Kファイル╱スポーツドクトリンNO.228:五輪メダルは限りなく変色して行く “日本人体操選手の飲酒喫煙の内部告発による出場辞退”

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.228:五輪メダルは限りなく変色して行く “日本人体操選手の飲酒喫煙の内部告発による出場辞退”

無断転載禁止           毎月第二、第四木曜日 掲載予定

河田弘道

スポーツ・アドミニストレイタ-

スポーツ・アドミニストレイションの基軸は“Justice正義&Fairness公正”

日本にスポーツ・アドミニストレイション論の必要性を紹介

日米で実践してきたスポーツ・アドミニストレイターの先駆者

(プロフィールは別途ご検索下さい)

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目次

筆者からのお知らせとご挨拶

教養・教育・倫理規範が無くともメダルは獲れる

先ず初めに

1.慌てふためいた日本体操協会のお粗末会見

      ■宮田笙子選手 違法行為に対する罰則の有無

      ■パリ五輪出場辞退は体裁の良い避難場所

      ■体操協会は内部告発者の真意を明らかにすべし

      ■宮田笙子選手の環境

筆者の私見

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筆者からのお知らせとご挨拶

 連日連夜の猛暑、酷暑、熱帯夜に心よりお見舞い申し上げます。

日ごろより、Kファイル╱スポーツドクトリンをご愛読頂きまして誠にありがとうございます。お陰を持ちまして、Kファイルは、日本全国のみならず海外10カ国余りに於いて読者が急増している事は大変筆者としても嬉しく思うしだいです。此れも一重に読者の皆様のご支援とご指導の賜物であります。2024年もまた暑い暑い日本の夏たけなわを迎えております。筆者は、本KファイルNO.228を持ちまして夏季休暇を取らせて頂きます事をお知らせいたします。今後益々暑さが厳しくなりますが、読者の皆様に於かれましては、ご家族皆様共々健康管理には十分ご注意され、思い出に残る夏季をお過ごしくださいますよう祈念致しております。筆者より

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2024年8月12日  公開

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.228:五輪メダルは限りなく変色して行く “日本人体操選手の飲酒喫煙の内部告発による出場辞退”

無断転載禁止

教養・教育・倫理規範無くともメダルは獲れる

先ず初めに

 連日連夜、日本の夏は猛暑、酷暑、熱帯夜と毎年異常気象の新記録が報道されています。読者の皆様方は、体力を消耗されておられる事とお察し申し上げます。そして、自然界は、自然の摂理の下高温な地球へと変質しています。この現象から、今後将来に向けて我々の心体は、生理学的機能と構造を暑さに対応する為に基礎体温の改造を迫られてきております。

この様な自然の環境下フランスでは、2024年パリ五輪が開催されています。片や、イスラエルパレスチナに於いては連日連夜戦場下で殺戮が行われています。2022年に2月のロシアによるウクレイン侵攻は、今日も尚大量の人命が失われて行っています。筆者の人生の中で、戦争行為が五輪開催前から起きている中での五輪開催は且つてあったでしょうか。特に五輪開以前に「五輪休戦宣言、提案」が無かったなど記憶にありませんが、読者の皆様は如何でしょうか。IOCの五輪大会開催の意義は、既に消え失せたと思わざるを得ません。

この度のパリ五輪は、開幕前夜から日本の代表選手による不名誉な事件から始まったのでした。本Kファイルでは、変わりゆく日本の若者達の競技スポーツの環境とその実態はこれからより一層変質して行くその姿を「時事の話題」をテーマに述べさせていただきます。読者の皆様は、皆さん個々のバックグラウンドからそれぞれの価値観により、異なるご意見をお持ちであろうかと推察しています。その異なる個々の思考は、民主主義社会に於いて非常に重要なコア(核)であると筆者は常に思っている次第です。連日我が国に於いては、SNSで選手、指導者に対する誹謗中傷がある事の報道がなされていますが、これも時代と共に情報機器を通して、人の心の深層を無責任な表現で垂れ流している時代と現実がここにあるのです。少なくとも発信者は、堂々と実名で自身のIDを明らかにする事は最低限の社会人としてのマナーであります

近年一段と国民と社会の中で情報機器が高度に発達し、簡単に誰でも操作が自由に出来、発信できるのがその特徴でもあります。しかし、悲しい事は、それらの誹謗中傷に対する対応、対策が行政、立法、司法に於いて「JusticeとFairness」の維持、管理が後追いしている事態が、これら誹謗中傷者を野放しにしてしまった弊害が現実に露呈した次第です。彼らは、下着の鎧を身に着け匿名で自らを隠して人を中傷する卑怯者と言われても仕方あるまい。しかし、この様な日本人が増殖しているのも現実です。

筆者は、スポーツ・アドミニストレイションのスポーツ・アドミニストレイターとしての視点で述べさせて頂きます事をご理解頂ければ幸いです。

1.慌てふためいた日本体操協会のお粗末会見

■“宮田笙子選手 違法行為に対する罰則の有無”

 本件は、2024年7月26日 金曜日(日本時間)に初めて日本のマスメディアを通して配信、報道されました。

 つい先日、2024年パリ五輪に日本の伝統的な競技スポーツ種目であります男女器械体操代表ティームが壮行会を経て出発致しました。ティームは、パリに入る前の事前合宿を行うためにモナコで調整を行っていました。その現地から突然日本女子体操界のエースの宮田笙子(しょうこ)選手(19歳、順天堂大学所属)が姿を消したニュースが報道され、体操界のみならず日本社会に衝撃と驚きを与えたました事は読者の皆様も既にご承知の通りであります。

マスメディア配信の一報は「宮田祥子選手が合宿中のモナコで喫煙」と題する記事であり、TVの報道番組でも流された次第でした。筆者は、本一報を耳にしました時はあまり驚きもしませんでした。その根拠は、50年以前から日本の大学の体育会系(日本では、部活を体育の一環と思い込まされ今日に至っている、アカデミックのイメージとは異なる人達のスポーツ活動の事を総称的に呼ぶ様です)の学生達は当時より未成年(満20歳以下)であろうがなかろうが多くの学生選手達は学内外で喫煙・飲酒していましたので、この度の宮田選手の喫煙もさほど驚きもしなかったのが正直なところです。しかし、当時はそうであったが数年前からは、18歳で成人と法律が改正されました。しかし、飲酒・喫煙は、今まで通り20歳未満は違法行為となっており、これは日本国民、社会に於いて常識として理解している法律であります。違法行為をしても罰則がない、此れでは、法治国家とは言えまい

残念ながら日本に於いては、体育系大学、学部学生選手達の間に於いては昔から飲酒・喫煙は公然の事実であり、教員、職員も学生と一緒に行っていたのも偽らざる事実であります。今日では、スポーツ医科学の見地から知識も、教育の場以外に於いても多くの情報により、飲酒・喫煙は身体に害を与えるとの理解が常識になっています。しかし、上記大学、学部の学生、教職員の間では、隠れてこの行為を今日も行っているのが実態です。

少なくとも教育機関に身を置く学生選手、教員、指導者がこの状態である事は、それ以外の一般社会に身を置く未成年者達は誰もが注意も諭もしないのが実態ではないでしょうか。それにも関わらずオリンピックの開幕前の現地での調整合宿で喫煙していたとのそれも内部告発があったとは「他意」があっての事と推測せざるを得ないのは筆者だけでしょうか。「その他意とは何か?」筆者は、これに大変興味を抱いた次第です。宮田選手を内部告発して何処の誰がどのような利益を得られるのでしょうか。

■パリ五輪出場辞退は体裁の良い避難場所か

    日本体操協会の記者会見での幕引きは、余りにも手回しが良すぎて事の重大さを見失い、只幕引きをする為の「結論」在りきに至った様相は否めません。

その根拠は、宮田笙子選手は「パリ五輪出場を辞退した」という乱暴な記者会見であった事です。これには、辞退に至った十分な説明が欠落してしまっている事です。その理由は、モナコ合宿で喫煙していたのを内部関係者が告発した事から発覚した、との事でした。

それでは、告発者は内部のどのレベルの指導者なのか、管理者なのか、の位置付けも無ければ、体操協会の何方がこの辞退をいつ正式に受理したのかの基本的な説明もありませんでした。筆者が不思議に思えるのは、IOC、JOCの見解はどうであったのか。また、未成年者の喫煙は違法行為であるが、体操協会内の内規にも選手の喫煙は禁じられている事に対するペナルティー規則を明確に説明もしていない事です。その後、同選手は、喫煙のみならず飲酒も行っていた事がマスメディアにより明らかにされています

体操協会の迅速な本人への事情聴収では、「本人は一回限りであった」との結論を既に告知している事です。本来は、この事件の事情聴収には保護者或いは弁護士が同席して行われるのですが、事情聴収はどのような方々が何処で行ったのかの説明もなされていません。19歳の未成年者の女性の違法行為を裁くに当たっての判断と決断に手落ちが無かった事を祈る次第です。

辞退」とは、特にここでは「2024年パリ五輪への出場を辞退する」事を指しているのは理解します。しかし、本来辞退とは、宮田選手自身が「自らの意思で自分は相応しくないとして断わったのか」、或いは「仏の道に身を置く父上が人の道に外れた行為なので我が子を辞退させた」のか、日本体操協会の責任者、管理者が同選手に今後の事もチラつかせながら「早期辞退宣言」の方向に導いたのか、この所も明らかにされていませんでした。

このような事から、何故日本体操協会の本件の記者会見後に、本人宮田笙子選手並びの保護者同席の下で会見を行い、本人の口から事実を明確に話す機会を与えなかった事は、アンフェアーな裁きではなかったか。これでは、日本体操協会国際体操連盟(FIG)が、まさに隠蔽しましたとのそしりを受けても止む無しと思わざるを得ない本件への大人達(日本体操協会)の対応であったと筆者は客観的に強く感じる次第です

その根拠は、国際体操連盟の会長職にある渡辺守成氏(元株イオン社員、元日本体操協会専務理事、現IOC委員)である事から、同氏の母体である日本体操協会で起こした本事件の汚点である事は、ひいては渡邊氏汚点となる事から迅速な処理を行った事は容易に理解できます。渡辺氏は、次期IOCの会長選に立候補するとかの報道もなされている事が本件の処置にも影を落としているようです。

■体操協会は内部告発者の真意を明らかにすべし

    この内部の人間は、本人に注意するか諭されなかったのでしょうか。喫煙は、今始まった事ではなかったようなので、内部の関係者はよく理解していた筈です。この事をマスメディアを通して知った読者の皆様は、どう思われましたか。

筆者は、此処で素朴な疑問を抱いたのでした。告発は、内部関係者との事がマスメディアの報道にあり、其の後の日本体操協会の記者会見の際にもそれが伺えました。それでは、何故協会の記者会見の前にこのような不祥事、事件が一部特定のマスメディアに露呈したのかです。内部告発者は、組織・団体に通告する前に特定のマスメディアにリークし、それが協会の知る所となって慌てて協会が本人と担当指導者をフランスから強制隔離する為に秘密裏に帰国させマスメディアとの接触を拒んだとの仮説が成り立つのです

このようなパリ五輪大会地で起こした事件でもある事から、本人及び協会責任者は、ご両親の了解若しくは同席で記者会見を開き公開で真意の程を説明する責任があるのではないかと思われる次第です。このような事が我が国に於いては、スポーツ界のみならず一般社会に於いて習慣化なっている未成年者の飲酒・喫煙に付いて、改めて警鐘を発する機会ではないかと思われるのです。

記者会見の矛盾

協会の記者会見では、本人への事情聴取をした結果として「一回限りであった」と述べています

これは、その後の同選手を知る高校時代、とその関係者からは常習化していた事が伝えられている事から、本件に付いては、ご両親同席或いは弁護士同席の上での記者会見が必要であり、同選手、彼女の口から「一回限りであった」のか否かの真意を明らかにすることをお勧めします。これは、今後の同選手の人生に於いても「協会による事情聴取が虚偽であったか否か」の真意を明らかにするべき事案であると思いますが、如何でしょうか。起きてしまった事は、無かった事にするには余りにも問題を軽率に扱った日本体操協会の会見でした。

これは、非常に重要な問題なのです。19歳の彼女がもし協会の発表通りに「一回だけであった」のならば、多くの証言者は、嘘をついている事になります。人は、一度嘘をつくと自身を正当化する為にまた嘘をつく、という負のスパイラルから抜け出せなくなり、人として大切な「信頼」を失う事になるからです。

宮田笙子選手の環境

     宮田笙子選手(19歳)は、本件が内部告発されるまで、幼いころから体操界に於いては天性の身体能力を持ち、オリンピック選手を目して、日夜過酷な練習、試合、等に取り組で参った事と察する次第です。同選手をサポートされて来たご両親を思うにつけ、この一瞬の出来事は、悔やんでも悔やみきれることでは無い筈です。そして同選手を幼少の頃から倒立運動から基礎運動、スキルを地道に指導してこられた指導者の方々の思いを鑑みるにつけ、やるせない気持であったとお察し致す次第です。

しかし、選手本人は、無論このような両親を含めた関係者を悲しませるような出来事が突然に起きた出来事であったとは到底理解しがたいのも事実でしょう。これ程迄素質があると誰もが認めていた笙子さんの日常の生活に於いて誰もが気付いていなかったとは言い難いこの度の事件であったと思う次第です。

この度の内部告発をされた案件の「違法行為」は、指導者が重要な問題とは考えず、只ひたすら日本代表を勝ち取る事のみを目的、目標として、大事な思春期の子供への教育的な指導を怠りアンバランスな人間形成を行ったのではないかと言わざるを得ないかも知れません。これは、体操選手への指導のみならず、他の競技スポーツの選手達にも共通の問題を共有しているのも事実であります。このことから、個々の選手の資質、育んできた家庭環境は、勿論であるが幼いころから指導を受けて来た指導者の資質にも大きな責任があるのではないかと思わざるを得ません。

このような違法行為は、違法であっても司法に於いては、どのような罰が科せられるのでしょうか。現実的には、未成年者が飲酒・喫煙して司法により懲罰を受けたなどの前例を筆者は聞いた事も確認した事もありません。

このような告発は、内部の人間であった事からも「パリ五輪終了後」でもよかったのでないか、との外野からの同情したくなる声もある意味では同情の余地ある事件であるのかも知れません。

筆者の私見

   筆者は、宮田笙子選手の違法行為を庇っているわけではありません。どのような立場の日本人であれ、日本国の法を遵守する義務と責任があるのです。しかし、この法には、明文化された罰則があるとは思えない。法にしては、中途半端なルールが我が国、社会には存在する事がこのような悲劇にもつながっているのではないでしょうか。罰則規定がなくとも、この度の違法行為は「宮田選手に対して社会的なペナルティー」が、所属団体とマスメディアにより与えられたのは事実であります。本ペナルティーは、体操競技界という特殊な世界から下手すれば抹殺されかねない社会的には無形のペナルティーになる可能性を行政、立法、司法の関係者達は真剣に未成年者達が理解できるように説明し、改善して欲しいと願う次第です。

東京五輪に於いては、悪徳な政治家達、組織委員会の理事達、会社企業の役員達が贈収賄事件を起こしてもお縄に出来ない日本国の司法体質であることも承知致しています。この19歳の五輪代表選手は、飲酒・喫煙を内部告発されたがために人生を左右する社会的なバッシングを受けて、隠密裏に母国に逃げ帰らせた日本オリンピック委員会JOC)、国際体操連盟(FIG)と日本体操協会こそ指導、管理不行き届きの罰を受けるべきではないのでしょうか

筆者は、誤解を恐れず申し上げれば宮田選手を幼いころから指導されて来た指導者達とご両親は、この度の同選手の違法行為に対する指導、管理不行き届きの責任は保護者としても逃れられないと思います。同選手は、幼いころから何不自由ない環境で育まれ、天性の素質を伸ばされて参ったと理解しております。そして、お父様は、ことのほか「仏門の道を究められた」大家であると聞き及んでおります。このようなご両親の下で成長された宮田選手が、何故高校から大学生となった今日迄このような人の道に外れた行為に気付かなかったのか、気付いていても何故止めなかったのかと思うにつけて非常に残念でなりません。

厳格な父親(住職)に対する「反抗」を同選手が持っていたとも思いたくもありません。体操指導者達は、子供達に体操を通して何を指導されたかったのでしょうか。日本代表選手になる為に必要な高得点を獲得する為の「マシーン」を養成する事を主たる目的であったならば、それは悲しい事です。

五輪出場、メダル至上主義の大人達のJOC体操競技団体、大学教育機関が、このような偏った競技スポーツの学生選手を特待生で獲得して、五輪選手養成部活に閉じ込めてしまった事は、説明のしようもなかろう。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

紹介:G-File「長嶋茂雄と黒衣の参謀」文藝春秋社 著 武田頼政

本著は、2006年10月発売、翌年完売の為現在はAmazonで中古オークションで入手可能。河田弘道の西武・国土計画、東京読売巨人軍での激闘の日々のドキュメントです。登場人物は、全て実名です。

Kファイル/スポーツドクトリン、News Comment by Hiromichi Kawada

 

お知らせ:本Kファイルは、7年の歳月をかけて掲載させて頂いております。お陰様で漸く日本全国、そして海外に於いても沢山の読者の皆様のご支援を受けております。この度も例年同様に夏休みを取らせて頂く季節となりました。

読者の皆様とは、しばらく更新が途絶える事となりますが、どうかお元気にお過ごしくださるよう祈念致しております。