Kファイル╱スポーツドクトリンNO.219⁚河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅳ)

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.219⁚河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅳ)

無断転載禁止                 毎月第二、第四木曜日掲載

河田弘道

スポーツ・アドミニストレイタ-

スポーツ・アドミニストレイションの基軸は「Justice正義&Fairness公正」

日本にスポーツ・アドミニストレイション論の必要性を紹介

日米で実践してきたスポーツ・アドミニストレイターの先駆者

(プロフィールは別途ご検索下さい)

 

時事の話題から~

筆者の私見と見解

ティーム大谷の突然の内部崩壊と起因

代理人の脇の甘さによる業務怠慢か

 この度の大谷翔平選手(LA/ドジャーズ球団所属)の公式通訳である水原一平氏の賭博に絡む事件は、世界中の野球ファン、社会を震撼させた出来事でした。Kファイルの読者の皆様は、既に報道を通して事の次第をある程度理解されている事と思われます。しかし、皆様は、マスメディアの報道を決して鵜吞みになさらない方が賢明です。その根拠は、殆どが客観性に基づいたものではなく、そこには人の数ほどのフェイク情報が米国内に於いても錯綜している事です。寄与のスーパースターが関わる出来事なので、それも仕方のない事であるかも知れません。

この報道を最初に報道したのは、米国のスポーツチャンネルESPNのニュース速報番組でした。https://www.espn.com/mlb/story/_/id/39768770/dodgers-shohei-ohtani-interpreter-fired-theft 本URLを筆者が確認したのは、日本時間(JST)の3月21日早朝でした。その時間帯、私は、まだデスクワークをしていましたので、米国からのメールの着信音で気付いた次第です。筆者の興味は、何故本件がESPNの記者、ロスタイムズの記者にのみリークされたのか、何処の誰がリークしたかです。怪奇?

水原氏の賭博行為は、既に数年前のLA/エンゼルズ時代から行われていた事実が明らかになっています。大谷選手のエンゼルズ時代は、水原通訳はエンゼルズ球団と契約していたか否かは公表されていません。この度は、LA/ドジャーズ球団は、通訳自ら開幕1試合目のサンディエゴ/パドレス戦後のティームミーティング時に事の次第をティームに話した後に球団は素早く反応、決断、解雇を発表しました

現時点での米国メディアに於ける問題の焦点は、本ESPNの記者が最初に水原一平氏にインタビューした時の答えと24時間後に再インタビューした時の水原氏の答えに齟齬(そご)がある事です。この24時間の間に何があったのかが今後の展開で明らかにしたいとの様です

こんな時の為にこそスポーツエイゼントは、選手の前面に出て擁護、防御する契約になっている筈なのですが、此処では、大谷選手の代理人(エイゼント)の姿が全く表に出てこないのも素朴な疑問であります。通常は、大谷選手と代理人契約をしているエイゼントが前面に出て大谷選手の代理を務めるべきです。今後どう代理人及びその企業が大谷選手をプロテクトするかが見ものでもあります。代理人の業務は、選手の契約をまとめる事だけではありません。

通常、大谷翔平選手程の超大型の契約をするに当たって選手は、先ず同選手のエイゼント(代理人とその会社)との間でビジネスマネージメント契約があります。そして次に大谷選手の専属通訳は、大谷選手の代理人会社と契約を結び、契約に沿った業務内容で選手をサポートします。また、大谷選手は、個人的に通訳の水原氏とエイゼントとの契約内容以外のプライベイトなマター(事項)で契約をしている可能性が在ります。本件では、このような重要な基本的問題の情報公開が成されていないので読者は理解しずらいかと思われます。

この度の問題で水原氏は、ドジャーズ球団との契約が在った事がドジャース球団が彼を解雇した事で明らかになりました。このように日本のマスメディアは、大事な大谷選手が誰と契約関係にあるのかの基本的な取材と情報公開が成されていない事にプロとしての取材意識の根幹が欠落しているように思います。読者の皆様は、何も感じませんですか。

本件は、現在既に米国国税庁(略:IRS Internal Revenue Service )、米国連邦捜査局(略:FBI Federal Bureau of Investigation)、MLBコミッショナーオフィスの特別捜査、調査が始まっています。これら本件に関わる最高機関の公式報告が出るまでは、全て信頼できる情報ではありません。今後は、大谷選手の一通訳がどうして大谷個人のそれも巨額の大谷資金を自由に自身の賭博の負債の肩代わりに胴元に流し込めたのかが、多分現在の焦点となっている様子が伺えます

FBIは、水原通訳の裏に組織が介在し通訳を操っていたか否かも重要なポイントしてインベストゲイションン(捜査)が行われているのではないかと思われます。それが為にも水原一平氏の身の安全を1時間でも早く、FBIに寄って保護、確保して頂きたく願います。勿論、FBIには、手抜かりは無い筈です

今日迄大谷選手は、アメリカンドリームを超順風満帆にMLBでのスターダムを駆け上っている彼の人生での出来事でした。しかし、彼は、今回この事件で巨大なトルネイド(竜巻)に襲われている現実を今後どう乗り越えられるか、乗り切るかだと思われます。大谷フィーバーに突然トマフォークミサイルが撃ち込まれました。これは、神様が大谷選手に自身の足元を見直すためのパニッシュメント(懲罰)を与えられていると理解して、この難をポジティブな心で乗り越えて初めて真の大谷翔平選手のゴールが見えて来るように思えてならないのは筆者だけでしょうか。此処で筆者は、水原一平氏大谷翔平選手をここ迄サポートし大変素晴らしい仕事をしてきた事は認めて挙げたく思いますhttps://www.youtube.com/watch?v=FchVRKXWoEしかし、この代償は、余りにも大きすぎます。

3月26日(現地25日)に大谷翔平選手は、自らの言葉で本件に付いて初めて会見を開き発表しました。それは、約12分程度新球団通訳同席で行われました。大谷選手は、終始冷静に誠実な態度で正直な解説と説明であった事に間違いありません。試合開始前の会見にも関わらずマスメディアに対応されたのは正解であったと思います。

この大谷選手の会見に於いて、“私も代理人も球団関係者も水原一平さんに嘘をつかれていた”との発言に筆者は非常に違和感を感じました

その根拠は、大谷選手の代理人は“球界切っての辣腕エイゼント(代理人)”と評価し、マスメディアは絶えず報道していました。しかし、この度の通訳の賭博問題で過去6年間代理人が通訳の動向に気づかず、この程の大事件を引き起こし、彼らの最大のクライアントの大谷選手に多大な被害を与えた事は、代理人及び所属会社の業務怠慢以外の何物でもありません。これは、エイゼント業界に於いては最大の汚点であり、ライバル会社の代理人達のほくそ笑む顔が目に浮かびます。

大谷選手は、水原通訳のみならず、代理人(会社)に対して損害賠償を請求できる立場にあると思われます。選手と代理人間の契約書には、守秘義務があるのでこの件については大谷選手個人の弁護士が把握している筈です。

これは、大谷翔平選手の会見内容です。ご参考までにhttps://www.youtube.com/watch?v=VcuvM8y5JvI

私は、大谷翔平選手とご家族、通訳の水原氏のご家族に神のご加護が在ります事をお祈りします。

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目次

スポーツ・アドミニストレイターの中枢を担うGM 

Ⅰ.スポーツ・オペレイションに於ける実戦配備

  1.ゼネラルマネイジャー(GM)の位置付けと職責

    ■GMには、実行力と強烈なリーダーシップが求められる

  2.スポーツ・オペレイションとは

    ■実際にスポーツをプロデュース

    ■スポーツ・オペレイションの人的資源の使い方

    ■スポーツ・オペレイションとマネイジメント

    ■スポーツ・ビジネスオペレイション

   3.貧乏球団(組織)を引き受けた時のGMの手法

   4.GMと監督、専門スタッフの業務とその違い

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2024年3月28日 木曜日公開

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.219⁚河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅳ)

無断転載禁止   

スポーツ・アドミニストレイターの中枢を担うGM

Ⅰ.スポーツ・オペレイションに於ける実戦配備

1.ゼネラルマネイジャー(GM)の位置づけと職責

 一般的にゼネラルマネイジャー(略:GM)は、オーナー、最高経営者(CEO)の直轄管理下に位置しています。このことからもGMは、その球団、組織に特化した最重要なスポーツ・アドミニストレイターの一人なのです。

GMは、球団及び組織・団体の中で経営分野とテイーム編成分野を統括運営・管理する事を職務・職責とする人の総称名を指します。現実的には、①経営部門と②テイーム編成部門の統括管理責任者を配置している場合が多く見受けられます。皆さんが理解、認識されているGMは、多分後者②であると考えられます。 

 GMは、与えられた球団の財産(組織、人材、金、物、情報、ティーム、監督、スタッフ、選手、等を含む)の有効利用と活用能力が問われるスポーツ・アドミニストレイターなのです。特に大切なのは、先ず戦略を立案しその戦略に基づいたティーム作りにおいて現戦力の今後の発展に一番適した指揮官・監督を選ぶ事からです。この選び方を違えると組織に多大な損害を与えるのみならずGMのオペレイション・マネイジメントに最大のダメイジを与えることになるのです。

GMには、実行力と強烈なリーダーシップが求められる

1)トラブル処理能力:利害関係がひしめく業務において問題の本質を敏速に見極め建設的な理解の下握手をさせる能力を意味する。

2)説得力:問題を先ず明確にしてお互いの置かれている現状を理解し、双方納得のゆく方向性と協調性を見いだし協力関係を再構築しなければならない。

3)客観的な対応力:敏速に客観的な要因を見つけだし、主観的な要素、要因を区別する能力が求められます。

4)コミュニケイション力:ポジテイブな対話によって相手の真相と情報を得ながら素早く解読、分析しながら相手にも理解させる交換能力が求められる。本能力を持ち合わせていない人間をGMに任命した場合、その時点で成果、結果は予測できます。GMの選考は、任命権者に全責任があります。

5)人間関係の掌握力:オペレイション部門に携わる全てのスタッフ、職員達との信頼関係を構築し、個々の能力をポジテイブに理解し、それを業務に活用できるよう導く事が大事。

6)オペレイション部門の運営力:個人の個々の能力を導き出し、個々の業務を組織の中でまとめて組織力として活用できる能力が求められる。(マネイジメント力、コーチング力)

7)判断力と決断力:球団、組織の経営、運営コンセプトに沿った判断は、スピードを持った決断力が必要不可欠です。                  

筆者は、自身の実体験から以上主な必用とする力を7項目を上げましたが、GM職には上記7項目は必要不可欠な項目でこれらの適正が無ければ務まらないと思います(組織の規模、趣旨目的にもより負担も異なる)。何故なら常に経営者からは、成果と結果が求められる職務と職責だからです。

また、アシスタントGMの採用に当っては、ただのイエスマンではなくGMの不得手な項目をカバー、フォローする能力ある人材をリクルートする事が賢明です。

小職は、このアシスタント諸氏には大変恵まれ、この方々無くしては東京読売巨人軍の歴史にメイクミラクル、ドラマを刻むことはできませんでした。現在もなお、この方々には心より感謝を致しております。読者の皆さんが応援されているプロ野球球団、プロサッカー球団、等々には、このような項目に当てはまるGM,あるいはそれらしき編成本部長、等と称される方がいるはずです。

2.スポーツ・オペレイションとは

 スポーツ・オペレイションとは、スポーツの活動を作る部門、部署であり実際に行う競技スポーツをプロデユースする現場の運営と管理を意味しています。

■実際にスポーツをプロデユース

一般スポーツの場合

プロスポーツ競技者及びその関係者以外の一般にスポーツをする人達は、生産者であり消費者でもある可能性が高いことも忘れてはなりません。(この場合は、競技性は低くリクリエイション、レジャー、健康維持増進を目的としたスポーツ活動です)

例:スポーツ倶楽部では、消費者(会員)に対してサポートする側は、種々のサービスを提供しています。それらは、インストラクター、トレイナー、健康・栄養のアドバイザー、サポート役のフロント業務、ファシリテイー(施設)、メインテナンスの業務、スケジュールの管理、清掃・点検の重要な役目を担っています。これら全ての人材をまとめ管理する各部署のマネイジャー及び支配人と呼ばれる役は、倶楽部の総合プロデユーサーです。倶楽部の顧客達は、消費者(会員)としての意識も高いです。よって、この場合、消費者は、実践者(商品)でもある事を忘れてはならないのです。

■スポーツ・オペレイションの人的資源の使い方

①仕事の内容、特性を明確にする。

②適切な人員を配置する。

③組織全体が効率よく動ける為の強いリーダーシップが必要です。

④仕事の成果を適切に評価し必ずフィードバックする事が大事です。

⑤モチベイションを高めるには、公平な報酬とそのシステムを明確にすることが大事です。

⑥スタッフへの対応は、常にフェアーに保つ事が大事です。

■スポーツ・オペレイションとマネイジメント 

 本運営・管理には、GMとして能力のある人材を配置する事が大前提です。そして、最高経営者(CEO)は、GMに全ての統括権限を与え契約書に基づいた約束事を履行する事が重要な任務・業務であります。また、CEOは、ビジネス部門と編成部門の責任体制を明確にし互いに無意味なコンフリクト(対立)や業務上の越権行為を起こさせない、起こさない体制を整える事が重要です。また、一部球団、組織、団体に於いては、オーナー兼CEOがGMを兼務している場合を見かけますが(代表的な例は、NFLダラスカーボーイのオーナー兼GM)、この場合は各専門部門、部署にアシスタントGM、アシスタントBMを配置し業務を分担させることが賢明です。

GMの重要な使命は、最高経営者による球団の経営方針に基づいたティーム作りを委託・委任され球団・組織の経営方針に沿ったティーム運営/管理を行い組織の最終目的である「勝利」に導くことです。

★次にGMの資質は、企業経営者としての資質を有し選手・スタッフ・監督の資質を見抜き強いテイームを作る為のリクルート(人集め)とそれを機能させる運営・管理能力に優れていなければならないことです。

そして最後にGMに求められるのは、資質の高い思考と行動力で思考だけでは役立たず、行動力だけでも成り立たないのです。行動力と思考力の高い資質を伴ったバランスを必要とされます。

■スポーツ・ビジネスオペレイション

 スポーツビジネスに於けるオペレイションは、幾つかの重要なポイントがあると考えられます。以下考えられるポイントを列記致しましたのでご参考にして下されば幸いです。

①スポーツを観戦用にプロデユースする。

②選手自身は、プロダクトの一部です。

③マネイジメントを行っているスタッフもプロデユーサーの一員。

④ゼネラルマネージャー(GM)、ビジネスマネイジャー(BM)は、スポーツ組織・団体においての重要なコンダクターであり総合プロデユーサーなのです。

⑤スポーツプロダクトを消費するのはスポーツ観戦者、ファンです。

⑥スポーツプロダクトは物と異なりその生産と消費が同時に交換されることです。

⑦スポーツ消費者(観戦者)は、エンカウンター(encounter、出会い)を求め、プロデユーサーは、エンカウンターを作り商品化することを業務としているのです。

3.貧乏球団を引き受けた時のGMの手法

 GM(ゼネラルマネイジャー)は、スポーツ組織・団体において欠かすことのできない重要なコンダクターであり総合プロデユーサーでもあるのです。ゲームを運営・管理するに欠かせない人材です。オペレイション・マネイジャーとも呼ばれています。このようにしてつくられたプロダクトを消費するのがスポーツ観戦者(消費者)と呼ばれます。

GMは、才能ある監督の発掘のみならずそのスタッフの採用が重要な成功の要素ともなります。安い材料(スタッフ、監督、コーチ、選手)を手に入れて、それに手を加え(マネイジメント)新しい質のよい商品を生産し、ドラフト、FA,移籍というルールを有効に利用、活用して商品を相手に高額で売り、その利ざやで洞察力という能力をフル活用して安い材料を手に入れて、手を加えて蓄財して行く方法が能力あるGMと評されるのである。その為にもGMは、情報収集能力にたけ、それを最大限活用(リテラシー)する実践力が試されます。

そして、そこでは生産者と消費者間では、物と金の交換でなく生産される選手のパフォーマンスに対する対価として観客、視聴者による消費が同時に行なわれる事が特徴です。また、観戦者がスタジアムに直接足を運ぶか、TV、マスメデイアの前に座るか、どちらかアクションを起さない限り観るスポーツは発生しないのです。よって、スポーツ観戦者は、お互いの関わり合いを含めて、観るスポーツの一翼を無意識のうちに担っているという事です。

4.GMと監督、専門スタッフの業務とその違い

 GMは、球団・組織の中枢を担う職務・職責に位置するポジションである事は既に述べました。

球団及び組織の経営者によって雇用(契約)される場合一般的に監督より長い期間の契約となります。何故ならGMは、最高経営者の右腕であり経営陣の一員でもあるのです。特にスポーツ組織に在っては、経営のCOREであるティーム、選手の商品化を図る最重要な役割を担っていて常に中・長期ビジョンに沿ったスポーツ・アドミニストレイターであるので長期に渡ってのティームオペレイションの責任を負っているのです。よって、監督、コーチングスタッフのような短期的契約と区別されるのは当然です。よって、その組織に於いてGM、監督がよく変わるような球団、組織は、最高経営者に経営手腕が無いと言われても仕方ありません。

特にプロのGMは、本来まさに種々のマネイジメント部署を預かり個々のマネイジャー達を束ねて組織の経営、運営、管理を担うスポーツ・アドミニストレイターの最前線部隊の最高司令官と言えるかと思われます。しかし、GMとして適応力の無い人選を行うとその組織の最高経営者は、組織の損失と崩壊を招くのも時間の問題なのです。人選と人事は、最高経営者(CEO)のライフラインと言われる所以がここに在ります。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

紹介:Gファイル(長嶋茂雄と黒衣の参謀)文芸春秋社 著 武田頼政 

お知らせ:如何でしたでしょうか。少し内容が濃くなりましたが今までのKファイルをご笑読頂いている読者の皆様には、良く理解して頂いたかと思われます。本篇は、スポーツ界のみならず会社、企業、組織、団体、等に於いてもファンダメンタルなアドミニストレイションに於いては、ご参考になると思います。