれ以前から話が継続していることもあり、混乱を避けるため国際陸連で統一表記致しました

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports

お知らせ:

2019年もまもなく終わろうとしています。この1年間読者の皆様には、K’sファイルを通して色んな時事の出来事をご紹介、解読させて頂きました。各ファイルに対する感想、読後感、ご意見を個別にメールを頂きました皆様には、心より感謝申し上げます。何か一つでも皆様に取ましてスポーツ・アドミニストレイションの必要性に気付いて頂けましたら幸いです。

2020年が読者の皆様に取まして、平和で災害の無い年でありますことを心から祈願しております。それでは、素晴らしいホリデイシーズンをお過ごし下さい。深謝