K'sファイルNO.132:東京五輪延期の新たなる現実と試練(1)

f:id:hktokyo2017041:20200423141736j:plain


K's
ファイルNO.132東京五輪延期の新たなる現実と試練(

無断転載禁止             毎月第二、第四木曜日公開予定

 読者からの便り

河田弘道

政治力を悪用し日本スポーツ界支配に成功した森喜朗元総理の最期の野望は自身の名前をオリンピック史上に刻印することなのかと、そんな不謹慎な事を考えてしまいました。その一方で、次期日本スポーツ界のリーダーと期待した山下泰裕JOC会長の戦略なき発言力、洞察力には些か失望を禁じ得ませんが、それと同じ柔道家女性・山口香氏の見識、発言とを対比しました時、両者の質の違いは余りにも歴然としていて、いっそのこと会長交代したらとそんな事まで期待を膨らませて仕舞います。K’sファイル131号の論考は個々の事実関係の背景事情が透けて見えるようでよく理解でき、府に落ちました。

明日のコロナウイルスの感染者数が気になります。   愛読者より

 

目次

東京五輪延期決断に伴う感染者数との因果関係

五輪開催最優先が国民・社会を危機に導く

筆者の素朴な疑問と私見

 

2020東京五輪リマインド・シリーズ(3

2019-02-07

第三弾:東京五輪招致に潜んだ闇取引

1.JOC会長職はお飾りか

  限りなく黒に近い疑惑

  JOC竹田会長記者会見の内容

  JOC会長職の職責は何か

  JOC会長の理解と認識の程度

2.筆者の素朴な疑問と私見

 

2020423日、木曜日 公開

東京五輪延期決断に伴う感染者数との因果関係 

五輪開催最優先が国民・社会を危機に導く

この度の新型コロナウイルスCOVID-19)は、現在日本に於いて猛威を振るい拡散、人々の心体を蝕んでいます。特に驚異的な増殖は、首都圏及び人口過密都市に集中していることは疑う余地もありません。しかし、何故東京都は、世界的過密人口でありながら3月ある時期まで、世界各国の感染者の統計数値から鑑みても非常に低いレベルにあったかを国民、社会も疑念を抱かなかったことが不思議でなりませんでした。

政府、東京都は、自らの会見及び報道番組を介して連日連夜感染者数が少ない事を強調し、PCR検査数を押さえていることを医療崩壊を防ぐための施策として正当化して来ました。本件に付きましては、賛否両論あると思われます。しかし、医療崩壊をプロテクトするか人命の安全、安心を最優先させるかは論議の根拠にも成り得ないと思われます。莫大な国家予算を東京五輪開催招致の為に買収疑惑まで起こして投資する余裕があるなら何故自然災害、原子炉事故、そしてこのような医療対策のために医療施設、人材の充実を準備できていなかったことを今更ながらに残念でなりません

TV、マスメデイアでは、政府、国会議員、専門家達が連日、連夜と入れ代わり立ち代わりTV番組に出演し、その専門家の多くはPCR検査に関する問題点とそのシステムに疑念のコメントを述べていました。その中で政府関係者達及び与党国会議員達は、あくまで現在の方法とシステムを肯定していたのが強く印象づけられた次第です。野党議員は、正論を述べてもそれを実行する実践力が有りません。

しかし、唯一某局BS番組のMCを務める人物は、どのゲストを迎えても「何故政府、厚労省は、検査を受けられる体制が整っているにも関わらず、国民が検査を受ける体制を簡素化しないか、国民が検査を受ける権利を何故拒むのか」と問いただす姿勢には共感をした国民も大変多かったと思われます。このMCは、今日もぶれる事無くこの指摘を番組で続けている事は強い信念を持ち、この政府と東京都に疑念を抱いているからだこそと思えます。

また複数の大臣経験者達は、我も我もとTVに出演する度に一つ覚えかの如く「水際で防止することが大事」としか、論じられない方々の出演が目立った次第です。国内に於いては、当時既に感染者の多くが常識的に勘案しても国内に上陸していたと推論、仮説を立てるべきでした。202023日に横浜港に接岸させたダイヤモンド・プリンセス号に社会、国民の関心を釘付けにし、「これが水際作戦だ」とばかりマスメデイアも騒ぎ立てこの状況を長引かせた事が、今日に至らせたと、仮説を持つ海外の専門家達が多く居るのもうなずけます。

筆者の素朴な疑問と私見

筆者は、スポーツ・アドミニストレイターとして上記関係者の言動、行動を元に観察させて頂いて参りましたが、結果として1つ大きな客観的な数値がDATAとして残った事です。それは、2020323日、24日を境に東京都下及び全国に感染者数が急激にそれも極端に急増しだした事です。

この事実は、それまでの東京五輪強行開催方針を崩そうとしなかった東京五輪関係者及び政府、東京都と余りにも過少化されて来た感染者数値との間に重大な因果関係が在ったのでないかとの疑念、仮説を持たれてもしかたのないDATAと言えるのではないかと思われます

K’sファイルNO.131では、319日前後から324日前後までのIOCTOCOG、東京都、JOC、日本政府の様子を時事刻々と事態が動く様子を克明に解説して参りました(NO.131をご参照ください)。これは、今まさに国民、社会から東京五輪開催を強行しようとする為に東京都の感染者数の告知は操作されていた(抑えられていた)のでないかとさえ疑われている次第です。読者の皆様は、どのように感じてられましたでしょうか。

筆者は、これが唯の噂である事を願います。しかし、此れが本当のことなら我々は、人命軽視したなにものでもなく「東京五輪強行開催、延期、中止、アスリートファースト」を語るに相応しくない人達の蛮行として許し難い大罪であるのかも知れないという事です。

324日を境に「東京五輪」に関わる話題が殆どなくなったのは、正直申し上げて、東京都知事組織委員会会長の笑顔を見るにつけ、政治家達の変わり身の早さには呆れ果てました。それは、日本政府及び東京都は東京五輪開催、中止、延期の議論にエネルギーを奪われていた証であり、既に手遅れになった新型コロナウイルス対策に本格的に舵を切らざるを得ない事態となったと申し上げた方が理解しやすいかと思われます。これらも政治のミスリードになるのかも知れません。

この二つの重大な問題への判断と決断を遅らせことは、その後感染者、死亡者を急増させ、国民、社会を恐怖に陥れている元凶の一つとなっている様に思えてなりません。これは、即ち「東京五輪強行開催、延期、中止」の是非のアドミニストレイテイブな判断、決断の遅れが原因で多くの国民、社会に疫病を蔓延させ取り返しがつかない状態にこの件もまた引きずり込んだように思えるのです。この重大なミスリードを犯した責任の所在は、どうなるのでしょうか。

今日では、上記政府、東京都の新型コロナウイルス対策のコンセプトは崩壊し代わりに、各自治体自らの判断と決断によって一人でも多くの日本国民がPCR検査を受ける権利を優先し、心の不安と心理的なストレスを取り除く方向に漸く向かい始めている次第です。これらは、遅まきながら、自治体の思考力が中央政府、省官庁より国民への目線が正常且つ現実的に作動しているのではないでしょうか。

 そして、K'sファイルNO.131に於いて既に述べさせて頂きました通り、案の定IOCのバッハ会長の思惑通りに、東京五輪延期に必要な莫大な資金の調達を組織委員会と政府に突き付けられてきている次第です。延期を決めたのは、他でもない内閣総理大臣安倍晋三氏でした。というシナリオです

 421日付けの共同通信社の配信記事では、「IOCは、既に安倍首相が五輪延期に必要な費用負担に同意していた事を示唆」、これはまさにK’sファイルNO.131で既に詳細を述べました通り、バッハ会長からの花代の請求書と化した証であるようです。しかし、日本政府、TOCOGは、これに対して反発しているようですが、今国内の状況を鑑みてこの件をIOC側から発表される事は不味いという事なのかも知れません。IOCがこう出て来る事を御前会議に出席した日本側の代表者達が、洞察できなかったという事でしょう。即ち、バッハ会長のトラップ(罠)にまたもやまんまと引っかけられたという事なのです。

 

===================================

2020東京五輪リマインド・シリーズ(3

2019-02-07

第三弾:東京五輪招致に潜んだ闇取引

1.JOC会長職はお飾りか

先ず初めに

本件は、筆者がスポーツ・アドミニストレイターとしてこれまでの類似した経験、体験、等を加味して論じさせて頂きます。このことから一般の読者の皆様とは少し異なる視点になるかも知れませんがご承知おき下されば幸いです。K’sファイルの過去の原稿をリマインドして頂くために添付させて頂きますのでご参照して頂ければ点が線に結びつくかと思われます。

限りなく黒に近い疑惑

この度、竹田恒和JOC日本オリンピック委員会Japan Olympic Committee)会長の問題は、2020東京オリンピックパラリンピック(略:2020東京五輪)招致活動に於いて、国際オリンピック委員会(略:IOC)委員を買収したのでないかとの嫌疑が色濃くなってきたという海外の報道に端を発したものです

本件は、2016東京五輪招致活動に失敗後、本格的な敗因の分析、究明もなされないまま、2020年五輪招致活動へと突入し、20139月に東京開催が決まるまでの間に起きた最大の汚点と問題の1つであります。また、招致活動当時から、開催都市決定後に於いても我が国の本件に関わった関係者達に対して内外からの疑惑の目が向けられていたのも事実でした。しかし、疑惑の中心人物達は、誰もが自らの関与、嫌疑は否定しても、その裏付けとなる説明及びエビデンスの情報公開は一切行わず、現在も尚疑惑は深めても解消には至っていなかった事をご承知おきください。

20181210日、フランス裁判所の予備判事は、JOC竹田会長を本件に関わる容疑者として本格調査に乗り出し、本人を事情聴取の為に当局に任意出頭させたのでした

竹田氏は、当局の事情聴取に対して「潔白」を主張して帰国したとの事です。しかし、同氏は、帰国後このような事情聴取がフランス当局に呼び出され行われた事すら国民や社会に報告、開示していませんでした。フランス当局及び海外マスメデイアから事実を明かされて初めて、JOC2020東京五輪組織委員会の担当マスメデイアが動き出さざるを得なくなり、全ては後追いの取材、報道で在った次第です。

竹田氏は、海外マスメデイアの情報が日本国内に入り、初めて担当記者達に対応せざるを得なくなったのです。そして、竹田会長は、苦し紛れに2019115日、東京都渋谷区の岸記念体育会館(日本スポーツ協会本部)に約140人もの内外メデイアを集めて、約30台のTVカメラを前に記者会見を行ったのです。しかし、この会見も日本の公益財団法人JOC日本オリンピック委員会)会長として頂点に位置する方の記者会見とは、思えない内容であった事を読者の皆さんは既にご承知の通りです。

JOC竹田会長記者会見の内容

記者会見は、竹田氏が準備していた一方的なメモ読みのみで、質疑を拒否し、たった7分間でお開きとなった次第です。集まったマスメデイアが憤慨したのも無理からぬ事でした。内容は、「この騒動で2020東京五輪パラリンピックの準備に携わる人達への影響を与えかねない状況になり、本当に申し訳ない気持ちです」とのお詫びに始まり、「フランス当局の調査に全面的に協力し、潔白を証明したい」と述べた次第です。

本題は、シンガポールコンサルタント会社への支出(23000万円)の正当性を述べたに過ぎないものでした。また、JOCは、同氏の正当性を裏付ける資料として、JOC調査テイーム(身内で編成した第三者委員会)が、3年前に結論付けた「IOCの倫理規定に違反しない」とした調査報告書を配布したのです。

筆者は、JOC調査テイームの最終報告書は身内の調査であり、正当な調査ではなかった事は素人でも判る事であったと思います。

三者委員会とは、お茶を濁す為の形式的なまやかしで、日本の談合文化ならではの発想です。委員会は、何の法的な根拠もないので無意味だと思います。彼らには、報酬を払う人間が委員達を推薦、任命するのですから正義、公平性など信頼に足るものでありません。この委員会は、最初から正義を振りかざすものでなく世間社会を欺くためのパフォーマンスです。本気なら竹田氏個人か或はJOCとして、招致委員会として逆にフランス司法当局を告発し、即司法に委ねるべきです。第三者委員会とは、問題を裁くことでなくお茶を濁すことを目的にしている会合だからです

これを持って「潔白」だと言われても誰が信じるでしょうか。此れが、日本を代表する公益財団法人の代表責任者の本件に関する記者会見であったとは、誠にお粗末この上ない限りでした。実務経験も無い竹田氏は、何処の誰が推薦、任命し、この席に長期に渡り重責を与えたのか、これが伝統的な日本のスポーツ界の最高責任者を選ぶ選考基準、手法である限り、我が国のスポーツ界に正義と公平は訪れないと申し上げた方が良いかも知れません。これは、現在も同じ手法で変革はありません。

フランス検察当局から竹田恒和氏(JOC会長、当時71歳)への嫌疑とは、2020東京オリンピックパラリンピック招致の為に必要なIOC投票権を持った委員への買収疑惑なのです

JOC会長職の職責は何か

筆者は、同氏のこの度の会見での対応、資質からしてこの国の競技スポーツに対する運営、管理者達の縮図を見ているような気がしました。

竹田氏は、2001年にJOC会長職に就任17年余りに渡りこのような重要な日本スポーツ界のリーダーとしての看板を背負い、職責ある玉座に鎮座されてきました。しかし実質は、神輿を担いでいる人達に操れていた構図が透けて見えるような気がするのです。この竹田氏の実務の様子と資質は、これから述べる実態の説明に於いて明らかになるかと思われます。

これは、2020東京五輪組織委員会に於いても同じ構図とお見受けする次第です

此の事が事実であるなら、2019115日の本疑惑に対する「記者会見」での発言は、無理からぬことと理解します。しかし、このような組織構造に於ける運営、管理手法は、限りなく闇取引の温床と化し、疑惑が犯罪へと移行している、極めてリスキーで危険水域に陥って行くのです。この実態は、我が国のスポーツ組織・団体をスポーツのイメージとは真逆の世界に引きずり込んで行く様子を見せられている様に思えてならないは筆者だけでしょうか。

この度の招致疑惑に関する実態を、2020東京五輪招致委員会の事務局、理事、評議員達が本当に知らなかったとするならば、その人達は何の為に選考され、何の為に招致委員会の要職に就き、何をしていたのか、ただブラジル、リオジャネイロ市にプレゼンテイションにそろいのブレザー姿で公費を使って乗り込んでお祭り騒ぎをする為の要員として集められたわけでない筈なのです。そうでないなら無責任極まりない人たちの集団であったと断罪されても仕方がないと思われます。

私は、ことの詳細を存じ上げています」と誠実で正直な関係者がいつ現れるかと静観致しておりましたが、今日に至っても未だに誰ひとりとして現れて来ないのが実情です。竹田恒和氏(当時2020年招致委員会理事長、JOC会長)は、本件に関わる統括責任者である事に間違いありませんしかし、本件は、竹田氏自身が本コンサルタント会社へのアレンジメント、調査、そして契約に至る過程まで、交渉、契約署名、送金に関する全ての行程をただ一人で遂行できたとはとても思えません

全てを存じている人物は、竹田氏を除いて、この規模の事業から想像するに、恐らく10名以上で作業をし、その方々の中には主犯格である情報提供者が居ると推測されます。その人達は、竹田氏を1人矢面に立たせて、何食わぬ顔で「だんまり」を決め込んでいるのです。スケープゴート役は、竹田氏の本来のお役目なのか、そうであるならば、同氏は真に神輿に担がれた操り人形でしかないのです。神輿の担ぎ手は、どのような人達なのか。このような発言をする同氏は、何故この玉座に長年座り続けていられるのでしょうか。此の国では、この様な人物だからこそ座れるのかも知れません。同氏への対価は、何だと読者の皆さんは推測されますか。

本件に関わった人達は、必ず存在し今尚重要人物としてその後の東京五輪組織委員会TOCOG)の役員として、何食わぬ顔で関わっている事はまぎれもない事実と考える事の方が正しいかと思われます競技スポーツは、ルールの下で勝敗が決せられますが、このようなスポーツをCOREとしたポリテイカル・ビジネスゲームには暗黒の闇が奥深く底の方に重く垂れ込めているように思われます。事実を知っている人物達は、招致委員会に勿論居たと言う事ですこのような裏舞台で何食わぬ顔をして公私に渡り恩恵に預かっている人達こそが真に断罪されるべき人達なのです

JOC会長の理解と認識の程度

竹田会長が知っていた事とは

1.シンガポールのブラック・タイデイングス社(略:BT社)と2020五輪招致委員会は、コンサルタント契約を結んだ事。本契約書は、二つのコンサルタント契約書で成立している事。1度目の契約(20137月):その趣旨、目的は、ロビー活動、関連情報を収集する業務委託契約書であると説明した事。2度目の契約(201310月):これは、一つ目に対する成功報酬に基づく契約であると説明した事。

2.コンサルタント契約書に同招致委員会理事長として署名、捺印した事。本契約内容は、衆参両院の予算委員会で説明、国会で本件への追及は無かったとの事。

3.本契約料は、合計23000万円であった事(内訳:20137月に第一回目が、10月に第二回目がBT社の銀行口座に入金済、その後BT社は解散)。

竹田会長が知らなかった事とは

1.BT社の代表のタン・トンハン氏(36)は、当時名前は知っているが会った事はない。

2.BT社の関係者に当時国際陸上競技連盟(略:IAAF)会長のラミン・デイアク氏(Lamine Diack193367 生まれ、セネガル陸上競技選手、ダカール出身。国際陸上競技連盟5代会長。IOC委員)の息子で当時の国際陸連コンサルタントのパパマッサタ・デイアク氏((Papa Massata Diack)が関係しているとされる事を知らなかった事。

以上が当時から今日までの間、竹田氏が本件に関して自ら認めている発言内容であり、既にマスメデイアによって報道された項目です。海外のマスメデイアがいみじくも、竹田氏は、政治家発言をすると評していましたが、まさに同氏は日本の政治家に向いているのかも知れません。

2.筆者の素朴な疑問と私見

此処で見逃してはならない重要なポイントは、通常この規模に於けるビジネスに対する作業、業務は非常に緊張感を要するポジションなのです。しかし、竹田氏の対応と発言は、単に何方かの指示通りに動いているとしか考えられないのです。竹田氏は、アドミニストレイターの責任たるは何かを理解、認識されていなかったのかも知れません

竹田氏は、①「BT社との契約に関し、如何なる意思決定プロセスにも関与していない。本件に関与した人達及びその承認手続きに疑う余地など無かった」と断言している事です。それでは、その人達が誰であるかを明らかにする義務があります。同氏の言葉を借りますと、「本契約に当たり、決断したのは私ではない。署名、捺印してくれと持ってきた人達を信用していました」という事になるのです。此れから致しますと、同氏は、本件の責任の主体主は自分でなく他にいる、と回答しているに等しいということです。

関与していない最高責任者が、何故署名、捺印したのか。これは、本業界に於いての自殺行為です。また、同氏は、②「BT社と国際陸上競技連盟前会長とその息子がどう関係していたか、私は知らなかった」とこれも断言しています。これらの回答は、子供が悪いことした後に整合性が取れなくなり、説明できない時に駄々をこねているのと同レベルなのです。

この断言①②は、今後同氏がスケイブゴートにされそうな気がしてならないのです。何故なら、竹田氏の発言は、「同氏が信頼に足りる理事、評議員の複数の関係者、及び委員会外の本件に関わる重要な企業関係者が、BT社及びその代表者について、彼らは本契約をするに相応しい人物・法人であると担保したので、私は署名、捺印した」と言いたいのでないかと推測されます。

此れが竹田氏の本音であるなら、筆者は、招致委員会の理事会、評議員会がトップスポーツ・アドミニストレイターとして相応しくない人物を会長、理事長に選任、任命した事への重大な責任があると確信する次第です当招致委員会の理事、評議員の役員名簿は、次回ご紹介させて頂きます。報道によると、このような竹田氏の発言を受けて、招致委員会にいた関係者からは「発言は、自分の保身のために部下切り捨てに聞こえる」との批判がでていることからも、招致委員会の関係者の中には事実を知っている人が多く居る証しです。

竹田氏本人は、「事の次第を仕掛けた人達から充分に説明を受け、自らも理解と認識の上での署名、捺印した」と申されるのであれば筋が通るのです

何れにしましても、招致委員会の関係者及び関連企業関係者の中に、竹田氏が契約書に署名、捺印するに足る、必要な情報及び資料を提供した人達が居た事に違いないと思われます。よって竹田氏は、情報、資料を担保できたので署名・捺印した。と筆者の経験からも想像できる次第です

此処で現実的な問題が明確になった事です。招致委員会が契約をしたBT社・代表者のタン・トンハン氏は、関連事件で2019116日にシンガポール裁判所に於いて実刑判決を受け、220日に収監が予定されている人物でした

これにより、竹田氏及び2020東京五輪招致委員会が契約した相手は、信頼するに足る人物でなかった。との証明がなされたので竹田氏が署名、捺印して全額送金した相手は、犯罪者であったと言う事です。

この様な状態を客観的に見ても竹田氏のみならず、理事会、評議会の関係各位の責任が果たされていなかった事は明白であり、現時点に於いても限りなく黒に近い状態であるように思えてなりません。問題は、フランス当局が招致委員会から送金した金が、最終的に誰の手(IOC委員)に渡ったかの確証を握っているのかどうかに今後焦点が絞られてくると思われます。

日本側からの黒い魔の手は、このルートのみでなく他の複数のルートにも莫大な闇金が複数の中継所を経由して運ばれていることが今後時間とともに明らかになるように思われます。しかし、それもフランス当局の捜査の本気度に関わると思われます

読者の皆様は、マスメデイア報道からの情報だけでは抜け落ちたパズルの数が増える一方、K’sファイルを読み進めて行くに伴い、不可思議な抜け落ちたパズルのピースを埋め込んで行けるのではないでしょうか。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

紹介:Gファイル(長嶋茂雄と黒衣の参謀)文芸春秋社、著者:武田頼政

小野塚テル氏の読後感をご紹介します。以下URLを貼り付けて検索下さい。URL: https://lp6ac4.hatenablog.com/entry/2019/05/30/055806

お知らせ:NO.132は、「東京五輪延期と東京都の感染者数の重大な因果関係」と「2020東京五輪リマインド・シリーズ(3)」を述べて参りましたが、如何でしたでしょうか。次回は、時事の出来事に対するテーマと東京五輪リマインドシリーズ(4)を予定しております

 

 

K'sファイルNO.131:東京五輪を迎える日本国の試練(3)

f:id:hktokyo2017041:20200408235659j:plain


K's
ファイルNO.131東京五輪を迎える日本国の試練(

無断転載禁止             毎月第二、第四木曜日公開予定

 読者からの便り

K'sファイルNO.130、拝読致しました。昨日東京五輪の延期が発表されましたが先生が今回の記事を執筆されている時点では延期は未定だったと思われます。IOCは当初、延期は視野に入れないと言うスタンスだった上に日本国内でもJOC山口香理事が延期すべきと発言した事に対して同じJOC山下泰裕会長は「開催に向けて力を尽くすべき。(山口香理事の)一個人の発言であっても(延期の話は)極めて残念」と述べ、山口理事を牽制したと聞いております。

先生がお書きになっている様に2021年夏までにウイルスが消えて無くなっているという保証は無い訳ですし、約70%の国民が「五輪開催はやめるべき」と意思表示をしていると言う背景を考慮すれば「延期」と言う未練を感じさせる措置では無くて即刻中止を宣言すべきだと存じます。そうでないと来年の今頃にIOCJOCの発表するであろう色々な情報に国民が振り回され徒労に終わるだけの様な気が致します。また、組織委員会は、総額900億円とも言われる東京五輪延期に拘る返金無しのチケット代のお金の流れに付きましても、私たちに理解しやすい方法で情報公開して頂きたいです。それでは失礼致します。読者より

 

目次

■一夜にして崩壊した日本側の思惑

東京五輪の主体主は四層構造

大本営招集は誰の指示

ドイツ人辣腕弁護士の策略と罠

バッハ会長のぶれないコンセプト

■スポーツ・アドミニストレイターの視点

東京五輪開催のプレデイクションは10%か

■筆者の素朴な疑問と私見

 

202049日、  木曜日 公開

■一夜にして崩壊した日本側の思惑

2020東京五輪の主体主は四層構造

2020319日午後10時の時点、自民党総裁安倍晋三氏、東京都知事小池百合子氏、東京五輪組織委員会TOCOG)会長の森喜朗氏は、「東京五輪は通常通り開催します」と強硬な姿勢を崩していませんでした。しかし、それを証明する根拠が必要でしたが、誰も答える事が出来なかったのです。これは、彼らを個々に支える専門家の参謀が不在か怠慢である事はもとより、本プロゼクトには本来有るべきはずの招致の為の大義が無かった事を物語っていると思われます。政治家達は、専門知識、実践経験のない方々なので84ロス五輪(LAOOC)のP・ユベロス委員長のような政治家であり実務キャリアが豊富な真のスポーツ・アドミニストレイターではない事がこの様な危機となった時に露呈してしまったと言えるでしょう。

IOC会長は、「本五輪開催の是非に付いては、WHO(国際保健機関)の指導、指示に従う」と他人事のようにぼやかしました。開催都市の東京都知事は、「開催しないなど全くありえない」と断言し、東京五輪組織委員会の会長は、「予定通りに開催する方針に変わりない」と、開催国日本政府の安倍首相は、「完全な形で開催します」とどれも不明瞭な言い回しで責任の所在も根拠も明確にしない無責任な政治家ならではの発言でした。しかし、日本時間の321日、米国時間の20日付のワシントンポスト紙のデジタル版が世界に配信したそのタイトルは、「Shut the Olympic Games downBy Sally Jenkins Sports Columnist March 20, 2020 at 2:55 p.m. EDT東京五輪の即時中止求める」でした。

それまでは、IOC電通TOCOG、東京都、政府と水面下で会合、意見交換、腹の探り合いと「強行開催、延期、中止」かの激論が交わされていたのは間違いのない事実でした。いみじくもこのワシントンポスト紙の記事は、上記関係者達の強い自己主張に対して、ゲームオーバーの氷水を頭に浴びせたに等しい強烈な劇薬であったと思われます。その結果として、この劇薬は、国内外の五輪関係者達、世界各国のアスリート達に発言する勇気を与えたのです。その勇気ある発言は、地球の裏表の世界各地から共鳴する声が声高に、それはまるで東京五輪延期、中止の進軍ラッパとなり大きなパワーを醸成し、優柔不断な判断、決断できないIOC幹部達をシェイクアップさせた、これはまさに「文は武より強し」を証明したかのようでした。

その証は、IOCのバッハ会長の「4週間以内に結論を出す」との発言を誘引したのだと筆者は確信した次第です。この発言を軸に、それまで水面下で討議、議論、意見調整をして来た関係者達は、お上(IOC会長)の顔色が変わった事に気付いたのだと思われます。そこでTOCOGJOC、東京都、日本政府の責任者達は、それまでの強行姿勢の言動と態度を一変し、極端なまでものトーンダウンを突然起こしたのでした。それまでの日本側の各組織・団体、政府の厚化粧をした政治家達の言動は、毎度おなじみの空元気で在った事を世界中にさらした次第です。

これにより日本側の政治家達は、狼狽し、バッハ会長に先手を打たれまいと内閣総理大臣自らイニシアチブを取ろうと一歩前に出たのでした。バッハ氏は、この動きを誘引させる為に「4週間以内に結論を出す」と先手の駒を指し日本の政治家達をトラップ(罠)に追い込んだのでないかと筆者は読んだ次第です

多分K'sファイルの読者の皆さんは、それまで国民世論の調査結果などに見向きもせず、強気で聞く耳を持たない運営管理者達のあの態度は、何だったのかと驚嘆したのではないでしょうか。これが日本の政治家達の本性なのです。そこには、情報公開できない理由が焦りとなっていたのかも知れません。

大本営招集は誰の指示

その直後の324日、大本営の総理官邸に小池百合子都知事森喜朗組織委員会会長、橋本聖子五輪担当相達は、安倍晋三首相の元に集合し御前会議とマスメデイアは色めき立ったのです。しかし、実は、IOCのバッハ会長の呼び掛けに対する電話会談が行われたようでした。勿論、このような場合には、電話会談を行う前に双方の意見の調整、落としどころ、等を事前に事務折衝を済ませておくのが普通です。そして電話会談は、双方リスペクトした形式的な体裁を演出する場と申し上げた方が判りやすいかと思われます。これは、丁度ワシントンポスト紙が劇薬を投げ入れてから4日目の出来事だったのです

その後、安倍首相は、「2020東京五輪は延期。2021年夏までに「完全な形で開催をする」事に成った。中止は在りません。バッハ会長と100%合意しました」と大見得を切った次第です。

ドイツ人辣腕弁護士の策略と罠 

IOC会長のバッハ氏は、合意はすれども「延期及び開催は来年夏までに」とは一言も言っておりません。そして何と開催国の内閣総理大臣に本会談のスポークスマン役を務めさせた次第です。本来ならばこのような会談は、IOCのバッハ会長、TOCOGの森会長、東京都知事の小池知事、オリンピック担当相の橋本氏、そしてJOC山下泰裕会長が同席で電話会談を行うのが本来の姿です。その後で会談の内容は、プレスカンファレンスの場で出席者達が同席して行われるか、森氏が会見をすることが筋であったと思われます。また、IOC側は、バッハ会長が会見をするのが正論です。

此処には、バッハ氏の大きな別の思惑に対する目論見が筆者には透けて見えたのです。しかし、この度の電話会談は、バッハ氏からの要請というより実は日本国の内閣総理大臣安倍晋三氏が前面に出る事を望んだことに、バッハ氏のしたたかさと策士を証明した場面でした。これに気を良くした安倍晋三首相は、「完全な形で開催します」と一国の総理大臣が軽々しく発してしまった次第です。この「完全な」とは、何をイメージして述べたかは定かでありませんが、後に負担とならない事を願う次第です。これは、きっと抜け差しならない高額な財政負担を背負い込むであろうと推測するのが自然な成り行きと考えられます。

バッハ会長のぶれないビジネスコンセプト

ここからは、大変辛辣な解説になるかと思われますが、率直に申し上げます。

IOCに取って日本側の組織・団体・機関の役割は、①東京五輪組織委員会は金集めと現地の運営会社として、②東京都は場所の提供と出資、③日本政府は東京五輪開催に於ける財務保証の為の担保と位置付けられた。これらは、バッハ氏の東京五輪招致に関しての基本的なビジネスコンセプトである事は明らかです。しかし、この様なアドミニストレイション手法は、対日本国、国民に対して無礼千万であると言わざるを得ません。IOCは、全ての決定権を有して、日本国はその事業を保証している運営国に他ならないのです。即ち、日本は、IOCバッハ会長の羊ということなのでしょうか。

残念ながら東京五輪招致活動時に於いてIOCのバッハ氏の戦略、戦術を見破る人物が日本側に居なかった事に起因していると思われます。それがために日本側は、現在のような泥沼に引きずり混まれても、前のめりになっているが為に誰もが冷静さを失い今尚気付かないでいるか、招致を自らの手法(疑惑を招く手法の意味)で引き寄せた弱みを握られて身動き取れない状態なのかも知れません。

オリンピック開催国の理念、コンセプトは、一体何なのか、そしてこれ以上国家、国民に負担を強いないためにも自らブレーキを掛ける勇気ある判断力と決断が求められていると思う次第です。此のままでは、負のレガシーを山積することとなると思われます

バッハ氏は、財政的な支援、保証の担保と位置付けている安倍首相に対してIOCとして最高の敬意でこの度は「花を持たせた」形を取ったのだろうとお見受けいたしましたこの事は、後に海外の有力紙がIOCは日本側に「花を持たせた」の表現で掲載したのだと思われます。ところがこのIOCからの花は2021年延期開催までに要する経費約1兆円とも言われる気が遠くなる追加予算が必要不可欠となり、この費用が安倍晋三氏への花代の請求書にすり替わる仕組みである事は疑いの余地もありませんそれは、「延期」をリクエスト(言わされた)したのは他の誰でもないあなた(安倍首相)ですね、と切り返されるのが落ちでしょうか

現時点に於いては、東京五輪が延期となった事は決定済。330日に延期五輪の開催日は、2021723日に合意したのです。これは、延期発表後わずか6日後の出来事でした。日本側は、このような人類、世界を揺るがしている疫病環境の中で開催日の決定を急かす必要が何処にあったのでしょうか。

2021723日に開催されるかどうかは、不確定要素が山積しているのですその最大の問題は、IOC加盟206カ国が2021年開催時に新型コロナウイルスCOVID-19が消滅しているとは常識的に判断できる状況ではありません。また、ウイルスを撃退する薬、予防ワクチンも存在しない現状で「完全な形で開催します」と断言した我が国の総理大臣の発言として軽率ではなかったかと疑わざるを得ないのは筆者だけでしょうか。

 

■スポーツ・アドミニストレイターの視点

現時点のプレデイクションは10%か

2021東京五輪開催の可能性は、現時点の状況、環境を鑑み10%のプレデイクション(Prediction、予測)と言えるでしょうかこれは、IOCJOCTOCOGが延期開催できる根拠を未だ明確にしていない事が最大のポイントです。プレデイクションは、開催する為に必要不可欠な要素を数値化することで、その数値化したパーセンテイジが高くなる程確率が上がる事を意味しています。そして、これらの数値を世界に対して定期的に情報公開する義務と使命があります。

この様なプレデイクションは、米国の競技スポーツに於いてNFLNBA,NHLMLBNCAAフットボール、バスケットボール)と大変なじみ深い勝敗予測基準なのです。勿論、この予測には、両テイームの正確なスタッツ(統計的なDATA)を元にコンピューター処理をした数値結果を基にしたものです。

此処では、競技スポーツを「東京五輪組織委員会 対 新型コロナウイルス対策」に置き換えた場合のプレデイクションである事を先ず申し上げます。

その根拠設定の数値化に当たっては、例えば、最大のハードルであるIOC加盟206カ国の新型コロナウイルスの沈静化状態、観客、選手、スタッフ関係者の健康状態、治療薬、ワクチンの準備状況、ホスト国の沈静化状態、観客、選手達の入国後の感染者への準備態勢、等々を意味します。この数値化の数値が上がる事により、東京五輪開催のプレデイクションが高くなりより安全、安心の信頼度数が「完全な形の東京五輪開催」に近づくことを意味します。どうか安倍晋三氏は、このプレデイクションを計算されたうえで「完全な形で開催します」と読み切った発言であった事を願う次第です

 

筆者の素朴な疑問と私見

筆者は、NO.131に於いての最大の疑問点は324日、大本営の総理官邸での御前会議とまでマスメデイアに揶揄される重大な会合の場に何故政治家達ばかりが雁首揃えたのかです

何故新JOC会長の山下泰裕氏、アスリート代表者は、招かれなかったのかと素朴な疑問を抱いた次第です。此れでは、まさに2020東京五輪の実態は「政治家による政治家の為の五輪開催」であったことを裏付けた何ものでもないと確信をしたのです。これでは、競技スポーツ、アスリート達、その代表者達の意見など全く取り入れられず、彼らへの尊敬の念も配慮のかけらも無い方々であると言わざるを得ませんでした。

つい先日2020331日(火曜日、日本時間)1615分にロイター通信社により配信された「東京五輪招致で組織委理事に約9億円、汚職疑惑の人物にロビー活動も」というタイトルで、何と東京五輪組織委員会の理事の高橋治之氏(元電通専務取締役)の実名が報じられたのも、東京五輪招致活動から今日までの問題に関わる裏舞台の顔触れが透けて見えて来るような気がしてならないのは筆者だけでしょうか。また同通信社によると森元首相(現東京五輪組織委員会会長)の団体に資金が流れている、云々が明記されていることからも時間と共に五輪招致活動の真の実態と闇取引に関わった可能性が高い方々の実名が、これから白日の下にさらされる日が来るのかも知れません。それが為にも彼らは、何としても東京五輪を開催させなければならない事が深層に抱えているようです。

それに致しましても、このように我が国の政治家達は、国内外のスポーツ関連事業及び各競技組織・団体の長の席を奪い、真のスポーツ出身者からスポーツ・アドミニストレイターが出現出来ない様な土壌を構築してしまっているようでは日本のスポーツ界に光明が見えて参りません。この実態は、まさに若い能力ある人材を潰している現実を見せられた気がしてならないのは筆者だけでしょうか。この様な現実の中で山口香氏(JOC理事、全柔連理事、筑波大学教員)は、未来ある若い世代に「東京五輪は延期すべきである」と毅然とした態度で指導者として、国内の競技スポーツ関係者の中で女性として唯一勇気を持って発言したことに対する評価はあってしかるべきだと思いますこの様な人物が東京五輪組織員会(TOCOG)の中枢の役員として入っていない事自体が政治家達の偏ったスポーツ談合組織の形成を許している最大の要因の一つであろうと思われる次第です

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレーター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

紹介:Gファイル(長嶋茂雄と黒衣の参謀)文芸春秋社

お知らせ:NO131は、如何でしたでしょうか。丁度先日ロイター通信社は、2020東京五輪招致に関する黒い金脈に関する人物達を取り上げ、フランス当局のソースと取材内容を大きく打電しました。しかし、残念ながら日本のマスメデイアは、迷惑そうな紹介記事のみを掲載したようです。ロイター通信社の特ダネ記事は、本Ksファイルが丁度リマインドで掲載を始めた矢先でしたので大変奇遇に思った次第です。次回のリマインドは、闇の世界の会話をご紹介します。ご期待ください

K'sファイルNO.130:東京五輪を迎える日本国の試練(2)

f:id:hktokyo2017041:20190718003102j:plain

K'sファイルNO.130:東京五輪を迎える日本国の試練(2)

無断転載禁止             毎月第二、第四木曜日公開予定

目次

■我々国民は国難に結束できているか

マスメデイアの真の使命は何か

パンドラの蓋を開けた勇気ある米国紙

マスメデイア企業の忖度の使い分け

★紹介 Washington Post Sports ColumnistMs. Sally Jenkins

■筆者の素朴な疑問

筆者の私見

時事の出来事:

2018-02-22 

2020東京五輪リマインド・シリーズ【2

第二弾 2020東京五輪の不可解なリーダー達

1.スポーツ・マスメデイアはレポーターでよいのか

      ①日・欧米のマスメデイアの本質的な違い

     ②米国のマスメデイアの特徴

余談話

2020326日、木曜日 公開

我々国民は国難に結束できているか

マスメデイアの真の使命は何か

我が国の社会、国民は、正義(Justice)と公正・公平(Fairness)の筋を通す(to make sense)倫理観を見失ってしまっている感が致してならないのですが読者の皆さんはどの様に感じられますか。今日の国政、スポーツ組織、団体を司る責任者の多くは、社会に於けるモラルの一線を越えてしまっていてもその閾値が何処でそれが何を意味しているかを理解、認識されていない方々を多く見受けられます。

この様な重要且つ危機的状況下に於いても、日本の大手マスメデイアは、東京五輪の中止、延期、強行の是非の論調を掲載、議論することさえタブー視され避けて居た様で、つい先日まで一切を語ろうとしなかったのです

此れでは、日本のマスメデイアは何処かで暗黙の情報操作がなされていると海外から揶揄されても返す言葉もないのでしょうか。これは、まさにグローバル世界のジャーナリズムに逆行する社会主義国の管理体制のように感じられてなりません。マスメデイアが自由な口を塞がれたのであればこれでは国難に立ち向かえるはずもありません。新聞、TVにお務めの記者、報道の皆さんは、社内での抑圧とストレスの日々ご苦労様です。マスメデイアの記者、報道関係者は、決して虎になれども羊にならぬよう使命を全うして下さい。

世界中の目は、今やコロナウイルスの次に東京五輪の動向に対する情報を静視しているのです。特に世界のスポーツファン、アスリート、関係者達は、日本のマスメデイアがいつ本件に関する誠実で正直なニュースを発信されるのかと今か今かと待ち望んでいた次第です。しかし、海外メデイアは、もうこれ以上日本のマスメデイアの発信を待つことはできないと判断し、独自の取材攻勢を仕掛けて来たのが米国の経済紙ウオールストリート・ジャーナル(WSJ)であったと思われます。この度は、米国のブルーム・バーグ通信社の先手を打ったのでしょう。海外メデイア(英国の複数のマスメデイア)は、Nike厚底シューズの報道同様常に競争の原理原則に立って取材活動が行われています。

パンドラの蓋を開けた勇気ある米国紙

2020311日:森喜朗氏(東京五輪組織委員会会長)は、同委員会の理事で元電通専務の高橋治之氏が、ウオールストリート・ジャーナル紙の取材に応じ「新型コロナウイルスの感染拡大により五輪開催が難しい場合、1、2年延期が現実的」と回答した事に対して、「正直、驚いた。とんでもないことをおっしゃったな」と、憤慨した様子をマスメデイアに話したのです。また、同会長は、高橋理事に電話で確認した結果本人から「ちょっと口が滑った。大変申し訳ないことを言ってしまった。大事な時期に軽率な発言で、ご迷惑をおかけした」と言っておられたとフォローをしたのでした。そして、「予定通りに開催する方針に変わりない」、と報道内容を打ち消されたのです。この一連の丁々発止が組織委員会内のガス抜きの為のデキレースでなかった事を願う次第です

大多数の日本国民、社会は、大手マスメデイアと東京五輪組織委員会が利害、利権の関係にあるなど知る由もないと思われます。ましてや、世界の人達は、日本の大手マスメデイアが東京五輪組織委員会TOCOG)のスポンサーとなっている関係で、組織委員会の意に沿わない情報は発信できないなど知る由もありません。このような社会のモラルに反する構造と仕組みは、業界に於いても社会に於いても常識では考えられない関係である事は言わずと知れた事です。

先日、痺れを切らしたWSJ紙は、TOCOGの理事職にある高橋治之氏(元電通専務取締役)を単独取材し、インタビュー内容を掲載しました。その内容たるは、TOCOGIOC、日本政府が一番神経をとがらせ、封印している内容に触れていた事です。

内容は、既にご紹介致しました通り組織委員会の重鎮達が目くじらを立てる程の内容ではなく、誰もが感じているごく当然な疑問に触れただけだったのです。この外電の掲載記事の後を追って、日本のマスメデイアは、本ジャーナル紙を引用する形で初めて各社一斉に重い腰を上げ報道し始めたという報道姿勢と内容も二番煎で在った次第です。しかし、国内マスメデイアにとっては、日本政府、TOCOGIOCが封印しているパンドラの蓋を開けたのが、事もあろうか組織委員会の理事で元電通専務であった事に感謝しているかも知れません

 

マスメデイア企業の忖度の使い分け

東京五輪組織委員会の忖度を受けているかのような日本のマスメデイアは、海外マスメデイアが火を付けない限り、担当記者は書きたくともデスク、整理部、等に書かせてもらえなかったのが実態です。この様な海外メデイアの後追い記事を常に配信、掲載するマスメデイアにしてしまった業界経営者達は、日本国、国民、社会に取っては本当に国を危うくしているのかも知れません。我が国のマスメデイアのジャーナリストとしてのプライドは一体どこに消え失せたか、或は、元々無かったのか、是非JUSTICE(正義)を持った強いジャーナリストが出現することを今こそ国民、社会が待ち望んでいる筈です。此れでは、若者達がジャーナリストを目す興味が段々と失せているのは、ただ単に大学に於ける専門学部、学科の指導の問題のみならず、マスメデイア企業に於いて今日尚改まらないJustice無き、真実を封印したスポーツ・マスメデイアだからかも知れません。

東京五輪は、日本国で行われる世界最大のスポーツイベントで在り、これに関するニュースソースを最初に入手できる環境にありながら、海外のマスメデイアに先を越されてしまったのです。それも組織委員会のキーマンの1人で理事でもある高橋氏(元電通専務)の取材に成功したWSJ紙に日本マスメデイア界は、9回の裏にサヨナラホームランを許したわけです。これにより国民、社会は、一気に中止か、延期かの選択の流れに向かい始めています。先日は、通信社の調査によりますと国民の約70%が東京五輪を開催するべきでないと回答しています

しかし、2020319日現在、自民党総裁安倍晋三氏、東京都知事小池百合子氏、TOCOG会長の森喜朗氏は、「東京五輪は通常通り開催します」と強硬な姿勢を崩していません。その根拠は、全く説明しない無責任な表明です。

それにしても、この度の高橋氏は、自身の立場も弁えずWSJ社の取材を受けたことは、「東京五輪に高橋電通有り」と最後の花火を挙げたかったのかも知れません。このような人物をTOCOGの理事として推薦、任命されたのは、他でもない森喜朗会長その人でしたので、国会議員が致命的な一大失言をして任命権者が責任を取らない我が国の政府と同じ構造とシステムであるまさに日本の政治家手法と申し上げた方が、解りやすいかも知れません。

 

筆者の素朴な疑問

東京五輪組織委員会は、組織を束ねる強力なトップスポーツ・アドミニストレイターとしての真のリーダーが必要であったと思われます

森喜朗会長は、組織内に①武藤敏郎事務総長、②遠藤利明理事(現公益財団法人日本スポーツ協会副会長、元オリンピック担当大臣、現自民党国会議員)、③萩生田光一理事(現自民党、文科大臣)、④橋本聖子理事(現自民党JOC副会長、五輪担当相)、⑤桜田義孝氏(元オリンピック担当大臣、現自民党国会議員)達他の重鎮達を従え、理事会内を牛耳って来ています。しかし、本件に関する危機管理に於けるメデイア対策のすり合わせができていなかったのもこれら政治家達の脇が甘かったのかも知れません。

大変お気の毒なのは、順天堂病院の治療室で日夜治療を継続して受けて居る森喜朗氏を急遽背広に着せ替え病院から一時抜け出させ、慌てふためいた血相で緊急記者会見の場に立たせる事自体が、危機管理体制が全く出来ていないとお見受け致した次第です。スポーツのコンセプトは、人の健康が第一でありスポーツ組織のリーダーたるは身心が健康であることが大前提で非常に重要であると思います。

高橋氏(TOCOG理事、元電通専務)は、米国のウオールストリート・ジャーナル紙のインタビューで組織委員会の理事としての立場でなく、電通企業の代表としての論理を述べたと考えるのが自然でしょうか。この電通の試案がやがてIOCのバッハ思案へと移行して行っているのではないかと危惧する次第です。TOCOGの森会長を取り巻く重鎮達は、この発言に対して「けしからん」と言いながら、自らは矢面には立とうとせず、重病で入退院を繰り返している病人の森氏を記者会見させる為に毎度引っ張り出す所に東京五輪組織委員会の構造とその本質、そして取り巻きの力量が透けて見える気がしてならないのは筆者だけでしょうか

彼らは、森氏に高橋氏に電話をさせ、高橋氏の発言内容の火消しに駆けずりまわし、行きあたりばったりで肩書だけの素人の運営・管理者達の姿のように思えてなりません。このことからも、世界最大のスポーツイベントの統括責任者(会長)に森氏(病人)を推挙する所に組織委員会理事達の見識と思惑が最初から疑われ、東京五輪の問題の本質が此処に潜んでいると思われる次第です。これでは、TOCOGの理事、評議委員達は定款を満たすためのお飾で、職責、使命が果されていないまさに我が国の談合文化のお手本なのかも知れません。

 筆者の私見

東京五輪開催の有無は、嘗ての五輪歴史の中でも異例の状況下に於いて決断を迫られているのです。此処で整理して於きたい幾つかの事項があります。それらは、

IOC会長の告知です。同会長は、「本五輪開催の是非に付いては、WHO(国際保健機関)の指導、指示に従う」と明言を既にしました。この事から同会長は、IOCとして独自の判断で決断することを避けているのです。

②開催都市の東京都知事は、「開催しないなど全くありえない」と明言。

東京五輪組織委員会の会長は、「予定通りに開催する方針に変わりない」と明言しています。

④開催国日本政府の安倍首相は、「完全な形で開催します」と真意不明な言い回しで公言しました。

此処で各組織・団体、機関の最重要責任者代表は、何方もが公言した事に対する「根拠」とその「責任の所在」を明確にしていない事です日本国内に於いては、約70%の国民が「五輪開催はやめるべき」と意思表示をしています。これら国民は、現在のマスメデイアの報道内容、社会の状況を鑑みての回答であると確信します。しかし、②③④の都民、運営組織委員会、日本国民、社会を代表する人達は、国民の心情と真逆なリードをするのであれば、何故国民を説得させる、できる根拠を具体性を持って説明をしようとしないのか国民の代表者達は、国民が知り得ない「重要な根拠」があるので、国民の意思を無視してまで突き進もうとしていると誤解が生じていることすら気付かないアドミニストレイター達なのかも知れません。

その方々が幾ら「アスリートファースト」と語ろうとも誰も信じていないのが寂しい限りでもあります。②③④の代表責任者達は、真にオリンピック大会の理念、趣旨、目的をご存知なのか。ここで、何の為に日本に五輪を招致したのかの強い理念とコンセプトが欠落していたので、自らの判断すらできなくなるのです。

スポーツの原点は、人々の健康、安全、平和があってこそ成立するのです。このような国内外の状況を鑑みて、代表責任者達は、今一度私的な野望、誘惑、欲望を捨て、スポーツに関わる全ての人達をミスリードすることなく、万民の声に耳を傾けられる度量と人間で在ってほしいと願うのは筆者だけでしょうか。

時事の出来事:

2020年3月20:米国紙Washington Post電子版は、「東京五輪の即時中止求める」とした記事を配信しました。K’sファイルの読者の皆様も既に日本語版をお読みになられているかと思います。この記事は、Sally Jenkins記者によって書かれた記事です。WP紙のスポーツコラムニストとして大変著名な方です。NOC、各国際競技団体、そしてアスリート達に発言する勇気を与えました。各国関係者は、IOCに対して“NO”のシグナルの声が高く響き渡るようになってきています。これは、真のマスメデイアのジャーナリストのパワーと評価します。「Shut the Olympic Games down」By Sally Jenkins Columnist March 20, 2020 at 2:55 p.m. EDT 原文に興味ある方は、URLをご検索下さい。https://www.washingtonpost.com/sports/2020/03/20/sally-jenkinstokyo-olympics-coronavirus/

★3月23日:ワシントンポスト紙(320日付)の強烈なインパクト記事により、IOCは元よりTOCOGJOC、日本政府、東京都とトーンダウンが始まりだしました。昨日迄のあの強気発言は、如何されたのでしょうか。

★3月24日:突然のバッハ氏(IOC会長)の呼びかけで安倍晋三首相、小池百合子都知事森喜朗TOCOG会長、橋本聖子五輪相同席による電話会談の結果、安倍首相は、「2020東京五輪は、延期。2021年夏までに完全な形で開催をする事に成った。中止は在りません。バッハ会長と100%同意」との発表をしました。日本の政治家は、断言しても結果に対する責任は別の様です

■筆者の私見

この唐突な安倍首相の発言は、主要な代表責任者達が口約束をしたという「空手形」であり、2021年夏までにウイルスが消えて無くなっているという担保は無いのです。2020年東京五輪は、これで開催しない事のけじめをつけたことでは良い決断だったと言えます。しかし、IOCの今日までの発言とこの唐突な延期宣言は、余りにも優柔不断な発表で東京五輪がこれからさらに底なしの泥沼に引きずり込まれて行っているような気がしてなりません。

IOC会長のバッハ氏は、「延期及び開催は来年夏までに」とは宣言せず、開催国の首相がスポークスマンを務めたのでは筋が通りません東京五輪の主体主は日本政府の首相でありTOCOGではなかったと言わざるを得ません。バッハ氏が政治家として数段上手の様です。やはり東京五輪は、最初から最後まで「政治家による政治家の為の東京五輪であったことをいみじくも土壇場で露呈してしまったように思えます。

 

2020東京五輪リマインド・シリーズ【2】

2018-02-22 

第二弾 2020東京五輪の不可解なリーダー

1.スポーツ・マスメデイアはレポーターでよいのか

①日・欧米のマスメデイアの本質的な違い

東京五輪組織委員会(略:TOCOG)は巨大マスメデイアによりガードされていることをご存知でしょうか。わが国のマスメデイアとグローバル社会のマスメデイアとの本質的な違いを誤解を恐れず申し上げますと、問題は、この状況下で我が国のマスメデイアが、この利害と利権の構図の中に組み込まれているケースが多く、真の情報が国民、社会に届けられていないと思われることです。つまり、お上にすり寄るマスメデイアでは、真に国民、社会、スポーツ界の正常化に寄与するのは難しいという事です。

スポーツを話題にしたTV番組では、日々長時間毎度お馴染みのタレントさん達を起用し面白おかしく、商品化して視聴率を稼ぐ事を目的とするだけでなく、マスメデイアには、真に国民のオピニオンリーダーとして、志を高く持って頂きたいと心より願う次第です。

我が国のスポーツマスメデイアの基本的な体質は、企業に雇用された1記者と表現した方が理解しやすいと思われます。その記者は、1レポーターとしての職責、責務を所属企業から与えられ、ジャーナリストとしての言論の自由は与えられていないと思われます。ジャーナリストとレポーターは、本質的に異なる職域だと筆者は理解しています。一般社会に於いてこの事を、我々は理解できていないのではないかと思うのです。よって、記者は、自身の理念、感情、倫理感をジャーナリストとして報道させてもらえない事が、大きな問題だと思います。

我が国に於いては、国民の表現、言論の自由が法律により保証されている筈ですが、マスメデイアの組織では企業の利権、利害を最優先するが為に、ジャーナリストとしての使命までもが奪い取られているようです。その為に生じている現象の一例として、紙面の記事原稿が何処の新聞社、TV、等も代り映えしない、即ちマスメデイアの紙面、TV情報、記者の特徴、個性が無くなってしまっているように感じてなりません。また、記事原稿に対する文責者の署名記事でない事が多いのもその一例かも知れません。本来の記者、ジャーナリストは、芸能タレントさんではない筈ですが・・・勿論芸能タレントさんの方が個性豊かです。

記者を雇用している企業は、事業(ビジネス)を最優先するが為に真実を報道できない仕組みになっていると理解した方が判りやすいかと思います。筆者は、権力に立ち向かい“NO” が言える真の勇気あるマスメデイア、記者で在って欲しいと切に願います。そうでなければ日本国民は、常に真の情報、知識を得られず資質の高い見識を持たなければ正しい判断ができなくなり、マスメデイア情報によりミスリードされる国民、社会であって欲しくないのです。

その為には、マスメデイアが本来のジャーナリストとしての使命を堅持し、ぶれない日本のマスメデイアで在って欲しいのです。その為にも大事な事は、マスメデイアの企業主は常に強い経営者でありジャーナリストとしてのバランスの堅持が必要不可欠であるのではないでしょうか。それにより、個々の記者達の本来のジャーナリストとしての潜在能力が導き出され、企業主にとっても商品価値の高いジャーナリストを育成、養成できるという事なのではないでしょうか。マスメデイアの企業主は、まさにコーチングのスキルも要求されているという事だと思います

読者の皆さんは、どう思われますか。勿論、マスメデイア企業にも、記者にもジャーナリズムを堅守し素晴らしいプロフェッショナリテイーを持って、日夜活躍、活動されている企業、記者も沢山いらっしゃる事も付け加えさせて頂きます

 

 ②米国のマスメデイアの特徴

此れがNYタイムズ社、ワシントンポスト社、ロサンゼルスタイムズ社、ABCCBSNBCFOXCNN、等の業界先進国のマスメデイア、及びそこに所属する報道、ライター、プロデューサー達と日本の報道企業、機関、記者達との根本的な違いがあるのではないでしょうか。よって、嘗てのワシントンポスト社の記者がジャーナリストとしての真価を発揮し「大統領の関与した事件(ウオーターゲート事件)」を告発して歴史の変革に寄与したのと、わが国の企業マスメデイアのレポーターとの違いのように思えてなりません

この国のJustice(正義)は、もう死に体なのでしょうか。また日本は、契約雇用制度でなく定年制度の為に経営者、管理者、社員がサラリーマン体質と化しているので、ある意味に於いて責任の所在、仕事の資質による査定制度が確立していないので、現在の制度が平和で安心なのかも知れません。

このような、組織、構造の企業としてのマスメデイアでは、真の情報提供を期待しても難しく、このために莫大な金銭が東京五輪組織委員会内部で消滅して行っていても国民、社会は知る由もありません。問題は、本プロゼクトの中枢となる運営、管理者達の大多数が、競技スポーツの経営、運営、管理経験の無い人達が大半であり、その方々が権力の中枢に居る事だと思います。莫大な公金を使用しながら、これらをチェックする第三者機関のインフラクションコミテイー(特捜部門)も設置していないのは、閉鎖された独裁組織なのかも知れないという事です。

勿論、米国のマスメデイア企業に於いても日本同様な企業論理が優先することも確かによくある事です。また、大統領、政治家、政党への忖度、癒着が企業全体、或は個別の部門、部署、等で行われているのも事実の様です。しかし、企業内に於いては、連日連夜、経営者と管理者の間でまた、彼らと現場記者、プロデューサーの間で丁々発止のバトルが連日連夜行われているのですが、日本のマスメデイア企業内では、現場にいる社員達には何のリスペクトも担保も与えられていない唯の駒のようです。まだまだマスメデイア企業がグローバル世界と肩を並べるには、根本的な変革を成す為にも資質、見識の高いリーダーの育成と養成が先決なのかも知れません。

余談話

読者の皆さんの中には、アメリカ映画の「Truth=日本語訳:ニュースの真相」を観賞されたことがあるかも知れません。この映画は、筆者の古い友人(ロバート・レッドフォード氏)が出演しているので彼の作品は、時々懐かしく観るので印象が強いドキュメント作品であります。その中でもこの作品は、政治家達とTVマスメデイアのリアリテイーを掛値なく描かれ、ハッピーエンドに終えられなかった事実がよりドキュメントの価値を高めていると思います。

2004年のアメリカで実際に起こった、あるスクープ報道が広げた波紋の一部始終を、ケイト・ブランシェットロバート・レッドフォードの共演で描いた実録ドラマ。ジョージ・W・ブッシュ米大統領が再選を目指していた04年、米国最大のネットワークを誇る放送局CBSのプロデューサー、メアリー・メイプスは、伝説的ジャーナリストのダン・ラザーアンカーマンを務める看板番組で、ブッシュの軍歴詐欺疑惑というスクープを報道する。しかし、その「決定的証拠」を保守派勢力に「偽造」と断定されたことから事態は一転。メアリーやダンら番組スタッフは、世間から猛烈な批判を浴びる。この事態を収拾するため、局の上層部は内部調査委員会を設置し、調査を開始するが……。メアリー・メイプスの自伝を、「ゾディアック」「アメイジングスパイダーマン」などを手がけた脚本家のジェームズ・バンダービルトが初監督を務めて映画化した。」2015年製作/125分/G/オーストラリア・アメリカ合作原題:Truth 

作品紹介から引用

この作品は、米国の4大テレビ局のCBSが当時の大統領の権力に挑む企業内部の葛藤が筆者には大変興味深く、報道の義務と使命、片やマスメデイア企業としての論理に板挟みとなったケイト(プロデューサー)とロバート(アンカーマン)が最終的には、報道ジャーナリストとしての信念を貫く事を選択、CBSは、最終的に両名を守る事が出来ず解雇せざるを得なくなる実録でした。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports

紹介:Gファイル「長嶋茂雄と黒衣の参謀」文芸春秋社

お知らせ:NO.130は、K’sファイルのある意味区切りとして、スポーツ・ジャーナリズム、ジャーナリストの重要性に付いて述べさせて頂きました。次回は、東京五輪の不思議な日々の経過と変化を前編に、後編ではリマインドをご紹介する予定に致しております。読者の皆様には、これらの深い闇にご案内いたします。

 

 

 

K'sファイルNO.129:東京五輪を迎える日本国の試練

f:id:hktokyo2017041:20190718003102j:plain


K's
ファイルNO.129東京五輪を迎える日本国の試練

無断転載禁止              毎月第二、第四木曜日公開予定

読者からの便り

河田弘道先生

 K’sファイルNO.128を拝読させて頂きまして大変勉強になりました。今月も例年通りに学部教授会(主に卒業判定会議)の席で、学部長挨拶をさせられました中で河田先生の掲載原稿を勝手に紹介させて頂きまし事に付きまして、先ずはご無礼をお許しください。大学教授たるは、研究の為の研究、学問の為の学問ではもう足りない時代になった事、スポーツの分野に於いてもこのように医科学の部門で研究した事が企業のシューズの開発に結び付き、アスリート、一般ランナー達へのサポート、還元となる生きたスポーツ科学、研究が本来の研究者の姿だと思います。大多数の本学の教員達は、寄稿文を書いて提出することが自身の点数稼ぎとなるこのシステムこそが日本の大学教員の競争力を低下させ、指導教育を遅らせていることを伝えました。先生のお時間が許されます時に、本学の教員への指導をお願い致したくお礼方々お便りさせて頂きました。宜しくお願い申し上げます。 K'sファイルの愛読者より、

 

目次

東京五輪開催を前に疫病蔓延との闘い

急がれる強行時の準備(対応力とマニュアル)

2020東京五輪リマインド・シリーズ【1

第一弾:東京五輪は政治家達の独裁事業か

    1.スポーツ・アドミニストレーター不在の付け

           ■招致活動での建前と招致後の本音

           ■震災復興は招致の為の広告塔

           ■問題の発端と優柔不断なプロゼクト

           ■東京五輪は政治家の利権争奪ゲーム

           ■利権代表達の抗争とその終焉

  2.筆者の素朴な疑問と私見

 

 2020312日、木曜日 公開

東京五輪開催を前に疫病蔓延との闘い

201912月下旬から中国湖北省武漢を中心に新型コロナウイルス感染症の発生が報告されて以来短期間で世界中に蔓延してしまいました。新型コロナウイルス感染症とは、新型コロナウイルスSARS-CoV2”が原因とされている病気のことです。世界保健機関WHO)は、このウイルスによる肺炎などの症状全般を“COVID-19 ”と名付けました。

日本国内では2020115日に武漢市に渡航歴のある肺炎患者からこのウイルスが検出され、同市からの旅行者とその接触者、帰国した邦人合わせて16名の感染が当時確認されました。この新型コロナウイルスは、現在世界中を震撼させ抗体となる源の発見に至らず恐怖に人類はさらされている次第です。今日もまだ出口の見えない恐怖と闘っている感染国、我が国、国民、社会は、日々刻々と増殖している次第です。

この事実と現実に直面しながら、本年724日には、東京五輪の開会式が刻々と迫って来ている状況です。思えば、2011311日に起きた東日本大震災は、地震及びこれに伴う福島第一原子力発電所事故による放射能漏れの大事故を誘発し、毎年各地で起きる大災害、特に近年我が国には連続して自然災害が押し寄せて参っております。このような状況下で国民は、大変楽しみにしているオリンピック東京大会を無事迎えられるか否か、心配は計り知れないのです。この自然災害たるは、火山の噴火、台風、地震津波同様に自然が起こし、現代の医科学を持ってしても止める事が出来ない人類への脅威と人類が抱える強敵と言えると思われます。しかし、本ウイルスは、現代の医科学をもってすれば解明、予防、治療は可能であり、ただ新細菌の為に時間を要しているのも事実です。

急がれる五輪強行時の準備(対応力とマニュアル)

問題は、例え東京五輪が予定通りに724日開催が強行されたとして、国内の感染者が消えてなくなっているわけではなく、世界中に蔓延している状態で参加国の選手、観戦者、旅行者達を我が国は迎え入れる体制が整うのか、入国時のチェック体制、陽性者、疑偽陰性者達への隔離、管理態勢の準備ができるのか何れにしてもリスクは限りなく高く、混乱とその対応は予測不可能であることには違いないと思われます

国際オリンピック委員会IOC)に於いては、この様な事態に対するオリンピック大会開催の危機管理態勢は整っていません。この事態は、前進しても、後退しても、強行しても必然的なリスクが最大限伴う事だけは覚悟致さなければなりません。勿論強行するのであれば、IOC東京五輪組織委員会、東京都、そして日本政府は、「明確な開催する根拠と責任の所在とその個々の責任者の責務を明確にし、明文化し情報公開」を致さなければ国民、社会、及び全世界の東京五輪への参加者、観戦者は納得されないと思われます。オリンピック・アドミニストレイター達は、強行するのであれば始める前に誰もがやりたくない、やりたがらない根拠と責任の所在を先ず明確に告知するべきです

7月24日に迎える東京五輪の祭典を数カ月後に控え、この度のオリンピック東京大会は、招致時及び招致後に於いても限りなく多大な犠牲と問題をキャリーしながら開催日を待つ国民、社会がいる反面、この重い莫大な犠牲と膨大な未解決の問題を今後どう処理、解決するのかを忘れてはならないと思われます。得てして人は、楽しい一時の夢を追い夢に夢中になってしまうことで、夢の対極にある厳しい現実を忘れてしまいたいのも人間の心理でもあり弱点でもあるのです。

今日、人類が自然の猛威に脅かされている現実の中で、K'sファイルでは、東京五輪が今日に至るまでの現実と史実を今一度、この様な時期だからこそ本番を迎えるにあたり私達の足元を確認する意味に於いてもリマインドして頂けましたら幸いですこれにより、東京五輪をスポーツ・アドミニストレイターの視点でこの世紀の祭典に対する価値評価に立ち会えるならこれ以上ない貴重な証言者に成り得るのではないでしょうか

 

2020東京五輪リマインド・シリーズ【1】

2018-02-08

第一弾:東京五輪は政治家達の独裁事業か

1.スポーツ・アドミニストレーター不在の付け

 招致活動での建前と招致後の本音

本プロジェクトでは、政治家達(現職国会議員、元国会議員、現・前職都議会議員)の顔がやけに目立ちますがそれは何故なのでしょうか。これほど露骨に政治家達が表舞台に顔を出す五輪は日本国だけではないでしょうか。本来国会議員や都議会議員の職責、責務は、何なのでしょうか。国から数千万円の歳費を頂き、東京五輪組織委員会からは、莫大な特別手当を受けている様子を鑑み、この方々のプロフェッショナリテイーとは一体何なのか裏を返せば誰もそれを問わない不思議な国民、社会なのです。K'sファイル読者の皆さんは、不思議に思われませんか。

2016東京五輪の招致活動失敗から2020年東京大会開催決定、そしてその後今日迄、これほど開催に関する問題が内外共に起きる、起きた事例が嘗てあったでしょうか。

16年招致活動の大義は、確か「東日本震災復興」を掲げました。そして20年招致は、これまた震災復興を掲げてのプレゼンテイションがなされた筈です費用の掛からない無駄のない、コンパクトなオリンピック・パラリンピック東京大会を、招致の為の錦の御旗として謳い文句に掲げてきました。しかし、いつの間にか大義の震災復興もコンパクトな大会コンセプトは、何処かに消え、予算は、とんでもない莫大な公金がゼネコン(ゼネラルコンストラクションの意味)のコンクリートミキサー生コンと化し流し込まれ続けているのが実状です。

これに対して誰も歯止めを掛けようとしない。確か小池都知事は、選挙で予算費用縮小を訴えて歯止め役をかってでて当選した筈ですが、有言実行の政治家では無かった事を現在露呈、何も公約は果たせていないのが正直な評価です

それどころか、お台場、晴海のトライアスロン、等の競技会場は、今尚下水からの汚物処理も出来ず悪臭と最悪の衛生事情の解決策のめどすらつかず、これらの専門家委員、委員会は、何のためのオーソリテイーなのか情報公開すらできない状態の様です。お金は、全て組織委員会の御用達の印刷会社がプリントしているかの感覚で無駄な金を湯水のように使っていても誰も止めるすべもないのが実態です。このような組織の中では、きっとこのどさくさに紛れて「埋蔵金」を新国立競技場の地下倉庫に、ほとぼりが冷めるまで貯蔵して置き、五輪後の何か怪しい組織作りの軍資金にしようとする悪代官が居るのかも知れません残念ながらもうすでに今日世間には漏れ聞こえて来ている始末です)。

プレゼンテイション当初の予算告知額は、いったい何を根拠に試算された数字であったのかと、ふと頭に疑念が過ります。いったい当初の予算の何倍の公金を投入すれば気が済むのでしょうか。此れだけの資金があるのなら、何故もっと有効にオリンピックのみならず直面しているあらゆる被災者、国民の為に、活用するべきであるとは思わないのか。此れでは、限りなく国の借金が膨らむばかりです。東京五輪招致委員、組織委員のリーダー達は、後は野となれ山となれの方々の集りなのか、これからの若い世代にこの負債を背負わせても何とも感じない、これは政治家として決してやってはいけない発想と行為なのです

このような展開になる事は、当初のプレゼンテイション内容、組織委員会のメンバーより予想していた事なのですから、何故五輪招致を思考し始めた時点で「ロス方式」を検討しなかったのか。話題にも出なかった事、出さなかった事が今後大きな禍根を残す事は必至です。ロス方式とは、1984年ロサンゼルス五輪で当時公金を1セントも使うことなく、440億円の黒字をだした素晴らしいプロジェクトモデルなのです。既にこの方式が競技スポーツの経営モデルとなっていますが、それをあえて見向きもしない理由は、読者の皆様なら十分推測されるのではないでしょうか。ロス方式では、国民、市民、社会に財源、財政の運営、管理を完全に情報公開する事が義務付けられている事と国会議員、都会議員達が関わる余地を与えられないからです

この度の優柔不断なオリンピックプロジェクトに対し、国外からは、招致活動に関わる裏金問題を指摘され火消しに躍起となり、国内に於いても、オリンピックロゴ・タイプの盗作問題、国立競技場の設計入札疑惑問題、設計者及び関係会社への契約変更、予算の不透明疑惑、そして、その間に開催都市の都知事が本件がらみを含めて3名も不名誉な交代劇を演じ、その都度掲げる公約に一貫性が無く、失言を海外に告知し、現知事は、威勢よく乗り込んできたが政治家同士の利権のつぶし合い、奪い合いを見苦しい程内外に曝し知らしめ、スポーツの祭典がこれでは「品の悪い政治家の祭典」と相成った感じが否めないと感じるのは、筆者だけでしょうか。もう既に国民、社会は、このような未解決の重大な問題すら忘れてしまったのかも知れません

 東日本震災復興は招致の為の広告塔

さらに、当時の大義「東日本震災復興」が、いつの間にか消えて無くなり、現在はオリンピック・パラリンピック大会を我が国、東京都に持って来た意義もコンセプトもいつの間にか見えてこないようになったのが現実です。よって、元々招致活動を推進するには、大義となり得る「震災復興」がIOC理事達、海外・国内へのアピールに必要な魂のない広告塔であったのだと思われます。

推進者達は、よってこの大義に対するプロジェクトマニュアルも持たず、ただの「キャッチコピー(目を引く餌)」程度にしか考えていなかった事が、今日の状況を物語っているように思えてなりません。残念ながらこれらの議員達は、国民が選挙で選んだ国民の代表、都民が選んだ都議、都知事の発想、見識、モラルかと思うにつけて、我が国の危機と捉えるべきなのかも知れません。此れも国の今日の平和が逆に起因しているのかも知れません。

招致活動でのプレゼンテイションでIOC理事達のみならず、国際社会、国民に告知し、約束致した「お金の掛からないコンパクトなオリンピック・パラリンピック東京大会にする」約束事は、いったい何だったのか、どうしてこのよう手段を取ってまで突き進んでしまったのでしょうか。国民、社会は、マスメデイアの報道にただ浮かされている場合でないように思えてなりませんが・・・残念です。大手新聞各社は、何と東京五輪組織委員会のスポンサーとなっているために真実の報道が出来ない立場なのかも知れません。

 問題の発端と優柔不断なプロジェクト

スポーツ・アドミニストレイターとして客観的な目線からは、最初の東京五輪招致活動より既に一つの方向に問題が偏っている事が透けて見えて来るのです。それは、2020東京オリンピックパラリンピック開催招致活動のプレゼンテイションで公言、公約した予算が全くの招致する為の「飾り予算(偽り予算)」で在った事です。これがそもそもの本プロジェクトの「トリックの起点」となって、国民、都民の税金を湯水のように投入するストーリーが仕組まれていたような気がしてならないのです。今は、この描かれていたシナリオに略近い流れで進んでいるので本プロジェクト立案、遂行している執行部の慇懃(いんぎん)で意味深な笑みが目に浮かびます。残念な事は、IOCはプレゼンテイションの明文化された書面公約を精査、検証する機関がありながら機能していない、機能させない、即ち同罪を犯していると表現した方が判りやすいのかも知れません

思えばこの招致活動初期から、関係省庁及び関係機関、東京都は、種々の思惑の人達が絡み合い複雑怪奇な様相でスタート致していました。

これをスポーツ・アドミニストレーターの視点で指摘させて頂きますと、そもそもの最大の問題は、開催都市の長に当たる都知事が本巨大プロゼクトに殊の外強い興味を持ち、都民の税金で招致活動に邁進、自身が幕開けから幕閉じまで首を突っ込んで、利権の構図を描きその利権に手を突っ込んだことから今日の限りなく高騰する資金(税)投入に点火したのが発端と思われます。当時より利権をせしめようとする東京都議与党軍団、都知事とそうさせまいとする文科省OBを中心とした超党派で構成する国会議員連盟団の利権グループが当初より抗争していたように見受けられたのです。

 東京五輪は政治家の利権争奪ゲーム

今日の2020年東京大会のアドミニストレーションは、まさに真のスポーツ・アドミニストレーターが不在で政治家集団の利権争奪ゲームが現在最終局面を展開していると申し上げても過言でありません彼らの目的、目標は、本大会に関する利権闘争という政争ゲームでメダルを獲得する事であり、震災復興、競技スポーツはそのためのツール(道具)としてしか見えていないのでしょう

勿論、このような世界最大の競技スポーツのイベント招致、開催には、国を代表する政治家が関わる事も「ある部分」では確かに必要です。しかし、東京大会は、最初から政治家及びその官僚関係者、OB在りきのために、本スポーツ・アドミニストレーションをより複雑化し、真のスポーツ界のリーダーを不在にし、談合がよりやりやすい手法を形成していると思われます。これは、起きるべきして起きている我が国の伝統的な手法の一つです。何事もバランス感覚を失い、何方かに極端に偏重すると本質を失い国家と国民に被害が増幅する事を、考えもしない人達なのかも知れません。

この手法を用いる事で競技スポーツのアドミニストレーションは棚上げされ、まさにJustice(正義)もFairness(公正・公平)も無き、負のレガシーが構築されようとしているのです

 利権代表達の抗争とその終焉

此のところ日本の新聞各社は、2020年東京大会の費用に付いて、昨年暮れに総額1兆3500億円(うち都は6000億円負担)と報じました。しかし、この大会経費以外にも都は7770億円もの大会関連経費を組んでいるのです。

勿論これらの追加資金投入も都民の税金から投入するという意味です。此れでは、小池都知事の力強かった選挙前後の公約、勢いが空手形同然でそれまでの知事と何ら代わり映えしません。現在は都知事の存在感すら薄れてしまったと感じられるのは、如何なものでしょうか。現都知事が、嘗ての都知事と異なる点は、女性でオリンピック利権に手を染めさせてもらえていないところでしょうか。

 

筆者の素朴な疑問と私見

此処でスポーツ・アドミニストレーターとしての視点で申し上げますと、このような国際的なスポーツイベントに国を代表、都民を代表する政治家がむやみやたらに絡んで参りますとスポーツ大会及び競技スポーツの本質が変質し、見失われてしまう事です。この東京大会は、それを証明していると思われます。

IOCは、長年のオリンピック開催国の莫大な負債を何とか解決、解消する為の一大打開策として当時のアントニオ・サマランチ理事の提案でそれまでのオリンピック憲章から「アマチュア」の文言を削除して、オリンピックにスポーツビジネスを解禁し、またプロ選手の参加に扉を開いたのが1974年でした。

1976年カナダ、モントリオール大会は、1974年のIOCの試みに効果を期待するには準備が整わず、オリンピック大会史上例を見ない巨額の赤字負債を抱える大会となったのです。その後、1980年のモスクワ五輪は、皆様もご承知の通り自由主義国はソ連のアフガン侵攻により参加を中止したのでした。

1974年のIOCの改革の成果と結果は、1984年のロス五輪大会で初めて理想的な形として現れます。ロス五輪大会組織委員会LAOOC)のピーター・ユベロス会長の頭脳的な手腕により黒字経営に至った次第です。しかし、ロス五輪後のIOC主導の経営コンセプト(IOCと広告代理店電通のパートナーシップ)に移行してからは、この改革の弊害が毎回の開催都市招致に関わる闇の世界を構築するようになりました。獲得票を集めるための莫大な裏金で買収する暗黒のネットワークを生み招致国、開催都市に莫大な資金を投入させて大会を肥大化させ、負のレガシー(遺産)を各大会開催のたびに積み重ねてきたのですそして2020年東京大会は、最後の巨大化されたオリンピック大会の負のレガシーの終焉であろうと言われるに至っています

  本東京大会以降は、大会招致する国は巨額の財政負担に対する反発で五輪招致から撤退する都市が相次ぎ、2024年大会はパリとロサンゼルスしか残らなかったのです。それに伴いIOCは、2024年大会をパリとし、ロサンゼルスは、IOCの説得により譲歩し2028年招致を受け入れ、ロサンゼルス側の条件も了解されたのでした。この二大会同時の決定は、IOCの招致規約には反するものでしたが特例とされましたが、歴史的な流れを見ると、決して偶然の産物ではないのです。その意味で20162020年五輪開催を目指し2度も莫大な招致資金を投入してきた東京が獲得したものは一体何だったのか、と今更ながら強力なポリテイカルゲームができる戦略的なスポーツ・アドミニストレイターが不在であったことが残念でなりません

此れは、まさに1976年のカナダ・モントリオール大会まで、毎回莫大な負債を抱える為に五輪の招致に興味を持たなくなった国々が出た時期に戻り、歴史が形を変えて繰り返されていると言えるのではないでしょうか。この事は、東京大会招致委員会にとっては、五輪史上最大の金のかかった大会を自らの意思で背負い込んだ因果と言う表現しか見当たらないように思えてなりませんIOC理事達の罠にまんまと日本の政治家達がはめられたに等しいのです

   東京大会組織委員会は、この事を如何に理解しているのか、気にもかけている様子もなくただ公金をいくら引き出すか、引き出せるかに奔走している状態が本東京五輪の本質であるように思えてならないのです。このような事から東京五輪招致委員会、招致後の組織委員会に多くの国会議員、政治家が顔を出す必然性が此処にあるのかも知れません。勿論、スポーツ振興機関からの補助金、コマーシャルスポンサーからのスポンサーシップとサポートを受けているのも事実です。

本来は、国民、都民の公金を当てにしないで2020年東京大会を招致活動で勝ち得る方法があったのも事実です。当時招致関係者は、公金を使わない大会擁立に誰もが興味すら見せなかった理由は何故だったのか。K'sファイルの読者の皆様はその結論に至るかと思われます。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレーター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS

紹介:Gファイル「長嶋茂雄と黒衣の参謀」文芸春秋社

 お知らせ:本ファイルでは、現実と過去の両面を述べさせて頂きました。読者の皆様には、東京五輪の今日に至っている史実をリマインドして頂けたでしょうか。今日の新ウイルスの発生により、東京五輪の状況は、水面下に於いて日々刻々と事態が変化する中でIOC東京五輪組織委員会はどんな犠牲を払っても強行するという姿勢を崩さない様相が伺われます。大事な事は強行した場合には、既に更なる不測の事態に対する準備、対応が大事なのですが、今誰もが気付こうとしないのが心配です。今一番IOC東京五輪組織委員会TOCOG)、電通が恐れているのは、国民、社会の心配とは異なる所に彼らの重大問題が起きているのかも知れません。

K'sファイルNO.128:Nikeシューズの理念は大学工房から(第二弾)

f:id:hktokyo2017041:20190718003102j:plain

K'sファイルNO.128Nikeシューズの理念は大学工房から(第二弾

無断転載禁止              毎月第二、第四木曜日公開予定

 

読者からのインターミッション

米国の友人から貴重な便りを頂きましたのでご紹介します。

今米国では、NIKE厚底ヴェイパーフライ・シューズがシーニアの間で静かなブームに成りかけているのだそうです。そして、寝室には、ヴェイパーフライ(Vaporfly)シューズを置いてあるとの事です。その最大の理由は、深夜トイレに約3秒早く駆け込むことが出来るからだとか。この3秒は、シーニア世代に取って現実的だそうです。別名レスキューシューズだそうです。日本の皆さんにも是非紹介してあげて下さい。米国人らしいウイットに富んだ便りでした。

The truth of SPORTS

目次

第二弾:Nikeハイテクテイームは職人でなく科学者集団

Ⅰ.本件の事の次第を整理

  先ず初めに

  世界陸連(WA)新規則の発表 131

  ★WAセバスチャン・コーSebastian Coe)会長のコメント

筆者の私見

Ⅱ.アスリートシューズはパラピックにより変革か

  ロードレースは陸上競技の特殊種目

  シューズとアスリートの関係

  エリート・ランナーとは誰のこと

  真のマラソン世界新記録とは

Ⅲ.Nikeハイテクテイームのテストラン

       サイエンス・アイの集団

       その後のプロセスを覗くと

筆者の素朴な疑問と私見

 ハイテクシューズとアナグロ規則の矛盾

 

第二弾:Nikeハイテクテイームは職人でなく科学者集団 

Ⅰ.本件の事の次第を整理

先ず初めに

2020115日英国新聞3社の論調では、「今後Nike厚底シューズは今にも規制が掛かるか、違反シューズとの烙印」を押されるかのような表現で掲載されていたのを読者の皆様もまだ記憶に新しいと思われます。その意味では、2020131日に世界陸連(WA)が発表した新しい規則は現時点では応急処置と言えると思われます。新規則は、多くの矛盾と問題点が垣間見られ、具体性に乏しいと思います。此処では、暫定規則と呼ぶのが相応しいかと思われます。

 

世界陸連(WA)新規則発表(131日)

英国新聞3社の論調後、WAは、本件の特別ワーキンググループ(各分野、部門の医科学専門家達、アスリートを含む)がラニングシューズの問題点の規制に関する検討を行っているので間もなくその結果が出ると思われます、と告知。 この告知は、言い換えると、Nikeヴェイパーフライと類似したシューズは、「違反とされるか、規制すべきか」ということを検討していると理解できたのです。業界関係者の論調は、「非常に複雑で、新ルールは、簡単にできやしない」との見方が大勢を占めていたのが欧米の反響でした。

131日、WAは、新規則を公表しました。その要旨は以下の通りです。

①プロトタイプ(試作品モデル)として選手に供給されるシューズを大会で使用するこ とは禁止。

②靴底の固定されたプレートもしくはブレードは、一枚に限定する。スパイクに関しては、「ソールにスパイクピンを装着する目的」として、プレートを追加することが認められる。

2020430日から、シューズは選手がマーケット(オンラインもしくは店舗を含む)で購入可能であり、大会で使用する4か月前から入手できるものに限る。

④既に販売されているものについては使用可能。東京五輪での使用も可能となるが、昨年10月にエイウド・キプチョゲ選手(ケニア)が非公認ながら1時間5940秒をマークしたときに履いていた試作品は禁止対象。 

⑤ソールの厚さは4センチ(40mm)以内。

WAセバスチャン・コー会長のコメント

世界陸連(WA)のセバスチャン・コーSebastian Coe)会長は、「スポーツシューズの市場全体を規制することはわれわれの仕事ではないが、エリートアスリートが使用するシューズが何らかの不公平な補助やアドバンテージをもたらすことがない状況を確保し、エリート大会の高潔性を守っていくことが責務である」と述べた。また、「五輪イヤーに突入している現在、かなりの期間にわたって一般に出回っているシューズを規制することは不可能である。しかし、さらなる調査を進めていく中で、現在流通している製品の性能を上回るシューズの使用を禁止して一線を引くことは可能である」とも述べている。

 

筆者の私見

このS・コー会長のコメント内容から、同氏は、特別ワーキンググループに介入すること無く、科学者達のフェアーなレポートに委ねた事は、公平な配慮のみならずクレバーなスポーツ・アドミニストレイターである事を見せて頂きました。これが、IOCの次期会長の最右翼と言わしめる所以かも知れません。

同会長は、選手時代は長きに渡りNike社の支援を受けて来たのは事実です。また、引退後もNike社のコンサルタントをしていました。此のことを一部マスメデイア、業界に於いて、何かと誤解を醸成してミスリードしようと画策するグループがいるのも確かです。IOCWAと関係するトップ管理者達の多くは、嘗て選手時代、その後とスポーツメーカー・企業との強い関係(癒着)を持っている方が多いのも事実です。S・コー会長は、2015年のデイアク会長の追放後、選挙で選ばれた新会長です。そして、現在WAのスポンサー(2017年契約)であるアシックス社とは、大変良好な関係を維持されていると思われます。この様な環境の中で、彼は、この度もフェアーな立ち位置での判断をされたのではないかと思われます。

本会長発言は、既に「K'sファイルNO.127の筆者の素朴な疑問と私見」で述べさせて頂きました内容に類似するものでした

筆者の素朴な疑問と私見から「当初新聞記事を目にした時に直感した事は、“現在市場に既に出ている製品を禁止にすることは先ずありえない。”。記事は、近く(1月下旬)WAが本件に付いて公式発表をすると告知しているが、WAの新会長のS・コー氏は、諸般の複雑な事情が絡み合った中で落としどころに苦慮しているのだろうな」と同情した次第です。

 

Ⅱ.アスリートシューズはパラピックにより変革か

ロードレースは陸上競技の特殊種目

本来マラソン競技は、陸上競技Track & Field)種目ではなく、ロードレースの1種目です。よって、コンパクトな競技スタジアムの中で行われる競技種目でなく、非常に自然環境に大きく左右される競技種目である事が最大の特徴であります。規則、ルールは、未だ曖昧で明文化されていない部分が多くあるのも事実です。

この度のシューズ論争は、その曖昧なルールとシューズが記録への補助具としての認識も欠落していたことに端を発したと言えるのではないでしょうか。その為、このような企業ビジネスの競争から派生したハイテクシューズの進化に伴い、WAの規則、ルールが追いつかない時代に突入してしまっていたということなのだと思います

シューズとアスリートの関係

地球上の人類は皆フェアーな重力(1G=1Gravity)の下で生活し、競技を行っています。よって、選手は、その自然界の重力と自身の体重の重さが地面に接する度に摩擦を起こし、マラソンランナーは二つの足が交互に地面と接する時に各足に負荷負担が掛かるメカニズムなのです。この交互の足に掛かる負担は、長時間に渡り想像を絶する状態でタイムを競う選手達に取って非常にやっかいな競技なのです。この摩擦を起こす負担は、究極に選手のスピード(Speed)、心肺持久力(Cardiovascular Endurance)、筋持久力(Muscle Endurance)の効率を低下させるのです。マラソン競技は、42.195キロメートルと設定され、速くフィニッシュした選手が勝利者となる競技スポーツなのです。

この程の論争は、スポーツ医科学的な視点、競技スポーツの本質と未来を見据えての結論を導き出すことが重要であると思えます。事はマラソンの記録のみならず、全競技スポーツの用具、補助具に及ぶ重要な視点と言えるからです。例えば、近年の器械体操の器具は、個々の器具に工夫と進化が無ければ今日のようなパフォーマンスも安全性の担保は不可能でした。この度の厚底ランニングシューズを論ずるに当たり、何が問題で何が悪いのかの本質がマスメデイアの論調に見受けられないのが不思議でなりません。論調の読後感は、ただNike厚底シューズを履いて記録を出しているランナーが何か「不正行為(Cheating)」を行って、他の履いていないランナーに対してアンフェアー(不公正)だと言いたげな表現が印象的に思えてなりませんでしたが、読者の皆様は如何でしたでしょうか

 

エリート・ランナーとは誰のこと

WAは、エリートランナー(Elite Runner)の定義を明文化し、一般市民マラソンランナーとの違いと取り扱い方をもう少し親切に説明する必要があると思います。シューズに規定、制限を設けるには、数値化した明快なメジャメント(計測可能数値)があることが大前提です。

本来は、アスリート(競技者)と一般ランナーを区別することはWAの現在の規則に反していると解釈するのが正論であるかと思われます。一般ランナーも競技者と同じシューズがマーケットで購入でき、使用できることが、新旧規則の前提であるからです。シューズは万民の必需品であることからもランナーにのみ使用する特殊シューズは、WA規則に反するということを新規則で確認済みです

この度の厚底シューズの論争の中でマスメデイアを通して、WAの規則、見解、アナウンスに於いてエリートランナーという表現が、S・コー会長のコメントにも出ていますし、しばしば表記されていることに読者の皆さんも何か違和感と混乱を感じてられるのではないでしょうか。

何故ならば、エリートランナーとは、どのようなランナーたるかの説明、定義が補足されていないのは不親切且つ、混乱を招く恐れがあると言う事です。即ち、この度の騒動は、このエリートランナーにのみ適応される規則であり、一般市民マラソンランナーには、何の制限も受けないということの様ですそれは、どのようなプロトタイプ(試作品)、特注品、市販品を履こうとも自由であることを意味します。

筆者は、マスメデイア、WA共に誰もが補足表現をされないのであえて申し上げます。エリートランナーとは、以下のように理解するのが適当でないかと思われます

一般ランナー(市民マラソン出場者を含む)が、競技大会に出場して、日本記録、世界記録を樹立しても基本的には、IOCWAは、公認記録として認めないのです何故ならば、公認記録として認められるのは、その出場者が各国陸上競技連盟(National Governing Body)に選手登録がなされているか否かによるのです。よって、選手登録がなされている選手(選手規則を遵守し登録料を納付しなければなりません)を基本的にエリート選手と呼ぶ根拠が此処にありそうです。一般参加者と区別する仕切り線が此処にあると理解された方がよさそうです。一般参加者の中には、エリートランナーより優れた記録を持っているランナーも居る事を忘れてはなりません。

公認競技マラソンコースで、各国陸連に選手登録がなされている選手が世界記録を樹立した場合にのみ、WAは世界記録として認定するということを是非覚えて於いて下さい。ロードレースの世界記録は、本来その公認された大会コースで出た最高記録の事で、タイムのみで世界記録と判断するのはフェアーではありません。何故ならば、ロードレースは、各コース自然環境が全く異なるからです。

 

Ⅲ.Nikeハイテクテイームのテストラン

サイエンス・アイの集団

筆者は、本件に至った経緯を先ず理解し、Nike社が厚底シューズのデザイア―(desire)からプロトタイプ(prototype、試作品)の開発、制作に心血を注いていた時期にはまだ誰もが気付いていなかった事が、この度の他のメーカーが開発競争に後れを取った最大の要因でなかったかと思われます。これは、他のメーカーも認めざるを得ない事実であったようです。この見えていなかった時間帯に筆者のサイエンス・アイ(眼)で覗いてみる事により本プロゼクトを統括するマネージメント力に高度な科学の目が注がれていたことを知る貴重な機会かも知れません。

2016年以前のトレーニングシューズは、一般的に厚く、硬く、レーシングシューズは薄く、柔軟であったと理解しています

Nike社は、深く静かに長距離シューズ開発テイームを地下に潜行させていたようです。そしていよいよそのプロトタイプをテストランする為にある大会にNike所属選手をテストカー兼ドライバーに仕立ててスタートラインに立たせたのは言うまでも無い事でした。勿論、此処に至るまでにNike独自のテストコースで何度も、何度も医科学的な検知(detection)から測定、検査、修正、等を繰り返した後、Nike所属選手が試走し、データーの集積、分析、修正とそれは寝食を忘れた科学者達の魂の工房であったと推測します。

それは、Nike社生みの親であるビル・バワーマン氏がオレゴン大学の陸上競技場のスタンド下の裸電球の工房でたこ焼きプレート酷似の靴底(プロトタイプ)を作っていた頃より約半世紀後の事でした

テストドライバーには、プロトタイプを履かせ、舞台は実践のレース場、20162月のリオ五輪U.S.オリンピック予選会場のロサンゼルスでの大会を選びました。

米国の代表選考レースのファイナルは、日本の選考方法とは異なり、クオリファイ(予選)を勝ち抜いてきた選手達が一発勝負で競い、上位3名が代表選手に選ばれるのです。この環境でNikeのプロトタイプを履くアスリート、履かせるNike社双方には、信頼と自信があった事に疑いの余地はありません。

20162月ロサンゼルスでのU.S.オリンピック予選で、三人のNike所属選手達は、それまで見た事も無い厚底のシューズを履いてリオ・オリンピック代表テイームに入ったのでした。当時誰もがこの一風変わった、無名のシューズ(プロトタイプ、試作品)に付いて関心を示さず、誰も気付かず知らなかったのです。試作品なので一見では、だれも気付かなかったのが、正直な状況であったと思います。

しかし、この後、20168月にリオ五輪のマラソン競技で、男子トップ3選手は、それまで無名の厚底シューズにNikeのスウッシュ(Swoosh)のロゴを入れたシューズを履いて1,2,3とフィニッシュテープを駆け抜けたのでした此れこそがNike社の完成した厚底シューズ(ヴェイパーフライ、Vaporfly)の商品として世に公式にデビューした“その日”だったのです

 

その後のプロセスを覗くと

本プロセスは、20201月に発表されましたエイビイ・バーフット氏(Amby Burfoot、米国)のアーテイクル(January 22, 2020)を引用させていただきますと、

20175月には、E・キプチョゲ選手は、イタリアのモンツァにあるレーシングトラックを使用して2時間00分25秒の記録を出し、この時履いていたのが厚底シューズでヴェイパーフライ・エリートと名付けられた反ったシューズであったのです。

Nikeグループの研究者とコロラド大学のバイオメカニックの科学者達は、ヴェイパーフライと今迄の競技用シューズを比較してランナー達の意見を交えたレポートをスポーツ医学誌に発表したのでした。この厚底シューズは、4%の利点を与えることをクリアーし、31mmの踵の高さを維持していたのが特徴でした。

20189月には、スポーツ科学者カイル・バーンズ(ミシガンのグランドバレー州立大学の研究者)は201711月からコロラド大学の研究者達とほとんど同一のスポーツ医科学の面からアプローチした結果のレポートを発表しました。

20194Nike社は、Next%―を導入強化されたVaporfly 4%を発売、およそ40mmの踵の高さを持っていました。

201910E・キプチョゲ選手は、ウィーンの都市のループ・コースで、1時間5940秒の記録を樹立しました。この時、彼は、アルファーフライ(Alphafly.)というコードネームのシューズを使用したのです。

それは、ヴェイパーフライ(Vaporfly)より厚く、3枚のカーボン・プレートが敷かれた、前足柱にデザインされた新しいシューズで特許出願も怠らなかった模様です。しかし、この後、同選手が実際に履いて走った形跡も本シューズが生産され市販される予定も確認されていないのが現状です。

WAは、此のシューズを新規則で使用禁止としたのです。

201910月スポーツ医学誌の英国ジャーナルは、バイオメカニストのニコラス・タムとジェフ・バーンズ氏による記事を掲載しました。それは、WAがランニングシューズの「厚底」を31mmに制限しなければならないと主張しましたが、筆者は、この根拠の確認が出来ていません。

20191013日ブリット・コスゲイ選手(ケニア)は、Nike Next%を履いて、シカゴ・マラソンにおいて2時間1404秒で走りました。16年間、誰もが破れなかったポーラ・ラドクリフ(英国)の世界記録(2時間1525秒)を塗り替えたのでした。

丁度時期を同じくして、WANikeシューズの合法性についてのマスメデイアからの質問を受け始めた201910月、WAは、現在「スペシャルワーキンググループ」が問題の調査をしていると認めた次第です。そして、WAは、その調査結果を年末に発表出来ると公言したのでした。

201911月、医師でバイオメカニストのサイモン・ボートールド氏は、彼のブログでヴェイパーフライを履いて成功する理由を紹介しています。

彼は、それがエネルギー・リターンではなく、疲労による抵抗力かも知れないと主張したのです。彼の主張を要約すると厚底は、筋肉振動を和らげそして、筋肉が疲れから不安定になるのを防ぐというものです。この論理は、他の科学者達も同意しています。

 

筆者の素朴な疑問と私見

筆者は、今日までのロードランナーのシューズに対する固定概念が、スポーツ医科学の急速な進歩によりランナーの身体への保護から、「保護+スピード化」を図る補助具へとステージがグレイドアップしたと理解致します

此処に着眼したNike社は、企業理念に基づき他のシューズメーカーに先んじて開発投資を怠らなかった成果と結果が此処にあると思います。

本年1月15日以降本件に付いての「言い争い」は、マスメデイアのリード、ミスリードに関わらず業界、選手、関係者、一般市民ランナー、社会を巻き込んだ一大論争を演じています。しかし、筆者は、論理的に申し上げますと以下のような事ではないかと思います。

①新しいNike厚底シューズは、厚底でその中に硬いプレイトが敷いてある。

②これは、何処のシューズメーカーも厚底シューズは作れます。

③どこの会社でも厚底シューズの中に炭素繊維のプレイトを敷くことはできる。

④よって、どの企業の誰でもNike社と同じシューズタイプを制作することが出来るのです。(但し、Nike社がプレイト、厚底の素材に特許申請が出ていれば同質は無理、しかし、同タイプは可能)

ハイテクシューズとアナグロ規則の矛盾

この度の騒ぎは、Nike社は早い時期から企業努力をしてこの合理的、合法的なシューズの開発に着眼し、着手、投資し、段階的に準備をして来たということです。勿論、そこには、WAの本シューズに関するルールが曖昧で全く抽象的であったため、規制する要因に至っていないという問題点が秘められています。

1960年のローマ大会でアベベ・ビキラ選手(Abebe Bikila, エチオピア193287 - 19731025日)が裸足でオリンピック大会を制して以来、現在は、ハイテクシューズを履いて記録更新を狙うプロフェッショナル・アスリートの時代となったにも関わらず、WAの今日までのルールが未だアナグロ規則であったということが混乱を招いている主たる要因でしょうか

それにしましても、マラソン選手のシューズが此処までスポーツ医科学の枠を集めたハイテクの兵器と化し、ランナーの記録更新の補助具となる事を誰もが創造しなかった事から、今後更なる進化が予想されるのは明らかです。此のことからも、陸上長距離界に一大変革が起きたと表現した方が正解かも知れません

そしてこの変革の根底に商品開発に日夜努力を惜しまないスポーツメーカー、企業の頭脳的なビジネス戦略に対して、競技組織、団体を運営、管理するトップスポーツ・アドミニストレイター達の創造力が追い付いて行っていない現実を如実に露呈したこの度の事件であったと思われる次第です。また、Nike社は、パラリンピックのアスリート達の補助具の進化とハイテク化にヒントと刺激を受けたのかも知れません。

WAの特別ワーキンググループは、如何するべきか、何を決めようとしているのか。2020131日にWAは、公言通りに特別ワーキンググループのレポートをアナウンスされましたが、その全貌は今後のスポーツ医科学の進歩、発展により陸上競技そのものの根底を覆す事に成るように思えてならないのは筆者だけでしょうか。また、今日までの公式記録は、今後どのような価値観を持って価値評価するべきか大きな課題を残してくれたこの度の論争であったと思える次第です。読者の皆様には、マスメデイアとは異なる世界を少し知る事ができましたでしょうか。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports

紹介:Gファイル「長嶋茂雄と黒衣の参謀」文芸春秋社

お知らせ:この度のナイキ厚底シューズのテーマは、如何でしたでしょうか。読者の皆様が気付かなかった歴史、プロセス、功労者達をご紹介させて頂きました。多くの陸上競技を専門に取材をされていますマスメデイアの担当記者諸氏からは、K’sファイルは大変資質の高い論文、コラムで学ぶ事ばかりですとの感謝のメールが届いています。筆者は、TVのスポーツ番組の資質をもう少し改善して頂ければより多くの国民、関係者に真の事実が伝えて頂けるのでないかと願う次第です。

K'sファイルNO.127:Nikeシューズの理念は大学工房から

f:id:hktokyo2017041:20200109001505j:plain

お知らせ: 多くの読者からのリクエストによりまして、本NO.127は、予定日より1週間早く掲載する事に成りました。次回NO.128は、予定通りに2月28日を予定致しております。


K's
ファイルNO.127Nikeシューズの理念は大学工房から

無断転載禁止                              毎月第二、第四木曜日公開予定

目次

第一弾   Nikeシューズの理念は大学工房から

先ず初めに

NIKE社の真意は此処に

創業者の信念は此処に

ローマ五輪の金メダリストは裸足

ラソン記録は真にフェアーな記録?

筆者の素朴な疑問と私見

  今日までのWA(世界陸連)の本件に関するルール紹介

  お知らせ

 

第一弾 Nikeシューズの理念は大学工房から

先ず初めに 

本件が世論に広く告知されたのは、2020115日付の英国の新聞3社(タイムズ、デイリー・メール、テレグラフ)に掲載された記事が発端となったと理解致します。この英国からの外電を受けた日本のテレビ、マスメデイアが追随し社会に拡散した次第です。今夏東京五輪を約半年後に控えているにも関わらず、この様な重大な案件の問題提起とオリジナルソースが、またしても日本のマスメデイアが情報、発信源でない事に対して残念でなりませんでした。何故いつもIOCWA(世界陸連)の問題、情報がリークされるのでしょうか。

確か2020東京五輪招致疑惑の配信も外電で英国各紙であったと記憶しています。日本のスポーツ関係者及びマスメデイアは、情報入手をいつも外電に頼るばかりでなく、もっと独自で情報ネットワークの強化及びオリジナリテイーにこだわって取材努力をして欲しいと切に願う次第であります。

筆者は、何故英国の3社のみが、それも同日に類似記事を掲載したのか、その方に興味をそそられます。これらは、偶然ではなくネタ元は当然絞られると思われます。また、この記事を掲載する趣旨、目的は、ネタ元にあり掲載した3社にも利害があったと理解するのが自然です。そしてまた本件の世界陸上競技連盟(略:WAWorld Athletics)の公式アナウンス(131日告知予定)が行われる1日前には、此れも英国の新聞社(ガーデイアン紙)が公式アナウンスの要旨の一部を結果として掲載しました。ガーデイアン紙は、結果として15日の3社掲載記事を否定する内容であったように筆者は感じましたが、読者の皆様は如何でしたでしょうか。

これらは、英国のジャーナリズムとジャーナリスト達のプロ魂なのか、やられたらやり返すガーデイアン紙記者の闘争心には頭が下がる思いがいたします。日本のマスメデイアのデスクも企業の利害に関わらず是非勇気を持ってプロとしてのジャヤーナリスト魂を発揮して頂きたく期待致しております。

本件は、「厚底とその中に仕込まれたプレイトの問題」としてシンプルに見えて非常に複雑怪奇なストーリーが深層に横たわっているのも事実です。K’sファイル第一弾は、読者の皆様に理解して頂けるよう事の次第と歴史的視点から筆者が直接肌で感じ体験をした事実を加味しながら客観的に時系列を追ってお伝えできればと思います。

 

Nike社の真意は此処に

筆者は、この度の「厚底シューズ論争」を課題にするに当たりまして幾つかの論点が頭によぎった次第です。その中でも「厚底+プレイトシューズを陸上長距離の革命とみるか、商品開発によるナイキの頭脳的ビジネス戦略とみるか」は、いずれにしても議論の根底に位置することは間違いない事実であると思われます。

これら二つの大きなテーマは、ナイキ社を起業した創始者の強いアスリートへの指導哲学の一つが企業理念とコンセプトとして此処に形成されていると思えるからです。この事実を大前提とすると先ずその真意は、ナイキ社のバックグラウンドを少し覗く事で読者の皆様には、理解されやすいのでないかと考えた次第です。K'sファイルを読まれている方々には、そっと歴史の扉を開き真のドキュメントをお教えします。

ナイキ社は、米国が産んだオリジナル企業(例、マイクロソフト社、ボーイング社、等)の一つです。これら企業は、米国の北西部に位置し、特にNike社はオレゴン州ユージーン市(Eugene City)のそれもオレゴン大学(University of Oregon)のキャンパス内の陸上競技(名称:ヘイワード・フィールド)のスタンド下の用具倉庫隣にあったシューズの工房で産声を挙げたのです

オレゴン州は、緑と水が豊かで、木材産業の州として古くから澄みきった川と森林と湖の街として知られています。ユージーン市は、木材の集積場として、オレゴン大学を中心とした学園都市として栄えてきました。大学キャンパス内には、フットボール(50000席)、バスケットボール(13000席)の競技場の他、陸上競技専用(3700席)の伝統的な施設がありそれがこのヘイワード・フィールドでスタンドは全てオレゴンの木材で建設された伝統的なスタジアムでありました。

2021年には、米国で初めて世界陸上選手権米国大会がそれも世界で初めて大学キャンパスの陸上競技場でホストする為にこの伝統的な木造のスタジアムを壊して、その後に新スタジアムが略完成を迎えています。収容人員は、38000人と超モダンな陸上専用競技場が大学キャンパスに出来上がります。本競技場のお披露目には、2020オリンピック大会の最終予選を兼ねた全米陸上選手権大会を予定しているとの事です

ナイキ本社は、現在オレゴン州、ビーバートン市(Beaverton City)に位置して、ポートランド市のナイキタウンと共に知られています。

当時大学の陸上競技部の監督は、ビル・バワーマン氏(Bill Bowerman19111999、享年88歳)でした。彼は、本来フットボールの選手として活躍されていました。また彼の父親は、州知事まで務めた政治家でもあったようです。

同氏は、陸上界に於いて何度も全米大学チャンピオン(NCAA)に男女テイームを導き、数え切れないほどのオリンピック代表選手を輩出、U.S.A.オリンピック代表監督、等々、オレゴン大学には約24年間勤務していました。

一方で指導者、運営管理者としてのみならず時間をみてはいつも大学陸上競技場のスタンド下に作った工房で個々の選手達に合ったシューズを作る作業に余念がありませんでした。その中で有名なシューズは、ワッフル型(たこ焼きのプレートのような)靴底を作って指導している選手、OBOG達にそれを履かせて競技に参加させていました。

筆者にとって彼は、学生時代から長きに渡り大変公私ともにお世話になった尊敬する指導者の1人であり、友人でもありました。大学キャンパス南東に位置する所に体育学部のビルデイングがあり、そのまた南東に位置する場所には、ヘイワード・フィールドがありました。南東の季節風が吹くたびにワッフル型の靴底を作る為の合成ゴムを溶かす匂いが学部の方にまで流れてきていたので、今もその強烈な匂いは筆者の記憶に残っています。

 

創業者の信念は此処に

B・バワーマン氏は、1972年にキャンパスのこのヘイワード・フィールドの彼の工房で現在のNike社を起業することを決心し、設立したのですユージーン市、オレゴン大学のヘイワード・フィールドは、米国の陸上界のメッカとされ、またNikeの聖地でもあるのです

当時、同氏の教え子で在り、米国のオニツカ・タイガー社(現:アシックス社)のセールス部門のデイレクターをしていた、フィル・ナイト氏(Phil knight)をナイキ社に共同経営者(Co-founder)として迎え、同氏にビジネス部門を任せたということを直接彼から聞きました。

この二人の関係は、アデイダス社でシューズの職人気質と言われた兄ルドルフ・ダスラー氏(後に弟と袂を分かちPUMA社を設立)とビジネス、政治、マネージメントに長けていた弟のホルスト・ダスラー氏(二代目アデダス社の経営者)の関係と似ています。しかし、ダスラー兄弟(アデイダス社)は、途中で別々の企業主となりましたが、B・バワーマン氏とP・ナイト氏の関係は、仲たがいもせず最初から最後まで互いにリスペクトし合い、ナイキ社創設から構築、そして再構築へと全力でエネルギーを注がれたのです。

B・バワーマンさんは、Nikeを起業する以前から「どのようにしたらスポーツにおいて人間の潜在能力の可能性を導き出せるか」について独自の思考を深めていましたこれは、まさに彼のコーチングの哲学でもあったと筆者は当時より大切にメモした資料がファイルに残っていますしかし、同氏は、人からコーチと呼ばれることに抵抗を感じていたのも事実で、周囲の皆は彼の事をビルと呼び捨てにし、彼自身もそう呼ばれる事を大変喜ばれていましたし、人間味豊かな人でもありました。

そして、私の脳裏に焼き付いているのは、自宅と大学の往復にいつもおんぼろの確かGMFORDのピップアップトラックで荷台には作業用のシューズ、スコップ、農機具が積まれていました。これは、彼がナイキ社のオーナーになったころもこのスタイルを変える事はありませんでした。此れが、ビル・バワーマン氏の素顔です。人は、「彼はナイキの最高経営者で大金持ちなのにどうしてキャデラックのコンバーテイブルに乗らないのか」と揶揄されていましたし、彼を「ストレンジャー、変わり者」と表現する市民がいたのも確かです。しかし、彼はそれらの声に一切耳を貸さなかった事も事実でした。

彼は、1972年にNike社を起業した時に同氏独特な表現で「Tone& Directionを大変重要視され、いわば今日のナイキ社の屋台骨となっている理念、フィロソフィーの1つとされたのかも知れませんそして、今日、それらの言葉は、「我々のゴールは、どのようなレベル、能力のアスリートに対しても役立つ製品を改善、開発し制作して届ける事である。此れが我々に課されたレガシーでもあり、また我々は、競争とは別に投資者に価値を与えビジネスの機会を創り出す事なのだ」とも述べられています。このように、ナイキ社の創設者のB・バワーマン氏の創設時の理念は、「厚底+プレイトシューズを陸上長距離の革命とみるか、商品開発によるナイキの頭脳的ビジネス戦略とみるか」の両面をカバーしていると思います。

 

ローマ五輪の金メダリストは裸足

1960年五輪ローマ大会の金メダリストはシューズ無し!

アベベ・ビキラ(Abebe Bikila, 193287 - 19731025日)は、エチオピア出身の選手で、オリンピックのマラソン種目で史上初の2大会連続優勝を果たし、2個の金メダルを獲得した選手でしたその最初のオリンピック大会は、19609月のローマ大会に際しては、大会前にシューズが壊れて裸足で走ることとなった2時間15162は、当時の世界最高記録で優勝した。此のニュースは、強烈な「裸足のマラソンランナー、アベベ」として世界に打電され、今日までマラソン界のレジェンドとして語り継がれているマラソン界のヒーローとなったのです。

19641021日の東京オリンピックでのマラソンでは、中盤から独走態勢に入り、全く危なげのないレース運びで、それまでのヒートリー選手の記録を144秒縮める2時間12112の世界最高記録で再び金メダルを獲得したのです。東京オリンピックの際にはプーマ(Puma)のシューズで参加したと記録されています。しかし、日本の高温多湿は、彼の一番の苦手なコンデイションであったようです。(アベベ・ビキラ選手プロフィールより)

 

ラソン記録は真にフェアーな記録?

この様な時代の選手達がもし今日論議されている厚底シューズを履いて走ったらどれ程の記録が出るのか、と想像するだけでもワクワクするのではないでしょうか。しかし、この様なマラソン競技の世界記録、国内記録、等は、如何なる価値評価がなされるのかが、疑問に思えてくるのは筆者だけなのでしょうか。

ロードレースは、自然が大きな記録へのファクターとなる事からもアスリート達が同じコース環境で出場してもシューズと大会開催地の自然環境により、順位、記録が異なる事実から世界記録、オリンピック記録、各種公認マラソン大会での記録は、今後どのような評価により公式記録としてファイルされて行くのか非常に複雑且つ矛盾した時代を迎えてしまったようです。この問題についてもWAは、真剣に議論を重ねフェアーな基準を設けて頂きたいのは選手達は勿論のこと、一般市民ランナーも疑問視していることと思われます

 

筆者の素朴な疑問と私見

この度のナイキ厚底シューズの話題は、2020115に英国の新聞3社が同時に掲載されました。各社記事内容は、略同じような内容で在った事は読者の皆様もご承知の通りです。ただ3社共に共通したポイントは、「Nike厚底シューズは、問題でWA(世界陸連)は今にも禁止し今後使用出来なくなる」というニューアンスで強い読後感を抱かせる内容であったと筆者は感じた次第です。多分3社が本件のニュースソースを得たネタ元は、そのようなニューアンスで意図的に発したので担当ライター達はそのようなネガテイブ記事の掲載に走った可能性が高いと推測されます。その結果として、オリンピック予選を控えた多くのアスリート達及び指導者達を混乱に落し入れ、一般市民ランナー、社会まで不安に巻き込んだ根源を創作したに過ぎなかったというこのようです。

筆者は、この記事を外電を通して目にした時に直感したのはネタ元の狙いが何か、何故英国の新聞3社だったのか暫く思考回路を開きネタ元の真意を推し量りました

そこで本件の真意と問題の現状、そしてこれから起きるであろう問題と結末に必要なファクト(事実、根拠)を得る為、私は、信頼する米国、ヨーロッパの陸上界の重鎮、親友、知人に打電し必要且つ信頼できる情報を収集し事の次第を明確に理解した次第でした。

当初新聞記事を目にした時に直感した事は、「現在市場に既に出ている製品を禁止にすることは先ずありえない。記事は、近く(1月下旬)WAが本件に付いて公式発表をすると告知しているが、WAの新会長のセバスチャン・コー氏は、諸般の複雑な事情が絡み合った中で落としどころに苦慮しているのだろうな」と同情した次第です。

本件に付いて情報収集を始めると、そこには企業の巨大なスポーツビジネスに対する投資が歴然と浮かび挙がって来た事です。筆者が特に投資内容を分析すると二つの投資COREが浮かび挙がったのです

その1つは、AI(人工頭脳、Artificial Intelligence)であり、もう一つは、HI(人間頭脳、Human Intelligence)であった事です。特に後者のHIは、不可欠且つ不変のファクターである事でした。この程の厚底シューズの開発に関わる統括者は、スポーツ医科学に特化したそれも各分野、部門、部署の医科学者達のAIHIを束ねた本プロジェクトのスポーツ・アドミニストレイター(トータルマネージメントを行うGM的存在)が、企業の中心に居て特定の複数の大学の研究機関、個人の研究室と一体化したプロジェクトテイームで長年各分野のイノベイションに努めて来ていることが明らかになったのですこの度の情報収集により、このHIの中には、筆者の米国の大学時代の友人、知人が数多く、またその家族が関わっていることに唖然とした次第です。

スポーツ・医科学の分野は、一企業内のイノベイションのみに頼るのではなくグローバルな企業に於いては既に企業を中核としたファームシステム(大学研究機関)を構築して、プラットホーム化し、医科学の情報収集からそのリテラシーにいたるまで、アイデイアからプロトタイプ(試作品)まで一貫したシステム化を図り、バーテイカル・ササエテイー(Vertical Society)を形成していることを意味しています。

しかし、此れも現在スポーツマーケットの世界シェアーの50%占めるナイキ社ならではの成せる事かも知れません。スポーツ界の頂点に長きに渡り君臨して来たアデイダス社は、二代目ホルスト・ダスラー氏が亡くなられた後、近年世界のマーケットセアーは、2位(30%)となり、3位は3社(プーマ、ASICSアンダーアーマー、等)がしのぎを削っているのが現状のようです。

 

今日までのWA(世界陸連)の本件に関するルール紹介

Rule#143 5.B. states that no shoe can provide an unfair” advantage and that “Any type of shoe used must be reasonably available to all”.

 筆者は、このルール1435BではWA(世界陸連)の規則とは思えない抽象的でいかようにも理解できる代物と判断致しました。特に、“アンフェアー”アドバンテイジとは、何なのかの具体性の欠落はその代表たる欠陥規則で今日まで誰もが指摘せず、論議に至らなかったのが不思議なくらいです。この規則の深層にも長年に渡るポリテイカルゲームが存在することを窺わせる情報が寄せられて来ています。

この度の本件の最大の問題は、スポーツ・アドミニストレイターの視点で申しあげますと結果としてナイキ社の企業理念に基づいたシューズの開発、イノベイションにWA(世界陸連)のルールが着いて行けていなかった事に最大の起因があったので混乱を招いたと確信する次第です

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the sports

紹介:Gファイル(長嶋茂雄と黒衣の参謀)、文藝春秋

 お知らせ:次回は、131日に既にWAから本件に関しての公式アナウンスがありましたが、その中身の整理と要約、本件の隠されたファクトをご紹介しながら、WAの公式アナウンスの最大の問題、欠陥について解析し、既に発生している次なる問題を指摘してみたいと思います。ご期待下さい。

 

K’sファイルNO.126:JOC & JAAFのこの手段は如何なものか

f:id:hktokyo2017041:20200109001505j:plain

K’sファイルNO.126JOC & JAAFのこの手段は如何なものか

無断転載禁止            毎月第二、第四木曜日公開予定

 読者からの便り

河田先生侍史

K'sファイル#125拝読いたしました。為末元選手や大迫選手などSNSで発信力のある方々が箱根駅伝への疑問を表明したのは大きかったと思います、そこに先生からのコメント…。そして、K’sファイルの「日本の冬の風物詩大学箱根駅伝は誰の物」①~③を熟読させて頂き、飾られた箱根駅伝の深層を教えて頂きました。先生が指摘しておられた本当の意味でのスポーツ・アドミニストレイターの不在について、これまでの「学生スポーツとはそういうもの」という雰囲気から「あれだけのお金が動くのに、どうなっているんだろう」という疑問が明らかになりました。先生にここまで教えて頂き、事の次第を知った大学関係者、関係者、社会は、此のまま放置して置くのか、或は、学内の教員、指導者、経営者達は知らぬ顔を通すのでしょうか。

先生がご指摘されておられた、UNIVAS(大学スポーツ協会)ですが、確かに全く消えてしまいましたが、あの騒ぎは何だったのでしょうか。動きが見えません。中身がないまま掛け声だけで終わるとしたら、あまりにも情けないです。僕の分野でも日本スポーツ協会のAT制度(アスレテイック・トレイナー制度)など、この国のスポーツ行政って、絵にかいた餅だらけですね。何時まで経っても改善も改革もなされない我々現場を預かる者に取っては、何も発言出来ない、しても届かないのが悔しいです。K’sファイルから得られる真実と専門知識から、スポーツ・アドミニストレイションの貧困を現場で日々感じております。河田先生が日本にいらっしゃる事でK’sファイルが拝読出来る事に感謝致しております。 現場を預かる読者より、

 

目次:

  Ⅰ.金メダル・ファーストが組織・団体のコンセプト?

    アスリート・ファーストは何処へ?

   先ず初めに

   世界短距離界の現実

   日本短距離界の現実

  Ⅱ.日本短距離界100200のスター選手誕生

   1.プロ、S・ハキーム選手の登場に困惑する日本陸連

           2.サニブラウン・ハキーム選手(SANI BROWNHAKIM

          3.複数の選手取材による意思確認

          4.2019年度日本国内100mランキングベスト10の紹介

       筆者の素朴な疑問と私見

 

Ⅰ.金メダル・ファーストが組織・団体の 

       コンセプト?アスリート・ファースト

       は何処へ?

先ず初めに

本年は、スポーツに関する時事の話題がオリンピック東京大会開催の為にことのほか多く、多岐に渡ると思われます。K’sファイルNO.126は、12月それも暮れの押し迫った時期に日本陸上競技連盟(略:日本陸連JAAF)が突然藪から棒に打ち出した代表選考の方針、起案の是非に付いて述べさせて頂きます。選手は元より関係者、陸上ファンは、この方針、起案の是非に付いて、お上の勅使とばかりの一方的な方針に耳を疑っているのではないでしょうか。

JOC日本陸連からのお達しとは、「2020東京五輪では、1選手が両競技種目(100m、200m)への掛け持ち出場は原則禁止(ダメ)との方針案です。

昨年12月の日本陸連理事会に於いて強化委員会の意向として強化委員長より提案されました目的は、男子400mリレー(100mX4選手)で金メダルを狙う為には選手の個人種目出場をどちらか1種目に制限して、リレーに向けて体力を温存させようとの考えからです。これに先立ち日本オリンピック委員会(略:JOC)は、昨年11月に選手強化本部長である日本陸連・尾県貢専務理事の2020東京五輪日本選手団総監督就任を発表しましたJOCは、東京五輪で金メダル30個を大目標にしており、陸連としてはリレーでの金メダルが命題となっているからです。

本提案は、当該選手、指導者の意思を蔑ろにした組織・団体の方針告知は軽率且つ独断的で今日のグローバルなスポーツ界に於きましては自由な民主主義の論理に対極するのでないかと危惧する次第です本件に付いて、筆者は、スポーツ・アドミニストレイターとして、JOC日本陸連強化委員会、執行部の判断と告知に対する問題を提起し、本件に関するポジテイブな方向性を述べさせて頂ければ幸いです。

 

世界短距離界の現実

近年陸上競技界に於いて国外では、長年ロシアのドーピング問題が大きく取り上げられ、この度の東京五輪への出場も認められず、相も変わらず薬物使用は止まるところを知らない様子です。此のことは、1974年以前に於いて社会主義国家に於いて密かに行なわれていた非人道的なドーピングから、1974年のIOCのオリンピック憲章のアマチュア規定の削除により、IOCの全競技スポーツは選手を含めてビジネス化、プロ選手の出場が容認されたことから、本ドーピング問題は、大きな変革期を迎えたのでした

その最大の理由は、選手のプロ化により選手への出場料、大会スポンサー(主催を含む)、選手との個人契約主(コマーシャルスポンサー、スポーツメーカー、等々)との間の契約(出場大会での順位、記録、等々に対するインセンテイブボーナスを含む)を遂行し、それに伴う報酬を得る為にドーピングと言う悪魔と手を結ぶ事を意味しています。

これを一度使用するとその選手は、使用時とそうでない時とその効用が歴然とする。即ち、陸上競技選手であれば効用の結果として記録の向上が歴然となり、野球選手の一例としては、「今迄打った角度ではスタンドインしなかったボールが、効用の成果として余裕を持ってホームラン、スタンドインする。効用を止めると、同じ角度で上がったボールがスタンドのフェンス前でボールがお辞儀して外野手のグラブに入る」という結果が現実となるのです。

薬物の効用は、また記録の向上のみに使用されるのでなく、選手の骨格筋の損傷負傷に対する早期治癒にも絶大な効果を与え、プロの選手達には、「MAGIC HAND」とも呼ばれる魔法の薬物でもあるのです

しかし、この効用から抜け出せなかった為にどれ程多くのオリンピックで活躍したスーパースター、スター選手達が命を落し、臓器疾患により苦しんでいるかこれもまた現実なのです。ここで、ある程度の知識をお持ちの読者の皆さんには、日本の陸上競技選手達には、このドーピングは問題ないだろう。と安易な安心感を持たれているかも知れません。しかし、それは、近年に於いては余りにもオプトミステイックな思考かも知れません。

 

日本短距離界の現実

近年、日本の陸上界で特に男子短距離選手達が目覚ましい強化向上を遂げているのは御承知の通りです。五輪を含む国際大会での活躍の成果と結果は、ロシア選手のドーピングによる不出場、その他トップクラスの選手と同様な問題での不出場との要因にも起因しているのも事実でしょう。

しかし、この度本K’sファイルのテーマに取り上げました命題は、この近年の短距離選手達の目覚ましい活躍があっての新たな問題を日本陸連が露呈した事ですこれまでは、誰もが400mリレーの選手選考など気にもかけず、100mの選手が4名代表に選ばれて400mリレーの出場記録をクオリファイすれば出られるくらいにしか思っていませんでした。

日本陸連には、今日まで400mリレー選手選考に関する基準及び規則なる明文化したものが無かったと言う事です。それでは、何故この度突然この基準、規則を作り個々の選手を縛ろうとするのでしょうか。見方によれば、日本陸連のこの度の唐突な選考基準、規則の擁立は、日本人選手のレベルが上がった事をその理由に挙げる事も間違いではないと思われます。

筆者は、それだけではなく想像を超えた急成長を遂げたスター選手(サニーブラウン・ハキーム選手)が現れた事がこの度の陸連の動きに強く影響をおよぼした要因でないかと確信する次第です。また、同選手が100m、200mで既に参加標準記録を出していることが決定的な行動へとJOC強化本部長、日本陸連強化委員会を駆り立てた真意が此処にあると思われます。

即ち、此れで短距離陣の商品価値が高騰したという理解が正しいのでしょう。商品価値が高まると組織・団体は権力を行使したがるのはどの世界でも世の常です。嘗て日本陸連のマラソン事業が長年大盛況であったのは、スター選手を多く抱えていたからです。そして、この時期は、陸連の黄金期と語り継がれ権力を思いのまま行使してきた歴史があるのです。

しかし、この程のスター選手は、他の選手達と大きく異なる幾つかのファクターを持っていることですこのファクターには、JOC日本陸連が思い通りに事が運べないかもと察知し、先ずは、外枠を埋めながら同選手を身動き出来ないような手段に出たと視るのがこの状況から自然でないかと思われる次第です。その推測の要因と今後起きるであろう問題は、JOC日本陸連の同選手への対応いかんによるかも知れません。此のことは、既に日本陸連の専務理事は承知のうえで告知したようにも思われます。

それは、昨年暮れの日本陸連のマスメデイアへの告知内容が、JOC日本陸連の思惑を明確に物語っています。

2020東京五輪では、1選手が両競技種目(100m、200m)への掛け持ち出場は原則禁止(ダメ)

この告知内容をマスメデイアを通じて社会に発したのは、通常「先行花火」と言われる手法で、日本の陸上関係者、スポーツ関係者、マスメデイア、社会の反応、様子を先ず確認したいからです

当該責任者は、本告知の文言に「原則禁止(ダメ)」を明記しました。これは、今後何かネガテイブな反応が多く生じた場合の逃げ場を確保し、原則」即ち特例もありますよ。と先ずはクッションを確保している所です。この表現は、まさに我が国の談合文化の縮図を表現し、断言しないところから何か後ろめたさを感じているリーダーとお見受けします。

また、これを裏付ける当該責任者は、先月1216日の日本陸連理事会に於いて本件を案として提示し、結論を求めなかったと言うことです。本来なら、このような新しい重要案件を大会目前にしたこの時期、この理事会に提案する前にアスリート達、その指導者達に本件についてのアンケート調査、調査名目での面談をし、その報告を準備して置くことがアスリート・ファーストの運営管理者としての対応でなかったかと思われる次第です。JOC強化本部長兼日本陸連専務理事は、アスリートの意見を聴取することに否定的な見解を明確にした人物でもあるようです。

 

Ⅱ.日本短距離100200のスター選手誕

1.プロ、S・ハキーム選手の登場に困惑する日本陸連

既にご存知の通り日本の陸上選手達の殆どは、IOCJOC日本陸連に対して五輪出場の代表権を得ると、出場させて頂きます、と表現します。これら組織・団体は、選手達への目線は五輪に出場させてやっている目線で常に物事を思考し個々のアスリートの自由な思考を封じ込めているのが伝統で美学と思い込んでいることです。

海外のプロアスリート達の五輪出場への意識と日本人選手の間には、受け止め方に於いて大きなギャップが生じているのも確かです。

 日本人選手の多くは、大きな大会に出場する経費も日々のトレーニングに必要な諸経費も基本的に所属する会社、企業の出張費、部の特別予算で賄われています。また日本代表のトップ選手達には、日本オリンピック委員会JOC)、個々所属する競技団体(NGB)から個々の強化指定ランキング別に年間数百万から数千万円の強化費が支給されているようです

このように恵まれた生活環境に居る日本選手は、殆どがプロでもないアマでもない(会社・企業では労働法によりプロは認められない)中途半端型アスリートで大多数の選手及びその指導者、関係者は、企業に所属して社員同様な扱いを受け給与、ボーナス、スポーツの特別査定、厚生福利を受けているのです。

 

2.サニブラウン・ハキーム選 SANIBROWN・HAKIM

S・ハキーム選手は、日本人の母とガーナ人の父を持ちます。確かに同選手は、今日までの陸上界での経過から日本の他の選手にはない身体能力を有していることは明らかです。

読者の皆様は、ハキーム選手の名前をマスメデイアで認知されるようになられたのは、彼が城西高校の陸上部に所属していた頃からではなかったでしょうか。当時は、まだ線の細い体型をしていたような記憶が蘇ります。しかし、同選手が米国フロリダ大学に入学し、同大のトラックテイームに所属、同大の短距離専門指導者のマイク・ホロウエイコーチの下でトレーニングをはじめ、一年数カ月で今日のように見違えるような体格体型、身体能力に急変した事は、業界関係者の驚く所でもあります。そして、昨年秋にプロ宣言をし、今後も同コーチを師事し指導を仰ぐ予定のようです。

同大においては、NCAA全米大学競技スポーツ協会で体育協会ではありませんのでご注意をの大会に出場し実績を残しているにも関わらず、201819NCAAでの競技参加を1シーズンのみで断念し、今後「プロアスリート」の道を歩むことを宣言した次第です。これは、丁度昨年9月のドーハの世界陸上大会後であったようです。

読者の皆様には、同選手が今後歩む「プロ」とはどのような世界で何を意味するのかあまり理解できないかも知れませんので、この機会に知識を加味して頂きましたら、この度の日本陸連の告知及び今後起きるであろう出来事への先読みがより確かなものになるかと思う次第です。ところで、プロフェッショナル・アスリートとは、「自身の身体能力、スキル、精神力をその競技種目のパフォーマンスに置き換えて、相手と競い合う所を観衆、視聴者に見せる事により生活の糧を得る競技者」を意味します。よって、彼には、会社、企業の後ろ盾となる担保は無いと言う事です。

NCAAのルールでは、ハキーム選手がプロ宣言することで、NCAA加盟約1275校の大学学生選手として登録できない規則に抵触します。NCAA登録学生選手は、学業成績が大学規則、NCAA規則に違反した場合は、学生選手を除籍されます。或は、学生選手がエイジェント(代理人)を有したり、ビジネス、金銭授受、等が発覚した場合は追放の処分が過せられます。

但し、学生選手は、在学中に於いて1競技をプロとして活躍し、他の競技スポーツに大学の学生選手として出場することは可能なのです。大学及びNCAAのルールを遵守する場合は、NCAAの大学対抗戦に出場できるルールがあるので問題は在りません。(例:高校卒業時にMLBにドラフトされてプロ野球選手でありながら、野球シーズン以外の冬季に大学学生選手として、NCAAのバスケットボールで大学代表として出場することは可能であるという意味)

ハキーム選手のケースは、学生選手を離脱した理由が何であれ、彼は、プロ宣言をし、他競技スポーツに参加する意思がない事から、今後一切大学代表としてNCAAの競技に復帰する機会を失ったのは事実です。よって、現在は、既にNCAAの登録は除籍され、アスリートとしての奨学金もその時点で停止しされている筈です。

同選手が同大学にNCAA登録を除籍後、1外国人留学生として在籍が認められているかどうかは、ハキーム選手が外国人留学生として移民局が認める学生ビザ(学生査証)が、取得出来ているどうかが判断基準となります。同選手の場合は、一度大学のアドミッションを受けて入学が許可されているので、一般留学生として2年としての進級(sophomore)になるためのアカデミックの基準をクリアーしているか否かになるかと思われます。

日本の新聞紙上等では、現在もS・ハキーム選手(フロリダ大)と明記されているので、大学在籍に必要な諸般の問題をクリアーして学生ビザが継続できているのかも知れません。即ち、大学に在籍、在学する為には、大学、移民局が認める就学規則を満たし、授業料を自ら納付しているかどうです。

大学、移民局が認める就学規則を満たしていない場合は、米国、及び大学に在籍、滞在する為の「学生ビザ」は支給されません(外国人留学生には、パートタイム学生は認められていません)。プロテニスプレイヤーが所属するプロテニス協会のような組織・団体は、陸上競技には存在しないので今後は日本の企業の陸上部に所属か、海外の陸上選手が所属するクラブに所属して活動しながら同大学の学則を遵守する(しかし、これはプロとして活動している限り相当難しいアカデミック問題が生じる)か、複数のチョイスがあるかと思われます。

3.複数の選手取材による意思確認

ハキーム選手は、マスメデイアの取材に対して「個人があってのリレーだと思うので。個人種目でしっかりメダルを取るために日々練習をしている」と日本陸連告知を疑問視しています。また、同じく100m、200mと両種目に取り組む小池祐貴選手(住友電工)も「リレーに注力するために分からない考えではないが、一括でルールを決めるよりは個々に相談して決める方がいいと思う」と述べています。一方100mが専門種目としている山縣亮太選手(セイコー)は、「1種目に絞る考え方はぜんぜんアリだと思います」と肯定派だ。朝日新聞掲載記事より)

4.2019年度日本国内100mランキングベスト10の紹介

サニブラウン・ハキーム(米フロリダ大)9秒97 100m、200m目標

②小池祐貴(住友電工)9秒98          100m、200m目標

桐生祥秀日本生命)10秒01         未確認

山縣亮太セイコー)10秒11         100m目標

⑤多田修平(住友電工)10秒12         未確認

⑤坂井隆一郎(関大)10秒12          未確認

⑦白石黄良々(セレスポ)10秒19        未確認

飯塚翔太(ミズノ)10秒19          未確認

ケンブリッジ飛鳥(ナイキ)10秒20      未確認

⑩川上拓也(大阪ガス)10秒22         未確認

 

筆者の素朴な疑問と私見

陸上競技の特徴は、水泳競技同様に個々の選手の個人の記録で競い合う競技スポーツの代表であると考えられます。その中でも、リレーは、選手達が言っている通りに個の集りです。その個の意思を尊重し、大事にする事がスポーツ・アドミニストレイターの重要な役割と役目でもあります。

400mリレーの選手選考は、JOC日本陸連のメダル欲しさの思惑で新規則を作り選手を拘束しやらせるのでなく、個々の選手が得意とする種目に出場してもらい能力を如何なく発揮してもらう事が先ず先決です。

そしてその後で組織・団体の運営、管理者は、選手の自由意思を尊重して、6月の全日本選手権100m最終予選に出場した選手の上位4名プラス1名の合計5名を選出することがフェアーであると確信する次第です。

但し、その中の選手に400mリレー出場を希望しない選手には、大会前に日本陸連に申し出をする事で次の記録の選手にバトンが渡される事がフェアーな選考基準であると思われますが、如何でしょうか

全米陸連の関係者に彼らの選考基準を訊ねるとお国柄「自由で民主主義国家」選手個々の意思を尊重することを伝統的に大事にしている様でありました。

金メダルは、選手達の努力に対する成果と結果であって、サポーテイブなJOC日本陸連役員、執行部は、選手の環境を如何にポジテイブに整え、個々の最大の能力を引き出すための準備と協力をするのが、コーチングで在りスポーツ・アドミニストレイターの重要な役目と使命ではないでしょうか。

組織、団体の自己中心的な画策を配慮、気配りも無くEGOを前面に出す指導、運営、管理方式は、今日のコーチングを逸脱していると言わざるを得ません。競技スポーツのCOREである選手の意思を最大限尊重するコンセプトがあって初めて、選手、組織、団体の重要なコンセンサスが確立されスポーツ・アドミニストレイションの礎をなすと思います。そして、此れこそがアスリート・ファーストの精神を遵守することではないかと筆者は、提案する次第です。選手の意思を無視し、運営、管理者の意思でリレーテイームを組んで仮に金メダルを取れたとしてどの様な対価と価値が個人に与えられるのでしょうか。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports

紹介:Gファイル(長嶋茂雄と黒衣の参謀)、文藝春秋

お知らせ:今回の提案は、如何でしたでしょうか。上から目線の伝統的な指導、運営、管理手法は、選手のみならず指導者の育成、指導にも良いモチベーションを与えるものではないと思われます。権力、権威は、使い方により選手、指導者を活かしも潰しもすることを肝に銘じたスポーツ・アドミニストレイターで在って欲しいと願う次第です。