K'sファイルNO.128:Nikeシューズの理念は大学工房から(第二弾)

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K'sファイルNO.128Nikeシューズの理念は大学工房から(第二弾

無断転載禁止              毎月第二、第四木曜日公開予定

 

読者からのインターミッション

米国の友人から貴重な便りを頂きましたのでご紹介します。

今米国では、NIKE厚底ヴェイパーフライ・シューズがシーニアの間で静かなブームに成りかけているのだそうです。そして、寝室には、ヴェイパーフライ(Vaporfly)シューズを置いてあるとの事です。その最大の理由は、深夜トイレに約3秒早く駆け込むことが出来るからだとか。この3秒は、シーニア世代に取って現実的だそうです。別名レスキューシューズだそうです。日本の皆さんにも是非紹介してあげて下さい。米国人らしいウイットに富んだ便りでした。

The truth of SPORTS

目次

第二弾:Nikeハイテクテイームは職人でなく科学者集団

Ⅰ.本件の事の次第を整理

  先ず初めに

  世界陸連(WA)新規則の発表 131

  ★WAセバスチャン・コーSebastian Coe)会長のコメント

筆者の私見

Ⅱ.アスリートシューズはパラピックにより変革か

  ロードレースは陸上競技の特殊種目

  シューズとアスリートの関係

  エリート・ランナーとは誰のこと

  真のマラソン世界新記録とは

Ⅲ.Nikeハイテクテイームのテストラン

       サイエンス・アイの集団

       その後のプロセスを覗くと

筆者の素朴な疑問と私見

 ハイテクシューズとアナグロ規則の矛盾

 

第二弾:Nikeハイテクテイームは職人でなく科学者集団 

Ⅰ.本件の事の次第を整理

先ず初めに

2020115日英国新聞3社の論調では、「今後Nike厚底シューズは今にも規制が掛かるか、違反シューズとの烙印」を押されるかのような表現で掲載されていたのを読者の皆様もまだ記憶に新しいと思われます。その意味では、2020131日に世界陸連(WA)が発表した新しい規則は現時点では応急処置と言えると思われます。新規則は、多くの矛盾と問題点が垣間見られ、具体性に乏しいと思います。此処では、暫定規則と呼ぶのが相応しいかと思われます。

 

世界陸連(WA)新規則発表(131日)

英国新聞3社の論調後、WAは、本件の特別ワーキンググループ(各分野、部門の医科学専門家達、アスリートを含む)がラニングシューズの問題点の規制に関する検討を行っているので間もなくその結果が出ると思われます、と告知。 この告知は、言い換えると、Nikeヴェイパーフライと類似したシューズは、「違反とされるか、規制すべきか」ということを検討していると理解できたのです。業界関係者の論調は、「非常に複雑で、新ルールは、簡単にできやしない」との見方が大勢を占めていたのが欧米の反響でした。

131日、WAは、新規則を公表しました。その要旨は以下の通りです。

①プロトタイプ(試作品モデル)として選手に供給されるシューズを大会で使用するこ とは禁止。

②靴底の固定されたプレートもしくはブレードは、一枚に限定する。スパイクに関しては、「ソールにスパイクピンを装着する目的」として、プレートを追加することが認められる。

2020430日から、シューズは選手がマーケット(オンラインもしくは店舗を含む)で購入可能であり、大会で使用する4か月前から入手できるものに限る。

④既に販売されているものについては使用可能。東京五輪での使用も可能となるが、昨年10月にエイウド・キプチョゲ選手(ケニア)が非公認ながら1時間5940秒をマークしたときに履いていた試作品は禁止対象。 

⑤ソールの厚さは4センチ(40mm)以内。

WAセバスチャン・コー会長のコメント

世界陸連(WA)のセバスチャン・コーSebastian Coe)会長は、「スポーツシューズの市場全体を規制することはわれわれの仕事ではないが、エリートアスリートが使用するシューズが何らかの不公平な補助やアドバンテージをもたらすことがない状況を確保し、エリート大会の高潔性を守っていくことが責務である」と述べた。また、「五輪イヤーに突入している現在、かなりの期間にわたって一般に出回っているシューズを規制することは不可能である。しかし、さらなる調査を進めていく中で、現在流通している製品の性能を上回るシューズの使用を禁止して一線を引くことは可能である」とも述べている。

 

筆者の私見

このS・コー会長のコメント内容から、同氏は、特別ワーキンググループに介入すること無く、科学者達のフェアーなレポートに委ねた事は、公平な配慮のみならずクレバーなスポーツ・アドミニストレイターである事を見せて頂きました。これが、IOCの次期会長の最右翼と言わしめる所以かも知れません。

同会長は、選手時代は長きに渡りNike社の支援を受けて来たのは事実です。また、引退後もNike社のコンサルタントをしていました。此のことを一部マスメデイア、業界に於いて、何かと誤解を醸成してミスリードしようと画策するグループがいるのも確かです。IOCWAと関係するトップ管理者達の多くは、嘗て選手時代、その後とスポーツメーカー・企業との強い関係(癒着)を持っている方が多いのも事実です。S・コー会長は、2015年のデイアク会長の追放後、選挙で選ばれた新会長です。そして、現在WAのスポンサー(2017年契約)であるアシックス社とは、大変良好な関係を維持されていると思われます。この様な環境の中で、彼は、この度もフェアーな立ち位置での判断をされたのではないかと思われます。

本会長発言は、既に「K'sファイルNO.127の筆者の素朴な疑問と私見」で述べさせて頂きました内容に類似するものでした

筆者の素朴な疑問と私見から「当初新聞記事を目にした時に直感した事は、“現在市場に既に出ている製品を禁止にすることは先ずありえない。”。記事は、近く(1月下旬)WAが本件に付いて公式発表をすると告知しているが、WAの新会長のS・コー氏は、諸般の複雑な事情が絡み合った中で落としどころに苦慮しているのだろうな」と同情した次第です。

 

Ⅱ.アスリートシューズはパラピックにより変革か

ロードレースは陸上競技の特殊種目

本来マラソン競技は、陸上競技Track & Field)種目ではなく、ロードレースの1種目です。よって、コンパクトな競技スタジアムの中で行われる競技種目でなく、非常に自然環境に大きく左右される競技種目である事が最大の特徴であります。規則、ルールは、未だ曖昧で明文化されていない部分が多くあるのも事実です。

この度のシューズ論争は、その曖昧なルールとシューズが記録への補助具としての認識も欠落していたことに端を発したと言えるのではないでしょうか。その為、このような企業ビジネスの競争から派生したハイテクシューズの進化に伴い、WAの規則、ルールが追いつかない時代に突入してしまっていたということなのだと思います

シューズとアスリートの関係

地球上の人類は皆フェアーな重力(1G=1Gravity)の下で生活し、競技を行っています。よって、選手は、その自然界の重力と自身の体重の重さが地面に接する度に摩擦を起こし、マラソンランナーは二つの足が交互に地面と接する時に各足に負荷負担が掛かるメカニズムなのです。この交互の足に掛かる負担は、長時間に渡り想像を絶する状態でタイムを競う選手達に取って非常にやっかいな競技なのです。この摩擦を起こす負担は、究極に選手のスピード(Speed)、心肺持久力(Cardiovascular Endurance)、筋持久力(Muscle Endurance)の効率を低下させるのです。マラソン競技は、42.195キロメートルと設定され、速くフィニッシュした選手が勝利者となる競技スポーツなのです。

この程の論争は、スポーツ医科学的な視点、競技スポーツの本質と未来を見据えての結論を導き出すことが重要であると思えます。事はマラソンの記録のみならず、全競技スポーツの用具、補助具に及ぶ重要な視点と言えるからです。例えば、近年の器械体操の器具は、個々の器具に工夫と進化が無ければ今日のようなパフォーマンスも安全性の担保は不可能でした。この度の厚底ランニングシューズを論ずるに当たり、何が問題で何が悪いのかの本質がマスメデイアの論調に見受けられないのが不思議でなりません。論調の読後感は、ただNike厚底シューズを履いて記録を出しているランナーが何か「不正行為(Cheating)」を行って、他の履いていないランナーに対してアンフェアー(不公正)だと言いたげな表現が印象的に思えてなりませんでしたが、読者の皆様は如何でしたでしょうか

 

エリート・ランナーとは誰のこと

WAは、エリートランナー(Elite Runner)の定義を明文化し、一般市民マラソンランナーとの違いと取り扱い方をもう少し親切に説明する必要があると思います。シューズに規定、制限を設けるには、数値化した明快なメジャメント(計測可能数値)があることが大前提です。

本来は、アスリート(競技者)と一般ランナーを区別することはWAの現在の規則に反していると解釈するのが正論であるかと思われます。一般ランナーも競技者と同じシューズがマーケットで購入でき、使用できることが、新旧規則の前提であるからです。シューズは万民の必需品であることからもランナーにのみ使用する特殊シューズは、WA規則に反するということを新規則で確認済みです

この度の厚底シューズの論争の中でマスメデイアを通して、WAの規則、見解、アナウンスに於いてエリートランナーという表現が、S・コー会長のコメントにも出ていますし、しばしば表記されていることに読者の皆さんも何か違和感と混乱を感じてられるのではないでしょうか。

何故ならば、エリートランナーとは、どのようなランナーたるかの説明、定義が補足されていないのは不親切且つ、混乱を招く恐れがあると言う事です。即ち、この度の騒動は、このエリートランナーにのみ適応される規則であり、一般市民マラソンランナーには、何の制限も受けないということの様ですそれは、どのようなプロトタイプ(試作品)、特注品、市販品を履こうとも自由であることを意味します。

筆者は、マスメデイア、WA共に誰もが補足表現をされないのであえて申し上げます。エリートランナーとは、以下のように理解するのが適当でないかと思われます

一般ランナー(市民マラソン出場者を含む)が、競技大会に出場して、日本記録、世界記録を樹立しても基本的には、IOCWAは、公認記録として認めないのです何故ならば、公認記録として認められるのは、その出場者が各国陸上競技連盟(National Governing Body)に選手登録がなされているか否かによるのです。よって、選手登録がなされている選手(選手規則を遵守し登録料を納付しなければなりません)を基本的にエリート選手と呼ぶ根拠が此処にありそうです。一般参加者と区別する仕切り線が此処にあると理解された方がよさそうです。一般参加者の中には、エリートランナーより優れた記録を持っているランナーも居る事を忘れてはなりません。

公認競技マラソンコースで、各国陸連に選手登録がなされている選手が世界記録を樹立した場合にのみ、WAは世界記録として認定するということを是非覚えて於いて下さい。ロードレースの世界記録は、本来その公認された大会コースで出た最高記録の事で、タイムのみで世界記録と判断するのはフェアーではありません。何故ならば、ロードレースは、各コース自然環境が全く異なるからです。

 

Ⅲ.Nikeハイテクテイームのテストラン

サイエンス・アイの集団

筆者は、本件に至った経緯を先ず理解し、Nike社が厚底シューズのデザイア―(desire)からプロトタイプ(prototype、試作品)の開発、制作に心血を注いていた時期にはまだ誰もが気付いていなかった事が、この度の他のメーカーが開発競争に後れを取った最大の要因でなかったかと思われます。これは、他のメーカーも認めざるを得ない事実であったようです。この見えていなかった時間帯に筆者のサイエンス・アイ(眼)で覗いてみる事により本プロゼクトを統括するマネージメント力に高度な科学の目が注がれていたことを知る貴重な機会かも知れません。

2016年以前のトレーニングシューズは、一般的に厚く、硬く、レーシングシューズは薄く、柔軟であったと理解しています

Nike社は、深く静かに長距離シューズ開発テイームを地下に潜行させていたようです。そしていよいよそのプロトタイプをテストランする為にある大会にNike所属選手をテストカー兼ドライバーに仕立ててスタートラインに立たせたのは言うまでも無い事でした。勿論、此処に至るまでにNike独自のテストコースで何度も、何度も医科学的な検知(detection)から測定、検査、修正、等を繰り返した後、Nike所属選手が試走し、データーの集積、分析、修正とそれは寝食を忘れた科学者達の魂の工房であったと推測します。

それは、Nike社生みの親であるビル・バワーマン氏がオレゴン大学の陸上競技場のスタンド下の裸電球の工房でたこ焼きプレート酷似の靴底(プロトタイプ)を作っていた頃より約半世紀後の事でした

テストドライバーには、プロトタイプを履かせ、舞台は実践のレース場、20162月のリオ五輪U.S.オリンピック予選会場のロサンゼルスでの大会を選びました。

米国の代表選考レースのファイナルは、日本の選考方法とは異なり、クオリファイ(予選)を勝ち抜いてきた選手達が一発勝負で競い、上位3名が代表選手に選ばれるのです。この環境でNikeのプロトタイプを履くアスリート、履かせるNike社双方には、信頼と自信があった事に疑いの余地はありません。

20162月ロサンゼルスでのU.S.オリンピック予選で、三人のNike所属選手達は、それまで見た事も無い厚底のシューズを履いてリオ・オリンピック代表テイームに入ったのでした。当時誰もがこの一風変わった、無名のシューズ(プロトタイプ、試作品)に付いて関心を示さず、誰も気付かず知らなかったのです。試作品なので一見では、だれも気付かなかったのが、正直な状況であったと思います。

しかし、この後、20168月にリオ五輪のマラソン競技で、男子トップ3選手は、それまで無名の厚底シューズにNikeのスウッシュ(Swoosh)のロゴを入れたシューズを履いて1,2,3とフィニッシュテープを駆け抜けたのでした此れこそがNike社の完成した厚底シューズ(ヴェイパーフライ、Vaporfly)の商品として世に公式にデビューした“その日”だったのです

 

その後のプロセスを覗くと

本プロセスは、20201月に発表されましたエイビイ・バーフット氏(Amby Burfoot、米国)のアーテイクル(January 22, 2020)を引用させていただきますと、

20175月には、E・キプチョゲ選手は、イタリアのモンツァにあるレーシングトラックを使用して2時間00分25秒の記録を出し、この時履いていたのが厚底シューズでヴェイパーフライ・エリートと名付けられた反ったシューズであったのです。

Nikeグループの研究者とコロラド大学のバイオメカニックの科学者達は、ヴェイパーフライと今迄の競技用シューズを比較してランナー達の意見を交えたレポートをスポーツ医学誌に発表したのでした。この厚底シューズは、4%の利点を与えることをクリアーし、31mmの踵の高さを維持していたのが特徴でした。

20189月には、スポーツ科学者カイル・バーンズ(ミシガンのグランドバレー州立大学の研究者)は201711月からコロラド大学の研究者達とほとんど同一のスポーツ医科学の面からアプローチした結果のレポートを発表しました。

20194Nike社は、Next%―を導入強化されたVaporfly 4%を発売、およそ40mmの踵の高さを持っていました。

201910E・キプチョゲ選手は、ウィーンの都市のループ・コースで、1時間5940秒の記録を樹立しました。この時、彼は、アルファーフライ(Alphafly.)というコードネームのシューズを使用したのです。

それは、ヴェイパーフライ(Vaporfly)より厚く、3枚のカーボン・プレートが敷かれた、前足柱にデザインされた新しいシューズで特許出願も怠らなかった模様です。しかし、この後、同選手が実際に履いて走った形跡も本シューズが生産され市販される予定も確認されていないのが現状です。

WAは、此のシューズを新規則で使用禁止としたのです。

201910月スポーツ医学誌の英国ジャーナルは、バイオメカニストのニコラス・タムとジェフ・バーンズ氏による記事を掲載しました。それは、WAがランニングシューズの「厚底」を31mmに制限しなければならないと主張しましたが、筆者は、この根拠の確認が出来ていません。

20191013日ブリット・コスゲイ選手(ケニア)は、Nike Next%を履いて、シカゴ・マラソンにおいて2時間1404秒で走りました。16年間、誰もが破れなかったポーラ・ラドクリフ(英国)の世界記録(2時間1525秒)を塗り替えたのでした。

丁度時期を同じくして、WANikeシューズの合法性についてのマスメデイアからの質問を受け始めた201910月、WAは、現在「スペシャルワーキンググループ」が問題の調査をしていると認めた次第です。そして、WAは、その調査結果を年末に発表出来ると公言したのでした。

201911月、医師でバイオメカニストのサイモン・ボートールド氏は、彼のブログでヴェイパーフライを履いて成功する理由を紹介しています。

彼は、それがエネルギー・リターンではなく、疲労による抵抗力かも知れないと主張したのです。彼の主張を要約すると厚底は、筋肉振動を和らげそして、筋肉が疲れから不安定になるのを防ぐというものです。この論理は、他の科学者達も同意しています。

 

筆者の素朴な疑問と私見

筆者は、今日までのロードランナーのシューズに対する固定概念が、スポーツ医科学の急速な進歩によりランナーの身体への保護から、「保護+スピード化」を図る補助具へとステージがグレイドアップしたと理解致します

此処に着眼したNike社は、企業理念に基づき他のシューズメーカーに先んじて開発投資を怠らなかった成果と結果が此処にあると思います。

本年1月15日以降本件に付いての「言い争い」は、マスメデイアのリード、ミスリードに関わらず業界、選手、関係者、一般市民ランナー、社会を巻き込んだ一大論争を演じています。しかし、筆者は、論理的に申し上げますと以下のような事ではないかと思います。

①新しいNike厚底シューズは、厚底でその中に硬いプレイトが敷いてある。

②これは、何処のシューズメーカーも厚底シューズは作れます。

③どこの会社でも厚底シューズの中に炭素繊維のプレイトを敷くことはできる。

④よって、どの企業の誰でもNike社と同じシューズタイプを制作することが出来るのです。(但し、Nike社がプレイト、厚底の素材に特許申請が出ていれば同質は無理、しかし、同タイプは可能)

ハイテクシューズとアナグロ規則の矛盾

この度の騒ぎは、Nike社は早い時期から企業努力をしてこの合理的、合法的なシューズの開発に着眼し、着手、投資し、段階的に準備をして来たということです。勿論、そこには、WAの本シューズに関するルールが曖昧で全く抽象的であったため、規制する要因に至っていないという問題点が秘められています。

1960年のローマ大会でアベベ・ビキラ選手(Abebe Bikila, エチオピア193287 - 19731025日)が裸足でオリンピック大会を制して以来、現在は、ハイテクシューズを履いて記録更新を狙うプロフェッショナル・アスリートの時代となったにも関わらず、WAの今日までのルールが未だアナグロ規則であったということが混乱を招いている主たる要因でしょうか

それにしましても、マラソン選手のシューズが此処までスポーツ医科学の枠を集めたハイテクの兵器と化し、ランナーの記録更新の補助具となる事を誰もが創造しなかった事から、今後更なる進化が予想されるのは明らかです。此のことからも、陸上長距離界に一大変革が起きたと表現した方が正解かも知れません

そしてこの変革の根底に商品開発に日夜努力を惜しまないスポーツメーカー、企業の頭脳的なビジネス戦略に対して、競技組織、団体を運営、管理するトップスポーツ・アドミニストレイター達の創造力が追い付いて行っていない現実を如実に露呈したこの度の事件であったと思われる次第です。また、Nike社は、パラリンピックのアスリート達の補助具の進化とハイテク化にヒントと刺激を受けたのかも知れません。

WAの特別ワーキンググループは、如何するべきか、何を決めようとしているのか。2020131日にWAは、公言通りに特別ワーキンググループのレポートをアナウンスされましたが、その全貌は今後のスポーツ医科学の進歩、発展により陸上競技そのものの根底を覆す事に成るように思えてならないのは筆者だけでしょうか。また、今日までの公式記録は、今後どのような価値観を持って価値評価するべきか大きな課題を残してくれたこの度の論争であったと思える次第です。読者の皆様には、マスメデイアとは異なる世界を少し知る事ができましたでしょうか。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports

紹介:Gファイル「長嶋茂雄と黒衣の参謀」文芸春秋社

お知らせ:この度のナイキ厚底シューズのテーマは、如何でしたでしょうか。読者の皆様が気付かなかった歴史、プロセス、功労者達をご紹介させて頂きました。多くの陸上競技を専門に取材をされていますマスメデイアの担当記者諸氏からは、K’sファイルは大変資質の高い論文、コラムで学ぶ事ばかりですとの感謝のメールが届いています。筆者は、TVのスポーツ番組の資質をもう少し改善して頂ければより多くの国民、関係者に真の事実が伝えて頂けるのでないかと願う次第です。