KファイルNO.174:ガバナンスを崩壊させたIOCの素顔

KファイルNO.174:ガバナンスを崩壊させたIOCの素顔

無断転載禁止              毎月第二、第四木曜日掲載予定

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スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ・アドミニストレイションの基軸は「Justice正義&Fairness公正」

日本にスポーツ・アドミニストレイション論の必要性を紹介

日米で実践してきたスポーツ・アドミニストレイターの先駆者

(プロフィールは別途ご検索下さい)

 

目次

Ⅰ. 忖度集団と化したIOC委員達と翼下機関と団体

   五輪の「Justice & Fairness」は有形無実と化した

     ■IOCの情報公開不備は隠蔽工作手段の一つか

     ■ガバナンスの問題は組織の長の資質次第か

    ★筆者の結論

Ⅱ.カミラ・ワリエワ選手と薬物

 責任の所在を明らかにしないIOC

  ■観賞用のアイスアリーナに入れられた妖精の終演

  ■カミラ・ワリエワ選手は北京五輪の悲劇のヒーローか

   事件の時系列

  ■筆者の素朴な疑問

 筆者の私見

 ★元スポーツ庁長官の見識に疑問

 ★利益相反を見過ごしていないか

 

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2022年2月24日 木曜日 公開

KファイルNO.174:ガバナンスを崩壊させたIOCの素顔

無断転載禁止              

Ⅰ. 忖度集団と化したIOC委員達と

  翼下機関と団体

五輪の「Justice & Fairness」は有形無実と化した

■2022年冬季北京五輪に思う

今月は、2022年冬季北京五輪の開催月間となりました。

冬季五輪を記念して話題の幾つかをスポーツ・アドミニストレイターとしての視点で述べさせて頂きます。一般読者の皆様の視点、TV/マスメデイアの報道、記事の論調並びにスポーツ・ジャーナリスト諸氏との見解とは多少内容を異にするかと思われます事を先ずご理解とご了承頂ければ幸いです。 

冬季北京五輪は、当初より人権問題、米中摩擦、台湾問題、ロシア・ウクライナ問題を抱えたままでの開催を余儀なくされました。これは、まさに現代の世界の政治情勢の竜巻(トルネード)の目の中で開催されている五輪であります。中国の国家体制は、中国共産党一党独裁社会主義国家であります。一方夏季東京五輪は、自由民主主義国家を掲げる自由民主党のここも政治家による政治家の為の五輪であったと言えるでしょうか。

本大会は、2021年夏季東京五輪開催翌年でもあり主催都市北京、中国政府は、東京同様にコロナ下の事態の中で如何にして国内外にアピールするか、政府の威信をかけて開催された決意は生半可な信念でない事をあらゆる場面、状況下に於いて見受けられました。

冬季北京五輪は、夏季東京五輪と比較して日本政府、組織委員会、等の中途半端な運営管理とは真逆で強靭な開催コンセプトを基軸に徹底された運営管理が遂行されている正に国家(中国共産党)一丸となった広報宣伝大会であるとTV・マスメデイアを通して感じた次第です。即ち、夏季東京五輪組織員会が大義もコンセプトも無かったのに対して、冬季北京五輪は、プロのイベントプロディユーサーがトータルマネージメントされていたのでTV放映、報道を通じても一貫したコンセプトが明確で、その場しのぎのころころと変わる思い付きテーマでなく、背骨がしっかりとした運営管理がなされ選手、関係者、マスメディアへの対応、管理に於いてもブレなく徹底されていました。

視聴者に対しては、日本の報道機関の細かいフォローと加工に寄り日本国民、社会が熱狂した事も事実です。東京五輪は、終了しても印象が薄く人々の心に感動が残らなかったのに対して、冬季北京大会は、良きも悪しきも視聴者の心に残る感動を与え、記憶に残る事は間違いありませんでした。Kファイルの読者の皆様は、如何でしたでしょうか。

IOCの情報公開不備は隠蔽工作手段の一つか

オリンピック大会は、ご承知の通りIOCが開催国とその都市を選定し、その国の国内オリンピック委員会NOCNational Olympic Committee)を通して大会組織委員会に運営を委託する仕組みとなっています。

そこには、IOCと組織員会との間で「運営委託に関する契約書」が存在します。契約の骨子の重要な要素には、「開催都市と政府に対して財政的な保証」を強いているのが特徴であります。これは、即ち「開催国、都市、組織員会に対して大会運営に関する財政的な責任をIOCは負いませんよ」、とする略一方的な契約内容を開催国側は結ばされている事を忘れてはならないのです

大会の競技運営、管理に付きましては、各国際スポーツ競技連盟(略:IF-International Sports Federation)が主体となって開催国の国内スポーツ競技団体(NGB=National Governing Body)を翼下に指導、運営、管理が行われている次第です。よって、この度のような各競技に於けるトラブル、問題、事故、事件等に付いては、代表選手側が所属する各国の競技団体が窓口となり、IFと直接的なコミュニケイションを図り問題解決に当たる事に成っています。その過程での経過報告は、IOCの担当者に随時報告がなされて、マスメデイアに告知され、それが各国の国民、社会に告知されて行くシステムとなっています。

此処で忘れてはならないのは、問題処理の結果の殆どがNGB、NOCとIF、IOCのパワーバランスに寄り上部団体の判断と決断に大きく影響を及ぼす事です

この様な情報の伝達方法が国際大会での基本原則となっているために視聴者に届くには、問題が難しくなればなるほど複数の組織団体を経由し、そこには人が介在するので時間の経過と工作を起こしやすいのです。また、そこには関係者達の感情、主観と欲(Greed)が含まれて来るのも人間社会の世の常であることを、我々は含んで理解、認識しなければならないのです。

この度の大会では、競技ルールの不備及びその判断と決断に関するIOCを主体とした各国際競技団体(IF)、各国競技団体(NGB)、選手、指導者への伝達とそのチェックが徹底されていなかった事が露呈した為にさらなる憶測と混乱を招いた次第です。大会のCOREであるべきアスリートに多大な迷惑を与えた事は、他でもなくIOCトーマス・バッハ会長のスポーツ・アドミニストレイターとして最大の失態でありますその失態の根拠は、「IOCの理念と趣旨、目的を逸脱、無視した政治的、独裁的な個人的利害、利権を最優先してしまった会長に起因」するところが大であったと申し上げて過言ではありません

丁度今日、日本国に於いては、文科省の最大の問題で懸案事項となった「私立大学のガバナンス改革会議」での最終報告書(提言書)が指摘する改善、改革の必要性に酷似です。(KファイルNO.173に紹介済み)

冬季北京五輪で起きた問題の本質は、IOCのガバナンスの欠落が根底にある事を露呈したと理解した方が分かりやすいと思います

 

■ガバナンスの問題は組織の長の資質次第か

国際オリンピック委員会(略:IOC)のリーダーが自らの利害、利権に傾き政治、政治家に同調する事により、本来のIOCの理念を蔑ろにし、スポーツ・アドミニストレイションが正常に機能しないため、その翼下の各国オリンピック委員会(NOC)、IF、NGBが正常にこれまた作動していない事が最後まで問題を肥大、拡散させ、選手と視聴者に多大な負担と迷惑をかけた事は、言い逃れが出来ない事実であります

この度の冬季北京五輪では、多岐にわたる競技種目で薬物、ユニフォームの不正、審判のアンフェアーな採点、等々とマスメデイアを通して世界中に報道拡散されました。

その中でも特に話題を集めた女子フィギュアスケート選手の薬物問題、女子ジャンプのスーツに関する違反行為で複数の選手達が失格となりましたがその先陣となった高梨沙羅選手の件、そして話題の男子フィギュア―選手の羽生結弦選手への素朴な疑問をスポーツ・アドミニストレイターとして述べさせて頂きたいのですが、何分スペースの関係で高梨沙羅選手、羽生結弦選手に関しては、読者の皆様のご希望が多いようでしたらタイミングを見て、マスメデイアとは異なる角度で述べさせて頂ければ幸いです。これら問題には、因果関係が存在するのは言うまでもなく、日ごろから審判員に狙われる選手達にもその要因がある事を見逃してきたのも事実です。それらをマスメデイアの報道を通して視聴者、ファン、国民、社会が美化して悲劇のヒーローに仕立て上げる世論に警鐘を発したいと思わざるを得ないです。真実は、もっと別の所の深層に隠れていますよ。

筆者の結論

現在のIOC主催の五輪競技大会、IF(国際スポーツ連盟)主催の世界選手権、ワールドカップがある限り、ドーピング(薬物)問題は地上から消滅する事は無いと思います

多くのファン、視聴者、関係者は、薬物の使用を望んではいませんが、現実的にそれは希望、期待でありIOCと各IF加盟団体及び双方の翼下にある各国NOC、NGB団体がルールを厳守する為の約束事を担保されたとしても、無くならないのが人間社会の弱点です。それは、人類が核廃絶を望み唱えても無くならないのと基本的には同様な人間の病的な「欲=Greed」と申し上げます。残念。

その最大の根拠は、「基本的に人は約束をしても、その約束を守れない動物です」それが人間なのです。その為に神様は、約束を破る人に「罰=ペナルティー」を科したのです。その罰の重量により表面には、影を潜めますが陰では何倍もの新種のウイルスを水面下で育成、増殖されているのです。

競技スポーツに於いては、各競技スポーツ個々のルールの下に各競技団体が公認した審判員により競技のフェアネスを維持し、勝敗を決めているのです。しかし、一旦競技場を離れると競技者は、競技のルールからは解かれるが、競技場外のルールを厳守、遵守しなければならない厳しい世界に身を置いているのです。これは、指導、運営管理者、関係者達も同様に厳守しなければなりません。

問題は、この競技者以外の関係者達にも課されたルールがあることです。実は、このルールは、非常にグレーで、IOCNOC、IF、NGBとこのルールを厳守、遵守するべき指導者、運営管理者達が自らに課されている職責、責務、ルール、倫理規範を犯すのが近年の競技スポーツの大きな特徴の一つであります

その代表がIOCの代表責任者であるT/バッハ氏その人なのです。しかし、IOCの委員の誰一人として同氏を諭し「JusticeとFairness」に戻る事への必要性を発言できない悲しい忖度委員達である事です。そのような委員達をあえて選考したのが、IOC会長と副会長たちなのです。これは、丁度現在日本の文科省IOCと致しますとIOCの委員達は私大の理事、評議委員達の関係という事です。

もしあなたがIOCの1委員であり「自ら忖度委員でない」と申し出るなら、委員は、バランティアですので役職に留まる必要は無い筈です。しかし、委員の席を改選時には、奪い合うのは何のためなのでしょうか此れでは、Justice(正義)を貫く事は不可能です。彼らもまた生身の人間です。利害、利得、利権と人間の欲という誘惑に駆られ、手を出しそれに染まると抜け出せなくなっているのです。筆者は、IOCの委員会(日本の代表委員を含む)の委員達は、バランティアと称する私的欲(Greed)集団と申し上げさせて頂きます

★元スポーツ庁長官の見識に疑問

このような環境と大人のエゴと欲により、15歳の女の子がもがき苦しんでいる最中に日本の元水泳メダリストであり、肩書だけは元スポーツ庁長官を6年間も務めた鈴木大地氏が2月16日のフジテレビ「めざまし8」に出演、カミラ・ワリエワ選手(ROC)に付いて、年齢を問わず「選手として自分の体内に入れるものは、全て自分の責任」とこれまた乱暴な元メダリスト自身の見解を述べた事に付いて、筆者は、この方は6年間もこのような資質でよく日本のスポーツ庁長官が務められたものだと呆れた次第です。この方を推薦、任命されたと言われている森喜朗氏に酷似であることを改めて認識を新たにした次第です。鈴木氏は、成人した大人の選手に対する見解ならまだしも15歳の子供には栄養剤のサプリメントと言い含められていても拒否できる年齢ではありません。同氏は、このような事すら配慮、気配りも出来ない元水泳メダリストさんでした。この方をフジテレビも生番組で出演させる常識を疑いました。読者の皆様は、どう思われますか。

読者の皆様は、既に身近では東京五輪で選手でない五輪関係者達が五輪利権の回収に手を染めたのを初めに、約8年間の間にどれ程刑事罰を受けるに等しい行為を行ってきたか、想像出来るはずです。本来ならそれらの事実を隠蔽する者達もまた、薬物使用した選手と同様に公表、罰を受けさせるべき対象者なのです

 

Ⅱ. カミラ・ワリエワ選手と薬物

責任の所在を明らかにしないIOC

■観賞用のアイスアリーナに入れられた妖精の終演

このような現実と環境から、この程の女子フィギュアスケートのカミラ・ワリエワ選手(15歳、ロシア・オリンピック委員会代表、ROC)の薬物使用をめぐる混乱を引き起こした次第です。

その環境と理由は、競技のCOREはアスリートであり、アスリートを直接的に支えるスタッフはコーチであり医療スタッフ、医療機関です。そして、間接的にサポートしているスポンサー企業、広告代理店、選手・コーチのエイゼント(マネージメント企業)、各国の所属組織・団体(NGB)、NOCIOC、各国政府機関、政治家達が近年は複雑に絡み合って成り立つスポーツ・ビジネスワールドを形成しているからです

15歳の選手は、コーチングスタッフのモルモットか。コーチングスタッフは、誰から糧を得ているのか。糧を出す後ろ盾は誰か。個人競技スポーツ選手の収入源は、限られているがトップ選手達及びそのコーチ達の報酬は聞いて驚くでしょう。

勿論日本人選手も世界水準以上な男女選手が居るのも事実です。例えば、日本の特定の女子ジャンプ選手の年間の所得は、スポンサー料金とJOC、スケート連盟の年間強化名目費合計すると約6憶円前後と業界ではよく知られています。選手は、これだけのスポンサーへの責任も背負ってるので失敗すれば「ごめんなさい」と口にでるのは謝っているのは皆さんに対してではないかも知れません

どうも視聴者、ファンの皆様は、選手の丁重なお辞儀、お詫びを額面通りに受け取られ賛美し、憐みの心理が働く事は悪い事ではないです。しかし、その真相を取り違えいてたらどうでしょうか。読者の皆様は、事の真相をどれ程ご存じでマスメディアのミスリードに共感されているのでしょう。この度の日本人選手達の中にも素直に受け取れない言動とそれに反する行動が見受けられたのも事実です

今日は、競技選手の現場に於いても非常に複雑になっているのです。女子器械体操と女子フィギュアースケートは、指導、環境は酷似である事が特徴です。特に欧米における女子の心体的な発育、成長は、競技に直結する非常にデリケイトなスポーツ医科学のミクロの分野の闘いを強いられ、大きなファクターでリスクを伴っていることを是非理解して戴きたいと思います。ただ、フィギュアスケート選手と比較するのその商品価値は、器械体操選手のビジネスにおける評価価値が余りにも格差があるのがお気の毒と申し上げます。

優柔不断に言語を操るマスメデイア関係者、スポーツ・ジャーナリスト、等々は、オリンピックがメダル、勝利至上主義だから何時まで経っても薬物問題、裏金、不正行為が起きると叫んでいるようです。このような方々は、「競技スポーツの定義=Definition」を理解できていない方々で、修羅と化した現場をご存じでないのでそのような無責任な言葉遊びができるのかも知れません。

それらの言葉は、核廃絶を希望、期待する人類とそれを信じて活動する人々に酷似の姿に思えて空しく感じてなりません。何故ならば核を生産、保有する国の権力者達は、廃絶運動に人生を捧げる人達の思いを非現実的な夢物語としか聞えないのです。これは、スポーツマンシップを唱えながら薬物に手を染め、我関せずの態度と倫理で一般社会に於いては裕福に生活しているのと酷似に思えるのは筆者だけでしょうか。

1974年にIOCは、競技参加者、関係者に競技スポーツをビジネスとして奨励され五輪憲章まで書き換えられているのです。参加者には、プロ選手もプロ指導者、関係者も公認されて既に50年の年月が経過しているのです。もう五輪は、「参加する事に意義あり」の歴史は、50年前に削除され生活の糧を得るための五輪となって既に50年が経過するのです。TV、マスメディアもこの恩恵に与っているのではないのでしょうか。

カミラ・ワリエワ選手北京五輪の悲劇のヒーローか

この程のカミラ・ワリエワ選手(ROCロシアオリンピック委員会代表)の薬物問題は、先ず氷山の一角であると申し上げます。

読者の皆様は、ワリエワ選手の大会結果と問題の経緯に付いては報道により既にご承知されている事を前提で、これから彼女の問題の本質と経過に付いて分かりやすく、スポーツ・アドミニストレイターとして解説出来ればと思います。

本来同選手の騒ぎは、突然起きたわけではありません。問題の発端は、ワリエワ選手が出場した昨年12月25日のロシア選手権での薬物検査の検体から禁止薬物の「トリメタジジン」が検出されたが、これは、WAD翼下のロシア反ドーピング機関(RUSADA)で同検体のA、Bの内(薬物検査では常に同じ物質を二つに分けて提出する事が義務付けられている。近年は女子選手に於いても尿採取には、女性検査員が直接的に採取時に不正防止のために確認する)のAに出た反応でした

その後ルールに基づき残りのB検体がスエーデンのストックホルムにある世界反ドーピング機構(略WADA、World Anti-Doping Agency)の検査所に持ち込まれたのが、12月29日でした。このB検体に関する結果が明らかにされないままこの度の冬季北京五輪に問題を持ち込んでしまったところにIOCの判断ミスと最大の手落ちがあったと筆者は思います

事件の時系列

その手落ち(隠蔽の可能性?)に付いて整理いたしますと、

同選手が出場した12月25日のロシア選手権後にB検体は、スエーデンのストックホルムにある世界反ドーピング機構(略WADA、World Anti-Doping Agency)の検査所に持ち込まれたのが、12月29日でした。そしてWADAでのB検体検査結果が明らかになった日時が明確に告知されず、検査結果がロシア反ドーピング機構(RUSADA)に報告されたのは、本年(2022年)の2月7日であった事が明らかになっているのです

2月7日は、冬季北京五輪の女子フィギュアスケート団体戦の当日であり、ROCが1位になった当日なのです

これを受けたRUSADAは、2月8日に暫定資格停止処分を科しワリエワ選手及びスタッフ(コーチ、トレーナー、医療関係者)に通告しています。勿論ワリエワ選手陣営は、この処分を不服として異議申し立てを即RUSADAに行った次第です。そこでRUSADAの規律委員会は翌2月9日に処分解除と発表何故RUSADAは、即処分解除としたのかその根拠は?

次にこの処分解除を不服として、IOC、WADA側は、スポーツ仲裁裁判所(略:ICAS、The International Court of Arbitration for Sport)に提訴したのでした

本件に付いてICASの結論は、2月14日に「ワリエワ選手が16歳未満の「保護対象者」であり、五輪出場を妨げれば「回復不可能な損害を与える」などの理由から訴えを退け、ワリエワ選手の五輪出場の継続を認めた事を公表したのでした。但し、同選手が3位以内に入った場合は、メダル授与式、表彰式は行わず、記録には注釈を付ける事を付け加えていますこの公表は、IOCがICASの報告を受けて公式発表をするのが筋でなかったか?

筆者の素朴な疑問  

本来であれば、12月25日にRUSADAのA検体で陽性と出た段階でロシア・アイススケート連盟は、ロシア・オリンピック委員会に報告し同選手の五輪出場は、B検体のWADAでの結果が出るまでホールドするのが常識です

しかし、此処で明らかにされて居ないのは、このケースの場合のIOCとWADA(傘下のロシア・ドーピング機構RUSADA)の間に明文化されたルールがあって然るべきですが、一切の情報公開がなされていない、マスメディアも記事にしないのは何故か。B検体処理は何故遅れたか疑問(人為的な可能性の有無)?既に述べた通り、ワリエワ選手の検査に必要な検体(血液か、尿かは不明)は、12月25日のロシア選手権後にストックホルムのWADAの検査所に発送、29日に検査所は検体を受け取っています。しかし、WADAは、12月29日から本年2月6日迄公表せず、検査結果は、2月7日にロシア反ドーピング機関(RUSADA)に報告しています。

筆者の大きな疑問の一つは、WADA(検査所)は冬季北京五輪の開催日、特に女子フィギュアスケート団体戦が行われる日時を百も承知でこれ程迄、検査結果を引き延ばす理由が何処にも見当たらない事ですそして、WADAの検査結果は、真実最短で何時出ていたのか。その情報公開がなされて居ないのです

もう1つの問題は、2月7日にWADAはRUSADAにワリエワ選手の検体から禁止薬物検出の報告がなされた後、RUSADAの対処、ワリエワ陣営の対抗処置、IOC、WADAの対応策としてCASへの提訴と非常に手回しよく、全て理解し準備していたかの如くの迅速な行動に疑念が残る次第です。それなら何故IOCは、WADAに迅速に検体の検査及び結果をRUSADAに報告する指導、指示を出さなかったのか、公に情報公開がなされなかったかですこれらは、「IOCの医事委員会の最重要責務と使命」な筈です。

筆者の私見

ワリエワ選手は、まさに鳥籠に入れられたカナリヤが買主のモルモットとして与えられるものを食し、与えられた衣装をまとい、ショウタイムになるとアイスリンクに解き放されて、観客、TV、マスメデイアが喜ぶショウを演じて、また鳥籠の中で飼育される。この様な環境を物心ついたころから与えられ大人達の「欲=Greed」の玩具にされた15年間を痛ましく、誰も救ってあげられなかった大人達の罪深さを今誰よりも15歳の妖精の父母は如何に思い悩んだかを思わずに居られません。

利益相反を見過ごしていないか

筆者は、本件の一連の問題に関してIOCは全ての情報を昨年12月25日のロシア選手権以前から把握していたと推測します通常IOCは、IOC内に「医事委員会」を持っています。1998年ソウル五輪でのベン・ジョンソン選手(100m、カナダ)の薬物違反行為は、IOC医事委員会の迅速な行動と勇断により競技翌日に追放を告知されました。当時IOCの医事委員は、競技の翌早朝午前2時前にソウルのIOC本部のあるホテルに集合がかかり、B/ジョンソン選手の薬物検体結果に付いての緊急会議が行われました。当時のIOC会長は、確かA/サマランチ氏であったと記憶します。

本件も多分12月25日にロシア・アンチドーピング機構(RUSADA)が検体Aの検査結果を発表した時点から検体AがWADA(世界アンチドーピング機構)に12月29日に到着する間、或いはその後IOC医事委員会は、本件に付いてのコンセンサスと対応の為の会議を開催されたと思います。

その結果は、IOCの幹部には報告されT/バッハ会長は、全ての同行をご存じだったと思うのが自然でしょう。それにも関わらず、WADAのA検体の検査結果は、2月7日の冬季北京の女子フィギュアスケート競技の団体戦の当日まで提出しないなど不自然極まりない行為がなされているのです。

このような危機管理が求められている中で、IOCの総責任者であるバッハ会長は、IOCの医事委員会の結論を速やかに公表せず、本件に付いての結論を何と「国際スポーツ仲裁裁判所(ICAS: The International Court of Arbitration for Sport)」に丸投げしたのでした。(IOC会長として職責、責務を果たしていない)

それによりICASは、待っていましたとばかりに2月14日に「ワリエワ選手が16歳未満の保護対象者」であり、五輪出場を妨げれば「回復不可能な損害を与える」などの理由から訴えを退け、ワリエワ選手の五輪出場の継続を認めた事を公表したのでした。「但し、同選手が3位以内に入った場合は、メダル授与式、表彰式は行わず、記録には注釈を付ける事を付け加えていますとICASは、結論付けて公表したのでした。

読者の皆様なら、このICASの2月14日の女子個人競技が始まる前の手際よい公表に何か違和感を、感じられたのでないでしょうか。それもそのはず、国際仲裁裁判所(ICAS)は、IOCの翼下にありこの最高責任は、東京五輪でも越後屋を演じていたIOCの副会長でT/バッハ会長の右腕のジョン・ダウリング・コーツ弁護士(東京五輪調整委員長、オーストラリア)その人でした

此れで本件は、出来レースと申し上げても彼らはどのような屁理屈で対応されるのでしょうか。この事は、TV,マスメディアは一切公表しない、論じない不思議な業界です。或いは、気が付いてないのかも知れません真実は、ファクトを辿ると辿り着くものです。スポーツ・アドミニストレイションは、あらゆる専門分野・部門のトータルマネージメントの総称であります事をご理解頂けましたでしょうか

これで「IOCのガバナンスの崩壊」とこの度は、表題にさせて頂いた筆者の私的根拠と申し上げさせて頂いた次第です。

 

文責:河田 弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

紹介:Gファイル「長嶋茂雄と黒衣の参謀」文芸春秋社 著 武田頼政

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お知らせ:KファイルNO.174は、スポーツ界の事件を分析する為のヒントを冬季北京五輪の出来事から述べさせて頂きました。競技選手の薬物違反は、永久に不滅かも知れません。