KファイルNO.169: 球団組織の中でのGMと監督のパワーバランス

KファイルNO.169: 球団組織の中でのGMと監督のパワーバランス

無断転載禁止              毎月第二、第四木曜日掲載予定

f:id:hktokyo2017041:20190718003102j:plain

時事の話題から

此の度は、米国からビッグニュースが飛び込んで参りました。読者の皆様は、既にご承知の通りです。大谷翔平選手兼投手(MLBロサンゼルス・エンゼルス球団所属、アメリカンリーグ)は、11月18日(現地時間)、アメリカンリーグのMVPを獲得発表されました。これは、MLBの優秀な記者30名により毎年その年のシーズンの最優秀選手を投票により選出されます。MVP賞は、本人は勿論所属球団、リーグ、ファンにとっても最高の栄誉ある賞で在ります。

日本人選手としては、嘗て鈴木一郎選手(イチローMLB,シアトル・マリナーズ)以来の2人目の受賞に成ります。そして、此の投票は、30名の投票権のある記者達の満票であった事は誰もが異議を唱えなかったという名実ともに相応しい選手であったと認められた証です。

また、米国の子供達は、米国の大統領の名前は知らぬともShohei Ohtaniの名前は知っているんだそうです。それほどまで大谷選手は、衝撃的なインパクトを与えたのです。米国の野球ファンにとっては、革命的な偉業を成し遂げたアジアから来た日本人選手を目の当たりにしたのです。彼がアメリカ人で有って欲しかったというのが米国人の偽りのない正直な気持ちである事も十二分に伝わって参りました。彼は、まさに米国に於ける駐日大使的存在です。

日本に於いては、国民が疫病コロナの下で甚大な苦しみと被害の中、東京五輪開催と言う無理難題を強引に強いられ、国民社会を分断した悲劇的な東京五輪が9月中旬まで続きました。この二つの災難の中に国民、社会は、疲弊し喘ぎ苦しんでいた中でした。

大谷翔平選手は、このような疲弊し苦しむ日本人社会に海の向こうから毎朝、希望の光と話題を届けて来てくれたことは、何にも勝る勇気と明るい話題でありました。どれ程の日本国民が大谷選手のMLBでの活躍に心を癒され、生きる喜びをもたらされたことでしょう。この事実は、東京五輪に勝る偉業であったと評し感謝致す次第であります。

東京五輪に4兆円もの公金を投資して、国民社会には何を還元されたのでしょうか。国民に残されたのは、4兆円の負債と東京五輪のレガシーと呼ぶ、沢山の競技施設の運営、管理費を今後永遠に負の遺産として背負わされる事です。

大谷翔平選手一人で、疫病と負の東京五輪を背負い、国民社会に勇気と光を与えたこの偉業は、誰もが成し得なかった歴史的事実として「大谷翔平選手の日本国民、社会への貢献は永遠に史実として記憶に残る」と申し上げても過言でありません。読者の皆様は、如何でしょうか。

彼は、この日本で生まれ育った今世紀のヒーローであり、スーパーマンです。

東京五輪の聖火台に大谷選手が立っていたらイメージも変わっていたでしょう

東京五輪は、閉会式以降既に誰もが何も語らず、話題にもしないTV、マスメディアです。ましてや、国民、社会では、誰も東京五輪を語ろうとしない現象に読者の皆さんはお気付きでしょうか。どうか今後、東京五輪経理収支問題がスキャンダルとして国内外に轟かない事を願う次第です。また一波乱、二波乱と不正な行為が明らかにされる様相です。

KファイルNews Comment by Hiromichi Kawada

スポーツ・アドミニストレイター

大谷翔平選手:国民栄誉賞

松野博一官房長官殿:

あまりにも軽率過ぎませんか。国民栄誉賞なる賞には、どのような威厳と重みがあるのでしょうか。嘗て歴代の内閣は、野茂英雄投手(MLB)、鈴木一郎選手(イチローMLB)に対してその当時、時の内閣が複数回国民栄誉賞の授与を決めて本人達に伝達しましたが、両名は、全て辞退したと言われています。その理由を内閣府は、確認されなかったのでしょうか。忖度の必要性の無い方々は、常に毅然とした態度でお断りしております。大衆の人気者をフィシングしてその人気に肖る様な事は控えられた方が賢明です。大谷翔平選手には、これ迄の対象者とは全く別格で彼に相応しい価値ある賞を新たに準備されては如何でしょうか。

しかし、この度の内閣は、大谷選手に打診し断られた事を公表した事は今までの内閣と異なり、隠蔽しなかった事は確かに国民、社会によい印象を与えました。大谷選手も他の選手同様に丁重にお断りされたとお聞きしましたが、これが忖度の無い人達の誠実な対応であったと評される所以です。確かに彼の返答のように、彼への評価は、まだ早すぎると思われます。今後彼がどの様な成長を遂げるかを見定める事は、彼にとってもMLB界にとってもとてつもない重要なことなのです。米国のマスメディアは、この度の大谷選手の日本政府のオファーに対しての「お断り内容」を大変好意的に評しています。

今後は、内閣府に[JusticeとFairness]を礎にした万人が認める選考委員会を設け、国民栄誉賞より更に国民、社会がリスペクトするに相応しい賞を設けられては如何でしょうか。過去の国民栄誉賞は、あまりにもその時の内閣総理大臣及びその周辺の思惑と外部からの政治的な忖度での選考が透けて見えるのは国民社会に対してもあまり爽やかではありませんでした。

 

目次

ベースボール・オペレイション 続編

Ⅱ.フィールドマネージャー(FM/HC/監督)の位置づけ

1)監督の重要性と必要性

 2)監督とGMのパワーバランス

 3)能力ある人材に対するフェアーな環境と機会

   例:日本の球団のケース

 

========================================================

2021年11月25日                     公開

無断転載禁止

KファイルNO.169: 球団組織の中でのGMと監督のパワーバランス

ベースボール・オペレイション 続編

Ⅱ.フィールドマネージャー(FM/HC/監督)の位置づけ

1)監督の重要性と必要性

フィールド・マネージャー(現場監督)は、このGMの管理下に位置します。GMの最重要任務は、スポーツ・ビジネスのCORE(根幹)をなす選手、及びテイームの商品価値を強化、向上させる事をその重要な職責としているのです

本来プロのGMとは、企業経営者としての資質とその能力を有する事が必要です。其のことは、優れた選手と監督、コーチ、専門職の資質と能力を見抜く観察、洞察力を持ちテイームを強化する為の人材を集め、組織の中で機能させる能力を兼ね備えていなかればならないのです。

日本に於いては、一般的にフロントの背広組と現場のユニフォーム組に区別されています。

監督は、通常GMの推薦により球団組織の最高経営者により任命、承認されます。しかし、日本のプロ野球界のように最高経営者(オーナー)の多くは、自らの私的感情と親会社の広告塔的な判断で勝手に決めてGMに押し付けるケースが多く見受けられます。このケースを優先する場合は、テイームの状況を十分把握した上での判断でなく人気及び私的な繋がりが強いケースが多々あり本来のGM体制の趣旨、目的とは矛盾を来すのです。

監督は、ティームが勝利する為の選手、技術スタッフの選考、テイームの戦略、戦術、等フィールド内における統括管理することがその責務なです。監督は、本来フィールドマネージメントの最高責任者である為に選手獲得に関してことのほか強い意識で獲得意思をGMに訴えるのです。この理由は、監督として短い契約期間内に好成績を残す事が契約条件であるからです。

獲得希望リストは、常に選手としての能力が高く、実績があり、確かな証がある選手を求めます。しかし、そのような選手は、通常他球団、監督もが求める選手なので商品価値が高く価格の高騰のみならず、内部においては、他の選手とのバランスを欠く結果を招きそれが原因でテイームオペレーションに大きな問題を引き起こし逆にテイームの弱体化の要因となって行く可能性が大となることを筆者は自ら経験しました。

此処で本件に関しての余談話になりますが、此のことは、日本球界に於いてもよくみられるケースであります。丁度筆者が東京読売巨人軍に招聘された時のテイーム状態が正にこの状態でありました。一例として、同じカテゴリーの高額年俸の野手が複数名顔を揃えていました。その選手達は、落合、広沢、大森選手で何れも走れない、1塁しか守れないにも関わらず、同じタイプの清原選手が欲しいとの事で苦慮致した次第です。これが後の清原選手、落合選手の球団内外のゴタゴタに発展して行った次第です。このゴタゴタに付きましては、役職がら全ての真実を把握しております。TV、マスメデイアが本人達の言葉であるかのごとく、報道していますがその殆どは、その本人達、マスメデイアの都合のよい言い方で真実とは大分乖離があるようです。

監督は、優秀な選手、コーチをリストアップしてGMにリクエストするが、その選手の獲得に関する全責任は本来GMにあり、またGMは、選手獲得の人件費のバゼット(予算)を任されているので慎重な対応、判断、決断が求められます。GMは、監督からのこれらの強い要望をそのまま受け入れる事が難しいのです。その理由としては、経営収支のバランスも考慮しながらオペレーション・マネージメントを計らなくてはならず、経営者の一角を担う職責、職務上の辛さもあるのである。もちろん有能な監督の採用は、球団組織の大きな商品の一つであるのも事実です。

本来は、GMが監督を選ぶ大きなポイントはいくつかあります。それらは、やはりその人物がフェアーであり、その競技スポーツに対するプロとしての指導、運営、管理能力を要している事、選手達に対して公平で、信頼と尊敬の念を要している事、また、自らの強い信念、対話、マネージメント能力、等々を有している事も重要なのです。

理想的な監督とは、上記能力を有した上での条件として、コーチンング、戦略、戦術、及びスポーツ科学の領域の知識と、社会人としての経験、社会常識を持ったポジテイブなパソナリテイーを有した人物が望ましいのです。この様な人物を監督として迎える為には、人物調査を徹底する事です。監督として必要不可欠な要素を一つでも多く有している事はリスクの軽減の為にも必要不可欠です。

しかし、GMは、一番監督選考で必要とするのは現有戦力で勝利してくれる監督であって欲しいのはどこのGMも経営者の願いも同じのようですGMは、思考力、行動力、判断力、決断力が求められるがそれらのバランスがまたテイーム、組織の長期安定を醸成する事も忘れてならないのです。これら個々のマネージメント部門、オペレーション部署を束ねて運営、指導、管理を指揮しているのは、組織の中ではスポーツ・アドミニストレイターなのです

小職の東京読売巨人軍では、当時小職を招聘される以前に渡辺恒雄社長が既に長嶋茂雄監督を推薦、任命してしまった後だったのでGMとしての大半の権限は既に失っていたに等しかった次第です。

2)監督とGMのパワーバランス

 ここでGMと監督との間の力関係が明確に出てくるのは、フィールドに於けるコーチングスタッフの雇用について、監督が何人推薦したコーチを置けるか、フロント側のGMの意を受けたコーチを何人送り込んでくるかのバランス問題でも明らかになるのです。このバランスは、長いシーズン中のテイームの浮沈時に大きな問題が発生する時のパワーバランスとなるのです。

プロ野球ティームの通常のコーチングスタッフ数は、マネージャー(監督)を加えて7~8名で構成されるとすると、最低約4名のコーチ陣は、マネージャー推薦のスタッフである事がパワーバランスからすると賢明な陣容であると思われます。フィールドマネージャー(現場監督)が強いリーダーであればあるほど、この陣容はおのずとしてマネージャー自らの推薦、指名のスタッフが半数以上であるということです。よって、監督は、ベンチコーチ(日本ではヘッドコーチと呼んでいる)に任命した人材を確保した段階でマネージャー自身の業務は、軽減されたといっても過言でないのです。この事からシーズン中に監督とヘッドコーチが仲たがいを起したティームは、そのシーズン成績は良くなく、シーズン後にヘッドコーチがファームに降格もしくは、辞任するような球団はこのような事態が起きた証でもあるという事です

しかし、球団の最高経営者(オーナー)と監督の関係で監督が自由にコーチングスタッフをイエスマンで固めてしまうと成績がよくても、球団内ではフロントと現場、監督とコーチ陣の間に乖離現象が起き、分断が生じるのです。その例が中日球団での落合監督と球団、中日グループ、ファンの事件が生じたのでした。

このようにコーチングスタッフの陣容が固まると即、フィールドマネージャー中心のミーテイングが持たれて、再び担当コーチからの意見と分析結果の報告を受け、総合的に戦力分析がなされる。ここでマネージャー(監督)とGMとの間の合意形成がなされ確認作業が終了するのです。このようなフィールド業務とフロント業務のシステムが既に隅々まで行き渡っているので1つの流れ作業となって遂行できるのです。しかし、個々の球団・組織のパワー即ち財力と人材の差が大きな差となり、結果としてシーズン終了後に現れるのも必然的です。

3)能力ある人材に対するフェアーな環境と機会

    米国に於けるプロ球団(NFL,NBA,MLB,NHL)、NCAA(全米大学競技スポーツ協会)加盟のメジャー大学を含む、等では、能力ある人材に対して常に他球団、他大学の有能なヘッドハンター達の注目を受けていることを組織も個人も知っているのです。よって、どんな弱小球団、弱小大学で与えられた業務を遂行していても能力を発揮できる機会は膨大にあり、巨大球団、メジャー大学への抜擢、GMへの道も決して夢でないのが米国でのフェアーなスポーツ・アドミニストレイションであると筆者は自らの体験からこれはよいシステムであり、効率がよい事をご紹介できる次第です。このような事は、日本ではまずありえない事のようです。

それは、嘗て有名選手でなければ指導者、管理者として評価しないという迷信じみた伝統文化が日本にはいまだ幅を利かせている呆れた負の遺産ですこのように準備をしながら、フィールドマネージャー(監督)は、スプリングキャンプ、プレシーズンゲームを消化しながら開幕を迎えるのです。開幕後、ご存知のとおりゲームをコントロールするのは、フィールドマネージャーその人である。ゲームマネージメントの最大のポイントは、与えられた球団の財産である個々の選手の能力をいかに最大限に生かせるか、即ち戦力の活用能力にかかっているのです。この与えられた戦力を最大限活用し最大の効果を発揮させるフィールドの最高責任者は、監督(マネージャー)なのです。マネージャーには、戦略、戦術にいかにたけているかどうかが大きなキーとなってくるのです。

例:日本の球団のケース

  日本のプロ野球球団組織では、米国のような本当のプロスポーツの組織構造とシステムを有していないのでメジャーリーグのフィールドマネージャーと日本の監督の業務が異なるケースが多々あります。現在もなお日本の各球団は、最高経営者の個人的な思惑で監督(フィールドマネージャー)を決定する場合が多くGMシステムが機能しないのもここにあると思われる。

注意:日本の競技スポーツ、野球界に於いては、テイームにマネージャーと呼ばれる人が居ます。これは、監督の意味ではなく主務(テイーム、監督の雑務係)と理解するのが正しいと思います。また、米国では、野球以外の競技スポーツの監督をヘッドコーチ(Head Coach)と呼ばれることを覚えておいてください

その他のコーチをアシスタントコーチと呼ばれるのも特徴ですが、この方が紛らわしくなく、アシスタントコーチには専門職の肩書が付き、業務分担と責務が明文化され、常に責任の所在を厳しく問われるのが米国式の特徴です。日本のプロ野球界は、ここがデタラメで肩書は名ばかりで誰もが責任を負わない、問わない構造的な問題があり、これが各球団の合理化の首を絞めているのも事実です。よって、スタッフ達の契約書は、形式的に過ぎないのです。

やがて日本に於いても、米国式の肩書のコーチに責任の所在を明らかにして、よい仕事をしたコーチには、フェアーな査定を行いプロ指導者らしい年俸格差をつけることに成ると思います。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

紹介:Gファイル(長嶋茂雄と黒衣の参謀)文芸春秋社 著 武田頼政

           Kファイル、KファイルNews Comment by Hiromichi Kawada 

お知らせ:

NO.169は、如何でしたでしょうか。本編は、NO.168の続編として述べましたが具現化したために少し内容が濃くなりましたが今までのKファイルをご笑読頂いている読者の皆様には、良く理解して頂いたかと思われます。本篇は、スポーツ界のみならず会社、企業、組織、団体、等に於いてもファンダメンタルなアドミニストレイションに於いては、ご参考になると思います