K'sファイルNO.138:政治と政治家達に翻弄される東京五輪 (3) ~東京五輪の誘惑に屈したか輝く太陽~

K'sファイルNO.138:政治と政治家達に翻弄される東京五輪 (3

          ~東京五輪の誘惑に屈したか輝く太陽~

無断転載禁止              毎月第二、第四木曜日掲載予定

筆者からのお知らせ

この度は、NO.138第七弾を持って「政治と政治家達に翻弄される東京五輪」の最終章とさせて頂きます。本章では、東京五輪に関わる五輪関係者達のゲームに巻き込まれ惑わされた「輝く太陽」の姿が、突如表舞台から姿を見かけなくなりました。読者の皆様は、既に気付かれていましたか。この様な時節だからこそ、国民、社会には、この輝く太陽が必要かと思われます。この方こそ、日本の陸上競技スポーツ界のみならず将来を担って行く、行って欲しい可能性を秘めた人物なので、筆者は、この人物には是非スポーツ・アドミニストレイションの本質を社会で実践体験して頂き、真のスポーツ・アドミニストレイターとして自由主義国家に相応しい次世代をリードして頂きたいと切に期待致している次第です。この度は、高い授業料となったかもしれませんが、輝く太陽の視点を変革し是非再度表舞台にあのスマイルを持ち帰って来て欲しいと期待しています。

 

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目次

K'sファイルNO.138:政治と政治家達に翻弄される東京五輪 (3

          ~東京五輪の誘惑に屈したか輝く太陽~

第七弾:震災復興五輪は政治家の都合よいキャッチコピーか

1.輝く太陽の唐突な変心と変身

東京五輪の誘惑に屈したか輝く太陽

室伏広治氏とは

②肩書は日本社会でのステイタスか

室伏広治氏の不可解な行動と決断

2.水野正人氏に送る

3.震災復興と20東京五輪招致は何処!

4.筆者の素朴な疑問と私見

  宇宙から現実に戻った鉄人室伏

  2019年夏表舞台から姿を消した輝く太陽

 

============================2020年7月23日掲載 

2020東京五輪リマインド・シリーズ(8)         2019-03-21

第七弾:震災復興五輪は政治家の都合よい

              キャッチコピーか

1.輝く太陽の唐突な変心と変身

東京五輪の誘惑に屈したか輝く太陽

読者の皆さんは、「室伏広治」という名前を申し上げますとどの様なイメージが浮かびますでしょうか。陸上競技ハンマー投げ選手、鉄人、五輪、世界陸上大会でのメダリスト、日本人離れした体幹、風貌、等とイメージされるのではないでしょうか。筆者には、ハンマー投げの顔、ミズノMIZUNOの顔、中京大学室伏広治選手の強烈なイメージが焼き付いています。そして、人懐っこい広治スマイル、オリンピックで金メダルに輝いた時には、確か上位選手が薬物違反行為により繰り上げ1位となった時に室伏選手はクリーンなアスリートとしてのイメージを内外に強く印象付けました。そして彼の笑顔、風貌、言動、態度は、自らも「輝く太陽」と言わしめるに相応しい姿でした。

 

室伏広治氏とは

室伏広治氏(Koji Alexander Murofushi)は、1974108日に静岡県沼津市で生まれ、幼少期を愛知県豊田市や米国で過ごし、千葉県成田高校に入学してハンマー投げを始めました。父親は、室伏重信氏で「アジアの鉄人」の異名を持つハンマー投げの名選手でした。母親は、ルーマニアやり投げ選手でした。欧州ジュニア選手権では、優勝経験のあるセラフィナ・モリツさんです。広治氏は、父親の影響を受けて父の職場である大昭和製紙から中京大学1993年に入学。父がコーチを務めての二人三脚でハンマー投げに打ち込んだ姿は人々に感動を与えました。まさに両親の優秀なアスリートとしての遺伝子を受け継いだ、サラブレッドが日本に誕生したのでした。これは、日本の未来のアスリート像を予言するものでした。そしてそれを裏から多くの方々が支え、今日の室伏広治氏があると確信します。勿論、その裏付けとして彼の努力なしには語れないのも事実です

その後、室伏選手は、光り輝く太陽の如く国内競技大会は元より、オリンピック、世界陸上選手権大会と破竹の勢いでメダルに輝き、日の丸を競技会場に掲げてきたのは、皆さんもご承知の通りです。しかし、彼にもアスリートとしての終演が訪れ、20166月の日本選手権大会を最後に競技者引退の意向を表明したのでした。お疲れ様でした。

 

②肩書は日本社会のステイタスか

この頃から彼の人生には、大きな転機が訪れようとしていたのかも知れません。

それは、アスリートとしてより名誉職的な肩書を次から次へと背負い込む事が多く成りだしたようです。日本陸上競技連盟JAAF)の理事として、それに伴うJOC日本陸連代表理事に就任、そして2016東京五輪招致委員会の理事に名を連ねる事になったのです。また、2020東京五輪組織委員会TOCOG)の発足と同時に委員会の中枢を担うチャートに、スポーツ局長としての席が与えられ、現在のスポーツ・デイレクターという要職を、補佐を付けて業務を遂行されているようです。本来、TOCOG東京五輪組織委員会)に何故スポーツ局長なるポジションが必要なのか、どのような職務、責務と組織委員会は位置付けているか情報公開されないのです。

選手生活以外、殆ど学ぶ機会及びキャリアを持っていなかった為に専門分野以外の重責は、大変なことと推測されます。しかし、彼は、全て引き受けてしまったのでした。彼の実質的な業務は、情報公開されないので知る由もありません。

日本社会では、メダリストはオールマイテイーで何でもできると自身も安易な思考があったのかも知れません。はたまた招聘側は、彼を広告塔として利用する目的であったのかも知れません。昨日までアスリートとしての競技生活のみに従事して来た選手に対して、今日からトップマネージメント能力が要求される肩書を渡すことは、渡す組織委員会側も無責任、且つ心配ではあったのでしょう。その証として室伏氏の補佐としてスポーツ局長時には、スポーツ用品メーカー(ASICS社)のベテラン重鎮を付けられ、またスポーツ・デレクター就任後は、省庁からの役人を補佐として付けている事からも実質は有名アスリートを起用した広報としてのポジションだったのかも知れません。このような一部人事を覗いても、本TOCOGは、人件費を湯水のように使っている様子が伺えるかと思われます。

 

室伏広治氏の不可解な行動と決断

中京大学時代から物心両面でサポートして頂いていたのはまぎれもない「ミズノ株式会社」でした。大学卒業後は、大学院に通いながらの選手生活に於いてもミズノ株式会社の社員として長く役員待遇まで受けて来られたようです。

ミズノスポーツは、たぶん商品価値の高いアスリートとしてのみならず、社員として将来の幹部候補生として長期に渡り育てられてきたのでないかと推測致します。社内に於いては、輝く太陽のような扱いを受け、特別扱いをされて来られた様子が目に浮かびます

室伏氏は、長くお世話になった中京大学に別れを告げて東京医科歯科大学(国立大学)の教授にいきなり就任されました。日本の大学教育機関においては、教授職に課せられる業務は通常週最低7コマの授業とゼミ演習、及び研究課題が課せられています。特に国立大学の教授職は、いわば外部での活動は特に制限がされている筈です。本来大学の要職業務を遂行するだけでも教授職は、時間が足りないのです。現在の大学との約束された職責、責務は存じ上げませんが、筆者は、学内外のパーテイーでの席での講演スピーチが主体な広告塔としての室伏広治氏であって欲しくないと願う次第です。まさか国立大学教授に特別業務枠が設けられているとは考えられません。

東京五輪に於いては16東京五輪招致委員会の理事に就任し、IOCに於いてはアスリート委員選挙に3度立候補しましたが、当選を逃しました。選挙活動違反で当選が無効になった時には、自身によるマネージメント力が欠けている事に気付かなかったのかも知れません。その後、20東京五輪招致委員会では理事を外され、日本陸上競技連盟の理事として、また陸連の代表理事としてJOCの理事として在籍しています

20東京五輪組織委会が設立された時には、組織委員会のチャートのスポーツ局長(実質の職責、責務は不明)としての位置付けで迎えられたのでした。丁度このような時期を前後して彼の身辺に異変が起きていたのでしょうか

思えば、中京大学時代から今日までの長きに渡り、ミズノ株式会社の役員待遇社員として物心ともに支えてもらった会社、そして水野正人氏に別れを告げる日がやってくるとは、誰が予期、想像したでしょうか。多分ミズノ社員達は、驚嘆した事でしょう

 

2水野正人氏に送る

水野氏は、2020東京五輪招致委員会に於いて自らの信念と情熱を持ち、勝利に向かって全力を注がれました。その貴殿が組織委員会JOCに居ないのはさぞや無念な事でしょう。また手塩に掛けて自ら優秀なアスリートをサポートされましたが、本人の意思で去って行きました。しかし、信念はぶれることなく、日本のスポーツ界のために私利私欲にまみれることなく、全力で戦われたその姿に対し、日本のアスリート達は2020東京五輪で自国開催の誇りを胸に戦ってくれる事と確信します。お疲れ様でした。貴社の次世代の社員達、貴社のサポートを受けている多くのアスリート達は、貴殿のオリンピックに対する情熱と信念をきっとこれからもキャリーしてくれることでしょう。政治家との巡り合わせでこの度は、貴殿の本懐を遂げる事が出来ませんでしたが、貴殿の誠実な信念は永遠に消える事はないと確信します。ミズノスポーツは、日本スポーツ界に於いていつまでも不滅で在って欲しいと願います。

 

3.震災復興と20東京五輪招致は何処に!

東京五輪招致プロゼクトを掲げるに当たっては、震災復興の為の招致として声高らかに御旗を掲げたはずでした。読者の皆様は、まだ鮮明に記憶されている事と思われます。今日の本プロゼクトは、震災復興を唱える関係者も居なくなりました。K’sファイルに於いて色んな出来事を述べて参りましたが、筆者が事あるごとに述べさせて頂いて来ていますのは、20東京五輪のプロゼクト及び経営、運営、管理方式が1984年のロス五輪方式であったなら、今日尚震災、災害で苦しまれている多くの先が見えない人々に対して、オリンピックで得た資金及びチャリテイーイベントでどれ程の被災者達の苦しみ、苦痛に手を差し伸べることができるかはかり知れません

既にK’sファイルで述べさせて頂きましたように、国内スポンサーに於いては、1業種2社の特例をIOCから受け最終的には、約3200億円以上の収入を民間企業から組織委員会は確保する予定です。莫大な公金(血税)を投入した揚げ句に、さらにこの特例を活用しての資金集めをしている事からも、今からでも間に合うので、この民間企業から得た収入を現在、今尚苦しんでいる震災者達に何故還元する声を誰も挙げようとしないのか此れこそが政治家達の使命であり評議会、理事会関係者達の義務ではないのでしょうか。しかし、何とこの五輪の余剰金と称する裏金を関係者は、東京五輪後の自らの活動資金のために伝統的な組織団体にプルールすることを画策しているとの話が既に一部マスメデイアを通して流布しているとは何処まで東京五輪から利権をせしめれば気が済むのでしょうか。

筆者にはそのことがとても嘆かわしく感じられ、組織委員会の委員の方達には、人としてすべき共存共栄の精神に立ち返って欲しいと強く願う次第です

 

4.筆者の素朴な疑問と私見

K'sファイルNO.136137138のキーワーズは、二つだと思われます。

その一つは2020東京五輪のスポーツ用品カテゴリーのオフィシャルサプライアー権(東京五輪公式スポンサー権)が、株式会社アシックスに決定した事。二つ目は、あれほど長きに渡り物心ともにお世話になったミズノ株式会社の室伏広治氏が突然、それもいとも簡単に自らの手で会社に辞表を提出した事です

読者の皆さんは、このような事を存じ上げないのも無理からぬことです。この件に付きましては、当時小さく報道されていたような記憶があります。マスメデイアは、何故か報道する興味を持たれなかったようでした。まさか、マスメデイアの複数社は、東京五輪のスポンサーになっているので組織委員会への忖度があったとは考えすぎでしょうか。本来、マスメデイアは、東京五輪組織委員会の運営、管理者に対するモラルを正す役目と使命をも担っている筈なのですが・・・。

筆者の視点は、この二つのキーワーズが互いにリンクしていたのは疑う余地がありません。即ち、オフィシャルサプライアー権(東京五輪の公式スポンサー権)の判断・決断、指名権を持っているのは、組織委の最高責任者の森喜朗氏であり、ミズノ株式会社に辞表を出す判断・決断をしたのは、室伏氏本人です。

室伏氏がミズノ株式会社に辞表を提出したのは、組織委のオフィシャルサプライアーが決まった後でした。よって、同氏の判断・決断は、本件に深く関わりがあったと思われても自然な成り行きかも知れません。

その証しは、その後の室伏氏の行動により明確になるのでした。それは、室伏氏が何とミズノ株式会社に辞表を提出し、受理された後、同氏は、返す刀で株式会社アシックスと契約をして自らの看板を掛け代えた事実でしたこの時点では、室伏氏は既にアスリートを引退した後なのでアシックス社と契約する意味は何だったのでしょうか

これに対する自身の説明もなく、ミズノ株式会社に対する感謝の謝辞も見当たらなかったと記憶しています。この時、彼に誰も諭されなかったのか、聞く耳を持たなかったのかは不明です。

宇宙から現実に戻った鉄人室伏

筆者の本件の素朴な疑問は、何故このような行為が簡単に彼には出来たのかという疑問です。勿論、同氏には、発言及びそれに伴う行動とその規範の自由が担保されています。筆者は、誤解を恐れず幾つかの疑問を項目別に挙げてみました。

1.所属先のミズノスポーツ及びCEO水野正人氏は、負け組になったからか。

2.現在の2020組織委のスポーツ・デイレクター(当時はスポーツ局長)の要職に居たいのならば、看板を掛け代えろと強い圧力が掛かって追い込まれたのか。

3.TOCOGの役員でありながらミズノ製品は身に着けられなかったからか。

4.自身の周りの環境が急変し、自分は、「何があっても目先の東京五輪のスポーツ局長のポジションは失いたくない」との思いが優先してしまったが為にコンセプチュアル(大局的)な判断が欠落していたのか。

しかし、後にこのポジションは失い、デイレクターの肩書に変更となった。

筆者は、以上が素朴に頭に浮かんだ室伏氏の心中ではなかったかと推測する次第です。これらは、彼の周りの状況と環境を鑑みてどれも当を得た疑問ではないでしょうか。

ここで見逃してはならない重要なポイントは、もし筆者の素朴な疑問の23.項目がミズノ退社の要因であったならば、これはまさしく現在我が国のスポーツ界に於いて社会問題となっている「ハラスメント行為」が組織委員会の内部人事で起きた由々しい出来事なのではないかと思う次第ですしかし、筆者は、室伏氏にこのような理不尽な環境、関係者に対して彼自身毅然とした態度で「NO」と返す選択肢を持たなかった事が残念でなりません。彼は、宇宙人ではなく煩悩を持った1地球人であったと言う事なのかも知れません。

残念ながら室伏氏が長年物心共にお世話になったミズノ株式会社に突然辞表を出し、ミズノスポーツの室伏広治氏として社会にファンにも何の説明も無いのは、礼節を欠いた、誠に筋の通らない行いと思われても仕方のない行為であります。室伏選手は、アスリートとしてクリーンなイメージであったので、是非社会人としてのクリーンな室伏氏を貫いて欲しかったと願うのは筆者だけでしょうか。将来、JOCの会長の玉座に対外的にも鎮座して欲しい1人なので、社会に於いても信頼できる人物である事を切に願う次第です

2019年夏表舞台から姿を消した輝く太陽

これは、筆者の私見としてお聞き頂ければ幸いです。

室伏広治氏は、自身の中で、「現在の自分の本業は何か」という本質を明確にして欲しいという事です。室伏氏の心の中には、何時までも輝く太陽で在り続けたいとする過去の栄光から抜け出せないでいる自分が居るのかも知れません。これらの現象は、嘗てのプロ野球のスーパースター選手によく見受けられます

筆者は、日本社会に於いて日本人として室伏氏がミズノ株式会社と縁を切り、ライバル企業のアシックス社と契約した事の重大さを十分熟知し、思慮分別あっての行動とは思えませんでした。なぜならば、彼自身には、その判断をするに十分な社会的な知識と経験が足りなかったと思うからです。ミズノ株式会社を去って彼に残ったのは、組織委員会の理事、評議委員ではなくスポーツ局長(意味不明なStatus)とは大会の1広報・渉外担当者のように思えてならないのです。

朝日新聞朝刊(2019313掲載)の記事には、某トーク・セッションで、室伏氏は、「スポーツの裏にこそ大切なものがある」と講演されたようです。彼には、何が本当に大切なものに見えていたのでしょうか

同氏は、これからの長い人生の中でこの度の判断と決断がどうだったのかの答えを得る時が来ると思います。彼は、政治家ではありませんので誠実にそして正直な人生を歩んで行って欲しいと願う次第です。筆者は、いつも個人的に応援しています。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports

紹介:Gファイル「長嶋茂雄と黒衣の参謀」文芸春秋社 著者 武田頼政

お知らせ:

本シリーズは、第一弾から第七弾まで掲載させて頂きました。読者の皆様には、何も知らなかった方が良かった、と呟かれている方も居らっしゃる事でしょう。

次回、K’sファイルは、クリーンな招致活動でフェアーな五輪開催に成功した例を「リマインド」として再公開させて頂く予定です。これは、また、広告代理店「電通がスポーツ電通」として世界にパワーを轟かせる「礎」となった五輪ビジネスであります。スポーツ電通の本質を学ぶ機会になるかも知れません