K’sファイルNO.84:新春東京読売ジャイアンツのFA問題 無断転載禁止

K’sファイルNO.84:新春東京読売ジャイアンツFA問題 無断転載禁止

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第一弾:G今シーズン約36億円投資への期待と不安

1.ベースボール・アドミニストレイター(略:BBADT)の視点

東京読売ジャイアンツ(略:TYG)は、2019年度シーズンに向かうに当たり莫大な投資資金を投入したようです。その額は、約36億円とも言われています。

この投資金額は、言うまでもなく東京ドームに足を運ぶGファンの観戦テイケット料で得たお金です。大切に有効活用して欲しいですね。

プロ野球ファンは、メジャーリーグ(略:MLB)ファンと少し楽しみ方が異なるようです。筆者は、お金をドームに運んで下さるGファン層に付いて初めてSNSを通して知る事になりました。大多数の若者ファンは、仲間との出会いを求め種々のイベントに参加する感覚で、飲食を共にし、試合の結果、選手個々の動向を語り合う憩いの場としている様子が伺えます。一昔前のGファンとは、大分ファン気質も変革した様子が伺えます。

MLBファンの大多数は、家族単位で観戦、親子、恋人同士、夫婦で熱烈な応援をし、試合後も自宅に持ち帰り茶の間、職場で話題を共有する事を伝統としているようです。此処に、日米に於ける「観るスポーツに関する概念」の違いを垣間見るような気がします。応援するフランチャイズ球団に愛情を込めた応援、協力、支援を惜しまない姿勢の違いは、ベースボールを文化として、観るスポーツの概念を一般社会、国民が共有し、幼いころから培ってきているかどうかの差なのかも知れません。これは、また大学競技スポーツ観戦に於いても同様な視点と概念を持って小さいころから観るスポーツを指導、教育されて来たからです。

日本のこの度のようなFAで除籍される選手、また人的補償で入団する選手達をマスメデイアは大きく商品として扱い騒ぎますが、GファンはSNS、ファン同士の間で賛否を論じてもそれ以上な感情を行動に表して球団批判を直接に行うようなことは決してしないようです。

MLBFA選手扱い

MLBに於いては、FA権を取得した選手は全員どの球団とも交渉することが可能です。日本のようにFAを行使するかどうかなどと球団と駆け引きするような事はありません。球団側はワールドシリーズ終了から5日間、FA選手との間で独占交渉権が与えられています。球団は手放したくない選手に対しては、MLBの年俸上位125名の平均年俸で1年契約のオファーをすることができます。そしてそのオファーを受けた選手は、7日間以内に球団側に返事をしなければなりません。

此れは、2012年に制度が導入されたクオリファイング・オファー(QOQualifying Offers)と呼ばれる制度です。しかし、本制度は、有形無実でその理由は、FA選手が欲しい球団は、好条件で迎え入れますし、元の所属球団との交渉も何時でも可能であり、それほどまでして引き留める球団であれば、その後の交渉でさらなる好条件を代理人(エイゼント)が引き出してくることを選手達は知っているからです。そのため、現実的には誰もこのオファーを受け入れる選手は居ないようです。

しかし、QOを所属した球団からオファーを受けた選手が他球団に移籍した場合は、FA選手を獲得した球団は、次回のドラフトに於いてドラフト上位の権利を同選手の旧所属球団に譲渡しなければなりません。

Gは何故球団、テイームのビジョンを告知しないのか

ところで、何故Gは、このような巨額な資金を投入しなければ勝てないと判断したのでしょうかプロ野球界の経営者は、ご存知の通り親会社の経営者が主体で在り、プロ野球ビジネス、運営、管理の専門家ではないのです。よって、球団フロントのGM的な肩書とポジションにいる職責の担当者の頭脳とマネージメント能力に全てがかかっていると申しても過言ではありません。

この度のTYG経営者(山口新オーナー)は、もしかしてフロントにGM的な能力を備えた人材が居ない、また現場(フィールド)に於いては、求心力があり指導者としてコーチングの能力、選手の育成指導を期待できる人材が居ないと判断したのかも知れません。

しかし、これらの推測は、ある意味正解であるのも事実だと思います。近年は、堤GMが不祥事の責任を取らされて解任、その後シーズン途中からGM職に付いた鹿取氏は、またしても短期間でGM職を2018年秋に追われたのでした。要するに球団は、誰がGMとしての資質を持った人材かを見極める経営者が居ないという証でもあります。よって、今シーズンからは、GM職を置かずこれまた編成に関する責任の所在をグレーにした様です。

プロのベースボール・プレイヤーとして実績、名声、等を兼ね備え、既に完成した商品(Product)を多くかき集めることにより、TYGのフロント、現場の弱点をカバーしようと単純に考えたのだと推測されます。それは、今シーズンの1、2軍のコーチングスタッフを見渡しても、新採用の指導者達の指導実績は実質的なコーチングキャリアが皆無であり、TVタレントに転身したOBに声がけした、ただ単に頭数と話題性を優先したように思えてならないのは筆者だけではないと思われます。

この様な球団の指導者に対するコンセプトでは、プロ球団に於いてコーチングができる人材は育成されない可能性が高いと思われます。

この状況から、経営者は、ベテラン選手買いに走った事も頷ける次第です。しかし、BBADTとしての視点から申し上げますと中・長期ビジョンを持たない付け焼刃的で、決して正攻法なベースボール・アドミニストレーション手法でないのは確かなようです。

勿論、これもプロの球団経営者、管理者としての戦略の一つであり、間違いではないのです。FA選手狩りは、プロの戦略の一つで自軍の戦力補強のみならず相手テイームの主力選手達なので相手テイームの戦力ダウンになるメリットも考えられます。また、使い物にならないとシーズン早々に判断できたならば二軍に温存している外国人選手、ベテラン選手との入れ替えも頻繁に行えるのです。片や、ポジテイブに思考すると、このようなFA選手の大量買いは、若い選手達が力を付けるまでの期間限定の時間稼ぎの為の手法で、金で解決できる唯一の方法であるとの見方もできるのですが、G球団に周到な準備をしたロードマップがあるとは考えにくいのも事実です

投資金額に見合った費用対効果を経営者、運営、管理者は、如何に考えての決断だったのか、そのビジョンを告知する事により、ファン、マスメデイアはより理解されたのではなかったのでしょうか。この様な事からも、G球団には、ビジョンなるものが無いのかも知れません。

②主なFA移籍選手

TYGがこの度獲得したFA選手は、中島選手(オリックス球団)、岩隈投手(マリナーズ球団)、炭谷捕手(西武球団)、丸選手(広島球団)です。他外国人選手は、8名加盟登録します。これらのFA選手達は、全て即戦力を目的に獲得されたのです。理論的には、これらFA移籍選手のポジションに居た昨シーズまでの選手達が仕事場を交換か失う危機に晒される事になります。特にピークを迎えている選手は、丸選手で、あとの選手は、既にピークダウンに入っている、また故障持ちと評価するのが妥当です。今日日本プロ野球界に於けるペナントレースの鍵を握っているは、言うまでもなく外国籍選手達なのです。

この8名の外国籍選手中の何名が当たり選手であるかは、これまたフロントの国際担当者の観察、洞察力、及び調査力、即ち眼力にかかっているのです。この担当スカウトマンが誰で、どんな経歴、実績のある人物なのかは、重大なキーポイントでもあります。筆者は、本件に付いても当時担当スカウトマンと称される人物が、全くの素人さんが長年雇用されていて、その方の整理、処理にをやかされたことが昨日のように思い出されます。これらも内部関係者の権益を守る手法であったのです。このような雇用体質では、無駄な資金が泡と消えるわけで、ファン達には申し訳ないことです。

GでのFA選手の成否は

TYGFAして来た選手の成否の判断は、そんなに簡単ではないのもこの業界の常なのです。

筆者が嘗て在籍していた当時も同様な問題が毎年起きていました。1996年は、メイクドラマを何とか完成できたシーズンでしたが、オフシーズンに入り大きなFA問題が勃発した次第です。ファン、読者の皆様には、生々しい記憶が蘇るのではないでしょうか。

当時の1軍の1塁手には、広澤選手(ヤクルト球団よりFA移籍)、落合選手(中日球団よりFA移籍)、大森選手(2軍生活)と走れない、守れない大きな契約選手を3名も抱え、大森選手(慶応大OB)は、1軍で活躍できる機会を既に奪われていたのです。

そこにシーズン途中に降って沸いた如く、清原選手(西武球団)がTYGに来たいとの意思表示をした事から、経営者、監督の欲しいとの強い要望で、筆者は内部調整及び現場のコンセンサスを整えるのに大変苦慮した事が昨日のように思い出されます。

球団経営者、監督、FA希望選手、在籍選手とそれぞれにFAを行なった為に、本球団に於いてはその後数奇な運命が待ちかまえている事を読者の皆様も記憶に留めて於いて頂きたいと思います。

この度の大量FA選手獲得により、TYGは、ファームで選手を育成する事をギブアップした事を強く印象付けられました。伝統的に2軍の殆どの歴代監督は、ファームで優勝する事を最優先したがるのです。何故優先したがるかと申しますと、自身の身の安全を守る方法であると自他ともに理解、認識してきた歴史があります。勿論、本球団の2軍監督であっても高額所得者である事もその大きな要因の一つです。その為には、若手を優先的に使うより、実績のある1軍から調整の為に降格してきた1軍半の選手達を起用する方が勝利する確率が高いからです。日本のプロ野球球団に於けるファーム(2軍)は、選手育成の場でなく1軍、1軍半の選手達の唯の調整の場にしか考えていないのです。

何故このような実態を野放しにして来たか。それは、プロ野球球団としての運営、管理コンセプトに問題があるのです。球団は、監督、コーチングスタッフと業務委託契約雇用により成り立っています。しかし、実際は、契約書の中に職責、責務に関する具体的な業務内容及び、査定、ペナルテイーが明記されていないのが主たる問題の主因であると思います。

何故、このような契約雇用を長年に渡り同じことを繰り返しているのか。この契約に対する意義と目的を球団経営者自身が学習しない限り、理不尽な伝統が今尚まかり通るのではないかと筆者は自らの経験から思う次第です。

球団は、契約書を監督、個々のコーチングスタッフと取り交わし、肩書は与えるが、個々の肩書は体裁のよい呼び名で在って、肩書の職責、責務は問われないのが現実です。何故このような体制で運営、管理が行われているのでしょうか。

それは、誰もが責任を取りたくない、取らされたくない、よって指導者に対する査定も無く、他の肩書の指導者が他の職責の指導者の領域に対して口出し、叱責しても全く越権行為として認めない優柔不断なプロ野球指導者に対する雇用契約内容なのです

此れを誰もが指摘しない理由は、指摘したフロント、現場の人間に自ら責任という十字架を背負わされることを恐れているのかも知れません。また、フロント管理責任者は、現場の監督、個々のコーチ達から悪者にされたくないので、自ら体を張った運営、管理を避けるのです。これらは、非常に伝統的な仲間意識が常に蔓延している証であります

そして、コーチ達の契約期間は、1年契約なので優秀な指導者が居ても腰を据えて選手を指導、育成する担保が与えられないのが日本のプロ野球界の指導者達の待遇、処遇なのです。此れでは、プロの指導者ではなく、監督の指示待ち人間、即ち失敗を恐れるサラリーマン体質と表現した方が読者の皆様には理解されやすいのかも知れません。

これでは、プロのフロント、現場指導者への運営、管理に重大な欠陥、甘さが指摘されても仕方がないと思います。

TYGのファームは、1軍半の選手達の調整の場所であり、高額選手達の飼い殺しの場でもあると長く揶揄されているようです。この度のFA選手の大量獲得により若手選手達の1軍での仕事の機会は、これでまた難しく成り彼らの精神的な失望感は計り知れないと思われます。要するに、TYG2軍は、優秀な在庫を抱えた置屋と表現した方が正しいのかも知れません。

日本プロ野球機構(略:NPB)の協約、規約には、MLBのような課徴金制度が存在致しませんので、幾ら個々の球団が人件費を使おうともペナルテイーが無いので、共存共栄の原理原則に立てばアンフェアーであります。しかし、NPBの加盟球団からは何の異論も出されない、即ちTYGが幾ら人件費を使おうが罰則規約が明記されていないので何の問題にもならないという事です。

④日本的なFA制度に付いて

本来FA制度は、MLBMajor League Baseball)に於いて確立された制度です。本制度の意義と目的は、選手達はドラフト制度により指名された球団に、本来拒否権が無く決められた期間同球団に拘束される規則が設けられているのです。この拘束に対する対価として、野球協約では、拘束期間を満たした選手に対して自由契約選手(FA選手)として、選手個々の意思で自由に他球団と交渉して契約が締結できるのです。

しかし、日本プロ野球機構(NPB)のFA制度は、MLBの制度とは異なりあくまでもFA選手保有球団が有利に利権を利用できる内容に加筆された協約なのです。これは、言い換えると選手会・選手組合の力のなさを露呈した例なのです。FA選手とは、所属していた球団での年季奉公が解除され、晴れて自由の身となった選手のことなのです

FAフリーエージェント)制度は、「国内FA」と「海外FA」とに区別されます。国内FAは、NPB日本野球機構)所属の全ての球団と選手契約することができる権利を有する選手をいい、いずれの場合も一定のFA資格取得条件を満たす必要があります。

日本的FA制度に付きましては、既にK’sファイルNO.3637:この度のFA問題は両球団の談合か PARTⅠ.PARTⅡをご参照ください。

Gのこの度のFA選手獲得、外国籍選手の獲得は、全てが完成された選手達で総勢12名です。此れだけの個々の実績、実力を兼ね備えた選手を獲得し、プロテクトの選手28名を加味しますと、他球団の力を持ってしてもこの戦力を打破する事は選手のキャリアからすれば難しいと考えられるのが妥当でしょう。また、G側の戦力からこの戦力では、勝って当たり前と思われて致し方ないこの度のFA狩りであったのも事実です

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

お知らせ:

K’sファイルNO.85では、この度のFA選手達の出入りに付いて、マスメデイアの論調、Gファンの疑問と問題に付いて触れてみたいと考えております。賛否両論あるかと思われますが、ご参考にして頂けますれば幸いです。