K’sファイルNO.104:中央大学に於けるSAD講義・ゼミ実践活動

K’sファイルNO.104中央大学に於けるSAD講義・ゼミ実践活動

無断転載禁止                    注:K'sファイルは、毎週木曜日掲載予定 

f:id:hktokyo2017041:20190529235716j:plain                                                                                                         写真提供:中大河田ゼミ

読者からの便り~

河田弘道様 

真夏日です。K'sファイルNO.103号拝読いたしました。本号は河田さんが教授職で取り組まれていた実践活動を読者が知りうる貴重な機会になりましたのでその関心の赴きは何時もに増して大きく、ことに現在教鞭をとられている先生方にとっては活きたスポーツ授業の取組、在り方を学ぶ好機になったのではないかと思います。私は本稿に触発されながら私自身の当時をあれこれ振り返っていました。多くの内外の関係者の大学スポーツの認識は、学生自治会の体育会組織での経験で、したがって「教育活動の延長」という認識が希薄だったこともありますが随分難儀しました。是非ともスポーツの本質を学んでほしいと願うのは私だけではないように思うのですが。それはともかく、河田さんの実践授業に学んでこれから体育スポーツ系大学及び学部の授業革命に繋がっていく事を期待します。次号を楽しみにしております。

 

             信頼と絆

          中央大学スポーツ・プロモーション活動 

第一期生3年間の実践活動の足跡

本プロモーション活動に付きましての記載内容は、先ず第1期生の3年間の活動を整理しまとめたものです。よって、膨大な各報告書、資料、等に付いての紹介は、紙面の都合で掲載不可能であります事をご理解下さい。

課題:

中央大学スポーツカレンダーの制作

・大学箱根駅伝を通して、大学スポーツの研究

 活動にあたって(第一期生作成)

今日まで中央大学スポーツは数々の種目でトップレベルの競争をしてきました。陸上競技部箱根駅伝6連覇、バレーボール部は天皇杯6連勝、水泳部は11連覇、ボート部は3連覇など、その他多くの輝かしい実績を残しています。しかし、近年は期待されながらも思うような結果が出ていないのが実情で、この状況を打破し、中大スポーツを盛り上げていくために、私たち河田ゼミは、体育連盟と一般学生とのつながりを強くする事、体育連盟のプロモーションを目的に活動していくことにしました

そこで、河田ゼミは、2つの課題を実行する事にしました。1つ目は、体育連盟のプロモーション活動です。中大スポーツ、体育連盟のプロモーションにあたり、ただ単に、「プロモーションする」といっても、体育連盟が今どういった環境の中で活動しているか、どういったことに不自由しているか、そのような体育連盟の現状を知らなければ、何をどうプロモーション、サポートしていけばいいかわからない。

そこで、まず、大学スポーツの現状を把握することから私たち河田ゼミは始めました。現状把握をするに当たり、学内アンケートで興味関心が最も高く、強化重点種目の一つでもあり、素晴らしい成績を残していることから、陸上部を調査対象にし、そして、私たち河田ゼミは、学友会会長兼陸上部部長である永井和之学長への取材をはじめとして、陸上部の田幸監督への取材、加納先生に頂いた中央大学保健体育研究所紀要を参考に調査しましたが、そこでも多くの問題が見えて来ました。サポート体制の不備、施設や寮の生活環境が悪い事、活動資金が少ないといった問題など、これは陸上部に限った問題ではなく、財政的な問題があると考えられましたしかし、今日、いろいろな面で、大学を運営することには、莫大な経費がかかり、既存の予算から体育連盟に対する資金を確保することは難しいということは私たちも重々承知しています。

私たち河田ゼミは、既存の予算から体育連盟に対する財源を確保するのではなく、体育連盟に新しい財源を作るきっかけとなる、体育連盟のサポートを考えたのです。そして、新たな財源の確保のため、中大スポーツのプロモーション活動を通して、体育連盟と一般学生とのつながりを強くするため、河田ゼミは、中大スポーツカレンダーの制作を活動目標としました

2つ目は、大学スポーツについての研究です。私たち自身、大学スポーツについての理解が浅かったため、より大学スポーツについて理解を深めるために、箱根駅伝について研究調査を行う必要がありました

箱根駅伝は、毎年注目を集める大会であると同時に、知名度も高く、中央大学も最多出場記録などの記録を持っています。箱根駅伝を調査するに当たり、大学に関する部門では、陸上部長である永井学長、陸上部の田幸監督、運営部門では箱根駅伝の運営主体である「関東学生陸上競技連盟」に対して、メデイア部門では「日本テレビプロデユーサー」に対して、それぞれ取材を行いこの取材を通して、規約の不明確さ、マネーフロー、大学側への支援不足などの問題がわかったのです。こうした問題の打開策が今後の課題になってくると思います。

                              2006年夏  河田ゼミ1期生作成 ゼミ長:木村優子

 

f:id:hktokyo2017041:20190521161805j:plain夏季伊豆合宿にて                                           写真提供:中大河田ゼミ

 

大学への初年度報告書一例(紹介) ゼミ担当教授

本報告内容は、2006年河田ゼミ1期生活動の1年目の報告内容の1例です。3年間のゼミ生達の日々の様子を推測して頂ければ幸いです。以下~

課題Ⅰ:中央大学スポーツカレンダーの企画・制作・販売・寄付

課題Ⅱ:大学箱根駅伝の「光と影」取材を通して大学スポーツの本質を研究

演習スケジュール

河田ゼミは、本課題を完成する事が最終目的である。必要な基礎知識及び専門用語は、順次演習の中で指導される。

前期予定:第一期生1年目の河田ゼミの趣旨・目的はオリエンテイションの中で説明される。講義では、日本の大学スポーツの現状と米国大学スポーツの現状を学び、今後の日本の大学スポーツのあるべき姿を模索しながら、中大スポーツの現状を如何にポジテイブな方向に導くかを実践を通して思考する。

後期予定:夏季休暇中に業務分担した成果を業務報告会議で各自担当業務を発表する。業務報告内容は、本プロゼクトテイームの共有の資料として「本企画・制作・取材準備室、以降準備室」の初期の知的財産とする。

前期で得られた基礎知識と夏季休暇中に得られた資料、コネクション、問題点、疑問点、等を調査報告書として準備室に持ち込み分析、デイスカッッション、修正を行う。本プロゼクトは、企画検討が再確認された後制作、スポンサーセールス、渉外、法文、内規調査、等を踏まえて各組織・団体、等への実践的なアプローチを開始する。タイムテーブルでのゴールは、学期末の12月22日(後期ゼミ終了日)と設定する。

活動内容

河田ゼミは、中央大学競技スポーツをプロモーション活動によって応援して行こうとの強い信念の基に二つの課題を設定しました

課題Ⅰ:中央大学スポーツカレンダーの企画・制作・販売・寄付

その1つは、中央大学スポーツカレンダーの企画・制作・販売を行い得られた資金をFLPスポーツ基金(仮称)にプールする事を想定。現実的な問題としてアイシングのアイスすら購入できない学友会所属の競技部を支援サポートする事を主たる活動目的にスタートしました

学内外調査、交渉、取材について

実施日:2006年6月1日より現在に至

①対象者及び団体・部署:

大学生協、生協印刷会社、中央大学学員会、南甲倶楽部(卒業生で財界で活躍されている会)、父母会(草野みどり)、大学広報課、ミズノスポーツ株式会社、中大125周年記念委員会、等を含む。

②実施内容:

制作に関しての専門的な知識の習得、協力依頼とその説得活動、印刷工程、デザイン、販売、映像修正・管理、スポンサーセールス活動、資金援助協力願い、配送、在庫管理、趣意書作成、契約書作成、同意書作成、肖像権確認管理、ネゴシエイション、資料収集活動、相手の要望、疑義、質問、問題提起に対する明確な回答準備作業、確認作業、等々。

③成果:

全体として関係者の温かい支援、協力、指導を得られた事は大変心強かった。一方では、ゼミ生達に見下した対応、態度を見せた学内関係者も居た事も事実。此れもゼミ生達の実践演習活動の大きな学習の一つとして受け止めている。学員会の中の南甲倶楽部(財界人の集い)が今後本プロゼクトにスポンサーとしてご協力頂ける方向に話が進んでいる。父母会の草野みどりでは、担当者の粘り強い交渉により見本ができ次第に次なる大きな展開が期待されている。ミズノスポーツ社からは、本プロゼクトスタートと同時に温かい支援、協力のお約束を頂きました

課題Ⅱ:大学箱根駅伝の「光と影」取材を通して大学スポーツの本質を研究

その2は、大学箱根駅伝の「光と影」を研究する為、取材活動を通して大学スポーツの現実と本来の健全な在り方を模索し中大スポーツに役立てる活動にしました

中大スポーツの現状を先ず把握する作業から始めました。学内でのアンケート調査(1000名サンプル)から始め、強化重点3種目の意義と目的を考察し、伝統があり学内で注目されている陸上競技部(男子駅伝)を調査研究対象としました。

河田ゼミは、先ず学友会会長兼陸上部長である永井和之学長への取材をはじめ監督、主務、選手と進めて参りますとそこには多くの問題、問題点が見えて来ました。その問題点の大きな問題の1つがやはり財源であったのです。そこでプロゼクトテイームは、大学箱根駅伝を支えている参加加盟校の1つである中大駅伝部にどのような財政的な恩恵を受けているかを取材目的とし、学外に調査・取材を広げました。

学内外調査、取材実施について

実施日:20068月、9月、10

実施対象者、団体:

中大学友会会長兼陸上部長、監督、主務、選手、日本テレビ箱根駅伝統括責任者、関東学生陸上競技連盟(略:関東学連

 注意丁度この時期、既に読売新聞社東京本社は、「箱根駅伝」を自社に於いて商標登録完了。共催に格上げされ、関東学連読売新聞社東京本社から商標の「箱根駅伝」名称を拝借している形態であったのかも知れません。会社、企業であれば本事業の収益の何パーセントかを商標登録拝借料として関東学連読売新聞社東京本社に納付義務がある。関東学連は、任意団体なので経理公開の義務がないこと、この実態は公にはされないグレーゾーンであるまた個々の加盟大学の代表責任者は、読売新聞社東京本社が商標権を獲得するに当たり「同意書、覚書、等」に各大学が署名、捺印しているかどうかは未だ不明ですこれらは、大学競技スポーツのスポーツ・アドミニストレイションに関わる重大問題を各大学、学生、学生選手、関係者、国民、社会に情報公開がなされていないことです。即ち、大学箱根駅伝は、誰の持ち物であるかが不明確。加盟大学の財産ではないのか、大きな疑問が残されています

成果:

取材を通して学内での問題と学外での組織・団体の視点と認識に大きな矛盾と疑問を発見できた事が最大の成果であった。本取材に対して大変温かく丁重な取材対応をして下さった日本テレビのチーフプロデユーサー氏と関東学生陸上競技連盟の担当者諸氏のご協力に感謝し、貴重な取材から得た資料を今後に活かしてまいる所存です。

担当教員 河田弘道 FLP河田ゼミ担当、所属学部:総合政策学部

 

ゼミ生の実践活動内容報告ゼミ生作成)

課題Ⅰ:中央大学スポーツカレンダーの企画・制作・販売・寄付 

テーマ:このキャンパスには努力し、輝いている学生選手がいる中大スポーツを一般学生、教職員、学員生に身近に感じてもらおう!

まとめ

中大スポーツカレンダーは、スポーツにあまり関心のない人達に対して「このキャンパスにはこんなに努力し、輝いている学生選手がいる」という事を知らせるための装置です

一般学生は、自分の勉強机の前のカレンダーを見て頑張っている仲間達の姿に励まされ自らも勉学、スポーツに励みます。

全国の父母の皆さまもスポーツカレンダー(母校の伝統を背負って他大学生達と競い合う姿)に目をやるとそれぞれ中大への思いと我が子への思いを重ね合わせる事となるでしょう。

その意味で本カレンダーは、全中大関係者の母校愛を紡ぐ「信頼と絆」の証なのです。よって本プロモーション活動は、カレンダー(制作物)を媒体に中大、中大スポーツへの関心を高めて戴く事をMission=使命としているのです。

 

f:id:hktokyo2017041:20190530002338j:plain                                                                           写真提供:中大スポーツ、各部活、河田ゼミ三期生

*裏面:各部試合スケジュール、テイーム成績、代表者宣言、選手名、出身、等

*各月異なる部活紹介(応援席の紹介を含む) 

成果と結果:3年計画

2006年「中大スポーツカレンダー」の企画、制作、スポンサー確保、着手。

事業事務局設置:総務、財務、経理担当者を選任

①個人、グループワークの担務、責務の明確化。

②趣意書 起案、作成

③企画書 起案 作成

Ⅰ:実践活動の開始

①学生生協との話し合いに付いての報告書

②制作に必要な予算見積書の起案と見積書の作成

③販売可能先のリスト作成

④スポンサー(協賛)可能なリスト作成とコンタクト開始

⑤大学教務課、FLP教務総合事務局との打ち合わせ説明

法律問題に付いての打ち合わせ (担当弁護士 池田健司氏)

⑦カレンダー作成:試作品の完成 (前期~夏季休暇中の作業)

Ⅱ:実践活動の開始

箱根駅伝・中大スポーツの調査・研究

②取材並びに報告書作成

③取材対象:日本テレビインタビューに関する報告書

      関東学生陸上競技連盟取材に関する報告書

      中央大学学長兼学友会会長兼陸上競技部部長取材に関する報告書

      陸上競技部監督取材に関する報告書

Ⅲ:担務と作業分担と責務

①編集担当:素材の確保、許認可の交渉、

②制作担当:デザイン、構成、印刷、

③スポンサー担当:学外のスポンサーへのプレゼンテイション準備

        学内―学員会、大学広報、125周年事務局、父母連絡会

        学外―中大に関わっている会社・企業優先セールス

        例:大塚製薬、森永製菓、明治製菓、ミズノ(1社先ず確保)

④営業担当:予算案、予算確保、セールス、商品販売リサーチ、確約

スポンサー獲得:中央大学父母会 予算全学負担 決定

2008年:目標の5800部完成、全国父母会に配布。学友会各競技部及び父母会より感謝及び称賛を受ける。

2009年:FLPスポーツ健康科学プログラム 河田ゼミ活動報告書完成

スポーツカレンダーのプロモ活動は、河田ゼミ三期生の課題Ⅱとして継承する。

ゼミ生報告書より作成・抜粋 2009年春卒 河田ゼミ1期生

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第一期生(4年生)を後輩たちが追い出すパーテイーにて、             写真提供:中大河田ゼミ

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

お知らせ:第一期生の活動は、如何でしたでしょうか。次回は、河田ゼミ第二期生のプロゼクトを紹介させて頂く予定です。いつも多くの読後感、感想、書評、及びご意見を賜りまして有難うございます。

大学箱根駅伝に付いて詳しくは、K’sファイルNO.7780をご参照ください