KファイルNO.154: 東京五輪招致活動は偽りのプレゼンに始まった

KファイルNO.154: 東京五輪招致活動は偽りのプレゼンに始まった

無断転載禁止              毎月第二、第四木曜日掲載予定

読者からの便り

私は、いつも河田さんのスポーツアドミニストレイターとしての貴重な知的財産を無料で社会還元して頂いている事に心より感謝致します。

河田さんが書いておられるように、東京五輪招致委員会の二つの組織の大部分の方々は、会議で「異議なし」と発するだけの何も知らない人と、既に忖度を受けていた人達の寄せ集めなので口を閉じている人なのだと思います。そもそもこの評議委員会と理事会との関係は、可笑しな公益財団法人なのです。通常、理事会は実務の執行機関で、その決定は評議委員会の承認を受けて正式決定になりますから、評議会は理事会が正しく活動しているかチェックする上位機関のはずです。しかし、招致委員会の評議会議長は何と、理事会の長その人ではありませんか! 

実際に物事を動かしている人たちは裏にいて、これら表の組織はおっしゃっているように形式的なものになっていることを示しているようです。議事に参加するメンバーたちにも問題意識はなく、メンバーになって肩書が付き、ハクが付いたくらいか、ボスのおこぼれを待っている人達だと思います。内部から正しいことを言うとか改革するなどとてもとてもという感じだったのだと思います。我が国では、他の組織でもそうですが、大半の委員、役員はその体制のイエスマンしか推薦、任命しないので内からの改革は難しいです。この国の致命的な組織構造と体質がここにあるのだと思います。これは、近年第三者委員会を作る時のコンセプトも同じだと思います。河田さんにお願いがあります。このKファイルは、これから未来の日本のスポーツ界、教育界、社会の指針となる貴重な資料です。KファイルをGfile同様にドキュメント書籍にして頂けませんか。私の信頼できる出版社(教科書も扱う)の経営者をご紹介致したいのですが、ご一考下さい。 

読者より (元省庁の重鎮)

 

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筆者からのお知らせ

筆者は、本招致活動に関係を致していない事を先ずご承知おきください。そこで本件に関しましては、スポーツ・アドミニストレイターとしてこれまでの類似した巨大大会に関係した経験、体験、等を加味して論じさせて頂きます。

このことから一般の読者の方々とは少し異なる視点になるかも知れません事をご理解ください。読者の皆様には、複雑怪奇になった問題点、人間模様、事の真相、等をできる限り判りやすく、シンプルに述べさせていただき話題と理解を共有できましたら幸いです。また、Kファイルの過去の掲載記事をリマインドして頂くために添付させて頂きますので熟読して頂ければ、よりスムーズに理解頂けるかと思います。

目次

KファイルNO.154: 東京五輪招致活動は偽りのプレゼンに始まった

東京五輪招致の失敗と成功の舞台裏

1.2016年東京五輪招致敗戦と無責任な委員達

      ■2016東京五輪招致経過と結果

         莫大な招致費用の証拠を全て隠蔽破棄

    2016年東京五輪招致委員会 役員名簿一覧

2.2020年東京五輪招致活動に再度挑む

     ■2020年東京五輪招致創世記

     ■2020東京五輪招致委員会は二派閥により構成

     2020年東京五輪招致委員会理事会名簿

     2020年東京五輪招致委員会評議会名簿

    ■実戦部隊は何処に

 まとめ

 

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2021年3月25日      公開

KファイルNO.154: 東京五輪招致活動は偽りのプレゼンに始まった

東京五輪招致の失敗と成功の舞台裏

1.2016年東京五輪招致敗戦と無責任な委員達

 

2016東京五輪招致経過と結果

2016年東京五輪招致を目的に、当時の東京都知事石原慎太郎氏を会長とした、特定非営利活動法人東京オリンピックパラリンピック招致委員会は、2007年3月に設置されました。同委員会には、最高顧問として当時の内閣総理大臣福田康夫首相、特別顧問に全大臣、顧問に全副大臣が就任したのです。本招致委員会のスタートは、国会議員、都議会議員等、オリッピック利権に群がる政治家の集団が招致委員会と称しても過言でなかったのが特徴のようでした。しかし、2009年のIOC総会で2016年夏季五輪開催地は、リオデジャネイロ市(ブラジル)に決定したのでした。結果として、大勢の政治家、役人が大挙したにも関わらずどうなるものでなかった事が理解されたのではないでしょうか。16東京五輪招致委員会は、2010年5月31日に河野一郎事務総長(現2020東京五輪組織員会副会長)以下招致委員会全理事が退任。7月1日に東京五輪招致委員会は、「国際スポーツ東京委員会」に改称して、事実上の敗北を宣言したのです。

 

2016東京五輪招致に関する金銭疑惑発生

莫大な招致費用の証拠を全て隠蔽破棄

本招致活動に関する金銭疑惑は、当時も既に国内に於いて次から次と浮上して来たのは読者の皆様も未だ記憶に新しいのではないでしょうか

この問題は、先ず東京都議会議員らから、余りにも高額な支出について招致委員会への喚問に端を発したのです。16年東京五輪招致総経費は、約150億円(内東京都分担金18億円)であったと報道されています。しかし、当時の招致本部の担当部長は、本招致活動に関して制作費用、制作会社、また、プレゼンテイションに要した莫大な費用が支払われている事に対する明細すら提示回答出来なかったのです。

此処で出て来たのは、東京都が負担した2009年度のIOC委員へのプレゼンテイション費用の総額2億475万円、英国の映像制作会社に依頼した映像製作費が、何と10分間の映像が5億円費やしている事です。招致委員会の理事、評議員は、実務に不向きなお飾り的なメンバーで、専門家を選考配置していなかったからなのか、広告代理店の言いなりの値が付いたと評されても仕方のないことでした。都民、国民の血税がこのように使用されても、誰もそれを止めなかった事は大罪と言えると思います。

2012年招致委員会の報告書は、報道陣に公開されたようですが、調査報告によりますと、なんと東京都知事石原慎太郎氏)は、16年度招致活動の8事業支出約18億円分の経理書類を保管期間であったにも関わらず、紛失したとして保存していなかったのです

此れらは、またしても「98年長野冬季五輪後の経理の書類を焼却して何もございません」と言っているのと同類の行為と体質と言えます。全て我が国、社会の無責任制度がその根幹をなしており、自由民主主義国家と言い難い体質そのものの様に思えます。今日も未だ改善されない最大の問題は、我が国の制度にあり、その制度を逆利用しているのでないかと筆者は思う次第です。

16年東京招致に関する経理の資料は、保管期限が義務付けられているにも関わらず、このような体たらくの委員会、役人達の責任感とモラルは計り知れず犯罪者の行為なのです。しかし、何の責任も問われず今日まで誰もが結論を求めない不思議な社会と公共組織、団体である事も確かなようです。このような伝統的な手法は、2020東京五輪招致委員会に引き継がれ、そして2020東京五輪組織委員会へと継承しているのです。此処で初めて出て来た民間企業は、「株式会社電通」という名の会社名でした。

 

2016東京五輪招致委員会 役員名簿一覧

会長 :都知事 石原慎太郎  

副会長:JOC会長 竹田恆和、副知事 横山洋吉、谷川健次、佐藤広 

理事:都招致本部長 熊野順祥、

荒川満、  建築家 安藤忠雄、  猪谷千春岡野俊一郎、林務、遅塚研一、 福田富昭小谷実可子、市原則之、荒木田裕子 

事務総長: 河野一郎 

日体協会長: 森喜朗 

経団連会長: 御手洗冨士夫 

日商会頭: 山口信夫、 岡村正 

都議会議員: 山﨑孝明、 高島直樹 

JPC委員長 :北郷勲夫 

オリンピアン:室伏広治

監事 :JOC監事 岩楯昭一、

都財務局長 谷川健次、 村山寛司 

以上が16年東京五輪招致委員会理事並びに役員です。

読者の皆さんは、是非このメンバーをご記憶して於いて下さい。これから2020年五輪招致委員会、20年東京五輪組織委員会理事、役員名簿をご紹介します。最終的に何方が本招致結果に対して神輿に鎮座し、そしてその担ぎ手は誰なのかをご想像頂けるかもしれません。そして、ポリテイカル・ビジネスゲームの勝ち組、負け組を理解され、読者のパズルの空欄を埋めることになるかも知れません。汚れたパワーゲームのアクセルは、これから一気に踏み込まれて加速が始まるのです。

 

2.2020年東京五輪招致活動に再度挑む

2020東京五輪招致創世記

石原慎太郎氏は、東京都知事に4期当選した後、2011年4月10日に再度2020年オリンピック開催地への立候補をしたのです。そして同年9月15日に特定非営利活動法人東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会(略:20東京五輪招致委員会)を設立会長には石原慎太郎が、理事長には日本オリンピック委員会JOC)会長の竹田恒和氏が鎮座し、第1回理事会が開催されたのでした。

此処で本招致委員会は、何故か活動費の一部として広告代理店の電通から約6億9,000万円借り入れたとされているのです。本件に関する双方の経緯は、書面での一切の情報公開が国民、社会にはなされていません。双方の貸し借りへの対価は、何であったのかの情報公開がなされないまま今日を迎えているのです。

株式会社電通(略:電通)は、営利の広告代理店企業であり、招致委員会は非営利組織・団体でビジネス実践キャリアの無いいわば素人集団なのです。招致委員会は、電通を利用しようと安易な思考の基に関係を構築して行ったのでしょうか。それ以降は、物心ともに電通を頼らざるを得ない状況が日々醸成されて行ったのだろうと筆者は推測しています。

電通は、バランテイアー企業でなく莫大な収益を求める会社、企業(広告代店)である事を本委員会の理事、役員達の何方が認識していたのでしょうか。逆に利用してやるくらいのレベルの思考回路しかなかったのか、或はその時点で電通に公私ともに世話になっていた理事、評議員、役人が多くいたのかも知れません。その事は、これからだんだんと関係が明らかになるのでこの件をご記憶して頂ければ幸いです。

 

2020東京五輪招致委員会は二派閥により構成

本20東京五輪招致委員会は、上記のように2011年9月15日に第1回理事会が開催さているのに対して、同年11月28日には、政財界などの要人で構成した評議会の第1回会合が開かれ13年1月には森喜朗副会長が評議会議長に就任した

此処に20東京五輪招致委員会は、理事会のボスと評議会のボスの二頭体制が立ち上がり、これからいよいよ政争、利権闘争が開幕の火ぶたが切って落とされたのです。この招致委員会の構造から理事会、評議会は、何としても招致獲得に勝つ事でパワーゲームの勝者も確定すると読んでいたと思われます。よって、理事会、評議会と二股をかけ先読み委員、役員、国会議員、都会議員達が居たのもうなずけます。

企業電通は、何方が勝利しても利益獲得する為にも両陣営に協力、支援するのは当然のビジネスセオリーという次第ですそして、委員会は、11月30日に「ロゴ・マーク」が制定され、電通をスポンサー担当専任広告代理店として指名、契約を締結するに至った次第です。本契約の経緯は明らかにされていませんが入札でなく、随意契約であったようです。

この招致委員会の理事会と評議委員会の二頭体制のパワーゲームは、2020東京五輪招致疑惑への暗黒の世界へとミスリードされて行くのです。この航路は、闇のネットワークへの入り口であったと思わざるを得ないのも無理からぬことです。このことを予知していた人物がいるとするならば、それは、2020東京五輪招致活動のシナリオライターが全てを見通していたと思われますこのシナリオライターこそが、ポリテイカル・ビジネスのビジネスアドミニストレイターとしてのプロフェッショナルその人なので。このような方は、実践に強く頭脳明晰で人前で目立つような事はしないし、政治家、スポーツ関係者のように目立とうとも思わないのです。自社企業のビジネスと繁栄の為に業務を遂行するのです。

2020東京五輪招致委員会理事会名簿 

 ★は理事会/評議会の両方 

理事長 JOC会長 竹田恆和

副理事長/専務理事 同副会長 水野正人 ★ ミズノスポーツ株 会長

副理事長 同専務理事 同副会長 福田富昭

副理事長 同専務理事 市原則之

副理事長 日本障害者スポーツ協会副会長 伍藤忠春

副理事長 東京都副知事 佐藤広

理事 日本体育協会 岡崎助一

理事 JOC理事 橋本聖子

理事 同国際専門部会員 鈴木大地

理事 パラリンピアン 成田 真由美

理事 日本オリンピック委員会理事、アスリート専門部長 荒木田 裕子

理事 国際専門部長 野上義二

理事 元東京2016招致委員会事務総長 河野一郎

理事 同総合企画・国際部長 元東京2016招致委員会事務次長  中森康弘

理事 東京都スポーツ振興局長 細井 優 ★

監事 日本オリンピック委員会監事 深津泰彦

監事 東京都財務局長 安藤立美

 

2020東京五輪招致委員会評議会名簿

★は理事会/評議会の両方

【会長】石原慎太郎猪瀬直樹

【副会長】森喜朗(議長)竹田恆和★ 米倉弘昌 岡村正

【事務総長】小倉和夫

【事務総長代行】樋口修資

【委員】水野正人★ 河野一郎★ 細井優★ 遠藤利明 猪谷千春  岡野俊一郎 

              鳥原 光憲 張富士夫 山田啓二 達増拓也 村井嘉浩 佐藤雄平 長谷川閑史

           槍田松瑩 中村芳夫 上條清文 松本正之 広瀬道貞 秋山耿太郎 古賀伸明

           福井正興 相川敬 石澤義文 成清一臣 安西祐一郎 島村宜伸 土川健之

           仲田和雄 松本好雄 石黒克巳 笹川陽平 王貞治 樋口久子 川淵三郎 

              鈴木寛 奥村展三 溝畑宏 

以上2020東京五輪招致委員会の理事会、評議会メンバーです。

実戦部隊は何処に

2020東京五輪招致員会の理事会、評議員会には、まだ株式会社電通の関係者の名前をお見かけ致しません。しかし、電通に通じた代弁者、忖度者は、多く見当たります。本招致委員会の中には、残念ながら本物のスポーツ・アドミニストレイターの姿は、見掛けられないようです。よって、メンバーには、オリンピック招致に必要不可欠な真の情報収集力を期待するのは難しいのです。

近年の巨大なスポーツ・ビジネスの成否は、情報の入手力、その為のネットワーク力、即ち何処の誰が必要不可欠な情報のイグニッションキー(車のエンジンをスタートさせる鍵)を保有しているか否かにかかってくるという事です。そして、その情報が真の情報か否かを見極める為には、見極めるスキルもあるのです。このように得た高価な情報は、次に如何にして活用するかリテラシー(Literacy活用)の能力に委ねられると申し上げて過言でありません

本プロゼクトを勝ち取る為には、上記役員、メンバー達は組織・団体を形成する為の社会、国民、都民への信用担保なのです。これから必要不可欠な莫大な資金集めの為には、如何にして国、都に対して、また民間企業のスポンサーを信用させるための担保として、集金ゲームの準備をする為の顔見世興行と理解された方が理解し易いかも知れません。

招致を勝ち取る為には、この時点で既にシナリオライターの構図に基いた真の情報の収集に日夜心血を注いでいる部隊が居たとお見受け致す次第です。真の最前線の人達には、このようなお飾り的な委員会、政治家、役人リストは招致を勝ち取るために何の意味もなさない事を百も承知しているのです。勝負は、この時期既に水面深く潜航し真のキーを探している企業戦士達の高度な諜報、情報収集とそのリテラシーにかかっている次第です

それは、本招致ゲームに勝利する為の重要不可欠なソースなのです。そしてその確証を握る人物に如何にして近づき手に入れるか。そこでは、どれ程の軍資金が必要でその確約をどう担保できるか。ゲーム展開からみて、勝敗の分かれ目は、IOC委員の数十票回収に全てが集約される。それは、リオで見せつけられた開票結果からであったのです。筆者は、この理事会、評議員会のメンバーの中にはこのような能力がある人物がいるとは思えませんでした。

まとめ 

シナリオライターは、勝者リオ招致の分析、IOC委員達の動向、等、全ての情報を入手していたと推測出来ます。要するに、20東京五輪招致の勝利の方程式は、リオ招致成功マニュアルのコピーであった、と言われても不思議ないと筆者は分析致しておりますその証は、20東京五輪招致疑惑がリオ五輪招致事件と酷似である事からも、疑われてしかるべきなのかも知れません。この件に付いては、次回その生々しい取引とそれらの人物が登場してくることにより鮮明に理解できるかと思われます。

此処で、プロのスポーツ・ビジネスアドミニストレイターに近づく情報、手立てを一番よく実践経験を通して持っている組織・団体の部隊を動かさざるを得なくなるのです。また、勝敗の行方を担保する為には、この度の招致疑惑のルート以外に数本のルートを開発している事は容易に想像できるのです。しかし、現時点では、他の複数のルートに付いては、フランス当局の事件(①ロシアドーピング疑惑、②トーピングに関わるマニーロンダリング、等)との関わりを持たないためにマスメデイアに晒されなかったのかも知れません。

筆者が本プロゼクトの参謀であったなら、必ず勝敗を左右する為の安全弁として複数の他のルートの開発と担保を確保して置きます。それは、本ゲームのキーを預かる指揮官としての鉄則でありプロとしての当然の戦略なのです。

此れが世界を相手に戦うスポーツ・ビジネスアドミニストレイターの真骨頂で、その真価を問われるこれが勝負どころです。次回ご期待ください。

文責:河田弘道

スポーツ・アドミニストレイター

スポーツ特使(Emissary of the SPORTS)

紹介:Gfile 「長嶋茂雄と黒衣の参謀」文芸春秋社 著 武田頼政

お知らせ:

NO.154は如何でしたでしょうか。読者の皆様の脳神経に刺激が与えられ、どんどんと神経細胞が活性化し、脳の各分野にインパルスがエネルギーを運び始めた時期でしょうか。今日の東京五輪組織委員会JOCIOC、政府関係者の動向、時事の事件、人事舞台、等々が透けて見えているのでないでしょうか。次回は、本招致活動に於ける本論とその闇をご紹介できるかと思います。