NO.14 河田弘道のプロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍

NO14 河田弘道プロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍          無断転載禁止

      II.フェアネスを敵に回した手法の対価

 

1.東京読売巨人軍の特徴:

   本球団の特徴は、経営母体がマスメデイア企業である事から、常に人気選手、人気球団を維持、持続させなければ視聴者、購読者を引きつけるコンテンツと成りえない事です。これらの事は、何よりも重要であると歴代の最高経営者が継承して来たビジネス・コンセプトの一つのようです。よって、先ずは、戦力補強の為のスカウテイング、リクルーテイングの手法が他球団と大きく異なる所以が此処にあるのです。

  しかし、これらを強引に維持、継続するがために失った貴重品は、親会社、球団にとって取り返しがつかない「アンフェアーと不信のダークなイメージ」でした。これからの経営者は、次世代に向かって如何に信頼回復に努めようとしているのか、或は、誰もが今もって気付いていないのであるなら、巨人軍には、永遠に真のリスペクトされる栄光は訪れ無いかも知れません。

  この戦力補強の伝統とは、高校生、大学生、社会人の選手達の中で、先ず他のマスメデイアが騒ぎ、人気が集中している選手達をリストアップするのです。即ち、騒がれ、人気がある選手は、実力も兼ね備えていると経営者達は、本気でそう思い込んでいるのです。これは、当たっている選手もいますが、そうでないケースの方が多いのです。これにより入団した後、消えて行った選手は、数限りない事を皆さんはご承知の筈です。これらは、指導者云々以前の問題です。

 また、別の戦力補強は、他球団に行くと活躍される、されそうな戦力を2軍に寝かせておく戦略です。この選手達は、1軍にも上げられず、他球団であれば即1軍のチャンスがある選手達です。此れは、巨人軍が勝つための戦略であり伝統的な手法の一つなのです。これも若手の育成の妨げとなっています。

  球団経営者のスカウテイング・コンセプトとは、マスメデイア感覚でスカウテイングを思考している所に初歩的なミスが発生しているのです。よって、球団のスカウテイング・スタッフ達は、本来の基本的なスカウテイング業務の趣旨、目的を明快に回答出きるスタッフが何人いるでしょうか。本球団は、選手獲得時に付帯の約束事をして獲得するケースが多いので、選手生活を辞めた後もその選手の能力云々とは別に、球団が面倒を見なければならない負の遺産を毎年抱えて行っているので、職員、スタッフの頭数は、他球団とは比較にならないのです。フロントスタッフは本来、マンパワーではなく資質の高い人材が必要なのですが、、、。

  このような状況と環境から、スカウトマン達は、大事なスカウテイング力の強化、向上を怠り、マスメデイア各社の野球欄に目を通すのが伝統的な日課、仕事として位置付けていたのには、驚きました。また、此のことからも巨人軍には、中期、長期の球団のビジョンのみならず、テイームに対する毎シーズンのコンセプト、ビジョンも、それを遂行する実践戦略(Strategy)も見えてこない。

 即ち、これは、人気のあるスター選手を獲得する事を彼らの実績として来た球団、及び経営者に問題があると思われます。またこのスカウトマン達は、球団経営者達の忖度を伝統的に身に付けているのです。統括責任者は、一体何を指導し、業務を遂行させているのか、このような報告からも本球団の伝統的なスカウテイング・スタイルの一コマが伺えました。まさか今現在もこのような事を行っているとは、考えたくもないですが、現実は、成果と実績が見えてこず、気がかりです。

  歴史的にも本球団は、狙った選手達をリクルート(獲得)する為の秘策、施策を持って、失敗は許されないのです。その為には、ハイリスクを承知で獲得に乗り出すのです。また、球団幹部は、親会社から執行してきた球団役員でありますので、最高経営者の忖度をよく心得ています。批判を恐れず申し上げると、球団幹部達は、親会社の最高経営者の忖度を実現する為に球団に執行してきているのであって、球団の重要問題に正面から向き合おうとしない、会社の専業サラリーマンの様に強く感じられました。このあたりも早く改善、変革しなければならない重要な課題部分です。

 

 2野球協約・規約は、ルールブックかダークブックか:

   本球団の選手リクルートに於ける大きな歴史的な例といたしましては、江川卓投手から近年の菅野智之投手迄、歴代の代表的な選手がいます。これら選手の獲得手段は、ジャイアンツ特有なスカウテイング、リクルーテイングの強引な成果と結果であったわけです。松井秀喜選手は、ドラフトで競合の為に抽選で得た選手の1人でした。また、その時代ごとに逆指名枠、自由獲得枠、ドラフト外の育成選手枠と新しい呼び名の野球協約、規約が登場して来たタイミングもその理由と背景があるのです。

  ドラフト制度により、他球団に1位指名されても拒否する選手、ドラフトで競合を避ける為にドラフト数週間前から選手側がメジャー行きをチラつかせたり、大学進学、社会人テイーム行きをアピールして、行きたくない球団に対してマスメデイアを利用して間接的な拒否メッセージを送る選手が絶えないのも本球団選手の特徴でもあります。これらの行為は、ドラフト制度と協約・ルールを根本からリスペクトしていない、競技選手としてのモラルが欠落した人達です。

  MLBでは、このような選手には重い罰則が適用されます。しかし、日本プロ野球機構では、ペナルテイーが課されないドラフトの抜け道の一つとなっているのです。

 これらの選手を獲得する意思の強い球団は、あらゆる方法と手段を用いて今日も選手を獲得しています。しかし、これらの手口は、他球団に於いても行われていました。それは、嘗て小生が他社に所属していた頃の同僚が他球団に所属して球団編成本部長、専務取締役を行っていた時に類似した手法を目の当たりにして裏舞台でバッテイングしている事を確認致しました。

 私は、もっと他のクリーンなリクルート方法を活用して、獲得後の指導、育成部門で切磋琢磨し、勝負して欲しいと願う一人です。その方法と手段は、沢山あるのです。しかし、一部球団は、自己中心的な短絡的な方法を選択するが為に共存共栄のプロ球団としての経営、運営の原理原則を逸脱してしまうのです。ベースボール・アドミニストレーションの貧困が此処にも顔を出しています。

  偏った不公平な抜け駆けが出来る理由は、日本プロ野球機構発行の「野球協約書」にあるのです。折角、読売新聞社の最高経営者の推薦の下、法律の専門家の第一人者と言われる方々を毎回、日本プロ野球機構の最高責任者(コミッショナー)として推薦、任命され有給で雇用しているのですから、国民、社会、野球界、ファンには、もっとシンプルで明快な、抜け駆けの無い規約、ペナルテイーも明文化した、完成度の高い野球協約に改善、変革できないものかと淡い期待を常に寄せている次第です。

  本球団は、テイーム再建、構築の為の基盤をなすビジョン、コンセプトが明確ではありません。そのために、毎度ドラフトに於いて、競合した選手を獲得できなかった場合、次の一手、二手を持っていないので、抽選に外れると他球団に行かれては困るような選手を次から次へと無計画に挙げて行き、ファームで寝かせているのです。此れでは、スカウテイングを有効に活用していると言えるでしょうか。

 

 3.スカウテイングとリクルーテイングの違い:

   現在の様な手法を続ける限り、球団には、観察力、洞察力、医科学力を備えた、指導者、スカウテイングの人材は育たないでしょう。しかし、スカウトマンは、育たなくても、リクルートマンは、親会社からの協力を受けた人材を常に確保してもらっており心強いかと思いました。

 ここでは、スカウトマンとリクルートマンの違いを述べておきましょう。スカウトマンは、選手の身体能力、技術力、怪我の有無、特徴、将来性、育った環境、等をスポーツ医科学の視点を含めた専門の視点で調査し、GMにレポートを提出する人の事です。

 リクルートマンは、本来スカウトマンの調査対象の中から球団が必要とする選手を如何にして勧誘、獲得、契約締結に持ち込むかを業務とする人の事です。

日本社会では、スカウテイングをリクルーテイングと混同している人達が多いので(スポーツを体育と混同しているのと同じ認識)、このBLOGの読者は、是非その違いを専門知識として覚えていただきたいと思います。日本プロ野球界は、伝統的にスカウテイングとリクルーテイングを兼務させているケースが多い様です。

     BLOG Ⅰ、Ⅱ、のテーマで述べました専門的な基礎知識が、本球団の選手育成、指導に関する問題の本質を理解する基礎に役立てば、幸いです。

                            文責:河田弘道

                                                                                             Sports アドミニストレーター  

 

 *次回Ⅲは、このような環境と現実から若手選手が台頭しない要因の現実を述べさせていただきます、どうか驚かないで下さい。