NO.31 河田弘道の素朴な疑問:大学箱根駅伝は誰の物? PARTⅢ.
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スポーツ・ビジネスとしての大学箱根駅伝~
1.スポーツ・アドミニストレーションの視点から:
大学箱根駅伝に関する河田ゼミでの活動、
大学でのスポーツ・アドミニストレーションの講義授業と付帯専門ゼミ(河田ゼミ)に於いては、嘗てスポーツ・プロモーションをテーマにした実態調査を行いました。このテーマは、大学競技スポーツが学生達に取って一番身近で、学生達も関係している事から大変興味深く取り組みました。本調査は、大学箱根駅伝(略:箱根駅伝)がどのようにして運営・管理され、如何にして事業(スポーツ・ビジネス)として成立しているのかを学ぶための課題とテーマでありました。
しかし、ゼミ生達は、何度も大きな壁にぶち当たり段々と本運営・管理が学生達によるものでなく、外部の大人たちの利害と利権の為の閉ざされた世界でのビジネスである事が透けて見え始めたのでした。この事を実感できたゼミ生達は、河田ゼミの実践演習活動を通して学内外、社会で得た貴重な成果と結果であったと思われます。このような実践演習は、日本の大学で指導されませんので非常にダイナミックな授業と演習に感じたようでした。また、不可思議な箱根駅伝の経営、運営実態から、私は、引き続き今日までゼミを超えた立場と、スポーツ・アドミニストレーターとして専門の視点でリサーチを継続して参りました。
この事から読者の皆様には、「本BLOGの課題、テーマの問題の本質部分」をお話し致しますので、そこから何が見えて来るのか、是非思考回路を全開にして、洞察して頂ければと思います。
2.関東学生陸上競技連盟(略:関東学連)の事業(ビジネス)の一つ:
ビジネスとしての箱根駅伝、
関東学連は、箱根駅伝以外にも複数の事業(関東学連規約:事業第五条)を行っています。しかし、本事業が唯一莫大な収益を上げているビジネであると見受けられます。箱根駅伝を主催する関東学連は、大学生及び学生選手を商品として、事業(ビジネス)を行っています。そのビジネスの主な収益は、スポンサーシップによるものです。
スポンサーシップとは、大学競技スポーツのCOREである学生選手が出場、出演するスポーツエンターテイメント(此処では箱根駅伝)大会に「金銭的、物的、人的」投資(支援)をする会社・企業を意味します。
即ち、主催者は、その見返りとして、本大会に於いて企業名、商品名、商品を独占的に露出、提供する機会を与えることを意味しています。スポンサー企業は、大会での直接的な観衆、間接的なマスメデイア(テレビ、新聞、雑誌、等)を通して取り上げられる事により投資した以上の宣伝効果を期待しているからです。
また、本大会は、「サッポロ新春スポーツスペシャル箱根駅伝」として、日本テレビ系列により独占生中継番組で放映されています。よって、日本テレビは、放映権料として莫大な金額を主催者側に支払っている筈です。
箱根駅伝をスポンサーシップする主な会社・企業とその役割、
特別協賛:サッポロホールデイングス株式会社(サッポロビール株式会社)
協賛 :ミズノ株式会社 トヨタ自動車株式会社 セコム株式会社
敷島製パン株式会社
特別後援:日本テレビ放送網株式会社
後援 :報知新聞社
○特別協賛とは、冠協賛とも言われ、冠スポンサー(別名:クラウンスポンサー)と称される本大会(イベント)に一番高額な金銭的な投資をしているスポンサーを意味しています。
冠スポンサーとは、テレビ番組や公演、スポーツの大会(イベント)、多目的施設などの名称に企業名や商品名などを冠することを条件に多額の資金と商品を提供するスポンサーの事です。
例えば、サッポロビールの冠番組として、『★SAPPORO新春スポーツスペシャル 第○回東京箱根間往復大学駅伝競走』として告知しています。
○協賛とは、箱根駅伝の趣旨に賛同し、大会の成功を助ける事が本来の意味です。通常は、協賛の会社がかなりのお金や物(自社の商品)を提供している。
○特別後援は、後援の中で一番金品を出している事が特徴です。此処では、テレビ中継をする事により、本大会を後援し、放映権料を支払う事で主催者に金銭的、放送媒体によるサポートをしている事です。
○後援は、多少のお金や物を出す程度、あるいは名義後援と言ってイベントの権威付けのために名前を貸してもらうだけのことも多いです。本大会の場合は、活字媒体を主体とした、後援を行っていると理解するのが正しいかもしれません。
3.大会スポンサーとテレビスポンサーとの関係:
テレビ局の事業予算の確保と収益確保、
本大会は、日本テレビにより2日間約14時間生番組(別枠:特集、10月の予選会生中継)として実況中継されています。
テレビ・ビジネスは、先ず放映するに当たり映像を制作、生産しなければ商品になりません。そこで制作する為には、多額の予算の確保が必要となるのです(例:衛星回線確保、映像送信回線確保、中継基地確保、機材、運搬、テクニシャン、ゲスト、社内、社外スタッフの人件費、放映権料、等々)。そして、本大会の権利を得るためには、放映権料を主催者に支払わなければなりません。
これら全ての諸経費を捻出する為に必要な事業費は、テレビCM‐Time(コマーシャルの時間枠)を販売する事により事業費を回収し、利益を上げるビジネスコンセプトであります。また、CM時間帯の料金の設定は、前年度の本番組の視聴率が料金設定の目安となっているのです。
よって、本箱根駅伝の大会スポンサーが即テレビのメインCMスポンサーとなっているのです。また、利益を上げる為の方法としては、大会スポンサー以外のスポンサーに営業(セールス)を行い賄われているわけです。
今日、このような人気のある大会(イベント)では、大会スポンサー、テレビスポンサーを広告代理店が独占販売する事が一般的で、この事をパッケージセールと業界では読んでいます。この方式を取る事で、テレビ局の営業部門へのプレッシャー、負担が軽減される事にもなります。基本的には、オリッピックのテレビ・ビジネスも同じコンセツプトなのです。
4.主催者とスポンサー各社との関係:
此処で素朴な疑問とは、
本主催者の関東学連は、任意団体であるため情報公開の義務がなく、スポンサーとどのような取り決めを行い、契約を取り交わし契約書にしているかは明らかにされていませんので推測になります。通常、本大会に類似したイベント・ビジネスでは、主催者とスポンサー会社、企業間で取り決め、主催者(権利保有主)とスポンサー各社との間で毎年新しい約束事を契約書に盛り込み、双方で担保する事が常識であります。
或は、関東学連は、スポンサーの広告代理店である博報堂(高梨沙羅選手の代理マネージメンも行っている)が窓口で代理契約をされているのかも知れません。本大会の商品価値から、他の類似大会と比較した業界の試算では、スポンサー料、放映権料を含めて約6億円前後の収入が主催者側に入っている、と推測されているようです。
此処で大事な事は、もし主催者の関東学連が広告代理店、スポンサー企業、テレビ放映権料、等を独自でネゴシエーションを行っているなら、相手の言いなりの料金でなくハードネゴシエーションを行う事がスポーツ・ビジネスの基本です。しかし、主催者側には、スポーツ・ビジネスの専門家がいるとは考えにくいです。
主催者の関東学連は、任意団体であり権利能力が無い団体とされていますので、このような権利ビジネスに於いて契約の主体となり得るのかどうか疑問に思うのは、私だけでしょうか。
指導的立場であるはずの省庁は、見て見ぬふりをしているのかも知れません。しかし、ここで忘れてならないのは、本大学箱根駅伝事業は、公道を使用し、警視庁、県警、交通機関を遮断、国民の税金を使っての公共事業の一つでもある事です。
読売新聞東京本社は、共催(主催)であり「箱根駅伝」を商標登録されている会社、企業であります。即ち、本箱根駅伝の商標は、各加盟大学と関東学連から読売新聞東京本社に帰属していると理解するのが自然でないかと思われます。よって、本来は、読売新聞東京本社の許可なくして、箱根駅伝名及び商標が使用できないことになっていると思われます。読者の皆様は、どう解釈されますか。
そうであるならば、主催者は、読売新聞東京本社と本商標権使用に関する何らかのネゴシエーションが存在し、各加盟大学は既に同意、或は承認している事になります。よって、関東学連は、莫大なスポンサー料から、商標権使用料として読売新聞東京本社に使用料が支払われるのは当然であると思われます。しかし、これでは主催団体が二つあり、形式的には、主催、共催の主従関係に見えるのですが実質は逆のように思えてなりません。現在の姿は、ダブルススタンダートとしての誤解を回避するための姿なのかも知れませんが、読者の皆さんにはどのように写りますか。(ご参考までに:共催の読売新聞社は、2004年からそれまでの後援から共催に変更されています)
私は、加盟大学が商標登録権を既に手放しているなら、主催:読売新聞東京本社、共催:関東学生陸上競技連盟が明快で責任の所在も明らかになるのでないかと思います。
そして、財務の可視化は、加盟大学の責任の元に主催者との間で約束事の一つとして取り交わし、公開の義務を明文化すればよいのでないでしょうか。これにより少なくとも財務に関する暗い噂も無くなると思います。
此のことは、学生達の自治団体として、純粋に行動、活動している各大学の学生諸氏がこの事をどう理解し、同意しているか非常に重要なファクターの一つとなると思われます。日本に於ける大学競技スポーツ界では、このような不透明なビジネス・アドミニストレーションがあらゆるところで見受けられるのが最大の特徴の様です。
私は、スポーツ・アドミニストレーターとして、主催者がこれほどのビジネスを行っていながら、本大会の商品であり最も大切にされるべき学生選手、バランテイアー学生達に対する、大会期間中の不慮の事故に対する補償が「自己負担と競技規則に明記されている」事が、本主催者達の真意が透けて見えて来るように思えてなりませんが私だけなのでしょうか。
このような補償は、学生選手及び学生バランテイアー、公共施設、等を使ってビジネスしている方々が真摯に、且つ適切に対応することが望ましいのではないのでしょうか。残念ながら、大学経営者、管理者からも、スポンサー関係者からも、何方も指摘し、改善の声が聞こえてこないのは、残念でなりません。もう少し教育的視点でのスポーツに豊かな見識を持たれている人達が、主催者の中に居て欲しいものです。
毎年主催者には、箱根駅伝による莫大な収入が入って来ている筈ですが、学生、大学に還元される事無く、収益をどのようにされているのでしょうか。これは、私の素朴な主催者、共催者への疑問です。
私が、学生選手、大学箱根駅伝に興味を持ち始めたころから関東学生陸上競技連盟については、金銭的な暗い噂を常に耳にしてきた記憶が蘇って参ります。大部分の学生選手達の純粋な情熱とは真逆な大人達の思惑と現実のなかで、日本の大学競技スポーツの将来に不安を抱いているのは私だけでしょうか。
文責:河田弘道
スポーツ・アドミニストレーター
スポーツ特使(Emissary of the SPORTS)
*次週NO.32では、大学側の経営者、教学管理者が箱根駅伝をどのような位置づけでテイーム編成、学生選手強化を行っているのかをご紹介します。これにより日本の大学競技スポーツが、どのようなご見識の経営者、大学教学責任者により教育されているかの現実を知る事になるかも知れません。