NO.19 河田弘道のプロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍 無断転載禁止

NO19 河田弘道プロ野球の視点:どうした東京読売巨人軍

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Ⅶ.プロ野球選手以前に自立と自己管理を

 

1.自立心、自己管理、自己責任は~

 プロ選手としてのコンデイションング管理の重要性:

     真のプロフェッショナル・アスリートは、通常自らの年俸、契約金で専門家(マネージャー、トレイナー、カウンセラー、医師、等)と契約を結びます。特に競技スポーツ選手は、欠かせないのが専門スタッフの存在です。しかし、プロ野球選手は、所属する球団が専門家を帯同させ、医療機関と提携しているので、選手達は応急処置、及び治療、リハブ、等を球団に委ねているのが現状です。

    本来、メジャーリーグ(MLB)の選手達は、マネージメントを司る代理人(欧米の場合エイゼントと呼ぶ)が選手のメンテナンスから所得の運用活用、管理、そして家族の住居、子供の教育に至るまで、マネージメント契約内の全ての項目を代理業務しているのです。これらは、選手及び家族のプライバシーの保全の為にも球団のルールの下で外部の特定の専門家に委託しているケースが大です。

     プロ・アスリートの生命線は、心身の健康です。その為には、コンデイショニング管理の維持、強化に、自らの年俸、契約金の一部を投資する事はプロとしての義務であり使命です。通常は、選手の年俸、契約金の中に諸経費分が含まれているという解釈が業界の常識です。しかし、日本のプロ野球選手達(全てを指しているのでない)は、自身への投資を怠り、球団の医療関係者に身を委ねる伝統的な習慣があります。彼らは、専門知識が不足しているために選手生命、ビジネスにも大きなマイナス要因となっていることすら理解できていない人が多いです。

    その選手達の大半は、「球団所属の専門家を使えば金がかからないですむ」、との単純な理由です。このレベルの価値観では、思考能力が既に限定されていると考えられます(プロ選手としての自覚不足)。

 

 2.合宿所という閉鎖社会の功罪~

 プロ野球選手の特殊な生活習慣:

 本テーマは、少し視野を広めた視点で述べてみたいと考えました。

    日本の競技スポーツ選手は、幼い頃から学校体育の教員、部活指導者、或は地域スポーツ・クラブの指導者に接する事から始まります。このような指導者達の概念の多くは、伝統的な「全体練習」から、「型」に入れようとする指導法が今なお主流のようです。1人の指導者が多勢を運営、管理する為には、無理からぬ指導状況と環境である事も理解できます。

    このような指導法は、コーチングが「選手個々の潜在能力を導き出し、得意部分を伸ばす」コーチング理論とは異なるようです。これら全体練習は、伝統的な連帯責任的な指導方法が色濃く残っているようで、現代のプロ野球球団の指導体制に於いても現存しています。日本の選手に向いている指導法と過去の負の遺産の指導法は、整理する必要があると思われます。

 合宿所の存在:

「合宿所」は、選手にとって思春期の頃から抜け出せない競技スポーツ選手の閉ざされた生活居住の場です。読者の皆さんは、高校、大学、社会人と競技スポーツに関与された方であれば懐かしい呼び名と環境だと思います。これには、賛否両論があるでしょう。しかし、選手達には、選択(チョイス)が与えられていないのも事実、自由と人権の観点から、矛盾している運営、管理方法の一つです。

    例えば、高校時代から親元を離れて、野球部の合宿所に入れられ社会から隔離され、大学、そしてプロ野球界に入団と、この管理された環境で選手達が過ごしてきている事に対して、誰もが違和感も持たないのでしょか。勿論、管理する側、される側双方には、共同生活でしか得られないメリットもある事も事実です。

     欧米人は、この日本のスポーツ界の管理システムを、選手達を刑務所( the jailhouseの意味)に入れて管理している。とよく揶揄されます。欧米人の文化からは、想像ができない特徴の一つです。

    一方、欧米の指導者達は、日本の指導者、管理者達と異なった努力と苦労を経験しています。それは、個を認めて自由な生活をしている選手達を一つのテイーム、集団にまとめる難しさです。しかし、これは、選手にとって掛け替えのない、「自立、自主性、自己管理、自己責任を学ぶ」への重要な機会と環境なのです。読者の皆さんは、若者にどちらの生活環境を望まれますか。但し、球団と雇用契約にある、外国人選手は、合宿所への入居の有無は自由です。   このような伝統的な生活習慣を幼い頃から強いられてきた若者は、いつ自立心を学び、社会との協調性、社会性を習得できるのでしょうか。

    本BLOGコラムでは、他のテーマで教育機関での実態をご紹介しました。それは、高校生、大学生が「授業は、部活の為の休息の場と捉えて昼寝の時間」としている生徒、学生が多数居る事です(中には、指導者がこのように指導している場合もあります)。

    彼らは、教育から得られる貴重な知識の付与を望んでいないのです。それならば、何故彼らは、高校、大学に高額の授業料を払ってまで入学するのでしょうか。お子さんを持たれている読者の皆さんは、どう感じますか。我が国の教育機関に於ける競技スポーツ活動は、教育の延長線上、一環の筈なのですが、他の目的の為に大人が歪めてしまっているのではと、私は、強く感じてなりません。

     プロ野球選手の自己管理能力の育成は、日々の生活環境に於ける構造的な問題を前向きな姿勢で改善する事が、選手のプロとしての成長に繋がる重要なポイントであると思います。

 球団により管理された選手実態:

  選手にとって、その日常生活は、誰もが憧れるような「個室が与えられ、食事の準備がされ、娯楽室、サウナ、浴室、スイミングプール、トレーニングルーム」と超高級マンション同様な生活です。このような環境が若くして与えられる事で、彼らの自立心を期待する方が間違いなのかも知れません。

 余暇では、選手仲間、時として一部指導者、一部球団職員、等が加わり「賭け事」に乗ずる伝統的な生活習慣が醸成されるのもごく自然の成り行きです。このような環境から、全部でなくとも当然外部の遊戯場へとエスカレートして行く土壌が培養されているのです。選手達は、その行為の良し悪しが理解でき、知識も、自らを律する倫理観も、持ち合わせているとは限らないのです。この特殊な社会構造と生活環境に長年慣れている選手達は、違和感なく、日常生活を営んでいるわけです。

このような環境を与えている球団は、選手達の技術の指導とは別に、1社会人としての一般常識だけでも指導、改善しなければならない事を提案致します。

  各球団には、合宿所規約、ルールが設置され、ある時期が来たら社会での生活を余儀なくさせる事になっています。しかし、これでは、時すでに遅い場合が多いのです。よって、選手達には、自立できていない状態で合宿所から社会に出されるわけです。選手が起こす事件、スキャンダルは、このようなタイミングで多くが発生している場合が多いのも理解できます。この伝統的な生活環境は、今日も断ち切れない問題の温床となっている大きな要因の一つのように思えます。

  多分読者の皆さんは、現実の実態を御存じでないので想像がつかないかも知れません。球団は、高額年俸で契約した選手達を抱えていますが、プロとして契約した時点で「雇用主と個人事業主」の関係なのです。

 雇用主は、個々の選手を1社会人として対等な関係で契約の原理原則に基づき対応して行く勇気と実行力が必要かと思います。選手側には、彼ら個々の知識と理解力に応じた、多種多様な問題が起きるのは当然です。しかし、この失敗を糧に彼らは、多くの重要な問題を自ら解決して行く努力と経験から知恵が醸成されます。

 球団は、合宿所から選手を開放して、1社会人として選手と雇用関係を結ぶ事で、球団の選手管理が集約され、ゲームと育成に集中できる筈です。選手は、プロ契約後、1社会人として、個々の生活環境が確立して初めて、真のプロ選手として扱われる時なのかもしません。

  選手達は、常に高額の契約金、年俸を持っているのでATMに行けば引き出せます。それを狙うジャッカルたちが、内外に潜んでいる事を心して生活して欲しいと願う次第です。また、球団は、元ポリースマンを雇用する事で、形式的な改善を装おうのでなく、如何にして日々の生活の中で実践指導を遂行出来ているか、スキル指導同様に重要な業務だと思います。

  球団は、選手個人の問題として関知しないスタンスであるならば、選手を合宿所から解放する事に真剣に取り組む事をお薦めます。そうする事により、多くの選手達は、自然に社会に対応する能力を自ら会得し、適応力を向上させる為にも一考の余地ありと思います。

この度は、フィールドでの選手育成の基盤となる選手の生活面と環境の視点を広めて述べさせていただきました。本テーマに付きましては、球団の全選手がそうであると申しているのでありません。フィールドに於いても、生活面に於いても、1社会人としての常識を兼ね備えた立派な選手達も居ることを付け加えさせて頂きます。

                      文責:河田弘道 

                      Sportsアドミニストレーター

 

*次回NO.20は、「どうした東京読売巨人軍」の課題とテーマの最終回とさせて頂きます。テーマは、「補強に寄る功罪」、「若い選手が育たない環境、まとめ」、等を予定しています。いつも沢山のコメントメールを頂き有難うございます。

NO.21からは、他の読者の皆さんからの種々のリクエストが既に届いていますので、異なるテーマを取り上げる予定です。

@お知らせ:21日、FacebookTwitterに「私大への公金補助、助成金の情報公開の必要性」をコメント致しました。

@お知らせ:106日、午後18時より、河田弘道のライブトークが企画、予定されています。近日、企画会社より告知が予定されています。