Kファイル╱スポーツドクトリンNO.218:河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅲ)

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.218河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅲ)

無断転載禁止              毎月第二、第四木曜日掲載

河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ・アドミニストレイションの基軸は「Justice正義&Fairness公正」

日本にスポーツ・アドミニストレイション論の必要性を紹介

日米で実践してきたスポーツ・アドミニストレイターの先駆者

(プロフィールは別途ご検索下さい)

 

ご紹介:読者からの便り

河田様

坂本幸雄氏への追悼文を再度拝読しました。つい昨日までお話をされていた親友がお亡くなりになり、河田さんの悲しみは幾許か、私には想像もつきまん。スポーツ・アドミニストレイターを自負される河田さんが、坂本さんを「ビジネス・アドミニストレイター」を全うされた戦士と形容されたお気持ちに、スポーツとビジネス(半導体)の世界は違えど同じ戦友と認め会える仲間だった、万感の思いがこもっている気がしました。ご家族が亡くなられたような痛みだとお察しします。3月に入っても暖かくならないのは、河田さんのその悲しみのせいかもしれませんね。

坂本さんのご冥福を心よりお祈りさせていただきます。読者より(マスメディアスポーツ担当者)

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目次

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.218河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅲ) 

スポーツ・アドミニストレイターに求められる基本的能力

Ⅰ.マネイジメント力とコーチング力

      ■コーチングの基本技術(スキル)

      ■コーチングツール(道具)

      ■コーチングに必要な心得

Ⅱ. スポーツ・ビジネスに関する基礎知識

    1.ビジネスって何をどうする事

    2.スポーツ・ビジネスとはなんだろう?

Ⅲ.スポーツのビジネス組織

      ■スポーツ・アドミニストレイターの重要なリソース

      ■スポーツ・ビジネスにも規則とルールは不可欠

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2024年3月14日 公開   無断転載禁止

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.218河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅲ) 

スポーツ・アドミニストレイターに必要な要素

Ⅰ.マネイジメント力とコーチング力

スポーツ・アドミニストレイターには、この二つの大きな要素を持ち合わせているか否かが成功のキーとなると思われます。

1. マネイジメント力

マネイジメント力とは、目的、目標に即した方向に物事を取りまとめる能力を意味します。このようにマネイジメントに関る人達は、組織としての目標やビジョンの設定と同時にそこに至るストーリーを持ち、明確なビジョンをイメイジできる観察力、洞察力が要求されます

2.コーチング力

コーチング力は、個々の能力が最高に発揮できるように導き出す力を意味します。コーチングは、あくまでマネイジメントに沿った一つのファンクション(機能、作用、働き、役目、効用、職務、役割)です

これら二つを兼ね備え、それぞれの高い資質を持ち合わせている経営、指導、運営、管理者は、業務を遂行するに当たって成功率の高い人物と言われます。

ティーチングは、あくまでも知識の付与を主体とする指導法でコーチンの基礎と  なると捉えた方が理解しやすいと考えられています。

コーチングの基本的な技術(スキル)

コーチングは、「現場でただ技術を指導」するだけではないのです。コーチは、あくまで個人の能力にあった指導を開発し、その個人がカンファタブル(人が精神的、肉体的に気持ちよく感じる状態)な状況下で育成、指導してあげられるかどうかがとても重要であると思われます。

コーチの経験主義から来る精神論的、暴力的な言動、態度で押し付けるような指導(強要)は、よいコーチングとは言えず、かえって個人のよい才能、能力を潰すのみならず、精神的、肉体的な障害となるケイスが多いのです。コーチ自身は、如何に個人に対してポジテイブなモチベイションを提供、継続できるかが大変重要であると思われます

コーチングツール(道具)

コーチングに於ける大切なポイントは、「目は温かく、耳は鋭く、口は的確に」が基本的な道具といえます

1 .   目は、口ほどにものを言うと昔から言われています。これは、相手に決して敵意を持たせない、尊敬の念で見つめるのが好ましいとされています。

2.   耳は、相手の心の深層にある深層真意を相手の言葉から逃がさず聴き取り情報を収集する事です。また、相手のトーン、言葉の抑揚から感情をも聴き逃さない事です。耳は、相手の思いを聞き取る為にある器官なのです

3.  口は、コーチの一言で相手のモチベイションのみならず、技術までも活かしも殺しも出来るのです。よって、相手の必要な事だけを的確に最小限度に伝える事が大事です。相手を見下したり、攻撃的、批判的な口調は決して説得力のあるものでなく、口は、災いの元凶となる事を忘れてはならいのです

果たして、暴力を使う教育者、指導者達にこのような道具を持ち合わせているでしょうか。この様な道具を持っているなら現場指導に於いても暴力を用いる必要性が無いのです。問題の指導者達には、本人の資質のみならず、専門教育を受ける大学教育機関の環境と指導者、指導者の免許を付与する教育機関の無責任さと軽薄さに起因する事が大きいと思いますが、如何でしょうか。

コーチングに必要な心得

観察力と洞察力の初歩的活用

コーチングに入る初期段階では、情報収集(準備)の段階で相手にどのくらのコーチングが現在必要なのかを見極める。また相手の現在の能力のレベル及び相手が何を求め必要としているかを見極める。その為には、当人との直接、間接のコミュニケーションから始める事が大事です

それにより、コーチングを始めるに当たって知識、経験量によっては、まだどれ程のテイーチングが必要なのかの目安を付ける事も大事なステップです。これは、相手がコーチングを受けるに値する現在の能力を有するか否かの判断もコーチをする初歩的な判断なのである。

初期段階で必要な資料

相手の経歴、性格、個性、意思、夢、目的、目標、希望、技術、特技、得意、等を出来うる限り早い時点で個々の情報を収集し、ポジテイブなイメイジを持つことが大事です。次に今何を求めているのか。今何が必要なのかを分析し、その求めている方向に沿ったコーチングが効果的です。決して相手の弱点、嫌がるようなネガテイブな部分を攻撃、非難したりする事はその後の指導に大きな障害、障壁を残す結果となるので最大の配慮と注意が必要である

指導者は、相手側に立った気配りと配慮が必要であり、この視点と心を持ち合わせていない指導者は指導者としての資質が欠落した人であり、指導者としての責務を任せるにはリスクが高すぎると判断せざるを得ないのです

暴力を利用、活用する教育者、指導者は、ここが本質的に欠落しているので指導者としては不適合と言わざるを得ないのです。

 

Ⅱ. スポーツ・ビジネスに関する基礎知識

1.  ビジネスって何をどうする事

ビジネス (Business) とは、社会が生産活動を調整するシステム、あるいはその生産活動を指す行為を表す用語です。狭義から広義まで様々な意味を持っていて、1つの日本語に置き換えて表現することはできないと思います。

広義のビジネスについては、ビジネスとは営利や非営利を問わず、組織形態を問わず、その事業目的を実現するための活動の総体と理解出来ます。したがって、ビジネスの主体者としては株式会社などのような営利企業とは、営利を目的として一定の計画に従って経済活動を行う経済主体(単位)であると思われます。社会的企業を区別するために営利企業とも言う。家計も政府と並ぶ経済主体の一つとして考えられます。

国や地方公共団体保有する企業を公企業と言い、そうでない企業を私企業と言います。NPOなどの非営利活動法人や住民サービス提供などを行う行政組織等を含み、個人または法人組織などの事業体がそれぞれの事業目的実現のために、人・物・金・情報などの諸資源を活用して行う活動全体を意味すのす。

2.スポーツ・ビジネスとはなんだろう?

「スポーツ・ビジネス」とは、スポーツを商品としてとらえ、利益を挙げるための事業活動のことです。日本ではまだ馴染みが薄いものの、アメリカにおいてはすでに25兆円の巨大市場をもつなど、完全にビジネスのジャンルとして早くから定着しています。

こうしたスポーツ・ビジネスのノウハウは、主にスポーツのチーム運営にて発揮される場合が多いと考えられます。

地域密着活動や各種イベント開催、組織の構造化、財源確保など、おおよそクラブ運営に関するマネイジメントのすべてがスポーツ・ビジネスの範疇(はんちゅう)に入るといってもよいかと思われます。また自チームの運営だけにとどまらず、他チームのアカウントマネイジャーやアドバイザーたちと手を取りあい、「ダービーマッチ」などリーグ全体が活性化するような試合や仕組みを創出(マッチメーク)することも重要な仕事です。

アメリカの4大スポーツ(フットボール、バスケットボール、野球、アイスホッケー)が常に活況なのは、この部分がうまく機能にしているからにほかならないのです。最近は日本国内でも、こうしたスポーツ・ビジネスを学問として採り入れる大学も多くなったのは、既にご承知の通りです。

ビジネス例として、

スポーツジムの運営、経営、管理とか、スポーツの用品の販売、スポーツ用品を作るメイカー企業、スポーツドリンクと作る企業、ゴルフ場 、指導、運営、経営企業、エアロビックを指導、運営、管理するクラブ企業、バッテングセンター、ドライビングレンジを経営する企業、等々。これらビジネスの主目的は、主として金儲けなのです。

こんな質問に出会った時

今、スポーツ・ビジネスについての卒論を書いているのですが、スポーツ・ビジネスとスポーツ・マーケティングの違いはなんなのでしょうか?この様な質問を学生達からよく耳にします。

▶スポーツ・ビジネスは、スポーツそのものと周辺産業を事業化したもの(すること)を意味していますが、スポーツ・マーケティングは、二通りの意味が考えられます

▶スポーツ・マーケティングとは、

1)スポーツ・ビジネスの事業計画を立てるときに必要な調査やそれを遂行する為の色々な手段。

2)スポーツが経済に与える影響を調査、考察すること。

1)であればスポーツ・マーケティングはスポーツ・ビジネスに含まれ、2)でしたら、スポーツ・ビジネスはスポーツ・マーケティングのファクター(要素)のひとつとなるのです。また、スポーツ・マーケテイングは、スポーツ・プロモーション活動の一つでもあります。

スポーツ・ビジネスは、ビジネスですからスポーツ関連の「事業」であり、スポーツ・マーケティングは、マーケティングですから経営戦略、経営管理、会計、流通などと共にスポーツ・ビジネス(事業)を構成する職能(活動)のひとつと考えられます。

 

Ⅲ.スポーツのビジネス組織

スポーツの経営に於いて重要なのは、スポーツ活動を効果的、且つ効率的に生産し、それを担う組織の経済的基盤を確保することです。スポーツ組織には、実際にスポーツの活動を生み出す「スポーツ・オペレーション部門」とこれを財政的に支援する「スポーツ・ビジネスアドミニストレーション部門」が必要であります

スポーツ組織の責任体制とその責務は、組織が保有するスポーツの「資源」を適切且つ有効に活用して、そこから確実に収益をあげることができなければならない。その収益活動の全体が「スポーツ・ビジネス」なのです。これは、また組織の存続と発展に欠くことのできない重要なファクター なのです。

ビジネス・アドミニストレーション部門は、重要な「スポーツ・マーケテイング部門、部署」も含まれるのです。その具体的な収益業務には、販売促進=セールスプロモ、テイケット販売、グッズ販売、スポンサー獲得、TV、メデイア販売、等です。また、財務、経理、総務、法務、広報、渉外、等の事務的な活動が含まれるのです。スポーツ・ビジネスとは、環境条件に上手く対応、適合して収益性を導き出す働きであり、基本的にはトップマネージメントの「戦略Strategy」であるといえるでしょう

:ビジネス・アドミニストレーションがスポーツ・ビジネスという仕事の全てではない。

■スポーツ・アドミニストレイターの重要なリソース

スポーツ組織にとって「」は最大の資源である

スポーツの経営は、資質の高い人材を獲得できるかどうかが経営成功の是非を握る重要なファクターの一つであることに間違いない。適切な指導者が獲得できるか、適材適所のスタッフが獲得できるか、スポーツ経営のコアである競技者、演技者の能力を十分に引き出せるコーチを獲得できるか、等が組織の業績を大きく作用するのである。また、これらは、教育機関の経営に於いても不可欠な要素です。成功しない組織機関は、この人材の資質に重大な欠陥があるのです。

スポーツ活動には、「もの」が必要である

先ず必要なのは、インフラ整備として用地の確保、アクセスの確保、道路の整備、駐車場の整備と確保、競技場、練習場、等のファシリテイー、クラブハウス、レストラン、等の選手、観客の要望にあった設備を考慮しなければならないのです。

③スポーツ活動に於いて運転資金、設備資金、等の「」は、欠かせない重要なファクターである

収入源の確保。(例:入場料、広告スポンサー料、寄付金、メンバーシップ料、使用料、指導料、放映料、等。)

④スポーツ活動に於ける今日の重要な資源に「情報」が加わったのは、需要な要素です

今日のような情報社会では、スポーツ・コンシューマー(消費者)が何を求めているかという情報を先に入手できるかどうかがスポーツ組織の業績を大きく左右するのです。組織文化(顧客の記憶、ブランド、スタッフのロイアルテイー、ホスピタリテイー、等)も重要な情報源なのである。

:Hospitality(room):心のこもったおもてなしの意味東京五輪招致活動に於いては、この日本語訳が滝川クリスタルさんのスピーチで使用され、買収疑惑が今日もフランス検察当局に寄り捜査活動が継続されている事でも世界の人達の知る所となり、現在もこの言葉がひんしゅくを買っているのをご存じですか。当の本人は、タレントとして雇われ喋らせられたので罪はないと早々結婚されてギャラ丸取りも仕方あるまい。

■スポーツ・ビジネスにも規則とルールは不可欠

今日のスポーツ活動の殆どは、特定の国やそのスポーツ組織が規則・ルールを作り、複数の組織を通して各国に広まったのです。これらは、ある企業が消費者の目の届かない工場で独占的に「商品=マーチャンダイジング」を大量に生産して、彼らの流通ネットワークに拡販するシステムに似た手段なのです。

スポーツの規則・ルールは、通常実践者たちの活動と経験を長く経て発展、進化して行くものです。即ち、ルールとは、熟成度が高いほど多角的な安定感、揺るぎないフェアネスを確立しているという事になります。

スポーツ・コンシューマー(消費者)達は、物のような既製品としてのスポーツを買うのでなく、消費現場で自らのスポーツ活動との出会い(Encounter:遭遇すること、接触、出会い)を買っていることを忘れてはなりません

同じスポーツであれば誰から買っても同じスポーツ活動と出会えるというものでない事をお忘れなく。顧客一人一人のニーズを満たすという点では、スポーツ組織の業務はサービス業と言えるのです。

  

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

紹介:K-file (長嶋茂雄と黒衣の参謀)文芸春秋社 著 武田頼政

   Kファイル╱スポーツドクトリン、KファイルNews Comment by Hiromichi Kawada

お知らせ:基礎編(Ⅲ)は、如何でしたでしょうか。分かっていても分かっていない重要な基礎部分を発見されたのではないでしょうか。発見され、理解されたなら失敗は二度繰り替える必要はありません。皆さんのお役に本河田ファイルがお役に立っていますならこれ程の幸いは在りません。昔から賢者は、「知らぬは一時の恥、知るは生涯の財産」と人は申します。此処に於いても人は、誠実で素直が寛容の様です。