NO.8 河田弘道の素朴な疑問:桑田真澄投手(元東京読売巨人軍)

NO.8  河田弘道の素朴な疑問:桑田真澄投手(元東京読売巨人軍)   無断転載禁止

 

   この度の本テーマに付きましては、BLOG読者よりのリクエストを優先させて頂きました。よって、私は、ベースボール・アドミニストレーターとしての視点と立場で述べさせて頂きます。本記事は、第一話:素朴な疑問、第二話:プロ指導者の現状と問題、第三話:貴重な戦力としての桑田氏、に分けて掲載致します。

 第一話:素朴な疑問

     私は、嘗て東京読売巨人軍にて、「編成本部付アドバイザー兼長嶋監督補佐」という肩書で編成、運営、管理に当たらせて頂き、桑田真澄投手を球団、テイームの1選手として見て来ました。河田の素朴な同投手への疑問は、「桑田真澄氏は、現役引退後どうしてプロ野球球団の指導者として何処の球団からも声を掛けられないのか」という事です。

    これは、野球ファンのみならず、一般社会人から私にここ数年よく質問される事からも、皆さんも抱いている素朴な疑問ではないかと思われます。私は、彼ほど野球選手としての実績、頭脳を持ち合わせている人物は国内においてそうはいないと確信しております。しかし、スポーツマスメデイアは、本件に付いて触れようとしないのも不思議に感じています。或は、此のことを語るのは、日本球界ではタブーの一つなのか。私は、そうは思いません。勿論、他にも多くの選手は、現役時代実績、名声を伴った選手が引退した後、指導者として声を掛けられないでいるのも事実です。 

    私が日本に於いて関わったベースボール・アドミニストレーションの中で、彼ほど自立心があり、自己管理ができるプロの競技者は他に記憶がありません。 彼の野球に対する情熱とその向上心は、群を抜いていました。特に選手時代から、野球に必要なスポーツ医科学を自ら学び実践に取り入れ、それを成果と結果に繋げる努力と信念は、他に例を見ませんでした。勿論、彼には、種々の能力が備わっていたのは言うまでもありません。

    そうでなければ、私は、1994年、10月08日(別名:10.8)、ナゴヤ球場に於ける頂上決戦(巨人対中日)の後半3イニングを彼に任せることを推薦しませんでした(世に言われているメイクミラクルと名付けられたシーズンと決戦で)。

     それでは、彼の指導者としての能力及び可能性は、如何でしょうか。それは、彼がプロとしてのコーチングの成果と結果を見せていませんので正直未知数です。桑田氏は、選手時代から殆ど独学による専門知識と経験から得た知恵を蓄積しています。そして、現役引退後、彼は、自らの意思で大学院(早稲田大に1年間)に通い、大学野球での指導(東大野球部)、少年野球のオーナーとして、また解説者としても経験、活躍しています。

    これらは、多分彼の内心のストレスをポジテイブな行動に転化した表れと理解、推測しております。また、彼は、選手時代にはプレー中にパフォーマンスを駆使する癖を持っていたのも事実です(例:プレート板に肘を触れたり、ピンチになるとボールに語り掛けたり、投球前に独り言、等の仕種)。このような野球外での努力と実績からしても、彼は、他のプロ野球界を退いた選手達と異なる思考能力及び行動力を持っていると思います。

     日本のプロ野球界は、現役引退後過去に実績、名声を残した方々が先ず各球団の指導者(コーチ)、監督として指名され新たな委託契約を結ぶのが慣例であります。

    ご批判を承知で申し上げますと、多数の各球団の指導者達は、現役選手時の実績、名声はあるが指導者としての資質及び必要な専門知識は殆ど持ち合わせていない人が多いのが現状です。しかし、このような指導者諸氏は、「処世術」という特技を持っているのは一般社会も同じのようです。勿論、その中に少数ではありますが、選手時の実績、名声、そして専門知識を兼ね備え、優秀な指導理論と指導方法を持って、現在成果と結果を出し活躍されている指導者達も事実存在しています。

     日本社会に於いては、選手時代に素晴らしい実績、名声を残した競技者(Athlete)が即優れた指導者、管理者であるとの理解、評価と認識をしてしまっているようです。 しかし、それらには、何の根拠も見当たりません。

    例えば、オリンピック代表選手、メダリストは、即スポーツのオーソリテイー(authority)であり、競技スポーツの名コーチ、名監督、名管理者であり、また、全く対極的な体育の分野に於ける優秀な指導者、教育者であると社会のみならず自らも勘違いされている事と同じ事です。優秀な競技者とは、その競技種目の中で勝利した結果を称えられるべきであり、指導者、教育者、管理者とは、本質的に異なる専門分野、部門なのです。

これらの誤解は、ただの迷信、思い込みにしか過ぎないという事を先ず常に心の片隅に持って頂けましたら幸いです。

                          文責:河田弘道

                          Sportsアドミニストレーター

注:次週は第二話:プロ指導者の現状と問題を掲載予定