K’sファイルNO.61:MOVE東京読売ジャイアンツ 無断転載禁止

K’sファイルNO.61MOVE東京読売ジャイアンツ

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PARTⅢ 球団の選手発掘と源泉の採掘

1.TYGのスカウトマンの現状と資質

K'sファイルNO.60では、主にプロ野球選手の不祥事、事件を起こした選手、球団担当部署の職責、責務、等に付きまして指摘させて頂きました。

この度は、このような球団内外で起きる諸般の不祥事、事件に対する球団側の処し方、防ぎ方を中心に述べて参ります。此の事により、読者の皆様が本件の重要性と問題の深層を理解され、また専門的な知識も増やされ、そしてジャイアンツを叱咤激励して下されば幸いです。

①スカウテイングとリクルーテイングの違い

球団で最初に新しい選手に接する部署は、スカウト部であり同部は球団編成本部に属する部署であります。球団におけるスカウトとは、一般的に選手や芸能タレントを獲得する事の意味に於いて用いられているような気がします。

本来プロ野球球団のスカウト部とは、「欲しい人材の資質、可能性、将来性、問題点、等を調査、情報収集と分析」を主に行う作業、業務部署を意味します。しかし、一般社会では、上記作業、業務以外に人材を獲得、勧誘する作業、業務も含めて理解されているようですが、本来は前者がスカウテイング業務であり、後者はリクルーテイング業務と区別されるのが正解です。プロ野球球団に於いては、前者と後者を混同(兼務)している状態です。

②球団スカウトマンは独自で育成すべき

球団に於けるスカウテイング業務は、ことのほか重要且つ難しいセクションであります。しかしながら、プロ野球球団に於けるスカウトマン達は、大多数が元プロ野球選手で、現役時代の経験のみがその拠り所となっているのです。

選手としての能力とスカウトマンとしての責務、才能は、もちろん異なります。それでは何故、選手時代の経験のみでプロの球団スカウトマンになれるのか不思議だと思われませんか。

その訳は、日本のプロ野球界は伝統的に、球団側は選手契約時にその選手を欲しいがため、本来の契約以外にサイド・オファーを出すケースがあるのです。

選手が故障、怪我、或は、現役を辞めた後も、球団に残す事をついつい約束してしまう事があるのです。MLB球団は、このような行為は選手への違反契約行為として厳罰が待っていますが、日本プロ野球界に於いては、契約の概念を理解できていないのと契約違反に対する罰則規定も非常に甘味な事から、あまり罪悪感も無いようです。

つまり、何らかの理由で選手生活を終えた人が、同球団の指導者、用具係、マネージャー、スカウトマン、フロント職員として雇用されているケースが多いのもこのような理由が背後にあるからなのです。よって、スカウトマンは選手上がりが基本的な経歴で、特別なスカウテイングに必要な専門知識、実践を身に着けて採用された人達ではない事をまずご理解下さい。

また、日本プロ野球機構(略:NPB)の野球協約、規則には、スカウトマンに対するライセンス制度の有無は明記されていません。これにより、各球団のスカウトの資質は、当然異なり眼力に於いても高低差が激しいのです。

読者の皆さんは、驚かれたのでないでしょうか。その証として、プロ野球球団がスカウトマン採用の告知をしたことも、採用試験云々の話題が耳にされる事がないのもこのことからです。それ故、この専門職は、伝統的に改善、発展しないように思われます。

 ③選手獲得に必要なスキルと眼力 

スカウテイングに必要な専門的な知識として、特に重要なのは、現在球団がテイーム編成に沿った選手を先ずターゲットとしてラインナップする事です。そこで重要なのは、目的が大きく二つに分かれる事です。一つは、未完成の選手(球団の将来を見据えた戦力補強)と完成に近い選手(球団の目標に合った即戦力補強)です。

後者は、成果と結果が数値とパフォーマンスで既に証明されているので見分けやすいのですが、前者は、高度な専門知識とスカウテイングキャリアを要します。専門知識としては、対象が選手即ち人である事から医科学的な専門知識が不可欠です。そして、できればその医科学的な専門知識を実践経験からも会得しているスカウトマンは、非常に評価価値が高いので年俸も選手同様のペイメント査定がなされてしかるべきなのです。しかし、現実は、球団にはスカウトマンへの査定基準、査定システムが見当たらず、適正な評価や運営、管理が出来ていません。

よって獲得した選手への管理体制や、スカウトマン、スカウテイングに対する責任の所在も非常に甘味で、不祥事、事件、等を誘引する大きな要因の一つとなっていると考えられます。

④スポーツ医科学の導入は不可欠

医科学的な要素は、生理、解剖、バイオメカニック(スポーツ力学)、モーターラーニング(スポーツ筋力学)的な分野とスポーツ心理学的な分野の専門知識が不可欠になってきます。

そして、このような専門知識及び実践力を会得している人材には、さらに次に実践に於ける観察力、また判断、決断する為の洞察力が必要とされるのです。

球団内部に於いては、他の部署からスカウト部、スカウトマンとして転職させる場合、殆どのケースが適応性を判断するマニュアルも無く、編成部門の統括者の判断で人事がなされています。これでは、会社、企業のサラリーマンの人事の方が日常の成績、成果評価を判断基準にしているので、プロ野球界より遥かに適応性の判断がシビアーかと思われます。

筆者の球団でのベースボール・アドミニストレイターとしての視点で申し上げますと、プロ野球界の殆どのスカウトマン達は、選手経験を基にしたスカウテイングを基本としているために、偏った経験値を物差しにしている傾向が大であります。よって、大事なスポーツ医科学の客観性を伴わない伝統的な経験、勘に頼る事から、選手達に内在するスポーツ医科学的な故障、メンタル、及び癖、等が洞察できず、獲得後に球団、社会、ファンに多大な損害と迷惑を与えている事は本K'sファイルで既に述べさせて頂いた通りです。

このような事からも球団は、スカウトマンの採用、雇用の抜本的な改善と改革が急務で、球団独自のスカウトマンの育成、指導に腰を据えて、独自のスカウトマンを確保する事で新人選手の発掘、移籍選手への観察力、洞察力を強化、向上させ、一貫したシステム体制を構築できると確信しています。それにより、球団の貴重な財産の確保と財源の無駄遣い、リスクを最小限に軽減できるスマートな方法が此処に眠っているのです。

⑤身近な球団トレイナー、PTに能力あり

筆者の経験則では、現在球団に雇用、所属している医療部門のトレイナー、理学療法士(略:PT)達は、現在球団が雇用しているスカウトマンより遥かに専門的な医科学の知識と日々の実践キャリアを持ち、日々選手と個別に接している事から既にメンタル的な分野の実践キャリアも擁している人材が居る事を確認しております。

よって、このような既に確保している人材、或は、今後雇用する時には、もう一つ先を見越した人材を確保する事が大事です。現在所属して、実践キャリが豊富なこのトレイナー、PTの優秀な人材は、プロのスカウトマンとして将来兼務、或は独立したスカウトマンとして採用する事は大きな財産の確保と合理的な人材のリテラシーであると確信致します。

東京読売ジャイアンツ(略:TYG)には、選手以外のスタッフ達にも優秀で可能性を秘めた人材がいます。その人材を如何に合理的且つ適材適所で活用するかは、球団フロントの統括責任者GMのベースボール・アドミニストレイターとしての資質に全てがかかっていることを、経営者には早く気付いて欲しいと願う次第です。気付いて居ても、統括責任者がどうしたらよいかわからないのかも知れません。このような場合は、統括責任者を推薦して任命した経営者に眼力が無かった事になります。この眼力の有無は、その球団のそれからの浮沈を左右する極めて重大な人事に関する決断ですので、ボタンのかけ違いは初歩的な運命の分かれ路となります。

プロのスカウトマンは、マスメデイアに於いて騒いでいる情報を鵜呑みにしてリストアップし、その選手のみを追っかける様な事をしていると獲得経費ばかりが高騰して、入団後に事件、不祥事、等を起こされるのがこれまでの悪例であります。プロの視点とマスメデイアの視点は、異なる物差しで在って欲しいと願うのです。

伝統的且つ非合理的な人材の雇用、人事異動は、今日の球団に重苦しい空気が充満してしまっている元凶なのかも知れません。

ジャイアンツは、爽やかで在れ!が未来志向の長嶋ジャイアンツではなかったでしょうか。

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports

 お知らせ:この度は、プロ球団のスカウト部門の重要性とスカウトマンの専門職に触れました。次回NO.62は、本シリーズの延長線上にあります球団と選手との間に今後必要不可欠な選手代理人に付いて述べさせていただきます。

 

K’sファイルNO.60:プロ野球-MOVE東京読売ジャイアンツ 無断転載禁止

KsファイルNO.60プロ野球MOVE東京読売ジャイアンツ

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PARTⅡ 球団の不祥事、事件へのリスクとヘッジ

2.ベースボール・アドミニストレーションの不備

①この度の不祥事、事件の全容

201878日、神奈川県警多摩署は、東京読売ジャイアンツ球場のロッカールームから選手のユニフォーム及び用具、等約110点を盗み出して売却、約100万円の収入を得て窃盗容疑で、プロ野球東京読売ジャイアンツの柿沢貴裕容疑者(23歳)を逮捕しました。球団は、統一契約書の第17条(模範行為)に違反し、野球協約60条の不品行に該当するとして、7日に既に契約を解除していたのです。~以上マスメデイア報道より~

 このような事件が毎シーズン止めども無く起きるのは、長年の伝統が負の遺産として堆積し、そこから有毒ガスが発生し、燻り続けているようなものです。この事は、毎回事件、不祥事後の球団オーナー、社長、GMが「今後二度とこのような事が起きないよう運営、管理を徹底します」との遺憾表明をしても結果として何もやっていなかったに等しいのです。何故?

要するに球団は、求心力の在るベースボール・アドミニストレイターが存在しないという事です。これは、オーナー、球団社長、GMが短命である事にも起因しています。即ち、本球団は、問題の本質を理解できていない事、また球団ビジョンが明確でないので、このような不祥事、事件に対応する危機管理システムも存在しないのだと思われます。

筆者は、マスメデイアの本件に関する担当記者のコメントの「球団の教育を問う声もあるだろうが、選手個人の本質に関わる問題も多い」とする箇所に注目しました。

このような表現では、片付けられない真相と現実が根深く日本球界に蔓延しており、その状況が理解されていないのでないかと思います。或は、同記者は、球団への配慮か、何か忖度が含まれているのかも知れません。

小職が在籍当時より、ロッカールーム、球団寮、遠征先での金品の盗難は、1、2軍問わず存在し、報告を受けていました。しかし、これらの問題は、東京読売ジャイアンツ(略:TYG)に限った事ではなく、他球団に於いても日常茶飯事な出来事であり、ジャイアンツの選手であるがゆえにマスメデイアで大きく取り扱われることも致し方ないことでした。球団には、元警察関係者を雇用したりしている場合もありますが、成果も効果も無いようです。これらは、大学教育機関に警察関係者の天下りを受け入れても暴力、体罰、事件、ハラスメントが無くならないのと同じ論理だと思われます。即ち、実質の伴わない、上辺だけの体裁を装っているだけなのです。

この問題は、プロ野球選手だから、TYGの選手だから起きるのではありません。本質的な問題は、各球団がプロの球団、組織、団体として選手の倫理的な在り方を明快にし、運営、管理を徹底しない限りは改善、改革どころか不幸な選手のみならず、指導者、職員、スタッフ、等にまで蝕まれて行っているようです。

②情報収集のスキル向上とリテラシーの重要性

本選手は、プロ球団入団後の楽天時代から派手な生活を好み、金銭的な問題を起こしていた事も事実のようです。問題は、同選手をTYGにトレードする際、担当スカウトマン、及びフロント編成部は、どれ程の情報を把握していたのか。それは、プロのフロントとして重要な責務なのです。此処でのキーワードは、球団が知っていて獲得したのか否かです

もし知らずに獲得したのであれば、フロントの担当部署と担当者は責任が問われます。逆に知っていて、獲得したのであれば、なおのこと、担当部署及び担当者の責務であり、前者、後者いずれにしても最終的には、統括責任者であるGMの責務となります。

このレベルの問題、責務を球団オーナーに求めるのは、如何なものでしょうか。オーナーの威厳と職責名が余りにも軽くなり、これでは、さながら社内の人事異動の様相です。このようなやり方では、オーナーが何人いても足りなくなるのは必至でしょう。

また、同時に同選手を保有していた楽天球団は、在籍中に起こした素行問題を譲渡相手球団に情報提供したかどうかも重要な倫理規範に絡む問題です。このあたりの問題は、NPB野球協約に明記されていない事が問題なのです。さらに、このような問題以外にも、トレード時に保有球団及び同選手が怪我の有無及び問題点を隠していた場合、倫理規範に大きく抵触することになります。

読者の皆様は、筆者が何を申し上げようとしているかをご理解頂けますでしょうか。即ち、TYGは、危険な悪性腫瘍を内在した選手を未熟なスカウトマンによってたくさん抱え込んでしまう可能性があるということです。(スカウト職の重要性と問題点に付いては、次回詳しく述べる事にします)

柿沢選手は、132月からプロ球団との契約を交わしたプロフェッショナル野球選手(略:プロ野球選手)であります。しかし、プロではありますが、契約した当時から複数年は、法律上は、未成年者であり保護者の管理管轄下にある事も知って於かなければならない点です。即ち、大人扱いされている子供と表現した方が理解し易いと思います。

このような高校球児が、ある日突然プロ野球選手としてドラフト指名され、マスメデイアから脚光を浴び、多額な契約金、年俸を握らされ、教育と言えるような教育も受けず、人間関係、社会の経験もなくプロ野球界にいきなり飛び込んで来たら、どのような事になるのでしょうか。

上記TYGに於きましては、2015年度以降の高校球児の不祥事、事例を列記致します。マスメデイア報道より~

2015年:野球賭博関与、笠原将生投手、福田聡志投手、松本竜也投手。

2016年:野球賭博関与、髙木京介投手。

2017年:傷害事件関与、山口 俊投手。

2018年:裸体画像SNS投稿、篠原慎平選手、河野元貴選手。

2018年:窃盗犯逮捕、柿沢貴裕選手。

現在の日本プロ野球選手の大半は、このような高卒、高校球児達です。問題を抱える選手には何処の球団も頭を痛めているのが現実です。勿論、スポーツマスメデイアの野球担当記者諸氏は、十二分に理解、認識して取材活動をされている筈ですが。

③筆者の日本球界への提案

筆者が、常に声を大にしている事は、日本プロ野球界のファーム(二軍)は、常に一軍半の選手の為の調整の場、即ち置屋的な伝統的環境で運営、管理がされています。よって、本来のプロ野球球団のファームとしてシステムが機能する構造にもともとなっていないのです。

このような現実から、全ての高校球児は、本人が希望するのであれば大学に進学させて大学4年間「心技学体」を少しでも多く身に着ける事を主たる趣旨、目的とするべきであると考える次第です(その前に現在の大学野球部の非教育的な経営者、管理者の実態の情報公開も高校球児、父母には欠かせない大切な情報ソースであります)

大学進学後2年間は、プロのドラフトを禁止する協定が必要であると考えます。これにより、プロ球団側、高校球児側ともにリスク軽減ができ、大きなメリットがあると考えられます。

また、大学側に取っても、近年大学競技スポーツは、特に疲弊を強いられており、このようなシステムの導入により高校野球界のスター選手が各大学に進学、所属する事でマスメデイアはもとより、野球ファン、等に於いて、大きな注目が大学野球界に注がれる事になるのです。

一方、プロ球団側にとっては、大学進学後に高校球児がどの程度、心技体の改善、強化がなされたかを見極める時間が与えられ、現在のプロ野球球団に欠落したファームの貧困な環境を補い、大学側にファームとしての肩代わりの役割を負ってもらうという相乗効果を享受することができるのです。

このような改善、改革こそが我が国の大学競技スポーツのマーケテイングを拡大、開放、構築させる大きな基本的な手段、機会となります。

もし、日本プロ野球機構(略:NPB)、プロ球団側が異議を唱えるならば、MLBのようなファームのシステムを整備して、本来の育成システムを持って、高校球児(未成年者)への配慮と教育的指導の期間を与える事が、雇用者側の責務であると提案致します。読者の皆様のお考えは、如何でしょうか。

TYGは、是非ポジテイブで創造力を兼ね備えた独自のプロフェッショナルなフロントの人材育成と養成に取り掛かる事が何より急務だと思われます此の事に付きましては、次回問題の本質と解決策を提言させて頂きます。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports

 お知らせ:NO.61では、プロ球団は如何にして選手の不祥事、事件を未然に防止するか、できるか、その策と方法を中心に述べさせていただきます。これらは、筆者が球団の現場を通して実感した現実を基に述べます。

K’sファイルNO.59:プロ野球-MOVE東京読売ジャイアンツ 無断転載禁止

K’sファイルNO.59プロ野球MOVE東京読売ジャイアンツ

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 注:W杯サッカーロシア大会も終了しました。K’sファイルは、NO.59から再会させて頂きます。プロ野球界では、またまた不祥事、事件が勃発しました。折しも熱い高校野球が今年もまた始まっています。この度は、プロ野球選手の不祥事、事件と高校野球との関連に付きまして、東京読売ジャイアンツの選手、球団の出来事を中心に述べさせていただきます。

 PARTⅠ 不祥事、事件が絶えない内向の球団体質

1.東京読売ジャイアンツに今必要なのは変革(Change

嘗ての未来志向は何処に

筆者が、長嶋茂雄氏(当時第二次政権の監督に指名された)から「此のままでは、93年スタートするJリーグに子供達を持っていかれてしまいます。東京読売巨人軍をもう一度強いジャイアンツにしなければなりません。勝てるテイームにしたいので、是非力を貸して下さい。お願い致します」と懇願されたのは1992年の秋でした。そして、それから26年が経ちました。

 現在も尚、同氏は、球団終身名誉監督兼経営者として、また企業の最高責任者には、渡邉恒雄氏が名実ともに健在で在ります。当時の小生への懇願は、いったい何だったのか。彼らの信念とは、目先の勝利という単純なものであったのかも知れません。当時心血を注ぎ、あのメイクミラクル、そしてメイクドラマを成し遂げ、年間平均TV視聴率23.5%を勝ち取ったあの時代の努力とコンセプトは、燃え盛る炎と共に消えて無くなった様です。

 今後何方が東京ドームの屋根を取り除き、青空の下でGファン達が野球観戦を楽しめるベースボールパークへと変革出来るでしょうか。それは、ファンの皆さん一人ひとりの強い意思と能動的な意思表示無くしては本球団の改善、改革は難しいように思えます。或は、ドラステイックに熱烈なファンが、心を鬼にして2、3試合集団観戦を放棄したら体質が変わる可能性が大です。MLBでは、よくある事です。ジャイアンツファンには、このような勇気と情熱のあるファンが居るとは思えないです。皆さんは、大変お行儀のよい伝統的なファンなのでこれは期待薄です。

そして現実は

2018717、東京読売ジャイアンツ球団は、毎度おなじみの辞任会見を開き老川祥一取締役・オーナーが辞任した事を発表しました。また、球団社長、GMは、減給処分となった事を合わせて発表しました。しかし、そこには、当事者であるオーナーの姿が無かったと報じられています。何故?

日本のプロ野球球団のオーナー職は、MLBのオーナー職の肩書を真似ているだけで、球団を自ら所有しているのではありません。彼らは、球団の親会社の取締役会の一員でサラリーマン役員なのです。特に本球団、企業に於ける球団オーナーは、近年親会社の経営者の中でも役員退職前の功労者への名誉的な肩書とされ、不祥事の際は、責任を背負って頂き退職して頂く新システムが構築されているようです。その意味では、何故会見に顔を出してファンの皆様に一言ご挨拶されなかったかが理解できます。よって、18日の朝刊は、何故か小さな扱いであったのも今日の東京読売ジャイアンツへの客観的な商品価値の評価の物差しと捉えられるかもしれません。

 この度の取締役・オーナーの辞職、球団社長、GMの減俸処分に付きましては、丁度今週19日、木曜日のK’sファイルNO.59の「PARTⅠ不祥事、事件が絶えない内向の球団体質」の原稿を書いている最中に辞任の知らせが舞い込んで来た次第です。此れこそが、筆者への虫の知らせ。事が此処に至ってしまっては、蝕まれた病巣は殊の外シーリアスな状態なのでしょうか。

 東京読売ジャイアンツ(略:TYG)は、今もって旧態依然としたプロ野球球団体質の殻から抜け出せず、現在のグローバルな競技スポーツ界の動向と環境に逆行し、活力が全く感じられない球団と化しています。

しかし、このような毎度代り映えのしない付け焼刃的な人事では、事の次第は何も変革しないのです。内向的なベースボール・アドミニストレーションは、決して改善、改革、そして発展への未来志向に向かわない事を何度同じことを経験すれば気付かれるのでしょうか。次なる不祥事を起こす予備軍は、既に現場で醸成されています。

 本球団は、新聞の拡販事業と共に長い球界の歴史を構築、歩んで参りました。しかし、近年新聞業界は、正直に申しまして衰退の一途を辿り、もう嘗ての面影は在りません。グローバルな世界を見据えた真の経営感覚を持たれた経営者は、企業組織内にいらっしゃると確信致しております。企業には、必ず世代交代の時期とタイミングがあるのです。しかし、本球団、企業は、新しい経営理念を持った次世代への変革のタイミングを今日迄逸してしまったようです。他球団、企業に於いては、既にグローバルな世界的企業と肩を並べ、凌ぎ合っている巨大企業もいる事を忘れてはなりません。近い将来、これら巨大企業に飲み込まれないか非常に心配です。

 このような企業の衰退は、球団の近代化が進まない元凶の象徴の様に思えてなりませんが読者、ファンの皆様には、どう映っていますでしょうか。

Gファンは、何を期待してドームにお金を運んでいるのでしょうか。もっと球団を自分のテイームとして、個性や感情を自由に表現したいと願っているのではないでしょうか。

 このままでは、他球団の方が一歩も二歩も将来を見据えた努力をしているように思えてなりません。野球選手を夢見る子供達に嘗てのジャイアンツの輝きと魅力をもう一度見せて挙げて欲しいと願う次第です。

 此れこそが嘗て92年秋に、監督、経営者が筆者に懇願された真意であったのではなかったのか、それなのに何故心変わり(Change Mind)をいとも簡単にされてしまったのかと近年の現状、現実を見るにつけGファイルを回顧せざるを得ないのです。

NEWS

2018718、東京読売ジャイアンツ球団は、新オーナーに読売新聞グループ本社社長の山口寿一氏(61)が就任すると発表しました。同氏は、グループ本社の若手NO.1として近年渡邉恒雄氏にお墨付きを受けている逸材です。本カードを切ったという事は、最後の砦であります。同氏は、企業本体の経営、運営、管理に忙殺される中、ベースボール・アドミニストレーションについては、素人さんと申し上げて過言でありません。それでは、内部の何方が山口オーナーにプロベースボール・アドミニストレイターとしての専門知識とアドバイスを具申できるか大いに注目されるところです。球団は、不祥事に対して慣例を構築しましたので、次の不祥事、事件においては最高責任者としての山口氏を失う事は何としてでも避けたいところです。なぜなら、組織の崩壊を意味するからです。オーナーご就任おめでとうございます。

そしてGOOD LUCK AND YES, YOU CAN DO IT!

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports

 お知らせ:NO.60は、この度球団において4年連続不祥事、事件を起こした事実から共通する本質的な問題の根源と今後の改善、改革を東京読売ジャイアンツが出来るか否か辛辣に解説できればと予定致しております。

K'sファイルNO.58:大学競技スポーツ・大学を取り囲む環境の変化 無断転載禁止

K'sファイルNO.58:大学競技スポーツ・大学を取り囲む環境の変化

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 注:PARTⅡは、国内の大学教育に於ける学生、学生選手(Student Athlete)の動向とそれに伴う不平等と矛盾を筆者の視点で述べさせていただきます。また、我が国の教育界、競技スポーツ界は、マスメデイアの正義と勇気ある発言、発信以外には改善、改革が望めない体質と構造に成ってしまっている事を指摘させて頂きます。尚、NO.59は、W杯サッカーロシア大会の終了翌週から再会を予定致しております。

            PARTⅡ 近年の大学アドミニストレーションに異変

先ず初めに

今日の大学教職員、競技スポーツの指導者、運営、管理者の人事権は、大学法人の経営者である理事長に集約されています。大学、法人は、会社、企業の構造とシステムによく似て来た様です。即ち、学生、授業が最優先ではなく、大学の経営、事業ファーストと言ったところでしょうか。

以前には考えられなかった事は、今日、各大学法人が事業部門を推進し「株式会社を設立」、ビジネスを展開し始めている事です。

このことから、今日の大学で起きている諸問題や大学競技スポーツの諸問題について疑問を解き明かすことができると思います。読者の皆様は、このような大学の組織構造の変化をお気付きだったでしょうか。

文科省は、大学教育機関にビジネスを認めているのですから、公的資金としての私学助成金補助金の制度を改める時期に来ているのでないかと思うのは筆者だけでしょうか。

この制度を止めれば、政治家の介入、公官庁の不正、天下りは、激減すると考えられますので一石三鳥ではないでしょうか。そして、この文科省の貴重な莫大な財源は、障害者教育及びその施設、医療、治療費、等と有効活用する事が賢明であると考えます。貴重な財源を有効活用していない大学への公金流入は、停止すべきです。その為の監査、監督、行政指導は、不可欠です。

今日の私学経営者は、大学教育機関に対して絶対的な権力を誇示していると言えます。その為に各大学の理事長は、理事達の過半数以上の3分の2を常時確保して置かなければ自身の権力の座は保証されないのです。理事長が玉座に座る為には、自身の息のかかった理事を一人でも多く担保する事が鉄則で、理事確保のためには、なりふり構ってはいられないというのが実状のようです。これは、丁度会社、企業の役員会と同じ権力構造であります。それでは、何処の誰が大学の権力構造をこのようにしてしまったのでしょうか。

筆者が存じ上げる大学では、各学部に1席ずつ文科省からの退役者席が設けられている事に呆れ果てました。いったいこの国の行政と教育機関との関係は、いつが来たらクリーンな教育機関を形成できるのでしょうか。此れも、大学競技スポーツの腐敗に関連した大きな要因と問題の一つではないかと思われます。

この度のアメフト加害者学生、父母のような勇気ある人達が、社会に対して物申し、マスメデイアが協力、支援しない限りは、腐敗した大学教育界、競技スポーツ界の改善、改革には程遠いのが現状です。マスメデイアが、正義と勇気を持たなければ我が国の教育界、競技スポーツ界が浄化されないのであれば、正常な状態ではないと言わざるを得ません。

このような現実を予備知識として本コラムをお読みいただければ、問題の本質がスムーズに理解頂けるかと思われます。

①従来の大学内のパワーバランスに異変

先ず初めに、伝統的な学部教授会の権威とパワーは、今日の大学に於きましては全く骨抜きになっている状態であります。此の事は、文科省の指導による大学及び法人に対するアドミニストレーションの構造改革の一環だと理解せざるを得ないのです。何故ならば、文科省の指導、指示が無い限り、大学、法人は、文科省の許認可規定、規則があるので勝手に改善、改革できない筈です。

その先ず第一段は、教授会でのパワーを剥奪することが、既に4,5年前から各大学に浸透していると思われます。現在の各学部教授会では、各専任教員の意見、発言は自由に述べられてもその意見、発言が取り上げられるかどうかは別問題です。このような状態から、学部長は、学部教員の「まとめ役と不満の処理」が主たる責務と化し、学長は、大学教学の責任者、管理者として、「全学部長の取りまとめ役、不満処理」が主たる職責、責務となっている様です。

もう一つ、学長の重要な役割は、教学の代表者として大学法人の1号理事として、理事長、経営陣と大学とのパイプ役が重要な任務です。また1号理事の学長は、学長の任期の間のみの理事なので、理事就任の承諾は必要ないという事です。このように今日の学長は、学部長と理事長、経営者の間でサンドバック状態になっています。このような状況から、大学教員は、学問、学術の研究の場でなくなり、会社、企業同様なサラリーマン化が進行している現状です。

②本質的な問題の元凶

国の教育に関する最高機関の文科省は、大学、学部、学科の設置と私学助成金補助金の確定、等々の許認可権限を持っています。しかし、それが有効に機能しているかどうかの監査、監督、指導、等を全く行わない無責任体質が本質的な問題の元凶であると思もわれます。

また、文科省には、歴史的に「文教族」と世間で揶揄されている幽霊族の存在があるようです。この文教族の面々は、利権を巡り現在もスポーツ関連省庁、大学、競技スポーツ組織、団体と職安の如くネットワークを張り巡らせ、教育機関のみならず、スポーツ界の利権に複雑な構造と影響力を及ぼしており、いる我が国の陰湿な伝統と歴史を構築している様子です。

これは、日本の大学及び競技スポーツに於いて悪性腫瘍、即ち問題の根源なのかも知れません。(注:筆者の文教族の解釈は、教育に関する利権に関わる人達の総称と理解する。

この莫大な助成金補助金は、どのようにして誰のさじ加減で目分量が決められているのか皆様は想像できますか。そうです、だから文科省は、大学教育機関との間で規則も罰則も明文化せず、暗闇の教育行政文化を延々と構築して、いわば貸し借りの文化の関係を今尚構築継続しているようです。

これらの助成金補助金は、公金と呼ばれ国民の汗の結晶です。そこには、私学助成金補助金に群がる公金を当てにする利権の巣がある事に誰もが異議、疑義を唱えて来なかった我々国民、社会、関係者にも責任があります。

このような民の汗の結晶の公金は、判りやすく国民、社会にその使途及び配布された大学法人でどのように学生達の為に使用されているかを情報公開する事を義務付けることを提案いたします。既にご紹介しましたが、このような公金は、学生達の為にどのように活用されているのでしょうか。まさか個人の資産に運用されているのなら許されないことです。しかし、公的教育機関には、インフラクションコミテイー(特別査察機関)が設置されていないので、全てに於いてチェックするシステムも機関も皆無の有様なのです。読者の皆さんは、どのように考えられますか。今の時代は、透明性が不可欠だと思われませんか。

今日の私学の経営者は、教育機関という名の下の企業家、実業家です。教育者は、嘗て尊敬されていた時代のイメージでないことを肝に銘ずるべきです。今日の大学教育機関には、何か自身の職責、責務を勘違いしている指導者、教員、職員が多々いるように感じてなりません。これは、筆者が大学教学現場において肌で感じた体験です。勿論、素晴らしい教員、教育者、職員も沢山いらっしゃる事も事実であり、体験させて頂きました。

教育機関が明確にするべき重要案件

問題は、大学教育機関に於いて「大学生、学生選手(Student Athlete)とは、何を持って認めるか」と「大学競技スポーツは、教育の一環である」と明記する事が欠落していることです。即ち、大学競技スポーツの趣旨、目的となる背骨(スケルトン)が見当たらないのです。

学生の定義(Definition

我が国の教育基本法、等には、「学生とは何を持って学生となす」の定義が無いことを読者の皆さんはご存知でしたか。文科省から大学設置の許可を受けた個々の大学に於いては、学内の規則、規約、等に於いて「本学では、本項目を満たした学生を正規学生として認める」という明文化された書面が見当たらないのです。このような状況から、学生及び学生選手に対する学内外での扱いは、大きな格差と不公平を醸成してしまっているのが現実です。

本件の優柔不断な現実は、大学内の教育の資質の低下、不公平、モラルの低下に大きな影響を与え、健全であるべき大学教育機関の権威、プライドを蝕んでいる事に歯止めがかからない状況です。

筆者の一案

大学生、学生選手の根拠を明文化する事が大前提です。

大学生とは:

1.大学の入学許可を得ている事。

2.大学の学則、規則、規約を遵守している事。

3.大学卒業に必要な124単位の中、各学年31単位以上を確保している事。

4.各学年の単位取得に対する授業料を納付している事。

5.上記4項目を遵守している人物は、個々の大学生としての学生証を発行。

6.大学競技スポーツ部に所属する学生選手は、上記1,2,3,4,5、項目以外に 所属大学の部、所属組織・団体の規則、罰則を遵守する事。

7.大学、法人から受ける奨学金及び付帯する全ての制度は、各大学共通の奨学金限度額を超えない事と共通の約束事内とする事。

8.外国人留学生、外国人学生選手は、上記1.~7.項目以外に、日本の大学に於いて教育を受けるに必要不可欠な、講義授業を理解できる日本語力の有無を全大学が加盟した日本語力検定試験を受け、定められた数値を満たしている事が入学の大前提である事。

上記各項目は、大学競技スポーツが教育の一環であるとするならば、最低限の大学生、学生選手を証明する基本的な約束事であると考えられます。大学は、統一されたルールブックの下、全加盟大学が同意、署名しルールブックをリスペクトし遵守するのであれば、現在起きているレベルの問題の最低限が統治されると確信致しております。

 

ハイライト:大学キャンパスに21世界陸上がやってくる

2021世界陸上オレゴン大学キャンパスでホスト

2021年には、世界陸上競技選手権大会が初めて米国に招致されます。

世界で初めて世界陸上が、大学キャンパス内の陸上競技場でホストされる事になったのです。大学及びオレゴン州ユージーン市は、アメリカで陸上競技のメッカとされています。ナイキ社は、オレゴン大学のキャンパスで産声を上げたのです。そして創設の祖は、当時陸上競技部監督のビル・バーウマン氏(パートナーのフィル・ナイト氏は、彼の教え子でビジネス部門を担当)でした。当時ジョギングを世界に広め、命名された指導者でもあります。

今日迄の伝統的な木造建築の競技場スタンドは、3700席でした。この収容能力では、世界陸上の招致規定に適合しません。そこで、新しい陸上競技専用のスタジアムが建設されることになりました。既にスタジアム完成時のデザインが出来上がり、スタジアムのキャパシテイーは、何と38000席です。ビル・バーウマンとオレゴン大学が発祥の地となっている事から、バーウマン氏の名前をネーミングライツとする予定のようです。勿論ナイキ社の寄付により建設されます。

興味がある方は、下記のURLで検索され、新スタジアムと伝統的な旧スタジアムを比べて下さい。此れがアメリカの大学競技スポーツの施設と規模なのです。本URLは、日本に於いて初めてK’sファイルを通してご紹介させて頂きます。お楽しみ下さい。

URLhttps://around.uoregon.edu/hayward

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sport

 お知らせ:この度のシリーズは、如何でしたでしょうか。本K’sファイルは、W杯サッカーロシア大会終了まで、お休みさせて頂きます。GO JAPAN GO!

K'sファイルNO.57:大学競技スポーツ・日米の歩みと動向 無断転載禁止

K'sファイルNO.57:大学競技スポーツ・日米の歩みと動向

              無断転載禁止

注:NO.57は、この度のアメフト問題を通して大学競技スポーツの問題点を幾つか指摘 して参りましたが、此処では日米の大学競技スポーツの動向を少し覗いてみましょう。嘗ての河田ゼミ生(鈴木善之氏)がNCAAの競技を現地で視察、直接肌で感じたことは何であったのかを是非読者の皆さんには彼のレポートを読んで知って頂きたく思います。お手数ですが、元ゼミ生のレポートをお開き下さい。文中にURLを掲載。

PARTⅠ日米大学競技スポーツの現実的な相違

1.日本の大学競技スポーツの動向

①課外活動とは経営者にとって隠れ蓑?

日本の大学競技スポーツは、課外活動であり、学生の自治活動であるとの理解と認識で今日まで(基本的に現在も大多数の大学に於いて)考えられてきていると思われます。

学生の自治活動とはいえ、各部活の長は、大学側が専任教員と認めた教授職の教員が部長として大学、法人により任命されているのです。(部長は、任命された部活の専門家でも何でもありません、唯の本学の専任教員です。)これで、大学側、法人側は、教育の一環である事をカムフラージュしているのか、ポリスマンの役に置いているのかも知れません。

大学法人は、経営者の思惑により大学競技スポーツ部を複数の強化重点種目と位置付けして、学生に告知もせず、年間約1億~4億円の特別強化資金を投入しているケースが数多く見受けられます。この資金に私学助成金の一部を当てている大学もあるようです。呆れました。

この強化重点種目に付いては、学内に於いても情報公開されず非常にアンフェアーな運営、管理が長年行われているのが実状です。そのため、それ以外の大多数の部は、課外活動としての部活を認められていながら、学内に於いて特別強化部とは大きな差別を強いられているのです。

基本的に部の運営費用は、授業料の一部が学友会費、施設管理費、等として納められていることから、学友会費が各大学の伝統的な手法によりアンフェアーに各部に振り分けられている次第です。勿論、そのようなごく限られた学友会費の一部で賄えるわけもなく、学生達は部費を払い、先輩卒業生達からの寄付で賄われているのが我が国の大学競技スポーツを支えている部活の底辺です。

特定の強化指定種目の目的は、その競技スポーツ種目、学生選手を大学の広告塔としてマスメデイアを通して露出し、受験生を集める事が大きな目的の一つです。その最たる例が既に「KsファイルNO.2933箱根駅伝は誰の物」で詳しく取り上げました大学箱根駅伝、等の人気イベントでの大学名の宣伝活動の一環なのです。この活動は、一人受験生が増える事により受験料の35000円が現金収入となる計算です。

②体育とスポーツ、競技スポーツを混同

このように嘗ての大学の部活は、体育(Physical Education)の一環としての課外活動であり、学生の自治により運営、管理していた時代は、約30数年前に既に略消滅していたのです。現実は、大学経営者、管理者による特別強化スポーツと称する部活が学生の自治活動を隠れ蓑にした授業教育の一環でなく、事業(ビジネス)の一つとして、広報・宣伝活動を主たる目的としていると申し上げても言い過ぎでないと思われます。

各競技種目の学生連盟は、学生主体の自治活動から大人の利害、利権の寄合の学生連盟の組織、団体と化し、本来の趣旨、目的がいわば建前となっているのも大学経営者に酷似です。

勿論、スポーツ、競技スポーツにあまり力を傾注していない大学教育機関は、今尚存在します。そのような大学は、競技スポーツでの成果、結果がマスメデイアの話題に出て来る事が殆ど皆無に等しく、学内に於いても伝統的な課外体育の一環とし、純粋に自治活動と位置付け細々と維持されている大学もある事を忘れてはなりません。

現在の大学競技スポーツの特徴は、スポーツ、競技スポーツを体育と捉えている指導者、管理者、経営者が大半であります。このことから、社会に於いても矛盾した現状と現実が問題の起因となっています。本来は、体育と競技スポーツは本質的に対極に位置します。体育の分野とスポーツの分野(健康・科学スポーツ、リクレーション&レジャースポーツ、競技スポーツ、観戦スポーツ)は、本質的に体育とは異なる事を専門教育の場で生徒、学生に知識の付与をして頂ければ、これから我が国を担う若者達には、専門分野、部門が明快になり、非常に発展的な方向に歩むと確信します。

本年4月には、漸く日本体育協会が「日本スポーツ協会」に改名されたばかりです。筆者は、1976年から文部省、体育局長、日本体育学会長、日本体育協会に招かれる度に体育はスポーツ、競技スポーツと本質が異なるので早く看板を掛け代えて下さいと申し上げて参りました。

日本の大学には、今尚体育会系、体育会、体育局、保健体育局、等々とスポーツ、競技スポーツとは本質の異なる呼び名が戦前、戦中、戦後、そして今日に至っても思考停止状態で継承されているのです。国民体育大会もそろそろ「国民スポーツ・フェステイバル」に改名して頂きたいものです。本分野の教育界には、まだ戦後が終わっていない。そして、NCAAの日本語訳名を全米大学体育協会と呼んでいるのも、これもまた戦後が終わっていない証しです。

2.日本版NCAA構想に100年必要か

NCAA名を利用して国民、社会をミスリード

昨年より、文科省スポーツ庁は、“日本版NCAA”をスタートさせるとの告知をし、準備をされているようですが、何を大義とし、趣旨、目的になされるのか推進者達が理解していないのかも知れません。

全米大学競技スポーツ協会(略:NCAA)のロゴタイプをキャッチコピーし、ちゃっかり使用する我が国の文科省スポーツ庁には、呆れ果てます。

スポーツ大国のNCAAの名前を使う事で、日本国民、社会、学生、学生選手達に何をイメージさせようとしているのでしょうか。

NCAAは、1905年に創設され当時既に全米で800校が加盟し、共通したルールブックの下で競技の運営管理がなされていました。この時代、我が国日本は、どのような時代で在ったでしょうか。その後、NCAAは、1972年に男女平等な教育を受ける権利法(TitleⅨ)が施行され、初めて女子学生選手と女子競技種目がNCAAへの加盟が認められ、男子同様の奨学金制度、各種目の全米大学チャンピンが誕生するに至ったのです。

NCAAは、1970年代後半に確かワールドワイドな商標登録をしたはずです。よって、このNCAA名の使用は、他国の大学の持ち物で在りそれをちゃっかり日本国の文科省スポーツ庁が使用するわけで、お隣の中国が日本製品の偽り品の海賊版を製作、販売しているのを批判する資格は何処にあるのでしょうか。日本国の省庁は、スポーツ界で海賊版キャッチコピーを奨励していると言われても仕方がないですが、宜しいのでしょうか。勘弁して欲しいと思うのは、筆者だけでしょうか。

我が国の現実に即した、身の丈に合ったプラニング、プロジェクトを立案し、先ずは大学競技スポーツの現在の本質的な問題を文科省スポーツ庁)の責任において改善された方が宜しいかと提案します。

この日本版NCAAとは、大学競技スポーツの本質的な問題を置き去りにしてどんな意味があるのでしょうか。本プロジェクトの関係者から聞こえてくるのは、「大学スポーツで金儲けする」と声高に連呼しているようですが、現実的に何を商品にして金儲けをするつもりなのでしょうか。このような方々こそ、学生達と共にスポーツビジネス、マネージメントをよく学び、理解する必要があると思えてなりません。

某大学の経営者は、数年前に複数の広告代理店を呼び、我が大学のスポーツの商品価値を査定して欲しいと真剣に持ち出し、大学丸ごとスポンサー収入を得ることを夢見たようです。広告代理店各社からは、「お宅の大学の競技スポーツでは、商品価値とマーケットセアーが小さすぎるので査定数字も出ません」と回答された。という笑えないレベルの実話も届いています。此れが大学経営者、管理者の知識とレベルなのです。

文科省スポーツ庁の情報公開の必要性

既に文科省のスポーツ窓口機関であるスポーツ庁は、趣旨、目的も明確にしない公金を情報公開もなく、特定の大学に日本版NCAAのプロジェクト名目で流していると聞き及んでいます。本来、このような公金流用が省庁の目的なのでしょうか。特定の大学とのダークな関係が始まっている様な情報が大学内部から流出しております。このような情報が流れる事自体、スポーツ・アドミニストレーションが理解できていない人達により、NCAAのキャッチコピーを利用した公金の不正利用が暗黙の内に始められているのでしょうか。

NCAAという他国の大学競技スポーツの組織名を利用した利権の争奪が既に始まっているとの誤解を招きかねませんので、読者の皆さんの監視が不可欠です。しかし、このプロジェクトには、一部マスメデイアが協力をしているようなので、困った事です。

此の事からも、日本の大学競技スポーツの問題を精査、検証もせず、NCAAをキャッチコピーする理由はどこにあるのでしょうか。NCAAに対して大変失礼です。大学競技スポーツの問題に関する本質の解決には目を向けず、利権の構築の為にミスリードをしているように思えてなりません。

模倣をする相手は、巨大で我が国の現状、現実にマッチしないと思いますが如何でしょうか。お上がこのような思考では、学生、学生選手に多くの犠牲者を出し、健全であるべき指導者、大学教育機関に不適切な夢を与え、多大な迷惑を今後掛けるような気がしてならないのは筆者の取り越し苦労でしょうか。

3.米国の大学競技スポーツの動向

NCAA一部校とNCAAフットボール強豪校の現状 

全米大学競技スポーツ協会(NCAA)主催の全米大学フットボールは、加盟校1275校の1部校(340校)がシーズン最後のNCAAチャンピオンを争う決勝戦が毎年行われ、NCAAチャンピオンが決定します。会場は、中立の地域の大学以外のスタジアムで開催します。

毎年優勝、準優勝の大学に対して、近年は、両校それぞれに主催者から日本円にして約10億円が寄付されているようです。また、バスケットボール決勝戦出場の2校に対しても高額な寄付金が支給されます。大学は、この寄付金以外にも多額のシーズン中のバスケットボールのホームゲーム(約23ゲーム)の興業、スポンサー、放映権収入、フットボールのホームゲーム(6ゲーム)の興業、スポンサー、放映権収入を得ています。

勿論、強豪校と弱小校との間では、あらゆる面での大きな格差が起きているのも事実で問題です。その主な格差要因は、大学競技スポーツで得られる収入の違いです。大きな大学の強豪校では、1シーズン8月下旬から1月上旬迄フットボール、12月から4月上旬迄バスケットボール)で約10億円~90億円の収入格差が今日では生じている様です。筆者が当時米国大学で担当していた時とは比べ物にならない経済効果を与えています。

全米大学競技スポーツのメジャースポーツは、フットボールとバスケットボールです。これら競技スポーツから得られた興行収入は、全て大学関連、周辺地域社会への還元に活用されるシステムが、100年の歴史を経て構築されています。

勿論、フットボール、バスケットボール以外のマイナー競技スポーツは、このメジャースポーツの収益に寄りサポートされています。NCAAでは、男子、女子の公式競技種目の数が決められており、オリンピック種目だからと言っても公式競技種目として認められているわけでありません。(例:例えば女子のレスリング、女子柔道は大学競技種目として認められていません)。

 ②筆者がお世話になった公立大、私立大の現状

筆者がお世話になったオレゴン大学(UO)では、フットボール専用スタジアム約50000席、バスケットボール専用アリーナ現在約12000席、ブリガムヤング大(BYU)では、フットボール専用スタジアム約60000席、バスケット専用アリーナ約27000席をそれぞれキャンパス内に持ち、ホームゲームは、全席満席です。しかし、テイームが敗けだすと観客は減少します。このようにして大学のスポーツビジネス、プロモーション活動の実践、運営、管理が行われています。勿論、大学競技スポーツもプロ同様に、消費者が大学スポーツの観戦に大きな魅力と興味があるので、スポーツビジネスが成り立っているのは言うまでもありません。

注:K'sファイル:特別寄稿集:河田弘道教授の講義から~2018-03-28掲載 題:卒業前の米国大学競技スポーツ観戦旅行を終えて」レポーター:鈴木善之氏、元河田ゼミURL http://hktokyo2017041.hatenablog.com/ 

読者の皆様には、NCAAの現実と現状をほんの一部ご紹介致しました。文科省スポーツ庁が目す日本版NCAAのパンフレット、チラシを目にされましたら是非このKsファイルを思い出して下さい。何処か誰かの講演でのコピーのようです。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sport

 お知らせ:NO.57は、如何でしたでしょうか。次回NO.58は、この度の日大アメフト問題に関してのシリーズの最終回をお届けいたします。前半は、お堅い内容で後半は、あの世界陸上が初めて米国大陸に、それも何と2021世界陸上が世界初米国の大学キャンパスでホストされる事を日本初の情報公開を本K’sファイルご紹介致します。驚かないで下さい。

 

K’sファイルNO.56:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事  無断転載禁止

K’sファイルNO.56:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事

             無断転載禁止

 PARTⅣ  緊急特別寄稿:日大vs関学大定期戦の運営、管理責任

1.アメフト事件の危機管理能力の欠落

①アメフト問題のフィールド対応の疑問

本件は、誰もが問題視しない事が非常に疑問に思います。

この度のアメフトの競技中の事故、事件に対する危機管理は、ゲーム中の審判クルー、学連、協会、にその能力が無かったという事です。それは、以下のような状況が証明していると考えられます。

本件の初動処理を怠った主審

56日の定期戦に於いて、ゲーム中に日大選手が関学大QBに対して重大な反則行為を犯した時、ゲーム統括管理責任者である審判クルーと主審は、当該選手の危険反則行為に対して躊躇なく一発退場処分に出来なかった時点で主催者にゲーム管理能力が無かった事を証明していると思われます。

この審判の判断は、第二、第三の同選手による反則行為を助長させた事は重大な問題であります。これらの行為をマスメデイアは、第一反則現象のみに目を向け、主審の見解をコメントしていないと思います。見過ごしているのかも知れません。反則行為時の動画を確認すると同審判クルーは、映像を正面から見て、反則行為を行った右側に位置し本行為を確認、イエローフラッグを投げ反則を告知、反則がインプレイ中での出来事でない事も確認済です。

アメフト審判には、競技の特性からゲームが安全且つフェアーに進行する為の特別な処置権限を与えられているのです。その審判が日大監督、コーチの顔色を伺い乍ら、判断をするようでは、まさにこのように本件の問題の傷口を大きくした根源が、此処に在ったと指摘して良いかも知れません。

本審判、主審のTPOの無さと決断力の無さは、そのまま主催者である関東学連、日本アメフト協会の主体性の欠如を意味するものです。

先ず、この度のゲーム主催者とその上部団体は、ゲームの運営、管理責任の所在を明確にし、本件の見通しが付き次第、人心一新を図る事は、教育機関のテイームを預かる組織、団体の責任の取り方であり、運営、管理者としてのけじめであると思われます。また、審判クルーへは、責務と使命の再確認の徹底を行う事と同時に資格認定交付の再審査が、今後の再発防止には不可欠であります。

ゲーム運営、管理に必要な鉄則

主催者は、問題発生後の処理、解決の為に必要な、「タイムテーブル」を自ら作成し公表する義務があります。此れが出来て居れば、全て主催者のタイムテーブルに沿ったマニュアル通り客観的、事務的な処理により結論が導けたのです。そして、主催者は、調査の結論及び日大側への罰則が決定、発表される事で本件は、一件落着したのです。

その後に日大側、当該選手個人から主催者への罰則に関する異議申し立てが、期限内に在った場合は、双方組織、団体、個人を問わず、当事者或は代理人が窓口になり、異議に対する確認の作業、回答が行われる事がスポーツ・アドミニストレーションのこのような問題に対する処理の鉄則なのです。

また被害者である関学大、該当選手からのアピールが、主催者に有った場合は、窓口が適切な対応をすればよいのです。結論として、主催者側は、被害者、加害者側からの異議申し立てに対して双方納得いく解決に至らなかった場合、納得行かなかった側は、司法の手を借りる事となると思います。

主催者側にこのような毅然とした危機管理マニュアルが無かったので、この度のようにマスメデイアの報道に追随する事態に引きずり込まれるのです。また、関東学連加盟校の監督達に日大とのゲームを拒否されたり、今後の問題に口を挟ませたりする事自体、本組織、団体には、権威も主体性も無い組織、団体とみなされると思います。

学生連盟は、「学生達の自治活動」が大前提となっている組織、団体です。

そこに社会人、大学関係者、等の大人が学生達の自治権を強奪した結果が今日の学連の実態です。その証として、この度の学連記者会見の場には、一人の学生も同席していませんでした。しかし、誰もこの不自然で矛盾した組織、団体に質問、意見が無かったことが大学競技スポーツの我が国の現状、実態なのです。学連の看板は、何れにしましても外された方が賢明でしょう。

2.本件に対するそれぞれの立ち位置

①突然興味を持ったTV.マスメデイアの不思議

危機管理の不備は、56日のゲーム中の事件発生後、上記関係者、組織、団体の誰一人として本件に対する問題処理のイニシアチブ(主導権)を取るリーダーが現れていない事、いなかった事です。

関学大が記者会見した後、TV、マスメデイアが本件のイニシアティブを取ってしまったことにより一層問題の視点、論点がぶれ、マスメデイアが望むニュースソースに従った方向に事の次第が展開して行っているのが誠に残念でなりません。我が国には、スポーツ・アドミニストレーションの概念すら持ち合わせていない事を本件において理解されたのではないでしょうか。

TV.マスメデイアは、本アメフト問題を材料にして日大の経営、運営、管理体制の中枢の理事長にまで矛先を向け、理事長降ろしに邁進しているかの様相に見受けられるのは筆者だけでしょうか。主催者に主導権が欠落している事を良いことに、マスメデイアは、本来の報道任務を超えた特定大学の人事に及ぶ内政にまで干渉し、影響力を及ぼそうとすることは、果たして如何なものなのでしょうか。此れも本アメフト問題に於ける初動に於いて、主催者である関東学連とその上部団体の危機管理の不備がこのように問題を一層複雑化してしまったと思います。

②私立大学と文科省の関係

現在マスメデイアで報道されている問題は、日大の内政、人事問題へとステージが移されている様です。しかし、この問題とアメフト問題は、混同すべき問題では在りません。何故ならば、日大の内政、人事問題は、大学の許認可権を持った文科省日本大学の問題であると筆者は理解します。

既にK’sファイルでは、言及しましたが、文科省は、私立大学の設置、学部の設置に対する許認可権、私学助成金補助金と公金の振り分け権を持ついわば利権を握り、役人を各大学に退職後天下らせる、我が国の巨大な利権屋さんの集団である事を忘れてなりません。大学教育機関と文科省は、持ちつ持たれつの関係を伝統的に維持して来ているのです。そのような関係から、この度の大学競技スポーツの問題に於いても能動的な行動が執れない構造なのです。

 文科省は、私学大学の経営、運営、管理の問題を大学法人に投げつけ、野放しにして来た付けが山積しています。このような環境から、文教族(政治家、役人の利権集団)と揶揄される俗語が古い昔から言い伝えられているのだと思われます。読者の皆様には、今社会で問題視されているような件は日大だけの問題ではないことを是非知って頂きたい次第です。本件を対岸の火事と横目で見ている他大学の経営者は、ホッと胸をなで下ろしている事でしょうか。

3.競技スポーツの試合に於ける暴力の取り扱い

①過失と故意の区別

スポーツは、楽しみを求めたり、勝敗を競ったり、またそれを仕事として行われる身体活動Physical Activity)の総称です。競技スポーツの基点は、フェアネス(Fairness)にあり同じ環境とルールの下で行われることにより発展してきたのです。

競技スポーツは、身体運動(フィジカルコンタクトを含む)が伴うために何がしかの身体に及ぼす危険と同居しているためにリスクを伴う事で、他のリクレーションスポーツ、レジャースポーツ及び、健康スポーツ、観戦スポーツ、文化的な活動とは異なるのです。

このような事からスポーツ事故の法的な責任は、スポーツの世界では「過失」を前提としているのです。しかし、競技スポーツの試合に於ける「故意」も事実存在する事も確かです。この度のアメフト事件は、正真正銘の「故意」であったのです。

過失とは、注意義務を怠る事を意味します。あるいは結果の回避が可能だったにもかかわらず、回避するための行為を怠ったことを指します。

故意とは、一般的にはある行為が意図的なものであることを指します。刑法においては、「罪を犯す意思」(刑法381項)を指します。故意犯は、原則的に処罰されるのに対して、過失犯は、特に過失犯の規定がないかぎり処罰されないことから、故意と過失の区別は刑法上の重要な問題の一つでもあります。

②ゲーム中の乱闘、暴力行為に警察・司法が介入しない理由

スポーツ・アドミニストレーションに於けるスポーツ法では、スポーツは社会的に正当な行為であり、「許された危険」「危険の引受」「被害者の承諾」「社会的相当行為」なので違法性が阻却(そきゃく)される、と解釈されるのです。

スポーツ事故は、外形的には過失傷害罪で違法にみえるのですが、スポーツゲーム中にスポーツに内在する危険が顕在化し偶然生じた事故だから違法ではない、というのが違法性阻却事由とされています。

ようするに、アメフト、サッカーや野球、バスケなどのスポーツには歴史的なスポーツのルールがあり、その中に国家の司法機関たる裁判所がいちいち介入して裁判にするまでもなく、スポーツ界の中で自治的に解決すればよい出来事という解釈なのです。此の事は、国内外での競技スポーツ界に於いての「不文律=暗黙の了解」とされている業界の常識でもあるのです。例えば、プロ野球界、サッカー界、アメフト界、バスケットボール界、等での乱闘がその1例です。

しかし、一旦競技ゲーム以外で暴力、事件、事故、等々などの競技スポーツのルールを超えた問題は、当然に民事・刑事の法的な問題として裁かれます。

時事の動向

①6月1日:日大第三者委員会発足―7名の日大側選考弁護士による、日大側の本件に関しての調査委員会。調査結果は、7月末をメドに発表予定。

②6月10日:被害者側QB父親会見-日大第三者委員会弁護士2名にヒアリングを受けた事、内容に付いて発表。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sport

お知らせ:次回は、本シリーズの最終回として「日本の大学競技スポーツの動向」「NCAAフットボール1部の強豪校の現状と現実」に付いて、筆者の体験を交えてお伝えする予定です。別世界の話では、ありませんが、今日のNCAAの確立に約100年の年月を要していますことを記憶に留めて於いて下さい。

 

K'sファイルNO.55:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事 無断転載禁止

K'sファイルNO.55:大学競技スポーツ・アメリカンフットボールの出来事

             無断転載禁止

 PARTⅢ緊急特別寄稿:大学競技スポーツの本質的な問題

1.大学競技スポーツは教育の一環なのか否か

①大学競技スポーツの趣旨、目的は何か?

教育機関に於ける大学競技スポーツの本質的な問題の根源は、大学競技スポーツが教育の一環、延長線上なのか否かかが明確に宣言され明文化なされていないことです。

これにより各大学教育機関の教学管理者、法人経営者は、自分たちに都合よく解釈され教育本来の趣旨、目的とは異なる方向に大学競技スポーツが利用、活用されていることです。もし、大学競技スポーツが、教育の一環であると明記してあるなら、この度のアメフト問題は、これほどの社会問題にまで発展していない可能性が高かったと確信しております。

何故ならば、大学教育機関としての法人は、教育の一環に相応しい指導者、運営、管理者を採用、雇用しなければ義務に反するからです。しかし、これは日大だけの問題ではなく、大多数の大学は、同様な採用、雇用状態が現実です。この事実から、それでは、本件の問題の本質を改善、解決しない限り、アメフト問題のみならず、各大学競技スポーツに多発している事件、事故を防ぐことは難しいと思います。

筆者が驚いた事は、我が国の教育機関の基軸をなしているはずの「教育基本法スポーツ基本法20116月に施行)」に、A) 学生及び学生選手とは、何を持って認めるかの定義が明記されていないのです。また、B) 大学競技スポーツは、教育の一環である事が明記されていないのです

これは、我が国独特な社会慣習で、「そんなこと書き物にしなくても判っているだろう」と、これが重大な問題の起因となっているのです。要するに、判っていないから教育的な指導を逸脱するのです。約束事は、違反した場合の罰則をも明文化して関係者が遵守して初めて共存共栄のフェアーな大学教育社会が成立するのです。これが人と人の約束事を書き物に残す契約書の役割の重要性なのです。

この度の問題は、各大学の競技スポーツが何の為に存在し、活動を行っているのかの趣旨、目的が個々それぞれの大学において異なって理解、解釈され運営、管理がなされている点を浮き彫りにしました。そして我が国に必要なのは、日本の全大学競技スポーツを統括、運営、管理する為の共通となるルールブックが無いことを日本社会に本事件を持って問題提議したのだと思います。

個々の大学に於いて、「我が大学は、文武両道の精神に則り云々」を掲げている大学もあります。しかし、残念ながらこのようなお題目を唱えている大学の殆どが「建前と本音」の二刀流の運営、管理をしているのです。建前と本音を教育機関のキャンパスに持ち込む事は、「真実と嘘」を混同して教育するに等しいと思えてなりません。読者の皆さんは、大学教育に建前と本音が必要と思われますか。

②筆者がリスペクトする大学競技スポーツ、学生選手の重要項目

筆者が考えるところの、本来大学及び大学競技スポーツに必要な重要項目を列記させて頂きます。 

大学の意義とその目的:

1.最高の学問と教養を身に付ける場である。

2.高度な専門知識と技術(スキル)を身に付ける場である。

3.人間形成の場である。

4.その他。

大学競技スポーツの意義とその目的:

1.大学競技スポーツは、全学生、教職員、同窓生、地域社会の代表である。

2.大学競技スポーツは、大学関係者とその社会の心を1つにまとめるパワフルな唯一のツール(道具)である。

3.大学競技スポーツは、これら全関係者に対して還元されるものであらねばならない。

4.大学競技スポーツは、大学の士気高揚に大きく貢献しなければならない。

5.大学競技スポーツは、大学の広報宣伝活動の最先端を担い母校の名誉と伝統とそのパワーを内外に知らしめる重要な役割を担っている。

6.大学競技スポーツは、アカデミックと競技(文武両道)の原則を維持する。

大学競技スポーツの本質:

1.大学競技スポーツは、大学教育の一環である。

2.大学競技スポーツは、「フェアネス」をその基本精神とする。

3.大学競技スポーツは、関係者によって作成されたルールを遵守する。

4.大学競技スポーツは、運営・管理を大学キャンパス内で行う。

5.大学競技スポーツは、ホーム&アウエイ方式で行う。

6.大学競技スポーツは、学業と競技スポーツの両立を本文とする。

大学生選手の使命:

1.学生選手は、所属大学を代表する母校の伝統と名誉にかけて最高の能力を発揮することを使命とする。

2.学生選手は、全学生の模範となり競技スポーツの代表として大学対抗戦に出場するものとする。

大学生選手の目的・目標:

1.自らの能力と向上とその限界を試す。

2.人間関係の協調性と社会性を学び養う。

3.愛好心(スクールスピリット)と連帯感(和)を学び養う。

4.心技学体のバランスを学び養う。

以上、如何でしたでしょうか。これらは、筆者の日米大学での経験から日本の大学競技スポーツに必要且つ、骨格となるべき項目と確信致しております。大学競技スポーツは、運営、管理に於いて全ての大学が共通のルールブックの下で競技を行うだけでなく、競技以外の規則、ルール、罰則も共通のルールブックの下に関係者がリスペクトし、遵守することが大前提なのです。

大学競技スポーツは、現在の学生連盟、組織が、本来の学生達の運営、管理でなく大人達の利権組織、団体化しているので本来なら、文科省の指導により、解体して適切な個々の競技スポーツの組織、団体に改編する事が急務であると思います。

そして各競技種目別の組織、団体は、日本の大学競技スポーツを統括、運営、管理する組織、団体の下でスポーツ・アドミニストレーションが行われる事が望まれます。

しかし、各種目の学生連盟、組織は、伝統に培われ、各大学卒業生、社会人達の利害、利権となっていると同時に少し商品価値が見られる競技スポーツの学連には、企業、新聞、テレビ、広告代理店、等の複雑な利権構造となっているので、よほどドラステイックな改変、移行が行われない限り、100年経っても抗争が絶えないのでないかと思われます。改革遂行には、問題を乗り切る以上の覚悟と実行力が必要です。

2.問題に正面から取り組まない文科省スポーツ庁)の罪

日大アメフト問題は氷山の一角

大学競技スポーツは、筆者が存じている範囲でも大半の大学が同じ現実と環境の中で経営、指導、管理がなされています。また、指導者が、体罰と称する暴力を用いる事が絶えない現実も読者のみなさんはご承知の通りです。

Ksファイルに既にご紹介しましたが、某大学に於いては、年間700件もの暴力、体罰、ハラスメント、等が学内で行われている大学(当時の朝日新聞朝刊の取材調査記事より)もあります。このような大学に対して、マスメデイアは、何故事実を国民、社会に公表しないで、美化しようとするのでしょうか。何故?不思議です。

また、近年は、マスメデイア企業がこのような大学と組んで授業ではなく事業を始め、障害者の獲得に乗り出している。と学内外に公言してはばからない経営者も居るようです。

同大学の経営陣には、文科省副大臣、前文科大臣(文科大臣就任前までは文科副大臣で理事として、直後に辞任、現在不明)、元警視総監、元総理夫人、等々と著名人、政治家達が経営陣として名を連ねているにもかかわらず、何故このような膨大な数の暴力、体罰、ハラスメントが学内で毎年起きているのでしょうか。此処にも何か暗い影が潜んでいると思われますが、文科省は、我関せずの様です。学生達、教職員達、父母達は、何故勇気ある発言をしないのでしょうか。

何故マスメデイアは、この度のアメフト問題に特化し日大をリンチに掛けようとするのでしょうか。大半の日大学生達は、どんな罪を犯したのでしょうか。このようなリンチ的な行為により、学生達は、二次、三次的な被害に合っている現実をどう救って挙げられるでしょうか。このような大事なことをマスメデイアは、どう考え、配慮していると言えるのでしょうか。何か弱いものいじめをこのさいとばかりに日大バッシングを楽しんでいるようで、如何なものでしょうか。

②主催者関東学生アメフト連盟の記者会見でのコメント

既に本K'sファイルでは、この度の関東アメフト連盟の本件に関しての報告会見の対応問題を述べさせていただきました。同学連は、最終的に本件に関しての公式記者会見を5月29日午後8時に開き、事件発生後23日目に初めて会見の場を持ち、規律委会からの処分内容及び調査結果の報告がありました。

その中で、[規律委員は理事会で「無期限の出場資格停止にしてしまうと、選手らは希望が持てなくなる」と説明。森本啓司委員長(連盟専務理事)も会見で「再起のチャンスを与えないのは教育をモットーとする連盟としてあり得ない」と語った。]   以上朝日新聞5月31日朝刊記事から、

上記取材記事より、連盟専務理事は、学生アメフト選手は大学教育の一環であると認識している事が伺えます。関東学生アメフト連盟は、教育の一環として指導、運営、管理をされていない大学をどのような審査基準規定によって、加盟登録を認可しているのか、非常に疑問に思いました。大きな矛盾が此処に潜んでいるのでないのでしょうか。

このような暴力指導、運営、管理をしている大学は、日大だけでない事を学連は把握している筈です。上記毎年700件もの暴力、ハラスメント、等を起こしている大学も学連に加盟して、監督も監督会議に出席されている様です。他の大学も大なり小なり同様です。

学連専務が教育をモットーにしていると強調されるのであれば、日大以外の加盟登録大学は、暴力指導、運営、管理がなされていない事を明言すべきでした。如何でしょうか。学連は、教育をモットーとしていると断言されていますが、これは、建前であり実質が伴っていないと断言された方が正直でないでしょうか。これは、筆者の素朴な疑問です。専務の発言には、裏付けが必要です。

関学大のような大学教育の理念を持って、一貫したアメフト部を運営、管理、指導している大学は、我が国に於いては非常に少数です。

スポーツ庁は、文科省の風除けか

筆者が嘗て文科省の担当者に確認致したことがあります。それは、「文科省は、大学設置、学部承認の許認可を出していますが、大学競技スポーツに於いての各大学の不正、不公平な入学、卒業認定、不正単位授与、金銭に寄る内外学生選手のリクルート活動、等々を監査、調査、指導しないのか。また、文科省は、各大学に対して毎年莫大な私学助成金(公金)、補助金(公金)を流し込んでいるが、どのような基準と責任に於いてなされているか」を尋ねました。

文科省は、大学設置の許認可は出しているが、各大学の運営、管理の問題は各大学法人の経営者に任せているので関知しません、そこまで手が回らないのが実態です。助成金補助金に関しては、告知しています。」とこれがお上の天の声でした。助成金補助金に関しては、全く具体性もなく目に付かない場所にただ告知しているとの形式的な内容のみで国民、社会が納得できる内容でありません。

此れでは、各大学の経営者、管理者の教育、経営、管理能力により大学、指導者、指導内容が歪められても誰もが監査、調査、指導、是正できない、しない構造が確立されているということです。このような事は、本読者の皆さん以外はご存知でないという事です。この国の現在のような文科省というお役所は、必要な省庁なのでしょうか。米国には、文科省などありませんがスムーズに経営、運営、管理がなされています。

先日524日には、鈴木大地スポーツ庁長官が「もう国のリーダーシップにより本件は、」と発言されました。同氏及びスポーツ庁にどんな権限があるのでしょうか。筆者の理解は、スポーツ庁は、文科省に在ったスポーツに関する取扱いの部署を文科省と切り離して新しく特化した形でスポーツ庁を設置、いわば文科省には、スポーツの問題は持って来るな、スポーツ庁に持って行きなさい。と言わんばかりの対応とお見受けします。

スポーツ庁、長官は、公益法人のスポーツ組織、団体、で起きた不祥事、事件、等の報告を受ける受付窓口で、それ以上の問題を処理、解決するに必要な権限も権力も与えられていないと理解しています。上記のような発言をし、拳を振り上げて降ろす場所があるのでしょうか。是非スポーツ庁と長官は、少なくとも社会問題となっている本件に対し、先ず大岡裁きを下されることを切に願います。本件が裁けないで、日本版NCAAの設立等、あまり風呂敷を広げない方が宜しいのでないでしょうか。長官には、真のスポーツ・アドミニストレイターのプロフェッショナルに自らなって頂きたいので苦言を申し上げている次第です。悪しからず。

 

 文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sport

お知らせ:NO.55は、大学競技スポーツの本質問題及び、その取り巻きの環境、現実問題、等を述べさせて頂きましたが、筆者の主張は、読者の皆様にご理解して頂けましたでしょうか。次回、56は、この度のアメフト問題の今後の展望を予定していますが、時事の問題が生じた場合は変更させて頂くかもしれません。