KファイルNO.201:WBC設立の影でうごめく複数の球団所有企業(Ⅱ)

KファイルNO.201:WBC設立の影でうごめく複数の球団所有企業(Ⅱ)

無断転載禁止              毎月第二、第四木曜日 掲載

スポーツ・アドミニストレイター

日本に初めてスポーツ・アドミニストレイション論を導入

日米で実践スポーツ・アドミニストレイターの先駆者

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米国の読者からの便りをご紹介~

To Mr. Kawada

こんにちは、私は、今年のWBCは米国でも以前に比べて興味を持った人が多くいたと思います。その理由は、過去の大会に比べてメジャーリーグ所属のスター選手が多く参加した事だと思います。それはまた、米国のテレビ局 (フォックスFOXおよび MLB ネットワークTV) で宣伝および放送された事でした。

TVによる宣伝、放送は、多くのメジャーリーグのスター選手に加え、スーパースターの大谷翔平選手の商品価値によるところが大だったと理解しています。NFLNBANCAA(全米大学競技スポーツ協会)主催のメジャーなカレッジ フットボールやバスケットボールのようなトップレベルの人気ではありません。 しかし、今年は間違いなくセカンドレベルのイベントでした。読者より(米国人スポーツ関連弁護士)

Hi Mr. Kawada

今年のワールド ベースボール クラシック(WBC)は、これまでにないほど多くのメディアで認知されました。 それをカバーしたスポーツライターは、プレーの質とプレーヤーの熱意について非常に称賛していました. ほとんどの記事は、選手たちが本当にWBC の一員であることを楽しんでいるように見えることを強調していました。 それでも、WBC が本当にアメリカの野球ファンの注目を集めているかどうかはわかりません。多分米国でのWBCへの評価と日本の熱狂的なファンの評価とは、異なるものだと思います。米国国民社会は、MLBを強くリスペクトして期待しているからでしょう。此れも文化と歴史の相違かもしれません。

私は、あなたが日本でスポーツ界の「ご意見番(wise counselor)」として活躍されている事を米国の大手メディアの担当者からいつも聞いています。多分あなたに異議を唱えられるような専門家はいないと思います。また、あなたがNCAAで活躍されていたころを懐かしく思い出しています。何か役立つことがあればコンタクトください。即対応します。元気であることを願っています。次は、いつ米国を訪れますか。

真の友人より(NCAA、元大学競技スポーツ・アドミニストレイター、ライバル校)

Hello Mr. Kawada

こんにちは、アメリカの WBC はビジネスなので、最終段階、つまりアメリカ対ベネズエラ、そして日本に到達するまで、ファンは他の国のファンほど情熱的ではありませんでした。 アメリカ側(主催者)にとっては、それは単なるビジネスです。米国以外の他の国、ファン、企業は、トーナメントの開始時からはるかに情熱的です。主催者は、WBCによりジャパンマネーを期待して設立しましたので、日本の国民が熱狂的に大騒ぎしている情報は既に把握しています。米国以外の参加国は、WBCの開催により各国独自のスポンサー企業、主催者からの分配金が収入源となっているので、問題を提起する人はいないと思います。

相変わらず、MLB加盟の各球団オーナーは、WBC開催による所属球団選手へのリスクの保証問題で今後も一層難しい局面を迎えるでしょう。そして、時期的(3月後半から4月上旬)には、米国ではご承知のNCAA(全米大学競技スポーツ協会)主催の全米バスケットボールの各カンファレンス代表校、68校による決勝トーナメント(通称March madness)が全米各地で開催されています。他の競技スポーツ開催のタイミングは、最も避けなければならない季節である事です。WBCは、今後日本で開催されることが一番適切でないかと思われます。主催者は、最終的にJapan Moneyが入ればどこで開催されても文句ないと思います。これが私のWBCへの評価と意見です。    

読者(MLB選手代理人会社・社長)

Hi My friend

こんにちは、日本は蒸し暑くなりましたか。お元気ですか? トレバー・バウアー投手(横浜ベイスター)が日本でどうなるか興味があります。 彼の態度では、日本で人気が出ないのではないかと思います。

私は、あなたが毎月公開されているKファイルのファンです。記事は、大変貴重なソースです。我が社には、翻訳セクションが完備しているのでいつもKファイルが日本語なので翻訳のセクションからデスクに届くのを楽しみに拝読しています。他社の友人のColumnistも同じようにして読んでいます。あなたの事は、多くの米国のスポーツColumnistは知っています。

私の会社内では、 WBC に付いて詳しく知っている人がいるか?お恥ずかしいですが疑わしいです。おそらく誰も知らないと思います。ご存じの通り、私も長年オリンピック、MLBNFLNBANCAAを取材担当していますが、WBCに付いて原稿、記事を書いた記憶がないのです。其れほど、米国のスポーツ・メディアも一般メディアも興味を持って対応していないのは、間違いありません。私は、WBCの主催者とこれをオペレイションしている人達、組織は、米国以外の国(例えば日本)でやっているのでないかとも思わせる程、情報は皆無に等しいです。

多分あなたの方が、全ての重要な情報を把握しているのではないでしょうか。米国でこの時期(3月中旬から4月上旬)に国際的なイベントを行う発想は常識では考えられないでしょう。WBCの興行の成否に関わらず、主催者は、日本の企業、スポンサーが補填してくれる約束になっているようなので、主催者も名義貸しをしているのでないかと疑いたくなります。あなたの意見を聞かせて下さい。

     信頼する友人より(米国大手新聞社、スポーツ担当Columnist)

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目次

KファイルNO.201:WBC設立の影でうごめく複数の球団所有企業(Ⅱ)

オリンピックとWBCの歩みと利権争い

先ず初めに

1.世界の野球を統括する組織・団体

  ■概要

2.IBAFの貧困体質がWBCを生む要因に

3.国際野球連盟は国際野球ソフトボール連盟に改名

まとめ

  ■2023年3月に第5回WBC開催

  ■国際野球連盟が貧弱組織と言われる所以

筆者の私見

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2023年5月25日(木)                     公開

KファイルNO.201:WBC設立の影でうごめく複数の球団所有企業(Ⅱ)

無断転載禁止

オリンピックとWBCの歩みと利権争い                       

先ず初めに

 この度のKファイルNO.201号は、200号に続くWBCに関する第二弾とさせて頂きます。本号をよく理解して頂かなければ次回202号のファンを熱狂させた第五回WBCのシナリオを理解出来なくなる可能性があるかと思われます。

オリンピック大会に於いての野球とワールド・ベースボール・クラシック(略称:WBCWorld Baseball Classic)は、リンクしているようでリンクしていない関係にあると表現せざるをえません。それは、両大会の設立の人間関係及び組織・団体の利害と利権に伴う構造的な問題がより一層事の次第を複雑化し、今日まで引きづって来たと申し上げられると思われます。

Kファイル読者の皆様は、野球に関する知識が大変豊富な方々が大半であるとお察し致しております。しかし、野球に関する国際組織、団体とその関係性に付いては、日本のマスメディアは何故か情報を殆ど一般に公開されないので国民、社会ではあまり知られていません。これはある意味において、ファンは、誰が出場しているか、勝ったか、負けたか、等々の表面上の出来事しか興味を持たない国民が大多数なのがマスメディアも報道する価値が無いと見くびっているのかも知れません。或いは、忖度からか?

そこで、この機会に国際組織・団体と日本国内における関連組織・団体の概要をご紹介致しますので、是非知識だけでも持って頂ければ幸いです。これから述べます五輪野球、WBCは、複雑怪奇な人間関係と組織の構造を有していますのでWBCを解読して頂くのにお役に立つと思われます。

注:本掲載内容は、基本的に筆者の専門知識、経験、記憶を基に作成致しました。よって、時系列、事実と異なる箇所があるかもしれません事を最初に申し述べさせて頂きます。筆者の主観に関しては、「筆者の私見」とさせて頂きま す。読者の皆様には、出来る限り分かりやすく解説、お伝え出来ますよう努力させて頂きます。

 

1.世界の野球を統括する組織・団体

■概要

読者の皆様は、既にご承知の通りオリンピック大会は国際オリンピック委員会(略称:IOC)によって統括運営、管理がなされています。そして、IOCは、翼下に各国の国内オリンピック委員会(略称:NOC、National Olympic Committee)を従わせ、IOCのルールに基づいた業務提携が成されています。

例えば、日本国内では日本オリンピック委員会(略称:JOC、Japan Olympic Committee)がこれに当たり、IOCの下請け団体なのです。

オリンピック大会に於ける野球競技は、1992年のバルセロナ・オリンピック競技大会から正式競技として認定されました。その後、オリンピック及び各国際大会には、プロ選手の出場が認められました。

国際野球連盟(略称:IBAF, International Baseball Federation、Aはアマチュアと理解しています)は、野球の国際大会のワールドカップインターコンチネンタルカップなどを主催・運営する国際組織として、1938年に設立され、スイスのローザンヌに本部を設置しました。

IBAFは、本名称に至るに当たりまして利害、利権のポリティカルゲームに起因する主導権争いから何度も分裂を繰り返し其の度に組織・団体の改名を余儀なくされ1999年に本名称(IBAF)に到達したのです

そして現在は、124の国と地域が加盟している(2014年4月現在のIBAF発表資料)組織・団体で、世界の野球界の頂点に位置し統括・管理を行っています。よって、IBAFは、野球に関する国際大会には欠かせない組織・団体であります。(IBAFの歴史資料から引用)

例えば、日本国内では、公益財団法人日本野球連盟(略称:JABA、Japan Amateur Baseball Association)はIBAFの傘下にあり、国内に置いては唯一の野球に関する日本を代表する組織・団体であります。この組織・団体は、伝統的にアマチュア選手を主体とした野球組織・団体を指しています

読者の皆様は、アマチュアとプロフェッショナルの違いを何となくご存じであると思いますが、此処で明確な定義を理解して於かれると今後役立つと思われます。

その違いと定義は、「プロフェッショナルとは、個々の選手が自身の身体能力とその競技スポーツ種目の技術を最大限発揮して、相手ティーム及び個々の選手が対戦する相手とパフォーマンスを持って競い合い、それを観客が有料で観戦する事で興行収入を得る。これにより個々の選手は、生活の糧を得る」、此れがプロフェッショナルなのです。片やアマチュアとは「競技スポーツを生活の糧としていない選手」の事なのです

日本は、1972年の第20回ワールドカップ出場の為に当時の国際アマチュア野球連盟(略称:FIBA, Federation International Baseball Amateur)に加盟しました。

 

2.IBAFの貧困体質がWBCを生む要因に

 IBAFは、2011年1月にIOCの野球競技除外が決定したことにより深刻な財政難に陥りました。これにより其れ迄IBAFは、頑なにMLBからの資金援助を拒んで参っていましたが、メジャーリーグベースボールMLB)から資金援助を受け入れることになったのです。それまでMLBから手を差し伸べられていましたが、IBAFが其れを拒んできた理由は、MLBから支援を受け入れる条件が付いていた事にあったのです。

これで、読者の皆様はIBAFの最大の問題は、財務基盤が貧弱であった事を理解して頂けるかと思われます。その根拠は、IBAFへの加盟国は数字的には多く加盟していても実質的にその加盟国内での野球競技がアクティブであるかと申し上げると現実は殆どの国で競技スポーツとしての大会、等の実態が無く、それに伴い財政的な確保が困難な競技団体であった事です。

IBAFは、国際競技団体に於いて野球界の唯一の国際競技団体であり、IOCの加盟競技団体である事からも、財政難であってもプライドだけは高く、云わば、利権屋さん達の集団に他ならなかったと申し上げても過言でありません。

IBAFは、権利の中でも彼らが手放さなかったのが「世界野球選手権(World Baseball Championship)」の看板だったのです。しかし、この権利は、オリンピック大会に於ける野球競技が、1992年のバルセロナ・オリンピック競技大会から正式競技として認定されました時に既にオリンピック大会での野球種目は、世界一を決める競技大会であるとIOCIBAFの間で暗黙の理解と認識の上での許認可であった様子がその後の混乱を招いた可能性は否定できなくなったのです

この根拠には、IBAFの傘下にある各国の統括競技団体(略称:NGB、National Governing Body)、日本国内では日本アマチュア野球連盟(JABA)がアマチュア団体であり、それまで国際競技への参加は全てこのJABAが代表として選手、スタッフ等は、アマチュアの資格を有する人間しか招聘できず、プロの選手、関係者とは一線を画して参っていたのでした。

これによりIBAFが持つ「世界野球選手権」の看板は、他のどの組織・団体もが触れる事の出来ない、領域であった事を理解して頂けると思われます。

例えば、日本アマチュア野球連盟は、IOC主催のオリンピック大会には、選手は大学生、社会人から選抜し、監督以下全スタッフはその関係機関、企業、大学から選抜された方々がスタッフとして送られていたのです

しかし、このような時代は、IOC五輪憲章のアマチュア文言の削除を契機に野球の国際大会にもプロ選手の参加が始まり今日を迎えている事はご承知の通りです。IBAFMLBからの金銭的な支援を受ける事は、彼らの条件を吞む事を意味していたのです。このことが、本Kファイルで取り上げています「WBC」への動きが加速して行く事になった大きな要因の一つと言えると思います。

 近年(2011年~2013年)、IBAF国際野球連盟)は、IOCからの除外競技種目に指定されたその理由(野球は女子に同種目が無いとの指摘)を解消する為にも野球とソフトボールを単一競技として五輪復帰を目指すために国際ソフトボール連盟と連携することを承認したのです

3.国際野球連盟は国際野球ソフトボール  連盟に改名

IBAFは、2013年に国際ソフトボール連盟(略称:ISF、International Softball Federation)と統合して世界野球ソフトボール連盟(略称:WBSC、World Baseball Softball Confederation)に改名されました事をご紹介します

これによりIBAFワールドカップは廃止となり、代わりにワールド・ベースボール・クラシックWBC)が野球世界一を決める世界選手権として認定。またワールドカップの代替大会として、WBC中間年にあたる2015年にプレミア12が4年に1度開催されることになりました。しかし、これで全てそれまで長きに渡っての「矛盾と問題」が解消された訳ではありません。

まとめ

 本まとめは、スポーツ・アドミニストレイターの視点でまとめさせていただきました事をご理解下されば幸いです。

■2023年3月に第5回WBC開催

読者の皆様は、2023年のWBCは今日のMLB界に於いてスーパースターとなった「大谷翔平選手」が、日本代表選手として出場した事が主たる要因で、嘗てない熱狂した興奮が日本全国を蔽った余韻に今も慕っている様子がうかがえます。

ワールド・ベースボール・クラシックWBC)は、メジャーリーグ・ベースボール(MLB)機構とMLB選手会(MLBPA)により立ち上げられたワールド・ベースボール・クラシック・インク(WBCI、会社組織)が、主催、運営する大会です

そして、これを世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が、野球の国別抗戦として公認し、且つ、世界一決定戦であるとお墨付きを与えた大会なのです

即ち、WBCは、他の競技スポーツに於ける世界選手権と同等である事を意味している次第です

ここで読者の皆様は、本Kファイルに明記しましたWBSCの前進のIBAF(国際アマチュア野球連盟)時にはオリンピック野球は世界一決定戦と、あそこでも、ここでも世界一決定戦と安売りしている事に気付かれましたでしょうか。

そして2013年にIBAFは、オリンピックから野球が締め出された後、IOCの締め出し理由の一つであった「野球は女子の種目が無い」との指摘から急遽国際ソフトボール連盟と合体して「WBSC」を結成して、再度IBAFからWBSCに改名した事はつい先日の様に思えます。

最終的に、国際アマチュア野球連盟(IBAF)当時から今日の国際野球ソフトボール連盟(WBSC)は、金欠病からMLB機構の軍門に下ったという事です。

このことは、WBSCはMLB機構側の条件を飲んだことを意味します。

MLB機構とMLBPA(選手会)は、MLBI(メジャーリーグベースボール・Inc.)を運営、管理会社として設立し2006年より既に日本側のファイナンシャル・サポートを受けてWBCWorld Baseball Classic)の名称で事業を行っていました

国際野球連盟が貧弱組織と言われる所以

 このように競技団体名がこれ程繰り返し改名された競技団体は、国際的にも過去に例を見ない珍しいケースと思われます。その大きな要因の一つは、野球が米国を発祥地とした競技スポーツ種目でありながら、①世界各国に於いてポピュラーなスポーツ、競技スポーツではなかった事、②これは今日もなお競技人口の少ないスポーツ種目である事、③そして特定の国に於いてのみ競技スポーツとして事業(ビジネス)が成り立っている事、の現実が此処に在ることです

この根本的な問題の1つ目は、国際野球連盟IBAF)内の権力闘争により世界各国での野球の普及活動を怠った事が最大の原因だと思われます。それには、複数の要素がリンクしていると思われます。2つ目は、MLB機構とIBAFの理念の相違が問題です

MLB機構は、巨大な組織でプロフェッショナルな理念の下でビジネスが展開されている一方、IBAFは、長年IOC五輪憲章の下、頑なにアマチュアイズムを崩さず権力闘争に明け暮れていたのです。よって、加盟国数は、124カ国(2014年度報告)と明記されて居ますが、実態は20カ国程度で、WBC予選に参戦できるレベルは16カ国が正直な競技レベルなのです。このことからも他の球技スポーツと比較しましても五輪出場する為の正式競技種目として認定を受けるには、非情に無理がある事を読者の皆様に理解して頂けるのではないでしょうか。

五輪開催地に於いて、野球が盛んに競技スポーツとして行われている国以外での認定は、非情に難しいのです。2024年のフランス、パリ五輪も再度野球は、種目から外されています。近年の競技スポーツは、五輪競技種目に選ばれて居なければスポンサー(財政的な支援団体、企業)を付ける事が困難に近いのが現実です。よって国際野球ソフトボール連盟(IBSC)は、財政的な問題に直面しているのは今日も昔も変わらないのです。ここでまたIBAFは、国際ソフトボール連盟なる負担となる組織・団体を背負い込むことに相成ったのです。

又、今日日本国内に於いて、女子の野球が盛んになり始めて要因は、IOCの「野球に女子が参加していない」と指摘した事がその大きな要因となり、大人達が先を見越した新たなる利権構築をしようとする姿なのかも知れません。

私の私見

 MLB機構は、30球団の経営者との共同事業体を形成している事から、絶えず各球団の利益と社会(ファン)へのサービスを最優先する事が求められています。そこで、本組織を形成する真の「コア」は、選手であり優秀で商品価値の高い選手を獲得する事が重要な課題なのです。

この重要な課題を克服ためには、米国内の野球の普及活動のみならず、中南米諸国に手を広げた一大ベースボール・マーケットを展開して来たのです。その成果と結果として、今日MLBは、これら中南米諸国(例:メキシコ、パナマコスタリカ、ドミニカ、ベネゼイラ、キュウーバ、等々)を既にファーム化してしまったのです。MLBの次なるファーム化は、極東アジア(日本、韓国、中国、台湾)とオーストラリアの市場の選手をMLBの選手とビジネスの供給源と位置付けているのです。

MLB機構とMLBPA(選手会)にとっては、オリンピックとは異なる野球の世界戦の打診を日本から受けたとの情報を当時筆者の耳にも入って来ていた次第です。これが事実であったなら、MLB機構に取っては、「飛んで火に入る夏の虫、(Summer insects flying to the fire)」であっても何の不思議もありませんでした。加えて、この取引(Deal)が日本側からとするとなおさら、金銭的なサポートまで加味、沿えて提案されては断る必要など何処にも見当たらなかった、と思われます。当時MLB機構は、MLBPA選手会の強い反対を受けて難儀していたと聞き及んでいましたが、此れも日本側の投資により解決したのかも知れません。これらの問題は、次回ご説明しますが不透明な収入源の分配に疑念を抱かせているのかも知れません。

既にWBCの大会名は、World Baseball Classicとして商標登録をしています。しかし、WBCI(運営、管理会社)側の本音は、設立当時「Classic」の「C」は本来選手権を意味する「Championship」としたかったが、当時IBAFが頑なにMLBの財政支援を拒んでいて、本件の「C」の問題が解決できず、このClassicはChampionshipの仮の姿であろうことは容易に推察できるのです。

米国の競技スポーツ界に於けるクラッシック(Classic)の意味は、単なる招待試合を意味しています。果たしていつどのタイミングで、MLBI(WBCの実質的な運営、管理会社)は、「World Baseball Championship」と商標登録を改名するのか楽しみにしている次第です。

後は、WBC設置当初、日本の財政的スポンサー球団、企業の思惑通りにWBCの興行が毎年東京ドームと福岡ドームでいつから開催できるように成るか、それともMLBIが第五回大会の盛況を評価して、手放さない決断をしたかどうか、此れも広告代理店と米国のテレビ局の利権力次第であるようです。

 

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of Sports)

紹介:G-File「長嶋茂雄と黒衣の参謀」発行文藝春秋社 著 武田頼政

   Kファイル、KファイルNews Comment by Hiromichi Kawada

お知らせ:読者の皆様は、NO.201の読後感は如何でしたでしょうか。少しキーが高かったでしょうか。次回は、皆様にとって日本国内のWBCの話題に第五回大会の編成に付いての話題を予定しています。ご期待ください。