K'sファイルNO.68:緊急連載 体操ニッポンの危機  無断転載禁止

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K'sファイルNO.68:緊急連載 体操ニッポンの危機  無断転載禁止     

 =  緊急連載 体操ニッポンの危機= (最終回)

 

第四弾:国のスポーツ政策、施策の貧困

 注:NO.68は、宮川紗江選手が記者会見で発言した「体操クラブの引き抜き」問題を取り上げます。体操ニッポンを支えています男女代表選手達は、体操クラブ、体操教室の出身者達です。体操ニッポンの危機は、今回を持ちまして最終回とさせて頂きます。長くなりましたがご笑読下されば幸いです。

 1.体操ニッポンを支える民間体操クラブの現実

①この度の問題の整理

この度起きた選手からの管理者、指導者に対する不信感の根源は、塚原光男、千恵子夫妻が本件の管理責任者である事への不満と不信にあると筆者は、推測します。

何故ならば、選手および、選手の所属先、指導者コーチ、そして保護者は、選手強化・育成において利害関係の当事者であり、公益財団法人日本体操協会(略:JGA)は、これまでその利害関係者達への十分な配慮、気配りを成さずに伝統的な運営、指導、管理を遂行して来たのでないかと推察するからです。

優秀で手塩に掛けて育てて来た選手が他のクラブへ一方的に移籍する行為が今なお横行する状況下、所属先の指導者、経営、運営、管理者の怒りがこの度、宮川選手に本論の暴力、パワハラ事件に絡めて持ち出させたと筆者は、客観的に捉えています。此れに類似した問題は、体操クラブ間のみならず、体操クラブと大学教育機関との間に於いても長年大きな問題となっているのも事実です。

この程筆者が最初に感じた問題点は、代表選手を招集したナショナルトレーニングセンター(略:NTC)での合宿中に、コーチの暴力の有無を確認するため、18歳の宮川選手を部屋に呼び、同選手の個人コーチの暴力の有無の確認をする為に呼び出した事です。

本件の問題点は、選手が18歳の未成年者である事、同選手は保護者の管理管轄下である事、同選手には個人のコーチが帯同している事、また同選手には所属クラブ或はそれに類する所属組織、団体が在って体操協会への登録もなされていることです。そして、そこに役職は異なるとは言え、男女強化本部総括副会長の塚原光男氏が同席した事です。このシチュエーション(状況下)は、まさに宮川選手にとってはアンフェアー(不公正、不公平)だと感じられたのだと思います。

もしも塚原千恵子女子強化本部長が日体大での教職経験以外に、一般社会、企業での社会経験をされていたならば、このようなシチュエーションの下での面談設定はしなかったかと思われます。何故ならば、各代表選手は日本体操協会の私物ではなく、各所属体操クラブ、教育機関、等からの代表者でもある事を理解できるからです。よって、日本体操協会を代表する指導者、管理者は、各代表選手に対する指導、管理をフェアーな立ち位置で対処しなければならない基本原則がそこにはあるからです。

つまり、NTCで宮川選手への面談(事情聴取)を行うなら専務理事や、事務局長、等の協会担当者が同席し、まだ18歳の宮川選手の保護者も同席する事により、フェアネスのバランスが維持されるのです。このような事実からも公益財団法人日本体操協会の運営、指導、管理は、未熟(immature)と言われても仕方のない競技スポーツ・組織、団体でないかと苦言を呈させて頂きます。読者の皆さんのご意見は、如何でしょうか。

本件の問題の起点は、体操協会の男女強化本部の総括が塚原光男副会長であり、塚原千恵子女子強化本部長とはご夫婦である事、そして、両氏が民間の体操クラブの代表者である事がスポーツ・アドミニストレーションの視点から申し上げますと非常に難しい誤解を招く元凶になっていると思われます。 此処で再度申し上げますと、女子強化本部長に対して日本体操協会は、常務理事職以外に女子強化本部長への業務委託内容の詳細が情報公開されていない事は、今後も大きな禍根を残す事になるかも知れません。

その重要なポントは、組織に於いて運営、指導、管理している関係者は如何にして、選手を含めた関係者の「フェアネス(公平、公正)」を維持するか、出来るかなのです。此れが保たれなければ、次には、二つ目の大きな問題となる「コミュニケーション」が維持、発展しなくなるのです。本件は、その最たる問題の証しであります。

②民間の体操クラブの出現と伝統的な指導法

此処で少し、日本体操界の歴史に付いて見てみたいと思います。1964年の東京五輪を終え、1970年代中盤から後半に入ると、米国の選手の力が世界に向けて駆け上がり出します。日本の体操関係者は、米国の躍進の原因と原動力を知りたがり、日本との違いを取り入れようとそれまでのヨーロッパ特にドイツ、そしてソ連に向けていた目を米国へと移し、興味を持ち始めた時期でもありました。

我が国の器械体操の指導は、伝統的に学校体育の授業がその起点となって来ていました。日本の体操選手の育成、指導方法は、元来ドイツ方式に偏っていたそれまでの思考が米国の合理的な経営、運営、指導、管理方式を取り入れる柔軟な思考に興味を持ちだしたのです。その方向に行かざるを得ない国内事情もそこには存在し、大きな要因となったと筆者は理解する次第です。

これからの体操選手の育成、指導は、今迄のような学校体育に頼る体操選手の育成、指導法でなく、米国式の体操クラブの普及がこれからは大事である事に気づき始めたのです。これは、丁度日本国内の体育の教員の就活が厳しくなり出した事情にも大きく関係しており、教職課程を取り体操競技部を卒業した後クラブへの就職に興味を持ち始めた時代でもあったと思われます。

器械体操の選手指導は、伝統的に小学校からの学校体育に於いて、体育の先生、指導者によりマット、跳び箱運動、倒立指導、振動系の鉄棒運動から始まります。中学校、高校に於いて初めて体育の先生、指導者の中の器械体操のスキルを持った経験者により、課外活動である器械体操部として初心者、中級者、上級者へと段階的な指導を積み重ね、最終的には競技大会に出場する為の演技の構成、指導をして行く大変な指導とエネルギーを必要とする競技スポーツなのです。

日本に於ける器械体操競技は、伝統的に男子6種目(床、鞍馬、跳馬、吊輪、平行棒、鉄棒)、女子4種目(床、跳馬平均台段違い平行棒)の総合得点で競うオールラウンド(全種目出場)選手のみを器械体操選手と認められて来たのです。

体操競技者と指導者の底辺

今日の男女代表選手は民間クラブ出身者

指導者による指導の特徴は、子供達とマンツーマンの指導が不可欠である事です。特殊な器具の使用と指導者の補助(怪我防止、スキル向上の為)が必要不可欠で、特に女子は、男性指導者、補助者無くしては技術の向上、強化が難しいのも特徴の一つです。男女差がこれほど大きな競技スポーツは、珍しいかも知れません。現実的には、学校体育の授業が中心であった時代から時代と共に指導者が激減し、競技スポーツの多様化もあり、子供達が体操に対する興味を低下させ、器械体操人口の低下も招いています。

今日では、子供達が家で壁に向かって倒立をして身内に見せる光景が無くなったのも、学校教育の中で体育の先生が体操の指導をしていない、出来ない教員が大多数である証でもあるのです。このような学校教育の現状と環境から、これに伴い私的クラブ(体操教室、体操クラブ)の普及は、器械体操競技の経験者が私的クラブの経営、指導を始めるようになったのが我が国の体操クラブの始まりであると思います。今後将来に於いて体操ニッポンの伝統を維持する為には、競技スポーツと同時に伝統芸能文化として、国の直接的な保護とサポートが必要不可欠な時期に来たように思われます。

④民間体操クラブの現状と問題

現在は、全国に約288の体操クラブが経営、運営され一般財団法人全日本ジュニアー体操クラブ連盟に加盟し、其のうち約122のクラブが競技に参加しているのが現状と思います。これは、丁度今日の水泳クラブの経営、指導、運営、管理を小型化した組織、団体と評した方が理解し易いかと思われます。読者の皆さんは、このような現状を初めて知ったのでないでしょうか。

本体操クラブの大半は、民間による体操教室、体操クラブ、体操スクール、体操センター等の名称で呼ばれています。中には、地方自治体の支援を受け場所の提供を受けたり、器具、施設の貸し出しを受けたりしているクラブもある事も事実です。大多数のクラブ、教室では、個人の投資、或はスポンサーの広告宣伝の一環として、また、企業の地域社会への還元の一環として補助金を受け乍ら経営をしているのがクラブの経営状況です。しかし、これらもごくわずかな投資と申し上げて於くのが適切かと思います。

依って大半のクラブ、教室は、子供達の授業料が主な財源であり、施設の管理費、諸経費、人件費、事務、医療、傷害保険、等々からしますと経営の余裕は無く、負債を抱えての苦しい経営を強いられているクラブ、教室が多く増えているのが現実の様です。

オリンピック大会に必要な時は、文科省スポーツ庁JOC、競技スポーツ諸団体は、このような零細クラブにより育てられた選手に公金を投入して選手のみを利用する大人達が、我が国のスポーツ・アドミニストレーションを貧困化している最大の要因であります。競技スポーツの国策、施策を根幹から改善、改革して行かなければ現在の場当的な付け焼刃では、スポーツが文化として根付かないのです。

この様な現状に於いて、経営者、指導者は、幼児からの体操を通しての指導に情熱を注がれているのです。この環境から、ごくわずかな子供達が体操選手への道が開かれて、初級、中級、上級、そしてS級へとの階段を昇って行くのです。S級の選手が誕生したその小さな体操教室、体操クラブでは、クラブの子供達、指導者達、経営者、父母会、講演会の宝であり、スーパースター、そのクラブのヒーローなのです。

この様にして町の体操教室、体操クラブからマスメデイアでとりあげられる体操選手が出現しますとクラブ、その地域、教育機関、クラブメンバー達は、大きな夢を抱き、関係者にとりましても目標ができポジテイブなモチベーションとなり、計り知れない恩恵に関係者一同が味わい、預かるのです。

⑤体操クラブ間の移籍問題

上記のような環境と状態にあるローカルなヒーローがある日突然に、他の体操クラブへの移籍を申し出たら、今迄所属し、手塩に掛けて育てた指導者、経営者、管理者の心境は、怒りとなり多分一般の社会人であっても、此の怒りが如何ほどのものか推測されるのではないでしょうか。そしてまだ幼い子供である事からも、保護者を含めた大人の強い意思とそれに対する防衛本能がそこに働いている事は間違いのないことであります。

多分、この度の「体操クラブ引き抜き問題」を記者会見の後半に宮川選手が発言した真意は、暴力指導、パワハラ管理のテーマを補強する為のツールとして、宮川選手の会見原稿に加味したのも大人の知恵のような気がしてなりません。しかし、これは被害を受けたとする各体操クラブ関係者のストレスを宮川選手が自分に置き換えてチラッと大人が触れさせたのでないかと感じる次第です。

筆者は、このクラブ間の子供達の移籍問題の処理、解決が複雑で難しいとは思いません。強いて申し上げますと、このような問題があるにも関わらず関係する大人達が何もされて来なかった事が最大の問題であると思います。この問題に付いては、優秀なそのクラブのスター選手を他のクラブに移籍される事は何にも代えがたい事であり、その痛みは如何ほどのものかその立場に遭遇して初めて感じるものです。

一般財団法人全日本ジュニアー体操連盟(略:JJGF)は、その体操クラブの選手登録、クラブ登録をしている組織、団体であるはずです。そして、その連盟の上部団体は、公益財団法人日本体操協会であります。先ず、JJGFに大きな問題があると思われますJJGFは、何故加盟クラブ間に於ける選手の移籍に関する協定書(引き抜き防止協定書)を作成し、全加盟クラブの代表から同意の署名を取り共有しないのか加盟クラブから違反行為とみなされる申し出があれば、連盟は速やかに連盟が常設した調査委員会を招集し裁定を測り、違反行為とみなされた場合は、速やかに選手側、受け入れクラブに対してペナルテイーを与える事が必要且つ、組織としての責務であると思います。関係者は、何故この協定書を作ろうとしないのでしょうか。

このような組織、団体に於いて、連盟に明文化された協定書も無い状況である事を棚に上げて、TV、マスメデイアを利用して騒ぎ立てるのは、余りにもスポーツ・アドミニストレーションのレベルの低い人たちにより連盟、協会が運営、管理されている事を公言しているに等しいと思われます。運営、管理の最低限の知識と思考力のある人材の確保が先ず先決だと思いますが、如何でしょうか。

⑥民間クラブ選手を大学が勧誘する問題

クラブ間移籍問題は、JJGFの協定書の作成と実施が重要である事を述べました。しかし、クラブ選手の大学体操競技部への勧誘(リクルート活動)は、現在の日本の大学競技スポーツにはルールブックたるものが存在しない、いわば運営、管理に於いて無法地帯(Out of Law)同然な状態である事から、公益財団法人日本体操協会は、同法人傘下のクラブ組織、団体、大学組織、団体を翼下に持つ団体として、体操クラブと大学間に於ける「協定書」の作成と履行が急務であると思います。此処に於いても、双方は、「判っているだろう」の非現実的な考え方でなく、判らないから不平不満が山積する原因を作っている事を肝に銘ずる事です。

まとめ

本件を正攻法で解決する唯一の方法は、JJGFJGAに於いて「協定書」を作成し、それをオーソライズする事をお勧めします。

日本人は、「そんな事言わなくても判っているだろう、書き物にしなくても判っているだろう」と綺麗ごとで済まそうとする。解らない人がいる、また解っていてやる人達がいるのでこのような「引き抜きがある、ない」の不愉快な話題を持ち出すのです。

今日まで多くの体操クラブで「引き抜き」と思われる事件、不祥事があったのでしたら、それは大変遺憾でその痛みは何にも勝る損失と痛みであった事と思います。しかし、筆者が述べましたように協会、連盟主導で「協定書」を作成して加盟クラブ代表が同意していたなら全く心配なされる事も、弁護士に弁護士費用を払う事も無いと思います。一日も早く、関係者一同がポジテイブな協力と行動を起こして一歩前に前進する勇気と行動力に期待しております。

2.筆者の米国に於ける指導者としての経験

1970年代の米国大学体操競技界の動向

このころ、米国に於いては、個人の自由な興味と個性の表現を優先する指導理念から日本が固守するオールラウンド選手(男子:全6種目、女子:全4種目)以外にスペシャリスト(特定の種目のみ出場可)選手も器械体操選手と認められていたのです。

丁度、筆者は、1970年代米国の大学に於いて、スポーツ・アドミニストレイター(Athletic Departmentに於いて、フットボール、バスケットボール、野球、等)と器械体操テイームのコーチ、監督を兼務していました。このスペシャリストの存在には、唖然として驚いた事を強く記憶しております。

夏季休暇で日本に一時帰国する度に、野球、バスケ、バレーボール、アメリカンフットボール、等、及び文部省体育局長、関係者達との交流、特に男女体操指導者達に米国に於ける器械体操の事情、本スペシャリストの重要性、等を伝え諭して参りましたが、誰一人として聞く耳を持ちませんでした。そのリアクションは、日本は、オールラウンド選手だけが器械体操選手と認めている。米国のスペシャリストは、器械体操に於いて邪道であると反論し続けていました事を今も鮮明に私の記憶に残っております。

この当時までの日本の器械体操界は、何でもかんでもドイツの体操理念が全てと偏重していた時代でした。その方々の中には、遠藤幸雄氏、塚原光男氏、監物永三氏、塚原千恵子氏も居たことを鮮明に記憶しております。

しかし、読者の皆様もご存知の通り、今日の国内外の大会では、このスペシャリストの出場が国際体操競技連盟(略:FIG)の公認によりスペシャリスト無くして競技大会に出場出来なくなったのです。此の事からも日本の体操選手及び指導者達は、閉ざされた世界に閉じこもり大海に目を向けようとされなかった事をご紹介させて頂きます。このような問題を含め、協会内の権力闘争が一層激化して行った結果、長期に渡る日本男女体操界の衰退と低迷が続いたのも大きな原因の一つです。

余談話として

筆者が米国大学に在職していたころでした、日本大学が大学選手権で優勝されその記念に米国遠征をしたいとの申し出があり、小職は、快く大学の了解を得て、他大学と連携しながらホストする事と成りました。当時招待試合の後小職のアパートで遠藤幸雄氏、早田卓二氏、日大代表者の濱田大先輩氏と夜を徹して日本の体操界の学閥、体操協会の無意味な権力闘争に付きまして話題が尽きなかったのが昨日の様に思い出されます。その遠藤氏のご子息が、今は体操協会の常務理事をされている事をお聞きして、歳月の経過の速さに驚かされました。

筆者とNCAAチャンピオン、USAチャンピオンとの喜び

筆者は、日本の指導者に負けまいと当時米国の大学の体操選手(オールラウンド選手)を4年間略マンツーマンで生活指導から技術指導、スポーツ心理学、スポーツ医科学を導入しながら精神指導、等まで徹底した指導、管理を行いました。此の事から、選手と指導者の密な信頼関係の重要性と必要性は、痛い程理解し体験しております。

ラッキーにも同選手が4年生の卒業前の春、1976全米大学競技スポーツ協会主催(略:NCAA)の全米大学体操選手権大会に於いて、初出場ながら総合優勝を勝ち取り、筆者が最優秀コーチに選ばれました事が、それからの自らの人生の扉を開ける事になろうとは思いもよりませんでした(これは余談としてお聞きください)。

この時の勝因は、米国で初めて塚原光男氏の十八番であった、「月面宙返り=英:Half in Half Out Salt」を吊輪、鉄棒の降り(dismount)に取り入れ、着地を決めた事でした。全米にABC TV.ワイドワールドスポーツ・ネットワークのライブで同選手の演技と、努力は称えられました。

同選手は、その後の全米体操選手権に於いてもUSAチャンピオンに輝き、その秋の1976年カナダ、モントリオールオリンピック大会ではUSAの代表兼キャプテンとして無事責任と使命を果たしてくれました。選手と指導者の関係は、双方のリスペクトと信頼なくして成り立たない事を学び成長しました。そして同選手は、卒業後医学校に進学し、立派な医師として社会で活躍、貢献しています

この選手に憧れてその後世界的な選手が米国に続出、84年ロス五輪で輝かしい成果と結果を残し、米国はその後男女ともに世界に躍り出ました。残念ながら、現在の米国大学の男子体操競技は、NCAAの公認種目になっていますが、近年各大学の男子体操競技テイームが激減(約8大学)、消滅の危機に曝らされている事もご紹介致します。

小職は、当時暴力指導の必要性など一度も考えた事もありませんでしたし、暴力指導者に御目にかかった事もありませんでした。指導者、管理者は、常に個々の選手の能力に応じたテイーチングとコーチングを如何にしてポジテイブにバランスよく、個々の選手の得意な部分を如何にして導き出し発展させて挙げる事が出来るかが重要なキー指導ファクターであると確信しています。

米国に於いて、若しこの度のような暴力指導、パワハラ管理があったとするならば、被害者は、即司法に訴え、裁判で全ての真実が明かになると思います。しかし、この度のような暴力指導者に対して暴力を受けている被害者(未成年)及び保護者(両親)がその暴力を容認(肯定)したり、被害者選手でありながら暴力指導者を容認しているにも関わらず、パワハラ管理者に対しては、容認しないと訴えたりした場合は、正常な関係と常態とはみなされないと思われます。この場合は司法の判断に委ねる方向に導かれると思われます。そして、司法側は、専門家の個々に対するあらゆる専門鑑定がなされ、その結果を参考にして裁定が下るのでないかと推測致します。

筆者の素朴な疑問

この度の告発者の宮川選手(未成年)は、コーチから想像を絶する身体的な暴力を繰り返し受けながらも、恐怖心を覚えるどころか、両親共々その暴力を容認し、引き続き指導して欲しいと考える性格の持ち主でした。しかし、コーチ以外の塚原夫妻から受けた言葉に対しては「怖いと感じた」と容認できず、パワハラを主張しました。一般的に考えると、肉体的な暴力の方が恐怖心を覚えると思われますが、読者の皆さんは如何でしょうか。また、肉体的な暴力にさえ恐怖心を抱かない人物が、言葉で強く言われたから「怖いと思った」というのも何か釈然としません。この矛盾とギャップに対して、筆者は何処かこの宮川選手の告発発言は特異な他意があっての会見であったのでないかと推測したくなりますが、不自然でしょうか。

また今日は、何かとスポーツ組織、団体、大学教育機関に於いて不祥事、事件があると第三者委員会を設置する風潮が流行しているようですが、第三者員会は、裁判官でもなく、弁護士と言う資格を有する競技スポーツにご縁の無い方々です。弁護士と言う肩書でなければ第三者委員が務まらないという決まりは何処にもありません。また弁護士が全て信頼できるフェアーな人格者であるとは限りません。ただ、第三者の意見を求めて参考にするという事なのでしょうか。我々国民、社会、読者は、この第三者委員会のメンバーが最終的にどのような権限のある、誰が、何を基準にして選考しているか、したかの情報公開がいつもなされないところに危険性と疑念があり、鵜呑みに出来ないのです。皆さんは、どう感じられていますか。

このような習慣がまた新たな利権を生むような気がしてなりません。本件は、第三者委員会云々でなく、関係者は司法の手を借りて明らかにされた方が今後禍根を残さずにフェアーな判断がなされるのでないかと思われる次第です。老婆心ながら苦言を述べさせていただきます。

以上、筆者の器械体操との関わりについてこの場をお借りして初めて紹介させて頂きました。ご参考に成りましたら幸いです。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

お知らせ:体操ニッポンの危機は、四回に渡り掲載させていただきました。10月中旬に予定されています、第三者委員会の裁定が双方にとってフェアーで、将来性のある内容である事を切に願います。次回のK’sファイルは、読者の皆様のご要望のテーマを筆者が選択させて頂き掲載する予定です

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第三弾:管理者はトータルマネージメント力が必要

1.傲慢な指導法はコーチングに在らず

先ず初めに

この度の宮川紗江選手記者会見に於いて、日本体操協会副会長の塚原光男氏と女子強化本部長の塚原千恵子氏からパワハラを受けたとの申し出が、記者会見の後半に於いてなされました。

本件に付きましては、既に公益財団法人日本体操協会(略:JGA)は、第三者委員会(5名により構成)を設置し現在調査が開始されたと理解致しております。

三者委員会メンバー

委員長 岩井重一 元日本弁護士連合会副会長 東大卒

委 員 上田廣一 元東京高等検察庁検事長 明大卒

委 員 山崎 恒 元札幌高等裁判所長官 東大卒

委 員 伊井和彦 元日本弁護士連合会常務理事

委 員 松田純一 元東京弁護士会副会長 慶大卒

sファイルでは、宮川選手の指摘の塚原光男塚原千恵子両氏による宮川選手へのパワハラ行為の是非に付いては第三者委員会にお任せいたしたいと思います。筆者は、本件に関して自身の経験、体験を加味しながらスポーツ・アドミニストレイターの視点で述べさせていただきますので、読者の皆様には知識として役立てて頂ければ幸いです。

先ず初めに、パワハラとは、『「パワーハラスメントPower Harassment」の略です。意味は、職場の上司など権限を持つ者が、立場の弱い部下などに対して、力にものを言わせて無理難題を強要したり、私生活へ介入したり、ときには人権の侵害にあたるような嫌がらせを繰り返し行うことを言います。』日本語辞書より。

ハラスメントHarassmentとは、「英語では、苦しめること、悩ませること、迷惑の意」と解釈されています。

 

パワハラの定義

日本では、厚生労働省が以下の定義を定めている事を読者の皆様ももう一度文章でご確認下さい。

パワハラは法律で具体的に明記されていないものの、厚生労働省で以下のように定義されています。 職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます」。

この度の件に付きましては、第三者委員会の委員の方々が弁護士の方々ですが、法律では具体的に明記されていない事のため、主観も入る難しい判断を迫られると思われます。委員会の最終結論は、何を持って、どのような尺度で判断するかが大変興味深いポイントであると思われます。

筆者は、スポーツ・アドミニストレイターの立場から、TV、マスメデイアを通して得た報道資料を基に、解りやすく問題のポイントをお伝えできたらと思う次第です。

暴力に関して

先ず、読者の皆様は、近年やたらと暴力、体罰、セクハラ、パワハラアカハラ、等々の言葉がマスメデイアを通して、また、社会に於いてこのような言葉が日常茶飯事のように使われていることにお気付きかと思います。そこでこれらの言葉、真意に付いて筆者は、シンプルな視点で整理したいと思います。

本来、これらの用語は、此処では人に対する「暴力(Violence)」を意味し、暴力は、①精神的暴力(心理的強制力)と②身体的暴力(物理的強制力)とに区別する事が出来ると思います。

よって、此処で体操協会が発表した速見コーチに対する処罰は、②に対するものであります。片や、宮川選手が行った副会長、女子強化本部長に対する被害発言は、①に対する自身の主観を込めた内容が含まれている事も考慮しなければならないと思われます。②は、客観的な証拠があれば成立、処理できる問題です。

但し本件に於ける宮川選手と速見コーチの場合は、宮川選手が速見コーチの暴力を完全に容認しており、速見コーチと宮川選手との間(保護者同意の下か)で暴力指導を容認する約束事があるのであったなら、これは暴力の中に含まれる体罰が成立すると筆者は認識致します。近年語られる多くの体罰は、やる側やられる側に何の約束事も無い、唯の一方的な暴力であり、体罰と言う用語の適用は、殆どの場合は当てはまりません。

①は、証拠をどう証明するかが判断の基準となり、この手の問題は、難しく競技スポーツ、教育機関、等に於いても非常に難儀な問題であるのは万国共通です。

 

宮川選手は被害者なのか

被害を受けたとする宮川選手からの言い分を整理致します。

宮川選手は、会見の中で7月11日からのナショナルトレーニングセンター(略:NTC)での強化合宿中(詳しくは、15日)に、塚原副会長と塚原千恵子女子強化本部長に部屋に呼び出され、宮川選手個人の指導者である速見コーチの暴力の有無に付いて問い質された事が事の始まりであった。と理解します。

宮川選手は、「なかった」と断言、回答しています。後日、速見コーチは、暴力を認めた会見を自ら行った。これにより宮川選手の会見での回答との矛盾が生じたのです。

此処で、塚原副会長、塚原千恵子女子強化本部長は、既に速見コーチの身体的暴力指導に付いて、複数の指導者からも証言、確証を得ていたのだと思われます。此処では、被害者の宮川選手の口から直接証言を得たかったのが本音でしょう。

筆者は、本件の両氏の関わり方の第一歩に問題があったのでないかと思いますので、その問題、疑問を述べさせていただきます。

読者の皆様は、既にTV、マスメデイアを通して本件に関する双方の主張、発言、説明に付いてご存知と思いますので、此処ではそれらの経過、内容に付いては省略させて頂きます。

 

2.日本体操協会のミスリードの可能性

不明確な担当役員業務と責務

筆者は、塚原光男副会長、塚原千恵子女子強化委員長を擁護するつもりはありません事を先ず申し上げておきます。

本件に関して、宮川選手が副会長、女子強化本部長に彼女自身に対するパワハラがあったとする部分に付いて、スポーツ・アドミニストレイターとして述べさせていただきます。

日本体操協会において、塚原副会長は、協会の屋台骨であります男女強化本部を総括する筆頭副会長と位置付けられています。そして他二名の副会長の具志堅幸司氏は第二副会長、石崎朔子氏が第三副会長の序列になっていますが、これらはいずれも協会規約には明記されているわけではありません。塚原光男副会長は、協会により筆頭副会長としてオーソライズ(公認)され、会長代行と位置付けられているようです。また女子強化本部長として、塚原千恵子氏がオーソライズされているのであれば、協会からの業務委託書があってしかるべきです。委託書があれば、女子強化本部長の権限は明快です。

問題1.

協会の専務理事、事務局長は、この委託権限内容の明文化したものを記者会見で何故公開しなかったのでしょうか。この委託内容を公開すれば、塚原副会長の権限細部、女子強化本部長の権限細部が一目瞭然となり、この度の両氏の業務は、権限内であったか、越権行為であったかが判断できたはずです。

少なくとも日本体操協会は、文科省スポーツ庁)、内閣府オーソライズした公益財団法人であり、日本を代表する選手を選考し、指導者、管理者を任命し、重責を委託する組織、団体なのです。

日本体操協会は、その重責を担う筆頭副会長や、指導、運営、管理を行う担当女子強化本部長を任命するに当たり、依頼書、業務委託書、権限詳細の覚書か同意書が双方に寄って交されているのかどうかは大変重大なガバナンス及びコンプライアンスに関わる問題であります。

このような事務管理に必要な諸手続きが無かったとするならば、公益財団法人の組織、団体として運営、管理が正常に行われていないと断言できます。よって、日本体操協会は、組織、団体としての本質的な欠陥が全ての問題の元凶になっていると指摘されても仕方がないレベルなのかも知れません。

しかし、このような状況が事実とするならば、公益財団法人を監督する各府省庁(内閣府文科省スポーツ庁)は、何故迅速な行動を取らないのか。何の為に監督官庁があり、公金で生活されているのではないのでしょうか。各競技団体で毎日のようにスキャンダルが発生する度に、団体の責任者達は、監督官庁に「報告」に参り、監督官庁は「遺憾」に思います、と返答する事が彼らの業務なのかと呆れて言葉も出ません。これでは、小生でも務まります。此処に日本のスポーツ界のグレーな元凶があるのでメスを入れなければ、状況は好転しないと筆者は確信を持っております。読者の皆様は、そう思われませんでしょうか。 

問題2.

次なる大きな問題は、代表選手選考に関する選考方法は公示されている通りです。しかし、代表選手選考後にこの度のような問題が起こり得る事を想定しての準備、手順、規約、規定、罰則が明文化されているのかどうかが非常に疑問に思われます。

スポーツ・アドミニストレーションの基本は、「フェアネス」に在ります。協会には、この本質の基軸が無いのか、元来無いに等しい状態で運営、管理がなされているのでないかと疑念を抱きます。専務理事、女子強化本部長、事務局長が、最初に、取り行わなければならない事は、選考された代表選手及び選手が所属する体操クラブ及び教育機関と体操協会との間の約束事(契約書か、同意書)を結ぶ事が重要な協会の業務なのです。

何故ならば、今日に於いては、プロ選手もいる、未成年者、学生選手、学生選手でありながらプロの行為を行っている選手もいる事を忘れてはなりません。また、選手達は、体操協会の私物では無いのです。よって、約束事には、代表選手としての報酬、諸経費、帯同コーチへの報酬、諸経費、トレーナー、医師、保険、等の有無、各選手個人の指導者、コーチの処遇、存在の取り扱い方、合同練習時、試合時の業務分担、指導者の責務と範疇、その選手の最終指導責任者、等の詳細の項目に付いて、同意か否かを選考された選手、選手個々のコーチ、未成年選手には特に保護者同席の下、十分な説明をした上で契約、同意を得る事が重要な業務であり責務なのです。

このような作業手順を踏んでいたならこの度の宮川選手からのような問題も事前に双方でクリアーできたのです。このような手順を踏んでも尚、選手側、指導者側が不満であるなら協会側は、提示した以上の条件改善できない事を説明し、選手側に代表選手としての任をお断りするくらいの毅然とした態度と事務管理をされる事が望ましいと思います。

しかしながら、日本体操協会は、このような運営、管理がなされているのかどうか、マスメデイア記者から記者会見で体操協会側に質問、確認が無かったのは、プロのマスメデイア記者としての資質に少し寂しさも感じた次第です。

問題3.

塚原千恵子女子強化本部長は、何故宮川選手を呼んで速見コーチの暴力の有無を事情聴取した際に、本人、保護者の了解を得ずに録音記録を残し、後に公開したのでしょうか。これは、競技スポーツの運営、指導、管理者として選手に対するモラルに反する行為であったと本報道を耳にして最初に感じた次第です。

記録を残すほどの重要な案件であったなら、組織、団体としてその任にある専務理事、事務局長、或は、総務、広報委員長を同席させるべきであり、自身の夫であり、協会要職にある副会長を立ちあわせた事は公私混同と他意がある、との批判をされても仕方のない行動、行為であった思います。

また、本代表選手の合同合宿は、女子強化本部長が運営、指導、管理する事から、各選手へのアドバス、指導、個別面談には各担当コーチを同席させる事が常識です。もしこのような事が成されていなかったとするならば、同強化本部長は、朝日生命体操クラブの合宿と同じ感覚で代表選手、スタッフを考えており、二つの異なる組織、団体の運営、管理者としての区別、仕切りが自身に出来ていなかったと理解されます。よって、個々の選手、及び指導者、所属先に対する配慮は、管理責任者として不可欠なのです。此のあたりの認識が、非常に甘かったのではないかと思います。女子強化本部長としては、もう少しトータルマネージメントに必要不可欠なヒューマンスキルとコミュニケーションスキルの部分が得意でなかったのが残念に思う次第です。

まとめ

NO.67に於きましては、主に公益財団法人日本体操協会のアドミニストレーションの貧困と塚原光男副会長、塚原千恵子女子強化本部長に相手の立場、相手を気遣う心があれば防げたのでないかとの思いを述べさせていただきました。読者の皆様に於かれましては、何か見逃されている大事な項目が見つかりましたでしょうか。

TV、マスメデイアは、散々本件を食い散らかした揚げ句に、先出した善人、悪人のイメージをサブリミラル効果により国民に残したまま、次のスポーツスキャンダルを追っかけて立ち去ろうとしています。これも日本社会に於けるTV、マスメデイアの貧困を象徴する現象なのかも知れません。読者の皆様は、スポーツ・アドミニストレーションに基軸を置かれて、確りとした観察力、洞察力を持って、事の次第をご判断されますことを切に願う次第です。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

 お知らせ:次週は、本テーマの最終としまして、体操界のクラブ間の引き抜き問題、クラブと大学間の引き抜き問題をお伝えできたらと考えております。また、筆者が若かりし頃に経験しました米国での選手と指導の体験を紹介させて頂けたらと思います。

 

K'sファイルNO.66;緊急連載 体操ニッポンの危機 無断転載禁止 NO.2

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K'sファイルNO.66;緊急連載 体操ニッポンの危機  NO.2

             無断転載禁止

                             =緊急連載 体操ニッポンの危機=

 

NO.2

3.暴力指導者に関する筆者の素朴な疑問

本件に関しまして日本体操協会は、88日に懲罰委員会と称して特定の委員を招集し、その後同日に常務理事会を開いております。815日には、速見コーチに対して無期限の登録抹消処分を発表。8日の常務理事会は、公開されていませんが、漏れ聞こえてくる話では、両会議に於いて皆さん(常務理事)無関心を装っていたようで、塚原光男具志堅幸司両氏以外のもう一人の副会長、新体操代表の方は両会議欠席。此れもまた、無関心で無責任な1人なのかも知れません。

 副会長と速見コーチの関係

次なる疑問は、副会長の具志堅氏と速見コーチとの深い関係についてです。この関係についてマスメデイアを通して日体卒の体操関係者の誰もが述べていないのは、非常に不自然です。速見コーチは、日本体育大学体操競技部出身の卒業生です。彼らは、全てを知っていると思うのが自然でしょう。

具志堅氏は、日体大体操競技部に於いて速見学生選手を4年間特に手塩に掛けて指導した事は誰しもが認める事です。速見学生選手は、有望視された選手であったようです。その事からも具志堅氏は、日体大体操競技部と深い関係のある「徳洲会体操クラブ・元体操協会会長、徳田虎雄氏」に卒業後就活の世話までされた関係のようです。しかし、運悪く、手塩に掛けて育てた速見選手は、北京オリンピック代表選手に成れず現役を退いたようです。これは、指導力の問題であったのか、選手にそこまでの資質がなかったのか原因は不明です。

このような関係であればなおの事、具志堅氏は、この度の暴力問題に立たされている同コーチが、気が気でなかったのではと胸の内を察します。協会の副会長でもある具志堅氏は、何故同コーチの暴力指導を止められなかったのか。何かアドバス、指導をしてあげられなかったのか。速見コーチの指導経歴の紹介は、何故されなかったのか。今日は、SNSを通じてどんどんと速見コーチを知る古い関係者達が宮川選手との出会いから当時の状況を紹介しているようです。

81529日、30日とJGAの同コーチに関する記者会見、そしてその後の宮川選手の弁護士を従えての単独会見の後半に於いて、塚原夫妻にパワハラが有った旨(協会側からとして)の訴えがありました。この後、確か30日の体操協会二木会長との記者会見には、具志堅副会長が満を持したかのように同席会見されました。

この席での発言では、速見コーチとの関係に付いて、一切コメントをされませんでした。その後、具志堅副会長はマスメデイアに対して、塚原千恵子強化本部長は指導者として失格、との烙印を押され、マスメデイアを通して断言、告知しました。

本発言は、重大な故意の発言のように思えてならないのは筆者だけでしょうか。

何故ならば、二木会長、具志堅副会長、山本専務理事、複数の常務理事、渡辺事務局長が中心になり、第三者委員会を設置、その裁定を仰ぐ事を承認しているのです。第三者委員会の選考の発表前に、何故具志堅副会長自ら、塚原千恵子女子強化本部長に対し、指導者として失格の烙印を押す必要性が何処にあったのか。これは、軽率で済ませる言動でありません、特に同氏の社会的地位を考えるとこのような思慮、分別で大学でも学生達を教育しているかと思うと絶句してしまいました。しかし、ご本人は、何も感じていないようです。

これは、塚原千恵子氏、宮川選手、双方に対してもフェアーでなく、副会長が述べる言葉では在りません。この発言は、既に第三者委員会のメンバーの耳にマスメデイアを通じて入り、具志堅副会長が断言した。との情報がインプットされたことの重大性を本人は、理解できない筈がありません。これは大変な確信犯となり、禍根を残すと考えられます。具志堅幸司氏は、体操協会副会長、日本体育大学学長として余りにもTPOを弁えない人物なのでしょうか。

また、会見では、「18歳の宮川選手が嘘はつかない」とも断言しています。

18歳の人間は、嘘つかないとは何処からそんな論理が彼には成り立つのでしょうか。此の事も最高学府の教育者として、学長として何とも思慮の浅い人物と見られても仕方ない発言でした。日本体育大学教授会は、このような人物を大学学長に推薦し、大学法人は、任命したのかと思うにつけ考えさせられます。

その後、先日具志堅氏は、速見コーチとの師弟関係に付いてマスメデイアを通して述べたと伺っています。重要なポイントは、具志堅氏は、それまで無関心を装いながら何故、女子強化本部長への宮川選手からのパワハラ問題(協会側として)の提起が有り、体操協会内、世論、マスコミの状況に変化が生まれた後に、速見コーチとの師弟関係を公表したのか。これらは、筆者の素朴な疑問であります。

具志堅幸司氏を次の日本体操協会の会長にと既に画策している人物がいる事を知り、本権力闘争は、此のままではエンドレスのようです。

 

4.余談話として

筆者は、具志堅副会長を擁護するわけではありません。

このような副会長は、重責を担う日本体操協会に於いて、この度のような問題を処理するのが不得手なタイプなのかも知れません。本業に火が付いている事から本来なら体操協会の暴力、ハラスメントどころの騒ぎではない筈です。

何故ならば、同氏が学長を務める日本体育大学は、本K'sファイルで既に何度かご紹介しましたが、年間に700件近い暴力(セクハラ、パワハラ、喧嘩、窃盗、脅迫、強姦、等々)事件が多発している大学であると嘗て新聞朝刊に紹介され、それを認めております。本件数から割り出しますと毎日、2件、キャンパスの何処かで発生している割合になります。これらは、学生達だけではありません。教員で逮捕者も出ていますし、職員にもいるようです。

もうすでに、今週は、次なる暴力事件として大学箱根駅伝の監督による不祥事、事件が週刊誌で取り沙汰され始めています。本駅伝指導者は、読者の皆様の御記憶にある県立豊川工業高校駅伝部に於いて、暴力指導の常習教員であり懲戒解雇されてまもなく、日本体育大学の経営者、大学管理者が、大学の教員、指導者として雇用した人物です。そして、この人物は、20153月に大学に就任と同時に練習後の選手に暴力を振るって大問題を起こしたようですが、大学経営者、管理者に守られ、弱い立場の若手コーチ達、優秀で実績のある学生選手達がスケープゴート化され、深い傷を負わされて大学を去ったようです。大学法人日本体育大学とは、いったいどんな経営者、管理者によって教育、指導、管理がなされている大学なのでしょうか。具志堅氏は、その教学の最高責任者であり、経営陣のトップの1人でもあるのです。

一案として、TVマスメデイアは、日本体育大学にワイドショースタジオを常設されたらソースに事欠かないし、製作費のコストカットにもなるのでないでしょうか。しかし、TVマスメデイアが日体大に何故か目を向けようとしないで、美化しようとする理由は、何なのか。これもまた、寂しい話です。

このような大学で日々忙殺されているはずであっても、具志堅氏は、この度の速見コーチの暴力指導の有無に付いても、同コーチの指導者としての資質も指導力も知り尽くしている事と思われます。それを承知で今迄無関心を装い、塚原夫妻が窮地に立たされ、風向きが変化したとたんに突然前面に出て来て、塚原千恵子強化本部長に指導者失格の烙印を自らの口から公共の場で行った。その重さをどれほど認識されているのでしょうか。具志堅氏は、常に自分は教育者であり、体操界では、オリンピック総合金メダリストと自慢している人物です。

筆者の私見

「具志堅さん、覚えていますか。貴殿は、仲間達と会合を持ち小生を招いて下さり、私の前で正座して涙ながらに、先生教えて下さい僕と監物先生は、何方が偉いですか。僕はオリンピック総合金です監物先生は、世界選手権総合金ですと当時監物永三氏が副学長の時にあなたは、私に裁定を求めました。あの時既に貴殿と監物氏が学生時代から不仲であった事は、伝え聞いておりました。その理由は、学生時代から陰湿ないじめ(現在のパワハラ行為)を受けていたとの事を涙ながらに私に訴え、答えを求めた夜の事を。私は、貴殿の教育者として、人としての本質に触れる事になりました。貴殿には、「具志堅さん、人の評価、価値観は、大会、メダルの色で判断するもので在りません。それは、別問題ですよ、と諭しましたですね。忘れてしまったのですか。当時のあなたの仲間達は、皆貴大学の教授で在籍しています。彼らにもう一度確認してみたら如何ですか。人の評価、価値観に付いて、あなたは、まだ理解できていないのが残念です。肩書は、人を作るとは行かなかったのでしょうか。

この度の体操協会の副会長として、日本体育大学長として、教育者として、見識のあるべき貴殿が、大先輩で日本体操界の為にバランテイアーとして多大な貢献をされている塚原千恵子女子強化本部長に対して公共の場で、「指導者として失格」の烙印を押した事は、即あなた自身、協会副会長として、日本体育大学の学長として、器械体操のオーソリテイーとしての見識と教育者、指導者としての「失格」の烙印を自らの額に焼き印を押したに等しいと私は思います。誠に残念な事です。

勿論、塚原千恵子女子強化本部長には、沢山の功と罪の罪もあります。その事は、次回のパワハラ問題で取り上げる予定にしています。先ずは、貴殿の大学の山積された暴力問題の処理、改善が先決ではないのでしょうか。

スポーツ、競技スポーツ、体育界での教員、指導者の暴力問題の多くは、日本体育大学の教育、指導の欠落から発し、国民、社会、教育界に多大な不信とご迷惑を与えている現実と事実に正対して勇気を持って取り組まれて下さい。

貴殿の大学内の暴力を起こしている学生、学生選手、教員、指導者に先ず「失格の烙印を押し、勇気ある学長としての決断とその処理」をしては如何でしょうか。貴殿は、大学学長として法人経営者でもあり、文科省から認められた1号理事であり、発言力、決断力を備えているのをご存知でないのですか。貴殿だけでも、誠実で、クリーンな日本体育大学の経営理事で在って欲しいと願っています。体操協会の副会長の重責を兼務する時間もエネルギーも貴殿には、無い筈です。

この事を肝に銘じて一人でも多く社会で貢献できる学生達を輩出して下さる事をお願いします。K'sファイルの日大問題で貴殿の大学に問題が飛び火する事は、時間の問題と記しましたファイルを読まれていますか。大学の広報室には、送ってありますのでご参考にされて下さい。老婆心ながら申し添えさせて頂きました。

まとめ

これらの疑問からも、速見コーチの暴力事件と宮川選手のパワハラの発言は、リンクしていないと言い切れないのは、個々の関係がスッキリしないからです。もしかして、一連のシナリオは、あるシナリオライターにより描かれているような気がするのは不合理解釈かも知れません。

まだ若く社会経験も乏しい18歳の宮川選手にプロ宣言までさせて、あのような原稿を作成して読み上げる事は、非常に不自然な様子が伺えます。また、会見では、未成年の宮川選手の保護責任者として保護者が同席されなかったのも非常に考えさせられました。宮川選手は、既にプロ選手のようですが、プロとしての意味と自覚が理解できていない様に思えてなりません。

宮川選手の立ち位置と記者会見は、大人達の神輿に担がれていない事を切に願う次第です。本当に不敏でなりません。

此れも時間と共に真相が明らかになるのでしょうか。何はさておき、宮川選手は、心と身体の健康を取り戻される事が今現在の最大の課題と問題なのだと思われます。オリンピック最終予選会場に笑顔の宮川選手の姿を待っています。

2弾を爽やかなエンデイングで結べませんでした事をお詫びいたします。

 

時事の動向:

1.速見コーチの謝罪会見がありました。暴力の存在を認めました。

2.第三者委員会の5名のメンバーが決定した。メンバーの選考は、公益財団法人日本

       体操協会によるものです。

3.具志堅副会長が、塚原千恵子女子強化本部長を「指導者失格」と断定した。

4.第三者委員会委員長の岩井氏に対して、朝日生命と関係あるのでは、とのクレーム

       が宮川選手の弁護士からありました。岩井氏は、それを否定。

5.速見コーチと宮川選手の間での暴力現場の映像が公開されました。視聴者は、衝撃

       を受けているようです。社会は、それほど競技スポーツ界の暴力の現場、迫力をご

       存知でなかった証です。此処で今迄のマスメデイアの流れに、少し変化の兆しを見

       せている。

6.塚原光男副会長、塚原千恵子女子強化本部長に対して、協会は、職務一時停止を告

        知した。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

 お知らせ:NO.67は、塚原千恵子女子強化本部長へのパワハラ問題に付いて述べさせていただきます。スポーツ・アドミニストレーションからの視点では、どのように理解し、どのようにするべきか、マスメデイアからの情報を基に述べたいと予定しております。

 

K'sファイルNO.66;緊急連載 体操ニッポンの危機 無断転載禁止

K'sファイルNO.66;緊急連載 体操ニッポンの危機

           無断転載禁止

                     =緊急連載 体操ニッポンの危機=

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読者の皆様へ:

第二弾は、皆様に少しでも詳しく正確に理解して頂けたらと、資料の提供が多く成りました。そこで、第二弾の投稿をNO.1、NO.2として掲載させて頂きます。テーマを大きく4つに分けましたので、各テーマを1,2,3、4と順にコーヒーブレイク・タイムにでもご興味がございましたらご笑読下されば幸いです。次週掲載予定のパワハラ問題に付いての理解に役立てばと願う次第です。

NO.1

第二弾:日本体操協会女子強化本部の事件と問題

1.暴力指導者への対応、執行部、常務理事会、理事会

TV・マスメデイア報道の使命とは何なの

読者の皆様の視線は、現時点で「指導者の暴力事件」から「協会管理者によるパワハラ問題」、そして今や既に話題が「体操クラブ間の引き抜き問題へ」と急速なスピードでTVのワイドショー番組の視聴率最優先の為か、話題ばかりを先行させており、真相と深層がラップされているように感じてなりませんが如何でしょうか。

報道によるシナリオの殆どは、善人と悪人を先ず決め、それらに必要な裏付け材料を仕入れる為の手段として、TV業界で顔が売れた体操関係者達からネガテイブキャンペーンを導き出し、芸能タレント諸氏を雛壇に迎えて面白可笑しく騒いで頂き、スポーツジャーナリストと称する諸氏、弁護士資格を有するタレント弁護士に意見を述べて頂き、シナリオの正当性を視聴者にアピールするという番組構成を公共の電波を通して毎日繰り返し流すパターンの様です。しかし、今日では、段々とおしゃべりした方々の舌が乾かない前に整合性が取れなくなり出した、哀れなジャーナリストさん達、体操関係者の資質がこれまたマスメデイアを通して視聴者に伝わって参ります。

この方程式は、番組視聴者が知らない間にサブリミラル効果によく似た効果が、電波により受像機を通して、皆さんの知覚神経を刺激し、洗脳を受けている事に視聴者は気付かないのかもしれません。多分皆さんの脳裏には、既に宮川紗江選手は善玉で、塚原光男、千恵子夫妻は、悪玉との残像が刷り込まれ潜在意識の中に取り込まれているのでないでしょうか。

ここに出演している方々は、皆さん有給であり、この方々から優柔不断な発言が、直接的な関係者、ご家族、間接的な未成年者及び社会に不安と疑念をもたらせているとは思いませんか。このような事態は、いま何でもかんでもハラスメントにするマスメデイアもハラスメント、暴力に当たるのでないかと危惧するのは、筆者だけでない筈です。

出演しサポートする体操関係者達の真の目的は、何なのでしょうか。出演料?存在感?恨み節?ゼラシー?自身のプロモーション活動?シナリオライターの代弁者?或は、2020年の東京五輪体操利権を得たいとの思いからか、次から次へと後始末もしないでパナシ状態のネガテイブプキャンペーンをTVマスメデイアもさせ放題の始末です。根拠もない発言には、今後責任が伴う事を是非理解して頂きたいと思います。

 JGAの運営・管理能力は

公益財団法人日本体操協会(略:JGA)の存在意義は、果して何処に何の為にあるのかとふと疑念を持つ次第です。筆者は、この暴力指導者問題は、速見コーチの謝罪会見で終了した訳でないと思います。

本件の展開をマスメデイアの報道を通して拝見していますと何故かシナリオライターがそこに居て、日大アメフト問題を参考に、描かれたシナリオが脳裏に浮んでくるのは、筆者だけでしょうか。

善人役を演じている宮川選手は、まだ18歳で未成年者です。彼女のこれからの長い人生を鑑みますと、大人達の利害、利権、私欲に巻き込まれる事無く、心身の健康を先ず何よりも取り戻して、健康的な笑顔で日々生活して頂きたいと心より願う次第です。

基本的に本件の暴力コーチ不祥事、事件と指導管理者による選手へのパワハラ問題は、二つの異なる問題として捉えるべきか、リンクした問題と考えるのかがキーポイントでないかと考えます。後のクラブ間の引き抜き云々は、宮川選手側及び体操関係者が塚原夫妻のパワハラ問題の心証を悪くさせるための後だし案件であり、この度の問題は、先の二件であると確信しています。そして、 18歳の宮川選手の記者会見は、大人が描いた原稿を宮川さんが読み上げ、宮川さん自身の誠実な言葉ではない、と視聴者として感じた次第です。日大のアメフト選手でした、宮川さんの記者会見では、彼の誠実で正直さが大変印象的でしたが、体操選手の宮川さんからは、誰かに言わされている感じがしてならない会見であったと筆者は感じました。

暴力指導の根絶は、日本体操協会が掲げるテーマの大前提の一つとして推進して来ている事は、選手、指導者、関係者の知るところであります。よって、この度は、体操協会の専務理事、及び事務局長が中心と成り、本件の問題に対する最終結論を出し、記者会見の場で8152930日に公表されたのだと思われます。勿論、本件は、重大な協会の規範を犯している事から結論に至るまでの調査、手順を踏んだうえでの記者会見の運びであったと推測します。

本暴力指導に対して協会執行部、理事会は、違反行為の事実、証拠を下に臨時理事会、常務理事会を招集して、会長以下3名の副会長(2名は器械体操出身者、1名は新体操代表者)、常務理事、理事への承認を得ての当該コーチの処分、処置に至ったと理解するのが妥当です。

しかし、このような手順を踏まないで(数名の協会執行部のみでの)速見コーチへの対応であったとするならば、これは、スポーツ・アドミニストレーションの視点から重大な手落ちが有ったのでないかと指摘されても仕方ありません。事実は、どうであったのでしょうか。記者会見では、この部分の手続き説明が不足だったように思われます。

本件に関して、記者会見の要旨がマスメデイアを通して報道されましたが、筆者は、その内容を知り「暴力指導を頻繁に起こしていたとされる速見コーチに対して、暴力を確認した筈の女子強化本部、及び協会執行部は、迅速に常務理事会及び理事会に於いて本指導者の問題を提起し、十分な論議がなされたのか否かの説明が不足しておりました。論議されたのであれば、今後どうするかの結論があってしかるべきです。いずれにしても、どれ程の回数、本コーチへの注意、警告、を含めた指導は、誰に寄ってどれ程の期間成されたのか。そしてその結果報告が専務理事の会見では全くなされていなかった事は何故なのでしょうか」これは、本件の重要なポイントの一つでもあります。読者の皆さんは、不思議に思われませんでしたか。

この注意、警告、指導がなされていたなら、若しかして指導者は気付き、「此のまま改めなければ幼い時から手塩に掛けて指導、育成している宮川選手に今後指導ができなくなるかもしれない、リスクが高くなる」との事に気付くのが社会人として、指導者として普通の感覚です。そこで、暴力はストップしたかも知れません。協会側にこの指導者への指導、注意、警告をする勇気と情熱があったなら、宮川選手をこのような状態まで放置していなかったと確信します。

もし協会側がこの注意、警告、指導を行っても、速見コーチがその指導に従わなかったのであれば、これは確信犯で同コーチに他意が有ったのでないかとの疑念が残ります。或いは、速見コーチの指導の根幹には、暴力ありきで、宮川選手がこの指導法に幼いころから順応してしまった異質な状態と関係であると考えられるべき問題です。宮川選手のご両親は、保護者として我が娘を此処まで追い込む必要があったのでしょうか。この事に付いては、協会の渉外担当責任者は、宮川選手の両親に会い、確認して報告書を提出していたのかどうかも重要です。もし、この作業を行っていなかったなら、協会にマネージメント及び思考力のある人間、人材がいないという証です。

このような疑念を払拭する事も無く、協会専務は、本件に付いて記者会見を行い情報公開も説明も無く、いきなり社会に対して速見コーチへの処分とペナルテイーを発表したのです。これは、公益法人の運営、管理者として少し乱暴すぎませんか。これに対して、速見コーチは協会の対応を不服として提訴しましたが、何故かあっさりと後日取り下げ本人自ら会見を開き、暴力の事実を認め謝罪をしました。この処置は、次なるステージへの露払いであったのかと疑念が残るのは、筆者だけでしょうか。

此処で本来であれば、速見コーチ本人が長期に渡る宮川選手への暴力を認めたことにより、協会の専務理事、事務局長は、毅然とした態度で最終結論を導き出し、理事会での決定事項を明文化し、会見を持って公開するのが公益財団法人の専務理事、事務局長の職責、責務であったと思われます。

2.公益財団法人日本体操協会の組織と人材の問題

構造と組織はその体に在らず

我が国の競技団体には、ガバナンス、コンプライアンスが問題である云々を述べる以前のレベルの問題が山積しています。それは、ルール、罰則規定も明文化されていない状態です。競技スポーツの世界には、談合文化は不要です。ガバナンスという言葉をただ格好いい英語用語だからと使用する人達は、ガバナンスの真の意味が理解できていない方なのかもしれません。

本法人団体である日本体操協会は、四つの異なるカテゴリーの団体により構成されています。それらは、器械体操、新体操、トランポリン、一般体操(旧:徒手体操と呼ばれていた、この種目は、一般にヨーロッパを中心に広く人気のある種目で競技性は無く、日本に於いては、あまり良く知られていない、日体大の体操部の活動のみか。例:ラジオ体操、等)です。

体操協会の組織・団体をスポーツ・アドミニストレーションの視点から拝見、意見させて頂きます。

体操協会の最大の問題は、組織としての体を成していない事が一目で判ります。専任実務者が事務局長1名である事。そして、事務局長のみ有給者です。他の全重要職責、責務を担う役員は、本業を持ち片手間で体操協会の役職、業務を行っている、いわば全員がバランテイアー活動としての性格が濃い団体なのです。

このような状態で協会の業務に心血を注いでいる複数の現場を預かる担当役員達に対して如何ほどの責任を問えるのか。いつ辞めてもその責任を問われる筋合いではないという事です。

協会は、競技スポーツを事業(ビジネス)として、今後展開して行かなければこのようなバランテイアー団体から抜け出せない事を誰も発想しないのか、出来ないのか。このような足の引っ張り合い、マイナーな権力闘争に明け暮れる時間とエネルギーを持っているのなら、もっと発展的な問題にエネルギーを傾注しては如何でしょうか。

そして、大多数の担当役員諸氏は、教員で在り、協会の職務は、プロではないことを読者の皆様、マスメデイアの視聴者の皆さんは承知の上で批判、批評をされているのでしょうか。

今日の体操協会の選手登録メンバーの中には、内村航平選手、白井健三選手(学生プロ。CM等に出演体操選手として生活の糧を得ている選手を協会、学連、大学が許可しているかどうかは、どの組織も許認可の発表をしていないので不明)のほか、宮川選手のような未成年のプロもおり、一方でプロを宣言する指導者も増えています。

その登録者達を運営、管理する立場のJGAで重要な役職である筈の専務理事は、器械体操出身者でありません、また専務職に在りながら本業の勤務地が大阪にあり、大阪から通勤しているという異常な状態を誰もが問題視しないこともまた不思議なことであり、誰が最重要な専務理事を推薦、任命したのか、この辺りに協会の闇がありそうな気がしてなりません。我々は、この部分を見過ごしていませんでしょうか。

会長職に興味を持つ方々の多くは、実業家で、協会内部からは財力がある方が好まれるようです。その理由は、協会の役員リストをご覧いただくと推測できると思われます。

二木会長は、新体操のスポンサーであるイオン企業からであり、イオンは、新体操のスポンサーでもあります。会長就任と共にイオンから連れて来られたのが前専務理事の渡辺守成氏です。渡辺氏は、新体操出身者で、現在は、国際体操連盟(略:FIG)の会長に就任され、体操界の七不思議とされている人物でもあるようです。現専務理事の山本宜史氏は、トランポリン出身者でこれまたイオンから来られた方のようです。何か会長は他に理由があってか、最重要職に器械体操出身者を避けて、前回は新体操から、そして今回はトランポリンから子飼い(イオン)を専務職に就任させています。

要するに、この日本体操協会の要となっているのは、体操ニッポンを支えている器械体操の筈なのですが、このように協会の実務を仕切る人間は大阪からの通いであっても、器械体操出身者でない。しかも事務局長も、器械体操とは無縁な方です。このような布陣でこの度のような危機管理が出来るとは、物理的にも専門知識からしても難しいと思うのは、自然でしょう。即ち、本協会には、求心力のあるリーダーが不在なのです。器械体操出身者には、人物がいないと判断されているのかも知れません。

塚原夫妻の本業は、体操クラブ経営、指導、運営、管理の代表者であり、協会の役職、責務が類似している事もあり、他の関係役員からしますと、やりたいんだからやらせておけば、それが俺たちにも好都合と言わんばかりにこの程の問題にしても、長きにわたり皆が無関心を装ってきた根子が此処に透けて見えてくる思いもします。

次に一例をご紹介致しますと2014年迄長年常務理事まで駆け上がってきた女性役員が居ました。彼女は、何と日本体育大学卒のダンス部出身(自称)で日本体操協会の技術委員長を歴任し、国際体操連盟の技術委員にまでなった女性常務理事が長期に渡り存在したのです。何処でいつ器械体操の専門技術を習得し、天下の日本体操協会の技術委員長になれたのでしょう。余程、何か深い事情が無い限り、これほどまで図々しい人物は、存じ上げません。そして、また上部団体の国際体操連盟の技術委員にまで、どんな手口で誰が推薦されたのか不思議な世界なのです。国際連盟日本体操協会も大した人材がいない証しでしょうか。この女性は、協会関係者の中では「体操協会の女帝」と崇められていたそうです。

本当にこの協会組織は、何か特別な物をお持ちの人には従い、好きなポジションが強奪できる組織の様です。また、この女性常務理事に協会の多くの役員が、伝統的に私的にお世話になっていたのも事実の様です。困った、公益財団法人でもあるのです。

文科省スポーツ庁)、内閣府は、何の精査、監査もしないで公益財団法人の許認可を与えるのが間違いを引き起こす基です。私大学への許認可同様です。

しかし、このような問題人事を起案したのは前専務理事(イオン元社員)の意思が強く働いているのかも知れません。

こんな責任の所在の無い公益財団法人では、体操ニッポンを正常な組織、団体として経営、運営、管理して行く事が難しい事は以下の役員名簿リストから一目瞭然であると思います。ご参考までに。

公益財団法人 日本体操協会(略:JGA)役員名簿:

会長 二木英徳氏、ジャスコ(現イオン)元社長、イオン最高顧問、東大卒

副会長 塚原光男「器械体操出身」、日本体育大学卒、朝日生命体操クラブ代表

副会長 具志堅幸司「器械体操出身」、日本体育大学卒、日体大学長

副会長 石崎朔子(新体操出身)日女子体育大学卒、日女体大学長

専務理事 山本宜史(トランポリン出身)前強化本部長、大阪体育大学卒、イオンを経

                               て学校法人湊学園大阪にある幼稚園に所属

事務局長 渡辺 栄(元日立健康保険組合出身)、主に会計を担当。体操界とは無縁

常務理事 遠藤幸一「器械体操出身」、総務委員長、日大卒、日大教授、遠藤幸雄氏長

                               男

常務理事 竹村英明「器械体操」、事業委員長、早大卒、東京学館高教員

常務理事 竹内輝明「器械体操」、審判委員長、東海大卒、神奈・岸根高教員

常務理事 水鳥寿思「器械体操」、男子強化本部長、日体大卒、大阪大谷大教授、

                             慶應義塾大講師

常務理事 塚原千恵子「器械体操」、女子強化本部長、日体大卒、朝日生命体操クラブ

                             副校長

常務理事 山崎浩子(新体操)、新体操強化本部長、東女体大卒、指導、講演活

常務理事 中田大輔、(トランポリン)男子強化本部長、日体大卒、プロトランポリン

                             競技者

常務理事 米田功「器械体操」、アスリート委員長、順天堂大卒、徳洲会監督

理事  荒木達雄、一般体操(旧徒手体操出身)委員長、日体大卒、日体大教授

理事  福井卓也(トランポリン)、トランポリン委員長、金沢学院大卒、同大教授

理事  田中光「器械体操」、広報委員長、筑波大卒、アトランタ五輪代表、流通経済

                              大教授

理事  加納実「器械体操」、役職なし、順天堂大卒、同大教授

理事  田坂利明、中国ブロック選出、広島市出身

理事  村木啓造、東海ブロック選出、静岡県体育協会

 

監事  高橋史安、日大商学部教授、日大理事

監事  竹田幸夫、元協会専務理事、東京教育大卒、駒沢大教授

(以上リストは、協会発表とマスメデイアによる現在の資料より)

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

 

 

K’sファイルNO.65:緊急連載体操ニッポンの危機 無断転載禁止

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K’sファイルNO.65: 緊急連載 体操ニッポンの危機 

          無断転載禁止

 =緊急連載 体操ニッポンの危機=

 

先ず初めに

本緊急連載は、公益財団法人日本体操協会(略:JGA)に於いて、スポーツ・アドミニストレーション、及びアドミニストレイター不在により体操ニッポンが崩壊の危機に曝されているため、予定を変更して取り上げることに致しました。この出来事は、JGAの記者会見後、マスメデイアのリードによりことの次第が一方的で危険な方向にミスリードされて行って居る様相を、スポーツ・アドミニストレイターとしての視点で解説させて頂き、読者の皆様にお届けしたいと思います。

「本連載をスタートさせて頂きます前に、筆者は、冒頭に私見を述べさせていただきます事を平にお許しください。この度の複数の不祥事、事件、問題は、公益財団法人日本体操協会の会長以下、副会長諸氏、専務理事、常務理事諸氏、理事諸氏、事務局長の職務怠慢により全員にその責任があると思われます。

その理由は、長きにわたり上記関係者達は、現場での状況、実態に対して無関心を装い、誰もが担当責任者への報告、会議への報告、議論も怠り、コーチ、強化指導者、管理者への指導、注意を行わなかった事です。本件に付きましては、本論の組織の問題で厳しく指摘させて頂きますので、悪しからず」

筆者の視点が読者の皆様の疑問に対する理解と判断の材料となりましたら幸いです。その為には、先ず初めに体操界、体操協会のバックグラウンドから簡単に述べさせて頂きます。

 第一弾:日本体操界を知る事で問題の深層を理解

1.派閥争いは競争の原理を支える必要悪か

日本体操協会(略:JGA)は伝統的な伏魔殿か

公益財団法人日本体操協会(略:JGA)は1964東京オリンピック以降、体操界は根強い大学の学閥による権力争いが絶えない代表的な競技スポーツ団体の一つで在る事を読者の皆様にご紹介致します。

権力闘争は、体操界の伝統であり日本の競技スポーツ界の縮図と申し上げて過言でありません。このような権力闘争を基盤に「体操ニッポン」の伝統が継承されて来た事も事実です。

少し歴史を紐解きますと、体操界の派閥は、大別して、二つの大学の体操競技部出身者により構成されています。当時の問題の元凶は、学問、理論により武装した東京教育大(現筑波大学)と根性論、精神論を主体とした日本体育大学という図式が読者の皆さんには理解しやすい表現かも知れません。少し上品な表現をしますと、両大学の違いは、教育、指導理念の相違が根本的な違いであるように理解致しております。丁度先月初めでしたか、本K'sファイルに於いて日大アメフト事件を連載致しました時に、関西学院大学日本大学のアメフト指導理念、指導コンセプトの違いを述べましたが、よく似た相違であると読者の皆さんも感じられると思われます。

しかし、この異質な二つの大学の競技部から体操ニッポンの世界に通じる選手達が輩出されて来たのもまた事実です。

 一例として

東京教育大学(現筑波大学)からは、小野喬選手、小野清子選手、遠藤幸雄選手、加藤沢男選手、等々。日本体育大学(略:日体大)からは、竹本正男選手、松田(旧山下)治宏選手、塚原光男選手、監物永三選手、池田敬子選手、具志堅幸二選手、等々が代表的な選手でした。

両大学の多くの卒業生達は、基本的に体育の教員として全国の小学校(筑波大卒業生)、中学、高校、大学、等に輩出されている事も加えさせて頂きます。

勿論、この2大学のみならず、独自に体操競技部を設置し素晴らしい伝統を構築され、素晴らしい代表選手を輩出している日本大学早稲田大学順天堂大学国士舘大学中京大学東海大学、等々の存在もここに追記させて頂きます。

筑波大学の弱体に伴う日体大独り勝ち

1980年代後半から筑波大学(旧東京教育大学体操競技部の競技力が極端に疲弊して行き「日体大筑波大学」の伝統的な派閥構図のバランスが崩れ始め、日本体操協会内のパワーバランスが崩壊してしまったのです。筑波大学(旧東京教育大学)に代わる勢力は、日本大学(遠藤幸雄氏、早田卓二氏を中心とした)と目されていたのですが台頭しなかったことにより、今日のような不安定なパワーバランスと成り、日体大卒業生達が身内の足を引っ張り合う新たな権力闘争に突入したのです。

この崩壊から、JGAの器械体操に対する指導、運営、管理体制は、偏った方向に歩み出したのも自然な成り行きだったわけです。

[その大きな現象は、毎年中学、高校、また民間体操クラブで頻繁に発生する体罰と称する暴力、セクハラ行為がその証であり、その多くの指導者達は、同じ大学の教育指導、実技指導を受けて来た卒業生達である事も事実です]。このような現象は、このパワーバランス崩壊後に、顕著に表面化し始めた不思議な現象の一つでもあるのです。

嘗ては、日本体操協会内のパワーバランスは、東京教育大系VS日体大系に寄って程好く維持されていたとも言えるのでないでしょうか。

 両大学は常に対極にあり

一人勝となった日本体育大学は、これまでに多くの代表選手、メダリストを輩出してきた為に日本体育大学に残れた教員指導者は、限られた雇用枠内の人数しかなく、それも将来を保証された人事体制ではなかったのです。

男子は、竹本正男氏を中心に、女子は池田敬子氏を中心とした体制が長きに渡り続きました。新しいメダリストが出現しても母校に残れる保証もなく、古い教員達は、段々と新しい有名選手が現れる度に居づらくなり、押し出されるわけです。このような事からOBOGで競技を継続している優秀な選手達は、競技部に付属した財団法人日体スワロークラブを設立して、OBOG達の選手登録の受皿や、社会貢献の一環としてスタートして行ったようです。強烈な個性からか人間関係における協力、調和は期待できず、財政的な破綻、等が原因となり、負の遺産と化して消滅を余儀なくされた次第です。

1970年代前半の男子体操競技部は、黄金期を迎えていた頃です。テイームには、オリンピック代表選手を4名(監物、塚原、岡村、藤本選手)要していました。

その後、竹本氏の意向で監物氏は大学に残り、塚原氏は社会人の河合楽器に就職しました。そして、塚原千恵子氏は、一時期大学に残りますが、後に朝日生命体操クラブを設立し、夫の塚原光男氏はモントリオールオリンピック大会(1976)を最後に現役引退し、朝日生命体操クラブに合流。日本体操界の復活を夢見て、特に女子体操界の低迷の復活をと今日まで多難を乗り越えて現在に至ったのだと推測します。

一方、筑波大学には、茗渓クラブが既に設置されていてOBOG会を形成。日体大とは対極で非常に卒業生の絆が固く助け合いの精神を今日も継続しているようです。

朝日生命の体操界、協会への貢献

このような体操界の歴史の中で、塚原夫妻が大きな力を持つに至った背景として、朝日生命の存在を抜きには語れません。朝日生命体操クラブの創設は1974年ですが、当時、民間の大手企業が、器械体操クラブを設立して、運営、管理するなど誰が想像できたでしょうか。それから今日まで約44年間。塚原夫妻を支えただけでなく、日本体操界、体操協会を物心共に支え、発展にこれ程まで、貢献、寄与した民間企業は、他に見当たらないのではないかと思われます。

朝日生命は、塚原夫妻に全幅の信頼の下、朝日生命体操クラブの略全権を委ねられて来ました。クラブの実質的な運営、指導、管理者は、塚原千恵子氏が取り仕切り、塚原光男氏は表の看板的な存在で統括されて来られたのであろうと思われます。

スポーツ・アドミニストレーションの視点から申し上げますと、塚原千恵子氏1人でこの朝日生命体操クラブの事業と体操協会の重職(常務理事、女子強化本部長、監督)をマネージメントするには、余りにも負担が大きく、物理的にも大変無理があったのでないかと推察します。

その為には、どうしても高名で温厚な性格、社会人としても認められている塚原光男氏は、塚原千恵子氏にとって大変心強い信頼できるパートナーであった思われます。

朝日生命体操クラブでの手腕

人には、皆得手不得手があるように、塚原千恵子氏は、対人関係に於けるコミュニケーション、コーデイネーション、等があまり得意でなかったのかも知れません。

不得手なマネージメントは、得意なスペシャリストの人材を置き活躍して頂くとどれ程作業効率が上がり、嫌な摩擦、ストレスから回避されたかもしれません。ひょっとして、全ての経営マネージメント、指導、運営、管理をご自身でやる事に生きがいを感じていたのかも知れません。

オールマイテイーとして、クラブの経営から指導、運営、管理まで全てを背負い込み、スパーウーマンとして今日までやってこられたのだと思います。

彼女に対して、ブレーキを掛ける役目のチェック機関が必要不可欠であったのかも知れません。このブレーキ役が居る事で、体操関係者達をストレスから少しは解き放せたのでないかとアドミニストレイターとして思わざるを得ない次第です。しかし、もし本人が聴く耳を持たない性格であったなら、他人は、近づかなくなりコミュニケーションに破綻をきたす最大の要因となり、一人孤立して行くのです。

朝日生命から全幅の信頼を得ているという自負もあったのかも知れません。一歩家を出ると武装していなければならない環境を自らの手で作り出してしまった部分もあるのでないかと思います。

彼女の最大の得意分野は、万人が認めているように上級者の選手を指導する事であり、体操競技に関する先進指導者(ロシア、欧州、米国)のリクルート活動、判断、決断力等であったのではないでしょうか。同氏は、他の体操界の誰よりも自ら多くの知識を修得し、実践に活かそうと努力を惜しまなかっただろうと推察します。

彼女は、他に出来る人材が居なかったのも彼女自身をこのように追い込んだ大きな要因の一つでないかと思われます。また、彼女は、他の体操界の人達より何倍も能力があったのだと思います。裏を返せば、彼女に代わる人材を育成してこなかったという事でないでしょうか。此れも、日本体操協会、体操界の伝統的な指導者の養成、育成理念が欠落していたのだと思われます。日本の女子体操界のリーダーは、高齢者が多いのも伝統の一つでもあるようです。しかし、これは、体操界、体操協会に限った問題ではありません。

体操協会内の権力闘争から復活への光明

筑波大学の衰退は、日本体操界にとっては危機的な状況であり、体操協会の混迷期の始まりでもありました。一人勝した日体大系も大学経営、管理者の思惑が相まって一枚岩ではなくなり、大学に残れた人とそうでない多くのOBOG達の分裂、集合が絶えず繰り返されて来たと思われます。そして、幾度となく繰り返された抗争を経て、協会内部は現在の体制に落ち着いたのだと思います。

その後、協会内部の指導権争いは、表面では平穏を装ながら今日まで一つの方向性に向かって来たので、成果と結果も出て国民、社会からも応援して頂いているのでなかったのかと思います。

塚原夫妻には、功罪があるのもこれまた事実です。しかし、当時から今日に至るまで、日体大関係者、OBOG達から塚原夫妻への批判、攻撃、妬みは在っても、協力、協調の精神は、得られなかった事をこの度の事件、不祥事、問題からうかがえ知れるのでないかと思います。これらの度重なる関係者達からの攻撃に対して塚原夫妻は、防御の為、攻撃の手を緩めなかったのかも知れません。これらについては、次回以降に触れさせて頂きます。

体操競技選手の特徴と特性

体操競技の特徴は、皆さんもご存知のように個人競技スポーツで、冬のフィギュアスケートと同様に演技の評価を人間の主観に大きく委ねるという点です。よって、水泳競技のような評価、判定は、タイムが全てであるのに対して、人間の感情が大きく左右する競技でもあります。器械体操のスキルに於いては、最も危険で怪我のリスクを伴う競技スポーツであります。特に女子には、練習時から競技まで補助者(サポーター)が不可欠である事も特徴の一つです。

体操競技の選手特性については、個人競技スポーツ種目であることから独特の強い個性と精神力の塊であると表現した方が理解されやすいかも知れません。それは、練習を含めた競技環境と伝統的な強化法が個人の性格をも歪めかねない複雑な世界であるためです。

何故ならば、毎日合宿所で寝泊まりし、生活を共にする仲間が即、全日本高校選手権や全日本大学選手権で、あるいは世界選手権、オリンピック大会の代表選考会や本番でトップを競い合うライバル関係にあるからです。言い換えれば、同じ釜の飯を食っている仲間が即明日の敵という事なのです。

読者の皆さんには、想像の域を超えた別世界であると思います。このような特殊な環境で長く育てられ、超強靱な心技体を磨き上げられている選手達に一般社会での常識など通じる訳がないことを少し理解頂ければ体操界で起きる現象、現実が体操界の常識に由来する事をお気付きになるかも知れません。言葉は不適切かも知れませんが、根性も捻じ曲がると表現した方が現実的かも知れません。

筆者からの願い

体操協会、体操関係者の皆様へ、

2020東京五輪では、「体操ニッポン」復活が現実になろうとしています。これまで皆様の涙と怒りと努力で此処まで凌いで来られたのです。どうかその先人の貴重な遺産を無駄にされる事無く、今一度仲良く、協力し合って「次世代に体操ニッポン」を継承する為にも、手を取り合って歩むことを心より祈念しています。体操関係者の皆さんが、協力、調和をして事に向かえばきっと最高の「着地」が出来ると確信しています。

三者委員会は、選考選定が何処の誰により行われるのか、第三者委員の実名、所属を公開する事が望ましいと思われます。

また、弁護士関係者だけでの委員会でなく、大陪審のような本競技スポーツに見識ある弁護士以外の委員も加える事の必要性を申し添えます。

双方に対して、十分な調査をされた公平で平等な第三者委員であり、結論である事を願います。

この度の一件が、後に禍根を残さないよう関係者のポジテイブな言動、行動を切に祈ります。

時事の出来事:

1.体操協会は、第三者委員会を設置する事を告知。2週間で結論を出すとの見解。

2.塚原光男氏のNHKの取材に対する謝罪。

3.メデイアマスコミ報道による、宮川選手が善で塚原夫妻は悪の構図が進行。

4.体操協会執行部及び常務理事会は、職責と責務を一貫する事が大事。

5.95日:速見コーチが謝罪会見

6.第三者委員会の委員長に、元日弁連副会長の岩井重一(いわい・しげかず)弁護士

       が決まったと発表した。

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

お知らせ:

NO.65は、体操協会、体操界の派閥、権力闘争の沿革を中心に、体操選手の特徴、特性を合わせてご紹介させて頂きました。

次回NO.66は、この度の問題の本論に入らせて頂きます。つきましては、事態も急激な変化を伴っておりますので、筆者も読者の皆さんにスポーツ・アドミニストレイターとしての視点と問題点を率直にお伝えする為に、次回K'sファイルNO.66は、筆者の準備が整い次第に掲載させて頂きます。ご笑読頂ければ幸いです。

 

K'sファイルからのお知らせ

K'sファイルからのお知らせ

読者の皆様へ  

いつもご愛読いただきありがとうございます。

 

86日、木曜日、掲載予定のバスケットボールをテーマにしたPARTⅡは、多くの読者からのご要望(海外からも)ありまして、NO.65は、「緊急連載 体操ニッポンの危機」に変更させて頂きました。バスケットボールの読者の皆様に心よりお詫び申し上げます。時期を改めまして掲載させて頂きます。 文責:河田弘道

K'sファイルNO.64:アジア大会バスケ代表選手の買春犯罪 無断転載禁止

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K'sファイルNO.64アジア大会バスケ代表選手の買春犯罪

             無断転載禁止

 

5日後に会見日本バスケ協会(JBA)のドタバタ劇場

1.大丈夫か新JBAJOCの管理体制と体質

先ず初めに

2018820日、公益法人日本オリンピック委員会(略:JOC)は、アジア大会に於いて男子バスケットボール代表4選手永吉佑也(27=京都)、橋本拓哉(23=大阪)、佐藤卓磨(23=滋賀)、今村佳太(22=新潟)が、816日、対カタール戦を終えた深夜現地ジャカルタ市内の歓楽街で買春行為を行った事実を発表した。JOCは、4人が日本代表選手団の行動規範に違反したとの判断をし、同日早朝に帰国させたと発表。山下泰裕団長(JOC理事)は、現地で記者会見を行い「4名の代表選手が行った事実関係の説明、連帯責任に値する合理的な根拠がない」として、バスケットボールテイームは引き続き参加するとの見解を述べた。

2018821日、公益法人日本バスケットボール協会(略:JBA)は、帰国した4名の選手を同席させ、三屋裕子会長は、都内で記者会見を行った。

同会見でJBA側の弁護士は、4人は「JAPAN」のロゴが入ったシャツを着て歓楽街で買春したことを認め、謝罪した。JBAは裁定委員会を設置し、同委員会からの答申を待って処分を下す。と質問に対して回答した。また、同弁護士は、「本買春行為は日本の法律に当てはめれば売春防止法に抵触するが、同法律には罰則規定はない。インドネシアの法律をまだ調べていないと前置きした上で、合法か違法かどうかは確認できていないが、日本同様に違法の可能性がある」と付け加えている。~以上82021日付の朝日新聞記事及び、日刊スポーツ記事より引用~

JBAEXアドバイザーの川淵三郎氏は、「記者の取った態度に疑問」とコメントされています。これは、現場写真を撮ったカメラマン、記事を掲載した朝日新聞社記者の事を指しているようです。しかし、このカメラマン、記者は、プロフェッショナルとしての業務を遂行しただけで、JBAの役員でも指導者、管理職、親兄弟でもないのです。この方は、何を勘違いされているのでしょうか。JBAのバスケットボール・アドミニストレイターが職責、責務を怠っていたのと、プロと名乗る選手達がこのような醜態を曝してしまっただけなのです。記者・カメラマンの態度には、何の疑う余地もなく、本末転倒のコメントです。本件の記事、写真が世に公開されて居なかったら、JOC及びJBAは、如何なされたのでしょうか。川淵氏のこの度のコメント見解は、伝統的な日本の指導者、組織・団体管理者のテイピカルなタイプとお見受け致しました。

 アジア競技大会とは

アジア競技大会は、アジア・オリンピック評議会(OCA)が主催するアジア地域を対象にした国際総合競技大会で、原則4年ごとに開催されます。

此の事から、本大会の本元は、IOC国際オリンピック委員会)であり、日本に於いては、IOCからの委託を受けたJOC公益法人日本オリンピック委員会)が事業を行っているのです。そこでJOCは、NGB(略:国内各競技団体)に選手の選考、指導、運営、管理を委託している次第です。委託を受けたNGBの本件は、JBA公益法人日本バスケットボール協会)が選手選考、指導者、スタッフ選考、招集、派遣、競技運営・管理、等を選手選考発表当日から帰国まで、JOC共々責任の所在を分担して行っている筈なのです。

②代表選手のステイタス(status)と現状

4名の代表選手は、プロバスケットリーグ所属のプロ選手達です。

今日のオリンピック、世界選手権、ワールドカップアジア競技大会、等への代表選手は、嘗てのアマチュアからプロフェッショナルへと姿を変えました。

これは1980年以降、オリンピック出場選手は、プロフェッショナルとしてのステイタスが公認されたことによるものです。

この事は、「KsファイルNO.41PARTⅠ.アマチュアスポーツのビジネス化(プロへの移行)」掲載済みです。

しかし、我が国の一般社会に於いては、オリンピック、アジア大会、等出場選手を今日もアマチュア選手との認識が絶えないのも事実であります。その慣習として、日本には、世界で唯一の企業スポーツの存在があり、伝統的にこの選手達をアマチュアと呼んで来ていた歴史があるからです。本来、企業スポーツ選手は、競技スポーツを生活の糧としているのですから、プロと呼ぶのが相応しいのですが何故か関係者は呼びたがりませんでした。現在に於いても、企業スポーツを保有する会社、企業は、プロと呼びたがらない不思議な伝統があるのです。

筆者は、20年間(1985年~2005年迄)日本の企業スポーツ(NEC SPORTS)で、スポーツ・アドミニストレイターを務め、そのキャリアから充分企業スポーツに付いても理解致しております。

③アマ選手と呼ぶに近い選手、組織は

近年、アマチュア選手と呼ぶに近い選手は、教育機関で教育を受け乍ら競技スポーツを行っている学生選手の事ではないでしょうか。

しかし、これも日本に於いては、学生選手でありながら実質プロとしての処遇を学内外で受けていている選手が多数います。何故ならば、その根拠としては、ルールが個々の大学法人により異なり、共通した大学競技スポーツのルール、罰則規約、規定が無いに等しい現状があるからです。この事から、我が国の大学競技スポーツは、いわば無秩序、無法な状況が罷り通っている事をご承知下されば近年世間を騒がしている不祥事、事件を理解し易いかと思われます。

また、近年に於いては、大学教育機関、高校教育機関に所属する生徒、学生選手のステイタスが、教育という観点を基準に申しますと非常にグレー、或はブラックである事も事実です。

④危険な土壌で育って行く代表選手達

代表選手達の多くは、嘗て生徒、学生選手の本分は教育の一環として「授業を受け、単位を取得し、卒業、学位の取得」を趣旨、目的として教育、指導を受ける為に入学している筈なのです。しかし、現実として多くの学生選手達は、「授業を欠席、評価試験は受けない、単位未修得、一般学生、教職員もキャンパスで顔を見る事も無い」、このような生徒、学生選手に大学側は、特待生として称して、「授業料免除、生活費免除、強化費と称してキャッシュサポートなどを行い、中には親に大学職員の肩書を与えて大枚な報酬を支給する」大学まで現われてきています。

そして、「最後に成績評価を改ざん」して卒業させて行くという大学が読者の皆さんの周りにも多発しているのは、ご承知の通りです。

此れにも増して、これらの学生選手達には、「JOC、各競技団体から強化指定選手として、強化費の名目で年間1人数千万円」が渡っている。また、この中には、「広告代理店、スポーツ代理人、等とマネージメント契約をし、CM料、スポンサー料を年間数億円の収入」を得ている学生選手も存在しています。

そして、非常識な大学経営者は、この商品価値のある学生選手を「学内に留めて置く為に広告代理店、スポンサーへの仲介役」も行っているのに対して、文科省スポーツ庁は一切を見て見ぬふりをして補助金まで流しているのが実状です。これらは、我が国の教育、スポーツ界のモラルの低下を引き起こし、この度のような代表選手達(元学生選手達)が、他国で競技後に買春行為に走っても自らを律する教育も指導も受けていない下地が既に出来ているという事を露呈しました。

それは、このような大学教育機関に於いて、既に反社会的な行為を助長する学生選手達を養成、育成しているわけですから無理からぬことと思われます。

2.JOCJBCの会見に対する素朴な疑問

JBC弁護士の説明と見解

筆者は、本弁護士、会長の会見での本件の説明、見解が事実とするなら、本買春行為は、法に抵触するが罰則規定がない、と取り方によっては、犯罪者を擁護、容認するかのような見解に聴こえてきました。法律に罰則規定がないなど法律に値しないと申して過言でありません、法律に抵触しているにも関わらず、罰則規定がないので罰は与えられません。と言いたげなJBAの会見は、非常にすっきりとしない内容でした。何か本犯罪者達を救う手立ての露払い的な会見で、次の一手が透けて見える見解に聴こえてくるのに驚きを隠せませんが、読者の皆さんは、どう感じられましたでしょうか。

②最大の疑問と問題点

インドネシアの法律の下どのような現地での処理をしたのか、行ったのか、現地警察への報告の有無、了解の下に選手達を緊急帰国させたのかどうかの報告、説明がJOCの現地会見、国内JBAの弁護士の会見に含まれていなかった所も詰めの甘さを感じています。

此れは、日本独特の含みを持たせた会見で在り、良く言えば大変寛容な表現と擁護、理解の仕方であるように感じます。しかし、日本国を代表し、アジア競技大会に参加し、他の各競技種目選手達は、真剣に戦っている緊張感の中で、本4名の選手達は、買春して快楽を求めていたのは事実です。

この事実は、言語道断であり、此の裁きをJOCJBA、選手の各所属プロ球団の結論次第では、これからの日本の競技スポーツ選手のみならず、その指導者、関係者、強いては国民、社会に対して大きな汚点を残し、禍根となると確信します。

821日の朝日新聞朝刊にも指摘されている、「ジャカルタ特別州の条例で買春などの行為は禁固刑または罰金刑に相当するが、現地警察からの聴取は受けていない」、何故?というこのポイントが気がかりです。

現地でのJOCの代表として同行しています山下氏は、記者会見でこのポイントを一切触れていません。4名の選手が事件を起こし発表までに4日間の空白があります。この間、JOCJBAは、本事件を何日何時に知ったのか、そしてどのような対応をしたのかの情報公開も重要であると思います。

統括管理責任者の山下団長は、現地警察に逮捕されなかったので、地元警察への自首、届け出を選手管理責任者としてなされたのか。或は、届け出をしないで本国に送還したのであれば、これは重大な違法行為をJOCJBAがミスリードした事になりかねません。これらは、非常に重要な事故処理案件であり、JOCJBAから会見に於いて触れられないで済まさせる事でしょうか。

スポーツ・アドミニストレイションの視点に於いては、競技中の暴力事件とは異なり、競技外での犯罪行為に対する刑事事件としての取り扱いになるので公益法人としてのJOCJBCは、慎重且つ適切な判断の下に選手達を送還された事を願う次第です。本事件は、両国並びに競技スポーツ界にとって非常に重大な国際問題でありますので、速やかな情報公開の必要性が問われます。

本件の処理を怠る事は、バスケットボール競技選手のみならず、他のスポーツ競技選手達に対して、悪しき前例となるからです。今後本件に類似する不祥事、事件が国内、国外で生じた場合の悪例、判例となる事を肝に銘じるべきです。

先輩諸氏からの安易な伝統的な悪しき負の遺産は、今日まで反省、改善されていない事を本件が証明した事になります。

 NEWS速報

829日:JBAは、記者会見を行いました。4名の代表選手に対しては、「1年間の公式試合への出場権を剥奪」する処分に決まった。

*筆者は、幕閉じを焦ったJBAの早期結論に対して、悪しき罰則の前例にならなければと思います。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

お知らせ:酷暑の中、本BLOGの読者からは、多くの感想、ご意見を賜りまして有難うございます。拙い内容、文章ではございますが、ご賛同下さる読者の皆様に少しでもお役に立っていましたら最高の喜びであります。引き続き宜しくご指導の程お願い申し上げます。