KファイルNO.158:2020東京五輪組織委員会に於ける権力者

KファイルNO.158:2020東京五輪組織委員会に於ける権力者

無断転載禁止                            注:毎週第二、第四木曜日掲載予定

読者からの便り:

KファイルNO.157拝読致しました。東京五輪の招致活動から今日の日本政府、東京都、組織委員会JOC等々の国内五輪関係者に至る諸悪の根源が政治家を中心とした黒い利権集団が関与しての事であった事が鮮明になりました。そして、IOCを動かしている弁護士集団もまた同種の集団であることも明らかとなり、オリンピック理念が形骸化し、今後存続が危ぶまれる様子が伺えます。政治家達がここ迄五輪とスポーツ界に首を突っ込んだことで国内でのオリンピックの本来のイメージが破壊されました。この大罪は今後相当なダメージと禍根を国内のスポーツ界、教育界に負の遺産として残ると思われます。河田先生の残されているこの貴重な史実と事実は、これから将来貴重な資料として次世代に継承されていくことに違いありません。国内の弁護士、有識者には、五輪の理想論を述べ、綺麗ごとしか語らない平和主義者達が沢山います。平素からその人達は、忖度からか厳しい社会に目を背け夢追い人間と化している事も此の度よくわかりました。また、我ら大学で専門家と自称する者達、そして所属するスポーツの各学会、等も貴重で重大な局面のこの東京五輪に関して何の専門的な知見に立った発言、発信も出来ず、大学、社会貢献も出来なかった事は我々の研究が実践にいかに役立たないかを露呈してしまったことを思い知らされました。

先生の誠実な実践に即した論理には、我々指導者に対する指導書とし大変貴重なバイブルです。先生のKファイルを書籍にして頂けたらと読者を代表してお願い致します。 読者より (現大学教授・学部長職)

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目次

心優しき鉄人と不徳なリーダーの思惑

1.心優しき鉄人を苦しめたパワハラ

       輝く太陽の唐突な変心と変身

       室伏広治選手の歩み

       室伏広治氏の不可解な行動と決断

2.筆者の私見と素朴な疑問

       二つのキーワーズ

       筆者の疑問

       筆者の私見

3.室伏広治氏に贈る言葉

  先ず病に打ち勝つ事

  本来の誠実な自分を取り戻して欲しい

  室伏広治は優しい鉄人

 

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2021年5月27日 木曜日    公開

KファイルNO.158:2020東京五輪組織委員会に於ける権力者

心優しき鉄人と不徳なリーダーの思惑

1.心優しき鉄人を苦しめたパワハラ

輝く太陽の唐突な変心と変身

はじめに

読者の皆さんは、「室伏広治」という名前を聞くとどの様なイメージが浮かびますか。陸上競技ハンマー投げ選手、鉄人、五輪、世界陸上大会でのメダリスト、日本人離れした体幹、等とイメージされるのではないでしょうか。筆者には、親子二代に渡るハンマー投げ選手で日本の顔、ミズノMIZUNO室伏広治の強烈なイメージが焼き付いています。そして、オリンピックで金メダルに輝いた時には、確か上位選手が薬物違反行為により繰り上げ1位となった時に室伏選手はクリーンアスリートの象徴としてのイメージを内外に強く印象付けました

室伏広治選手の歩み

 室伏広治氏(Koji Alexander Murofushi)は、1974年10月8日に静岡県沼津市で生まれ、幼少期を愛知県豊田市や米国で過ごし、千葉県成田高校に入学してハンマー投げを始めました。父親は、室伏重信氏で「アジアの鉄人」の異名を持つハンマー投げの名選手でした。母親は、ルーマニアやり投げ選手で欧州ジュニア選手権にて優勝経験のあるセラフィナ・モリツさんです。広治氏は、父親の影響を受けて父の職場である中京大学に1993年に入学。父がコーチを務めての二人三脚でハンマー投げに打ち込んだ姿は長きに渡り人々に感動を与えました。

まさに両親の優秀なアスリートとしての遺伝子を受け継いだ、サラブレッドが日本に誕生したのでした。そしてそれを裏から多くの方々が支え、今日の室伏広治氏があると確信します。

その後、室伏選手は、輝かしい太陽の如く国内競技大会は元より、オリンピック、世界陸上大会と破竹の勢いでメダルに輝き、日の丸を競技会場に掲げてきたのは、皆さんもご承知の通りです。しかし、彼にもアスリートとしての終演が訪れ、2016年6月の日本選手権大会を最後に競技者引退の意向を表明したのでした。

この頃から彼の人生には、大きな転機が訪れていたのかも知れませんアスリートとしてより、名誉職的な肩書を次から次へと背負い込む事が多くなりだしました。2016東京五輪招致委員会の理事として、日本陸上競技連盟の理事として、そしてそれに伴うJOCの陸連代表としての理事に就任するのです。これらは、今は亡き小掛照二氏(元三段跳びメダリスト、大昭和製紙陸上部総監督、日本陸連強化本部長、理事、副会長、JOC理事、早稲田大学卒、等々)の絶大なる支援、指導の下にお世話になったと記憶しています。

 その後、2016年東京五輪招致委員会理事として、2020東京五輪組織委員会の発足と同時に委員会の中枢を担う「スポーツ局長」としての要職が与えられ、次に「スポーツ・デイレクター」という要職を、補佐を付けて業務を遂行されてきたようです。本来、スポーツ局長、デイレクターには、どのような職責、責務と組織委員会では位置付けているかは不明確。同氏のその後の言動、行動から推測しますと、彼は、内外に対する組織委員会の広報部員で広告塔として位置づけられていたのかも知れません。

 選手生活以外、殆ど社会に置ける実践キャリアを持っていなかった為に専門分野以外の重責は、大変なことと推測されます。しかし、彼は、全て引き受けてしまったのでした。この事は、メダリストがオールマイテイーで何でもできると安易な思考がそうさせているのかも知れません何故ならば、昨日までアスリートとしての競技生活のみに従事して来た選手に対して、今日からトップマネージメント能力が要求される肩書を渡すのですから、渡す組織委員会側も不安であった事と思われます。その証として室伏氏の補佐としてスポーツ局長時には、スポーツ用品メーカー(ASICS社)のベテラン重鎮を付けられ、スポーツ・デレクター就任後は、省庁からの役人を補佐としている事からも理解出来ます。それでは、何のために誰が室伏氏をこのポジションに推薦、任命したのでしょうか。

 昨年2020年に室伏広治氏は、何とスポーツ庁長官として突然任命されたのには驚きを隠せませんでした。この人事も前任者の鈴木大地氏と同様に森喜朗氏の推薦で時の文科大臣が任命したことに成っているようです。長官の席は、メダリスト専用の椅子で未来の政治家を養成する為の肩書的な特別席を設けた椅子のように筆者には見えて仕方ありません。

室伏広治氏の不可解な行動と決断

特に、中京大学時代から物心両面でサポートしてもらっていたのはまぎれもない「ミズノスポーツ」でした。大学卒業後は大学院に通いながらの選手生活に於いてもミズノ株式会社の社員として長く役員待遇まで受けて来られたようです。ミズノスポーツは、たぶん商品価値の高いアスリートとしてのみならず、社員として将来の幹部候補生として長期に渡り育てられてきたのかも知れません。

社内に於いては、「輝く太陽」のような扱いを受け、特別扱いをされて来られた様子が目に浮かびます。本人も自ら輝く太陽と自負していたようです。

室伏氏は、長くお世話になった中京大学に別れを告げて「東京医科歯科大学(国立大学)の教授」職に突然就任されました。日本の大学教育機関においては、教授職に課せられる業務は通常週最低7コマの講義授業とゼミ演習が課せられています。本来大学の業務を真面目に遂行しますと教授職は、時間が足りない筈です。これは、筆者の実践経験からもそう思います。

現在の大学での約束された職責、責務は存じ上げませんが、通常特に国立大学の規定は、文科省の直轄教育機関でもありこのような順序を飛び越えた人事は不可能に等しい出来事でした。文科省は、伝統的な国立大学の人事、昇格の規定を超越してまでこのような人事昇格を断行するには相当な圧力が何処かから個人的にあったと推測されるべきでしょうか筆者は、広告塔としての室伏広治氏であって欲しくないと願う次第です。

2020東京五輪組織委会が設立された時には、組織委員会のスポーツ局長(実質の職責、責務は不明)としての位置付けで迎えられたのでした。丁度このような時期を前後して彼の身辺に異変が起きたようです。思えば、中京大学時代から今日までの長きに渡り、ミズノ株式会社の役員待遇として物心ともに支えてもらった会社、そして水野正人氏に別れを告げる日がやってくるとは、誰が予期、想像したでしょうか。多分ミズノ社員達は、驚嘆した事でしょう

2.筆者の私見と素朴な疑問

二つのキーワーズ

 本Kファイルのキーワーズは、二つだと思われます。その一つは2020東京五輪のスポーツ用品カテゴリーのオフィシャルサプライアー権が、株式会社アシックスに決定した事。二つ目は、あれほど長きに渡り物心ともにお世話になったミズノ株式会社の室伏広治氏が突然、それもいとも簡単に自らの手で会社に辞表を提出した事です。

読者の皆さんは、驚かれたのではないでしょうか。この件に付きましては、当時小さく報道されていたような記憶があります。マスメデイアは、何故か報道する事を躊躇(ためら)ったようであります。まさか、組織委員会への忖度があったとは深読みすぎるでしょうか。

筆者の視点は、この二つのキーワーズが互いにリンクしていたのは疑う余地がありません即ち、オフィシャルサプライアー権の判断・決断権を持っているのは、組織委員会の最高責任者の森喜朗氏であり、ミズノ株式会社に辞表を出す判断・決断をしたのは、室伏広治氏です

室伏氏がミズノに辞表を提出したのは、組織委員会のオフィシャルサプライアーが決まった後でした。よって、同氏の判断・決断は、本件に深く関わりがあったと思うのが妥当だと思います。その証しは、その後の室伏氏の行動により明確になるのでした。

それは、室伏氏が何とミズノ株式会社に辞表を提出し、受理された後、同氏は、返す刀で株式会社アシックスと契約をして親子二代に渡りお世話になってきたミズノの看板を自らの手で掛け代えた事実でしたこれに対する自らの説明もなく、ミズノ社に対する感謝の謝辞も見当たらなかったと記憶しています。

■筆者の疑問

筆者の本件の素朴な疑問は、何故このような行為が簡単に彼には出来たのかという疑問です。筆者は、誤解を恐れず幾つかの疑問を項目別に挙げてみました。

1.所属先のミズノスポーツ及びオーナーの水野正人氏は、負け組になったからか。

2.現在の2020組織委のスポーツ・デイレクター(当時はスポーツ局長)の要職に居た いのならば、看板を掛け代えろと強い圧力が掛かって追い込まれたので決断したのか。

3.自身の周りの環境は急変し、自分は、何があっても目先の東京五輪のスポーツ局長のポジションは失いたくないとの思いが優先してしまったのか。

4.長年に渡り後ろ盾となって指導して頂いた、小掛照二氏亡き後自身に尊敬する指導者を失い、陰湿な誘惑と圧力に屈したのか。

しかし、後に結果としては、このポジションは失いデイレクターのみの肩書となった。筆者は、以上が素朴に頭に浮かんだ室伏氏の心中ではなかったかと推測する次第です。これらは、どれも当を得た素朴な疑問ではないでしょうか。

ここで見逃してはならない重要なポイントは、若しも筆者の素朴な疑問の2.3.項目がミズノ退社のトリガー(引き金)であったならば、これはまさしく現在我が国のスポーツ界に於いて社会問題となっている「パワハラ行為」即ち暴力が組織委員会の内部で起きた由々しい出来事なのではないかと推測する次第です。残念ながら室伏氏が長年物心共にお世話になったミズノスポーツに突然辞表を出し、ミズノスポーツの室伏広治氏として社会とファンにも何の説明も無いのは、誠に筋の通らない彼の行動と思われます。室伏選手は、アスリートとしてクリーンであったので、是非社会人としてのクリーンな室伏氏を貫いて欲しいと願う次第です。

筆者の私見

これは、筆者の私見としてお聞き頂ければ幸いです。

室伏広治氏は、自身の中で現在の自分の本業は何かという事を明確にして欲しいという事です。室伏氏の心の中には、いつまでも自分は、輝く太陽で在り続けたいとする過去の栄光から抜け出せないでいるのかも知れません。これらの現象は、嘗てのプロ野球のスター選手にもよく見受けられます。

筆者は、室伏氏がミズノスポーツと縁を切り、ライバル企業のアシックスと契約する事の重大さを十分熟知し、思慮あっての行動とは思えませんでした。なぜならば、彼自身には、その判断をするに十分な社会的な知識と経験がなかったと思うからです。ミズノスポーツを去って彼に残ったのは、組織委員会の理事、評議委員ではなく大会の1広報担当者のように思えてならないのは私だけでしょうか。彼は、東京医科歯科大学(国立大の教授職)の要職との掛け持ち等不可能に近いと思われます。まさか国立大学では、講義授業、ゼミ、研究の業務も無く、大学のパーテイーでの顔出しが業務であるなど信じたくもありません。

朝日新聞朝刊(2019・3・13掲載)の記事には、某トーク・セッションで、室伏氏は、「スポーツの裏にこそ大切なものがある」と講演されているようです。彼には、何が本当に大切なものに見えたのでしょうか

室伏氏は、これからの長い人生の中でこの度の判断と決断がどうだったのかの答えを得る時が来ると思います。彼は、政治家ではありませんので誠実にそして正直な人生を歩んで行って欲しいと願うのは筆者だけでしょうか。或いは、現在彼の後ろ盾となっている方は、将来彼を国会議員にと思いをはせて派閥の頭数を文科省にまた増やそうと考えているのかも知れません。筆者は、何があってもいつも個人的に室伏広治氏を応援しています。

3.室伏広治氏に贈る言葉

先ず病に打ち勝つ事

 この度貴殿が病と闘っているとの事は、先月報道を通して知ることになりました。あの頑強で鍛え抜かれた身体に病などに取り付かれるチャンスをどうして与えてしまったかと理解に苦しみます。順風満帆な人生を歩まれている様子とお見受けしていましたが、心の何処かに疫病神に取り付かれる隙を与えたのかとふと思いを巡らしています。

■本来の誠実な自分を取り戻して欲しい

 貴殿が過去にご恩になった会社関係者、経営者への礼儀を逸脱した行為は許されるものでないと、私は今も思っております。貴殿には、どうしようもない事情があったのでしょう。私は、貴殿が家族思いの優しい心の持ち主である事は十分に承知しています。そして、誰よりも誠実で正直な心を持って生きて来られた事も理解しています。その貴殿が人の道を誤った判断により行動をされたことには、それ相応の理由が当然あったのでしょう。しかし、それをあなた自らの口で説明しない限りは他人には理解されません。私は、多分あなたの優しい心からして、どなたか権力のある方に何かをやって頂いた過去があるか、或いは自身が東京五輪組織委員会の要職に居たかったので、自らを戒めることが出来なかったのでないかと危惧しています。

室伏広治は優しい鉄人

 小掛照二氏が存命であれば、貴殿には、礼節を通すことを諭された事と思います。どうか一日も早く健康を回復される事が先ず大切です。そして、あなたは、「輝く太陽」の笑顔と心優しい誠実な室伏広治さんに戻ってください。水泳の池江瑠花子選手は、不治の病から立ち直り復活されて「輝く月」の笑顔を取り戻されました。どうかポジテイブな心を持って、日々の回復に努めて下さい。そして、あなたがお世話になった内外の指導者、関係者の皆さんに元気な姿を見せて下さい。

あなたが大切にして来たオリンピック東京大会は、どのような形であれ終演します。これを持って、室伏広治の新しい第二の人生のスタートとして下さることを心より願っております。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

お知らせ:

本シリーズは、現在の東京五輪の危機的な状態を鑑み、リマインドとして加筆させて頂きました。読者の皆様には、何も知らなかった方が良かった、と呟かれている方もいらっしゃる事でしょうか。次回、Kファイルは、クリーンな招致活動でフェアーな五輪開催に成功した例を「リマインド」として再公開させて頂く予定です。これは、また、広告代理店「電通がスポーツ電通」として世界にパワーを轟かせる「礎」となった今日の電通五輪ビジネスであります。