NO.10 河田弘道の素朴な疑問(第三話):桑田真澄投手(元東京読売巨人軍)

NO.10  河田弘道の素朴な疑問(第三話):桑田真澄投手(元東京読売巨人軍

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 第三話:貴重な戦力としての桑田氏

 

   桑田氏のような人材は、日本球界に於いて本当に稀です。また、彼の古巣の巨人軍が今なお彼を雇用しないのもこれまた奇異なり。

   私がもし球団の編成、運営責任者であったなら、桑田真澄氏を先ず二軍投手コーチとして交渉、契約を交わします。そして、その契約条項には、二軍の若手、中堅投手の育成と強化、向上に関する細部目標を設定し、3年契約をオファーするでしょう。勿論、そこでは、球団に於ける二軍の役割、使命を明確にして育成、運営、指導を徹底させます。この意味は、よき伝統を継承し、悪しき伝統を取り除く事です。

    3年契約の根拠は、プロの世界では契約条項の目標に対して改善、成果が3年で出ない場合は先ず指導者に問題在りと評価するのがプロのスポーツ・アドミニストレーターとしての評価基準の一つであります。これは、担当コーチに限らず、監督もしかり、フロントの担当責任者も同様なのです。これにより、例えば、現巨人軍の投手の育成、指導は、少なくとも現状よりは見違える様な成果と結果を残す可能性を大きく秘めていると思われます。しかし、これには、フロント及び2軍の監督の理解と協力が不可欠である事は言うまでもありません。

    同氏の指導状況と成果・結果を評価して、価値ありと判断した場合は、一軍投手コーチとして推挙します。その時には、同氏が育てた若手、中堅投手が一緒に一軍で活躍できるレベルに上がって来ている筈です。一軍投手コーチとしては、3年契約をオファーし、インセンテイブボーナス(成功報酬)を付与するのがフェアーな契約内容だと思います。その後、もし本人が希望するなら監督(Manager)として検討する余地は残します。

    このようにプロのスポーツ・アドミニストレーターは、目先の編成、運営結果のみならず、指導者の育成、運営、管理もテイーム、球団組織の構造改善・改革並びにシステムの構築と共に、重要な責務の一つであります。また、スポーツ・アドミニストレーションに於ける人事は、「同じ人物を長期に渡り同じ部署、職責に在籍させる事の弊害」を考慮して一般的に3年一区切りとした人事の活性化が効率の良いアドミニストレーションと言われています。

 特に競技スポーツのテイーム、組織に於いては、「選手間の競争の意識の強化、向上」のみならず、「指導者、球団スタッフへの競争の原理の導入」は不可欠です。(Blog河田弘道の「日・米のスポーツ・アドミニストレーションの違いと疑問」遍より)

 

  日本のプロ野球界では、選手としての経験のみで、コーチ経験も無い、人物をいきなり監督に経営者判断で契約する事は、論理的でなく大きなリスクを背負い込む事になるのです。そして、結果が伴わない若手監督は、負のキャリアを背負って去らなければならなくなります。このようなケースでは、選考、判断したその組織の統括責任者の洞察、判断力が先ず問われるべきで、未経験の監督に責任を転化するのは如何なものでしょうか。1回限りの監督経験で球界を去っている指導者は、もし自身に意欲があるなら是非希望を失うことなく、もう一度自身の得意な技術と経験を活かせる環境でコーチングを学んでから現場に戻ってきてほしいと願います。

 桑田氏が、今もってどこの球団からも誘いを受けていない現実は、各球団が躊躇(ちゅうちょ)する何かがあるのかも知れません。そうでなければ、この人材は、すでに日本球界で指導者として活躍している筈です。

 もし、仮に何か選手時代に起こした問題が彼の指導者への道の障害となっているのであれば、雇用契約書内の一条項に球団が心配と思うポイントを特記し、いつでも契約を解除できる方法があります。此れこそ、プロの契約雇用であり、彼に対してもフェアーなチャンスを与え、雇用する側にも心配事を回避できるプロテクションが与えられるわけです。契約書とは、双方が同意した約束事を遵守する為の信頼の証なのです。

 我が国では、契約、契約雇用という制度が歴史的に根付いていないので、契約という概念を選手契約時にしっかりと教育、指導する必要があると思われます。しかし、オファーがあっても内容が彼に取って不満で成立しなかった場合は、それはそれで双方のネゴシエーション(交渉)の結果であり、双方にとって何の問題にもなりません。彼に取って、現在は、何のオファーも無い事が問題だと思います。

 

 何れにしましても、桑田真澄氏のような逸材に指導者として来てほしい球団は、何処の球団も現状を覗いて見ますと喉から手が出る程欲しい貴重な戦力と思われます。日本の球団は、MLBメジャーリーグ)と異なり物事をビジネスライクで割り切ろうとしないので、勇気が必要なのもまた確かです。優秀な才能がある人材には、温かい手を差し伸べ球団、球界と社会に貢献できる機会を是非与えて挙げて欲しいと思います。そして、同氏には、チャンスが与えられた暁には感謝の心を持って伝統的な日本のプロ球界の指導方法に新風を吹き込み、成果と結果を日本球界に還元して欲しいと期待する次第です。

  プロ球団のアドミニストレーションには、観察力、洞察力とマネージメント力の優れたベースボール・アドミニストレーターが不可欠です。

 各球団に勇気と期待を込めて! ガンバレ桑田!チャンスはきっと来る。あなた程、素晴らしいプロ球界の指導者としての資質と可能性を秘めた人材は、日本球界に於いて珍しいと思います。

                         文責:河田弘道

                         Sportsアドミニストレーター