NO.6 河田弘道の独り言:東京五輪マラソン代表選考にある「大人の事情」とは~

NO.6  河田弘道の独り言:東京五輪マラソン代表選考にある「大人の事情」とは~

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         注:本記事は、一話、二話に分けて掲載させて頂きます。

 第一話:マラソン選手代表選考の歩み

   私は、近年マラソンという競技スポーツイベントの商品価値がスポーツビジネスの視点から急激に落ちたことにより、主催者(日本陸上競技連盟、略:陸連)に対しての関係組織、団体による圧力が和らいだ事がこの度の代表選考基準改変発表に至った最大の要因であると思います。

   先日、マスメデイア朝刊各紙及びTVメデイアは、日本の男女マラソンのオリンピック選手選考基準が見直される事を陸連のマラソン強化担当の瀬古利彦リーダーから発表された事を大々的に報じていました。マスメデイア各社の発表には、今日までの選考問題に対する陸連側のコメント(大人の事情と)を掲載していましたが、コメント提供者もマスメデイアもこれだけでは、視聴者、読者が理解できるものでなく、これでは「子供の告知報道」のように思えてなりませんが皆さんは理解出来ましたでしょうか。そこで「大人の事情」とは、真に何を指しているのかについて述べてみましょう。

    日本の伝統的なオリンピック競技種目の代表格でありました、男女マラソン競技大会は、代表選手選考に関する選考基準が常にブラックボックスに入れられていました(嘗ては、柔道、器械体操、水泳、その他も同様)。これにより選手達も国民、社会も五輪代表、世界選手権代表選考に関しては、毎度訳の分からない理由と理屈を付けて選考、決定され、マスメデイアに発表されていく様子を恒例の行事の如く見せられて来ました。これにより、過去どれ程の選手達が日々の努力と夢を大人の都合で壊されたか数え切れないのです。これは、まさにこの度陸連、マスメデイアで表現されている「大人の事情」がそこにあったのです。

 それでは、その大人の事情とは一体何なのか、今なお誰も説明できない、したがらない我が国の競技スポーツ界のアンフェアーな実態を覗いてみましょう。

 

 我が国のマラソン大会は、伝統的にエリートマラソン大会「例:東京国際マラソン(現在:東京マラソンに改名)、福岡国際、別府大分、琵琶湖毎日、横浜国際女子マランソン(現在消滅)、名古屋国際女子、大阪国際女子、北海道国際マラソン、等」と称され、大会出場に出場選考基準が設けられて参りました。(しかし近年は、一般市民が出場料を払って参加できる市民マラソンが主流をなして来ています。)

  本大会は、許認可権を持つ陸連が主催となり、新聞社がそれに連なり、現地での運営は、各陸上競技協会が当たり、後援には、大会が行われる県、市、各教育委員会(一応教育も兼ねているんだと体裁を装う)が顔を出し、またTV放映を行うテレビ局が名を連ね、協賛には、大会のスポンサー(資金と物品を提供する企業が広告代理店の仲介により)が名を連ねます。

 これにより、国際的に通用する男女マラソン選手達は、テレビ局の視聴率を維持する為の最大のロードレース・イベントとしてのCOREであり、商品なのです。1970年代後半から2000年前半までは、国内のトップアスリート達は大変重宝されて来たのです。

  各大会の最大の利権者の一つは、日本陸上競技連盟であり、もう一つが主催に名を連ねている新聞社、そして後援のテレビ局各社なのです。これにより陸連は、許認可権を振りかざし各大会から強化費名目で巨額な寄付金をおねだりするのです。

 此処で皆さんには、大事な予備知識を付与いたします。競技スポーツの大会イベントの主催、後援に新聞社、テレビ局が名を連ねるのは、日本の競技スポーツ大会の伝統的な特徴の一つで、少なくとも諸外国では、見聞きした事がありません。

 一方の利権者の新聞社、テレビ局、スポンサー(仲介者の広告代理店)は、陸連に対してオリンピック出場選考会、世界陸上出場選考会、等の商品価値を高めるためのタイトル(看板)の必要性を強要するのです。これにより、各選考大会がタイトルを欲しがるのは、商品価値を高めるためのグレードアップと、視聴率の向上とスポンサー・セールスの一翼を担うのです。よって、これらタイトルは、選考大会の数だけ増えるのです。陸連は、何故独自の施策、戦略を持ったスポーツアドミニストレーションが出来ないのか。

  利権者の陸連は、これらの要望に対してNOが言えない理由があるのです。それは、各大会から強化費名目で多額の寄付金をおねだりしている事、また、陸連の幹部と呼ばれる執行部役員達個々は、各大会の暗黙の窓口となって利権者としての特権を長きに渡り構築して、公私共に利用、活用して来ているのです。これら個々の幹部は、各大会の利権代表者でもあるのです。よって、新聞社、テレビ局、スポンサーは、自らの大会に五輪、世界陸上選考会としてのタイトルを付けると同時に、利権の代表者を通して、その時々の商品価値のある選手を自らの大会に招聘する許認可を求めるのです。しかし、この陸連の代表者は、協会内部の許認可に付いては力を発揮できるが、肝心な選手への影響力は、略ないに等しいのです。よって、選手達を許認可権を盾に縛ろうとするのです。

*次週第二話を掲載予定、                文責:河田弘道