NO.18 河田弘道のプロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍 無断転載禁止

NO18 河田弘道プロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍

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Ⅵ.壊し屋さんへのリスクヘッジ

 1.リスク軽減する為の専門家の導入~

 松井秀喜選手の場合:

    それでは、この壊し屋さんたちの日常の業務を如何にして、その被害から球団の財産を最小限度にくい止めることができるか、例をご紹介しましょう。私が、嘗てジャイアンツのフロント、現場に関係していました時に体験した実例です。

    それは、「松井秀喜選手のケース」です。このケースは、今日までマスメデイアに於いても紹介された事が無かったようです。彼は、ジャイアンツに入団してその年のオフの怪我から、彼が球団を離脱するまでの9年間、彼の身体のメインテナンスとバッテイング、スローイング、等に関する技術指導とコンデイショニングを行って頂いたのは、まぎれもなく市川繁之氏(PTPNFの世界の大家)でありました。「市川氏に付きましては、市川繁之で検索かPNFで検索されると詳しく告知」よって、監督以下コーチングスタッフは、市川氏に松井選手については委ねられていたのです。

   これは、言うまでもなく成果と結果が出るからでした(市川氏は、1994年~97年まで球団との契約、以降、松井選手は、1クライアントとしての関係)。マスメデイアで取り上げられている、同選手の指導者に関する話題とは、全く異なる事を読者は本BLOGで初めて知り驚かれた事でしょう。

     その献身的な情熱と卓越したスポーツ医科学を駆使した理論と実践は、MLB時代の野茂英雄氏、当時のジャイアンツの投手、他現在では、MLBの一線で活躍中の投手、日本プロ野球界で活躍の投手、選手と数えあげれば限がありません。また、過去、現在のオリンピック競技スポーツで活躍し、メダリストの多くは、市川氏のお世話になっているケースが多いのです。

    しかし、日本の競技スポーツ選手達は、自らお世話になっている大切なはずの指導者を公に紹介するという習慣が無いようです。これは、スポーツ選手に必要な礼節の一つが欠けていると私は思います。指導者も生身の人間ですので、公にされる方がモチベーションも高まり、よりインターラクテイブな関係を構築されるのでこの点を改善する必要があると思います。

     日本のスポーツ整形外科医の間では、市川氏を知らない医師はスポーツ整形医ではないとまで言われています。また、市川氏は、一切クライアント(顧客)を売名行為に使用されない方なので、業界以外の方々には、知られていないと思われます。市川氏のクレデイットをさも自分が指導したかの如くマスメデイアに肯定する方々を見聞きするに付けて、スポーツマスメデイアの取材力に一抹の不安と寂しさを感じずにはいられません。

 過酷なトレーニング実態:

    その評価と信頼は、その指導を受けたそれぞれの選手達が一番感謝し、リスペクトしている事でしょう。松井選手に於きましては、遠征から戻った即日に市川氏のクリニックを訪れて、PNFを通しての身体のメンテを受け、その後延々と続くバッテイング練習、一度に必要とする時間は、何と3時間から4時間に及ぶこともしばしばありました。これを松井選手は、根気よく週最低23度、9年間続けた、彼の強い意思、意識と市川氏のプロフェッショナリテイーには、ただただ頭が下がる思いでした。よって、同選手の怪我は、入団一年目のオフの怪我以外、退団するまで松井選手が怪我をして休むなど聞いた記憶が無いのではないでしょうか。

     この9年間の毎回のトレーニング報告書は、松井選手の初年度の怪我から同選手がFAジャイアンツを退団するまで市川氏によって作成されました。市川氏は、本当にこの業界に於いて珍しく律儀で正直な方、私が最初に松井選手をお預け(1994年早春)致して以来、紹介者に対して仕事の成果と結果の報告書を絶やした事は9年間一度もありませんでした。

 松井選手の強い決意と重大決断:

 松井選手は、当時退団を決断し発表した年月日の丁度1年前に、既に巨人軍を退任していました私を訪ねて参りました。 彼は「河田さんのご意見を聞かせて頂きたい、教えて欲しい事があるのでお会いしたい」との事で、市川氏と共に都内の某ホテルでお会いして、会食しながらお話を伺いました。

 そこでは、「松井選手の巨人軍時代に起きた整理、退団の理由、MLBへの夢と現実、退団に対する大義、今後の準備と手順、等々」を確認し合ったのが、今ではつい昨日のような気が致します。

 MLB引退後も当時彼と確認し合った方向性には、ブレも無く全うされている事を大変感心致しております。国民栄誉賞の誘惑にも揺らぐことなく、彼が物事に筋を通す事は、何にも勝る強い信念と強い意思であると信じております。

  当時の打撃コーチの記録では、市川氏のトレーニングを受けた翌日、翌々日の松井選手の打率は、7割を超えていた事が証明されており、PNFによる運動効果と正確さを計る貴重なデータでありました事を、このBLOGでご紹介致します。(Gファイル:長嶋茂雄と黒衣の参謀には、詳述済み、文芸春秋社武田頼政著)

 

2.真の指導者とは、球団の真の救助主~

 本当のプロの指導者とは:

 プロの選手は、ゲームで結果を出せば誰もが認め、誰も非難をしないのです。ユニフォームを着て背番号を付けて居なくても、超一流の指導者が居ることを松井秀喜選手、野茂英雄投手、他の例が成果と結果から証明しています。此のことから、現在ユニフォームを着ているコーチ達が、市川氏のようなスポーツ医科学の専門知識とコンデイショニングの実践スキルを少しでも身に着けて居れば、多くの若手選手達がどれ程救われ、育って行くかを誰もが理解できていないのが問題なのでしょう。

 本球団のコーチングスタッフには、誰もが憧れ、大変興味を持つのも事実です。彼らは、気付かないのでなく気付く為に必要な情報、知識と専門家に学ぼうとする真摯な心と意識が備わっていないのかも知れません。

 市川繁之氏の存在と有効性:

 これは、別の視点で申し上げますと、市川氏のような方が球団に居れば、選手、コーチングスタッフは医科学の必要性とその論理を学べ、医療担当者は野球に必要な医療技術の習得ができるわけです。またスカウテイングとスカウトマン達もスカウテイングのスキルアップや、眼力が養われ、球団にとっては、大きな変革を与えて頂けるでしょう。また、スカウテイングリストの中から、どうしても必要で、欲しい選手のスカウテイングレポートを市川氏のような方に見て頂き、億単位の価値があるかどうか何故見て頂き判断を仰がないのでしょうか。

 私なら選手獲得のリスクヘッジからも、当然見て頂き今後の指導、育成方法に於いても適切な指導を受ける方が、スマートで同時に莫大な経費の削減にも効果を発揮すると考えます。読者の皆さんならどう思考されますか。

  悪例として、1995年秋に球団は、既に8年契約という異常な契約期間と莫大な金額で韓国のスター投手を獲得されていました。趙成珉(ソンミン)投手は、秋の宮崎キャンプで市川PTの身体検査を受けてもらう事にしたのです。その結果、問題を明快に指摘されたレポートを受けた次第です。

 市川氏曰く「球団、監督、投手コーチは、マスメデイアに対して、即戦力の巨人のエースを獲得した、と告知されています。しかし、この投手は、期待されているような活躍は難しいです。テイームは、来季泣きを見る事になり、河田さんの再建ビジョンに支障をきたすと思います。他の信頼できる外国人投手を獲得されておかれた方が賢明です。」とレポートに断言されていたのでした(勿論その原因と根拠を明示)。本レポートの正確性は、その春のオープン戦で先発した趙成珉投手が2回までに大量失点し、3アウトが取れず降板した事がその証の第一弾、その後何度と同投手にはチャンスを与えました。

  このレポートのおかげで、あのバルビーノ・ガルベス投手が入団の機会を得たのです。そして、メイクドラマの主役になったのも事実、市川氏のおかげでした。(Gファイル:長嶋茂雄と黒衣の参謀、で既に紹介済) 

 当時より本球団の補強は、このよう有名で人気がある事を最優先するスカウテイングで、日本選手のFA補強も同様なコンセプトです。よって本年度も旧態依然と変わらぬFA補強でしたので、ファンとテイームに多大な迷惑を掛け、球団経営者には、多大な損失を与えている次第です。これは、プロの有能なスカウトマンが居ないか、最終決断をする責任者にベースボール・アドミニストレーターとしての能力が無かったか、或は、その両方が原因の証であると思えます。

  一日も早く、若い世代の有能なベースボール・アドミニストレーターを育成、醸成され、現代スポーツ医科学を最大限に活用される近代的な球団の環境である事を切に願います。巨人軍の指導方法は、日本の他の競技スポーツ界に多大な影響を及ぼしますので、古い体質の指導方法から脱却し、健全な未来志向への変革(Change)が急務です。その為には、底辺の模範となる機能的システムの構築が急がれると思います。

                      文責:河田弘道

                      Sportsアドミニストレーター

お知らせ:BLOG「どうした東京読売巨人軍NO.18迄予定致しておりましたが、多くの一般読者以外の業界関係者、大学指導者、学生、父母からの要望により、NO.20まで予定致して居ますので、お役に立っていますならこの上ない喜びです。

次回予定:

*次回19回では、「プロの選手としての自立心と自己管理の欠落」、「12軍の指導体制の一貫性と古い指導体制からの脱皮の必要性」。

お知らせ:河田弘道の「ライブトーク106日予定」。