K'sファイルNO.40:2020東京五輪の不可解なおもてなしPARTⅢ 無断転載禁止

K'sファイルNO.402020東京五輪の不可解なおもてなしPARTⅢ 無断転載禁止

PARTⅢ.~政治家による政治家の為の東京オリンピック大会~

     注:河田弘道は、オリンピックが日本で開催される事に大賛成です。しかし・・・

 

3.スポーツ・アドミニストレーションは、国民・社会の為に:

 ①わが国のマスメデイアとグローバル社会のマスメデイアとの本質的な違い、

   誤解を恐れず申し上げますと、問題は、この状況下で我が国のマスメデイアが、この利害と利権の構図の中に組み込まれているケースが多く、真の情報が国民、社会に届けられていないと思われることです。つまり、お上にすり寄るマスメデイアでは、真に国民、社会、スポーツ界の正常化に寄与するのは難しいという事です。スポーツを話題にした番組では、日々長時間面白おかしく、商品化して視聴率を稼ぐ事を目的とする事のみならず、マスメデイアには、真に国民のオピニオンリーダーとして、志を高く持って頂きたいと心より願う次第です。

   我が国のマスメデイアの基本的な体質は、企業に雇用された1記者と表現した方が理解しやすいと思われます。その記者は、1レポーターとしての職責、責務しか所属企業から与えられておらず、ジャーナリストとしての言論の自由は与えられていないと思われます。ジャーナリストとレポーターは、本質的に異なる職域だと私は理解しています。この事を我々は、理解できていないのではないかと思うのです。よって、記者は、自身の理念、感情、倫理感をジャーナリストとして報道させてもらえない事が、大きな問題だと思います。

   我が国に於いては、国民の表現、言論の自由が法律により保証されている筈ですが、マスメデイア組織では企業の利権、利害を最優先するが為に、ジャーナリストとしての使命までもが奪い取られているようです。その為に生じている現象の一例として、紙面の記事原稿が何処の新聞社、TV、等も代り映えしない、即ちマスメデイアの紙面、TV情報、記者の特徴、個性が無くなってしまっているように感じてなりません。本来の記者、ジャーナリストは、芸能タレントさんではない筈ですが・・・。

   記者を雇用している企業は、事業(ビジネス)を最優先するが為に真実を報道できない仕組みになっていると理解した方が判りやすいかと思います。私は、権力に立ち向かい“NO” が言える真の勇気あるマスメデイア、記者で在って欲しいと切に願います。そうでなければ日本国民は、常に真の情報、知識を得られず正しい判断ができなくなります。その為には、マスメデイアが本来のジャーナリストとしての使命を堅持し、ぶれない日本のマスメデイアで在って欲しいのです。読者の皆さんは、どう思われますか。勿論、マスメデイア企業にも、記者にもジャーナリズムを堅守し素晴らしいプロフェッショナリテイーを持って、日夜活躍、活動されている企業、記者も沢山いらっしゃる事も付け加えさせて頂きます。

   此れがNYタイムズ社、ワシントンポスト社、ロサンゼルスタイムズ社、ABCCBSNBCFOX、等の先進国のマスメデイア、及びそこに所属する報道、ライター達と日本の報道企業、機関、記者達との根本的な違いではないかと思われます。よって、嘗てのワシントンポスト社の記者がジャーナリストとしての真価を発揮し「大統領の関与した事件(ウオーターゲート事件)」を告発して歴史の変革に寄与したのと、わが国の企業マスメデイアのレポーターとの違いのように思えてなりません。この国のJustice(正義)は、もう死に体なのでしょうか。K'sファイルの読者の皆さんなら理解して戴けるのではないでしょうか。

   このような、組織、構造の企業としてのマスメデイアでは、真の情報提供を期待しても難しく、このために莫大な金銭が東京大会組織委員会内部で消滅して行っていても不思議では在りません。問題は、本プロゼクトの中枢となる運営、管理者達の大多数が、競技スポーツの経営、運営、管理経験の無い人達であり、その方々が権力の中枢に居る事だと思います。莫大な公金を使用しながら、これらをチェックする第三者機関のインフラクションコミテイー(特捜部門)も設置していないのは、ワイルド過ぎませんでしょうか。

 ②オリンピックレガシー(遺産)に対する意識的誤認、

    本プロゼクトで最も気がかりな一つは、本大会組織委員会・会長氏が、事あるごとに「オリンピック・レガシーを残すのが大事」と口にして来た事です。この会長のレガシー(遺産)に対する理解と認識は、インフラ(Infrastructureの意味)、建物(箱物)を新たに建設する事がイメージの大部分ではなかろうかと思えてならない点です。

  1964年の東京大会のシンボルとしてのレガシーであった国立競技場をいとも簡単に、莫大な資金(税)を投入して壊し、不必要な新たな国立競技場、及び各競技種目の箱物を建設する事が彼らの最大の目的であったような気がしてならないのです。そうであるならば、招致活動から今日までの莫大な公金浪費の目的が大変よく理解出来、透けて見えてくる次第です。政府機関の見識ある方々は、何故ブレーキを掛けようとされなかったのでしょうか

   この目的を遂行する事により、何処の誰にどの様な恩恵とメリットがあるのか、出るのかを冷静に精査検証する必要があります。私は、公金の使用に関しては、責任の所在と責務を明確にする意味でも、1円たりとも国民、社会が理解しやすい方法で情報公開を定期的に行う義務と使命があると思います。

   祭典の後には、必ずと言ってよい程大きな財務、経理疑惑が発生するのも世の常です。後世に於いて現責任者達は、不名誉な事件を起こさない為にも手のひらがクリーンである事を口頭でなく、書き物で重要書類は少なくとも20年間破棄せず残す事を老婆心ながらご注意申し上げます。長野五輪の後、全ての重要書類が何故か破棄されていて、疑念、疑惑を証明できませんでした。

  貴重な公金は、1円たりとも無駄をして欲しくないのが真のスポーツ・アドミニストレーターの職責であり責務なのです。読者の皆さんは、後世の為にも無関心を装うことなく、勇気を持って若者たちに負のレガシーの負担を背負わせないよう能動的な日本国民で在って欲しいと切に願う次第です。

 ③真のレガシーとしてのロサンゼルス・メモリアル コロシアム、

    米国ロサンゼルスにある、ロサンゼルス・メモリアル コロシアム(Los Angeles Memorial Coliseum)は、1932年、1984年と2回のオリンピック大会を見事に開催し、2028年オリンピックでは、3度目の開閉会式を迎える予定です。此れこそがオリンピック大会招致の価値あるレガシーとしてのシンボルなのではないのでしょうか。(集客能力:約100000人、起工:1921年、開場:1923年)

  東京大会は、何故五輪招致を思考し始めた時点で「ロス方式」を検討しなかったのか、話題にも出なかった事、出さなかった事が、今後大きな禍根を残す事は必至で、既にその階段を一歩また一歩と上がっていっているのです。ロス方式は、公金を1セントも使うことなく、440億円の黒字化を遂げた素晴らしいプロゼクトモデルなのです。

注:オリンピック・レガシーとは何か。レガシーとは、近年国際オリンピック委員会IOC)が最も力を入れているテーマの一つです。IOC憲法ともいえるオリンピック憲章には記されている。「オリンピック競技大会のよい遺産(レガシー)を、開催都市並びに開催国に残す事を推進する」(第一章「オリンピック・ムーブメントとその活動」第2項「IOCの使命と役割」)。より・・・

   K'sファイルの読者の皆さんは、本件を今日までどの様に理解、評価されていましたか。此のままでは、2020年以降この負のレガシーを若い世代の皆さんが生涯かけても清算できない、また毎年莫大なレガシーの維持、運営、管理費の赤字を背負い込まなければならない事を考えた事がありますか。本来ならば、今既に大会後のレガシーの使用、活用、運営、管理のビジョンが計画書を持って明確にされ、国民、社会の理解を得ているべき重要なプロゼクトであるべきです。これがあって初めて本大会のプロゼクトの評価がなされ、スポーツ・アドミニストレーションの真価が問われるのです。

   私は、招致活動を今日まで推進して来た人達が、本プロゼクトを建設的なビジョンの下に取り行ってきたとは信じがたいです。異なる理念と野心を持った政治家及びその集団とその関係者は、国民と社会をミスリードして行く可能性が限りなく高く、これらは、本質的にリスクマネージメントとは異なるのです。

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレーター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

 お知らせ:次回K’sファイルNO.41は、「84ロス五輪の成果とそのキーワードPARTⅠ」世界のスポーツ界の歴史的BIG3と呼ばれる人物達の出現とその時代に付いてお届けいたします。此処では、スポーツ・アドミニストレーターの資質が如何に大事で大切かを是非再考して頂ければ幸いです。

K'sファイルNO.39:2020東京五輪の不可解なおもてなし PARTⅡ 無断転載禁止

K'sファイルNO.392020東京五輪の不可解なおもてなし 無断転載禁止

PARTⅡ.~政治家による政治家の為の東京オリンピック大会~

                注:河田弘道は、オリンピックが日本で開催される事に大賛成です。

                       しかし・・・

 

2.政治家たちの真の思惑:

①招致活動成功後の利権代表達の抗争、

   招致活動の進展と共に、利権を巡る抗争は激化していきます。最終的には、都知事を中心とした都議与党と、もう一方は国会議員の利権代表である元文部大臣で自民党総裁、総理大臣経験者の森喜朗氏を雛壇に祭り上げた国会議員連盟団という構図です。この2大勢力グループの本プロゼクトに於ける最終目的は、いったい何だったのでしょうか。両グループがけん制し合い、潰し合い、激突したのは、多分本プロゼクトの目的が両陣営共に酷似していたからだと思われます。また、どちらが最終的な権力、利権を握ってもよいように最初から両陣営に二股掛けていた政治家、関係者もおり、彼らには、双方の思惑がよく透けて見えていたと思われます。

   このような優柔不断な節操の無い政治家及びその関係者の態度と行動は、事の次第をより複雑化し、長期化し、国民、社会に対しての信頼を失った結果ではないかと思われます。社会、国民の目は、そんなに節穴ではないと思いますが如何でしょうか。

   彼らは、双方美味しい利権に肖りたい、強奪したいが為に政治家の理念も道徳観念もかなぐり捨て権力・利権闘争に飽きもせず明け暮れています。誠実で正直な政治家、関係者は、ほんのわずかながらいる事も確かですが、正論は届かなかったようです。

  勝ち組は、既に彼らの目標を達成しているのかも知れません。また、負け組は、新たな利権を求めて2020年後を見据えた、大学競技スポーツ利権の構築の為に「日本版NCAA」というキャッチコピーを掲げて、文科省スポーツ庁を焚きつけて現在進行させているようです。次は、教育機関の利権狙いか。

注:本件に付きましては、長年筆者が米国大学、NCAAでの実践経験者でありましたので、タイミングをみてスポーツ・アドミニストレーターの視点で、NCAAは何たるかを述べさせていただきますのでご期待下さい。これもまた無から有を生む新たな利権開発に教育者と言う名の方々も参戦し、学生達が巻き込まれて行っています。

  さらに、当時の大義「震災復興」が、いつの間にか消えて無くなり、現在はオリンピック・パラリンピック大会を我が国、東京都に持って来た意義もコンセプトもいつの間にか見えてこないようになったのが現実ではないでしょうか。よって、元々招致活動を推進するには、大義となり得る「震災復興」がIOC理事達、海外・国内へのアピールに必要であったのだと思われます。

    しかし、推進者達は、この大義に対するプロゼクトマニュアルも持たず、ただの「キャッチコピー(目を引く餌)」程度にしか考えていなかった事が、今日の状況を物語っているように思えてなりません。これらの関係者は、国民が選挙で選んだ国民の代表、都民が選んだ都議、都知事の発想、見識、モラルかと思うと、私は、我が国の将来を憂えていますが、私だけなのでしょうか。此れも国の今日の平和が逆に起因しているのかも知れません。

   招致活動でのプレゼンテイションでIOC理事達のみならず、国際社会、国民に告知し、約束致した「お金の掛からないコンパクトなオリンピック・パラリンピック東京大会にする」約束事は、いったい何だったのか、どうしてこのよう手段を取ってまで突き進んでしまったのでしょうか。国民、社会は、マスメデイアの報道にただ浮かれている場合でないように思えてなりませんが・・・残念です。

 ②利権代表達の抗争の終焉、

    此のところ日本の新聞各社は、2020年東京大会の費用に付いて、昨年暮れに総額1兆3500億円(うち都は6000億円負担)と報じました。しかし、先日は、都が新たに8100億円追加の必要性を発表しました。勿論これらの追加資金投入も都民の税金から投入するという意味です。此れでは、小池都知事の力強かった選挙前後の公約、勢いが空手形同然でそれまでの知事と何ら代わり映えしません。現在は都知事の存在感すら薄れてしまったと感じられるのは、如何なものでしょうか。現都知事が、嘗ての都知事と異なる点は、女性でオリンピック利権に手を染めさせてもらえていないところでしょうか。

    此処でスポーツ・アドミニストレーターとしての視点で申し上げますと、スポーツ・アドミニストレーションに於きましては、このような国際的なイベントに国を代表、都民を代表する政治家がむやみやたらに絡んで参りますとスポーツ大会及び競技スポーツの本質が変質し、見失われてしまう事です。この東京大会の実例は、それを証明していると思われます。

    今まさに開催されています、2018年平昌(ピョンチャン)冬季五輪は、北朝鮮平壌ピョンヤン)五輪と揶揄されていますが、国際政治に翻弄された大会と化してしまいました。本来は、IOCの統括責任者であるバッハ会長が前面にでて、行き過ぎた五輪大会の政治家、政治利用に歯止めをかける勇気と技量が必要不可欠でした。今後に禍根を残した大会となった事は、五輪の歴史に新たな汚点を残した事になりました。これで、公金を利用した五輪大会は、政治、政治家に利用、活用される大きなリスクが伴う事が証明されました。東京大会も同じ運命を背負っている事を忘れてはなりません。

    今日の2020年東京大会のアドミニストレーションは、まさに真のスポーツ・アドミニストレーターが不在で政治家集団の利権争奪ゲームが現在最終局面を展開していると申し上げても過言でありません。彼らの目的、目標は、本大会に関する利権闘争という政争ゲームでメダルを獲得する事であり、震災復興、競技スポーツはそのためのツール(道具)としてしか見えていないのでしょう。

   勿論、このような世界最大の競技スポーツのイベント招致、開催には、国を代表する政治家が関わる事も「ある部分」では確かに必要です。しかし、東京大会は、最初から政治家及びその官僚関係者、OB在りのために、本スポーツ・アドミニストレーションをより複雑化し、真のスポーツ界のリーダー(求心力、仕切る人間)を不在にし、談合がよりやりやすい手法を形成していると思われます。

  これは、起きるべきして起きている我が国の伝統的な手法の一つです。何事もバランス感覚を失い、何方かに極端に偏重すると本質を失い国家と国民に被害が増幅する事を、考えもしない人達なのかも知れません。

   この手法を用いる事で競技スポーツのアドミニストレーションは棚上げされ、まさにJustice(正義)もFairness(公正・公平)も無き、負のレガシーが構築されようとしているのです。

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレーター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

 お知らせ:次回K’sファイルNO.40では、本課題とテーマのまとめPARTⅢ.をお届け する予定です。主な項目:③わが国のマスメデイと先進国のマスメデイアの 本質的な相違、④オリンピックレガシー(遺産)に対する意識的誤認、⑤84ロサンゼルス大会の大義と結果、を予定致しております。段々と興味深い展開が待っていそうです。

 

K'sファイルNO.38:2020東京五輪の不可解なおもてなし PARTⅠ.無断転載禁止

K'sファイルNO.382020東京五輪の不可解なおもてなし 無断転載禁止

      PARTⅠ.~政治家による政治家の為の東京オリンピック大会~

        注:河田弘道は、オリンピックが日本で開催される事に大賛成です。しかし・・・

 

1.スポーツ・アドミニストレーター不在の付け:

 ①招致活動での建前と招致後の本音、

 どうして最初から本プロゼクトには、政治家達がやけに目立つのか。これほど露骨に政治家たちが表舞台に顔を出す五輪は日本国だけでなかろうか。K'sファイル読者の皆さんは、不思議に思われませんか。

2016年の招致活動失敗から2020年東京大会開催決定、そしてその後今日迄、これほど開催に関する問題が内外共に起きる、起きた事例が嘗てあっただろうか。

16年招致活動の大義は、確か「震災復興」を掲げました。そして20年招致は、これまた震災復興を掲げてのプレゼンテイションがなされた筈です。費用の掛からない無駄のない、コンパクトなオリンピック・パラリンピック東京大会は、招致の為の旗頭と謳い文句に掲げてきました。しかし、いつの間にか大義の震災復興は、何処かに消え、予算は、とんでもない莫大な公金が実態として流し込まれ続けているのが実状です。

これに対して誰も歯止めを掛けようとしない。確か小池都知事は、選挙で予算費用縮小を訴えて歯止め役をかってでて当選した筈ですが、筋金入りの政治家では無かった事を現在露呈。金は、全て組織委員会の御用達の印刷会社がプリントしているかの感覚で無駄な金を湯水のように使っているイメージがしてなりません。

  プレゼン当初の予算告知額は、いったい何を根拠に試算された数字であったのかと、ふと頭に疑念が巡ります。いったい当初の予算の何倍の公金を投入すれば気が済むのでしょうか。此れだけの資金があるなら、何故もっと有効にオリンピックのみならず困っている現実の社会、国民の為に活用するべきであると思いませんか。此れでは、限りなく国の借金が膨らむばかりです。

このような展開になる事は、当初より予想していた事なのですから、何故五輪招致を思考し始めた時点で「ロス方式」を検討しなかったのか。話題にも出なかった事、出さなかった事が今後大きな禍根を残す事は必至で、既にその段階を一歩また一歩と上がっていっているのです。ロス方式は、公金を1セントも使わなく、440億円の黒字化した素晴らしいプロゼクトモデルなのです。

  このような優柔不断なオリンピックプロゼクトから、国外からは、招致活動に関わる裏金問題を指摘され火消しに躍起となり、国内に於いては、オリンピックロゴ・タイプの盗作問題、国立競技場の設計入札疑惑問題、設計者及び関係会社への契約変更、予算の不透明疑惑、そして、その間に主催都市の都知事が本件がらみを含めて3名も不名誉な交代劇を演じ、その都度掲げる公約に一貫性が無く、失言を海外に告知し、現知事は、威勢よく乗り込んできたが政治家同士の利権のつぶし合い、奪い合いを見苦しい程内外に曝し知らしめ、スポーツの祭典がこれでは「品の悪い政治家の祭典」と相成った感じが否めないと感じるのは私だけでしょうか。

 ②問題の発端とプロゼクトマニュアルの欠陥、

 静観して見ていますと一つの方向に問題が偏っている事が透けて見えて来るのです。それは、2020東京オリンピックパラリンピック開催招致活動のプレゼンテイションで公言、公約した予算が全くの招致する為の「飾り予算」で在った事です。これがそもそもの本プロゼクトの「トリックの起点」となって、国民、都民の税金を湯水のように投入するストーリーが仕組まれていたような気がしてならないのです。今は、この描かれていたシナリオに略近い流れで進んでいるので本プロゼクト立案、遂行している執行部達の意味深な笑みが目に浮かびます。

  この招致活動初期から、関係省庁及び関係機関、東京都は、種々の思惑の人達が絡み合い複雑怪奇な様相でスタート致していました。これをスポーツ・アドミニストレーターの視点で指摘させて頂きますと、そもそもの最大の問題は、主催者に当たる都知事が本巨大プロゼクトに強い興味を持ち、都民の税金で招致活動に邁進、自身が幕開けから幕閉じまで首を突っ込んで、利権の構図を描きその利権に手を突っ込んだことから今日の限りなく高騰する資金(税)投入に点火したのが発端と思われます。

  当時より利権をせしめようとする東京都議与党軍団、都知事そうさせまいとする文科省OBを中心とした超党派で構成する国会議員連団の利権グループが当初より抗争していたように見受けられたのです。

 嘗て1976年カナダ、モントリオール大会が、オリンピック大会史上例を見ない巨額の赤字負債を抱る大会となった事などを契機に、IOCは、この一大問題打開の策として当時のIOCサマランチ理事の提案でそれまでのオリンピック憲章から「アマチュア」の言葉を削除して変革、オリンピックにスポーツビジネスを解禁し、またプロ選手の参加に扉を開いたのでした。しかし、その後この改革の弊害が毎回の開催都市招致に関わる闇の世界を構築、獲得票を集めるための莫大な裏金で買収する暗黒のネットワークを生み、大会の巨大化に伴う主催国、都市に莫大な資金を投入させて大会を肥大化させ、負のレガシー(遺産)を山積みさせて来たのです。そして2020年東京大会は、最後の巨大化されたオリンピック大会の負のレガシーの終焉であろうと言われるに至っています。

  本東京大会以降は、大会招致の国が激減し、ついに2024年パリ、2028年米国ロサンゼルス市とプレゼンする競争相手も無く、24,28大会が自動的に同時に決まったのも偶然ではないのです。いったい東京大会招致活動は、何だったのか。

 此れは、まさに1976年のカナダ・モントリオール大会後にオリンピック大会招致に興味を持たなくなった国々が出た時期に戻り、歴史が形を変えて繰り返される事になったのです。この事は、東京大会招致委員会にとっては、因果と言う表現しか見当たらないように思えてなりません。IOC理事達の罠にまんまと日本の政治家達がはめられた事に等しいのです。

  東京大会開催組織委員会は、このことを如何に理解しているのか、いや、気にもかけている様子もなく、ただ国税、都税をいくら引き出すか、引き出せるかに奔走している状態が、今尚続いている様子が伺えます。勿論、スポーツ振興機関からの補助金、コマーシャルスポンサーからのスポンサーシップとサポートを受けているのも事実です。本来は、国民、都民の公金を充てにしないで2020年東京大会を招致活動で勝ち得た方法があったのも事実です。当時招致関係者は、公金を使わない大会擁立に誰もが興味すら見せなかった理由は何故だったのか。K'sファイルの読者の皆様はその結論に至るかと思われます。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレーター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

 お知らせ:K'sファイルNO.39PARTⅡは、NO.38の後半を掲載致します。2.政治家たちの真の思惑:①招致活動成功後の利権代表達の抗争、②利権代表達の抗争の終焉、他、ご期待ください。

 

K'sファイル:お知らせ~

お知らせ~

K’sファイル:特番オリンピックウイークにちなみまして、オリンピックの話題をスポーツ・アドミニストレーターの立ち位置で2月8日よりお伝えする予定です。読者の皆さんの脳細胞の活性化にお役に立てば幸甚です。河田弘道

K’sファイルNO.37:この度のFA問題は両球団の談合かPARTⅡ. ~コミッショナー・NPBは職責を果たしなさい~

K’sファイルNO.37:この度のFA問題は両球団の談合かPARTⅡ.

                  ~コミッショナーNPBは職責を果たしなさい~      無断転載禁止

*本NO.37は、前回のNO.36を掲載しました1月24日に書かれたもので、長文となりましたのでPARTⅠ.とPARTⅡ.として掲載させて頂きました。

2.コミッショナーNPBは職責を果たしなさい~

野球協約の遵守は関係者の使命:

ここで大きな問題は、指名された超ベテランの岩瀬投手が野球協約を理解できていなかったとは考えにくい事です。通常選手は、プロ野球球団と最初に契約する時に必ず署名、捺印しなればならないのが「統一契約書」です。統一契約書は、日本プロ野球機構(NPB)が発行した球団、選手、NPB間の約束事、会社法人の定款に当たるものです。日本のプロ野球では、この統一契約書は、選手にとって読むのも煩わしい代物(虫メガネが必要な文字)ですので殆どの選手は、読まないのでないかと思います。また、実質は、形骸化された状態でただ署名、捺印の選手が殆どです。選手にとって大事なのは、別の用紙に書かれている数字と保証の担保なのです(主に球団と選手間のサイドレターとも呼ぶ)。

 メジャーリーグ(略:MLB)は、各選手が専属の代理人Agent)を擁しているので選手は、難しい協約、規則、等に付いては代理人に任せておけばよいのです。しかし、NPBに所属する選手は、代理人を使うと球団側(経営者)に嫌われるので使用しない、できないのが現実です(外国人は使用)。このようなFA問題に於いても、代理人が居ない弊害が選手側にとっては、マイナスになるのです。岩瀬投手は、自分は球団に於いては一商品である事の理解と認識ができていなかったのか、所属する球団の統括責任者が野球協約を球団内に於いて遵守・遂行するに至らなかった事実です。(岩瀬投手が同球団に如何に貢献したか云々は、プロ選手の売買に於いては問題外、球団が必要選手として認めているなら、日ハム球団に提出するプロテクト選手リストの中に何故入れて置かなかったかが、本件のキーワード)

 これにより日ハム球団は、中日球団に貸しを作り、中日球団は、日ハム球団に大きな借りが出来たわけです。この貸し借りは、既に両球団間において金銭にて相殺をされたのか、或は、いまだに貸し借り状態にあり、将来どのような方法と手段でこの相殺を行うのかが大きな問題なのです。

本件に関しては、経緯と結論を両球団及びNPBは、明快に情報公開をしなければ更なる疑惑と疑念をファンと社会に残したままシーズンに入る事となります。この貸し借りは、明らかにして於かなければ、痛くない腹まで探られる事になるのです。それは、シーズンに入ると交流戦が組まれている事です。本件は、軽くファンの目を欺く一件ではない事を肝に銘ずるべきです。このような事が次なる不祥事に発展するのです。このような場合は、NPBが両球団に指導的な立場でリーダーシップを取り、社会やファンの疑念を払拭する事がNPB担当部署、コミッショナーの責務です。

 これが事実となれば、中日球団のみならず、日ハム球団自らも協約破りとして同罪です。MLBに於いては、同様な事が発覚すれば、厳罰がコミッショナーにより下されます。

岩瀬投手が事実、「拒否」したのであるならば、これは完全なる協約違反として処罰対象選手となり得ます。本来は、NPB協約の下で運営、管理している両プロ野球球団として、対象選手が「移籍拒否」の回答をした時点で、協約発行元のNPBに両球団から報告があってしかるべき事項でした。

 嘗て、類似した問題で、社会的な問題を引き起こした事例は皆さんのご記憶に新しいと思います。それは、江川卓投手(当時法政大学)、菅野智之投手(当時東海大学)がドラフトにより自身が希望する東京読売巨人軍にではなく、他球団が指名権を獲得した為に、両投手は、入団拒否を行使したのでした。これにより、ドラフト制度の根幹を揺るがし、その意義が問われました。しかし、ドラフト制度を運営、管理する立場にある日本プロ野球コミッショナーNPBは、協約の趣旨と目的を貫かなかった為に今日も尚グレーな状態をキャリーしているのは、ご存知の通りです。野球協約の趣旨、目的が貫かれないのでは、ルールブックと呼ばずダークブックと呼ばれても仕方ありません。

 この度の中日球団、及び岩瀬投手は、FA制度をリスペクトしない行為であり、此の行為をコミッショナーNPBが見て見ぬふりをするのであれば、嘗てのドラフト制度を蔑ろにした江川投手、菅野投手と東京読売巨人軍の行った行為を容認するに等しい行為と言わざるを得なと思います。これは、今後次なる協約破りが発生し、協約自身が骨抜きとなるのです。読者の皆さんは、どうお考えになりますか。

彼らは、自ら野球協約を遵守する立場にありながら、それを利害、利権を共有する両球団の間で違反し、その事実を隠蔽したと言われても仕方のない行為をしたのです。

 コミッショナー及びNPBの業務は何か:

 東京スポーツ新聞社の報道によりますと、NPBは、「当該球団から問題として提起されないので調査に動き出すのはおかしい」とのコメントを出しているようですが、これは、協約を発行し運営、管理を行う立場のコミッショナーNPBがコメントする内容としては誠にお粗末極まりないと思われます。コミッショナー及びNPBの職員は、どのような専門知識とスキルを持った人材が雇用されているのか、その能力の有無及び倫理規定を是非情報公開して頂きたいです。

NPBは、何故東京スポーツに掲載され報道されている内容が真実かどうか、同社及び、該当球団に能動的に回答を求めようとしないのか。何も行動を起こさない受動的な態度のNPBの姿勢は、法人としての業務放棄か職務怠慢以外の何ものでもないと考えられます。もし、東京スポーツの報道が事実でないなら、調査の結果としてそれなりの法的な措置、及びペナルテイーを科すべき事案であります。現時点では、当事者の当該球団がこの重大な問題に対する公式な見解を国民、社会、ファンに告知していない事も重大な職務怠慢であると考えられます。 

このままでは、NPB、並びにコミッショナーオフィスがおかしいだけでなく、NPBは、野球協約に対するプロトコールの役目も運営、管理責任も果たしていないのと同じです。協約の運営、管理は、何処の誰に責務があるのか。何故、コミッショナー権限で調査に入り、社会、ファンに対して情報を公開しないのか。何故特定のスポーツ紙のみで、他社は、話題にしない、或はできないのか。これは、まさに談合文化と呼ばれる日本の競技スポーツ組織・団体、機関の体質そのものであり、悪しき伝統に思えるのは私だけでしょうか。

本件は、何か問題を隠蔽しているように感じてなりません。初歩的な問題で、日本ハム球団は、最初に何故人的補償で岩瀬投手を指名した事を告知しなかったのか。秘密裏に中日と交渉する理由は、全く無かったはずです。或は、他に目的があったので蓋をしてテーブルの下の会話に持ち込んだのか。また中日球団は、日本ハム球団から人的補償で岩瀬投手が指名された事を告知する義務があったのです。

両球団により、この情報公開がなされなかった時点でコンプライアンス義務を果たしていない事を証明していると思います。NPBコミッショナーは、プロ野球機構が発行する協約の発行者として、国民、社会、ファンに事の次第を明快にする義務があると思います。

このような問題が生じた場合は、野球協約を運営、管理しているNPBが、事実の有無を問わず強制的に当該球団に対して事実の報告を要求し、選手側は、自身が所属する選手会を通じて自身の意思及び問題を速やかに提訴する、できるシステムを構築して置くべきです。これは、重要なベースボール・アドミニストレーションの基本の一つです。

NPB(日本プロ野球機構)は、大学箱根駅伝を主催する関東学生陸上競技連盟のような任意団体とは異なる事を再認識して頂き、プロフェッショナルな意識を持って業務に取り組んで頂けることを願う次第です。

 NPBの構造的問題とシステムの欠如:

このような状況下に於ける、コミッショナーNPBは、組織内にインフラクション・コミテイー(Infraction Committee)を設置していない事が問われていると思われます。インフラクション・コミテイー(特捜部門)は、本件のようなNPBに於ける協約・規則に該当する諸般の重要な案件、問題が発生した場合、或は、発生しそうな場合に置いてコミッショナー権限の下、本コミテイーに調査権限を委託し、短期間に的確な事実関係の資料、エビデンス(証拠)を収集し結論を導き出す、専門家集団なのです。NPBが本機関を設置しない根拠は、プロ野球界の談合文化を維持する事が関係球団の暗黙の総意なのかも知れません。

わが国のプロ野球機構(NPB)には、本機関をコミッショナーの直轄機関として設置していないので、ドラフト制度、FA制度、裏金問題、賭博問題、等々の重要な案件、問題が生じてもいつも結論が出ない、出さずにグレーのまま収束を迎えているのです。これらの談合手法を改めない限り日本のプロ野球界には、真のJUSTICE(正義)とFAIRNESS(公平・公正)を基軸としたプロフェッショナルな組織・団体は期待できないかも知れません。

現在のプロ野球選手会は、選手を代表する組織団体としての体を成していない、このような問題に対しても球団経営者側、NPB側とのパワーバランスが取れていない事も大きな問題であります。しかし、ファンの皆様は、自身の心に強い正義と公平・公正の意識を持たれ、強い発言権を得る事により、皆さんのプロ野球野球協約、そして真に必要なベースボール・アドミニストレーターコミッショナー)を変革できる事を忘れず、諦めないで下さい。此のままでの発展は、困難です。

共存共栄の原理原則は、プロ野球を支えるファンとその社会に還元される事が大事なのです。

 文責:河田弘道

ベースボール・アドミニストレーター

スポーツ・アドミニストレーター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

K'sファイルが関係者、関係機関、組織・団体、及び読者の皆さんに微力ながら問題提起となっていますなら幸いです。いつもながらの心強いご感想、書評を頂きまして感謝致しております。

K’sファイルNO.36:この度のFA問題は両球団の談合か PARTⅠ.無断転載禁止

K’sファイルNO.36:この度のFA問題は両球団の談合かPARTⅠ.

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1.プロ野球協約はお飾りか~

①問題の発端:

この度、特定のスポーツマスメデイア(東京スポーツ)が、日ハムファイターズの大野翔太選手の中日ドラゴンズへのFA移籍に関する問題を公表されました。しかし、このFA移籍に関する問題が事実であるなら、これは、日本プロ野球協約にとって重大な違反行為が行われています。しかし、他のスポーツマスメデイアは、口裏を合わせたかの如く話題にしないのは一体なぜでしょうか。仮にこの公表された内容が事実と異なるのであるならば、当然当該球団、当該選手からは、事実無根のクレームが東京スポーツ新聞社になされるべきであります。それが現時点ではなされていないという事は、問題を一層闇に引きずり込んでいると言えるのではないでしょうか。

此のことから、私は、本件は限りなく事実に近いと思いますが、他のスポーツメデイア、TVマスメデイアがこの重大な問題を取り扱わない事実が不思議でなりません。読者の皆さんは、不思議だと思いませんか。

K’sファイルでは、本件についてマスメデイアを通しての当該球団グループの複数のスポーツ紙、球団代表、球団本部長兼GM、監督のコメントが否定していない事から、本件の報道が事実である事を前提で述べさせて頂きますのでご理解とご了承下さい。

FAFree Agent)制度とは:

野球協約は競技規則外のルールブックの筈です。

FAフリーエージェント)制度は、「国内FA」と「海外FA」とに区別されます。国内FAは、NPB日本野球機構)所属の全ての球団と選手契約することができる権利を有する選手をいい、いずれの場合も一定のFA資格取得条件を満たす必要があります。

FA資格取得条件】

1)プロ入りして最初に出場登録(1軍に)されて、その1シーズン中の日数が145日を満たし、これが8シーズンに達した場合に国内FA資格を取得することができる。(一定の場合を除く。)

2)プロ入りして最初に出場登録されて、その1シーズン中の日数が145日を満たし、これが9シーズンに達した場合に海外FA資格を取得することができる。(以前に国内FAの権利を行使していた場合を除く。ただしその行使した選手が国内球団において1シーズン中の日数145日を満たし、これが4シーズンに達した場合には海外FA資格を取得することが できる。)

3)登録日数が145日に満たないシーズンがある場合には、それらの日数を全て合算して、その合計数を基に145日を1シーズンとして計算する。  ※登録日数はクライマックスシリーズ終了まで加算される  ※故障により日数が145日に満たない場合でも特例措置として60日まで加算することができる。(前年の出場登録が145日以上であることが条件)

FAの権利の行使】

FA資格選手は、その年の日本シリーズが終了した日の翌日から7日以内に(土・日・祭日を除く)在籍球団に対してFAの権利を行使することを表明することができる。権利を行使してFA宣言をした選手は、直前まで在籍していた球団を含め、いずれの球団とも選手契約の交渉をすることができる。

【選手契約とFA補償】

FA宣言をした選手がある球団と選手契約をする場合は、その選手の年俸は直前のシーズンの年俸を超えることはできないが、コミッショナーが認めるときは、直前のシーズンの年俸を超える金額で契約することができる。 またその選手を獲得した球団は、その選手の旧所属球団に対し、金銭補償及び選手を補償(人的補償)することとなる。ただし海外球団へ移籍する場合は、原則的に金銭補償・人的補償はない。 なお、その選手が初めてFAの権利を行使するか、あるいは複数回目の行使かで多少補償の内容が異なるが、ここでは選手が初めてFAの権利を行使した場合の補償について説明する。 FA宣言をした選手を旧所属球団におけるその年度の年俸に基づいて以下のようにABCのランク付けをする。  A 上位1位~3  B 上位4位~10  C 上位11位以下 選手(上記AまたはBに属する選手に限る。)がFA宣言をした場合には、獲得球団は旧所属球団に対し、次の(1)または(2)のいずれかの補償をする。(1)か(2)の選択は旧所属球団による。

1)選手による補償がある場合   

ア:選手による補償:旧所属球団は、獲得球団が示す選手(外国人選手及び任意に定めた選手(プロテクトされた選手)を除く。)の中か らFA宣言選手1名に付き各1名を獲得する事ができる。

イ:金銭による補償:旧所属球団は、獲得球団に対し、上記アの他、そのFA宣言した選手の年俸の金額に以下の割合を乗じた金額につき、金銭補償を求めることができる。   ①その選手がAランクに属する場合 50% ②その選手がBランクに属する場合40%

2)選手による補償がない場合   

旧所属球団が選手による補償を求めない場合には、獲得球団に対し、そのFA宣言した選手の年俸の金額に以下の割合を乗じた金額につき、金銭補償を求めることができる。   ①その選手がAランクに属する場合 80% ②その選手がBランクに属する場合60%

※なおFA宣言選手の旧所属球団から指名された選手は移籍を拒否することはできず、もし拒否すれば資格停止選手となる。ちなみにFA宣言した選手がCランクに属する場合には、旧所属球団は獲得球団からの補償は全くないこととなる。(以上NPB野球協約から引用)

 ③協約違反を犯した選手、球団へのペナルテイーは無いのか:

問題の視点は、FA資格を取得した大野翔太選手(日ハムF)がFA宣言し、それを受けた所属球団が同選手をFA宣言選手として登録しました。中日球団は、同選手を獲得する意思を表明。同選手の所属球団である日ハムは、金銭での譲渡を申し入れず中日球団に代替選手の譲渡(選手名を指名)を申し入れた。しかし、FA移籍譲渡交換選手に指名された岩瀬仁紀投手は、所属球団に対して「拒否」したという事です。上記野球協約上、選手に拒否権は与えられていません。それなのに何故、両球団は、金銭で譲渡したと告知したのでしょうか。

本件について客観的に申し上げると、中日球団は、日ハムへの代替選手リストに岩瀬投手を入れた時点で、同選手は、無条件で指名された球団に移籍しなければならないのです。今回の場合、岩瀬投手には、選択権は無く日ハムに行く義務があるのです。

同投手が拒否したのであるならば、中日球団は、即資格停止選手としてNPBに報告する義務があったのです。本件は、完全に岩瀬投手に協約違反が発生し、中日球団は、違反行為を隠ぺいした事になります。これは、まさにプロのベースボール・アドミニストレーターの不在とコンプライアンス違反を証明した事になったと思われます。

日本のプロ野球界とMLBのハッキリとした違いは、次回述べさせていただきます。しかし、どうか相撲協会のアドミニストレーションレベルにはなって欲しくないと願う次第です。

 

 文責:河田弘道

ベースボール・アドミニストレーター

スポーツ・アドミニストレーター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

*次回K'sファイルNO.37では、NPB(日本プロ野球機構)、コミッショナー、協約たるは、何の為にあるのか。をテーマとして予定しています。ハッキリと言わせて頂きますよ!

K’sファイル:NO.35 悪魔の囁きに屈したカヌー選手!無断転載禁止

K’sファイル:NO.35 悪魔の囁きに屈したカヌー選手!

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*筆者は、自身が直接的に関係した事案でありませんので、此処では、スポーツ・アドミニストレーターとしての視点で本件に付いて述べさせていただきます事をご了解下さい。

 

天が下さった貴重な競技人生は共にリスペクトする心が大事~

 1.カヌー競技の特徴:

この度事件が起きました競技スポーツのカヌーは、タイムを競い合う競技スポーツです。カヌー競技は、タイムで競い合う個人の身体能力と精神力が大きく勝敗に左右される特徴を持った競技といえます。勿論そこにはスキルもあります。また器械体操競技フィギュアスケートのように身体能力、精神力、スキル以外に美的要素が大きく加味され、審判の主観が勝敗を左右する個人競技スポーツとは区分されます。

 2. 本事件とは:

本件の経緯に付きましては、K'sファイルの読者の皆様は、マスメデイアを通して既にご承知の事と思います。そこで、此処では概略のみの紹介に留めますのでご了承下さい。

彼らは、常に代表を目指す為に常日頃から、切磋琢磨し互いに競い合いながら競技力を高め、最終ゴールであるオリンピック大会に出場し、メダルを獲得する事に心血を傾注しています。事件は、このような環境と状況下に於いて起きてしまったわけです。

 その主たる問題、要因は、限られたオリンピック代表枠争いの手段、方法が本来の競技によるものでなく、本件加害者は、代表権獲得の可能性が高い有望な若手選手の飲料水にオリンピックでは禁止薬物に指定されている薬物を混入したのです。その結果として、被害者選手は、レース終了後の薬物検査により陽性反応が認定され、暫定的に4年間の出場停止処分が科されたのです。このままでは、2020東京オリンピック出場の機会を失ってしまう事になった次第です。

その後、加害者は、自ら使用禁止薬物を被害者のペットボトルに混入した事を認め、本競技組織・団体に自らの意思でその事実を申し出たのです。

しかし、現在は、被害者が警察署に別の被害を含めた被害届を提出しており、警察はそれを受理、捜査が始まっています。本件を起こした加害者は、そこにどの様な個人的な問題、理由が有ったとしても許される行為でない事だけは確かです。

 3.故意と過失の違い:

加害者の自首、謝罪文が事実とするならば、本件は、加害者が「故意」に起こした事件で在り、「過失」には、当てはまらない重罪という事に成ります。

此処で、故意とは、一般的にはある行為が意図的なものであることを指し、刑法においては、「罪を犯す意思」(刑法381項)をいう。また、過失とは、「注意義務を怠る」あるいは、結果の回避が可能だったにもかかわらず、回避するための行為を怠ったことを指します。法律用語辞典~

 4.問題の本質はどこに:

本件は、スポーツ・アドミニストレーションの視点で申し上げるなら、事件を起こした選手は当然のことながら、まさに選手、競技を運営、管理する立場にある主催者、組織、団体の構造的な問題とシステムに不備がある事を露呈した事件であると思います。

このような緊張感のないアドミニストレーション手法を用いていては、今後さらなる事件、事態が起きるであろう事が想定されます。関係者の皆さんは、「日本人選手は分かっているので不正を行うはずがない」と達観した無責任な考えを持たず、「人は弱い心を持ち合わせて入るので常に不正が共存している」事を理解していたならば、未然に事件を防げたと思います。

起きる可能性を秘めた問題に対しては、見て見ぬふりするそれ自体が既に犯罪行為なのです。日本の競技スポーツの主催組織、関連団体に「Justice正義とFairness公平」の理念が根本的に欠落している事に何故気付き、正面から向き合わないのでしょうか。

私は、今回の事件の本質的な問題が選手の価値観のみならず、主催者の脇の甘さも大きな要因の一つと思わざるを得ません。如何でしょうか。

加害者が何故これほどまでのリスクを背負ってまで、本事件に手を染めたのかを慎重に分析、解明しなければならないと思われます。何故ならば、本件は、日本国内で同じような代表を争っている他の競技選手達の周辺でも、異なった手段と方法で起きている可能性を見逃してはならないからです。

加害者は、自らの努力の成果、結果を求めたのでなく、自身がライバルと目した選手を潰す為の手段として薬物を利用した、いわば競技者として相手をリスペクトする心の欠如から生じた知的犯罪行為と言えると思われます。

スポーツは、フェアープレーの精神でと宣う人達こそが、襟を正さなければならない張本人達なのかも知れないです。

私は、嘗てスポーツ医科学の米国の専門家からアドバイスされた事を本件で再び思い起こすに至りました。それは、当時日本人選手(アスリート)に、禁止薬物を使用しても生理学的にあまり成果と効果が期待できないと思うという話でした。そして「日本選手は、スポーツ医科学の専門知識にあまり興味を持たない。指導者達も精神主義的な指導を優先し、スポーツ医科学の知識が極端に不足している事がその大きな要因の一つ」、「将来、日本国内に於いて注目される競技スポーツの代表選手に成るには、直接的な薬物使用ではなく、知能犯的な不正行為が行われる可能性があると思われる」と今回の事件を予期したかのような内容でした。

5.トップアスリートの極限の心理と真相:

世界のトップ選手と指導者のみが味わう天国と地獄の閾値

①嘗て私は、指導者として、学生選手を全米大学選手権(NCAAチャンピン)に、さらに全米選手権チャンピンオンに、モントリオールオリンピック代表選手にと米国の大学で育てた経験があります。そこで選手、指導者双方共に極限のプレッシャーを体験しました。丁度、それは、全米選手権(代表最終選考会)当日の朝食後まもなくしてから、選手が激しい嘔吐を繰り返しました。私は、指導者として同選手と同じ食事を取り、同じペットボトルの飲料水を試飲して、同選手に与えるべきだったと悔やみました。このような異常事態の中で、同選手が最後に救いを求めたのは、試合直前のロッカールームでした。選手から、私に「コーチ、僕と一緒に神様に競技終了までお守り下さいとお祈りして下さい」と懇願され、彼は私の手を握り締め、膝をついてお祈りしたのです。

選手にとって、初めての全米選手権(最終選考会出場)で在り、それを全米大学チャンピオンとして強靱な身体と精神力を持って乗り切ってくれた次第です。結果は、1位通過でモントリオール大会へ。U.S.A.のキャプテンとして堂々と戦ってくれた事は、指導者にとっても特別な誇りと喜びでした。しかし、試合後も不可解な事が起きるので、私は、大学を代表した指導者、管理者として本大会主催者及び、大学に事後報告書を提出し調査を依頼しましたが、真相の解明には至りませんでした。しかし、私は、初めて米国のアスリートやコーチが、「他の競技スポーツに於いても」最後に心の拠り所として求めるのは「神様」であった事を体験した次第です。我々は、このような心の拠り所を持っているでしょうか。

②オリンピック競技大会の現場で起きている現実は、それは想像を絶する世界であり、それが偽らざる現実である事をご紹介します。嘗て、1988年のソウル五輪に於いて、男子100メートルの決勝でカナダのベン・ジョンソン選手が米国のカール・ルイス選手を破り金メダルを獲得、しかし、レース後のドーピング検査の結果、陽性反応が出たため金メダルを剥奪されました。レース終了翌朝の午前2時過ぎにIOCの医事委員会が緊急招集されました。丁度私は、スーパー陸上東京大会開催が近づいていたので組織委員の1人として、テレビクルーと一緒に会場近くのホテルに滞在中でした。私の部屋の電話がけたたましく鳴り響き、事態の一報が帯同していた日本の新聞記者から入ったのは、丁度午前2時前後でした。本件に付いての一報発信社は、韓国の東亜日報社であったと確か記憶しています。この時、日本の他のマスメデイア、オリンピック関係者は、知る由もありませんでした。

 私は、この一報を受けて即確認を入れたのが、ベン・ジョンソン側のコーチ、マネージャー、医師とカール・ルイス側のマネージャー、コーチ、医師、弁護士でした。電話受話器の向こう側から聞こえてくる音声は、両陣営の様子が修羅場と化していたことが容易に想像でき、今も鮮明に耳の奥に残っています。その時にベン・ジョンソン側は、大騒ぎになっており、競技場に置いてあったペットボトルに言及し、医事委員会へは誰かが薬物を混入したとまくし立てていました。その容疑弁明は、医事委員会の緊急呼び出しが早朝にあったが申し出は却下され、事件はその後カナダ陸連と米国陸連の非難中傷合戦にまでエスカレートしました。

彼らと日本人アスリートとの大きな違いは、彼らはプロで在り、プロ集団を常に抱えているため、金メダルと銀メダルでの評価価値がその後の彼らの生活に於いて、天国と地獄ほどの差である事です。詳しくは、またの機会にご紹介致します。

 まとめ

この度の事件は、仲間、友人を身勝手な手段と行動により犠牲にしてしまった行為は自らの禁止薬物使用とは異なる重大な問題である事を指導者、管理者がどれ程理解、認識し、受けとめているのか。この度の競技大会を主催した、主催者の運営、管理の甘さは、本事件を誘引する大きな要因の一つで在った事に違いないと思われます。レベルの高い競技になるほど、「性善説」は、通用しない事を関係者は心して置いて頂きたいと思います。

スポーツ・アドミニストレーションが確立していない、わが国に於いては、これから益々複雑、且つ巧妙化する現実を踏まえ、競技選手のみならず、競技スポーツに関係する全ての関係機関、関係者に対する規則、罰則を整備、明文化し、コンプライアンス教育、指導に国、社会、関係組織、機関全体が取り組み、実行する事がいま問われていると思います。

この事件は、我々にスポーツ医科学を悪用した新たな犯罪が我が国に於いて始まっている事への強い警鐘と捉え、次なる事件が表面化する前にこの度の事件を生きた教材として、各競技組織、団体は、類似する問題を抱えている事を肝に銘じて緊張感を持って、指導、改善、改革して行く事を切に願います。この事件は、氷山の一角であり本件を決して無駄にしてはなりません。

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレーター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

 *お知らせ:「箱根駅伝は誰の物」をテーマにしました、NO.29~33号は、全国各地から読後感が寄せられています。現在も尚読者が増え続けている事に対して、日本の大学競技スポーツの在り方の問題提起となっていますなら筆者としてこの上ない喜びです。