Kファイル╱スポーツドクトリンNO.221:河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション実践編(Ⅰ)日米のADの根本的な違いとは何か

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.221:河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション実践編(Ⅰ)日米のADの根本的な違いとは何か

無断転載禁止            毎月第二、第四木曜日 公開

河田弘道

スポーツ・アドミニストレイタ-

スポーツ・アドミニストレイションの基軸は「Justice正義&Fairness公正」

日本にスポーツ・アドミニストレイション論の必要性を紹介

日米で実践してきたスポーツ・アドミニストレイターの先駆者

(プロフィールは別途ご検索下さい)

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大谷翔平選手の事件に関連した便り

■読者からの便り

こんにちは、KファイルNews Comment by Hiromichi Kawadaを拝読しました。

ネズ・バレロ氏(大谷選手の代理人CAA  Sports)は、財務について何度も大谷選手に通訳を通して問い合わせたが、通訳(水原一平氏)からは関わらないように言われたと聞いています。 私は、エイゼントとして私のクライアントの選手達に財務について指導してますが、財務管理はしていません私が選手達に指導しているのは、一流のファイナンシャルアドバイザー(英:Financial Advisor略:FA、財務・金融関係専門アドバイザー)を雇うことを強く提案することにしています。この雇われたFA(ファイナンシャルアドバイザー)には、受託者責任が伴います。

:受託者責任とは、受益者の利益に反する取引を行わず受益者の利益と保護のためだけの職務とする。

大谷選手に関しては、彼が知らなかったとは信じがたいですが、一平と大谷はとても仲が良いので、一平は友人のために銃弾(此処では友人を裏切った罰の意味)を受けるだろうと思います。とても残念なことだ。大谷は野球界の顔であるがために、MLBは混乱しているのですぐに事件を終わらせたいと考えている。 マンフレッド(MLBコミッショナーのRob Manfred)は、銃弾(此処では矢面に立たされている意味)の汗をかいています。

他の選手の事ならおそらく皆途方に暮れて休暇を取りたいところ。ところが大谷選手の件となると誰も彼を失うわけにはいかない!!ところで大谷選手が今後ネズ・バレロ氏(CAA  Sports)を代理として彼らの関与を望まなかった場合を除き、エイゼンシー(代理店)であるCAAはもっとクライアント(大谷選手)にサービスを提供すべきだと思います。

それはかれらが大谷選手と契約して莫大なエイゼント料を得ているからです。これらは、エイゼントとしての本来の仕事であり彼らの資質が問われるところです。

これは、あなたが大学の専門コースでの生きた教材として重要な研究課題となるのではないですか。私は、スポーツエイゼントとして選手達には最低限の社会常識とそれを裏付ける社会教育もエイゼントの業務の重要なソフトであると信じています。あなたがいつも申されているエイゼントは、コーチでもあるの戒めを今日も忘れてはいません。

お元気で、親愛なる友人よ。(MLBエイゼントオーナー)

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  • 筆者より友人への返信

Hi 私の友へ、

私はあなたからのメールをとても興味深く読みました。あなたは、現役のMLB界の代理人として活躍している立場なので他の方とは異なる心境と見解を持たれています。私は、大谷翔平選手の代理人のネズ・バレロ氏(CAA  Sports)は大谷選手と公私に渡り近い関係にある通訳の水原一平さんを都合よく使っていた様子が透けて見えていました。代理人は、大谷選手と直接のコミュニケイションを避けてきた事にこの事件が起因していると思います。(エイゼントの管理不行き届きの意味)

これは大変ズルイやり方です。このやり方は、いつでも一平さんをスケープゴートに出来るからです。その根拠は、何か問題が発生するとエイゼントと本人大谷選手との間でミスコミュニケイションがあったとして逃げられるからです。しかし、実態は、通訳を介してであり大谷本人とFace  to Faceでない事です。これは、国際ビジネスをやる上で仲介者がとる常道手段です。CAA  Sportsは、プロパー(日英専門)な通訳者をビジネス業務担当としてfull-timeで雇用するべきでした。大谷選手は、プライベイトマターに関しては、仕事として一平さんと個人契約をしているのが常識だと思います。

この度は、本件が露呈した時点でLA/ドジャーズ球団と一平さんの間で契約が締結されていたことが判明しました。それは事件が通訳本人の口からティームミーティングで初めて明らかにした後、間髪を入れず球団は解雇を発表した事です。そして、球団と一平さんとの契約年俸が莫大な数字であった事も露呈しました。これは、大谷選手の代理人、代理店は大谷選手と球団との契約交渉時に通訳を契約条件の中に捻じ込んであった事を証明するものであります。これに伴い、エイゼント側と通訳の間には、契約書が在るはずがLA/ドジャーズ球団がエイゼントの肩代わりをしていたのでないかとの疑念が残るのです。エイゼント料として大谷選手から50億円もせしめていると言われるわりには、やるべきことをやっていなかったようにお見受けします。エイゼント側は、大谷選手がLA/エンゼルズ所属時にも通訳が何処の誰と契約して、何処の誰が通訳料を支払っているかの情報公開はなされていませんでした。

よって、大谷選手に関する通訳を代理人、代理店、球団は、都合がよいので一平を使った結果、一平は全ての関係者の情報及び見てはいけないものまで知る立場にあったのです。そして、彼は、全ての関係者から良い人間だ、有能な通訳だと称賛されて来たのは事実です。それをまた、マスメディアが一平を商品として利用し始めたので、益々本人は裏の顔をカムフラージュ出来たのとは逆に、裏の顔が在る事から彼はパフォーマンスが演じきれなくなり、彼の悪癖の賭博から抜け出せなくなったように思えます。私は、エイゼントがこれらの通常の業務を誠実に行っていたならば、水原一平氏の不祥事は未然に防ぎ得たと確信します。これは、まさに人災に値します。

私は、大谷選手が誠実で聡明なアドバイザーを持っていることの大切さに気付いて欲しいと思います。此れからは、この混乱した事態の目途が立った時点で彼の現エイゼントとの関係を整理して、新しいフレッシュで誠実で面倒見の良いエイゼントに替え、再スタートして欲しいと願います。その為にも彼には、腕利きで信頼できる弁護士が米国内で必要です。

大谷選手は、MLB界での大先輩である野茂英雄氏、ダルビッシュ・有選手も過去に代理人との間で重大なトラブルが発生した経験者達なので、自分だけではない事を肝に銘じ参考にされた方が賢明でしょう。

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目次

大谷翔平選手関係事件

■読者からの便り(米国MLBエイゼント便り)

筆者より友人への返信

はじめに

1.日・米のスポーツに対する考え方と社会的な認識の違い

  ■契約社会(米国)と談合社会(日本)

2.契約に対する概念

  ■談合文化は矛盾の楼閣に在り

3.MLBの経営理念

  ■重要なポイントを見逃している

4.スポーツ・ビジネスの三点セット

続く~

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2024年4月25日  公開

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.221:河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション実践編(Ⅰ)日米のADの根本的な違いとは何か

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Ⅰ. 日・米のスポーツ・アドミニストレイションの違いと疑問

はじめに

日本には、今日も尚スポーツ・アドミニストレイションの学問すら確立されていない事が、スポーツの先進大国の米国に比して後進国と言わざるを得ない根拠がここにあると申し上げて過言ではありません

河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編”に触れられた見識ある読者の皆様は、一様にして我が国の今日のスポーツ界、教育界、TV、マスメディア、広告代理店及び悪徳政治家達の所業を垣間見るにつけて、何が必要で何が欠落しているのかを気付かれたと確信致しております。その根拠は、本Kファイルの全国の読者の方々が同じように我が国に欠落している根本的な学問とその教育を指摘している事です。小生の微力な知的財産が、読者の皆様を通して社会少しでも還元出来ています事を嬉しく思う次第です。これは、また一人でも多くの方々にKファイルを共有して頂く事でもあります。

今日のスポーツ情報社会では、多くのスポーツ経営(ビジネス)とその運営、管理に関係する情報がマスメデイアを通じて24時間世界中で行き交っています。しかし、読者の皆様の中には、知識と経験を持たないでいる方も多くいらっしゃることと思われます。本Kファイルは、これらの情報を少しでも正しく理解して頂く為に専門的な知識を補強して頂き、情報の解読に役立てて頂ければと思います。そして読者の方々がスポーツ・アドミニストレーターとしての立場で理解して下さればさらに興味が倍加すると思われます。スポーツ・アドミニストレイターとは、スポーツに関わる経営、編成、指導、運営、管理に於いてそれらの各専門の部門、部署をマネイジメントしている人達をさらに束ねてトータルマネイジメントを行う立場のトップマネージメントを行う人の総称です

組織、団体に於いては、トップマネイジメントを行う方々です。ここでは、スポーツ・マスメデイアを通して情報を得た皆さんが少しでも正確な情報を取捨選択されより正しく理解されることに役立てて頂くことであって、決してことの良し悪しを論ずる事がその目的でありません。 

1.日・米のスポーツに対する考え方と社会的な認識の違い

契約社会(米国)と談合社会(日本)

米国のスポーツ経営、運営、管理に於ける基軸は、正義(Justice)と公平・公正(Fairness)とされています。これらは、スポーツ界のみならず社会と人の根幹を支えているものだと思います。幼いころから子供達の会話の中には、この言葉(fair or unfair, right or wrong)が頻繁に出てくるのも生活の中で自然に理解しているからでしょう。正義は、人間社会に於いて人々が平和で安全に生活を営むための大義であります。フェアネスは、「共存共栄」を目標にしている社会では不可欠です

わが国の競技スポーツ界では、競技ルールは遵守するが、競技以外のサポーティブな分野、部門でのルールを軽視し、尊重しない大人達が大勢いる為に不可解な事件、問題がスポーツ・マスメデイアを日々賑わしているのも周知の事実であります。このようなスポーツ社会に於いては、フェアネスを堅持し、共存共栄社会を守ることが大変難しいです

日本のスポーツ界は、今こそルール(ペナルティー=罰則を含む)を明文化し、そのルールを公平、中立な機関によりフェアーに裁定されるシステムが必要です。また違反行為者に対する適切な処罰を敏速に下せる為には、司法の整備が必要であることを今我々に問われているのでないでしょうか。2011年に施行されたスポーツ基本法は、この基軸を明確にしてこそ2021年のオリンピック招致活動にも大きな意義が在ったのでないかと思われます。

東京オリンピックに於きましては、2度に渡ります招致活動委員会と主催である東京都、そして東京オリンピック組織委員会(TOCOG略)と主催者の東京都の間での約束事を明文化し、且つ情報公開を都民、国民、社会に明らかにする事で、今日の様なグレイなブラックなイメイジを醸成することなく、真の「おもてなし」を世界にアピールできたのではないかと考えます。

現在わが国に於いては、この正義と公平・公正を基軸としたスポーツの経営、ビジネス、編成、運営、指導、管理ができる志の高いスポーツ・アドミニストレイターの教育と養成が待ち望まれています

注意:近年何か問題、トラブル、事件が発生すると「三者委員会」なる会が招集、結成され事を読者の皆様はご承知の通りです。しかし、国民、社会は、この委員会に騙(だま)されてはいけません。この三者委員会たるは、何の法的な根拠も持たない集団で招集者が都合の良い人選と経費で集められた集団なのです。招集を受けた各専門家と称せられる肩書を持つ人達は、招集した方への忖度が働くのは当然の論理です。このようなフェイク集団を形成する事で、国民、社会を欺く手法で我々国民、社会は納得させられているのです。これは法治国家が行う事ではありません。

2.契約(Contract)に対する概念

■談合文化は矛盾の楼閣に在り

 米国人には、約束事を書面に明文化する習慣があり、また職責、責務を明確にする社会でもあります。よって、契約書は双方の信頼と尊敬の証としてフェアネスを守る保証書であるのです

契約社会の歴史は、テスタメント(聖書)をその起源とすると考えられています。それは神と人間との間の約束事であり契約を意味しています。約束をしたものは、その約束を守りそれを履行する義務があるのです。それに違反した者への罰則(ペナルテイー)は、明確であり当然なのです。

スポーツ競技は、規則・ルールに基いて勝敗が決められます。ルールは、その競技スポーツに関わる全ての関係者の同意により成り立ったものです(同意なく偏った判断と判定がされるならそれは規則・ルールではない)。そのルールに異を唱える者がいたならば、その競技者、関係者、組織・団体は参加を拒否する権利を有します。約束事を破った関係者、組織、団体には、違反行為に対する罰(ペナルテイー)が科されることもまたルールなのです

わが国のスポーツ界の大きな特徴は、この競技以外での約束事を明文化しようとしない伝統的な慣習文化が存在します。マスメデイアを通じて話題になるような事件、事故、問題は、この不透明な約束事がその起因となっている場合が多いのです。約束事を明文化しない、したくないその根拠は、その組織、団体、社会に於いて常にその時々の利権者が権力を擁立しているがために常に談合なる権力者にとって都合の良い抽象的なルールBookを良しとするのです

米国型スポーツのアドミニストレイションに於いては、「人は約束しても守らない人がいる事を前提として対処している」のに対して日本型スポーツでは、「人を信頼しているのだから信頼を裏切る人はいないはずだ」とのご都合主義的な論理を導き出している違いを強く感じます

まさにこの相違は、長きに渡りわが国のスポーツ界に灰色な暗い影を落としてやまない根源ではないかと考えられるのです。近年会社、企業、教育界においては、ガバナンス、コンプライアンス等が問題視されスポーツ界に於いても使用されています。しかし、これらの言葉は、使用する以前にもう一度社会の根幹をなすべきフェアネスとそれを遵守するルールを整備し理解し、自らそれらを規範とした上で使用して頂きたく思うのです。

私は、このような伝統的な社会習慣と文化の中で培ってきた日本的なフェアネス感の中でアメリカ的なスポーツ経営における「共存共栄」の原理をいかに理解し構築して次世代に継承し実行して行くかの判断を今日我々一人ひとりに問われていると思われます。

スポーツの世界では、これらの基盤があってこそ伝統を継承し、改善、発展を遂げているのです。皆さんが大変関心を持って観戦、応援、サポートされているプロスポーツの世界を少しご紹介致します。

 

3.メジャーリーグMLB)の経営理念

現代のプロ球団経営の理念は、リーグの繁栄なくしてテイームの繁栄はありえません。またテイームの戦力の均衡なくして共存共栄は図れないのです。それらの経営の根幹は、

①リーグの覇権をめぐる競争の原理

②リーグの繁栄のための協力の原理(共存共栄の原理)により成り立っています。

例として、ドラフト制度とその対価としてのフリーエイジェント(FA)制度の存在は、人の権利と組織・団体に付与された特権を守るための調和の産物なのです。このバランスが一方的な理解に偏ると日本プロ野球界(NPB)で起きているような悲劇(指名拒否)に発展し、権力を有する人、組織、団体の意見が正論としてまかり通るのが残念ながら我が国のスポーツ界の実態なのです。

プロの選手とは、“自らの身体能力と技術を基にパフォーマンスをもって競い合い、対価(金品)を得て生活の糧とする”のです。そして、その球団組織は、“競技スポーツを経営、運営、管理することによってビジネスとして成立させる”ことが、その主たる目的の一つなのです。スポーツの経営に於いては、他の会社・企業の経営と根本的に異なる要素があります。

重要なポイントを見逃している

それは、生産者である選手、テイームと消費者である観戦者、視聴者との間に於いて一瞬の出会い(Encounter)が行われ二度と同じ出会いには遭遇しないのです。これが「生産と消費が同時に交換される点」なのです。このEncounter(一瞬の出会い)こそが、競技スポーツ・ビジネスの最大の商品であるのです。

今日のスポーツ経営は、大きく二つのタイプに区別されます。一つは、実際にスポーツをする人達が生産者でありまた消費者でもあるタイプ(例:アスレテイッククラブ、エアロビスクール、スイムスクール、ジム、等を利用する人達、等)であります。二つ目は、競技スポーツとそれを観るスポーツ(観戦)のタイプがあります。ここでは、二つ目の経営タイプについてお話をします。

4.競技スポーツ・ビジネスの三点セット

  スポーツを経営する為には、どうしても欠くことのできない大きな「三つのコア(核)」が必要であると考えられます。その中心となるコアを構成するのは①選手(アスリート)②組織者(オーガナイザー)③消費者(ファン)の3者です。以上三つのコアは、スポーツ経営の基盤となる重要な三点セットであります。このどれかを欠くことは、スポーツの経営基盤を欠くことを意味しています。経営に関する成否は、先ず生産する商品が消費者の消費欲を十分に満たせるものであるかどうかが重要なポイントなのです。

プロ球団のビジネスの特徴は、フリーマーケットでないという事です。その理由は、プロのスポーツが特別なビジネス形態がそこにあるからです。

その1フリーマーケットでないと認められている理由。その特殊な事情とは、プロダ  クト(商品)が単独で生産できない、相手(対戦テイーム)が必要なのです。即ちビジネスを成立させるためには、リーグを形成しなければならないのです。

その2プロスポーツの組織・団体には、「公共性」が大前提。そのために付与された「特権」は、①リーグ、協会の設立と設置 ②独禁法適用除外組織・ 団体 ③ドラフト制度とFA権利 ④テレビ放映権の一括販売の権利

但し、MLBでは、今日全国ネット放映の場合はMLBで一括販売され、その収益は30球団に分配され、またローカルネットについては、競争の原理を生かして各フランチャイズ球団の収益となるのです。これは全ての放映権を一括販売により収益を公平に分配することによりレイジーlazy(怠けて努力しない)球団が出たので改善されたのです。日本では、Jリーグの球団組織においてこのような球団が既に出ているのも事実です(J-リーグ報道より)。

NPB(日本プロ野球機構)に於いては、放映権を各球団に与えられている。但し、オールスターゲーム日本シリーズは、NPBが放映権、販売権を管理する。

MLBの球団組織は、公共性を利用しますが日本プロ野球界は、公共性を尊重しないのです。公共性の表現の一つとして、スタジアムを税金で作ってもらうのもその証です。日本のプロ野球球団は、企業名を入れることにより親会社の翼下であることを明確に示しているのです。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

紹介:G-File 「長嶋茂雄と黒衣の参謀」発行文藝春秋社 著 武田頼政

   本著は、2006年10月発売、翌年完売の為現在はAmazonで中古オークションで入手可能。河田弘道の西武・国土計画、東京読売巨人軍での激闘の日々のドキュメントです。登場人物は、全て実名です。

   Kファイル╱スポーツドクトリン、KファイルNews Comment by Hiromichi Kawada

お知らせ:読者の皆様は、大谷翔平選手、水原一平通訳の事件を思い出されながらKファイルNO.221をご笑読されたのではないでしょうか。米国のプロ競技スポーツ界は、日本のそれとは異なり成熟して起きうる問題の質も規模も桁外れに異なる事を実感されたのではないでしょうか。

大谷選手は、LA/ドジャーズ球団で少しづつ本来の実力を発揮し始めています。彼は、コンディショニング第一にこの難関を乗り越えて欲しいと願う次第です。

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.220:河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅴ)エイゼント業務特別編

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.220:河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅴ)エイゼント業務特別編

無断転載禁止               毎月第二、第四木曜日掲載

河田弘道

スポーツ・アドミニストレイタ-

スポーツ・アドミニストレイションの基軸は「Justice正義&Fairness公正」

日本にスポーツ・アドミニストレイション論の必要性を紹介

日米で実践してきたスポーツ・アドミニストレイターの先駆者

(プロフィールは別途ご検索下さい)

 

筆者からのお知らせ

この度は、3月21日に公になりました大谷翔平選手(現LA/ドジャーズ球団所属)の公式通訳の水原一平氏が長年違法スポーツ賭博に関り、莫大な負債を賭博の胴元のマシュー・ボウヤー氏との間で抱えていた事が発覚しました。そしてその返済には、巨額な大谷資金が勝手に引き出されていた事が判明した事が大谷翔平選手の記者会見で明らかになりました。此処で筆者は、スポーツ・アドミニストレイターの視点で申し上げます。大谷選手の米国でのスポーツ選手代理人(エイゼント)は、本事件発生当時から表に姿を現さない事に非常に素朴な疑問を感じている次第です。しかし、この疑問は、時間の経過と共にその裏舞台の様子がここかしことぽろぽろと出始めて参っている事から段々と問題の本質が透けて見え参っている次第です。

本Kファイルシリーズでは、「スポーツ・アドミニストレイション基礎編」を掲載致して参っています。しかしこの度のNO.220は、スポーツ界のみならず社会を震撼させている大谷選手に関係する事件が勃発した為、Kファイルの読者の皆様も気が気でない事を承知致しております。そこで、筆者は、基礎編を実践応用編として今回の事件の実務、現場をご紹介する事に致します。それにより大谷選手が関わる本件の流れと今後の出口に仮説がたつのではないかと思った次第です。その為にも実践に必要な専門的な知識を付与する事で読者の皆様がより理解を深められ、事の次第とその成り行きを冷静に観察、洞察できる手助けになれば幸いです。Kファイルの行間を読んで頂く事に寄り、TV、マスメディアの報道に惑わされることなく冷静な判断をして頂きたく願う次第です。

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読者からの便り米国より

弘道:

私は、あなたがKファイルに書かれた記事をあなた自身が翻訳して下さったことに感謝致しています。内容は、興味深く楽しく読ませていただきました。あなたの観察力と洞察力は、あなたの長年の実践キャリアがその裏付けになり、マスメディアの記事、表現と比較しても全く迫力、リアリティーが異なりますね。現在もあなたの洞察力は、衰えを知りません。現場に復帰されては、どうですか。

大谷選手、ドジャース球団、大谷の代理人、そして通訳にとっても悲しい状況だ。 私は、通訳への圧力に組織犯罪関係者が関与していないことを強く願っています。歴史が世界各地で示していることの 1 つは、多額の資金が関与する場合、通常、違法な手段でその一部を手に入れようとする誰か (または「類似者」) が存在するということです。 大谷さんは大金を持っているのでターゲットにされた(されている)。これは、私達日常の米国民が持っている感情と見解です。

大谷選手が意図あって、本事件に関りを持っているとは、彼のMLBでの言動、行動、態度、倫理観から誰も思っていません事をお伝えします。彼は、野球界のみならず、全競技スポーツ界の貴重な宝物です。M.R.O. (球団経営者)

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目次

Ⅰ.プロ選手のエイゼント(代理人)業務

 先ず初めに

  ■MLBのエイゼント

  ■日本プロ野球機構の協約・規約はアンフェアー

  ■米国のエイゼント規制

  ■プロスポーツのエイゼント業務

Ⅱ.大谷翔平選手と代理人の関係と実態は

  ■大谷選手の代理人紹介

  ■大谷選手を取り囲む環境

筆者の私的見解

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2024年4月11日 木曜日 公開

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.220:河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅴ)エイゼント業務特別編

無断掲載厳禁

Ⅰ.プロ選手のエイゼント(代理人)業務

先ず初めに

 読者の皆様は、MLBの選手にはエイゼント(代理人)が居る事をご存じです。しかし、エイゼントを持たない選手も居る事は、ご存じでなかったかも知れません。MLBの選手契約規約、MLB機構規約、選手会規約にも代理人の必要性の有無は、明記されていないのです。

それでは、何故大半の選手達はエイゼントを持っているのか。これは、選手サイドからしますと、ビッグネームのエイゼントに所属し、ビッグマニーを得て、首に金の太い鎖を掛ける、等々が主に中南米の選手達のステイタスの一つにもなっているようです。しかし、此れも個人差が在るので、賢いプレイヤーは、この様な事が大事だとは考えていません。日本のプロ野球の思慮浅い選手がこのような真似をするのはよく見かけます。その姿を見るにつけ筆者は、その選手の本質を伺う事が出来ます。読者の皆様は、映像を見られてあまり品の良い姿ではないと評されるのではないでしょうか。

プレイヤーに取ってエイゼントが必要なのは、主に球団から高額な年俸を勝ち取る事が目的とする事です。これは、エイゼントにとっても一番大事な業務なのです。プレイヤー同様にエイゼントには、ピンからキリまで居るという事です。エイゼントの中には、野球の経験が無い方も居れば、MLB、大学で活躍した人もいます。

先程ピンからキリまで居ると申し上げました。その意味は、エイゼントには一人で代理人を開業している人も居れば、MLBNBAプロバスケ)、NFLプロフットボール)、NHL(プロアイスホッケー)選手のトップスター選手達と契約をし、企業として経営、運営、管理している巨大なコンツェルン(Konzern利益集団 )を形成しているエイゼンシーも沢山あるという事です。アメリカにおいては、利益集団(interest group)といわれる結合がこれにあたり、一大企業を形成しているエイゼントグループもあるという事です。これらの企業が何をしているかについても後ほどご説明します。

MLBのエイゼント

 ここに於けるエイゼント(代理人=Agent、代理店=Agency)は、選手の契約交渉業務を代行して行う人を指し、主に交渉人(ネゴシエイターとしての役目)として役割を担っています。また選手が集中して競技に専念できるように選手の生活環境整備をサポートする事も重要な仕事としています

注意)米国の四大スポーツ(NFLNBAMLB、NHL)においては、エイゼント登録の制度があり、登録先は全て選手組合でエイゼント資格を取得しなければなりません(あまり難しくはありません)。

日本に於きましては、サッカー界、野球界にエイゼント制度がありますが有効活用に至っていないのが実態です。

1.サッカー界のエイゼント:

 エイゼントになる条件が最も難しく厳しいのがサーカー界のエイゼントであると言われています。何故?―2004年3月に日本サッカー協会が行った試験では、34人中合格者は、わずか4人でした。Jリーグ規約95条には、「Jクラブと選手との契約に関し、弁護士、FIFA加盟国協会が認定する選手代理人以外の者は、代理人、仲介人等名称の如何に関わらず且つ、直接、間接を問わず、一切関与してはならない」と述べられている。エイゼント資格の重要性。(現在2016年度よりJリーグに於けるエイゼント制度は、廃止)

2.日本プロ野球界のエイゼント:

 球団経営の透明化にともない選手の権利意識が高まり、現実は、代理人の存在がますます重要になってきています。

問題:現在の協約には、代理人を拒否する条項はないが、球界ではその存在を無視し続けてきているのが現状です。しかし、04年の選手会ストライキを境にごく少数ではあるが選手側がエイゼントを使用するケイスが増えてきているのも事実ですが、まだ大部分の選手には、代理人を付けた方が如何に合理的で年俸が良くなるかの知識と認識があるわけでないのが実態です。 これは、幼少の頃から野球のみに没頭して来ているが為か社会での思考力が伴わない選手が大半である事を筆者は選手との契約更改時に対応しながら可哀そうになった記憶が蘇ります。また、嘗て日本プロ野球界でエイゼント制度の有無が沸き上がった時に、東京読売巨人軍の渡邊恒雄氏が、「エイゼントなど連れて来る奴とは、契約しない。連れてこない奴には、選手がエイゼントに払う金をくれてやる」との暴言を吐いた事が記憶から蘇ります。これに対して、コミッショナーも他球団のオーナー達も選手会も何も反論しませんでした。

疑問:経営者側が選手との直接交渉を望む大きな要因は、日本のスポーツ界の体質、歴   史から企業雇用の延長としてしかみていないのと、選手が交渉に関しての指導、教育を受けていないことを承知しているからです。よって経営者側は、エイゼント(専門職)と交渉を行うよりこのような状態の選手との交渉の方がやりやすく経営者側(雇用側)の論理で有利に交渉が出来ることが最大の要因です。また、日本社会においては、個々の契約雇用体制への馴染(なじみ)が少なくその歴史が強く残されている事も背景にあると考えられます。

■日本プロ野球界の協約・規約はアンフェアー

経営者側の横暴

 このような背景から日本の球界経営者は、選手が代理人を連れて来る事に対して強いアレルギー反応を示すのは読者の皆様は容易にご理解して頂けると思います。経営者側は、個々の選手と直接的に話し合い(Negotiation)をする事で(選手個々が専門的な知識に乏しく、反論できる材料も持ち合わせておらず厳しい条件闘争が難しい、等)と容易に経営者側の論理で契約交渉が進むのです。

此れに対してエイゼントを入れる事により選手は、全く不得手な交渉事にタッチせずとも交渉人が全て選手側として有利な条件闘争を展開してくれるのであります。またエイゼントは、選手の条件及び契約金、年俸を高騰させる事により自らの取り分の%が上がるので選手、エイゼント双方にメリットがあるので努力を惜しまないのです。

 しかし、経営者側は、これにより契約金が高騰する上に法務・労務上、等の専門的な知識が持ち込まれることによる煩わしさとそれに伴う弊害を恐れ代理人の許認可を軽視、拒否し続けてきているのです。現行のエイゼント制度をNPB日本野球機構)は、許可しています。しかし、この許可に対しては、付帯条件が在る事です。その一つエイゼントは、弁護士資格を有する事。二つ目は、エイゼントは選手1名のみ代理を務められる事。このような二つの条件は、弁護士にビジネスチャンスを与えない(1名のクライアント顧客だけでビジネスにならない、何故ならばMLBの選手の様な高額年俸を得ていない事です)。弁護士以外の第三者は、日本プロ野球界に於いて選手の代理人にはなり得ない事が明文化されています。此のことに付いて、プロ野球選手会(組合)は、何の反論も出来ないでこん日を迎えています。これでは、選手達はいつまで経っても球団経営者に男芸者と疎んじられている次第です。

MLB界に於いては、代理人の資格は選手会が発行しているので、日本の様な球団経営者が代理人を軽視、排除するようなことが出来ない構造とシステムが整っている事が大きな違いです

選手会(組合)の非力

 これは、即ち我が国において戦後経営者側が組合擁立を拒んだ闘争時代の原型を今尚スポーツ界に残していると言えるようです。まさに「フェアネス」の本質を逸脱した例がここにも影を落としていると言えます。 現実的には、球団、ティームにとって、選手と直接交渉を行うよりは、エイゼントと交渉するほうが、時間や複雑な契約手続きを簡素化することができます。ここで日本の選手の問題は、選手自身が経営、ビジネスに対する知識がないために、自分が金を払って迄代理人を雇い、お金の交渉をしてもらう方が利得が在るとの知識も知恵も持ち合わせていない事が問題なのです。即ち、そんな金をかけるなら自分で交渉する方が得だと考えるのです。これは、個人差があるにせよ、教育を疎かにして来たツケが此処にも表れ自ら損をしている事すら気付かないのです。

アメリカやヨーロッパにおいては、エイゼントが選手会、選手に寄り守られて強い力を持っているためか法外な移籍条件を設定することによって選手年俸、移籍金、等を高騰させて、テイームの経営を圧迫することは、選手自身のマーケテイングを狭めることにもなって来ているのも事実です。

■米国のエイゼント規制

 MLB選手会(以下MLB選手組合、MLB Player’s Unionと呼ぶ)は、メジャーリーグ選手のエイゼント(代理人)の資格を発行する唯一の組織・団体です。資格取得には、英語力に問題が無いかの確認、社会常識、ファンダメンタル(基本的な)法知識、野球ルール、他の公的な資格の有無の確認、等が含まれます。そして、資格を取得する本人は、MLB所属球団の40名の支配下登録選手名簿に記載された選手を代理する選手名を提出しなければなりません。即ち資格を取得する時に1名以上のMLBの大リーグ契約をしている選手を確保していなければなりません。これらが整えば登録許可が得られます。

NFL選手組合(NFLPU)

 NFL所属球団の支配下選手お呼び入団予定の新人選手を代理するエイゼント。登録許可―必要。

NBA選手組合(NBAPU)

 NBA所属球団の支配下選手お呼び入団予定の新人選手を代理するエイゼント。 登録許可―必要。

NHL選手組合(NHLPU)

 NHL所属球団の支配下選手お呼び入団予定の新人選手を代理するエイゼト。 登録許可―必要。

プロスポーツのエイゼント業務

1.エイゼントは、MLBに於いて商品価値が高いと評価される選手を高校、大学、外国から見つけ出し、その選手とエイゼント契約を結ぶことからビジネスが始まるのです。その為に、何処の球団もが欲しがる選手に触手を伸ばして、あらゆる手段、方法でエイゼント契約を結ぼうと努力しているのです。近年は、特に日本の高校生、大学生、プロ野球界に所属する投手を血眼で探しているのが現実です。彼らの評価基準は、スピードボールが145キロ以上、変化球3種類、そしてコントロールの安定感のある投手であれば、年齢を問わず買って行くでしょう。

2.契約交渉と契約管理:エイゼントの選手に対する主たる業務は、自分の選手を如何にして商品として球団に認めさせ、最高の契約条件で契約を締結する事です。これによりエイゼントは、契約の総額の1~25%をエイゼント料として基本的に得ています。通常は、5~10%が相場です。しかし、エイゼントと選手間の契約の仕事の質、量によってもこの%が当然異なると言えます。選手は、エイゼントと契約をする前に、他のエイゼントと比較する余裕が必要不可欠です。その理由は、エイゼントの名前、所属会社名に惑わされて契約するケイスが多発しているからです。それにより、契約後エイゼント料をボッタクられたり、球団との契約が高額に至らなかった場合には、その後のマネイジメントに手抜きが見られて選手業務に支障をきたすケイスが多く発生している事を見逃してはなりません。(ビッグネームに飛びつかない事)

3.その他のエイゼント業務;本来大手エイゼントは、選手との契約には球団との契約交渉のみならず、あらゆるビジネスチャンスを逃さない為にも当然、包括的か或いは個々の項目ごとの別途契約をするのが常道です。

その契約には、選手を商品として球団の契約事項に反さないビジネスチャンスを全て生かすがために、選手のマーケティング業務として選手のブランド、肖像権の管理、メディア、イメイジ戦略、チャリティー事業、等と選手の商品価値が高いほど付帯商品のビジネス活動がエイゼントに取っては、大きなビジネスチャンスとなるのです。

4.マーケティングビジネス活動:この活動範囲は、膨大です。それは、書類、映像管理、キャラクター商品管理、選手の広報・宣伝活動、選手のライフデザイン、ファイナンシャル・プラン(投資を含む)、等々とマーケティングビジネスは、金を生む木と呼ばれている所以なのです。

5.エイゼントが狙う選手との別契約:通常選手の商品価値が高い程、契約年俸、契約期間、補償も天文学的な数値になる事はご承知の通りです。此処で大手エイゼントは、この選手の高額な資金の有効活用を選手に持ちかけて一定の金額をエイゼント企業に全て預けて、預けた元金に対する預け料を年額幾らで契約を結ぶのが一般的なやり方です。よってエイゼント企業は、企業のコンツェルン(企業の利益集団)内の投資会社にこの元金を入れて有効活用するわけです。選手側は、元本割れすることなく毎年約束した定額の高利息が付くという事になる様です。

6.選手側とエイゼント間の別途契約業務:通常エイゼントは、選手側のプライベイトのサポートとして、本人、家族へのサポートの一環で住居、生活全般、警備、必要なら子供達の学校選定から送迎、買い物、病院、医師のアレンジメント、及び警備体制から法律相談迄、あらゆることを想定したサポートの準備とケアーを行うのもエイゼント業務です。

例えば、大谷選手のようなクラスであれば上記項目は、当然行われていると理解するのが本業界では常識であります。

Ⅱ.大谷翔平選手と代理人の関係と実態は

■大谷選手の代理人紹介

大谷翔平選手の代理人は、ネズ・バレロ氏(60歳)です。バレロ氏は、CAA(Creative Artists Agency)を母体とした「CAA Sports」の共同経営者であります。母体のCAAは、名門プロダクションで主にハリウッドのスター(ブラッド・ピット氏)達を有する代理人事務所なのです。

CAA Sportsは、多くのMLBの選手達の代理を務めるスポーツ・エイゼントです。その中でも大谷翔平選手は、世界一のクライアント(顧客)である事はご承知の通りです。日本人選手では、過去に青木宣親選手がお世話になっています。ネズ・バレロ氏が公的場に顔を見せたのは、2023年12月14日、ドジャースタジアムでの大谷翔平選手のLA/ドジャーズ球団と契約締結の記者発表の場に同席した姿でした。その場には、ご承知の通り通訳の水原一平氏も同席していたのは記憶に新しいと思います。

バレロ氏は、本契約に際して大谷選手を最高の商品価値である事をLA/ドジャーズ球団に認めさせたのでした。その証は、米大リーグ・エンゼルスからドジャースにフリーエイゼント(FA)移籍した大谷翔平選手(29)の契約を10年総額7億ドル(約1015億円)でスポーツ史上最高額とされる超大型契約成立に導いたのでした。此処で読者の皆様は、念頭に置いて頂きたいのはこの総額の%がCAA Sports社に入る事です。これまた巨額な仕事料です。

■大谷選手を取り囲む環境

筆者の私的見解

 2024年3月21日に本事件が公表されて以来米国の公的機関(IRS、FBI、MLB、その他)が動き出し今日迄一切の本件に関わる事件の捜査状況は、公表されていません。マスメディアに公表されるのは、本論には影響も及ぼさない程度の噂であります。関係者の中で本件に付いて取材に対するコメントして出て来ているのは、大谷翔平選手の代理と称する弁護士、また、先日は、初めてネズ・バレロ代理人(CAA  Sports)が「代理人は大谷の口座を管理していない」と意味不明な短絡的なコメントを出した事でし。このコメントは、取り方に寄れば「私はこの度の事件には何の関りも持っていない」と言いたげに取れます。

筆者は、本事件は長年非常に複雑化した状況が大谷選手を中心にして進行していた様子が伺えます。その問題の中枢に位置するのは、果して何処の誰が大谷資金を管理していたのかです。常識的には、大谷翔平選手と彼の代理人バレロ氏(CAA Sports)の契約書に本資金の運営、管理の責任の所在が明記してあるはずです。此処で明らかなのは、通訳の一平さんの支払を何処の誰が今日迄支払っていたかです。Laエンゼルズ時代には、一平氏が球団と通訳として契約していたのか、大谷選手とは、公私混同していなかったのか、代理人のCAA Sportsと契約していたのかも当時から明らかにされていません

この度初めて、一平さんは、通訳としてLA/ドジャーズ球団と契約していたことが明らかになりました。それは、事件が公開された21日にLA/ドジャーズ球団が一平さんを解雇発表なって初めて分かった次第です。これは、多分大谷翔平選手とドジャーズ球団の間で契約の交渉時に大谷さんからか、一平さんからか、バレロ氏からか、或いは全員同意見で、一平さんの契約をドジャーズ球団に持ってもらうよう契約時に押し込んだことが考えられます。しかし、この場合は、確か年俸が高額であったのでドジャーズ球団と一平さんの契約は通訳のみならず、大谷選手のトレイニング、身の回りの世話、等々と業務が多岐にわたる内容であったと推測されます

ドジャーズ球団は、これだけの重い契約内容で高額な支払である事から、一平さんが大谷選手に関する情報を他言できないよう強い守秘義務がかかっていた事は容易に理解できます一平さんとドジャーズ球団の契約内容次第では、バレロ氏は一平さんと大谷選手に関する情報を共有出来るのは本来は難しい筈です。もし、バレロ氏と一平さんの間に契約関係が無いのであったなら、バレロ氏が一平事件に首を突っ込む(INVOLVE)を避けるのは十分理解出来ます

もう1つ不可思議な点は、大谷選手は一平さんとの間で仕事とプライベートの線引きがあったのか、無かったのかであります。プライベイトで一平さんを使う事は、同意書或いは契約書により支払が発生して当然です。それを何処の誰が線引きして管理をされていたのかです

最期に重要なキーを握られているのは、先日来大谷翔平選手の代理と称する弁護士氏が顔を出しコメントされています。この弁護士氏の立場と業務が明確に公開されていません。また、この弁護士氏及び事務所は、東京なのかロスなのか、日本人なのか米国人なのかも不明です。もし大谷選手がこの弁護士及び弁護士事務所とリーガルマター(法務関係)のアドバイスを担当する事を委託しているとすると、おそらく本事件の深層、真相は、本弁護士事務所及び担当弁護士が把握されていると思われます

米国の捜査機関、司法機関は、日本の様に時間を掛けませんので早い時期に捜査状況の発表並びに今後の指針が公表されると期待しています。この間の水原一平氏とそのご家族の安全と健康を捜査機関が保護して挙げられます事を切に祈念致しております。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

紹介:G-File 長嶋茂雄と黒衣の参謀 文藝春秋社 著 武田頼政

   Kファイル╱スポーツドクトリン、KファイルNews Comment by Hiromichi     Kawada

お知らせ:NO.220エイゼント業務特別編は、如何でしたでしょうか。本件は非常に複雑怪奇に見えますが、実は、大谷選手の取り巻きがあまりにも多くの人達が首を突っ込み過ぎている為、構造的な問題が起因している様子が伺えます。大谷選手の選手としての指導、運営、管理とプロ選手としてのビジネス部門(経営、運営、管理)に関わる、最初のVision(展望、構想)を描いた方が居たはずです。その時点で、既にあまりにも多くの人達が関りを持っていたので、このような事件を起こさせる要因を醸成したのではないのでしょうか。スポーツ・アドミニストレイションの根幹は、シンプルが最高の結果を導く事です。

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.219⁚河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅳ)

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.219⁚河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅳ)

無断転載禁止                 毎月第二、第四木曜日掲載

河田弘道

スポーツ・アドミニストレイタ-

スポーツ・アドミニストレイションの基軸は「Justice正義&Fairness公正」

日本にスポーツ・アドミニストレイション論の必要性を紹介

日米で実践してきたスポーツ・アドミニストレイターの先駆者

(プロフィールは別途ご検索下さい)

 

時事の話題から~

筆者の私見と見解

ティーム大谷の突然の内部崩壊と起因

代理人の脇の甘さによる業務怠慢か

 この度の大谷翔平選手(LA/ドジャーズ球団所属)の公式通訳である水原一平氏の賭博に絡む事件は、世界中の野球ファン、社会を震撼させた出来事でした。Kファイルの読者の皆様は、既に報道を通して事の次第をある程度理解されている事と思われます。しかし、皆様は、マスメディアの報道を決して鵜吞みになさらない方が賢明です。その根拠は、殆どが客観性に基づいたものではなく、そこには人の数ほどのフェイク情報が米国内に於いても錯綜している事です。寄与のスーパースターが関わる出来事なので、それも仕方のない事であるかも知れません。

この報道を最初に報道したのは、米国のスポーツチャンネルESPNのニュース速報番組でした。https://www.espn.com/mlb/story/_/id/39768770/dodgers-shohei-ohtani-interpreter-fired-theft 本URLを筆者が確認したのは、日本時間(JST)の3月21日早朝でした。その時間帯、私は、まだデスクワークをしていましたので、米国からのメールの着信音で気付いた次第です。筆者の興味は、何故本件がESPNの記者、ロスタイムズの記者にのみリークされたのか、何処の誰がリークしたかです。怪奇?

水原氏の賭博行為は、既に数年前のLA/エンゼルズ時代から行われていた事実が明らかになっています。大谷選手のエンゼルズ時代は、水原通訳はエンゼルズ球団と契約していたか否かは公表されていません。この度は、LA/ドジャーズ球団は、通訳自ら開幕1試合目のサンディエゴ/パドレス戦後のティームミーティング時に事の次第をティームに話した後に球団は素早く反応、決断、解雇を発表しました

現時点での米国メディアに於ける問題の焦点は、本ESPNの記者が最初に水原一平氏にインタビューした時の答えと24時間後に再インタビューした時の水原氏の答えに齟齬(そご)がある事です。この24時間の間に何があったのかが今後の展開で明らかにしたいとの様です

こんな時の為にこそスポーツエイゼントは、選手の前面に出て擁護、防御する契約になっている筈なのですが、此処では、大谷選手の代理人(エイゼント)の姿が全く表に出てこないのも素朴な疑問であります。通常は、大谷選手と代理人契約をしているエイゼントが前面に出て大谷選手の代理を務めるべきです。今後どう代理人及びその企業が大谷選手をプロテクトするかが見ものでもあります。代理人の業務は、選手の契約をまとめる事だけではありません。

通常、大谷翔平選手程の超大型の契約をするに当たって選手は、先ず同選手のエイゼント(代理人とその会社)との間でビジネスマネージメント契約があります。そして次に大谷選手の専属通訳は、大谷選手の代理人会社と契約を結び、契約に沿った業務内容で選手をサポートします。また、大谷選手は、個人的に通訳の水原氏とエイゼントとの契約内容以外のプライベイトなマター(事項)で契約をしている可能性が在ります。本件では、このような重要な基本的問題の情報公開が成されていないので読者は理解しずらいかと思われます。

この度の問題で水原氏は、ドジャーズ球団との契約が在った事がドジャース球団が彼を解雇した事で明らかになりました。このように日本のマスメディアは、大事な大谷選手が誰と契約関係にあるのかの基本的な取材と情報公開が成されていない事にプロとしての取材意識の根幹が欠落しているように思います。読者の皆様は、何も感じませんですか。

本件は、現在既に米国国税庁(略:IRS Internal Revenue Service )、米国連邦捜査局(略:FBI Federal Bureau of Investigation)、MLBコミッショナーオフィスの特別捜査、調査が始まっています。これら本件に関わる最高機関の公式報告が出るまでは、全て信頼できる情報ではありません。今後は、大谷選手の一通訳がどうして大谷個人のそれも巨額の大谷資金を自由に自身の賭博の負債の肩代わりに胴元に流し込めたのかが、多分現在の焦点となっている様子が伺えます

FBIは、水原通訳の裏に組織が介在し通訳を操っていたか否かも重要なポイントしてインベストゲイションン(捜査)が行われているのではないかと思われます。それが為にも水原一平氏の身の安全を1時間でも早く、FBIに寄って保護、確保して頂きたく願います。勿論、FBIには、手抜かりは無い筈です

今日迄大谷選手は、アメリカンドリームを超順風満帆にMLBでのスターダムを駆け上っている彼の人生での出来事でした。しかし、彼は、今回この事件で巨大なトルネイド(竜巻)に襲われている現実を今後どう乗り越えられるか、乗り切るかだと思われます。大谷フィーバーに突然トマフォークミサイルが撃ち込まれました。これは、神様が大谷選手に自身の足元を見直すためのパニッシュメント(懲罰)を与えられていると理解して、この難をポジティブな心で乗り越えて初めて真の大谷翔平選手のゴールが見えて来るように思えてならないのは筆者だけでしょうか。此処で筆者は、水原一平氏大谷翔平選手をここ迄サポートし大変素晴らしい仕事をしてきた事は認めて挙げたく思いますhttps://www.youtube.com/watch?v=FchVRKXWoEしかし、この代償は、余りにも大きすぎます。

3月26日(現地25日)に大谷翔平選手は、自らの言葉で本件に付いて初めて会見を開き発表しました。それは、約12分程度新球団通訳同席で行われました。大谷選手は、終始冷静に誠実な態度で正直な解説と説明であった事に間違いありません。試合開始前の会見にも関わらずマスメディアに対応されたのは正解であったと思います。

この大谷選手の会見に於いて、“私も代理人も球団関係者も水原一平さんに嘘をつかれていた”との発言に筆者は非常に違和感を感じました

その根拠は、大谷選手の代理人は“球界切っての辣腕エイゼント(代理人)”と評価し、マスメディアは絶えず報道していました。しかし、この度の通訳の賭博問題で過去6年間代理人が通訳の動向に気づかず、この程の大事件を引き起こし、彼らの最大のクライアントの大谷選手に多大な被害を与えた事は、代理人及び所属会社の業務怠慢以外の何物でもありません。これは、エイゼント業界に於いては最大の汚点であり、ライバル会社の代理人達のほくそ笑む顔が目に浮かびます。

大谷選手は、水原通訳のみならず、代理人(会社)に対して損害賠償を請求できる立場にあると思われます。選手と代理人間の契約書には、守秘義務があるのでこの件については大谷選手個人の弁護士が把握している筈です。

これは、大谷翔平選手の会見内容です。ご参考までにhttps://www.youtube.com/watch?v=VcuvM8y5JvI

私は、大谷翔平選手とご家族、通訳の水原氏のご家族に神のご加護が在ります事をお祈りします。

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目次

スポーツ・アドミニストレイターの中枢を担うGM 

Ⅰ.スポーツ・オペレイションに於ける実戦配備

  1.ゼネラルマネイジャー(GM)の位置付けと職責

    ■GMには、実行力と強烈なリーダーシップが求められる

  2.スポーツ・オペレイションとは

    ■実際にスポーツをプロデュース

    ■スポーツ・オペレイションの人的資源の使い方

    ■スポーツ・オペレイションとマネイジメント

    ■スポーツ・ビジネスオペレイション

   3.貧乏球団(組織)を引き受けた時のGMの手法

   4.GMと監督、専門スタッフの業務とその違い

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2024年3月28日 木曜日公開

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.219⁚河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅳ)

無断転載禁止   

スポーツ・アドミニストレイターの中枢を担うGM

Ⅰ.スポーツ・オペレイションに於ける実戦配備

1.ゼネラルマネイジャー(GM)の位置づけと職責

 一般的にゼネラルマネイジャー(略:GM)は、オーナー、最高経営者(CEO)の直轄管理下に位置しています。このことからもGMは、その球団、組織に特化した最重要なスポーツ・アドミニストレイターの一人なのです。

GMは、球団及び組織・団体の中で経営分野とテイーム編成分野を統括運営・管理する事を職務・職責とする人の総称名を指します。現実的には、①経営部門と②テイーム編成部門の統括管理責任者を配置している場合が多く見受けられます。皆さんが理解、認識されているGMは、多分後者②であると考えられます。 

 GMは、与えられた球団の財産(組織、人材、金、物、情報、ティーム、監督、スタッフ、選手、等を含む)の有効利用と活用能力が問われるスポーツ・アドミニストレイターなのです。特に大切なのは、先ず戦略を立案しその戦略に基づいたティーム作りにおいて現戦力の今後の発展に一番適した指揮官・監督を選ぶ事からです。この選び方を違えると組織に多大な損害を与えるのみならずGMのオペレイション・マネイジメントに最大のダメイジを与えることになるのです。

GMには、実行力と強烈なリーダーシップが求められる

1)トラブル処理能力:利害関係がひしめく業務において問題の本質を敏速に見極め建設的な理解の下握手をさせる能力を意味する。

2)説得力:問題を先ず明確にしてお互いの置かれている現状を理解し、双方納得のゆく方向性と協調性を見いだし協力関係を再構築しなければならない。

3)客観的な対応力:敏速に客観的な要因を見つけだし、主観的な要素、要因を区別する能力が求められます。

4)コミュニケイション力:ポジテイブな対話によって相手の真相と情報を得ながら素早く解読、分析しながら相手にも理解させる交換能力が求められる。本能力を持ち合わせていない人間をGMに任命した場合、その時点で成果、結果は予測できます。GMの選考は、任命権者に全責任があります。

5)人間関係の掌握力:オペレイション部門に携わる全てのスタッフ、職員達との信頼関係を構築し、個々の能力をポジテイブに理解し、それを業務に活用できるよう導く事が大事。

6)オペレイション部門の運営力:個人の個々の能力を導き出し、個々の業務を組織の中でまとめて組織力として活用できる能力が求められる。(マネイジメント力、コーチング力)

7)判断力と決断力:球団、組織の経営、運営コンセプトに沿った判断は、スピードを持った決断力が必要不可欠です。                  

筆者は、自身の実体験から以上主な必用とする力を7項目を上げましたが、GM職には上記7項目は必要不可欠な項目でこれらの適正が無ければ務まらないと思います(組織の規模、趣旨目的にもより負担も異なる)。何故なら常に経営者からは、成果と結果が求められる職務と職責だからです。

また、アシスタントGMの採用に当っては、ただのイエスマンではなくGMの不得手な項目をカバー、フォローする能力ある人材をリクルートする事が賢明です。

小職は、このアシスタント諸氏には大変恵まれ、この方々無くしては東京読売巨人軍の歴史にメイクミラクル、ドラマを刻むことはできませんでした。現在もなお、この方々には心より感謝を致しております。読者の皆さんが応援されているプロ野球球団、プロサッカー球団、等々には、このような項目に当てはまるGM,あるいはそれらしき編成本部長、等と称される方がいるはずです。

2.スポーツ・オペレイションとは

 スポーツ・オペレイションとは、スポーツの活動を作る部門、部署であり実際に行う競技スポーツをプロデユースする現場の運営と管理を意味しています。

■実際にスポーツをプロデユース

一般スポーツの場合

プロスポーツ競技者及びその関係者以外の一般にスポーツをする人達は、生産者であり消費者でもある可能性が高いことも忘れてはなりません。(この場合は、競技性は低くリクリエイション、レジャー、健康維持増進を目的としたスポーツ活動です)

例:スポーツ倶楽部では、消費者(会員)に対してサポートする側は、種々のサービスを提供しています。それらは、インストラクター、トレイナー、健康・栄養のアドバイザー、サポート役のフロント業務、ファシリテイー(施設)、メインテナンスの業務、スケジュールの管理、清掃・点検の重要な役目を担っています。これら全ての人材をまとめ管理する各部署のマネイジャー及び支配人と呼ばれる役は、倶楽部の総合プロデユーサーです。倶楽部の顧客達は、消費者(会員)としての意識も高いです。よって、この場合、消費者は、実践者(商品)でもある事を忘れてはならないのです。

■スポーツ・オペレイションの人的資源の使い方

①仕事の内容、特性を明確にする。

②適切な人員を配置する。

③組織全体が効率よく動ける為の強いリーダーシップが必要です。

④仕事の成果を適切に評価し必ずフィードバックする事が大事です。

⑤モチベイションを高めるには、公平な報酬とそのシステムを明確にすることが大事です。

⑥スタッフへの対応は、常にフェアーに保つ事が大事です。

■スポーツ・オペレイションとマネイジメント 

 本運営・管理には、GMとして能力のある人材を配置する事が大前提です。そして、最高経営者(CEO)は、GMに全ての統括権限を与え契約書に基づいた約束事を履行する事が重要な任務・業務であります。また、CEOは、ビジネス部門と編成部門の責任体制を明確にし互いに無意味なコンフリクト(対立)や業務上の越権行為を起こさせない、起こさない体制を整える事が重要です。また、一部球団、組織、団体に於いては、オーナー兼CEOがGMを兼務している場合を見かけますが(代表的な例は、NFLダラスカーボーイのオーナー兼GM)、この場合は各専門部門、部署にアシスタントGM、アシスタントBMを配置し業務を分担させることが賢明です。

GMの重要な使命は、最高経営者による球団の経営方針に基づいたティーム作りを委託・委任され球団・組織の経営方針に沿ったティーム運営/管理を行い組織の最終目的である「勝利」に導くことです。

★次にGMの資質は、企業経営者としての資質を有し選手・スタッフ・監督の資質を見抜き強いテイームを作る為のリクルート(人集め)とそれを機能させる運営・管理能力に優れていなければならないことです。

そして最後にGMに求められるのは、資質の高い思考と行動力で思考だけでは役立たず、行動力だけでも成り立たないのです。行動力と思考力の高い資質を伴ったバランスを必要とされます。

■スポーツ・ビジネスオペレイション

 スポーツビジネスに於けるオペレイションは、幾つかの重要なポイントがあると考えられます。以下考えられるポイントを列記致しましたのでご参考にして下されば幸いです。

①スポーツを観戦用にプロデユースする。

②選手自身は、プロダクトの一部です。

③マネイジメントを行っているスタッフもプロデユーサーの一員。

④ゼネラルマネージャー(GM)、ビジネスマネイジャー(BM)は、スポーツ組織・団体においての重要なコンダクターであり総合プロデユーサーなのです。

⑤スポーツプロダクトを消費するのはスポーツ観戦者、ファンです。

⑥スポーツプロダクトは物と異なりその生産と消費が同時に交換されることです。

⑦スポーツ消費者(観戦者)は、エンカウンター(encounter、出会い)を求め、プロデユーサーは、エンカウンターを作り商品化することを業務としているのです。

3.貧乏球団を引き受けた時のGMの手法

 GM(ゼネラルマネイジャー)は、スポーツ組織・団体において欠かすことのできない重要なコンダクターであり総合プロデユーサーでもあるのです。ゲームを運営・管理するに欠かせない人材です。オペレイション・マネイジャーとも呼ばれています。このようにしてつくられたプロダクトを消費するのがスポーツ観戦者(消費者)と呼ばれます。

GMは、才能ある監督の発掘のみならずそのスタッフの採用が重要な成功の要素ともなります。安い材料(スタッフ、監督、コーチ、選手)を手に入れて、それに手を加え(マネイジメント)新しい質のよい商品を生産し、ドラフト、FA,移籍というルールを有効に利用、活用して商品を相手に高額で売り、その利ざやで洞察力という能力をフル活用して安い材料を手に入れて、手を加えて蓄財して行く方法が能力あるGMと評されるのである。その為にもGMは、情報収集能力にたけ、それを最大限活用(リテラシー)する実践力が試されます。

そして、そこでは生産者と消費者間では、物と金の交換でなく生産される選手のパフォーマンスに対する対価として観客、視聴者による消費が同時に行なわれる事が特徴です。また、観戦者がスタジアムに直接足を運ぶか、TV、マスメデイアの前に座るか、どちらかアクションを起さない限り観るスポーツは発生しないのです。よって、スポーツ観戦者は、お互いの関わり合いを含めて、観るスポーツの一翼を無意識のうちに担っているという事です。

4.GMと監督、専門スタッフの業務とその違い

 GMは、球団・組織の中枢を担う職務・職責に位置するポジションである事は既に述べました。

球団及び組織の経営者によって雇用(契約)される場合一般的に監督より長い期間の契約となります。何故ならGMは、最高経営者の右腕であり経営陣の一員でもあるのです。特にスポーツ組織に在っては、経営のCOREであるティーム、選手の商品化を図る最重要な役割を担っていて常に中・長期ビジョンに沿ったスポーツ・アドミニストレイターであるので長期に渡ってのティームオペレイションの責任を負っているのです。よって、監督、コーチングスタッフのような短期的契約と区別されるのは当然です。よって、その組織に於いてGM、監督がよく変わるような球団、組織は、最高経営者に経営手腕が無いと言われても仕方ありません。

特にプロのGMは、本来まさに種々のマネイジメント部署を預かり個々のマネイジャー達を束ねて組織の経営、運営、管理を担うスポーツ・アドミニストレイターの最前線部隊の最高司令官と言えるかと思われます。しかし、GMとして適応力の無い人選を行うとその組織の最高経営者は、組織の損失と崩壊を招くのも時間の問題なのです。人選と人事は、最高経営者(CEO)のライフラインと言われる所以がここに在ります。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

紹介:Gファイル(長嶋茂雄と黒衣の参謀)文芸春秋社 著 武田頼政 

お知らせ:如何でしたでしょうか。少し内容が濃くなりましたが今までのKファイルをご笑読頂いている読者の皆様には、良く理解して頂いたかと思われます。本篇は、スポーツ界のみならず会社、企業、組織、団体、等に於いてもファンダメンタルなアドミニストレイションに於いては、ご参考になると思います。

Kファイル特別編 NCAA(全米大学競技スポーツ協会)Pacific 12 最終年  バスケトボールチャンピオン オレゴン大学(Ducks)

Kファイル特別編 NCAA(全米大学競技スポーツ協会)Pacific 12 最終年

 バスケトボールチャンピオン オレゴン大学(Ducks) 

優勝決定戦 

オレゴン大学75対コロラド大学68 2024年3月16日 PST

場所:T-Mobile Arena  Las Vegas NV 

TV Coverage:FOX Net Work

URL:https://www.youtube.com/watch?v=sGfJe0QJ0xs

   https://www.youtube.com/watch?v=KhRLYGxvng8

此れからいよいよNCAAのタイトルを掛けた全米ベスト68校によるトーナメント、称してMARCH MADNESS が間もなく開幕されます。

尚Pacific 12 Conference (加盟校:ワシントン大学ワシントン州立大学オレゴン大学、オレゴン州立大学、カリフォルニア大バークレイ校、スタンフォード大、カリフォルニア大ロスアンゼルスUCLA南カリフォルニア大学USC,アリゾナ大学、アリゾナ州立大、コロラド大学、ユタ大学)は、本年度を持って長い歴史に幕を閉じる事になりました。

新年度からは、ワシントン大、ワシントン州立大、オレゴン大、UCLA、USCは、BIG10カンファレンスにその他は、それぞれ異なるカンファレンスと契約して所属する事になりました。しかし、最後に残ったワシントン州立大とオレゴン州立大は、現在他のカンファレンスと交渉中との事です。このNCAAの歴史で最大の変革の根拠は、フットボールのTV放映権が絡む巨大スポーツ・ビジネス、即ちマーケットの拡大とそこから得られる収益が最大の魅力の様です。

オレゴン大学は、バスケットボールとフットボールの事業収入は現在年間約50億円と言われていますが、更なる収入が訳されることになるのでしょう。この事業拡大の為に、現在のフットボール競技場(70000席)を更に10000席拡張、80000席への準備が進んでいます。2022年世界陸上大会をキャンパスにホストする為に新しく新築した陸上競技のみが使用する新ヘイワードフィールドは、30000席、新バスケットボールアリーナは、15000席、新野球場は10000席とキャンパスはいつしかNikeスポーツキャンパスと呼ばれるようになった。

それもそのはず、ナイキのオーナーのポケットマニーで4900憶円がオレゴン大学のスポーツとアカデミーの発展の為に寄付された事は、世界の業界の知る所であります。勿論、米国内は、元より世界の何処の大学にも無いスポーツとアカデミーに必要な最新施設と実践の場が確立された事を意味します。オレゴン大学とナイキ社の関係は、オレゴン大学のキャンパス内のヘイワードフィールド(陸上競技場)の工房で当時のビル・バウアマン監督により起業された、いわばナイキ社の発祥の地だからです。


文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

紹介:F-file(長嶋茂雄と黒衣の参謀)文芸春秋社 著武田頼政

Kファイル╱スポーツドクトリン、KファイルNews Comment by Hiromichi Kawada

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.218:河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅲ)

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.218河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅲ)

無断転載禁止              毎月第二、第四木曜日掲載

河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ・アドミニストレイションの基軸は「Justice正義&Fairness公正」

日本にスポーツ・アドミニストレイション論の必要性を紹介

日米で実践してきたスポーツ・アドミニストレイターの先駆者

(プロフィールは別途ご検索下さい)

 

ご紹介:読者からの便り

河田様

坂本幸雄氏への追悼文を再度拝読しました。つい昨日までお話をされていた親友がお亡くなりになり、河田さんの悲しみは幾許か、私には想像もつきまん。スポーツ・アドミニストレイターを自負される河田さんが、坂本さんを「ビジネス・アドミニストレイター」を全うされた戦士と形容されたお気持ちに、スポーツとビジネス(半導体)の世界は違えど同じ戦友と認め会える仲間だった、万感の思いがこもっている気がしました。ご家族が亡くなられたような痛みだとお察しします。3月に入っても暖かくならないのは、河田さんのその悲しみのせいかもしれませんね。

坂本さんのご冥福を心よりお祈りさせていただきます。読者より(マスメディアスポーツ担当者)

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目次

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.218河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅲ) 

スポーツ・アドミニストレイターに求められる基本的能力

Ⅰ.マネイジメント力とコーチング力

      ■コーチングの基本技術(スキル)

      ■コーチングツール(道具)

      ■コーチングに必要な心得

Ⅱ. スポーツ・ビジネスに関する基礎知識

    1.ビジネスって何をどうする事

    2.スポーツ・ビジネスとはなんだろう?

Ⅲ.スポーツのビジネス組織

      ■スポーツ・アドミニストレイターの重要なリソース

      ■スポーツ・ビジネスにも規則とルールは不可欠

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2024年3月14日 公開   無断転載禁止

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.218河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(Ⅲ) 

スポーツ・アドミニストレイターに必要な要素

Ⅰ.マネイジメント力とコーチング力

スポーツ・アドミニストレイターには、この二つの大きな要素を持ち合わせているか否かが成功のキーとなると思われます。

1. マネイジメント力

マネイジメント力とは、目的、目標に即した方向に物事を取りまとめる能力を意味します。このようにマネイジメントに関る人達は、組織としての目標やビジョンの設定と同時にそこに至るストーリーを持ち、明確なビジョンをイメイジできる観察力、洞察力が要求されます

2.コーチング力

コーチング力は、個々の能力が最高に発揮できるように導き出す力を意味します。コーチングは、あくまでマネイジメントに沿った一つのファンクション(機能、作用、働き、役目、効用、職務、役割)です

これら二つを兼ね備え、それぞれの高い資質を持ち合わせている経営、指導、運営、管理者は、業務を遂行するに当たって成功率の高い人物と言われます。

ティーチングは、あくまでも知識の付与を主体とする指導法でコーチンの基礎と  なると捉えた方が理解しやすいと考えられています。

コーチングの基本的な技術(スキル)

コーチングは、「現場でただ技術を指導」するだけではないのです。コーチは、あくまで個人の能力にあった指導を開発し、その個人がカンファタブル(人が精神的、肉体的に気持ちよく感じる状態)な状況下で育成、指導してあげられるかどうかがとても重要であると思われます。

コーチの経験主義から来る精神論的、暴力的な言動、態度で押し付けるような指導(強要)は、よいコーチングとは言えず、かえって個人のよい才能、能力を潰すのみならず、精神的、肉体的な障害となるケイスが多いのです。コーチ自身は、如何に個人に対してポジテイブなモチベイションを提供、継続できるかが大変重要であると思われます

コーチングツール(道具)

コーチングに於ける大切なポイントは、「目は温かく、耳は鋭く、口は的確に」が基本的な道具といえます

1 .   目は、口ほどにものを言うと昔から言われています。これは、相手に決して敵意を持たせない、尊敬の念で見つめるのが好ましいとされています。

2.   耳は、相手の心の深層にある深層真意を相手の言葉から逃がさず聴き取り情報を収集する事です。また、相手のトーン、言葉の抑揚から感情をも聴き逃さない事です。耳は、相手の思いを聞き取る為にある器官なのです

3.  口は、コーチの一言で相手のモチベイションのみならず、技術までも活かしも殺しも出来るのです。よって、相手の必要な事だけを的確に最小限度に伝える事が大事です。相手を見下したり、攻撃的、批判的な口調は決して説得力のあるものでなく、口は、災いの元凶となる事を忘れてはならいのです

果たして、暴力を使う教育者、指導者達にこのような道具を持ち合わせているでしょうか。この様な道具を持っているなら現場指導に於いても暴力を用いる必要性が無いのです。問題の指導者達には、本人の資質のみならず、専門教育を受ける大学教育機関の環境と指導者、指導者の免許を付与する教育機関の無責任さと軽薄さに起因する事が大きいと思いますが、如何でしょうか。

コーチングに必要な心得

観察力と洞察力の初歩的活用

コーチングに入る初期段階では、情報収集(準備)の段階で相手にどのくらのコーチングが現在必要なのかを見極める。また相手の現在の能力のレベル及び相手が何を求め必要としているかを見極める。その為には、当人との直接、間接のコミュニケーションから始める事が大事です

それにより、コーチングを始めるに当たって知識、経験量によっては、まだどれ程のテイーチングが必要なのかの目安を付ける事も大事なステップです。これは、相手がコーチングを受けるに値する現在の能力を有するか否かの判断もコーチをする初歩的な判断なのである。

初期段階で必要な資料

相手の経歴、性格、個性、意思、夢、目的、目標、希望、技術、特技、得意、等を出来うる限り早い時点で個々の情報を収集し、ポジテイブなイメイジを持つことが大事です。次に今何を求めているのか。今何が必要なのかを分析し、その求めている方向に沿ったコーチングが効果的です。決して相手の弱点、嫌がるようなネガテイブな部分を攻撃、非難したりする事はその後の指導に大きな障害、障壁を残す結果となるので最大の配慮と注意が必要である

指導者は、相手側に立った気配りと配慮が必要であり、この視点と心を持ち合わせていない指導者は指導者としての資質が欠落した人であり、指導者としての責務を任せるにはリスクが高すぎると判断せざるを得ないのです

暴力を利用、活用する教育者、指導者は、ここが本質的に欠落しているので指導者としては不適合と言わざるを得ないのです。

 

Ⅱ. スポーツ・ビジネスに関する基礎知識

1.  ビジネスって何をどうする事

ビジネス (Business) とは、社会が生産活動を調整するシステム、あるいはその生産活動を指す行為を表す用語です。狭義から広義まで様々な意味を持っていて、1つの日本語に置き換えて表現することはできないと思います。

広義のビジネスについては、ビジネスとは営利や非営利を問わず、組織形態を問わず、その事業目的を実現するための活動の総体と理解出来ます。したがって、ビジネスの主体者としては株式会社などのような営利企業とは、営利を目的として一定の計画に従って経済活動を行う経済主体(単位)であると思われます。社会的企業を区別するために営利企業とも言う。家計も政府と並ぶ経済主体の一つとして考えられます。

国や地方公共団体保有する企業を公企業と言い、そうでない企業を私企業と言います。NPOなどの非営利活動法人や住民サービス提供などを行う行政組織等を含み、個人または法人組織などの事業体がそれぞれの事業目的実現のために、人・物・金・情報などの諸資源を活用して行う活動全体を意味すのす。

2.スポーツ・ビジネスとはなんだろう?

「スポーツ・ビジネス」とは、スポーツを商品としてとらえ、利益を挙げるための事業活動のことです。日本ではまだ馴染みが薄いものの、アメリカにおいてはすでに25兆円の巨大市場をもつなど、完全にビジネスのジャンルとして早くから定着しています。

こうしたスポーツ・ビジネスのノウハウは、主にスポーツのチーム運営にて発揮される場合が多いと考えられます。

地域密着活動や各種イベント開催、組織の構造化、財源確保など、おおよそクラブ運営に関するマネイジメントのすべてがスポーツ・ビジネスの範疇(はんちゅう)に入るといってもよいかと思われます。また自チームの運営だけにとどまらず、他チームのアカウントマネイジャーやアドバイザーたちと手を取りあい、「ダービーマッチ」などリーグ全体が活性化するような試合や仕組みを創出(マッチメーク)することも重要な仕事です。

アメリカの4大スポーツ(フットボール、バスケットボール、野球、アイスホッケー)が常に活況なのは、この部分がうまく機能にしているからにほかならないのです。最近は日本国内でも、こうしたスポーツ・ビジネスを学問として採り入れる大学も多くなったのは、既にご承知の通りです。

ビジネス例として、

スポーツジムの運営、経営、管理とか、スポーツの用品の販売、スポーツ用品を作るメイカー企業、スポーツドリンクと作る企業、ゴルフ場 、指導、運営、経営企業、エアロビックを指導、運営、管理するクラブ企業、バッテングセンター、ドライビングレンジを経営する企業、等々。これらビジネスの主目的は、主として金儲けなのです。

こんな質問に出会った時

今、スポーツ・ビジネスについての卒論を書いているのですが、スポーツ・ビジネスとスポーツ・マーケティングの違いはなんなのでしょうか?この様な質問を学生達からよく耳にします。

▶スポーツ・ビジネスは、スポーツそのものと周辺産業を事業化したもの(すること)を意味していますが、スポーツ・マーケティングは、二通りの意味が考えられます

▶スポーツ・マーケティングとは、

1)スポーツ・ビジネスの事業計画を立てるときに必要な調査やそれを遂行する為の色々な手段。

2)スポーツが経済に与える影響を調査、考察すること。

1)であればスポーツ・マーケティングはスポーツ・ビジネスに含まれ、2)でしたら、スポーツ・ビジネスはスポーツ・マーケティングのファクター(要素)のひとつとなるのです。また、スポーツ・マーケテイングは、スポーツ・プロモーション活動の一つでもあります。

スポーツ・ビジネスは、ビジネスですからスポーツ関連の「事業」であり、スポーツ・マーケティングは、マーケティングですから経営戦略、経営管理、会計、流通などと共にスポーツ・ビジネス(事業)を構成する職能(活動)のひとつと考えられます。

 

Ⅲ.スポーツのビジネス組織

スポーツの経営に於いて重要なのは、スポーツ活動を効果的、且つ効率的に生産し、それを担う組織の経済的基盤を確保することです。スポーツ組織には、実際にスポーツの活動を生み出す「スポーツ・オペレーション部門」とこれを財政的に支援する「スポーツ・ビジネスアドミニストレーション部門」が必要であります

スポーツ組織の責任体制とその責務は、組織が保有するスポーツの「資源」を適切且つ有効に活用して、そこから確実に収益をあげることができなければならない。その収益活動の全体が「スポーツ・ビジネス」なのです。これは、また組織の存続と発展に欠くことのできない重要なファクター なのです。

ビジネス・アドミニストレーション部門は、重要な「スポーツ・マーケテイング部門、部署」も含まれるのです。その具体的な収益業務には、販売促進=セールスプロモ、テイケット販売、グッズ販売、スポンサー獲得、TV、メデイア販売、等です。また、財務、経理、総務、法務、広報、渉外、等の事務的な活動が含まれるのです。スポーツ・ビジネスとは、環境条件に上手く対応、適合して収益性を導き出す働きであり、基本的にはトップマネージメントの「戦略Strategy」であるといえるでしょう

:ビジネス・アドミニストレーションがスポーツ・ビジネスという仕事の全てではない。

■スポーツ・アドミニストレイターの重要なリソース

スポーツ組織にとって「」は最大の資源である

スポーツの経営は、資質の高い人材を獲得できるかどうかが経営成功の是非を握る重要なファクターの一つであることに間違いない。適切な指導者が獲得できるか、適材適所のスタッフが獲得できるか、スポーツ経営のコアである競技者、演技者の能力を十分に引き出せるコーチを獲得できるか、等が組織の業績を大きく作用するのである。また、これらは、教育機関の経営に於いても不可欠な要素です。成功しない組織機関は、この人材の資質に重大な欠陥があるのです。

スポーツ活動には、「もの」が必要である

先ず必要なのは、インフラ整備として用地の確保、アクセスの確保、道路の整備、駐車場の整備と確保、競技場、練習場、等のファシリテイー、クラブハウス、レストラン、等の選手、観客の要望にあった設備を考慮しなければならないのです。

③スポーツ活動に於いて運転資金、設備資金、等の「」は、欠かせない重要なファクターである

収入源の確保。(例:入場料、広告スポンサー料、寄付金、メンバーシップ料、使用料、指導料、放映料、等。)

④スポーツ活動に於ける今日の重要な資源に「情報」が加わったのは、需要な要素です

今日のような情報社会では、スポーツ・コンシューマー(消費者)が何を求めているかという情報を先に入手できるかどうかがスポーツ組織の業績を大きく左右するのです。組織文化(顧客の記憶、ブランド、スタッフのロイアルテイー、ホスピタリテイー、等)も重要な情報源なのである。

:Hospitality(room):心のこもったおもてなしの意味東京五輪招致活動に於いては、この日本語訳が滝川クリスタルさんのスピーチで使用され、買収疑惑が今日もフランス検察当局に寄り捜査活動が継続されている事でも世界の人達の知る所となり、現在もこの言葉がひんしゅくを買っているのをご存じですか。当の本人は、タレントとして雇われ喋らせられたので罪はないと早々結婚されてギャラ丸取りも仕方あるまい。

■スポーツ・ビジネスにも規則とルールは不可欠

今日のスポーツ活動の殆どは、特定の国やそのスポーツ組織が規則・ルールを作り、複数の組織を通して各国に広まったのです。これらは、ある企業が消費者の目の届かない工場で独占的に「商品=マーチャンダイジング」を大量に生産して、彼らの流通ネットワークに拡販するシステムに似た手段なのです。

スポーツの規則・ルールは、通常実践者たちの活動と経験を長く経て発展、進化して行くものです。即ち、ルールとは、熟成度が高いほど多角的な安定感、揺るぎないフェアネスを確立しているという事になります。

スポーツ・コンシューマー(消費者)達は、物のような既製品としてのスポーツを買うのでなく、消費現場で自らのスポーツ活動との出会い(Encounter:遭遇すること、接触、出会い)を買っていることを忘れてはなりません

同じスポーツであれば誰から買っても同じスポーツ活動と出会えるというものでない事をお忘れなく。顧客一人一人のニーズを満たすという点では、スポーツ組織の業務はサービス業と言えるのです。

  

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

紹介:K-file (長嶋茂雄と黒衣の参謀)文芸春秋社 著 武田頼政

   Kファイル╱スポーツドクトリン、KファイルNews Comment by Hiromichi Kawada

お知らせ:基礎編(Ⅲ)は、如何でしたでしょうか。分かっていても分かっていない重要な基礎部分を発見されたのではないでしょうか。発見され、理解されたなら失敗は二度繰り替える必要はありません。皆さんのお役に本河田ファイルがお役に立っていますならこれ程の幸いは在りません。昔から賢者は、「知らぬは一時の恥、知るは生涯の財産」と人は申します。此処に於いても人は、誠実で素直が寛容の様です。

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.217:河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(II)

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.217:河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(II)

無断転載禁止             毎月第二、第四木曜日 掲載

河田弘道

スポーツ・アドミニストレイタ

スポーツ・アドミニストレイションの基軸は「Justice正義&Fairness公正」

日本にスポーツ・アドミニストレイション論の必要性を紹介

日米で実践してきたスポーツ・アドミニストレイターの先駆者

(プロフィールは別途ご検索下さい)

 

坂本幸雄様 

 今は亡き坂本幸雄さんに謹んで哀悼の意を表します。

 

坂本幸雄、元TI(Texas Instrumentsテキサス・インスツルメンツ)副社長,エルピーダ・メモリー社長、2019年11月、中国半導体最大王手の紫光集団 副総裁に就任、日本体育大学卒、日本体育大学元理事

   私は、2月14日の彼の突然の死が今も信じられません。彼とは、日本体育大学の同期であり、親友の一人でありました。彼は、今日迄努力を惜しまず、全く専門外の世界から世界の半導体業界のトップ経営者にのし上がった風雲児です。

つい先日(2月13日)は、3度も彼とコミュニケイションをしたばかりです。今月末に昼飯をしようと決めていました。しかし帰らぬ人となった事に人の命のはかなさを思わずにいられません。彼は、中国の紫光集団の副総裁として中国政府最高幹部から直接招かれ、契約の決断に至った事で彼の人生の最後の目的・目標を果たしたかったのだと思います。彼は、政治、政治家を好まず経営者としての「ビジネス・アドミニストレイター」を全うされた日本人戦士です。坂本幸雄は、いつ迄も我が親友であり、仲間です。

最後まで日本体育大学の現状、経営者達の資質と行く末を憂いていたのが印象的でした。どうか此れからは、奥様の側で平和な日々をお過ごしください。

深謝

河田弘道

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➡読者からの便り~

河田先生

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.216号拝読いたしました。

スポーツ・アドミニストレーションを学ぶために「スポーツとは何なのか」まで遡る先生の姿勢にはこちらも背筋を正す必要があると感じました。

大学の教員として、そしてアスレティックトレーナーとして日々「スポーツ選手」と接している自分ですが、時折このような基礎に立ち返ることが必要だと分かっていながら、それを疎かにしてきたことにも気づかされました。

とくに「観る魅力」「観られる魅力」についての理解が本邦にはない、ところは武士道の悪い影響のように思えてきます。

例えば、野球の2塁手が、1・2塁間を抜ける打球を左手(シングル)で補給し、クルっと半時計方向に270度ターンしてセカンドのカバーに入っているショートの選手に送球するプレーを、国内の中学や高校の指導者は「カッコつけるな」と非難しますが、米国だと「ダブルプレーにチャレンジした」と褒められます。正面で捕球し、ミスするリスクを減らしたいという「一つも負けられないトーナメント主体の高校野球」と「リーグ戦で全てのチームに平等に機会が与えられて行われるアメリカのベースボール」の違いより、本邦特有の「出る杭を打ち、選手に対してマウントをとりたい」大人の歪んだ気持ちがそこに透けて見えて辛いです。

出る杭はもっと出ていかないと、日進月歩のこの世界では頂点に立てないのに、その競技を好きになったばかりの中学生や高校生の気持ちを折る指導をする人たちがあまりにも多いことにがっかりします。その方々もその時期は「観られる魅力」を感じていたはずなのに、と。

前任校で水泳部の監督をしていた時は、彼らがウェアを作りたいといったときは必ず口出ししてきました。どうしてもプロ意識に欠けたちょっとふざけた感じ、それも部員間でしか通じないメッセージを含んだものを作りたい、というケースが毎回のように上がり、その都度「どうみられるか、を考えなさい。唯一オリンピック選手たちと同じ試合に出る部活動なのだから、大学からも支援してよかったと思ってもらえるようなモノを作りなさい」とやり直しさせたことが何度かありました。モニター校としてまだ他には卸していない新製品をいち早く準備してもらえた時の選手たちの誇らしい姿は今でも時々思い出します。試合会場だけでなく、そこへの行き帰りも「観られる」ことを実感していたようです。最後は余談になりましたが、次の投稿を心待ちにしております。

大学教員より

➡卒業生からの便り~ 

河田先生

平素よりお世話になっております。SADの記事、拝見いたしました。大学生当時、先生の講義の背景にある膨大な実践経験を少しでも多く学び取ろうと、必死だった日々が懐かしいです。思えば私は先生の講義を受けることが大学に通う大きな目的で、そのために学費稼ぎのアルバイトに明け暮れておりました。

今や先生はそれをブログで公開してくださっております。ブログへとたどり着き、値千金の情報に無料で触れられる読者は幸福です。まだまだ経験不足や知識不足ゆえ、先生のブログから学び取りきれていない部分も多いと感じています。読む事だけでも辞めずに続けさせていただきます。これにより嘗て目も心も輝き、集中していた自分に戻ろうとポジティブなモチベイションにさせて頂いております。いつ迄も感謝の気持ちで一杯です。家庭を持ち社会人になった元河田ゼミ生。 読者より

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目次

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.217:河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(II)

I. SAD(スポーツ・アドミニストレイション)は各部門のSM(スポーツ・マネイジメント)をトータルマネイジメントするもの

先ず初めに

  ■スポーツ・マネイジメントとは何か?

  ■筆者が驚嘆した日本の大学教員

  ■筆者が米国の大学で体験した実践に即した科目

   SADの次なるステップ

  ■素朴な疑問と質問

II.スポーツに於ける組織は必要不可欠

 1.ガバナンスは組織を堅持

 2.組織には場所が大事

 3.集団・組織・団体の違いをご存じですか

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2024年2月29日   公開

Kファイル╱スポーツドクトリンNO.217:河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(II)

無断転載禁止

I. スポーツ・アドミニストレイションは各部門のスポーツ・マネイジメントを統括運営・管理する

 

先ず初めに

 我が国に於きまして近年特によく耳にするのは、「スポーツ・マネイジメント」と称する言葉です。この言葉は、非常に便利な用語ではあるのですが、余りにも多岐にわたりフォーカス(Focus,焦点を合わす)し辛い特徴があります。

筆者は、10年ほど日本の私大の学部に所属し、スポーツ・アドミニストレイション論、スポーツ科学論の講義授業を行ってまいりました。その中に於いて専門科目の中でスポーツ・マネイジメント、スポーツ・ビジネスの看板を掲げて指導に当たる教員(教授職)の方々に疑問を抱きました。その発端は、ゼミ生から所属学部の各教員の講義内容について質問を受けたからです。その教授方は、いつどこでその専門の学位を納められ、何処でプラクティカル(実践的)なキャリアを有したか、全くその証が無い教員方が各学部で教授職を務めて居る事に驚嘆したのが第一印象でした。ゼミ生達が戸惑っている理由が初めて理解出来た次第でした。

そこで、この度は、スポーツ・アドミニストレイションの中枢の一角をなすスポーツ・マネイジメントと必要不可欠な組織に付いて触れて見ました

 

■スポーツ・マネイジメントとは何か?

簡単に言えば「スポーツに関する事業部門を経営、運営、管理する仕事」の広義な総称なのです。しかし、マネイジメントは、ビジネスのみだけに用いる用語でありません。皆様の身の回りを運営、管理するのもこれまた全てマネイジメントなのです。しかし、「スポーツ」や「ビジネス」の意味が大変広義なのでよけいに混乱もするし、人により解釈も異なるのです。

現代のスポーツ・マネイジメントには、スポーツ活動をやることに重点を置く、オペレイション志向とスポーツ活動を見せることに重点を置くプロダクト(プロデユース)志向が戦略的な特徴と言えます

■筆者が驚嘆した日本の大学教員

 米国の大学でもよくこんな事を耳にしました。スポーツ・マネイジメントって何? スポーツ・マネイジメントという言葉は、あいまいで、日本とアメリカでもその意味するとところは微妙なようです。

日本の大学でスポーツ・マネイジメント学科と名付けていてもコースの中身はまちまちです。よって、教えている教員もバックグラウンドもまちまちのようです

しかし、これは、酷い特例です。

日本の某総合大学では、教授がスポーツ・マネイジメント、スポーツ・ビジネスを教えているが、バックグラウンドは何と幼児体育、ある教授はリクリエイション、実技だったりしている教員もいるのです。此れには、大変驚嘆しました!

そしてまた、この専門分野、部門の教授職の方々は、一度もその理論、知識を一般社会、専門社会で実践経験を持たない方々が大多数である事です。これでは、受講する学生達の知識と理屈は増えても実践で使用、活用できるか否かの不安は拭えません。また社会に出て非常に戸惑う事に違いありません。

この様な状況が学内で起きている背景には、近年のスポーツブームが脚光を浴びている事から、此れ迄の体育、実技、スポーツの分野で伝統的な社会体育の分野で胡坐をかいていた教員達が、我先にと急遽、スポーツ・マネイジメント、スポーツ・ビジネス、等と看板を掛け替えた怪しい教授達が急増した証なのかも知れません。これらは、丁度一時期体育、スポーツ、元選手達がTV、マスメディアに顔を出す際に、我も我もとスポーツ・ジャーナリストを名乗った状況が、大学教育機関では、異なる看板を専門家の如く学生達の前で振舞っている様子が酷似のように思えます。

これは本人はさることながら、教授として採用、雇用している大学側の問題も大きいし無責任です。大学(カレッジ)アドミニストレイションの在り方とその採用の標準基準の規定・規約が存在しないのかも知れません。これは、大学の推薦人、任命権者、選考採用委員達が無責任すぎるのですが、どうも日本の大学では、採用時にその時々の学部、大学、法人に於いての忖度人事が罷り通る現実がこのような学生にとっても、大学にとっても不利益で、迷惑千万な歪んだ教員採用が今日も尚行われている大学教育機関の様子がうかがわれます。これらは、カレッジ・アドミニストレイターの貧困が此処に現れて居るように思えてなりませんが、皆様はこの実態をどう思われますでしょうか。

又真逆に、学部、大学、法人の意思に沿わない教員は、その教員が正論であっても排除されていく人事が罷り通っている事も確かなようです。読者の皆様の中には、胸に手を当てられると感じる教員、大学、大学経営者が居たのではないのでしょうか。

■筆者が米国の大学で体験した実践に即した科目

 米国の大学でのスポーツ・マネイジメント学科、大学院でのスポーツ・アドミニストレイション専門課程では、カリキュラムは通常以下のようになっています。代表的な専門科目をご紹介します。

①テイームスポーツのマネイジメント、アドミニストレイション

②選手のマネイジメント

③スタジアムのマネイジメント、アドミニストレイション

④スポーツ組織・団体のアドミニストレイション

⑤スポーツ・ビジネスアドミニストレイション:スポーツを通しての商品化、企業のマーケテイング、プロモーション(スポーツイベントの企業スポンサーシップ、選手との個人契約、他)

⑥スポーツその本体のマーケテイング、プロモーション(グラスルーツスポーツ=草の根スポーツの推進等)

⑦スポーツに関る法律(Title9,Liability,Risk Management)

⑧スポーツ・マネイジメントのコースカリキュラム、テキスト作り(大学)比較的に新しい領域なのでこれから途上改善、改良がなされていく。

⑨他人文、自然科学の専門科目多数

SADの次なるステップ

 MBA(Master of Business Administration)がビジネスを一般的に学ぶところであるのに対して、スポーツ・アドミニストレイション(Sports Administration)は、特に大学院レベルでマーケテイングやプロモーション、ヒューマンリソース(人事)、他を含むスポーツに関する経営、運営、管理を専門的に学ぶところです。近い将来、MSA(Master of Sports Administration)の学位が確立されると思われます。

■素朴な疑問と質問

 ManagementとAdministrationって何がどう違うんですか?

日本では、この専門分野、部門が確立されていない欧米の模倣、受け売り的な要素が強くあり、今スタートしたばかりのようです。米国の大学に於いては、学部(Undergraduate  School)では、スポーツ・マネイジメント学科、大学院(Graduate School)では、スポーツ・アドミニストレイション専門課程と厳密に区別しています。

私も、大学院時代にこの質問を担当教授に授業中にしたことがあるのを記憶しています。教授の回答は、「アドミニストレイションの人間がマネイジメントの人間を雇い、その人達を運営、管理しているのだ」との教えを受けた。こう説明、指導された時に私は、この説明でなるほどと素直に脳裏に落とし込めたのを今も鮮明に記憶しています。

それでは、選手のエイジェント(代理人Agent)やスポーツイベントの企画運営はマネイジメント、それを包括する組織、団体や企業の経営管理がスポーツ・アドミニストレイションか?現場の人間(マネイジメントする人達)が働きやすいようにバックアップ、サポートするのが経営側(アドミニストレイション)の役割」とこれも間違いではありません。しかし、アドミニストレイションとマネイジメントの区別は不明瞭で、日本では、マネイジメントと呼んでいるようですが、これはアドミニストレイションの本質を学ばれていないからだと考えられます。その意味説得力に欠けるのは、オリジナリティーのない(米国からの受け売り的)悲しさでもあるのだと思います。

 

II.スポーツに於ける組織は必要不可欠

1.ガバナンスは組織を堅持

  ガバナンスという言葉は、近年これ程日本国であらゆる分野で使用されているカタカナEnglishが嘗てありましたでしょうか。この用語を品パに使用される方々は、格好いいと思われている方々か、何かをごまかす事を目的に用いられているのかも知れません。しかし、残念ながらこの用語をどれ程の一般国民、社会で理解されているか、誠に疑問に思えてなりません。マスメディアで報道、掲載なされる場合は、是非面倒でも日本語訳を付けて置かれた方が親切だと思われますが、如何でしょうか。 

ガバナンス(governance)とは「統治・支配・管理」を示す言葉です。スポーツ組織とは、スポーツに関する特定の「目的・目標」を持つ複数の個人や集団によって構成され「統括・統制力」を持った組織体のことです。 

スポーツ組織の成立要因は、そこには規則・ルールが必要不可欠なのです。

競技スポーツの特徴は、勝敗を競い合うものです。勝敗を競う為には、各競技種目別にルールが必要で統一されていなければフェアーではありません。競技の勝敗を決するためのルールは、個々の参加者が話し合いで決める事は不可能です。ルールは、一部代表者達が規定を起案して、長い年月をかけて醸成されて熟成して行くものであり、ここで志を同じくする参加者達はこれに従う事を約束しなければなりません

統一されたルールに従う集団は、競技会への参加資格が得られ、競技の結果、成績、競技力もまた正当化されるのでなければならない。また、ルールとは、勝敗を競う試合のみにあらず、「スポーツ競技を運営、管理するルールも試合と同じに必要不可欠」なのです。日本のスポーツ・アドミニストレイションの欠陥は、このスポーツ競技を経営、運営、管理するルールをリスペクト(尊敬,尊重)しない点にあるのです。その悪例が東京五輪組織委員会のアドミニストレイター達は、不誠実なルール破りの集団と化し、今日最高責任者は、逃げ回っている次第です。

2.組織には場所が大事

次に必要とされるのは、「組織を経営、運営、管理する場所」が不可欠なのです。

競技スポーツは、勝敗を競う為の場である事はご承知の通りです。その競技場は、参加者たちにとっても公平中立な場の設定が不可欠です。規則・ルールに明文化されるべき重要な項目なのです。ホームとアウエイ方式は、このフェアネスを維持する為の方式なのです。

このようにスポーツの組織とは、規則・ルールに従うスポーツ集団の集合体がスポーツの組織と言われる所以なのです競技会は、必然的に地理的・地域的な要因が伴うので各地に分散を余儀なくされるのです。そこで各地に分散した集団は、組織を形成してその組織が大同団結して全国規模の組織に発展し、各種の競技スポーツ組織が団体を形成して行くのです。

スポーツ組織の例-               

スポーツの組織というと皆さんは、IOC国際オリンピック委員会FIFA(国際サッカー連盟=Federation International Football Association)、全日本高校野球連盟、日本サッカー協会(Japan Football Association、略称:JFA)、日本陸上競技連盟全日本柔道連盟、等といった種目別の各競技団体や日本スポーツ協会JSA(旧日本体育協会)は、長年に渡り日本体育協会と言い張って参りましたが、等々体育はスポーツでない事を認めざるを得なくなりようやく看板を書き換えた次第です。都道府県・市区町村は、今尚体育協会の名称を改める事も無く継承しているのが現状です。

米国に於いては、USOC(United State Olympic Committee),NFL(National Football League),NBA(National Basketball Association),MLB(Major League Baseball),NHL(National Hockey League),

NCAA(National Collegiate Athletic Association、全米大学競技スポーツ協会), etc.が代表されるスポーツ組織です。

3.集団・組織・団体の違いをご存じですか

 ここでは、整理を兼ねてスポーツには不可欠の組織・団体について述べておきます。

組織・団体を語る前にその前段となるのが、「集団」と呼ぶ集りが在ります。

それは、複数の人々の間で規則性と持続性がある相互行為や関係があり、されにある程度共通、共有する志向が分有されている状態の事を「集団」と呼びます

一例として、クラブやサークル活動は、愛好者の集まりで、その規模、人数、役割分担等で見る限り組織より集団と表現した方が適切なのです。

次に特定の目的・目標を達成するために、個人や専門的に分化した諸集団の活動を動員、統合するシステムが機能している事を「組織」と呼ぶのです。即ち、スポーツ集団を統括し、統制する団体をスポーツ組織と捉えることができます。

例えば、企業スポーツ、テイームは、会社の中の一組織として制度化され、学校の部活も同様、総合型地域スポーツクラブも同じ形態を有していることから組織と呼ばれます。

注:ここでいうシステムとは、各構成要素が相互にある種の関係を持ちながら形成する一つの「全体」を指す。役割や制度に焦点を当てた場合は組織と捉える。

最期に整備された組織を持つ集団を「団体」と呼ぶのです。即ち、1つの競技団体がその下部に複数の競技組織を有すれば団体と称する。

以上上記は、集団、組織、団体に付いて整理致しましたが、ご理解頂けましたでしょうか。お役に立ちましたら幸いです。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

紹介:G-File (長嶋茂雄と黒衣の参謀)文芸春秋社 著 武田頼政

   Kファイル╱スポーツ・ドクトリン、

   KファイルNews Comment by Hiromichi Kawada

お知らせ:

 読者の皆様は、多種多様な分野、部門をご経験されて来た方々、現在仕事として携わっていらっしゃる方々、此れから社会に向かわれようとして方々がいらっしゃられると推測致しております。ポーツ・アドミニストレイションは、スポーツだけに関わらず多岐にわたり共通・共有する専門分野である事を改めてご理解して頂いていますのでしょうか。此れから社会に挑戦される方々は、特にこの基礎編を確りと学び身の回りのあらゆることで実践経験を積んで頂き、肥やしにして頂きたく思います。

Kファイル/スポーツドクトリンNO.216: 河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(I)

Kファイル/スポーツドクトリンNO.216:

河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(I)

無断転載禁止           毎月第二、第四木曜日 掲載


河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ・アドミニストレイションの基軸は「Justice正義&Fairness公正」

日本にスポーツ・アドミニストレイション論の必要性を紹介

日米で実践してきたスポーツ・アドミニストレイターの先駆者

(プロフィールは別途ご検索下さい)

 

目次

スポーツ・アドミニストレイション基礎編

先ず初めに

Ⅰ.スポーツ・アドミニストレイションの概念

       ■日本の大学生に必要なSADを学ぶ姿勢

       ■スポーツって何?質問されあなたはどう答えますか

1.スポーツの概念(アウトライン)

2.体育の概念

3.スポーツと体育を混同しない事

      ■スポーツを簡単に区分してみると

Ⅱ.スポーツの魅力とは何だろうか

本編のまとめ

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筆者からのワンポイントアドバイス

あなたのお子さん、お知り合いがスポーツ活動(それがトップアスリートであれ、ビジネス、指導者、等であれ)に興味を持ち、しかし、適性を持ち合わせているか否かを見定める為には、スポーツ・アドミニストレイションの基礎知識が先ず必要不可欠である事を教えてあげて下さい。役立ちます。

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2024年2月15日  公開

無断転載禁止

Kファイル/スポーツドクトリンNO.216:

河田弘道のスポーツ・アドミニストレイション基礎編より(I)

スポーツ・アドミニストレイション基礎編

先ず初めに

 今日では、皆さんに必要、不必要な情報があらゆる情報機関・機器から湯水のごとく日夜溢れ出ているのが現代社会です。

一昔前のように情報源は、新聞、TV、ラジオ、雑誌と特定のマスメディアにより一方通行で与えられ、誤った情報も意図的に垂れ流されている事も疑う余地すら与えられなかった時代がつい40年前まであった事をすでに忘れてしまっているようです。

 このような多種多様な情報とその活用(Literacy)、整理(Organize)の技術を構築する事が我々には問われ、必要となっています。しかし、この情報から得られた知識を如何に実践に於いて活用するかは、個々の専門知識を先ず構築する事が大事な事であると申し上げます。そして、次に必要となるのは、構築した専門知識を如何にして活用するかの実践キャリアを構築する場とその環境が必要になってくるのです。

何事にも志を高く持ち、夢を抱く事は自然な人の摂理であり、あなたは、その夢に接近する為の現実的な目的を持ち、目的に近づく為のより可能な目標設定が必要なのですこれが目的達成の為の準備です。あなたは、この気の遠くなるような努力と忍耐と自身との葛藤に打ち勝てますか。

 

Ⅰ.スポーツ・アドミニストレイションの概念

 スポーツ・アドミニストレイション(略:SAD)とは、スポーツに関わる全て(経営、ビジネス、マーケテイング、運営、指導、編成、管理、etc.)のトータルマネージメントを集約するトップマネージメントの総称なのです。これを理解する為にも、あなたは、これらの基礎知識を学び、実戦を経験する事をお勧めします。それは、教室の机上及び理屈で会得する事は難しいと思われます。

 中でも理解しやすい例で解説いたしますとスポーツの球団、組織、団体のフロントとフィールドに於いては、野球であればベースボール・アドミニストレイションと呼ばれます。

スポーツ・アドミニストレイションには、大きく区分してビジネス分野とオペレーション分野が組織の両輪として不可欠なのです。ビジネスに於いては、経営、ビジネス、マーケテイング、プロモーション、運営、マスメデイア、等々に関連するマネージメントとその管理を学び、オペレーションに於いては、皆さんが一番興味あるスポーツを商品として価値を高める即ち、「如何にしたら勝てるテイームにするか、選手を強化してスター選手を育て強化構築できるか」の編成、指導、運営、管理部門も含まれ学ばなければなりません。

いわば、競技スポーツに於いての、スポーツ・アドミニストレーションは、フロントのビジネス部門と現場のフィールド部門の両輪をトータルマネージメントすることなのです。要するにトップマネージメントを行う組織の中枢部門、部署を学び会得することなのです

■日本の大学生に必要なSADを学ぶ姿勢 

  日本の大学に於けるゼミでは、講義授業で得た知識を基に少しでも実践を伴った演習活動を通して知識だけで理解しえない経験をし、大事な4年後の皆さんの出口、即ち将来社会で活用できる実践力を身に着けてほしい場なのです。好きな仕事がスポーツであればこんな幸せな事はない。仕事がスポーツでなくても社会での仕事に必要な実践的なスキルを会得する事が大事です

日本の大学に於いては、河田ゼミI、Ⅱ、Ⅲと階段を登ります。しかし、米国の大学では、スポーツ・アドミニストレイションは大学院からで学部4年間はそれに必要な基礎専門分野を学ぶことになります。残念ながら日本の大学の様なゼミは、米国の大学には設置されていません。皆さんは、このことも初めて知る知識となるでしょう

 しかし、仕事を得るためには、先ず専門的な知識を学び、そして少しでも実践経験を積むことが何よりも大切です。スポーツ・アドミニストレイションは、学問の為の学問であったり、研究の為の研究ではありません。全てがスポーツの世界に出て、何が出来るのかを学ぶ究極の実践在りき、の競争の社会で生き抜く為の武器を装備する為の学問、学習の場と理解して頂ければわかりやすいのではないでしょうか。

皆さんが興味ある分野、部門は、それだけ競争力も高いということです。現在、高校まで競技スポーツを続けて来た学生さん、また引き続き大学に於いても続けている皆さんの中でプロ選手として将来生活できるのはごく限られた人だけです。その為には、スポーツの専門職の勉強を今からしっかりと始めて於かなければ、好きなスポーツで生活するのは難しいのです。先ずは、その方法を専門的に学ぶことから始めなければなりません。スポーツの経済、ビジネス、そしてマネージメント、そしてオペレーションは、保健・体育の分野と授業でない事を先ず理解して下さい。それは、全く異なる専門分野であり部門であるのです。私は、日本の体育系の教育機関でどのようにしてスポーツ・マネージメントを指導されているのかは存じません事を申し添えます。

 私の経験から申し上げますと、大学では、4年間何かのアルバイトを目的を持って続けることを勧めます。それは、社会との接点を持ち、お金を頂くありがたさ(生産して対価を得る)を学び、お金をどのように有効活用するかのマネージメントを学ぶこともスポーツの専門コースを学ぶに当たっての実践学習の基礎と基盤となります。

■スポーツって何?と質問されあなたはどう答えますか

1.スポーツの概念(アウトライン)

 スポーツとは、楽しみ、健康の維持、増進を求めたり勝敗を競ったり、またそれを仕事の目的で行われる身体活動(運動)の広義な総称なのです

スポーツが遊びであれ、競技、仕事であれスポーツに共通するものは、身体をその目的の為に動かすことにあるのです

スポーツ(Sport)の語源とその歩みー参考までに、

語源は紀元前五世紀、ローマ人の言葉で”気晴らし、遊ぶ“と理解されラテン語で“deportare=デイポールターレ”と呼ばれていたんだそうです。その後、フランス語で”desport=スポール“と呼ばれ、後十一世紀以降イギリスに渡り、16世紀に”Sport=スポーツ”となり十九世紀に国際語として発信されたとされています。

 

2.体育の概念

 体育は、英語のphysical education(身体教育)の訳語として戦後の教育改革に於いて新しく導入された学科目です。保健体育は、physical and health educationの訳語であり、我が国に於いては第二次大戦(1945年)後、名称も保健体育と呼ばれるようになったのです。

即ち、体育とは、心体の健康を維持、向上させる為の教育学の分野なのです体育学は、体育に関する諸科学を組織・体系づけたものを意味する場合と、体育教育学を意味する場合がある事をわすれてはなりません。これらを総称して体育と呼んでいるのです。本来体育には、スポーツ、競技スポーツを共有する部分を少し有するが、定義は異なるのです。

3.スポーツと体育を混同しない事

     日本のスポーツは、学校の体育の授業から始まるところが大であった事はご承知の通りです。あるいは課外活動=クラブ活動が体育の一環のように誤って教育、指導、管理してきたのにも大きな問題があります。よって、 我々の固定観念としては、体育は即ち文科省=教育=スポーツ=競技スポーツ=オリンピック=プロ野球という強い意識、認識が国民、社会の根底に植え付けられてしまったのです

日本社会に於いては、体育の先生=スポーツの指導者、アスリート=体育指導者として、オリンピック・メダリストは、スポーツのオーソリティー(authority、専門的権威者)であるかのごとく間違った認識と固定観念を持ってきた事も日本の体育、スポーツ、競技スポーツ、スポーツ医科学の分野、部門の発展を今日も尚妨げている次第です。

メダリストとは、競技の分野、部門のアスリートでオーソリティーとして認められるべきです。しかし、メダリストは、アスリートとしての専門的な権威者であっても、高等教育機関に置いて教育者、指導者、人格者としての評価、認定は、これは決して混同を許されるものではありません。

特に伝統的には、高校、大学スポーツに於いて不健全な指導者、管理者がマスメデイアを騒がせているがこれも伝統的な悪しき慣習の一つで負の産物でもあります。体育の指導者、教員が暴力指導に向かう根拠は、この根本的な相違を日本の大学の専門教育課程で学んでいない、指導していないにも関わらず、教育者、指導者として教員資格をトコロテンの如く排出して行く構造的な問題が根っこにあるのも確かなようです

我が国のスポーツ界では、スポーツマン精神の必要性を強調するが、健全な規則、ルールが軽視され明文化されていないのです。これらは、かえってスポーツの振興、推進、発展に矛盾と障害になっているのです。近年特に政治家がスポーツマンシップを声高に唱えているのが耳障りになっています。

例えば森喜朗氏(元文科大臣、元日本国首相、東京五輪組織委員会会長)以下関係者達は、その意味すら理解出来ておらず、諸外国に恥を晒している日本のスポーツ界の政治家に対して、関係者、社会、国民が何も異論を述べれないのはスポーツ・アドミニストレイションのオーソリティーを養成してこなかった証であります。スポーツの名をかたり悪事を働く人達には、確かに好都合なのでしょう。                 

スポーツは、プロやオリンピックレベルの選手及びその関係者の人達だけのものではありません。我が国においては、スポーツという名の下で根性論、とか体育会系のシゴキのイメージが強く、一般の人達が気楽に楽しみ、健康の維持増進といった感覚が感じられない。このような伝統的な社会慣習、風潮がいつまでたっても改善、改革されないので「スポコン、暴力(体罰、セクハラ、パワハラ、イジメ、等)」話題にされても改まらないのもある意味暗い歴史と伝統によって培われてきた負の遺産とも言えるのでないでしょうか。

■スポーツを簡単に区分してみると

1つは、自分自ら身体をその目的の為に動かし、ウオーキングをしたり、野球、サッカー、ゴルフ、バスケ、水泳、他を行っている事を「実践するスポーツ(Participant Sports)」と呼びます。

2つ目は、日本人の多くは昔ながら野球、相撲、サッカー、マラソン、駅伝、室内競技を観て楽しみ応援する、「観戦するスポーツ(Spectator Sports)」とに区分されます。

そして、実は、スポーツを専門的に分類しますと

①遊びから創造性、協調性を重視した「リクリエイション・スポー(Recreation       Sports)」。

②人間の環境への適応性と教育性を重視した「健康・スポーツ(Health Sports)」があります。

このように①②は、非常に体育(Physical Education)の要素(Factor)を兼ね備えた部門である事を理解されるのではないでしょうか。

しかし、次にご紹介するのは、

③人の体力の機能性の限界を競い合う事を重視する「競技スポーツ(Athletic Sports)」は人間の心体を破壊するリスクを伴った、言わば体育の理念とコンセプトに相反するのが競技スポーツである事を我が国の体育、教員、指導者は、理解されて来なかったのかも知れません。

最期に、古代昔から競技が行われる所には、必ず自然発生して参りました

④社会性、協調性、ストレスの解消を目的とされてきた「観戦・スポー(Participant Sports)」がある事を忘れてはなりません。

しかし、この分野、部門は、長年学問的に体系づけられた形跡がなく、つい近年1980年前半に米国の学者により体系づけられ新しくスポーツの専門的な分類に加えられたとされています。

特に、我が国に於いては、この見るスポーツの分野、部門は今日においても学問、理解と認識が略皆無である事は事実す。これは、日本の伝統的な「武道の精神」と大きな関連があると思われます。

Ⅱ.スポーツの魅力とは何だろうか

1.観る魅力

 観戦を映像を通して、また直接的にスタジアム、アリーナでプレイする選手達の姿を見て感動を与えてくれる。それらは、パフォーマンスの中の芸術性、プレイのみならずテイーム、選手を応援する純粋な気持ちもスポーツの魅力であり、観るスポーツの魅力なのです。

国際試合で日本が出場する試合のTV視聴率は、向上しています。日本人選手の成績はもとよりあらゆる理由が観戦・視聴者個々の創造性と感動を与えてくれるからです。観戦者達は、映像及び観戦を通して個々の理解と感情を交えてストーリーを自由に演出できるのも観るスポーツの魅力なのです。

但し、近年日本を代表するナショナルティーは、多国籍軍と言われる純粋な日本人代表選手で無くなった事はある寂しさと日本人のこれからのステイタスがどのように変革して行くのか、此れも重大且つ日本国家の主権にまで及ぶ要因をはらんでいる事も忘れてはなりません。安易なメダル、勝利至上主義のナショナルティームの是非を国民に議論の機会を与えるべきでなかったのだろうか。

観るスポーツは、楽しみ、感動をプレイヤーが与えてくれるのみならず観戦者一人ひとりの意識や思いの創造的な産物でもある事を我々は理解しています。あるスポーツを観て楽しいかどうかを感じるかどうかは、その人の気持ちや感じかたによっても異なるのは確かです。また、その一人ひとりがその時、それまでどのような環境と境遇、考え方、等を持っているかによりその受け方、受け入れ方も異なるのです。

参考資料―今日日本におけるテレビのスポーツ番組の放送時間の割合は、地上

波で4.7%(NHK-BS21.9%)に上っている。その平均視聴率(地上波)は、6.6%と全番組の平均(2%程度)よりも高く、すでに生活の中の一部に入っていると言われています。例:2002年6月9日のWCサッカー、日本対ロシア戦66%、試合終了時の瞬間には、80%を超えていたのである。(スポーツメデイア調査による)

2. 観られる魅力

 我々が競技スポーツをまたその選手達を観て楽しんでいる時、その選手達の

みならず関係者達、コーチ達もまた観られていることを意識しているのです。

選手達は、観衆、視聴者にその視線を感じ意識があるので、競技終了後のインタビュー等でのコメントの中に「応援ありがとう。応援してください。感謝します。等」のコメントがあるのはその証である。この観られていることへの意識が過剰に作用すると過度な緊張感が加わることで平常心が失われたり、ネガテイブなモチベーションが心理的に醸成されることも確かです。

しかし、観られていなかったら選手達は、自らを鼓舞したり、集中力を高めたり、モチベーションを高めたり、競技への闘争心を駆り立てたりする事はとても難しいのです。此処で伝統的な日本の武士道精神が走馬灯の如く消えて行く運命に直面しているのです。

日本の伝統的な指導体制の中には、長年競技のみならず日常のトレイニングにおいても見世物でないとする武士道の精神が美化され長くこの精神主義が継承され、観る、観られる事が否定され今日に至る歴史があると言えます。

今日、我々の日常生活においても「観られていること」を常に意識して生活しているのは事実です。この「観られている」意識が過剰に反応して服装、身だしなみ、等を過剰に表現する人達が極端に増加している現代では、この見られている魅力を利用した証であると言えるでしょう。

身体の露出は、より一層他の人との比較とそれにともなう「観られている」意識を自ら高め、不健康な優越感と快感を求める若者達が出現しています。今日では、若者達がスカートを極端に短くしたり、胸を極端に露出したりと彼女らは社会に何を期待しているのでしょうか。スポーツ界、芸能界で対抗できないのでせめてもの露出狂と言われる類なのかも知れません。

これを裏返しにすると誉められたり高く評価されると本人は満たされるが、欠点を指摘されたり無視されたりすると酷く傷付く。「観られる身体」の満足感は、スポーツの魅力の一つでもあります。スポーツを観ている人が感じる魅力は、そのまま、観られている魅力に繋がると思われます。

例:スポーツ着のファッションの進歩と今日。人は見られたいがために他人と差別化して目だとうとするのもこの心理状況を表現したものです

3.する魅力

 スポーツの魅力は、基本的に「する」ことにあるといえます。プレイをしている時の緊迫感、興奮、終わった後の心地よさ疲労感、シャワーで汗を流した時の爽快感は、やった者にのみに味わえる魅力なのである。これらスポーツや運動にともなう身体の変化は、スポーツ科学によって今日では解明されています。また、スポーツを「する」魅力は、「観られる身体」の満足感も「する」ことによる達成感の喜びは、社会的な評価や社会文化環境の産物ともいわれるのです。

本編のまとめ

元来スポーツは、身体を動かすことがその定義の基本とされてきた。しかし、長年このスポーツ及び競技スポーツには常にその一喜一憂したパフォーマンスに視線を向けていた観衆、視聴者がいたのは紛れもない事実でした。その観衆、視聴者もまたスポーツを楽しんでいるだけでなく、それ自身がスポーツと位置付けたのが米国のRaider(1980年)だと言われているのです。しかし、此のことは、日本に於いて殆ど教育界に於いてもスポーツ界に於いても興味もない様子です。

スポーツには、するという実践と観戦・視聴という二つのスポーツを楽しむ構造が出来上っているのも確かです。今日では、遥かにスポーツを実践する人達より観戦する人達が多くなったのは世界的な傾向です。そのために観戦用のスポーツイベントが多くなったと表現しても過言でありません。よって、現代では、観るスポーツと実践して楽しむスポーツに大きく大別される傾向が調査で明らかになってきているのです。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

紹介:G-File「長嶋茂雄と黒衣の参謀」文藝春秋社 著 武田頼政

   Kファイル、News Comment by Hiromichi Kawada

お知らせ:今日迄時事の話題をスポーツ・アドミニストレイションとスポーツ・アドミニストレイターの視点で解説、分析して参りました。この度は、本来のスポーツ・アドミニストレイション論の基礎編を時事の話題を理解して頂く為にも、また、スポーツ活動にこれから向かう若者とその父母達の一助となる為にも先ずは、基礎編を還元できたらとの一念で述べさせて頂きました。若者達とその父母に本Kファイルの存在が耳に届く事を祈念致しております。

今後も時事の話題とスポーツ・アドミニストレイション論をバランスよくお伝えできればと思考して参ります。