スポーツドクトリンKファイルNO.209特別寄稿  NCAA歴史に最大の変革期を迎えた

スポーツドクトリンKファイルNO.209特別寄稿 

NCAA歴史に最大の変革期を迎えた

無断転載禁止             毎月第二、第四木曜日 掲載予定

河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ・アドミニストレイションの基軸は「Justice正義&Fairness公正」

日本にスポーツ・アドミニストレイション論の必要性を紹介

日米で実践してきたスポーツ・アドミニストレイターの先駆者

(プロフィールは別途ご検索下さい)

お知らせ

 お休みを頂いています間に筆者は、長くご笑読頂いていますKファイルの文体、表現、等を含めまして、専門的にどのようなカテゴリーに属するのかご意見を伺いました。その専門家曰く、「河田のKファイルは、専門的にどのカテゴリーにも当てはまらず、全く新種の文体、表現、様式です」との事から、自らの判断で「スポーツドクトリン」と命名させて頂きました事をお知らせ致します。今後共ご笑読下されば幸いです。

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目次

筆者からの便り~

一大変革期を迎えたNCAA(全米大学競技スポーツ協会)

NCAA強豪校は常にトップを目指

  ■何故強豪校は強豪カンファレンスに行きたがる

  ■TV放映権と交渉権は何処に

  ■大学競技スポーツが増益を得る為のメカニズム

インターミッション

  ■NCAAとカンファレンスの関係

  ■NCAA、各カンファレンスでの目的と目標

スポーツ・アドミニストレイションが学問として確立されていない我が国

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2023年10月12日 公開

スポーツドクトリンKファイルNO.209:特別寄稿 

NCAA歴史に最大の変革期を迎えた

無断転載禁止

筆者からの便り~

猛暑、酷暑の長い夏が過ぎ窓を開けると突然晩秋の風を肌に感じる季節を迎えられているのではないでしょうか。これも地球に異変が起きている予兆です。

小生は、久しぶりに長い夏季休暇を頂いておりますが、もう10月も半ばを迎えております。滞在先は、先月から広葉樹の色が一斉に緑から黄色、モミジ色に変わり、現在は朝夕気温が下がり木々の葉っぱが風と共に舞い落ちてくる季節を迎えております。読者の皆様は、如何お過ごしでしょうか。短い秋が長く辛かった自然の摂理から解放され心身を癒されているのではないでしょうか。

秋が深まるにつけ米国の大学競技スポーツは、新学期と共に熱狂を帯びて参っております。先月KファイルNews Comment by Hiromichi Kawadaでは、“日本の大学競技スポーツの在り方を考えて下さい”とのテーマで、オレゴン大学のシーズンスポーツでありますフットボール競技をご紹介させて頂きました。読者の皆様は、ご笑読頂きましたか。本テーマを掲載致しましたのは、Kファイルの特別寄稿とTwitterFacebookでした。多くの読者の方々から日本の大学競技スポーツの規模、コンセプト、スポーツ文化の違いをまざまざと知ったとの読後感を頂いております。何か大事なことに気づいて下されば幸いです。

日本の大学教育機関では、日々部活の在り方、学生選手、指導者が安易に大学の広告塔として勧誘、採用、雇用している事から取り返しがつかない事件、事態が毎日のように社会問題となっています。これらもスポーツ・アドミニストレイションの欠落が此処に至っている事に何故気付こうとしないのでしょうか。

 

一大変革期を迎えたNCAA(全米大学競技スポーツ協会)

NCAA強豪校は常にトップを目指

NCAA(全米大学競技スポーツ協会、日本のマスメディア、体育、スポーツ関係機関では全米大学体育協会と今も尚平気で誤訳していますのでご注意)に加盟しています全米大学のI部校は、近年800校を超えました。(公式名称:National Collegiate Athletic Association)

オレゴン大学は、その中でパシフィック12のカンファレンス(Pacific 12 Conferences=略:PAC12、日本で云われるリーグに相当しますが、中身は全く異なる)に所属している1公立(州立)の大学です。

PAC12加盟校は、①ワシントン大(UW)、②ワシントン州立大(WSU)、③オレゴン大(UO)、④オレゴン州立大(OSU)、⑤カリフォルニア大バークレイ校(UCB)、⑥スタンフォード大(SU私立)、⑦カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)、⑧南カリフォルニア大(USC私立)、⑨アリゾナ大(UA)、⑩アリゾナ州立大(ASU)、⑪ユタ大(UU)、⑫コロラド大(UC) と以上12校により構成されています。

NCAAフットボール競技は、近年35のカンファレンス、バスケットボールは37のカンファレンスを翼下に従えての運営・管理がなされてきました。

しかし、この長い伝統ある歴史が昨年(2022年)から本年(2023年)夏にかけて、崩壊を余儀なくされている事件が起きています。ご紹介しましたPAC12カンファレンスに於いては、昨年後半にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、南カリフォルニア大学(USC)がPAC12カンファレンスから離脱して、BIG10カンファレンスに加盟2024年シーズンから新たなカンファレンスに所属してスタートする事を告知した次第です。

BIG10カンファレンスは、全米の中東部、中西部にまたがる強豪校がひしめく一大カンファレンスの1つでありますが、これに西部にまたがる一大カンファレンスになる事になりました。

現在の加盟校は、イリノイ大学(アーバナ・シャンペーン校)、ミネソタ大学(ツインシティー校)、ノースウェスタン大学、パデュー大学、ウィスコンシン大学(マディソン校)、インディアナ大学(ブルーミントン校)、アイオワ大学、オハイオ州立大学、ミシガン大学(アナーバー校)、ミシガン州立大学ペンシルベニア州立大学、ネブラスカ大学、メリーランド大学(カレッジパーク校)、ラトガース大学となっています。

BIG10カンファレンスは、EAST ConferenceとWEST Conferenceに分かれています。

その後本年2023年夏には、オレゴン大学(UO)、ワシントン大学(UW)、ワシントン州立大(WSU)がBIG10カンファレンスに加盟する決断をし、BIG10カンファレンスは、これを受け入れたのです。

これによりPAC12は、5校がカンファレンスから離脱を表明し、残り7校のは、現在他のカンファレンスに移行する準備をしているのです。

これにより、伝統あるPAC12カンファレンスでの公式シーズンは、2023年~2024年度の今季シーズンを持ってなくなる可能性を秘めた事態が生じている次第です。他のカンファレンスに於いてもここ近年大きな動きが毎年の様に行われていました。しかし、このPAC12の動きは、本件の変革の最後の大きな出来事と米国内で語られている一大事件なのです。

何故強豪校は強豪カンファレンスに行きたがる

■TV放映権と交渉権は何処に

この様な出来事は、スポーツ・ビジネスが円熟して来ることにより自然の摂理と申し上げた方が理解しやすいかと思われます。よってこの現象は、NCAAにおいても起きて来た現象なのです。その根拠は、フットボールのTV放映権に大きな要因がある事は関係者の一致した意見であります。

例えば、オレゴン大学(UO)のフットボール競技のシーズンは、8月下旬から12月上旬の間に12試合を組むことができます。その内の6ゲームは、ホームゲームとして興業が許されているのです。

興業の主な収入は、観客からのティケット収入とTV放映権であります

NCAAのTV放映権は、嘗てはNCAAが一括してTV各局と契約を結び加盟校に分配されていました。私の記憶が確かなら約40年前から放映権は、NCAAから各大学が奪い取り、移行したのです。よって近年は、各校のホームゲームの放映権は放映するTV局とホームゲーム校が直接的に交渉するスタイルになったのです。UO興行収入の内のティケット料金は、1試合1席平均約4000円と考えられますフットボール(ホームゲーム6試合)とバスケットボール(ホームゲーム22試合)のシーズン興行収入は、約50億円近いと言われています

■大学競技スポーツが増益を得る為のメカニズム

此の主たるメカニズムは、大学ティームのシーズン中のNCAAランキングが大変商品価値を高めるのです。もう1つが、ホームゲームの対戦カードが大きな商品価値を高める要因となるのです

その為には、カンファレンス外の強豪ティームとのカードを組み勝利する事が、PAC12カンファレンスを離脱する最大の趣旨と目的であると考えられます。

オレゴン大学は、このBIG10カンファレンス加盟の決断と共に現在のフットボ

ール専用スタジアム(ANZENT STADIUM)の収容人員は満席で70000人

です。しかし、この人員をもう10000人増設するプロゼクトを決断しまし

た。

80000人収容を予定し着工されます。これで、昨年2022年に世界陸上競技

大会をキャンパスでホストする為に建設した陸上競技専用スタジアム(名称:ヘ

イワードフィールドは、28000席)、新バスケットボール・アリーナ(15000

席)と新ベースボール・スタジアムを合わせると、全米一の大学競技スポーツ施

設が整いました。

今年のオレゴン大学フットボールティームのランキングは、2023年10月07日

現在NCAAの1部校800校中のベスト8位にランクされ、5勝0敗です

来年1月下旬のポストシーズンゲームのNCAA決勝トーナメント出場権を得

る為には、NCAAの最終ランキング4位内を確保しなければなりません。

今後も過酷な戦いが続く次第です。

 

インターミッション

今シーズンホームゲイム3試合、アウエイゲイム2試合を消化して現在5勝0敗です。今週末10月7日はBYでお休みウイークです。

コロラド大戦のホームゲームとアウエイでのスタンフォード大学戦をお楽しみください。

  1. Oregon vs Colorado U. Oregon Home Game

https://www.youtube.com/watch?v=J2edOL6OjO0

  1. Stanford U. vs U. Oregon UO Away Game

https://www.youtube.com/watch?v=3YXHtR9VFhE

 

NCAAとカンファレンスの関係

NCAA(全米大学競技スポーツ協会)は、今から約100年前に全米大学競技スポーツ協会として設立されました。当時は、約800校が既に加盟して競技スポーツの経営、運営、管理がなされていたのです。現在のNCAAの加盟校は、1281校となっています。その内の1部校は、800校です

1部校は、近年35(フットボール)のカンファレンス、37(バスケットボール)に区分さています。NCAAの理念は、「文武両道、JustiseとFairness」を揺るぎない柱にしている事は言うまでもありませんNCAAは、1970年前半に米国議会で成立しました男女平等の原則から“タイトル・ナイン、Title 9”が施行されたことからNCAAに於いてもそれまで女子競技スポーツの加盟を認めていませんでしたが、この新制度が施行されてから女子学生選手のNCAA加盟に伴い、全ての約束事が男子と同じとされました。

女子学生アスリートに取っての大きな変革は、それまで女子学生にはアカデミックスカラシップ(学業優秀な学生に与えられる特別奨学金制度)以外に与えられていなかった、アスレティックスカラシップ(競技スポーツに優秀な学生選手に与えられる特別奨学金制度)が、男子学生選手同様に与えられるようになりました。

女子学生選手の競技種目は、男子の競技種目同様にすべての競技スポーツがNCAAに加盟するのでなく、各大学内で限定された競技スポーツがNCAAの審査を受けた後、登録許可を得るシステムになっています。女子の競技スポーツ種目の中でも特に女子柔道、女子レスリングは、NCAAの競技種目からは排除されています。その根拠は、昔からスポーツ医科学の観点から大統領スポーツ諮問委員会に於いて「女性の心身への負担と障害の観点」から今日も尚認められていない競技種目であります。

1980年代迄は、各校のNCAAに加盟できる競技スポーツ種目は、約16~19種目でありましたが、近年のルール改正では男女とも1部校、2部校、3部校共に決められた上限の種目への登録の審査を受けて、合格すればNCAAの競技スポーツへ大学代表、各カンファレンス代表として参加できることになっています。

NCAA及び各カンファレンスは、各大学のNCAAへの代表者及び所属カンファレンスへの代表者により構成されています。そしてNCAAは、NCAAルールBookを運営、管理する為の特別査察ティームが常時併設されており、ルール違反を起こす大学、学生選手に対しては厳しい求刑が求められ、素早い判決が行われるところに特徴があります。これらは、日本の大学競技組織、団体、大学教育機関に欠落しているスポーツ・アドミニストレイションの問題です。

また、日本の大学競技スポーツが加盟するリーグは、各競技スポーツが異なるリーグを形成しています。しかしNCAAでは、各大学が所属する各カンファレンスには各大学のNCAAに登録した全ての男女の競技スポーツが同じカンファレンスに所属する事になっている事も日本の大学リーグとは根本的に異なるのです。NCAA・ルールBookは、加盟大学のフェアネス(公正)と共存共栄を遵守する為の強力なバイブルなのです。

NCAA、各カンファレンスでの目的と目標

NCAA及び各カンファレンスに参加、所属する各大学、個人、ティームの最終目標は、文武両道です。大学競技スポーツは、NCAAのルールBookに従い、個人及び大学の代表としてカンファレンスで勝利し、NCAAで勝利し、最終的にはNCAAチャンピオンになる事を競技スポーツの目的、目標としている事に揺るぎはありません。

NCAAは、男女競技種目にNCAAチャンピオンの称号をティーム競技スポーツ、個人競技スポーツに授与されます。また、近年のNCAAフットボールの優勝、準優勝校には、両校に10億円が主催者から寄贈されると言われています。

この様に巨大化なったNCAAの強豪校のスポーツ・ビジネス事情からもこの度のドラスティックなカンファレンスの統廃合が白昼堂々と行われる米国大学競技スポーツの現実をご紹介させて頂いています。

■スポーツ・アドミニストレイションが学問として確立されていない我が国

読者の皆様には、如何に映りましたでしょうか。日本の大学は、課外活動の一環として部活と称されるコンセプトの下で競技スポーツが行われているが何かNCAAが別世界の様に思えてならないのではないでしょうか此のことは、日本のマスメディア、文科省庁、日本スポーツ協会、関連団体が今も尚NCAAを全米大学競技スポーツ協会と呼ばず、“全米大学体育協会”と呼ばせている所に問題の本質があるのだと思います。今だに伝統的な体育利権と体育、スポーツ、競技、リクリエイションを混同して全て体育だという戦前、戦後の教育文化の名残りなのかも知れません。

いつ迄経っても、関係者達は、体育の世界に競技スポーツを閉じ込めて置こうとする鎖国文化の証なのかも知れません。

これらは、やはりスポーツ・アドミニストレイションが今日も尚文科省スポーツ庁、大学教育機関に学問として位置付けられていない所以が此処にあると確信します。それにより、理論、実践を会得した真のスポーツ・アドミニストレイターが居ないのが現実です。日本に於いては、小職が2005年から中央大学総合政策学部に於いて、初めて日本にはスポーツ・アドミニストレイション論が紹介、位置付けられました。これは、筆者の長年の日米に於ける競技スポーツの実践でのアドミニストレイションを通して確信した事から、授業、ゼミを開講紹介したのが我が国での最初のスポーツ・アドミニストレイション論であり、スポーツ・アドミニストレイターであった事をご紹介させて頂きました。若い世代の情熱ある関係者から日本に必要なスポーツ・アドミニストレイターが養成され時代のリーダーにならんことを切に願うしだいです

小職が大学の業務を退きその後でしたでしょうか、あるお方が文科省スポーツ庁に小生のスポーツ・アドミニストレイション論とスポーツ・アドミニストレイターの名称のみをコピーされ持ち込まれたようです。現在は、文科省庁から各大学にスポーツ・アドミニストレイターの必要性を伝え、肩書だけを与えている次第です。これでは、フェイク住職に袈裟を着せたのと同様な事を恥も外聞もなくやらせている事を読者の皆様に紙面を持ってお伝えいたします。

このような日本政府、省庁では、お隣の国の偽り製品の批判など出来ないのではないのでしょうか。どうか皆様の身近な大学にフェイクのスポーツ・アドミニストレイターがいらっしゃるので、学生達には受け売りをしたり形だけの肩書で指導をしたりしないようお伝えいただければ幸いです。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the Sports)

紹介:G-File(長嶋茂雄と黒衣の参謀)文芸春秋社 著 武田頼政

   スポーツドクトリンKファイル、KファイルNews Comment by Hiromichi

Kawada

お知らせ:スポーツドクトリンKファイルNO.209は、如何でしたでしょうか。

   日本の大学競技スポーツ界には、黒船の到来が必要ですか。

   この度は、本原稿出稿直前に筆者の不注意により事故が発生1日公開が

遅延しました事をお詫び申し上げます