K'sファイルNO.134:東京五輪延期の新たなる現実と試練(3)

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K'sファイルNO.134東京五輪延期の新たなる現実と試練(

無断転載禁止             毎月第2 4 木曜日 公開予定

お知らせ~

2020東京五輪リマインド・シリーズ(4)後編(第四弾:暗黒の東京五輪招致シナリオライターは何処に)は、スペースの都合により次回に予定を変更させて頂きましたのでご了承下さい。

 

目次

K'sファイルNO.134東京五輪延期の新たなる現実と試練(

東京五輪を幻の五輪と呼ばせない為にも

■選手達の時計を停止させたトラジテイー

★疲弊して行くTV、マスメデイア

■今選手達は未知の体験に挑んでいる

■アスリート達に取って競技とは

筆者の素朴な疑問と私見

 選手達の競技目前の「恐怖と葛藤」

 

2020528日 木曜日 公開

K'sファイルNO.134東京五輪延期の新たなる現実と試練(

東京五輪を幻の五輪と呼ばせない為にも

先ず初めに

この度のCOVID19新型コロナウイルス)は、世界中に拡散し、略全世界の競技スポーツ選手達のトレーニングを行う環境を奪っています。この様な事態、状況下に置いて選手達は、嘗て経験した事の無い体験を共有していると思われます。勿論、選手達と申しても個々のレベルも事情も環境、目標も異なるに違いはありません。しかし、選手達に取ってこの状況をポジテイブに捉えるかネガテイブマインドで捉えるかは今後の競技生活の中で、強いては自らの人生の大きな分岐点になりかねない事態に遭遇していると思われます

筆者は、スポーツ・アドミニストレイターを志し、実践して参りました過去四十数年間の中でこの様な事態と状況に遭遇した事は嘗てありませんでした。

この様な未曾有の出来事に対して、特にこの度のような疫病は、人類の進歩発展を逆手に取り、国境を往来する人達をウイルス拡散の運び屋として利用する、まさにAIartificial intelligence人口知能)を内蔵したかのようなウイルスに変身したように思えてなりません。また、このCOVID19は、人が生命を維持する為の呼吸器官に静かに奥深く侵入して身心に苦痛と恐怖を与えるのみならず、人が生活を行うに必要な活動の場を奪い、狭い所に閉じ込めて隔離させ、人間の行動を分断させながら、国家、社会を分断させる特徴を有している事を我々は認識させられている次第です。近年世界を震撼させているテロリストをフリーズさせている人類初の新種のテロなのかも知れません。近年これ程までに発展を遂げている人類の医科学に対して挑戦を挑んでいるのかとも思えてならないのです。

K’sファイルNO.134では、このような事態に遭遇したアスリート(競技者)達、特に東京五輪を目指す日本国内の上級競技者達を対象に述べさせて頂きます事をご承知おき下さい。また、スポーツ・アドミニストレイターとしてポジテイブな方向に導き、マネージメントを如何に成すべきかに付いてお話できれば幸いです。

 

■選手の時計を停止させたトラジテイー

突然目標を見失った選手達

東京五輪を目指していた競技者、関係者に取っては、五輪参加国(206カ国)から感染者が居なくなる仮説も未だ立たないのが新型コロナウイルスの脅威の実態であります。出口が見えない事は、東京五輪の延期開催(現在は2021723日)のみならず、通常の競技スポーツの開始、再会のメドすら立たない事が最大の問題であり不安による焦りを増幅しています。

例年通り何の疑いも無く競技者達は、日々競技開催日に合わせたトレーニング、コンデイショニング、等と指導者と共に日々過ごしていました。しかし、オリンピック東京大会という最終の目標に向かっている選手達の他、あらゆる競技スポーツの開催を待ち望んでいたアスリート達は、2020324日(日本時間JST)を持って時空が止まり、突然目標を見失ってしまったのです。

 

★疲弊して行くTV、マスメデイア

競技スポーツの観戦、話題をスタジアム、TV、マスメデイアを通して楽しみにしていたスポーツファン達の日常生活のサイクルも停止しました。今日のTV、マスメデイアは、今迄何の不自由も疑いも無く連日、連夜、競技スポーツ、選手達の話題を放映、報道、記事掲載とビジネスとして活用し、それによる多大な恩恵を受けて来ていました。しかし、本業界に於いても本年324日を持ってライブでの報道、放映が中断してしまったのです。この事態に伴い、それまでストックしてあったソース(source情報源)は、毎日の取材活動が制限され、出来なくなりそのソースも底をつくに至っているのが現実です。その証としては、TV番組、新聞各社のソースは過去のスター選手達、大会、ゲームを再利用せざるを得ない事態に陥っている事に読者の皆様もお気付きになられている事と思われます。この現実の状況から読者の皆様は、競技スポーツのTV放映の価値は映像をお茶の間の視聴者にリアルタイムで届ける事に商品価値がある事に認識を新たにされたのではないでしょうか。

また、TV、マスメデイアは、選手、競技スポーツをCOREとしてビジネスを展開し生活の糧を得ていた事に対する感謝の念を改めて持たれたのではないでしょうか。しかし、突然このようなトラジテイーにみまわれ、今までの企業のシステムが壊され、ビジネスの糧としての生きたソースを失い、商品が無くなった時の危機感を今現場のみならず経営者達を震撼させていると思われます。この度の出来事は、このようなTV、マスメデイアの弱点を経営者達に対しても生きた教訓として、マスメデイアの義務と使命を再構築して頂くよき機会ではないかと思う次第です

 

■今選手達は未知の体験に挑んでいる

ポジテイブな思考回路がアスリートを救う

選手達は、常日頃から何の疑いもなくトレーニング、競技に集中していましたが、この様な現実に遭遇した今、何を思い考えているのでしょうか。それは、何も起きなかった平和な環境こそが感謝に値することを強く再認識して欲しいと願う次第です。特に東京五輪を目指す選手達は、目前に迫った大会出場への最終関門である国内最終予選への準備も整い待ち構えていた最中の出来事でした。既に東京五輪出場決定、内定を獲得していた選手達は、闘争心を削がれ開催への準備の再構築を余儀なくされていることにちがいありません

東京五輪に挑む選手達の心境

選手達は、これからコンデイショニングのピークを整え最終予選に合わせた調整に取り組んでいた矢先でした。多くの競技種目の最終予選は、全日本選手権を含め本来は5月、6月がその主戦場と予定されていたのです。

選手達に取っては、調整と申してもそう簡単なことではありません。それらは、それぞれの異なる個々の環境、境遇、条件で準備を長年整えながら最終予選出場の権利を獲得する為、重要な予選を潜り抜けて参った選りすぐられたアスリート達なのです。また、この様な選手達を物心共に提供し支えて来て下さった協力者、投資者、等と共に個々の選手達は、代表権を勝ち取る為に心血を注いで参っています。勿論、この予選会、代表権、東京五輪での成績は、その個々の選手達のこれからの競技人生の岐路に対する分岐点となると申しても過言でないと考えられるからです。

 

アスリート達に取って競技とは

近年のオリンピック大会は、「参加する事に意義がある」などとの1974年迄のオリンピック憲章のアマチュアリズムは過去の産物となっています。競技スポーツの定義の最終章は、「選手達は個々の体(身体的能力)、心(精神的能力)、技(技術的能力)を持って最大のパフォーマンスに活かし、その個々の競技種目に於いて個々の競技者、テイームに勝利をもたらす事」が最大の目標なのです

世界のアスリート達は、プロフェッショナルで在り自身の生活、家族の生活を支えている厳しさは日本の選手達と大きく異なるかも知れません。勿論日本選手も近年海外のプロ選手に劣らないプロ選手が台頭してきているのも事実です。

このような事からも代表選手に選考されるのは、ほんの限られたアスリート達で彼ら、彼女らもまた「ワンチャンス」に全てを賭けて集中して臨む一生一大の勝負を決する時であります

 

筆者の素朴な疑問と私見

競技に挑む競技者達は、大なり小なり経験する「恐怖との葛藤」に直面するのです。この恐怖は、アスリートの個々の心的プレッシャーはその最終ゴールの競技に直面する間際に於いて最高潮(MAX)に達することを意味します。これは、選手の心臓の鼓動が今にも飛び出さんとする極限のプレッシャーの状態であると表現した方が判りやすいと思われます。スポーツ生理学的には、丁度アナエロビクス(無酸素運動)状態に陥ると申し上げてもよいかと思われます。

ネガテイブマインドはプラスにならず

筆者は、スポーツ・アドミニストレイターとして、また嘗て現場コーチとしての経験から、このアスリートの心的なプレッシャーをポジテイブな内面的な力に置き換える為のコーチングスキルをここ一番で逆利用し絶大な効果を得、最終結果に導けたことがあります。それは、この様な大事な局面での競技者に対して、内面の恐怖と葛藤に於けるネガテイブマインドを如何にして取り除くかの心理学的手法を用いる事でした此れをコーチングに於いては、選手、テイームをサイクアップ、或はサイキングアップと呼ぶ手法なのです

筆者が何度も実践した経験の中で、特にこの手法を使用して最終目的を達成した例は、1976年の全米大学選手権(NCAA)、全米選手権での決勝戦1994年のプロ野球セントラルリーグの最終決戦(10.8)の中日対巨人戦の名古屋球場に向かう出発前の全軍へのサイキングアップは、そのシーズンの集大成としての結びのキーワードとなった一つとして記憶に残っています

この事は、今日も尚報知新聞の巨人軍紙面でよくキャッチコピーとして引用されている「勝ツ、勝ツ、勝ツ」は、この10・8のあの場面で筆者が長嶋茂雄監督に先導して言っていただいた心理的戦術に於ける仕上げの行動パターンで在った次第です

サイキングアップ(psyching up)とは、選手、テイーム、決戦に今まさに挑もうとする前にポジテイブな集中・興奮状態にするメンタルコントロール法の1つなのです。競技を経験した人であれば大なり小なり経験している試合前の自身に内在する恐怖との闘いに対する心理的コーチングの1つです。

自己管理の必要性

筆者は、日本人のアスリートを目指す人達には是非、自立、自己管理に目覚めて欲しいと願う次第です。何故自立、自己管理が必要かと申しますと、アスリートは、競技レベルが高度になるに伴い指導者のレベルの資質が、自身の競技力の向上に大きく影響を及ぼすという事です。そこでアスリートを目指す人達は、自身の心技体の現実を見きわめられる冷静な観察、洞察力を日々養う事が非常に大事になるのです。スポーツ・アドミニストレイターの立場と視点で長年日本人選手の日常トレーニング、競技を観察、洞察して参りましたが、日本の伝統的な指導方法には、選手の自立、自己管理を養う指導が結果として見受けられません。

本来スポーツは、幼少時から体を動かす事に興味を持ち、興味があるからこそスポーツを始める事がその初歩的な行動パターンなのです。そして次のステップは、人は自身の身体能力、スキルが他とその違いを比較したい、比較する為に競技に参加する闘争本能を持っているのです。此処までは、各個人の興味と能動的な心が行動へと導かれているのです。しかし、此処からもう一歩踏み出し同じ志を持つ仲間と集団に入るころから、そこには指導者が介入、介在してくるのです。

我が国に於いては、どうもこの段階で指導をする大人の強い思惑と片寄った思い込みが、子供達のスポーツへの興味がそれまでとは異なる方向に導かれ、本来の大切で重要であるべき子供達の自主性を消されてしまう指導体系にシフトされて行かれる様ですこの事に対して子供達もその父母達も気付いた時は、もうすでに指導者に抵抗できない伝統的な構造とシステムが内外に確立されているのです。

折角子供がスポーツに興味を持ち、同じ志を持つ友人、仲間と楽しもうとしている時期に個々の子供達を集団指導し、短期間で大人の目的を達成する為に指導者本位の考えや都合を押し付け強いているからだと思われます。

読者の皆様に判りやすい例としては、中学、高校野球がその最たる伝統的な集団指導を通して自主性を奪ってしまう大人達のエゴ(EGO)指導と申し上げても過言でありません。この指導法は、個々の選手達の将来の自主性、自己管理という大事な自立心を潰されている大きなファクターの一つである事を述べさせて頂きます。この様な指導方式の下で育てられた選手達の多くは、競技スポーツ界に所属する間常に指示待ち人間が確立されてしまっている悲しい現実が今日の現場で色濃く見受けられます。これらは、プロの選手達に於いても顕著にみられるのがその証と特徴でもあると思われます。

この様に殆どの選手達は、幼いころから既に自分自身の意思を大人の指導者に取り上げられ、唯ひたすら指示待ち人間化されて来た事から、常に誰かの強制的な指示、指導即ち暴力的な強制指示を受けなければ身も、心も動けない、即ち思考停止の状態にされているという事です

これらは、日本のスポーツ界の伝統的な指導方法の1つで今日も尚美化され継承されている負の遺産と申し上げます。この様な指導を受けて来た選手達には、自立、自己管理という言葉が何を意味するかを理解するに至らない悲しい現状が横たわっている事をご理解下さい。今この様なトラジテイーの時にこそ、自らを変革する為にも関係者が認識を新たにする事が先ずその第一歩であると思われます

この事は、近年に於ける競技スポーツの多様化、国際化により多種多様な情報を通して身近に感じ、思考できる時代となっています。これにより子供達は、自由に思考し、行動する楽しさを自然と身に着けている中で、拘束され自由を奪われるような全体主義的な競技スポーツの指導を避ける様子が顕著になってきているようです例えば子供達の野球離れ、バレーボール離れが極端になっている我が国の現実は、このようなファクターに起因しているように思えてなりませんこの問題の要因を指導者達は、気付かない、認めようとしない所に問題の本質が改善されないでいるのかも知れません

選手達にとっては、この度の新型コロナウイルスによる悲劇は千載一遇のチャンスと捉えて自らの人生を見直し、修正、変革できると思われるからです。それは、選手同様に指導者、コーチ陣にとっても最大の変革へのタイミングでもあるのです。スポーツには、暴力(物理的、精神的)は無意味である事を選手達は、勇気を持って「STOP」と指導者、運営、管理者に声を上げる事です。それにより、多くの有能な若者達が自主独立の精神を学び、自主管理の必要性を自覚すると確信する次第です。

よって、このトラジテイーは、願ってもないタイミングを神から頂いたとポジテイブに捉えることが賢明であると思います。ポジテイブな思考力は、アスリートのみならず指導者、関係者に経験値としての知恵を与えてくれます消去法の指導論理は、ネガテイブ指導の代表格で在り、これはコーチングの本質を逸脱した選手を壊す最大の原因となっているのです

このトラジテイーをポジテイブな視点で思考することにより、東京五輪出場の最後のチャンスを手にしている選手達の思い、まだ代表権を得ていない選手達のこれから、怪我、傷害、準備不足の選手達、全くどうしてよいかわからない選手達、これら様々な状態を抱え現在身動きが取れない選手達に適切な今後の指針と指導を与える事が今必要で重要な事と思われますその為にもスポーツ・アドミニストレイター的な立場の関係者の方々は、これから2021723日開催までの間の指針とその具現化したマニュアルを提供する責務があると思われます

 

JOCが今こそリーダーシップを執る必要性

特にJOC日本オリンピック委員会)は、各競技団体に委託契約をしている事から全選手への適切な管理を徹底する責任があるのです。JOCはこの様な事態の中で国内競技団体(NGB)、代表選手の運営、管理をIOCから委託を受けている国内唯一の団体です。

JOC東京五輪組織員会、IOCは、一日も早く2021723日開催の是非を決断するに当たってのDead Lineに必要な明快な基準と指針」を全世界のアスリート達に告知して頂くことが急務で今求められている最大の懸案事項であると確信します

筆者は、幻の東京五輪にならない事を切に願う次第です

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

紹介:「Gファイル 長嶋茂雄と黒衣の参謀」文芸春秋社 著者 武田頼政

小野塚テル氏の読後感をご紹介します。以下URLを貼り付けてご検索下さい。

https://lp6ac4.hatenablog.com/entry/2019/05/30/055

お知らせ:NO.134は、如何でしたでしょうか。今選手達に思考して欲しいポイントを幾つか述べさせて頂きました。紙面のスペースの関係で予定していました、東京五輪のリマインド・シリーズ後編は、次回に掲載させて頂きます