K'sファイルNO.112:女子レスリング”巌流島の決闘“それとも?

 

K'sファイルNO.112:女子レスリング”巌流島の決闘“それとも?

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吉田沙保里氏は次代の政治家資質あり

女子レス・パワハラ問題の争点整理

Ⅰ.当時の状況

①真の告発主は誰なのか

②日レス協会会見の趣旨・目的は何だったか

Ⅱ.女子レス・パワハラ問題の本質とその起因

1.関係者の立ち位置を確認

      ①栄和人氏:

      ②田南部力氏:

      ③伊調馨選手と田南部氏の関係:

2.筆者の素朴な疑問

 

Ⅰ.当時の状況

①真の告発主は誰なのか

パワハラ騒動は、伊調馨選手と栄和日本レスリング協会強化本部長との間でパワハラがあったとする、第三者から内閣府に対する告発状に端を発した事件でした。

何故第三者代理人弁護士)は、内閣府に依頼主を公表せず告発状を出したのか。一般の読者は、不思議に思われた事でしょう。また、代理人弁護士は、主を明確にしなかったことは非常に不自然且つ疑念を持ったのが本件の第一印象でした。

告発を決断したのであれば、真の告発者は、堂々と最初から名乗り出て欲しかったです。後からマスメデイアを通してぞろぞろと関係者の名前が出てくるのは、本件の趣旨、目的からして如何なものでしょうか。特に選手生命、指導者生命がかかっている事のみならず、多くの関連、関係した若い選手達も何らかの影響と心の傷を負うことからも最初に実名で告発する事が望ましかったと筆者は思います。読者の皆さんは、如何でしたか。現に本プレーオフの立役者の川井梨沙子選手は、直接的に関係の無い最大の被害者であると言えるのではないでしょうか

告発人は、通常でありますと本競技種目の選手、指導者を登録し統括運営、管理をしている「公益財団法人日本レスリング協会(略:日レス協会)」に申し出るのが筋です。それを行わず、あえて内閣府に提出した理由は、日レス協会は公益法人であり、その許認可権を有するのが内閣府であると判断されたのかも知れません。しかし、内閣府は、許認可を出すのみで解答を期待できる機関ではないと思われます。此れは、丁度文科省が大学設置の許認可は出しても各大学の問題は、われ関せずと全く関知、関与しない姿勢と同じなのです。

或は、告発関係者達は、協会内部を十分に熟知していて、協会に提出する事により、本告発状が内部派閥により握りつぶされる可能性を想定されたのかも知れません。また、協会内部の利害、利権に大変興味をお持ちの重鎮が別の権力を利用し他意のあるシナリオを描き、マッチポンプして誘導している可能性も捨てきれません。

一般的には、先ず日レス協会に告発状を提出すべきです。そして、どうしても内閣府に提出されたいのであれば、そのコピーを提出して於くのが一般社会常識ではないでしょうか。何故代理人は、正攻法を依頼主に指導されなかったのか。

日レス協会の謝罪会見では、何か誠実とは反対な様子が透けて見え、これが日本の伝統的なスポーツ競技組織の利害、利権ファーストの最たる例のように感じたのも、筆者だけでしょうか。

②日レス協会会見の趣旨・目的は何だったか

日レス協会の会見は、明快なファクトが欠落し、第三者委員会のメンバーも選考方法の開示も無く、何の根拠をもって第三者委員会が正当と言えるかの尺度を見せないのも権力側の都合のよい、新たな談合の手法と思います。

パワハラ、セクハラ、等を含む暴力は、ハッキリと弁護士を活用しての司法による決着がグローバルの世界での正義(Justice)と公正・公平(Fairness)にマッチした処理方法ではないかと思います

スポーツ界に於いては、本来なら先ずスポーツ仲裁裁判所を現状態から格上げして法的な効力が伴う強い権限を持った真の第三者委員会とすることが急務であります

それにより、弱者の立場の被害者が個人の負担を最小限度に留めて、フェアーな裁定を受けられる公的な機関が必要不可欠なのです。弱者は、上下関係の圧を気にすることなく駆け込める環境の裁判所が必要なのです

三者委員会のような新たな手法は、我が国のスポーツ界のみならず一般社会に於いてもまた闇取引の横行を助長しても競技スポーツに於けるクリーン、フェアネスは醸成されないと思います。如何でしょうか。

 

Ⅱ.女子レス・パワハラ問題の本質とその起因

本件の問題をスポーツ・アドミニストレイターの視点で指摘させて頂きますと、ポイントは幾つかあります。そのポイントを指摘するに当たりパワハラ問題の要因とその誘引、起因を述べる事によりその真意が見えてくると考えられます。

本件は、先ず伊調馨選手が栄和人強化本部長よりパワハラを受けたと認識した事。次に同選手を指導している田南部力氏もパワハラを受けたと認識した事です。そして、両名は、どうして栄強化本部長からそのような行為を受けるに至ったかが問題の本質だと思われます。

1.関係者の立ち位置を再確認

栄和人氏:

栄氏は、至学館大学の監督であり公益財団法人日本レスリング協会(略:日レス協会)の男女強化本部長としての地位を得ていた事です。本来ならば、栄氏は、日レス協会から男女強化本部長としてオファーを受けた時に、至学館大学の監督職を今後も継続するのか、或は、ナショナルテイームの強化本部長職を受託するのか何れか決断をすべきでした。

栄氏は、至学館大学から生活の糧(報酬)を得ており、強化本部長としても協会からも報酬、或はそれに見合う対価を受けていると理解できるからであります。この状態は、栄氏自身が指導者としてすでに業務上コンフリクト(利害の矛盾)を起こし、権力の集中に至っているからです。

日レス協会の強化本部長としての職責がバランテイアー活動として位置付けられ、本部長職が無給であるとするならば、栄氏には、協会の指導、管理責任の重責は問えなくなります。つまり、これは栄氏の問題ではなく日レス協会の伝統的な組織的構造と体質に起因していると考えられます。(この状態は、公益財団法人日本体操協会の先だってのパワハラ問題と全く酷似の強化本部長の立ち位置、職責・責務と言えます

栄氏の問題に関しては、日レス協会から栄氏に強化本部長としてのオファーがあった時点で、栄氏か大学側、またその双方が両職責を手に入れる事がメリットと考えたのかも知れません。そのメリットとして考えられる最大の1つは、本部長として大きな国際大会への選手選考権限であると考えられますこの意味は、栄氏自身並びに所属している至学館大学に利益還元できる行為とみなされるのは自然な成り行きなのです。

それを嫌う反体制派の攻撃がパワハラと言う問題に置き替えられたのかも知れません。そう考えますと、伊調選手は、反体制派に取り込まれ利用されているのかも知れません。読者の皆さんは、この構図、内容から体操協会のパワハラ事件を思い出されるのではないでしょうか。これは、日本の個人競技スポーツを司る組織・団体の伝統的な内部構造の典型的な例だと思われます。

この度の本件に関して協会側、大学側、マスメデイア記事では、誰もがこの重大なポイントを指摘、触れないのはどうしてでしょうか。単に気付かなかったとは考えにくのですが。このような状態が既にパワハラ問題を誘引した大きな原因の1つでもあると思われます

田南部力氏:

次に、伊調選手を指導している田南部コーチは、日本体育大学の指導者で在り、日レス協会の男子強化コーチでもあるマスメデイアは報じています。

此れが事実なら、本件は、別の問題を協会側、同コーチ側及び所属大学が何かを意図的に見過ごしてしまっている事に成ります。

田南部氏は、日レス協会の男子強化コーチであり、日体大の指導者としての要職にありながら女子レスの伊調馨選手の指導に何故手を出したかの説明が事件当初より今日も尚誰もが触れない、語らない不思議さに驚かされています或は、何らかの理由で黙認しているのか、という事です。此処に置いても、田南部氏は、伊調選手に対して、また、日レス協会の男子強化コーチとしての職責、責務からも越権行為でないかとの疑念が出るのも自然な成り行きなのです。

田南部氏は、伊調選手のバランテイアー指導者なのか、日体大以外から生活の糧(報酬)を受けているのかどうなのか。これが、明確であれば答えは自ずとして出て来ます。田南部氏の立場に於いては、伊調選手を指導するには明快な依頼書、或は同意書があるはずです。依頼書が発行されているなら、その中に必ず職責、責務に対する対価も明記されている筈です。この部分に付いても、日レス協会の会見では、一言も述べられていませんでした。

田南部氏が個人的理由でこのような状態を維持していたのなら、これは、彼の越権行為以外の何ものでもありません。組織の人間としては非常識極まりない指導者として断罪されてもおかしくないのです。栄氏のパワハラ行為を批判する以前の問題であります。

この問題が伊調選手、田南部氏、双方から明確に事情聴衆し、公表しなければ、栄氏へのパワハラ云々の判断と会見は甚だ片手落ちではなかったでしょうか。伊調選手にも重大な問題があるのでないかと推察します。明らかに不明確、不明瞭なファクターが未確認過ぎます。これらもまた、パワハラ問題の大きな見えない要因の一つだと思います

田南部氏が所属する大学には、スポーツ・アドミニストレイターの肩書を持たせた担当者がいるようですが、大学指導者に対する指導、運営、管理が全く出来ていない、或は肩書だけを付与させた見せかけだけのスポーツ・アドミニストレイターであるのかも知れませんこれは、この肩書を持たされた本人の問題ではなく、持たせた管理者自身がスポーツ・アドミニストレイションは何たるかを理解できていないのだと思います。この様な実態は、田南部氏のような現場指導者への指導者指導が出来ていない最大の要因であり、社会的な常識を逸脱した指導者が増殖している要因でもあるのかもしれません。

伊調馨選手と田南部力氏の関係は

伊調選手が所属する「ALSOKと田南部氏との関係」はどうなっているのかという事もキーワードになっています

それは、伊調選手が至学館大学を卒業して社会人となった時点で所属、選手資格、指導者、等の告知、情報公開を行ったのかという事です。通常、日本人選手が日本の大学から会社企業所属に移籍しますと、マネージメントは、会社企業の所属部が運営管理する事に成ります。伊調選手が現在所属する会社企業は、ALSOKと理解しております。ALSOKには、レスリング部が設置され、監督も存在します。伊調選手の練習拠点は、ALSOK社に存在し指導者も確保され、日レス協会のみならず、実業団連盟にも選手登録がなされている筈です。そうでないなら、日レス協会の許認可、管理責任とALSOKの運営管理責任が問われるわけです。

伊調選手が信頼して指導を受けている田南部氏は、ALSOKと雇用関係に在るのかないのか重要なポイントとなります。本件を今もってハッキリしない、させなない理由は何なのか。

此処で田南部氏の職責は、日体大に所属する教員、指導者であり、日レス協会の男子強化コーチである事は再三再四申し上げてきていますこの立ち位置の田南部コーチは、何故女子強化選手、ALSOKの会社企業所属、登録の女子強化選手を指導しているのかは、今尚告知されていません。しかし、この事は、スポーツ・アドミニストレイションに於いて重要且つ、明確にしなければ組織としてのガバナンスが維持できないのです

残念ながら上記項目に関しての説明並びに情報公開、告知は、パワハラ問題発生から今日2019年7月に至る迄、各所属教育機関、会社、企業、日レス協会と何処もが口を閉ざしたままである事が不自然で在り、本件が闇に葬られている証であります。

この問題は、田南部氏が日体大の組織で在れ、日レス協会の組織で在れ、各組織、団体に所属する者として遵守しなければならないルール、指導者倫理がある筈です

筆者は、何か見落としているのでしょうか。また、伊調選手が田南部コーチに指導を個人的にお願いしたのか、田南部氏が伊調選手にアプローチしたのか、この所は、重大なファクターであります

この二人の関係は、少なくとも伊調選手が所属する企業、田南部氏が所属する大学、そして伊調選手のコーチであると日レス協会がオーソライズ(権限を与えなければ)しなければ本来認められないのです

伊調選手と田南部コーチとの関係を明確に告知、公表することは、本件の解明と問題解決に大きく前進する事であります。或は、関係者達が口を閉ざす理由が他にあるのかも知れないと考えるのも自然かも知れません。

問題があれば、そこで改善すればよい事であり、情報公開をすることで伊調選手も田南部氏も言われなき誤解を招く必要も無くなるのです。また、伊調選手は、ALSOKの練習施設で練習しているのでなく何故か日体大を練習の拠点としている事もことの真意を複雑化している要因でもあります

 

2.筆者の素朴な疑問

伊調選手の練習拠点問題で筆者の記憶が蘇ります。確か、過去に酷似の事例が在ったように思います。それは、当時女子柔道の田村亮子(現:谷亮子さん)学生選手が帝京大学卒業後、日体大に練習拠点を移しその後いつの間にか日体大大学院に入学、日体大は、「田村亮子選手は日体大現役選手でオリンピック代表選手、金メダル獲得」と日体大キャンパス内外は勿論、マスメデイアもが告知していた事が強く記憶に残っています

2020年東京五輪開催決定後、日本体育大学松浪健四郎理事長は、20東京五輪日体大現役学生から70名の代表選手を送ると内外に既に公約・公言されています。同氏は、実績のあるオリンピック、パラリンピック代表選手を集めるプロジェクトに伊調選手も入っているのかも知れません。しかし、この度の結果が思惑通りに進まなかったので、今後は「日体大女子レスリング部の指導者として」云々の発言を既にコメントされているようですが、まだ諦めず9月の世界選手権の動向、或は階級を変更して挑戦する機会は残されています。よって、松浪氏は、自身の公言・公約を成就する為にももう少し粘り強く事の次第を静観されては如何でしょうか。

次は、至学館大学ALSOKでなく日本体育大学伊調馨選手として日体大代表者公言・公約の70名に協力してあげて欲しいと願う一方、日体大が学生選手をコーチングにより育てる事を放棄して、国際の舞台で活躍が約束された夏季、冬季オリンピック代表選手を安易に獲得して大学の代表としてカウントする事は大学の伝統的な理念と大義に反するので筆者は甚だ悲しくも寂しくも思わずにいられない

 

筆者は、上記①②③の問題点のファクト(事実)が明快になれば、本件の問題、事件は、自ずと明快な真実と結論が出て、対処法が整うと考えます。これらファクトが、現在出ていない前に謝罪会見が行われ、本件の結論及び、その改善、改革を明言しない公益財団法人日本レスリング協会は、スポーツ・アドミニストレイションのレベルが問われても仕方がありません。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

お知らせ:K'sファイルNO.111112は、女子レスの世紀の決闘及びそれに至るバックグラウンドを紹介させて頂きました。読者の皆様は、どのような思考を展開されていたでしょうか。決闘の重量感が何処から来ているのかを少しでもご理解して頂けましたら幸いです。

次週NO.113は、いよいよ本シリーズの最終編としまして、「女子レス二大巨頭の出現が悲劇の始まり」をお伝えする予定です。ご期待ください。