K'sファイルNO.54:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事  無断転載禁止

K'sファイルNO.54:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事

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 PARTⅡ 緊急特別寄稿:限りなく腐敗して行く大学競技

                                          スポーツの要因

 注:PARTⅡでは、我が国の大学競技スポーツに於ける問題の本質は、何処にあるのかに付き まして筆者が経験、体験しました米国の大学、日本の大学を実例としてご紹介します。これら実例から読者の皆様は、問題の本質が何処にあるかを是非ご一緒に考えて頂ければ幸いです。

1.大学テイームと大学の指導体質

①筆者と「日本の大学アメフトとのご縁」

小生は、嘗て長年米国の大学に於いて競技スポーツを統括運営、管理する部門・部署(Athletic Departmentアスレテイック・デパートメント)にてフットボールテイームを含めたスポーツ・アドミニストレーションをアドミニストレイターとして、教鞭以外に運営、管理して参りました。2008日本体育大学に於いて講演済)

1977、大学フットボールテイームがNCAA(全米大学競技スポーツ協会)の公式戦に於いて当時Western Athletic Conference(略:WAC=所属カンファレンス名)において、頂点を極める成績を収めました。そこで大学は、選手、スタッフへの労いを込め日本遠征を許可、日本アメフト協会、関東学生アメフト連盟、関西学生アメフト連盟と各大学の強い要請を受け、日刊スポーツ新聞社の企画で招かれました。

日本遠征に対する大学の趣旨、目的は、NCAAの了解の下、学生選手達が日本の文化に触れ、社会性を養う目的と日本の大学のアメリカンフットボールの育成、強化のお役に立てばとの思いで交流プログラムを遂行致した次第です。

その時のエキジビションゲームは、東京国立競技場での日本大学主体テイーム、西宮球場での関西学院大主体テイームとの交流ゲームでした。日本の学生選手、指導者、ファンは、NCAAの強豪トップ校を肌で感じたことと思います。

私は、このご縁から日本大学関係者、関西学院大学関係者、関東学生アメフト連盟関係者、関西学生アメフト連盟関係者とは、長年個々に交流があります。この度の問題で、嘗て関係を持った両校がフィールド内外で敵対関係の状況を鑑み、当時を回顧胸が痛む思いを致しております。77年日本遠征時の日大主体テイームとのエキジビションゲームには、内田監督は学生選手としてプレイしていたような記憶があります。当時の監督は、篠竹幹夫氏でした。

1978、本交流戦の翌年には、日本に最初の「NCAAの全米大学フットボールシーズン公式戦、BYUUNLVの一つを日本側スポンサーの招きにより、東京国立競技場で開催致しました。(BYU:ブリガムヤング大学、UNLVネバダ大学ラスベガス校)

②日大、関学大のアメフトの相違

当時より、日本大学関西学院大学のアメフトテイームは、関東と関西を代表する伝統校であります。筆者が理解しています両校の特徴は、日本の伝統的な精神論(根性論)を指導の基本にした日大、アメリカの大学フットボールを教育指導理念に取り入れ、また大学の教育理念にした関学大との違いが大変強く印象に残っています。両校は、互いにリスペクトし、信ずるものが根本的に異なるようです。

前者の日大は、精神論(根性論)を主体とした指導方法である事から暴力的指導が常態化し、今日までその伝統を継承しているのだと理解します。しかし、この指導法は、日大に限った事ではなく、筆者が存じている大学の大半が、大なり小なり現在も同じ手法を共有しています。よって、指導を受ける学生選手にたいしては、常に暴力、パワハラ、イジメ、等の恐怖指導、運営、管理が慢性化しているのだと思います。

このような指導方法は、段々とエスカレートして行かなければ選手の緊張感を維持できなくなるのと、指導者の威厳を堅持できなくなる悪循環を醸成するシステムであります。これを称して、コーチング論では、悪魔(デビル)の指導法則と筆者は呼んでいます。スポーツ根性論を指導の根幹とする為に人間の尊厳を否定し、人間を唯の家畜としてしか扱わない大変ワイルドな指導法です。これは、我が国の競技スポーツの伝統的な指導法であり、現在も脈々と現場では大なり小なり根底に流れています。

この度の日大の陰湿な手法は、自軍の選手に時間を掛けてテイーム戦略としての傭兵(鉄砲玉)を仕立て(心理的に)、相手テイームの標的を戦力外に暴力を持って追い出す戦術(物理的な)を計画的に遂行したのです。これは、大学競技スポーツの指導者として卑劣極まりない卑怯な戦法以外の何ものでもありません。

暴力には、個々の身体に対する物理的な暴力と、心理的、精神的な暴力がある事を忘れてなりません。暴力は、指導のスキルではなく唯の服従させるための道具なのです。このような道具を必要とする指導者達象とは、コーチングのスキルを持っていない証であり、暴力による強圧的な脅しの指導形態に依存しているのです。確かに精神論も競技スポーツには、必要で重要なファクターの一つです。しかし、その指導方法を誤ると競技スポーツの本質を踏み外すことになります。

暴力も選手への愛の鞭、とはばからない指導者、教育者には、コーチング、テイーチングに関しての指導スキルを持っていない証しです。暴力が愛であるなど馬鹿げた野蛮な屁理屈は成り立ちません。

また、大学の指導者雇用に於いては、指導者の適性、指導能力を判断する採用マニュアルも無く、親分子分の関係を形成し、従う人材を雇用対象にする独特の採用方式が伝統的に敷かれているようです。このような指導者雇用は、伝統的に大学管理者、法人経営者も容認しているということです。「我が国の教育機関の最大の問題の一つは、このような暴力を容認する指導者、管理者を採用、雇用する、大学の経営者、管理者の教育理念に指導、指導者問題が起因していると確信します」。読者の皆様は、如何感じられていますでしょうか。

筆者は、例えば嘗て暴力指導により公立高校を確か懲戒解雇された教員、指導者を数年後に大学駅伝の監督として雇用した大学、経営者を存じ上げております。このような教員、指導者は、暴力指導の癖を持っていて同じ指導を大学に於いても繰り返しているようです。このような事件が学内で起きても、大学経営者、教学管理者は、スケープゴートを仕立て今も隠ぺいしたままです。この度のアメフト事件と類似していますが、本件にはマスメデイアが話題に何故かしませんでした。その為に、他の事件、事故も隠蔽されたまま大学の改善、改革には、程遠い現状です。弱い立場の学生、学生選手は、経営者にとっては唯の集金マシーンと化している悲しい現実です。

学生、学生選手を決して被害者、加害者にしてはなりません。しかし何処の誰がこのような実態を救って挙げられるのでしょうか。

このような事態から大学の経営者、管理者は、よほど強い教育理念を持って、ドラステックな方法でスポーツ・アドミニストレーションを持って改善と改革に着手しない限り、外科手術的治療方法では、我が国の大学競技スポーツの改善、改革は難しい、と考えます。

後者の関学大は、進歩的、革新的な指導法と大学教育機関としての教育理念を当時も今も一貫して貫いていると理解致しております。当時の監督、学長、理事長、諸氏が退任されても、大学の理念は、アメフトを通じて脈々と継承されている事をこの度の事件で再確認致しました。両校は、競技スポーツに対する指導理念に於ける根本的な違いが対極に位置し、論点が水と油の関係で噛みあわないのがその証であり、現実であると思われます。

K’sファイルをお読みになった読者の中に日大の篠竹体制でプレイした、指導した関係者(内田監督を含め)をご存知でしたら、また関学大の当時の武田監督兼理事長、をご存知でしたら本K'sファイルの存在を是非お知らせ下さい。此れも何かの復縁だと思います。関係者は、超党派で今こそ大学アメフトを原点に回帰させ、ファエネスと共存共栄の精神を復活致させなければなりません。

2.学生・選手の大学選択の重要性

①学生・選手に大学転校の自由を与えよ

学生選手側が自らをプロテクトできる現実的な手段の一つは、このような日本の大学、競技スポーツを鑑みて、学生・選手が大学進学時に何処の大学、そして指導者を選ぶかが大変大事なキーポントになると思います。

何故ならば、一度その大学に入学した後、学生、学生選手がその大学、或は学部、専攻、指導者が合わなかった場合、問題が起きた場合に他大学への転校、編入が可能な構造、システムが日本の大学に於いては構築されていないことです。

これは、文科省の大学設置基準並びに教育基本法の不備、欠陥にあり、いまだ改善、改革が全くなされていない旧態依然からの構造と問題なのです。これに関係者は、誰も気付かないのも寂しい限りです。

これは、日本の大学の構造的な問題から、学生達の自由を束縛、拘束した人権に関わる問題でもあります。この度のアメフト学生選手の夢を破壊したのは、この転校システムの路が塞がれていたために、若者の未来を葬ってしまったのと同様と考えられます。

即ち、現場指導者、管理者、教員、事務職員、法人経営者は、一度学生が入学すると退学する迄他大学には移籍できない。との安心感がこのような指導、運営、管理の改善、改革を蔑ろにされている様に思えてなりません。

例えば、この度の加害者学生選手が、関学大を選んでいたならば、多分大好きなアメリカンフットボールを楽しくプレイしていたと思います。そして、このような社会問題は、起こしていなかったでしょう。或は、同学生選手が記者会見で述べていましたように、「大学に入ってからアメフトが楽しくなくなった」との思いは、もし、他大学への転校のシステムが各大学で整っていたなら、彼は転校への路を選択し新しい学生生活を歩んでいたはずです。

また、当該大学のこの度の指導者達は、学生選手に暴力指導を行うと学生選手が他大学に出て行かれることを認識して居たらなら、此処までの行為には及ばなかったと確信します。転校のシステムは、学生、学生選手の個人の自由意思を守る最後の砦であるのみならず、指導者、管理者、経営者の暴走の歯止めにもなるのです。

学生にとって、今の大学の構造的な問題は、アンフェアーであり、独占禁止法に抵触するのでないかと思われます。(本件に付きましては、KsファイルNO.1112を是非ご参照ください。きっとお役に立つと思います)

この度の出来事は、問題が常態化している日大の指導法がゲームに於いて学生選手が自らを犠牲にして、指導者の指導に沿ったパフォーマンスを遂行した事により、公になった次第です。そして、関学大の公式のアピールにより、マスメデイアが公表しやすくなったので、このような社会問題の起因となっているのだと思います。

文科省そしてスポーツ庁は何の為にあるの?

TV・マスメデイアへの期待と功罪

日本のスポーツ・マスメデイアは、常態化したこのような現実を勿論以前から存じています。しかし、誰もが残念ながら報道しない、公に問う姿勢を持ち合わせていないのが残念でなりません。これは、罪の部分です。

近年の大学教育機関の経営者、指導者、管理者の対応を観察、洞察させて頂きましたが、殆どの大学教育機関には、自浄能力が無いのでないかとお見受け致しております。

マスメデイアの体質と姿勢が学生選手を育てようとする情熱があるならば、我が国の大学教育機関、大学競技スポーツは、どれ程ポジテイブな改善、改革がスムーズに今迄に進行していたかはかり知れないと思います。この度のアメフト事件は、その代表的な功罪の功に当たるかも知れません。

何故ならば、我が国の大学教育機関では、国の文科省が大学法人に重要な権限を委ねてしまっている為、健全な学生選手達及び健全な、教員、指導者達がマイノリテイー(少数派)化し、自由な意思を発言できない環境の為、事故、事件の温床となっています。

先だっては、本件に付きましてスポーツ庁長官の鈴木大地氏が「もう国がリーダーシップを取らなければだめだ。取ります?」と感情を高ぶらせて公言されました。

その後、全く音無しで振り上げた拳を何処にどの様にして降ろすのか、降ろしたのでしょうか。元々、スポーツ庁は、何をする庁なのか、どのような権限を持った部署なのか、理解できていないのは筆者だけでしょうか。

その庁の長官が軽々しく国がリーダーシップを取ると公言したのですから、その真意とその方法を同時に国民、社会に発言を裏付ける説明をして初めて、国が何をするか、出来るかが見えて来るのです。

スポーツ庁及び長官は、大相撲の不祥事、プロ野球の不祥事、カヌー選手の不祥事、レスリングの不祥事、そしてアメフトの不祥事、等を各公益法人の長から報告とお詫びを受けて、「遺憾に思います」と対応することが本庁、長官の現在の仕事、実務のようにしか理解出来ないのは、筆者だけでしょうか。スポーツ庁長官は、自身の職責、責務、使命を持たれているのでしょうか。何故この方が長官に選考されたのかこれも不透明。

マスメデイアが正義と公平(Justice & Fairness)を持っているかどうかは、日本の教育界のみならず、大学競技スポーツの今後の命運を左右すると思います。何故ならば、本来あるべき姿の文科省スポーツ庁)が機能していると思えないからです。そして多くの大学教育機関の経営者、管理者には、自浄能力が無いと判断せざるを得ない状況だからです。それに伴い、大学競技スポーツは、問題が多発、解決策及び解決能力のある人材が見当たらない貧困な状況であるのも確かです。

我が国の大学競技スポーツ界には、学生達、学生選手達を育て、保護する強い信念を持ち、正論と正攻法を基軸にした強力なリーダーが今必要とされています。

 時事の動向

525日:日大学長の記者会見-内容に変化なし。

      日大アメフト学生選手の父母会、会見。

526日:日大からの2度目の返事を受け、関学大3度目の記者会見―

      受け入れられる内容でなかった。

526日:被害者側父親の記者会見―加害者学生選手を救う嘆願書作成。

529日:関東学生アメフト連盟の記者会見。内田監督は除名、井上コーチ除名、森

      コーチ資格はく奪、宮川学生選手はシーズン出場停止。

:不明確な会見:本連盟の理事は20名。内4名の理事は、本件に関する賛否に反対した。公益法人日本アメフト協会理事長は、棄権した。此の事態は、主催者内が一枚岩でない事を証明し、本件の複雑な人間模様が伺える。会見では、この部分の情報公開をされるべき。今後に禍根を残したと思われる。

529日:日大アメフト部学生選手の声明文発表。

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sport

 お知らせ:次回は、日本の大学競技スポーツを狂わせてしまっている最大の根源は何か。を予定致しております。読者の皆様方の怒りが筆者の瞼に浮かびます。困難な局面を迎えた我が国のスポーツ界を誰がどのように改善、改革を成すべきなのでしょうか。次回をお楽しみに。